ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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貞塚玲子と対面

人類の若手最強を決める力の大会から数時間が経過した。Dの兵藤家、式森家、両家の元当主の血筋であることも世間が騒ぐ材料にもなるのに伝説のドラゴンを宿し、元当主の親を打破した実力も含めて様々な話題の中心となっていた。

 

もっと詳しい情報を求めるマスコミやメディアはあの手この手で探り入れようと始める。

 

―――ウマ娘の取材を介してさり気無くトレーナーへ取材を試みる。

 

考えうる中で一番当たり障り方法だと思った取材の者達は学園にアポを取ろうとしたが―――。

 

「チームシリウスに対する取材はしばらくご遠慮させていただきます」

 

天皇家からガチの圧力を掛けられて、取材の者達は今後一切トレセン学園に来ようがチームシリウスの接触は禁じられた。もし破る者がいようならば、どうなろうと自己責任として課せられる。病院送りにされようと学園もトレーナーも一切の責任を負わないということだ。

 

しかし、天皇家とマスコミやメディアからの接触を厳禁されているが、そうではない他の者達は無遠慮に接触してくる。それはトレーナーも察していて諦観もしていたことでもある。

 

「さて、皆持ったな?」

 

大食堂にてトレーナーの優勝の祝杯をする交流あるトレーナーやウマ娘、トレーナーに助けられた縁で知り合った者達も含め、大勢が参加してコップを持った。音頭取るシンボリルドルフが進行を進める。

 

「長らくは語るまい。人類の若手最強が駒王トレセン学園のチームシリウスのトレーナーを祝い、ただ乾杯をしよう。トレーナーに優勝の祝杯の言葉を送る。おめでとうございますトレーナー」

 

『おめでとう(ございます)!』

 

「・・・・・ありがとう」

 

「それでは皆。思う存分に飲んで食べよう。乾杯だ」

 

『かんぱーい!』

 

片手では数えきれないトレセン学園の生徒達の異口同音の声はとても明るく、祝うために生徒達自身が腕に縒りを掛けて作った料理が盛りだくさんテーブルに置かれていた。

始まった立食パーティ。生徒同士で盛り上がり、美味な料理に手を出して食べるウマ娘や一般の生徒達とトレーナー陣。

 

「トレーナーさん、ボーノだよ~」

 

そう言って椅子に座っているトレーナーに大きな皿にケーキを持って来た黒鹿毛のツインテールのウマ娘。名前はヒシアケボノ。視線は見上げないといけない身長180センチとトレセン学園にいるウマ娘の中で最も大きいのではないか? とトレーナーの間で話題になったことがある。

 

同時に。黒鹿毛の髪で青い瞳のウマ娘も来た。

 

「あなたの好物のアップルパイではありませんが、こちらも食べてみてください。ボノさんと一緒に作りました」

 

「・・・・・食べる、ありがとう、ヒシアケボノ、エイシンフラッシュ」

 

「うん!」

 

「はい」

 

微笑む二人のウマ娘達もまた兵藤家の若い男子生徒達に強姦されかけたところをトレーナーに助けられた縁がある。それから時々ではあるが栄養士として料理やデザートを作れる二人と共に栄養やカロリーなど調整、試行錯誤して調理する間柄になった仲で、トレーナーの好物のアップルパイを食べるとどうなるのかも知っている。既に食べやすく取りやすく切り分けられていたケーキから一つフォークで刺して丸々と口の中に入れて咀嚼するトレーナーは、口の中で広がる林檎の甘味を感じると身体を小さくし、九つの尾を伸ばし、頭から耳を生やして美味しそうに笑む。

 

「・・・・・美味しい」

 

「「―――っ」」

 

微笑を浮かべるトレーナーを見て釣られて笑顔になるヒシアケボノとエイシンフラッシュ。

 

「うふふ、よかったー! さぁさぁ、もっと食べて食べて! はい、あーん」

 

「喜んでくれて何よりです」

 

小さく切ったケーキを差し出すヒシアケボノと嬉しく感じていたエイシンフラッシュ達の背後から妖しい影が迫って来た。

 

「トレーナーさ~ん!」

 

「アカン! やっぱり狙っておったか!」

 

「トレーナー、今すぐ元の姿に・・・・・!」

 

焦りの声が聞こえてきて、なんだ? と思った次の瞬間。大柄でおっとりとしたウマ娘がヒシアケボノの後ろから現れ、目の前まで近づいてきた矢先にひょいっと持ち上げられた。

 

「ほ~ら、高い高いでちゅよ~」

 

「・・・・・? ・・・・・? ・・・・・?」

 

このウマ娘もまた兵藤家の若い男子生徒から助けた一人だが、どうして自分を持ち上げるのか心から不思議そうに見下ろした。

 

「クリークッ、自分、何しとんねん! 相手は兵藤家の当主の孫やで!? 失礼にも程があるやろ!」

 

「だって、大人でも子供でもお世話ができる理想的な人が近くにいるから嬉しくて~」

 

「嬉しくて~ではないねん!」

 

「尻尾もモフモフして柔らかい。毛繕いもできるなんてトレーナーさんは最高です。一生お世話したいです。していいですか?」

 

むぎゅっと母性溢れる豊かな胸を押しつけるように、トレーナーを抱えるウマ娘の名はスーパークリーク。

 

「・・・・・タマモクロス、無礼講」

 

「いや、自分。クリークに甘やかせとったら何されるかわからんで?」

 

「・・・・・被害者?」

 

「んまぁ・・・・・似たもんやな」

 

八重歯と青い球体型の髪飾りと赤のチェックが入った青色のカチューシャがトレードマークのウマ娘。オグリキャップと同じ芦毛。小柄な体格で常に関西弁で話すタマモクロス。被害を受けたわけではないが、自分にとって嫌なことをトレーナーにもするので、タマモクロスは相手が相手なのでスーパークリークを止めに来たのである。

 

「クリーク、トレーナーを離してやってくれ。今日の主役を独り占めしてはいけないんだ」

 

「う~ん。残念だけどそう言うことなら」

 

「何が残念なんねん」

 

トレーナーを降ろしたスーパークリークを連れて二人が離れたところで、ヒシアケボノがケーキを刺したフォークを突き出して来た。

 

 

ワンホールを食べ尽くしたトレーナーの元に涼子達が祝いの言葉を送りに来た。その後、神妙そうな面持ちで訊いてくる。

 

「色々と知らされちゃいましたけど、大丈夫じゃないですよね?」

 

「・・・・・面倒」

 

「ですよね。となると、他の同級生や先生方の反応も気になるところだね」

 

「助けてくれた人が元とは言え兵藤家だったなんて―――ってショックを受けるわね」

 

「手のひらを返すことも不思議じゃないかも」

 

「あり得る。信用と信頼していた分の反動が大きいほどに、ね」

 

「そうならないように私達がフォローして回る必要性があるね」

 

何も知らないでトレーナーを蔑むのは許しがたい六人の少女達の会話は、ライスシャワー並みの小柄な女性が『理事長参上!』と書かれた扇子を広げながら告げる。

 

「心配無用! 夏休み明けに全校集会にて彼のことを私自ら説明する!」

 

「・・・・・納得、できない」

 

「直ぐに受け入れる筈がないのは承知! しかし、今までの君の活動と行動は誰もが認知している。家柄や出生など関係ないと紳士に伝えてみせる!」

 

妙に息を吐く秋川やよい。止める理由もなければ好きにさせるだけ、そう意識しているトレーナーは鹿毛の髪の色は毛先にいくにつれて茶褐色からピンク髪になるグラデーションカラーになっているウマ娘に、澄んだ青い瞳をキラキラ輝かせながら手を取られていた。

 

「トレーナーさんっ、天使のお姿は本当に素敵でしたわ! 私を何度も助けてくれたいただいた時を思い出してしまい、胸がときめきましたですの」

 

「・・・・・カワカミプリンセス、タイキシャトル同様、騙されやすい、襲われやすい」

 

「そこは私の王子として気の利いた言葉で言うものですわよ!」

 

頬をフグのように膨らましてプリプリと可愛く怒るので、頭にまで伸ばした手を置いてポンポンと触れるとお気に召さなかったようで異を唱えて来た。

 

「もう! 私を子ども扱いにしないでください!」

 

「・・・・・? 大人?」

 

「むぅ、年齢的を指摘されるとまだ未成年なのは事実なので否定できませんが、精神面で言っていますの」

 

「・・・・・大人、心、寛容、素直に受け入れる」

 

「あなたがそこまで仰るならば、仕方ありませんわ。好きなだけ撫でても構いません。それが姫たるものの心の寛容ですわ」

 

胸を張ってそう言ったカワカミプリンセスはトレーナーに頭を少しの間だけ撫でられた。

 

 

それから―――。

 

「・・・・・お疲れ様です」

 

淹れたコーヒーを持ってきてくれたのは長い漆黒の髪を伸ばしている黄土色の瞳のウマ娘だ。漆黒の髪に白いアホ毛、前髪の異様に長い三日月のように曲がってるのが特徴―――マンハッタンカフェが来た。

 

「フルーティーな甘みが強いコーヒーです」

 

「・・・・・ん。マンハッタンカフェ、『友達』も来てる」

 

「ええ、一緒にお祝いをしたくて来ました」

 

虚空に視線を送るトレーナーを相槌するマンハッタンカフェ。『二人』しか見えない何かがいることを、他の者達が目を凝らしtも決して見えない。

 

「あなたの『友達』は元気ですか」

 

「・・・・・元気」

 

甘いコーヒーを飲む。じー、と何かを求めているそんな視線を送ってくるウマ娘に小首を傾げる。

 

「・・・・・なに?」

 

「トレーナーさんは良くも悪くも惹きつけているのに、悪いほうから何故か襲われないのですね」

 

「・・・・・多分、俺がドラゴン」

 

「なるほど、何かに感じ取って近づけず恐れていると。まぁ、良いほうもそれで近づけないでいるみたいですが、友達は問題なさそうなのが不思議です」

 

トレーナーは不意にマンハッタンカフェへ腕を伸ばして―――彼女の傍、虚空、見えない何かに触れる仕草をする。

 

「・・・・・トレーニング中、よく顔に出してくる」

 

「それは、ずるい・・・・・。・・・・・あの、訊いてもいいですか」

 

『お友達』に向けていた視線を、瞳をトレーナーに変えてくるマンハッタンカフェと視線を合わす。

 

「チームシリウスは、部員はまだ募集中ですか?」

 

「・・・・・入りたい?」

 

「・・・・・はい」

 

コクリと自分の気持ちを打ち明けたマンハッタンカフェは、トレーナーから入部届の紙とペンを手渡され、自身の名前を書き込んだことでチームシリウスの仲間入りになった。

 

ドン!!

 

次の瞬間。トレーナーの背中に『お友達』に叩かれた。それから『頼んだ』―――と、声でも言葉でもない彼女の『お友達』の感情に、触れられた気がした。

 

「・・・・・あの子に、追いつきたいです。追いつけますか?」

 

「・・・・・今のマンハッタンカフェ、『お友達』の影。でも、追い越そう」

 

「私があの子の影・・・・・」

 

「・・・・・『お友達』は光、マンハッタンカフェは影。・・・・・光が差す方向によって影は長くなる」

 

その言葉に足元を見れば、今は点の状態の影になっている。それが長くなるとなれば・・・・・。

 

「あの子より速く走れることができる。・・・・・そういうことなんですね」

 

「・・・・・光の速度、光速は文字通り速い。簡単じゃない、それでも?」

 

「はい・・・・・あの背中に追い越したいです」

 

新たなメンバーがチームシリウスに加わった、漆黒の長髪に触れて撫でると心地良さそうに目を細めるマンハッタンカフェ。

 

しかし、そんな時だった。

 

「ト、トレーナーさ~ん!!」

 

祝杯の場に焦燥の叫びを響かせた声の者は、真っ直ぐトレーナーの元へと駆け寄った。秋川やよいの秘書、たづなである。

 

「・・・・・なに?」

 

「あの、トレーナーさん宛のお電話が殺到して・・・・・」

 

「・・・・・取材、拒絶」

 

「いえ、あの、それもありますが取材の他にも様々な所からお電話が入りまして・・・・・中には縁談、お見合いのお誘いが来ておりまして。是非ともお会いしたいと。取材の話ではないので対応に困ってます」

 

賑やかだった場の空気が冷たくなり静まり返る中、トレーナーは子首をかしげた。

 

「・・・・・お見合い?」

 

「はい、如何致しますか?」

 

自分と結婚を望んでる赤の他人の家族、と最初に思い浮かべ、そんな相手と順風満帆に過ごすことができるのかと疑問符が頭上に浮かぶ。

 

「・・・・・知ってる、名前ある?」

 

「えーと、有名な人の名前を挙げさせてもらいますと、サトノダイヤモンドさんのご両親からです」

 

「えっ!?」

 

知ってる名前どころか、実の家族が娘と縁談を設けようとしている事実に驚き、次に顔を真っ赤になった。しかし、それだけではなかった。

 

「それと縁談やお見合いと関係なく、トレーナーさんにお会いしたいとチームシリウスのウマ娘のほぼ全員の親御さん達から連絡が届いております」

 

えっ!? と驚く担当ウマ娘と他人事のように聞いていたトレーナー。

 

「・・・・・理由」

 

「もしかすると、トレーナーさんが現当主のお孫さんということでご挨拶したいのかと」

 

そういうものなのか? と自分の担当ウマ娘達へ目を向ける。当のウマ娘達は当惑していた。

 

「・・・・・会うべき?」

 

「そうですね。娘さんを信用して預からせているものですから。一度ご挨拶をしにお会いすべきかと」

 

そういうものか、と少しの間考え込んだトレーナーは小さく頷いた。

 

「・・・・・会う」

 

「では、ご挨拶をしに参るという事でよろしいですね?」

 

「・・・・・ん」

 

夏休みで家庭訪問をすることになった。が、挨拶をしに参るという旨を伝えられたウマ娘達の両親達はおっかなびっくりで、当主の孫にそんなことさせるなんて恐れ多い! と返事をした。こちらから学園に向かい参るという事になったことを改めて伝えられた面々は気が気でなかった。

 

「賑やかじゃのDよ」

 

川神鉄心も場に現れた。

 

「D。とうとう世界中におぬしの存在が知れ渡ってしまった。不本意じゃろうが、流れに身を任せるしかないことを解っておるな」

 

「・・・・・」

 

「そのついでに川神院へ来るがよい。ルーや釈迦堂、こゆきとみやこも会いたがっておるぞぃ。待っておるからな」

 

いつか必ず、そう想いを込めて頷いた時であった。トレーナーは突然目の前で光り輝く現象に左眼を細め警戒した。

 

「―――あの時の子供が大きくなったものですね」

 

そう言って光の中から漆黒の長髪と黒い瞳、背中に後光を浮かばせている絢爛な着物を着た女性が姿を現しながらトレーナーを見つめた。

 

「・・・・・天照大御神」

 

「え、天照大御神って・・・・・」

 

「・・・・・日本の神、伊邪那岐、伊邪那美の娘、太陽神、女神、本人。初代天皇でもある」

 

そう説明したトレーナーの話は、聞こえた者達を愕然とさせてはその場で硬直させるのに十分過ぎた。

 

「か、神様が目の前に・・・・・っっっ」

 

「そう畏まらなくてもよいです人の子らよ。私は彼と話をしに参っただけですので」

 

「あ、あのっ。席を外した方がよろしいですか?」

 

「構いません。私達の事を気にせずいてください」

 

「・・・・・無理な話。神の手前、敬意と畏怖」

 

それならば、とトレーナーに言い返す。アマテラスはトレーナーの手を掴み、転移を発動した。

 

「しばしの間、この子を借ります」

 

と、トレーナー以外の面々に告げた後にアマテラスはトレーナーと共にどこかへと光と共に消失した―――。そして、連れられた場所は第二の兵藤家本邸であってそこには兵藤源氏と兵藤誠、それから神威を感じさせる二柱の神がいた。

 

「・・・・・なんで」

 

「ここであなたしか知り得ない異世界の事を話してもらいたく連れて来たのです。並行世界の情勢を知りたく」

 

「・・・・・ここ、嫌」

 

心底から嫌そうに顔を顰め、自分の手を掴むアマテラスから離れようと振り解こうとしたが、神相手にはビクともしなかった。

 

「あなたを死にかけさせた場所ではありませんよ」

 

「・・・・・兵藤家、嫌」

 

「・・・・・アマテラス様。申し上げた通りです。孫は兵藤家と関わり合うことを拒絶しておるのです。ましてやこの場に連れて来るのは孫のトラウマを刺激し兼ねないと」

 

「成長していても根本的なところは昔のまま、ということか」

 

角髪で白い着物を身に着込む男神、イザナギが神妙な顔つきで兵藤源氏の話を咀嚼する風に聞きつつ、トレーナーを視界に入れる。

 

「無理もない。自身が殺されかけた場所に良い思い出などある筈がない。そうじゃなくても関連する場所に来たがる理由もない」

 

般若の仮面で顔を隠す黒髪の女神、イザナミが淡々と告げる。

 

「・・・・・一誠」

 

複雑極まりない表情を浮かべる兵藤誠の存在は、トレーナーが目を合わせるまで気付かなかったようで心から不思議そうにした。

 

「・・・・・なんでいる」

 

「この愚息を兵藤家の当主に返り咲いてもらうからだ」

 

祖父から聞かされる言葉に、トレーナーは嫌そうな表情をこれでもかと浮かべだした。

 

「・・・・・ええええぇぇぇぇぇぇ」

 

「物凄い嫌そうに言ったな」

 

「因みに、どうして嫌そうな顔をしたのか聞いても?」

 

アマテラスの問いを素直に答える。

 

「・・・・・権力、横暴、好き放題やりたい放題、暴れん坊将軍」

 

「お前、俺の事どう思っているんだよ」

 

「それは並行世界でもいる兵藤誠を見ての印象なのか孫よ」

 

大きく頷くトレーナーに風評被害だと嘆く兵藤誠だった。

 

「・・・・・だけど、素人目、当主」

 

「ふむ・・・・・教育次第では真っ当に当主としてなってくれるのだな」

 

「おい親父、教育って何だよ教育って・・・・・」

 

「決まっている。当主としての立ち振る舞いと言動、お前が疎かにしていた兵藤家の伝統や行事、歴史と文化、ありとあらゆる学びを―――」

 

そこまで聞かされた兵藤誠の足がこの場から脱兎のごとく駆け出した。止める暇も、制止する暇もなく闘争を許したかに見えたが念じ始める兵藤源氏が瞑目したところ、少しして自分の意思ではなく何かの強制力によって戻された兵藤誠。

 

「くっそぉおおおおおおっ!! これは卑怯だろクソ親父ぃいいいいい!! 」

 

「抜かせ、お前のためにあるような秘術だ。本来ならばこんな使い方ではないが、悪ガキの抑制には丁度いい」

 

あの兵藤誠でも逆らえない強い力が働いているようで、兵藤源氏の目の前で正座をさせられている光景を見て率直な感想を口にする。

 

「・・・・・呪い?」

 

「いえ、あれは兵藤家の血に直接、兵藤家の秘術を施された者の末路です」

 

そう教えたのは兵藤誠の従者であり、かつてトレーナーを死から救った兵藤靖だった。

 

「・・・・・俺も?」

 

「いえ、秘術は兵藤家で産まれた赤子の時に当主自ら施すものです。あなたの兄同様、兵藤家の外で産まれたので秘術で縛られておりません。それ以前にお二人は禁忌の子。秘術の施しようがありません」

 

いっくんの匂いがするー! と居間に現れた兵藤悠璃と続いて兵藤楼羅。何だか騒がしくなって話を聞かせるどころではなくなった、と兵藤悠璃に抱き着かれながら思ったトレーナー。

 

 

 

 

 

 

 

主役が連れ去られたことでパーティは程なくして終わり、後片付けに追われた。そのままウマ娘は女子寮の自室に戻るだけなのだが、トレーナーの合鍵を手に持ったウマ娘はトレーナーの部屋へ居座ることにしたのだ。それに便乗する他のウマ娘、一般生徒である前上涼子達もだ。

 

「何でキミ達までくるのさー」

 

「あら、いいじゃない。同じ人を慕っている者同士、仲良くしましょうよ?」

 

前上涼子は鈍色の鍵を見せびらかす風に見せつける。この部屋の合鍵だと察するのに時間は掛からなかったウマ娘達は六人の一般生徒に対してまだ何も知らない。

 

「それなら腹を割って話し合おう。お互いトレーナーさんという共通人物がいて関係性が繋がっているのだから」

 

「私は構わないわよ」

 

シンボリルドルフと前上涼子が共通人物のことで会話の花を咲かせている他所に、テレビを点けるナイスネイチャ。最初に画面に映ったのはうす暗い森の中の風景と井戸に―――

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

長い黒髪で赤い目、豊かな胸が特徴的な女性がいて、テレビ越しで目があった。しばしの間、硬直したがテレビの中にいる女性こと貞塚玲子が恐る恐る口を開いた。

 

「・・・・・どちら様ですか?」

 

「えっと、ナイスネイチャです」

 

どうして私はテレビの向こう側の人と話をしているんだろー。という疑問を抱いたところで、ウマ娘の名前を聞いた玲子はヌルッとテレビから出てきて、絶叫するナイスネイチャ。その叫びに条件反射で聞こえたウマ娘達は振り返り、テレビから出てくる黒い前髪で顔が見えない恐ろしい女性が出てきてる光景を目の当たりにし、恐怖で絶叫するか絶句するのだった。

 

「ゆ、ゆゆゆゆ幽霊っ!?」

 

完全にテレビから抜け出た彼女はペコリとお辞儀をした。

 

「ハイ、幽霊ノ貞塚玲子デス。Dサンノ担当ウマ娘達デスネ」

 

しかも、トレーナーの知り合いぃっ!! と心中でも驚愕に禁じ得なかったところ。

 

「お久しぶりです。玲子さん」

 

「アッ、カフェサン。オ久シ振リデス」

 

マンハッタンカフェが普通に挨拶を交わすので唖然ものだ。

 

「マンハッタンカフェ。キミは彼女の事を知っていたのか?」

 

「はい。紹介してくれました。とても優しい方ですので大丈夫ですよ。害はありません」

 

「そう、か。トレーナーさんのことも知っているみたいだから悪霊でもなさそうだな」

 

無理やり自分に納得させ貞塚玲子に問い詰めた。

 

「貞塚さんとやら。聞かせてほしいが、あなたはここで暮らしているのか?」

 

「ソウデス。Dサンガ学園ノ警備ヲシテイル時ハ毎夜手伝ッテイマス」

 

「・・・・・七不思議のひとつの原因が目の前に・・・・・」

 

ハイ? と不思議そうに反応を示す貞塚玲子は「トレーナーとはどういう関係だ?」とナリタブライアンからの質問に対しこう答える。

 

「関係デスカ。毎夜警備ノ仕事ヲ一緒ニシテイル以外デハ、添イ寝ヲシテイルダケナノデ」

 

「それってつまり、毎夜一緒に添い寝をしているということですの?」

 

「「う、羨ましい・・・・・っ」」

 

普段のウマ娘達は一緒に寝ることなどないので、毎日共に添い寝している関係だと知れば羨望の眼差しを向けるなと言うのは無理がある。

 

「毎日添い寝しているってことは・・・・・その大きな胸をくっつけて寝ているという事?」

 

「あの人が何の反応を示さないでいるのは・・・・・」

 

「慣れちゃっているから、かな・・・・・?」

 

「いやいや、流石にそれは・・・・・」

 

ヒソヒソと声を殺して囁くように話す福井愛花達はトレーナーと貞塚玲子の関係を疑う。

 

「エット、カフェサン。皆サンガココニイルノハドウシテ?」

 

「この部屋でトレーナーさんを待っているんです」

 

「Dサンハ?」

 

「神様にどこかへ連れて行かれたのでいません」

 

軽く十人以上もいる少女達がトレーナーの帰りを待っている時点で、親しい間柄なのだと察するに難しくない。福井莉緒が挙手する。

 

「はい質問。幽霊のあなたは何か心霊現象とか出来ます?」

 

「デキマセン。私ガ宿ッテイタDVDヲ介シテ、動画ヲ再生シタPCヤTVノ画面カラ出入リスル事シカ」

 

「ずっとあの中に過ごしていたの?」

 

今もなおも、薄暗い森林や井戸の映像を映しているテレビに指すトウカイテイオー。

 

「ソウデス。私ガ表ニ出テイルト、コノ部屋ニ入ッテ来ル誰カト鉢合ワセシタラ、アノ人ニ迷惑ガ掛カリマスカラ」

 

「寂しくないのか?」

 

「大丈夫デス。幽霊ハ孤独ヲ感ジマセン。何ヨリ、Dサンノ友達ノ三人ノ知リ合イガデキマシタカラ」

 

貞塚玲子はどこからか取り出した携帯の画面を見せつけた。トレーナーと夏梅、鮫島、ヴァレリー、貞塚玲子の五人が一緒に写っていた。

 

「あ、この人達」

 

「トレーナーの仲間だっていう人達だったね。いつの間に学園に来ていたんだろ」

 

と―――不思議がった面々がいる部屋の扉が開き、寮長室の主ことトレーナーが帰って来た。部屋の中を見回してから口を開く。

 

「・・・・・受け入れられた?」

 

「ハイ。カフェサンガイタカラ」

 

「・・・・・ありがとう」

 

「いえ、私は何もしていません。あなたの関係者だと分かれば皆さんは納得できます」

 

「いやー、幽霊と同棲していたのは驚いたけどさー。ね?」

 

半ば呆れた風に言うナイスネイチャに幾人かウンウンと頷く。

 

「・・・・・保護」

 

「彼女を保護しているの?」

 

「・・・・・憑りつき、殺そうとしてきた。逆に宿っているドラゴン達に殺されかけたから」

 

無害ではなかったのかと、幽霊の彼女が殺されかけた事実に言葉を失うしかなかった。ナリタブライアンが素朴な事を言う。

 

「悪霊ならば、成仏させた方がいいのでは?」

 

「・・・・・望んでいるなら、している」

 

望んでいないから未だに現世に留まっているのだと悟った。少なくともトレセン学園七不思議のひとつに数えられるようになった頃から交流していたのだろうともだ。

 

「トレーナーさん、幽霊さんと出会う切っ掛けはどんな感じでしたか?」

 

「・・・・・友達からくれたプレゼントの中身に交じってた」

 

「それって今もあるのデス?」

 

「・・・・・ある」

 

グラスワンダーとエルコンドルパサーからの質問を答えるトレーナーに、マンハッタンカフェが興味を持ち見たいと口にした。

 

「・・・・・見たい?」

 

「可能性は低いですが、他にも悪いものが宿っているかもしれませんので」

 

「・・・・・判る?」

 

「見せて、貰えば」

 

「・・・・・夏梅、見せると嫌われるかもしれない、言ってた」

 

夏梅―――皆川夏梅のことを言っているのだと察するチームシリウスのウマ娘達。自分達がトレーナーを嫌う可能性がある物をプレゼントされた? 逆にそれはなんだという思念が芽生え、シンボリルドルフ達はそんな事はない、大丈夫だとマンハッタンカフェに便乗したことでトレーナーは押し入れから大きめの段ボールから取り出した。

 

「随分と大きい」

 

「この中に一体何が・・・・・」

 

トレーナーの手によって開かれ、段ボールの中身が解放された次の瞬間。

 

『っ~~~~~!?!?!?』

 

シュリンク包装がされた大人のDVDが大量に納まっていたので、未成年しかいないウマ娘や一般生徒の少女達の殆どがトマトのように顔を真っ赤に染めた。

 

「ぴえええええっ!?」

 

「こ、これはっ・・・・・!」

 

「あっ、うっ・・・・・!?」

 

「・・・・・えーと、これは何といいますかね」

 

「マスターのご友人から送られた物とは、エッチなDVDでしたか」

 

「しかも段ボール一箱分も大量にあるのか」

 

「確かにこれは・・・・・他のウマ娘や一般の女子生徒達に見せたら軽蔑必死だな」

 

どうして皆が顔を赤くしているのか理解できていないトレーナーは、段ボールからホラーのDVDを顔を赤くしてるマンハッタンカフェに手渡した。

 

「・・・・・これ」

 

「・・・・・最初にこれを見たのですか」

 

「・・・・・そう、確認」

 

次に段ボールごとマンハッタンカフェに手渡そうと突き出すトレーナー。エッチな中身しかない大量のDVDに羞恥で耳も真っ赤に染まる彼女に静止を掛けた。

 

「ま、待つんだトレーナーさん。彼女に確認せずともこれは・・・・・」

 

「・・・・・?」

 

シンボリルドルフの制止に首を傾げるトレーナーの反応にまさか、と前上涼子は思い至った。

 

「まさかだと思うけれど、このDVDは何なのか分かってない?」

 

「さすがにそこまで・・・・・Dさんならあり得るかもしれないけど」

 

「無知過ぎません!? いくら解らなくても女の子の身体に興味持って―――あ」

 

前回、黒岩黒子自身が体張って検証した結果が無反応。しかもホラーのDVDを除いてエッチなDVDにはシュリンク包装が全て開封されていない。

 

「興味以前に、性欲が欠けてるなら辻褄が合う」

 

「でも、知識としてなら知っていても・・・・・」

 

「・・・・・聞く?」

 

いや、それは女の子が聞くものではない。と理由で羞恥心によって聞けず―――。

 

「Dさん。エッチしながら子作りする知識は知ってますか?」

 

躊躇していた議題を黒岩黒子が爆弾発言をさらっと言った。同時に ぶっ!!? と、とんでもない質問した彼女に噴く一同は目をあらんかぎりに見開いたのであった。

 

「ちょっ! 何を突然言いますのあなたは!?」

 

「・・・・・知ってる。教わった」

 

「トレーナーも答えなくていいよ!?」

 

しかもだ。性欲がない疑惑を向けられていたトレーナー自身が知識として身に付けている事実に今度は別の意味で顔を赤くするのだった。

 

「じゃあ、このDVDはその過程でしているところを収録されたものでありますけど、Dさんは興味ないのですか?」

 

「・・・・・兵藤家の連中、同類、拒絶」

 

「Dさんはエッチなことは無理矢理するものだと思ってます?」

 

首を縦に頷くトレーナーに、ウマ娘達は目を丸くした。性行為は相手が嫌がること、相手の意思を無視して無理矢理するものだと思っていたことに。

 

「・・・・・それも、そう。違う?」

 

「確かに、そういう物もあると思います。けど仕事として性行為をしているところを撮影されたものが多いですよ」

 

「・・・・・仕事?」

 

「はい」

 

そんな仕事が世の中に存在しているのかと、自分の中の知識と情報、常識が違っているのかと苦悩を顔に浮かべる。

 

「・・・・・男女、交際、愛し合う、結婚前提、子供作る。違う?」

 

「間違ってませんよ。それが男女の常識ですが、愛し合わなくてもエッチを楽しむ男女もいるんですよ。違う例は、兵藤家の男子のように自分の性欲を満たすため女の子に無理矢理することです。逆に女性も男性を一方的に襲うこともあると思いますが」

 

「・・・・・」

 

「男女の人がお互いエッチなことをしたい。その想いが同じ気持ちになったり、あるいは相手に同意を得たらエッチをすることができます。それが性行為ですよ」

 

「・・・・・そう」

 

とんでもない話をしているのに、トレーナーは変わらず無表情で相槌を打ってるだけ。

 

「・・・・・話し、終わり?」

 

「他にも聞きたいことは?」

 

「・・・・・ない。マンハッタンカフェ、調査」

 

「あの・・・・・話し合ってる間に調べました。問題ございませんので閉まってください。固く閉じて、誰にも見られないように」

 

嘘だ。マンハッタンカフェは何もしておらず、思案顔で悩んでいただけだ。恐らくは早くこの状況の収拾をするためのことだろう。トレーナーは疑わないようで、段ボール箱を押し入れに閉まった。

 

「マスター」

 

ミホノブルボンが話しかけた。

 

「もしも性的行為したい、興味があるのであれば、情報を収集、知識と技術を得ておりますので私をお誘いください」

 

「ブルボンさん!?」

 

「・・・・・こういうこと?」

 

「はい。あとはDさんがしたいと思ったらお互い同意の上であることになります」

 

愕然のライスシャワー。訊ねた黒岩黒子からの返答にこういう感じなのか、と納得したところで改めてミホノブルボンに言い返す。

 

「・・・・・ミホノブルボン、したい?」

 

トレーナーに問われた彼女は朱を散らばせた顔でコクリと頷いた。

 

「現在の私の身体は、性行為によるマスターの遺伝子を受け継ぐことが出来るにまで成長しております。マスターの精を私のここに注ぐことで新たな命が誕生します」

 

意味深に腹部を両手で触れるミホノブルボン。

 

「三冠ウマ娘になる夢が叶った今、ウマ娘として思い残すことはありません。次は―――マスターとの結婚を目標にしております。その過程として私はマスターと性的行為を臨んでいます」

 

「・・・・・もう走らない?」

 

「いえ、まだ走ります。ですが、今の私の望みは先程申し上げた通り。ですから―――」

 

 

―――マスター、いえ、Dさん・・・・・愛してます。心の底から。

 

 

ミホノブルボンからの愛の告白に場は静寂に包まれた。

 

「返事は問題ありません。シンボリルドルフさんの一夫多妻制の婚姻の書類にサインして貰うことが確定なので」

 

「・・・・・俺の意思」

 

「嫌、ですか・・・・・?」

 

不安、寂しい表情を浮かべるウマ娘にトレーナーは溜め息を吐いた。正しい選択は一つしかないからだ。

 

「・・・・・ズルい。断れない」

 

『っ!!』

 

断れないと言った。それはつまり―――。自分達と結婚をしてくれると言う認知ではないか? 今までは口にしてくれなかったが、今、彼は結婚することを断れないと言ってくれた。

 

「え、Dさん? 担当ウマ娘達と結婚するんですか?」

 

「・・・・・そういうことになってる」

 

そう答えた後、前上涼子達にも尋ねた。

 

「・・・・・したい?」

 

「えっ? もしかして、結婚ですか?」

 

そう、と頷くトレーナーに信じられないと目を丸くする。

 

「・・・・・長い付き合い、なりそう」

 

「あれ、もしかしてさ。卒業してからも私らDさんに付き纏っているって、思われてる?」

 

「休日や夜は皆で押し掛けてるからかもね」

 

「寧ろ大体はDさんといる方が多いでしょう」

 

「まぁ、親しい男性と言えばDさんしかいないという理由もありますが」

 

「いい人を見つけなさい、なんて親から言われたらDさんを思い浮かべる自分が否定できない」

 

しかも娘の相手を知ったら全力で応援をしに掛かるかもしれない。それはそれで、アレなのだが・・・・・。

 

まぁ、Dさんなら何が遭っても頼りになれるから・・・・・。

 

満更でもない自分がいることに不思議と納得していた。

 

「トレーナーと結婚・・・・・うわぁ、考えたらすごくはっずいし、いま顔が真っ赤でしょ」

 

ナイスネイチャの発言により、何名か結婚した未来予想図を脳裏に描き、ほんのりと朱を染める。

 

「・・・・・トレーナーさん。質問いいかな」

 

「・・・・・なに」

 

「ふと、思い至ったんだがトレーナーさんの家は知らないなと」

 

シンボリルドルフの素朴な質問は、一同もそういえば・・・・・と思わせた。

 

「私達も、それは聞いたことも見たこともないです」

 

福井愛花の言葉に前上涼子達も同感した。

 

「・・・・・寮長室、家、便利」

 

「学園内でずっと住み込んでいたという事ですか」

 

誰も知らないのも無理がない理由だった。独身故、独りだけの生活をするならば寮長室で暮らした方が楽で便利。それがトレーナーの気持ちであった。

 

「マンションとかアパートとか借りないのー?」

 

「・・・・・別の家、変わらない」

 

『アハハ・・・・・』

 

否定できない少女達は苦笑いするしかなかった。―――そうする自覚してしまったからだ。

 

「えっと、明日からトレーニングをしますよね? どこか遠征とかしますか」

 

話題を変えようとディープインパクトが問いを投げた。トレーナーは少し考えてからこう答えた。

 

「・・・・・夏休み、長期間、遊ぶ」

 

その問いに対しトレーナーは至極当然のように言い放つ。まさか遊び呆ける気でいるトレーナーを珍しいと思わないでもないが―――。

 

「トレーナーさん。具体的には?」

 

「・・・・・今の時期、肉フェス、祭り、各都道府県、イベントしてる。参加する」

 

「「肉フェス」」

 

国内外の人気店の肉料理が一同に集結し、肉好きな者達からすれば聖地のようなもの。肉料理にとどまらない各地物産も集結し訪れる客達の心を躍らせる。

 

「・・・・・まず近日、東京、肉フェス、参加する」

 

「楽しみだ」

 

「ああ、全て食べ回ってみたいものだな」

 

オグリキャップとナリタブライアンにとって垂涎ものの話。食べ放題ではないが数多の肉料理がその場で食べられる楽しみが二人の身体から醸し出していた。

 

「トレーナー、トレーニングはしないのー?」

 

「・・・・・ウマ娘、学生、思い出作り、大切」

 

 

 

 

 

 

 

 

某国某所―――。

 

「お姉様! お姉ぇ様ぁ~!」

 

重音を轟かせる滝に向かい両手足、首に大きな枷を身に着けてる一人のウマ娘が大きく叫ぶも返事がない。まったく困ったものだと―――とはちっとも思わず、敬愛を込めて大声で何度も発する。地上から三百メートルもある巨大な滝から流木が流れ落ちる。 あっ! とそれに気付いた時は滝壺に落ちる直前だった。しかも落ちる先にはお姉様がいるのだ。身の危険を感じて脚に力を入れて跳躍、流木を蹴り折らんとした小柄なウマ娘だったが。

 

ドバンッ!!!

 

流れ落ちる膨大な水流の水圧を物ともせず、流木を割るだけ留まらず巨大な滝まで割れた。真っ二つに分かれた滝の下で姿を現し天に衝く拳を掲げていた長身の女性、小柄なウマ娘と同じ枷を着けてるウマ娘が口を開く。

 

「五月蠅いぞ騅。聞こえている」

 

「ああ、ステキすぎますわお姉様!」

 

瞳にハートマークを浮かべ狂喜のあまりにおはしゃぎする小柄なウマ娘、騅。滝を割る姿もさながら水に滴る完璧なプロモーションの全裸の姿を隠さない彼女をガン見、興奮する様は第三者から見たらドン引きものだ。お姉様は水中に潜り騅がいる陸地まで数匹の魚を両手と口で捕獲してから上がった。

 

「火と塩」

 

「既に準備は整っておりますわ!」

 

燃え盛る丸太を見て凄く呆れた顔をするお姉様。キャンプファイヤーをしろというのかこのバカは、と。

 

「―――で、私の修行を中断させることがそっちであったのか?」

 

塩焼き魚にして骨まで平らげたお姉様を待った騅は「はい!」と答えた。

 

「珍しくトレーナーがお姉様を呼んでおりますわ」

 

「・・・・・本当に珍しいことだなそれは。完全な放任主義のトレーナーが私を呼ぶ理由は?」

 

「日本のウマ娘の交流を図るとのことです。そのことについて他の皆さんも集結させております。一度、皆さんの意見を窺うおつもりかとお姉様」

 

「そうか。ならば行くとしよう。日本のウマ娘の頂点、シンボリルドルフ等を間近で体験できるならいい機会だ。楽しみだな騅」

 

「はいお姉様!」

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