ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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「・・・・・アザゼル」

『よう、D。どうした』

「・・・・・兵藤家、お爺ちゃん達、会う」

『そうか・・・・・向こうから接触して来たんだな。それで? 俺に教えるためだけじゃないだろ』

「・・・・・鳶雄達も呼ぶ、アザゼル一緒に来る」

『なるほど、その誘いか』

「・・・・・代弁してもらう」

『本命はそっちなわけな。ま、お前さんのことは俺も関わっているから関係ないとは言い切れんか。いいだろう、俺も行かせてもらうぜ。鳶雄達の方は俺から誘っておくわ』

「・・・・・ありがとう」



発覚 その2

『黒狗』バーで働いている鳶雄、駒王学園で授業参観の日に訪れた夏梅、鮫島、ヴァレリー、鳶雄と手を繋いでいる女性の東城紗枝、『黒狗』バーの専属歌手の女性ラヴィニア。

 

更に西欧人を思わせる顔立ちに暗めの色合いであるブロンド(長い髪を一部編み込みしていた)。彼女の特徴的な―――右目が青く、左目が黒とオッドアイが特徴の眉目麗しい女性の七滝詩求子。

 

ボサボサ気味の黒髪にところどころ金のメッシュを入れている青年の古閑雹介。Dに誘われヴァーリ、クロウ・クルワッハ、オーフィスを除いてだが久方ぶりに顔を突き合わせた。

 

「・・・・・久しぶり古閑、シグネ」

 

「あらら、もしかして俺達だけ会っていないやつか?」

 

「Dがそう言うならそうじゃない? 私達もこうしてヴァーリ達を除いて久しぶりに皆の顔を見たわ」

 

「うん、本当に久しぶりだねDくん」

 

学園の校門前で待ち合わせの時間よりも早く現れた男女とDは話し合っていた。

 

「これから兵藤家に行くことになるなんてね。五大宗家のような家と同じぐらい大きいんだよね」

 

「・・・・・始めて行く」

 

「Dでも初めて、いや、仕方がないわよね」

 

「一応、これからわかるんだろ? Dの過去とかよ」

 

「そうなのです。Dのご両親もいるのです?」

 

「・・・・・知らない」

 

と、話し合う9人の肩や腕の中、足元には明らかに普通の動物ではない存在がいた。それらは全て独立具現型の神器(セイクリッド・ギア)であり黒い狗以外は中国の伝説の魔物、四凶である。

 

「そう言えばD、テレビ見たぜ。派手に暴れたな? 相手は誰だったんだ?」

 

「・・・・・学園に通う兵藤家、父親」

 

「はい? どうしてその親達がお前を襲うわけ?」

 

「・・・・・着いたら教える」

 

「―――おはようございます。Dさん」

 

遅れて現れる、それでも指定された時間より早く現れた愛花達や私服姿のシンボリルドルフ達。

 

「あれ、誰ですかその人達」

 

涼子の指摘に紹介するD。

 

「・・・・・三大勢力の一つ、堕天使陣営の組織、『神の子を見張る者(グリゴリ)』のエージェントチーム、名前は刃狗(スラッシュ・ドック)。・・・・・俺の仲間、友達、戦友」

 

「そこの6人の娘達とはバーで会ったね。改めて自己紹介をしようか。俺は幾瀬鳶雄、一応Dが言ったチームのリーダーだよ」

 

「私は皆川夏梅、よろしくね」

 

「俺は鮫島綱生だ」

 

「初めまして、ラヴィニア・レーニなのです」

 

「古閑雹介だ。よろしく」

 

「七滝詩求子です。よろしくね」

 

「東城紗枝です」

 

「ヴァレリー・ツェペシュです」

 

と、自分達とは無縁な何かと深く関わっている者達の自己紹介から、学園の生徒組も自己紹介をし始めた。それが聞き終えると鮫島がいやらしい表情でDに絡んだ。

 

「お前、随分とモテモテじゃねぇかよ。あれから俺が送ったモンを見てヤったか?」

 

「・・・・・まだ見てない。始めてもらった宝物。 大切に保管」

 

「いや、大切に保管する物でもあるが、男ならあれは見るべきものであってだな―――」

 

「お? なんだなんだ、鮫ちゃんから何を貰ったんだ? 教えてくれよ」

 

「・・・・・お―――」

 

「ストーップ!! うら若き女の子達がいる前でそれは言っちゃダメなやつだからD!! 言ったら絶対に嫌われるわよ!?」

 

それは困る、と口を閉ざして沈黙を貫くDを安堵して、鮫島に蹴りを入れる夏梅であった。

 

「寮長室にあるのかな? 帰ったら探してみよっと」

 

「家探しはよくないよ!?」

 

「えー? 男なら見るべきものだって言えば、大体の思春期の男の子が見そうなのはアレだろうし、Dさんの女の子の好みがわかるかもよ?」

 

察する者と察しない者の反応が分かれたが、あの人の女の好みがわかるという単語に大変興味を抱いた恋する少女達であった。

 

「・・・・・京都、行く」

 

「アザゼルさんは?」

 

「・・・・現地」

 

「そっか、じゃあよろしくD」

 

なにがよろしくなのか―――足元に展開する幾何学的な光る円陣を見て察した。これは魔方陣であると。その光に視界は奪われ、目の前が一瞬だけ何も見えなくなって次に景色を見る時は・・・。

 

「お、来たな」

 

東京から来たD達を迎えたのは矯正な顔立ちと、前髪が金髪で顎鬚を生やした、いわゆる「チョイ悪オヤジ」的な外見の男性だった。鳶雄達はすぐにその男性に声を掛けた。

 

「お久しぶりです。アザゼル総督!」

 

「相変わらず元気だな夏梅。そんでDよ。俺が聞いてたのより随分と可愛いギャラリーを連れて来たじゃないか」

 

「・・・・・被害者」

 

「そういうことかよ。まったく、当主の苦労が目に浮かぶぜ。大変さは知らんがな」

 

アザゼルと呼ばれたビシッと決めた服装の出で立ちである場所の前に立っていた。そこは大きな旅館の前だった。

 

「アザゼルって・・・・・」

 

「そう、堕天使達を統べるトップのヒトだよ」

 

「・・・・・偉さは天皇家並み」

 

「おいおい、俺はそこまで偉くなねぇって」

 

苦笑いして謙遜する堕天使の男を夏梅は補足する。

 

「でも実際は凄いじゃないですか。幅広く様々なことに手を出していて、日本にもいくつかお店を構えていて、鳶雄達が働いているBARも堕天使が運営しているし。世界中の神器(セイクリッド・ギア)の所有者達を対象とした講演会もして有名ですし。あと、全世界のウマ娘の神器(セイクリッド・ギア)も関わってるんでしょ?」

 

そうなのかとシンボリルドルフ達がアザゼルを見る。

 

「それはまぁな。所有者の意思と関係なく常時能力が常時発動し、しまいにはウマの魂が宿ってる神器(セイクリッド・ギア)の所有者が子供を作ると、その子供までウマの魂を宿した神器(セイクリッド・ギア)を宿した状態で際限なく産まれるんだ。神のシステムにそんな設定はされていない筈だから逆に興味が沸くのさ」

 

と、語るアザゼルでもまだ調べ切れていない事実はD達に感嘆の息を吐かせた。

 

「今じゃあ、増殖し続けるウマの神器(セイクリッド・ギア)の数だけ国が栄えるって世論調査が定まりつつあるし、世界クラスの速いウマ娘と強い父親の遺伝子を受け継がせ、ハイブリッドなウマ娘を作る国もあるぐらいだ。それらも含め今も研究と調査しているのさ」

 

そう語るアザゼルはDとウマ娘達を興味深そうな目で顎に手をやってみた。

 

「もしDがそこにいるウマ娘の誰かとできた子供にも興味あるな。伝説のドラゴンを宿した、兵藤家と式森家の血を引く世界屈指のハイブリッドな存在だからよ」

 

そこまで知らなかった学園組の人間の少女達は「えっ!?」と驚いてDを見た。

 

「Dさん、式森家の人の子供でもあったんですか?」

 

「おや、君達は知らなかったのか。私達はトレーナーさんを会いに来た兵藤家の当主から教えてもらえたのだが」

 

「へっ?」

 

「そして、トレーナーさんからは自身の身体と正体を軽く教えてもらったよ」

 

自分が知らないことを何か知っているシンボリルドルフの発言に目を丸くし、彼女から優越感が感じると心なしか嫉妬を覚える涼子だった時。

 

「ようこそ、お越しいただきありがとうございます」

 

旅館の扉が開きだし、中から女将さんが出て来た―――と思えばその女性は意外なことに源氏の妻だった。

 

「おっ、久しぶりじゃねぇか。元気そうだな」

 

「お久しぶりですねアザゼル総督殿。あなた様もお越しになられていたとは予想外でした」

 

アザゼルはDの肩に手を置いて言う。

 

「こいつとは俺も関わってるからな。だから説明した方がいいと誘われたのさ」

 

「そうですか。ではそのようによろしくお願いいたします。既に当主は中でお待ちしておりますので」

 

一礼して中へ踵返して戻る彼女のことを問うた鳶雄。

 

「あの女性は・・・・・?」

 

「兵藤羅姫。当主の奥方でDの祖母だ」

 

「あの若さで!?」

 

「ああ、兵藤家に嫁ぐ女は老化の進行が遅くする秘薬を飲まされ、人によっちゃあ長生きするようになるからな。俺が最初に会ったのはもう百年以上前になるな確か」

 

道理で若いわけだ。そんな裏事情がある兵藤家に脱帽する一同。Dもそうだった。

 

「そうそう、兵藤羅姫は元は姫島の人間だったな」

 

「えっ!? そうなのですか!」

 

「兵藤家は優れた者の血を欲するからな。五大宗家の者の血も入ってもおかしくはない。お前さんとDに直接は関わっていないが、姫島の血を濃く受け継いだ息子の兵藤誠は今じゃあ知られちゃあいないが、人体発火現象を自由自在に扱える兵藤家始まって以来の特異能力の持ち主であり歴代最強の男だった」

 

アザゼルの視線はDに注ぎ、刃狗(スラッシュ・ドック)チームもそれに釣られるように同じ人物へ見て、話を聞いていた学生組も視線を注いだ。

 

「ま、奴の子供達の一人は何も恵まれず、もう一人は恵まれて生まれてしまったがな」

 

「子供達って・・・・・え、Dに兄弟が?」

 

「・・・・・アザゼル」

 

Dが彼の首筋に手刀から伸びる魔力で具現化した光剣で突き刺した。突拍子もない行動をするDに刃狗(スラッシュ・ドック)チーム以外の面々は目を丸くする。

 

「・・・・・黙れ」

 

「はいはい・・・・・わかったわかった、謝る。口が滑ったよ」

 

「・・・・・ネット、黒歴史」

 

「待て、それだけは止めてくれ!? おい、その携帯はなんだ、それで何をするつもりだおいD!!」

 

先行くDの不穏な動きに嫌な汗を掻いて焦るアザゼル。二人の言動は「いつものことだ」と済ませて追いかける鳶雄達の後に続くシンボリルドルフ達と愛花達。

 

 

 

旅館の玄関で靴を脱いで中に足を踏み歩く音だけが聞こえる静寂な廊下。先導する羅姫をアザゼルは素朴な疑問を投げた。

 

「そういや、どうしてここだ。てっきり兵藤家の本家の方で会うのかと思ったが」

 

「あそこでは家族(・・)としていられませんからね。他の者達の目も気にせず会うなら旅館がいいのです。それに面倒な諍いも事も私達は起こしたくありません」

 

「だとしても見張りぐらいはされてるだろ」

 

「それも信用に足りる者達―――リーラ達メイド隊に任せております。相手が兵藤家の者だとしても彼女達は一人も入れさせません」

 

リーラ、メイド・・・・・愛花達の脳裏に過った一人の銀髪の外国人の顏。兵藤家の関係者だとしたら、自分達はとんでもない偶然の出会いをしたと思った。

 

「こちらです」

 

歩くこと程なくして二階の一番奥の広間の部屋に案内された。日当たりが悪く窓もないがその分、外からの監視の目は届かず魔法以外は中の様子は見れないだろう。仮に盗撮・盗聴の類はあったとしても事前にメイド達が徹底的に調べた後なので問題はない。そこまでしないと家族として接せれない不自由さがあるもの、源氏にとって娘の好感度を取り戻すためならばその程度、苦の内にも入らない。

 

静かに扉を開け、広間を隔てる戸を横にズラして開くと畳が百量以上もある広さの中心に源氏と二人の赤と青の着物で身に包む黒髪の少女が座っていた。艶のある漆黒の髪、大和撫子風な姿と容姿は日本の黒髪の女性を象徴させるかのような美しさがあって、気配さえ殺しているかのように静かに正座して羅姫達を見つめていた。逆に源氏は訝しんだ。

 

「・・・・・どういうことだ」

 

「そう不機嫌な顔をするなって源氏殿。せっかくの家族水入らずの時間に邪魔するようだが、Dの詳細を知るなら言葉足りずで口数が少ないこいつよりも、俺から聞いた方が分かり易いだろ。後で本人に聞くとしても少なくともこいつらの中では俺が一番知ってるぜ。14、15年前にこいつが死んだと思わされた周囲を巻き込む川神院を消失させた大爆発の中、どうやって生き延びたのかもな」

 

『っ!?』

 

「・・・・・」

 

「その現場に俺もいたから、四年前に再会した時ぁ俺ですら驚いたもんだったぜ」

 

無造作に源氏の前に胡坐掻いて座りこむアザゼルの後ろからDが寄り、後ろにいる者達に対して言う。

 

「・・・・・兵藤家の犠牲者」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・当主として謝罪、謝礼」

 

「・・・・・お前の身近な者達にも愚行を働いたか」

 

若者達を追放するだけじゃ納得できていないDの気持ちを汲んで、源氏は当主として後ろに控えている者達に畳に額がくっつくほど頭を下げて土下座をした。

 

「申し訳なかった。兵藤の若者達の愚かすぎる言動を把握できずにいた責任は私にある。不干渉でいたために学園で傍若無人の働きを許してしまった。もはや、学園での兵藤家の対する評価は覆せんまで地の底に堕ちているが、今後は強い監視の下で好き勝手にはさせん。教育方針も変え、調教も視野に入れる。必ずこれからの若者達を生まれ変わらせてみせる。私の名に誓ってだ」

 

「・・・・・無能家当主の名は、信用できない」

 

グサッッ!!!

 

「・・・・・強い監視、どうやる」

 

「・・・・・今すぐはできない。短くても一年後か二年後に実現する」

 

「・・・・・ダメだったら、マダオと呼び続ける」

 

「マ、マダオ・・・・・?」

 

まるでダメなお爺ちゃん、と意味を教えたら源氏の顏から魂が抜けそうになった。会うたびに呼ばれ続けるマダオ、何て意味を認知してしまったら・・・・・心が死んでしまいそうになる。

 

「・・・・・呼ばせないで欲しい。今まで見守ってくれたお爺ちゃんに言いたくない」

 

「んくっ・・・・・!!」

 

純粋な想いから言っているのだと、源氏の心がときめいて身体が震えた。無意識だろうと相手をオトしてからアゲるDにアザゼルは苦笑した。

 

「・・・・・約束」

 

「う、うむっ・・・・・必ず現実にしてみせるっ」

 

「・・・・・そっちも大切、別の約束」

 

「ああ、あれだな。わかった」

 

意図が読めない二人の会話の内容。源氏が強く手を叩いて音を鳴らすと、広間に銀髪のメイド―――秋葉のメイド喫茶で会ったリーラが大量のアップルパイを乗せた大皿を持って来た。

 

「どうぞ、ご主人様」

 

「・・・・・リーラ、感謝」

 

「いえ、当然のことですご主人様」

 

美人なメイドとどんな関係が!? 気になって気持ちがもやもやする若者達を気にせず、アップルパイを食べ始めたDが、誰もが一度は見たことのあるショタ狐と化しては幸せそうに食べる姿に―――二人は黙っていられなかった。

 

「いっくーん!!!!!」

 

沈黙を貫いていた漆黒の髪に赤と紫のオッドアイの少女がDに飛びついた。

 

「いっくんいっくんいっくんいっくんいっくんいっくんいっくんぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

『(エエエエェェェェェ・・・・・・)』

 

何この理性が吹っ飛んだ娘は・・・・・。という一同の心が一つになって、もう一人の少女がやんわりと窘める言葉を掛けた。

 

「もう、悠璃。落ち着きなさい。淑女としての振る舞いをしなくては―――」

 

「だって楼羅!! いっくんだよ!? 死んじゃったって思っていたいっくんがぁあああああああああああああああああああっ!!?」

 

「少しは落ち着きなさいって言ってるでしょう!! 私だって誰の目も届かない場所だったらあなたのように抱き着きたい思いを我慢していたのよ!?」

 

「待って楼羅、アイアンクローはやめて顏が歪む、いっくんに見せられない顔になっちゃううううう!!」

 

「ならまずは彼を離しなさい!! 別の部屋に連れて行きますから!!」

 

「わ、分かったから離して、顔に指の跡が残っちゃうからぁっ!!」

 

黒と赤色の瞳の少女にアイアンクローをかまされ、Dを話す悠璃という少女に変わって楼羅と呼ばれた少女がちゃっかりDを抱えて皆に一礼してから部屋を後にどこかへ行った。アップルパイを持って彼女を追いかける悠璃の後にリーラも退出した。

 

「・・・・・源氏殿」

 

「・・・・・大変見苦しいものを見せてしまった」

 

「まったくあの娘達ったら、後でお説教ね」

 

大和撫子・・・・・そんなものはなんだ、と理性と共に殴り捨てて本能で動いてみせた悠璃。物静かで虫も殺さぬ清楚で優しい・・・・・その反面は相手を力で制裁する楼羅の短気さが窺えた。

 

コレ・・・・・絶対に忘れた方がいい案件じゃないですかぁ・・・・・。

 

実際、源氏と羅姫から意味深な眼差しで向けられてくるので、皆は揃って気持ちを一致した瞬間でもあった。

 

「・・・・・内密に、頼まれてくれまいか」

 

「「「「「「「「「「・・・・・ええ、はい」」」」」」」」」」

 

「ごめんなさいね本当に」

 

当主としても親としても彼女達の言動は公にされたくないらしい。・・・・・確かに天皇家の女とは思えない言動を目の当たりにしてしまったからには、どう反応すればいいのか困惑する。

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

Dと二人の少女たちとメイドがいない中でアザゼルが四年前にDと再会した経緯を源氏と羅姫に説明した。川神院を消失させた爆発からどうやって生き延びたのか、どうして成長が速いのか、今まで何をしていたのか全てをだ。

 

「「・・・・・」」

 

「信じられねぇって感じだな」

 

「・・・・・当たり前だ。禁忌の力は周囲をも巻き込む爆弾だ。大爆発の中で死なず生きていただけでも信じられぬというのに、異世界・・・並行世界で10年も過ごしていただと誰が鵜呑みにできるか」

 

「だが、全て事実であり現実だ。あいつが並行世界に行っていた証や証拠まで揃えて持って来たんだ」

 

自分の目でも触れて確かめたからには断言できる故、口にするアザゼル。

 

「それはなんだ」

 

「人工の神滅具(ロンギヌス)、それも赤龍帝と白龍皇になれる籠手だ」

 

大きく目を見開く源氏。それすら簡単に鵜呑みはできない話であろうと分かってても、アザゼルは言い続けた。

 

「頼めば見せてくれるだろうよ。ただし、使いこなせるかはわからんがな」

 

「誰でも扱える物なのかそれは?」

 

「そいつは装着者次第だな。試しに俺も使わせてもらったら成功したぜ。うちのエージェントチームも一応装着できたものの、体力の消費が著しく激しくて長くは纏えなかった」

 

それが本当なら信じるしかないが、もしもその人工の神滅具(ロンギヌス)の存在が兵藤家に知られることになれば、兵藤家限らず世界中が黙ってはいないだろう。

 

「・・・・・その件についてはまた後日話し合おう」

 

口約束をした後、アザゼルの背後に座っている面々に目を向ける。

 

「・・・・・私の監督不行き届きで迷惑をかけた。孫の言葉通り謝礼をさせて欲しい。どんな願いでも当主として、あの子の祖父として受け入れる。―――孫のことでも構わないぞ」

 

Dのことがわかる。今まで気になっていたDの過去の話が分かる。その話を聞けると鳶雄は聞かずにはいられないと口を開いた。

 

「お言葉に甘えて教えてください。Dの過去の事を」

 

「私も・・・・・彼がテレビで心が壊れていると聞いてからずっと気になっておりました。それは、事実なのですか?」

 

「お聞かせください。当主様」

 

鳶雄、涼子、シンボリルドルフがDの過去を知りたがっている気持ちが一致していた。これを聞かずいつ聞くのだと。今回の機会を逃せば本人から聞く以外はない。Dが打ち明けない過去の話を知っているだろう当主に聞く好機なのだ今。

 

「・・・・・それがお前達の願いか。今更ながら孫の過去を知ってどうする気だ。同情、憐れむか?」

 

「「「違います」」」

 

断言する鳶雄達。

 

「仲間だから知りたいんです。仲間だから一緒に前へ進んで行きたいんです。無知と認知の違いは大きく違います。何も知らないより知ってDと変わらず交流をしたい。それが俺の気持ちです」

 

四年前から修羅場を潜った戦友を思う一人として。

 

「過去を知ろうが変えられない事実です。心が壊れているならできる事なんでもして少しずつでも癒したいです」

 

貞操を奪われる危機から救った三年前から交流し、一人の異性として好意を抱く女として。

 

「私達ウマ娘はまだ何も彼のことを知らないままです。知ることでやっと一歩前に進むことが出来ると思っています」

 

自分達を真摯に向き合うトレーナーに何時しか恋愛感情を抱くようになったことも含め、大切な存在として。

 

今現在のD(トレーナー)が産まれた根源を知りたい思いを源氏に伝えた。純粋な眼差しを向けてくる者達の視線を受け止め、しばらく沈黙を保っていた源氏の口から肯定の言葉が発した。

 

「・・・・・わかった。私が知る限りの孫の過去を教える。ただし、この場に居る者以外の者には他言無用だ。いいな」

 

全員が真剣な面持ちで頷くのを見て源氏は説明口調で語り始めた。

 

「―――まだ幼いあの子が、同年代の誰よりも弱かった頃―――」

 

 

数分後―――。

 

 

「・・・・・私達が立ち会った知る限りの孫の話はこれでお終いだ。それ以降は総督殿が語った四年前の話に繋がるが、それ以前の空白の時間は異世界で10年間も過ごした孫から聞かねばわからぬ」

 

黙って耳を傾けていた面々はDの壮絶な出来事と体験、経験に遭った話に絶句していた。特にパンしか食べない理由が、ほぼ断食に近い仕打ちを受け、同年代の子供だけじゃなく大人まで弱いという理由で虐待し続けた期間が長かったために骨と皮の身体になったのだということだ。ナイスネイチャが焦燥に駆られた風に言う。

 

「ま、待ってください!! 今のトレーナーはパン以外でもちゃんと食べていますよ!? いや、確かにパンや菓子パンを食べることが多いんですけど・・・・・!!」

 

「そうか・・・・・孫がパン以外にもちゃんとした料理を食べるようになったのか・・・・・」

 

「でも、信じられない・・・・・あのDさんが」

 

「人は誰しも想像もしない何かを抱えている。孫もその例に零れなかっただけだ」

 

「四年前の頃はパンしか食べなかったあのDの理由が、そんなことが遭っただなんて・・・・・」

 

「同時に、兵藤家を毛嫌い、嫌悪する理由でもある。誰もが兵藤家に手出ししない、出来ない一般人に変わって孫は躊躇なく蹂躙するのはそうする理由があるからだろう」

 

それなら確かに・・・・・皆の記憶の中で兵藤家の者達を蹂躙するD(トレーナー)の姿が過った。

 

「つかぬことをお聞きします。アザゼル総督殿の話ではトレーナーさんに兄弟がいたのでは? 虐められていた時は一緒にいなかったのですか?」

 

「・・・・・・」

 

「あー、口が滑ったんだ」

 

厳しい目つきで源氏に睨まれるアザゼルは悪びれる様子もなくそう言いのける。

 

「・・・・・言い訳になるが、私は下の者達の様子を見ることなく政治や外交で忙しかった。訓練を施す際は孫達は別々に分かれ、時には一緒になる事もあっただろう。私が初めて孫の状態を知ったときは長らく離れていた兵藤家に戻り、百年に一度行われる日本の神々を招いて開催する兵藤家伝統の『力の大会』時だった」

 

「「「「「「・・・・・」」」」」」

 

「孫は兄と接触する機会があったはずだ。助けを乞うたかもしれない。その時の兄は、助けに応じて身を挺しても守り切れなかった。もしかするとあるいは―――」

 

その先は語られることはなかった。この場に居る全員が判るほどの悪寒が背筋に走ったのだ。戦闘が出来る者は臨戦態勢に入り、そうでない者は当惑する。

 

「この感じ・・・・・四年前にDが初めて五大宗家の櫛橋家の次期当主に出会った時と似てる」

 

「つまり、Dにとって警戒するほどの相手がいるってことか?」

 

「いえ、違います総督。その時のDは―――怒っていたんです。Dの命を狙った敵だと分かったら」

 

つまりこの感じはDが誰かに怒っている? この旅館にDを怒らす者がいる筈がないのに一体誰が・・・・・。

 

「―――あのクソガキ、戻ってきていたかっ!」

 

源氏が勢いよく立ち上がって怒りを露に叫んだ。アザゼルはそんなこと言わせる源氏に心当たりがあり、問うた。

 

「あいつが帰って来てるのか源氏殿」

 

「ああ、孫のところにおるわっ。羅姫!」

 

「分かってますわ」

 

羅姫も立ち上がり、皆を置き去りにして広間からいなくなって鳶雄達はアザゼルに訊く。

 

「アザゼルさん。どういうことですか?」

 

「帰ってきちまったんだよ。別に悪くはないんだが、Dにとっちゃあ再会したくもないかもしれない相手だ」

 

「それって誰なのです?」

 

「―――Dの両親だ。兵藤家の前の当主、兵藤誠と式森家の前の当主、式森一香がな」

 

「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

「そして最悪、ここで親子喧嘩が始まる可能性が非常に高い。だから念のために嬢ちゃん達は避難しとけ」

 

次の瞬間。

 

 

ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

激しい轟音と何かが壊れる混じった音が広間まで響いた。舌打ちするアザゼル、警戒する鳶雄達はシンボリルドルフ達と愛花達の護衛をしつつ旅館から出ようと動き始める。

 

「このっ、クソ親父!! いきなり殴りかかってきやがって何しやがる!!」

 

「黙れバカ息子!! 今まで好き勝手に動き、兵藤家にどれだけ迷惑をかけたと思っている!! 突拍子もなく『ウマ娘の保護よろしくな!』等と言い抜かされたこっちの身にもなれ!!」

 

「いいじゃねぇかよ!! そのおかげでいいこと尽くめだろうが!!」

 

「その労力を思い知れと言っているのだ!!」

 

聞えてくる怒り荒ぶる源氏の声とアザゼルにとって久方ぶりに聞く若い男の声。だが、親子喧嘩は他所でやってくれと切に思っていた。周りを巻き込み、嵐の如く激しく何かを破壊する音が聞こえてくる。屋内で戦う二人の姿が見えない内に外へ避難する。

 

「な、何が起こっておりますの!?」

 

「わけわかんないよ~!」

 

見えない力で床が壊れたかと思えば、真後ろに何かが通り過ぎた気配が感じ、旅館の中が戦場と化してるのが肌で感じる最中、玄関の出入り口が見えてきた。そこには不機嫌そうに顔を歪めているDが佇んでいて空間にぽっかりと開いた穴の向こう側は駒王トレセン学園の光景が。

 

「あの穴の中に飛び込め!」

 

アザゼルの言葉に従いなりふり構わず潜る一同。全員が学園に避難する頃には全員分の靴を浮かせて運ぶDが最後に空間の穴を閉じた。

 

「D、サンキューな」

 

「・・・・・」

 

無言で頷き数多の靴を地面に置く。全員は自分の靴を見つけて履き直し一息つく。

 

「ねぇ、当主が怒っていたのってDの両親が来てたからなの?」

 

「・・・・・だったら、なに」

 

「・・・・・」

 

不機嫌に言い返されれば、事実なのだと察してしまう。

 

「聞くが、あの二人はお前のこと認識していたか」

 

「・・・・・していない。どうでもいい。会いたくもなかった」

 

やっぱりか、と息を吐くアザゼル。

 

「これは予想だがD。あいつらも面白半分で大会に出ると思った方がいい」

 

「・・・・・」

 

「どうこう言うつもりはないが、お前の人生だ。誰もお前が進む道に阻む権利はない。好きに生きて好きにすればいい。お前の好きな自由はそう言うもんだろ」

 

Dの胸に拳を押し付けるアザゼルの指摘の言葉に、Dは頷く。

 

「トレーナー!!」

 

腹部に突進して抱き着くトウカイテイオー。何事、と視線を落として見下ろすD。

 

「トレーナー、絶対ボクがトレーナーを幸せにするよ!」

 

「・・・・・?」

 

「今は無理だけど、身体が大きくなったらさ―――結婚して一緒に暮らそうね!!」

 

『っ―――!?』

 

突然の告白シーンを見せられた一同は吃驚した。告白されたDは申し訳なさそうに言う。

 

「・・・・・ドラゴンの寿命、一万年以上らしい」

 

「え、そうなの?」

 

「ああ、間違いない。太古から生きてる俺が証人として肯定させてもらうぜ」

 

アザゼルが肯定するので寿命の話は事実なのだと知らされる。

 

「ウマ娘とは言え人間だ。寿命は人間と同じで気付けばあっという間に年を取って死ぬお前さんとは結婚できないか、したくないかもしれないぜDは」

 

「じゃあ、どうしたら長生きできるの?」

 

「一つしかあるまいな。人間、ウマ娘を止めて別の種族に転生するしかない。今現在、そうすることが出来るのは悪魔しかいない。ただ、悪魔になると貴族社会が絡んで面倒くさい行事や貴族同士の交流会なんかもしなくちゃならなくなる。―――例外を除いてな」

 

Dへ意味深に目を向けるアザゼルに皆もDへ視線を送る。

 

「こいつは人間以外の種族に転生させることが出来る神滅具(ロンギヌス)も保有してる。それを使えばDと一万年以上は長生きで来て一緒に暮らせるだろうよ」

 

二度目の衝撃の事実がトウカイテイオーも含めて襲った。次にこう思いを抱いた。

 

 

 

―――そんな、凄いじゃないか!!

 

 

 

「なら、何の問題はないね!!」

 

「数十年じゃなくて一万年以上もトレーナーの手料理が食べられる・・・・・幸せだ」

 

「アザゼルさんもかなり長い年月を生きておられるのにあの若さ。でしたら・・・・・」

 

「長くずっと走ることも出来る・・・・・トレーナーさんとも一緒に」

 

「ふふ、引退後の楽しみが増えてしまったな」

 

「お兄様についていくついていくついていく・・・・・」

 

「そ、そんなに長い出来てしまって、私、迷惑じゃないでしょうか・・・・・?」

 

「長生きか・・・・・」

 

「そこまで生きてる自分が想像できませんね」

 

「確かにねー」

 

「確定事項は、マスターの子供に囲まれて生きているのは間違いなさそうです」

 

 

 

 

「なるほどなるほど・・・・・未来の旦那様と半永久的に暮らせるのかぁ」

 

「えっと、本当だったら凄いね?」

 

「うん、身近なところに不老長寿を得られる機会があっただなんて」

 

「長生きしすぎて逆に憂鬱にならないの?」

 

「毎日楽しく生きようとすれば楽しい生活になるかと!」

 

「急激に生活が一変するわけじゃないでしょ? 」

 

 

 

 

「あらまぁ~、長生きの魅力に魅かれちゃったみたいだねぇ」

 

「好きな人と長生きしたいのは誰だって思うけどね」

 

「そうなのです」

 

「私は半分吸血鬼なので人よりは長生き出来ますから嬉しいですよ」

 

「ふふ、ヴァレリーさんもそうだけど三人共。Dくんのこと好きだもんね?」

 

 

―――と、長生きしている未来の自分とD(トレーナー)と過ごす日常を想像した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はっ―――!?」」

 

「どうしました二人とも」

 

「いっくんを囲うどこぞの馬の骨ともわからない奴等の幸せな気配が感じた!」

 

「せっかく生き別れた人と再会できたというのに、また別の心配事が出来ました」

 

「構わないじゃないですか。あの子の幸せは何もあなた達だけではありませんからね。ほら、今はそんな事よりも反省文を書きなさい。まだ百枚も書き終わってませんわよ。お客様達の前で皇女あるまじき醜態を晒すなんて言語道断です。これが終わったら淑女としての立ち振る舞いを一から鍛え直しますからね」

 

「「・・・・・はい」」

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