かなりカッコ悪いポーズをした末に両人差し指を合わせた二人を中心に眩い光が周囲を照らした。一体何が起きるのか分からない兵藤一香は警戒して待っていると、二人がいたところには一人しか立っていなかった。
赤と白を基調にした龍を模した体の各部分に緑と青の宝玉がある全身型鎧を着込んだ者しかいなかった。
『アザゼル総督、あれは・・・・・』
『くそったれ! なんだそれは!? 今まで二天龍が一つになった事例はない!! 和解することが無いと思われていたドラゴン同士がカッコ悪い変なポーズをしたと思えば合体・融合だと!? なんだよそれ!! 物凄く気になる事をしてくれるじゃねぇか!! 後で調べまくってやる!』
『あれは、人間同士でも可能なのか・・・・・?』
『もし人間同士でも合体・融合できるならば、これは新しい人類の可能性をこの瞬間を目の当たりにしていることになる』
激しく興奮するアザゼルと静かに高揚する兵藤源氏と式森和真。
「・・・・・あなたはどっち? それとも何者かしらね?」
≪二天龍が合体・融合したこの状態の名は天龍と呼んでもらう。そしてこの鎧の名は『二天龍の鎧』だ≫
「男と女の声が重なった声を発するのね。不思議な光景を見せてもらったけれど、実力の方はどうかしらね?」
そう言ってまた封印しようと魔方陣を展開した兵藤一香より早く、姿を掻き消して彼女の目と鼻先まで移動した。
「っ!?」
≪遅い≫
『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『Boost!』『
倍加した力で殴り飛ばされる兵藤一香を追いかけながら・・・・・。
『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』『Divide!』
兵藤一香の力を半減していく。二つの
「舐めないで!!」
展開する数多の魔方陣から式森和真でも認知したことが無い種類の魔法がオンパレードした。しかし
『
宝玉からそんな掛け声がした瞬間。全ての魔法攻撃が天龍から逸れて兵藤一香の方へと『反射』した。
まさかの反射された魔法が自分のところに戻ってくることを予想だにしていなかった兵藤一香は全力で防壁魔法を張って防ぐ最中に、真後ろに開いた空間から飛び出す天龍に気付いた時は自身が張った防壁魔方陣がもう一人の天龍に
接近戦は分が悪すぎると判断した兵藤一香は兵藤誠の助力を求めんがために戦線離脱を試みる。追撃してきて縦横無尽に赤と白の光の軌跡を残しながら衝突しつつ駆け回る天龍と魔法や魔力の合戦を繰り広げる。
そこへ―――。
「お母さん!」
兵藤一香に向かって叫ぶ一人の少年がいた。その少年に兵藤一香は叫んだ。
「来てはダメ!! 逃げなさい!!」
「でも!」
「お母さんは大丈―――!」
≪天龍相手に隙を見せる行為は死だぞ≫
当然、隙を作った相手に手を緩めず空気に圧力をかけて殴り飛ばすことで彼女を地面に叩きつけた瞬間。二天龍も地面に落ちて兵藤一香の腹部と顔面に膝と拳を突き付け、二人を中心にクレーターが出来た。更に畳かける曝け出す天龍の胸部の龍の頭部を彷彿させる口から巨大な魔力の塊を瞬時で生み出して兵藤一香にぶつけた。
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!
「―――ァッ!?」
二天龍の魔力の一撃をまとも食らい、ダメージ判定で兵藤一香は全身が光に包まれてフィールドから脱したことで決着がついた。
『ただいま兵藤一香のリタイヤが確認しました! 兵藤一香を倒した挑戦者はD選手とヴァーリ・ルシファー選手です!! ですが、ここでお伝えすることがあります。本来ならば一人だけ兵藤誠、兵藤一香のどちらかを倒した者が優勝者なのですが、ひとりに合体・融合した二人が同時に倒した、という結果に当主は予定通り勝ち残った四人が決勝戦で優勝争いをする事に決めました! ですので残りの決勝戦進出の枠はあと2つです!』
二人で一つになり兵藤一香を倒したからか、運営側はどちらが倒したかなど判別できず二人を纏めて勝者にする事で決勝戦で戦わせようという事に決めたのだろう。
「・・・・・一香が倒されたか。ヴァーリちゃんはわかるが、Dってやつは一体どうなんだ? 必ず無念を晴らすぜ一香!」
一人兵藤誠は火炎輪を超えることが出来た者と一対一で戦っていた。
「というわけで勝ちに行かせてもらうぜ」
「簡単に負かされるつもりはないですよ」
肩に槍の柄をトントンと叩く一人の青年と言葉短く交わした後で地形を変える凄まじい戦いを繰り広げた。
現実の世界に戻った天龍は人類最強の一人を倒した功績に湧き上がる観客の声を一身に浴びた矢先、放送席から飛び出して来たアザゼルが二人を拉致、そのままどこかへと連れ去った。
「どういうことなのか説明しろ。どうしてお前達が一つになったのかを。あの奇妙奇天烈なポーズをしたら他の連中でもあんな風に合体か融合できるのか―――二つの
≪五月蠅い。離れろ。解除する≫
そう言う天龍が直後にDとヴァーリ・ルシファーに分離して元の二人に戻った。
「中々愉快な体験だったよD。これならグレートレッドと戦える戦術が増えるね」
「・・・・・時間制限付き」
「そうなのか。限られた時間があるなら隠し玉にするべきだね。ところでアルビオン。新しい力が覚醒できたそうだが?」
『ああ、随分と懐かしい能力をな。生前私が有していた
『俺もだ相棒。あらゆる物理や魔法、防壁結界もすり抜ける
結果は上々と言う事実を明かす二天龍に新たな力を得たヴァーリ・ルシファーは次の目指す方針を定めた。
「次はアルビオンを現世に召喚する方法を編み出す。一緒に戦ってみたいからな」
『本当にそんなことが可能なのかと疑ってしまうが、Dの机上の空論が現実に引き起こしたからには信用するべきかもしれんなドライグよ』
『ああ、これは俺達の宿主達の頑張り次第で―――』
ここでさりげなく爆弾発言を投下するD。
「・・・・・オーフィスの力、必要不可欠」
「なるほど、オーフィスか・・・・・。天龍を現世に召喚する以上は私達の魔力では不可能だとすると、無限ならば・・・・・納得できるな」
『白いの、案外と近いかもしれんぞこれは』
『ああ、赤いの。今後が楽しみだ』
すると、Dの宝玉からドライグのものではない声が聞こえだした。
『ドライグとアルビオンが復活するならば、是非とも戦わせて欲しいな』
『勝負勝負!』
『生身の身体でガチンコ勝負が出来るなんて何時ぶりだ!』
『俺も戦わせろや! そんな話を聞いて黙っていられねぇぜ!』
《興味深い。その時が来るのを待っている》
『ふふ、本当に信じ難いことを軽々としてのける赤龍帝がいますね』
《お、俺は遠慮する。だって怖いし・・・・・》
ドライグ以外のドラゴン達がワイワイと騒ぎ始め出し、アザゼルの眉根が寄った。
「本当にお前は異常な奴だな。邪龍を探し回っては甦らせるだけでなく宿すなんてよ」
「・・・・・賑やか」
「いつか邪龍達とも戦ってみたいぞD」
「・・・・・戦わせる」
口約束と言えどもその未来はいつか必ずやってくるとヴァーリ・ルシファーは確信した。早くその時が来るのを待ち遠しくもあり、この大会が終わったらオーフィスと話し合ってみようとも決意した。
「んで、どういう原理で二人は合体したんだ? 魔法か? 技法か?」
「・・・・・詳細不明。向こうの世界、兵藤一誠とヴァーリ・ルシファーがしていた。方法伝授、真似ただけ」
「何やってんだもう一人のお前等は? まぁいい。次の質問だ。その合体方法は他の奴らでも可能か?」
「・・・・・可能。ただし、同じ身長に合わせ同時にポーズを完成する。しないとおかしな姿になる」
「どんな姿に?」
「・・・・・様々、太ったり、痩せたり、豆みたいに小さくなったり、失敗しなくても合体する者同士の姿、千差万別」
本当におかしな姿になりそうだなそりゃあ、と頭の中でメモるアザゼルはDから詳しく教えてもらい大会が終わったら仲間にやってもらおうと悪戯心が芽吹いた。
「クロウ・クルワッハと合体・融合するとどうなるか興味あるな」
「・・・・・逆にまた合体、クロウ・クルワッハと勝負」
「あの邪龍が喜々として戦ってくるのが目に浮かぶな。因みに二人以上、もしくは合体した者同士がまた合体するとしたら成功するのか?」
「・・・・・試したことがない。多分、危険」
「ふむ、その辺はまた後日という事でいいか。教えてくれてありがとうな」
気が済んだアザゼルが踵を返すと、目の前に兵藤源氏が佇んでいた。
「話は終わったか」
「おう、有意義な時間だったぜ。終わったら二人のようなことが出来るのか試験してみるつもりだ」
「結果が出た次第にその資料をこちらに回してもらってもよいか」
「構わないぜ。くくく、自分の孫がとんでもない隠し玉を持っていたとは驚いただろう。人間同士でも合体できる示唆をしてくれたんだからな」
「・・・・・そうだな。だが、一歩間違えれば犯罪をする者がその方法を使用して悪事を働くかもしれん。それを防ぐ方法を考える必要がある」
最悪のことも考慮していた祖父に対して首を横に振ってその必要は無いとDは示す。
「・・・・・一般人、不可能」
「だとよ当主殿」
「兵藤家、式森家の者が一つになるとするとどうなる」
Dは「可能」と答えた。それ以上の追求をせずアザゼルに乞う。
「・・・・・わかった。アザゼル殿、資料の方はよろしく頼む」
「わかったよ。その際、酒を飲み交わそうぜ。お前さんの孫と一緒にな」
飲めるのか? と兵藤源氏からの視線を受け「わからない」と答えるD。
「んじゃ、戻るかね。試合の方はどうなっていることやら。大方、誠の奴が勝ち残って良そうなんだがな」
と述べるアザゼルの予想は正解だった。四人の耳に入る一際に盛り上がる湧きだした歓声と共に聞こえる放送。
『何ということでしょうか!! 一体誰が予想していただろうか! 大会が始まって一時間も経たずに残りの決勝戦に進出する者達が決まりました! 早い、早すぎるぞ!? 残りの二枠を掴み取った挑戦者は―――元兵藤家当主の兵藤誠と若き挑戦者、兵藤誠輝です!』
「―――――」
後者の名を聞いた途端。Dから怒気が感じ始め、アザゼル達は気付いていながらも声を掛けなかった。
『次の決勝戦を行うステージのご用意をするため、少々お待ちくださいませ! 決勝戦に勝ち残った挑戦者達は会場の中で待機してください!』
と、そう言いつつも数人の式森家の魔法使い達が大規模な魔方陣から特大ステージを召喚して設置した。
『はい! お待たせ致しました! これより決勝戦を始めたいと思います! まずは勝敗のご説明を致します! ルールは簡単です。これからこのステージの上で失格基準である場外へ落とされるまで勝ち残った挑戦者達は戦い続けてもらいます!』
「シンプルだな」
「分かり易くていいだろ?」
『それでは勝ち残った挑戦者の皆様、ステージに上がってください!』
「・・・・・急かす」
「定めた時間より早く終わってしまったのだからな。やることが無くなってしまってるのだ」
ごめんなさい。と謝罪するDは全身型鎧を装着しヴァーリ・ルシファーとステージの方へ赴き、会場にその姿を現す。兵藤誠と兵藤誠輝もステージに上がり、両者対峙し合う。
「一香を倒した二天龍の力を見せてもらおうか。誠輝、ここまで来たからには全力で行け」
「分かってるお父さん。俺も世界中を旅して強くなったんだ。簡単には負けない」
「D、どっちをやる?」
「・・・・・」
兵藤誠輝へ指差すDを、ヴァーリ・ルシファーは兵藤誠と戦うことに決めた瞬間。
『最後に誰が人類最強の称号を得るのかおかしくはありません! ここまで勝ち残った挑戦者の名を軽くご紹介いたします。まずは元兵藤家当主、兵藤誠輝! その強さは兵藤家が誕生して以来、過去や現代、未来において最強クラスの実力を誇っており、この大会に勝てば晴れて兵藤家当主に返り咲くことになるでしょう! 続いては兵藤誠輝! その出生は兵藤誠と式森一香の子供であり決勝戦まで勝ち残ったその実力は疑いようがないでしょう! 兵藤家と式森家の血を受け継いだその力は今改め世界へ示さん! そして更には! この二人が人間の血を引きしハーフと元人間達―――最強のドラゴンをその身に宿し二天龍なり! ヴァーリ・ルシファー! 今は亡き先代魔王ルシファーの血縁者にして、その身に宿すのは二天龍
場が突然に静まり返った出来事が起きた。手を突き出し、極太の魔力を放送室へ放ったのだ。―――Dが。
「ポッくん!」
「「「ポォ」」」
放送室に直撃するかと思われた攻撃が軌道を変え、何かに吸い込まれ消失した。それがどういうことなのか、こうなる事を予測して事前に対処していたことと、初めからそうするつもりでいた―――そう考えに至ったDが鎧の中で怖い形相で放送室にいるアザゼルを睥睨した。
「・・・・・約束、破った」
『いつまでも隠し通せることじゃないだろD』
「・・・・・この後、諍い」
『お前なら問題ないだろう? いつも通り周囲を気にせずに―――』
他人事のように飄々とした態度で言うアザゼルに何かが切れた音が聞こえた。
「―――ふざけるな。俺の平穏がこの瞬間、お前のせいでなくなった。約束破ったお前なんか信用できない。堕天使の陣営、離反させてもらう」
「なら私と一緒に来るか?」
「・・・・・学園、放っておけない」
誘って断られてしまい、残念、と軽く肩を竦めるヴァーリ・ルシファー。不機嫌そうな面持ちで兵藤誠達へ振り返った。
「一誠・・・・・だと? 死んだ筈じゃ・・・・・」
「・・・・・っ」
『・・・・・始めろ』
『え・・・・・はっ、あ、はいっ! そ、それでは決勝戦最後の戦いです! 試合開始!』
こうして力の大会最後の試合は兵藤源氏に催促され決勝戦が始まったのであった。