中央のトレーナーになるには中央のトレーナーライセンスが必要不可欠。ウマ娘の知識を試される筆記試験に合格しなければならないのだが、地方のトレーナーライセンスより膨大な知識を求められ、筆記試験にも狭き門を潜らなければならない。
無事にその狭き門を突破することが出来れば晴れてベテラントレーナーの元で新人トレーナーとして、サブトレーナーとしてサポートする立場にもなれる。その間は雑用係の仕事が主なのでサブトレーナーの更に下で働き、ベテラントレーナーの指導ぶりを観察、盗んで今後のトレーナー活動に知識として吸収、虎視眈々と窺えることができる。
Dもその類に入るが、ベテラントレーナーからシンボリルドルフを引き継がせるために狭き門を潜る他なかったものの、無事に合格して新人トレーナーが三冠ウマ娘を担当にした話は今も良くが一割、悪くが九割と語り草にされてる。
なにも知らないトレーナー達からすればお零れを預かったラッキーマン。
前トレーナーを使い物にならなくした自作自演による引継ぎ。
卑劣な手段で全てを簒奪した忌み嫌うべきトレーナー。
と、陰口叩いて言っているトレーナー達は少なくなく、シンボリルドルフを引き抜こうとするトレーナーも少なくない。しかし、彼女は誘いを断り続けるどころか異を唱えた。
トレーナーのこと何も知らず勝手なこと言うな、と。
特に渦中の人物シンボリルドルフは真正面からトレーナーを庇護する言葉を高らかに言い放った。
―――彼を侮辱するという事は、私と元トレーナーに侮辱していることだ。
しかし、どれだけトレーナーのために言っても万人までは通じないのが世の常。自身の見解で物事を計り決める人間は必ずいる。
その日は駒王トレーニングセンター学園のトレーナー達が集っていた。通称トレーナー会議ともいうべき会議室で行い、日頃自分の目と耳、担当ウマ娘から聞いた話、今後の方針など学園側に報告や報告されることが主で、問題視されることがあれば学園側が調停をするために令を降す。
トレーナー会議にはもちろんトレーナーがいれば沖野や東条ハナもいる中、会議が進行して・・・・・。
「Dトレーナー。最近あなたの担当するウマ娘の首に首輪のような物を付けておるようですが、その意図はなんですかね?」
「・・・・・ウマ娘の強化装置。常に二倍以上の重力が身体に負荷を掛けさせている」
「二倍以上の重力? そんなもの学園側が正式に認めているのですか?」
「・・・・・使用許可、得てる」
「肯定! 堕天使の総督殿の技術提供と彼自身が被験者として何度も実験した末に完成した物。未来を見据えてゆくゆくは量産し、ウマ娘の新たなトレーニング用に使うため、先ずは彼のウマ娘達を体験させている! 使用の際の安全性は認められ使用許可を与えてる!」
「・・・・・使用、問題ある?」
「・・・・・ありません」
学園側が認めてしまっているならこれ以上は、異を挙げられないトレーナーは渋々と引き下がった。
「(全く嫌になるわね。相手を貶めることに熱心なんだから)」
「(ここにいる殆どがあの話を知らないし信用していない、その代償だから仕方がないけどな)」
三冠ウマ娘が兵藤家の生徒から性的暴力に遭った事件。そんな事実は学園側は絶対に表に出してはいけないし、そもそも天皇家の若者達が学園内で日常的に女子生徒や女教師相手にそのような愚行を犯し続けているなど、世間に知らされたら学園の存在が転覆ものだ。故に極力その事件を秘匿する他なく、事実を知っているトレーナーと理事長以外、ごく一部のトレーナーのみしか伝えられていない。
学園側がまだ警備員と女子寮の寮長でしかなかった者が、三冠ウマ娘を担当していたトレーナーの意思で引継ぎを頼まれたから彼をフォローしてほしいとも。
当然ながら真実を知らないトレーナー陣は、三冠ウマ娘を担当することになった素人当然の新米トレーナーに良い感情を抱かないし、何より元トレーナーを尊敬していたトレーナー達が多い。
「しかし、それで強化されたウマ娘は確実に強くなっているのですよね? 先んじて凄い性能の道具を利用し、どのレースにも一着を取り続けられたらそれを使用していない他のチームに対して不平等、不公平では? どうなのですかDトレーナー」
「・・・・・世の中、平等?」
「学園の施設や設備は皆、平等に使用していますよ」
「・・・・・中央程ではない、地方のトレセン学園にも言える?」
「っ・・・・・」
「・・・・・皆平等、だったらウマ娘全員、三冠娘になれる。でも、平等じゃない世の中、優劣が存在する。文句、ある?」
不公平を申し出たベテラントレーナーに紙袋を投げ渡した。それはシンボリルドルフ達が首に着けている物が入っている。
「・・・・・あるなら、使ってもいい。でも、それを使った瞬間、お前も不平等、不公平と言われる対象」
目の前にある魔法の道具を、ベテラントレーナーの周囲から視線が集まる。疑心のそれだ。
まさか、使うわけじゃないだろうな?
自分で言った手前、棚を上げるのか?
使うならあなたも軽蔑しますよ。
という―――視線を一身に受けて耐え切れずベテラントレーナーは、紙袋を掴んでトレーナーに強く投げ返した。
「だ、誰がこんなものを使うか! 私は、私の指導でお前に勝ってみせるぞこの卑しいトレーナーめ!」
「・・・・・挑戦は受ける」
ベテランのトレーナーとしての誇りは捨てないところだけはこの場に居るトレーナーも同じだ。正々堂々と目の前の軽蔑するトレーナーに打ち勝つこそが目的にしている者も多い。関係が嫌悪でも業腹であるが実力だけは認めているのだ。
「あの~・・・・・」
おずおずと挙手をする女性トレーナーへ視線が集まる。
「良好な関係なのはいいのですが、節度を持った方がいいと思うのですけど」
「・・・・・? 具体的」
「四六時中、ウマ娘と引っ付きすぎだと思います。 まだあなたが二十歳でも十〇歳の年頃の女の子に抱き着かれたりくっついているのは他のウマ娘にとっていい影響を与えるとは思えませんので」
確かに、と少ない他の女性トレーナー達も頷いていた。自覚しているトレーナーもある事を指摘した。
「・・・・・それ、俺だけ?」
その言葉にギクリ、と内心冷や汗を流す男性トレーナー達。申し出た女性トレーナーは気まずそうにポツリと言う。
「えっとぉ・・・申しにくいですが、見聞した限りでは他にも何人かおります・・・はい。中には恋慕を抱いているウマ娘や、トレーナーとデートしたというウマ娘がいるという話が担当するウマ娘から聞き及んでおります」
「・・・・・恋愛禁止?」
理事長に問うトレーナーに釣られて他のトレーナー達も視線を変える。全ての決定権は彼女にあるから、彼女の意見を聞く必要がある。秋川やよいは『恋愛歓迎』と文字が書かれた扇子を広げた。
「否! ウマ娘と男性トレーナーが恋愛関係であればウマ娘の向上力も高まるかもしれない。ただし、相手は年下のウマ娘以前に子供でありここはトレセン学園。度を越える接触やスキンシップは禁止!」
女性トレーナーが「具体的に言うと?」と質問した。
「レースに影響が出ない程度であれば恋愛を許可するッ!! しかし、先も言った通り年下の子供。結婚を前提に正式な恋愛を臨むなら、これから夏休み明けに設ける生徒会室の前に恋愛届の書類を設置する。そこにトレーナーと恋愛を認めるウマ娘の両親の名前と印鑑を押して提出してもらう」
ざわつく会議室。恋愛ならともかく結婚前提に付き合うということは相手の親御さんと会う必要があるのだ。そして一つの懸念が抱く。
「理事長、それを実際に設けたらウマ娘達が暴走しませんか。一般の生徒より身体能力が高いウマ娘が暴徒と化したら対処が困難です。何よりチームに所属していないウマ娘まで、恋愛届なるものを公認してしまえば大事になりますよ」
「解決! 恋愛届は中堅のトレーナー以上、これまで功績を残したウマ娘が所属するチームのみにする! さらにここに学園の秩序と平和を取り戻した警備員がここにいる! 彼を筆頭に生徒会と風紀員が暴走を抑え込んでもらう!」
「「「そこは丸投げか」」」
思わずトレーナーも、東条ハナと沖野、会議室にいる全てのトレーナーと一緒に異口同音で言って呆れた。
「理事長、それについて他にも確認したいことが。担当するウマ娘が別のチームのトレーナーに恋愛届の対象になる場合は?」
「自由! 公認!」
頭を抱える男性トレーナー達。さらにそんな男性トレーナーを憐れむ女性トレーナー達。東条ハナも恋愛でチームが崩壊しないことを心の中で祈るばかりだ。
「・・・・・という会議の内容」
いつもより遅くなった集合時間にようやく現れたトレーナーから聞かされた話は、ウマ娘達を沈黙させた。この沈黙は危険かもしれない。トレーナーは臨戦態勢の心構えで催促する。
「・・・・・質問」
「はい、トレーナーさん」
メジロマックイーンが挙手。
「その会議の内容はつまり、学園側がトレーナーと恋愛をする事を認めたという認識で構わないのですわね?」
「・・・・・後日、恋愛届、親族の判子、必要」
「何を考えてるんだこの学園は」
「・・・・・同感」
呆れるナリタブライアンとディープインパクト。それについてはトレーナーも同感であり頷いた。
『・・・・・』
ウマ娘から醸し出す異様な雰囲気、鬼気迫る気迫を醸し出す
「・・・・・トレーニング、始める」
その後。トレセン学園公認の恋愛事情からしばらく経ち、夏休みに突入した。家に帰省するウマ娘がいれば、寮に留まるウマ娘がいる中、チームシリウスは・・・・・。
「・・・・・行かない」
「そう言わずに、私の家に来てほしいのよ」
紅髪の悪魔の女ことリアス・グレモリーに誘いを受けて断ってるトレーナーを見ていた。夏休みに前の直前になってから何毎日現れて断られても、諦めが悪い彼女にチームシリウスも辟易している。
「ねぇー。トレーナーはボク達と一緒にいることが大切なんだからさ、断られてるのにどうしてしつこく誘うのさ。神経を疑うよ」
「これは私と彼の問題なのよ。少し邪魔しないでちょうだい」
「どのような問題だ? トレーナーさんと君との接点がないように思えるのだか」
「彼とは幼い頃、交流を交わしていたわ」
え、ほんと? トレーナーと彼女の関係は、トレーナーが首肯したことでそれが事実であることが判明した。
「・・・・・行く理由がない」
「家にはあなたに渡す予定のドラゴンアップルを使ったアップルパイがあるのよ?」
トレーナーの動きがピタリと止まり、次に物凄く悩み出す彼にウマ娘達が黙っていなかった。
「あ、それズルい誘い文句だ!」
「トレーナーさんの好物をチラつかせるなんて、さすが悪魔のやりくちですわ!」
「引き離そう」
「誘惑に負けないでお兄様!」
ウマ娘達が必死になって引き留めようと騒ぎ始め、リアス・グレモリーから遠ざけるとこの場に紅色のグレモリー家の魔方陣が浮かび上がって青年が出てきた。
「やぁ、久しぶりだねDくん」
「・・・・・サーゼクス・グレモリー」
「グレモリーってことは・・・・・」
「リアスの兄だよ。よろしくねDくんのウマ娘達」
朗らかに挨拶をしたサーゼクス・グレモリーは、徐に寄っては懐からアップルパイを取り出しトレーナーに差し出した。
「妹が渡す予定だったドラゴンアップルパイだよDくん」
「・・・・・」
現物を出されてしまっては、耐え切れずあっさりと食べてしまった。ショタ狐になると思いきや、小さな天使の姿になって満面の笑みを浮かべた。リアス・グレモリーも含めたシンボリルドルフ達がそんなトレーナーを直面して赤面し、身体を悶絶する。
「か、可愛いいぃ・・・・・」
「トレーナーさん、アタシらを萌え死にさせる気ですか・・・・・っ」
「ふふ、アザゼルから聞いた通り可愛いではないか。この瞬間の写真集だけでも十分、人気になるよ」
「同感ですが、どうしてお兄様がここに・・・・・?」
赤い液体が出る鼻を摘まみながら言うリアス・グレモリーの問いの返答は、トレーナーを写真に収めながら理由を告げるサーゼクス。
「言葉での説得だけでは彼を誘えないと踏んでね。彼の好物を持参して話に来たのだよ」
食べ終えたトレーナーは意味深にサーゼクス・グレモリーを見上げ、サーゼクスはまたアップルパイをどこからともなく取り出した。
「だが、その前にアザゼルが教えてくれた『止め時が判らないほど楽しいぜ』という事をしてみたくなってね」
トレーナーに突き出したまま、後ろへ後退するサーゼクス・グレモリーを追いかけるトレーナー。両手を伸ばし、アップルパイをちょうだいと全身で訴えながらトコトコと歩くトレーナー。サーゼクス・グレモリーが動きを変えながら下がり続ければ同じ動きをして好物を欲しがる幼い天使。
『~~~~っっっ』
超可愛すぎるんですけれどっっっ!!!!!
それ以上の言葉が吹っ飛び過ぎて見つからず語彙力が崩壊した一同だった。見ていて微笑ましいし、なんなら自分もやってみたい思いもグランドキャニオン並みに高くなって、楽しみたいウマ娘達を他所にサーゼクスは本当に止め時が判らなくなった頃だった。トレーナーがサーゼクス・グレモリーの脚に素早く抱き着いた。そのまま青年の顔を見上げ、潤った左眼で強請った。
「・・・・・アップルパイ、もっとちょうだい、サーゼクスお兄ちゃん」
「サーゼクスお兄ちゃん・・・・・喜んでぇええええええええええええええええええええ!!!!!」
鼻血でアーチを描く少女達と表情筋が緩み過ぎて、親類や友人には見せられない顔になったサーゼクス・グレモリー。大量のアップルパイをすぐさま用意してはトレーナーを大変喜ばせた。
「触りたい、抱きしめたい、でも、聖なる光でダメージが・・・・・!」
悪魔ゆえに聖なる光を放っているトレーナーに触れずにいてジレンマを起こしているリアス・グレモリーの肩を置くサーゼクス・グレモリー。
「リーアたん。今の彼は私達が触れていい姿じゃない。今の彼はまさにアイドル・・・・・YESエンジェルNOタッチの存在だよ」
「YESエンジェル、NOタッチ・・・・・」
「そう、尊大溢れる可愛さを晒す彼を見守るだけでも幸せなのだ。無遠慮に触れ、あの子の邪魔をして困った顔をさせるなど愚の骨頂」
「―――――」
「昔のあの子を知る者として、今はあんな表情を浮かべて食べる彼を心から喜びながら記録に残すのが最善だよリーアたん」
「記録に残す・・・・・そうですわねお兄様!」
何を言っているんだこの兄妹は、と思う会話であったがウマ娘達が全速力で寮に戻って携帯を取りに行ってしまっていたので、誰一人として二人にツッコム者はいなかった。
~~~それからしばらくして~~~
「・・・・・本題」
アップルパイを食べきったトレーナー同様にリアス・グレモリーも疑問符を浮かべる。
「改めて訊きますがどうしてここに? お兄様」
「うむ、魔王様からの提案でね。是非ともトレセン学園の夏合宿中の期間は冥界にあるレースに人間界代表ウマ娘として参加してもらいたい―――その内の一チームが彼のチームなのさ」
「・・・・・学園側、承認。条件、悪魔トレーナーの人間界のウマ娘への接触と勧誘の禁止」
「以上の条件を魔王様が受け入れたので彼も担当するウマ娘達にその話を伝える手筈なのさ。これはウマ娘達が多数決で参加の有無が決まり、強制的ではないので構わないから気軽に考えて決めてもいいことにもなっている」
ハッとリアス・グレモリーは自分と冥界入りするのを断り続けたのがようやく合点した。
「既に冥界でレースに参加するつもりだったから私の実家に来たがらなかったの?」
「・・・・・違う。兵藤家主催の大会、参加」
「え―――」
信じられないと目を丸くする。
「あなた、兵藤家に戻るつもり?」
「・・・・・違う。力試し」
「力試しって、そもそもあなたは参加できるの? 人型ドラゴンなのに」
「・・・・・人間、もしくは元人間、ハーフ、
愛花達と見た兵藤家当主の大会についての放送から二度目の放送で、また当主が大会の参加資格について発表したのだった。
―――二十歳以下の人間、もしくは元人間、異種族と人間のハーフ、年齢問わず
当主は元も含めて若手最強の人類を求めている。異種族に転生した人間、人間と異種族の間に産まれたハーフでも一度でも人間、人間の血を引く者ならば参加を認める旨をお茶の間に、全世界に言い放ったのだ。
後者なら参加できるとトレーナーの言外の言葉に納得する反面、神妙な顔で複雑な思いを抱くリアス・グレモリーはウマ娘達のことを振る。
「自分の担当のウマ娘を放って大会に出るの?」
「・・・・・口出し無用」
「そんなに大会が大事なの? あの二人、兵藤悠璃と兵藤楼羅を守るため?」
「・・・・・違う」
否定してからトレーナーは、待たせたシンボリルドルフ達に話しかけてウォーミングアップを一緒に始めた。結局はトレーナーの信念ともいうべき気持ちが強く固かったためにリアス・グレモリーとサーゼクス・グレモリーは冥界への誘いを諦めた。
「絶対にトレーナーが勝つからお祝いしないとね!」
「では、優勝した暁にトレーナーさんにもご褒美でも考えましょうか」
「トレーナーさんへのご褒美か・・・・・」
「マスターの好物はアップルパイであることはインプットしております」
「それはいつものことではないか。たまには別の趣向でするべきだ」
「うーん、それだと何がいいかな」
「そういやさ、トレーナーが喜ぶものってアップルパイ意外知らないよね」
「お兄様が喜んでくれることって・・・・・」
「悩みますぅ~・・・・・」
「ご飯のご褒美だったらいいではないか? 私は喜ぶぞ。トレーナーの手料理なら尚更だ」
「それはあなたの願望でしょ。逆にあなたが食べ尽くしそうでダメ」
想像難くない未来に残念がるオグリキャップ以外のウマ娘達が同感だと思った。後ろでそんな話をしてるウマ娘達を気にせず、ウマ娘とランニングしている男性トレーナーのチームとすれ違う。またウマ娘達の声が聞こえる。
「最近、見かけるようになりましたわね。ウマ娘と走るトレーナーさん」
「アタシらのトレーナーに感化されたんでしょ。指導するだけじゃなくてウマ娘と同じ事をして絆を深めたり、一緒に頑張るとかで」
「本当の意味で一心同体、人バ一体になって共に切磋琢磨をするという考えは素晴らしいことだ。その発端が私達のトレーナーだと思うと誇らしい」
「だね!」
すると、背後から猛スピードで走ってトレーナー達を追い越す・・・・・いや、トレーナー沖野が担当ウマ娘達に追い回されていた。
「ぜぇっ、ぜぇっ、もう、か、勘弁してくれぇっ!」
「おらぁ! トレーナー、もっと気張って走れ! だらしないぞぉー!」
「どーも、シリウスの皆とトレーナー。先に失礼するぜ」
「夜に寮長室に行くからね」
「「失礼しま~す!!」」
「皆さ~ん、トレーナーさんが可哀想ですよぉ~!」
竹刀を持って振り回すゴールドシップを先頭に、スピカのメンバーがすれ違う。シンボリルドルフに沖野へ指しながら言った。
「・・・・・あれ、誇れない」
「チームそれぞれという事で、トレーナーさん」
ちゃんちゃん。
―――某所。
「ヴァーリ。兵藤家の大会に出るって本当に?」
黒い着物で身を包む、黒髪に黒い猫耳と臀部辺りから二尾の尾を生やす女性がダークカラーが強い澄んだ青色の瞳の女に訊ねた。
「出るよ。私の宿敵の赤龍帝も参加するという話も聞いたからね」
ヴァーリの他にも何人かの人物達が周囲にもいた。
「俺っちも出たかったなぁ~。兵藤家の当主様も意地悪なもんだぜぃ。人間以外にも強い奴らはいるというのによ」
頭の後ろに両手を組んで言う軽装の武具を身に着けた青年に諭す声が投げられた。
「人類最強の一族の当主ですから、やはり世界に人間の強さを見せつけたいのでしょう」
「お兄様は参加なさらないのですか?」
紳士的な風体でスーツにメガネという格好の金髪の美青年に魔法使いの衣装に身を包んだ小柄な金髪の美少女の質問は肯定で返した。
「これから私と美候、黒歌は冥界に行くことになりましたからね。任務が無ければ参加していたでしょう。ルフェイはどうします?」
「オーフィスちゃんと一緒にいることにします」
「わかりました。では、ヴァーリ。行ってきますが大会の途中で捕まらないようにお願いしますよ」
「それはそっちもだろう。美候と黒歌が退屈だからと暇潰しに何か仕出かさないようにな」
「ちゃんと目を光らせておきます」
「おいおい、それはしょうがないってもんだぜぃ」
「暇なのは暇なのにゃー」
―――???
「二十歳以下だけだと参加資格に引っ掛かるが、
「人類の若手最強を決める大会。人間としてどこまで行けるか挑戦するために集まった俺達からすれば、この催しは無視できないな」
「じゃあ、参加するんだな?」
「ああ、あわよくば今後に見据えて間近で調べよう。俺達の敵に成り得る者達をね」
―――兵藤家
「楼羅、絶対に参加してくれるよね。いっくん、優勝するよね」
「信じましょう。お父様に頼み込んで参加を出来るようにしてもらったのですから」
「おじ、お兄様達も参加するのかな」
「元とはいえ、当主の方が参加するなど―――と今お怒りのお父様が反対しておりますが」
「親父、俺も参加したいってば! いいだろ!」
「何度言えばわかるバカ者が! お前が出たら大会どころではなくなるわ! 最悪一方的な結果になってしまって若い者達の実力が発揮せん!」
「そこは上手く手加減するからいいだろ。強い奴だけ残してそうじゃない奴は早々に退場してもらうだけなんだからよ」
「この愚息が・・・・・! もういい。いい加減貴様と平行線の話し合いはうんざりだ。そこまで言うなら条件付きで参加を認めてやる・・・・・」
「お、なんだ? 優勝してこいって言うならその条件でいいぜ?」
「逆だ。貴様がもしも決勝まで勝ち残っても、敗北したら当主になってもらうぞ。今まで兵藤家の支援を受けて好き勝手にしてきたのだ。これぐらいの条件は呑んでもらう。それが嫌ならもう貴様らの援助はしない。あとは勝手に生きるがいい」
「なっ・・・・・!!」
「特別に貴様の名をエントリーに加えてやる。それで満足だろうバカ息子」
「よくねぇよっ!? 負けない自信はあるが、援助なしでどうやって世界中旅することが出来るんだよ!」
「働いて稼げばいいだけだ。世界中の人間は当たり前にそうしている。言っておくがこれは決定事項だ。異論は認めん。精々負けないよう大会に勝てよ」
「お、おい待てよ親父! くそったれ、絶対に負けれない戦いになっちまった・・・・・!」