ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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少女と戦車

しばらくトレーニングは休み。その一言でウマ娘達は明日はどう過ごそうかと悩んだ末、いつも通りの事をしようと至り同じ場所へ向かう途中にチーム同士やトレーナーを慕う別のチームのウマ娘と鉢合わせ、合流するにつれて大所帯となったまま目的の部屋に足を運ぶ。

 

 

『おはようございますご主人様、本日のご予定はございますか?』

 

「・・・・・用件」

 

『楼羅様、悠璃様が是非とも見学にお越しいただきたいとのことです』

 

「・・・・・見学?」

 

『はい、御二方が通う学園が主催のエキシビションマッチの見学にご招待をしたいと』

 

リーラからの連絡と誘い話に少しの逡巡の後、肯定の言葉を送った。

 

「・・・・・ウマ娘達」

 

『連れて来ても問題ないと思います』

 

寮長室に近づいてくる数多の気配の考慮も考えてくれた二人に感謝するトレーナーは、更に一言二言訊ねた後に通信を切ったら訪問者が扉をノックした。

 

 

茨城県―――大洗町。

 

その全町民が避難された町中でエキシビションマッチを行う、というこれから始まる試合に関りが無い者からすれば前代未聞な事だろう。例え民家や建造物が試合途中に破壊してもされようとも続くのだから。トレーナー達は見学先で超大型のテレビで放送されている見聞したことが無い試合を参観するのだった。

 

「町ひとつ、戦車を駆使して試合するなんてな」

 

「女子高生が戦車を動かすこと自体も驚きだよねー」

 

「その中に当然のようにウマ娘がいることもびっくりだよ」

 

「あ、始まるよお兄様」

 

複数校が一つの町に集い、勝負内容はフラッグを掲げる相手戦車を倒すフラッグ戦。兵藤楼羅と兵藤悠璃が通っている大和女学園が相手するのはこの町の飛び地として建造された大洗女子学園を始め黒森峰女学院、サンダース大学付属高校、聖グロリアーナ女学院、、プラウダ高校、アンツィオ高校、知波単学園、継続高校と一校対複数校との試合を臨み、お互い30輌の戦車を揃えてエキシビションマッチを開始した。

 

「これ、どっちが勝つと思う?」

 

「分からないな。戦車なんて興味すらない」

 

「それ以前に大和女学園の戦車って、対戦相手の戦車と全部一緒だよね」

 

「どれもこれも、みんな同じに見えて判り兼ねますわ」

 

「取り敢えず、ボクはトレーナーから離れるべきだと思うよマックイーン」

 

胡坐を掻くトレーナーの脚の中に小さな臀部を収め、小柄な体を大きな身体にピッタリと寄せるウマ娘を見やるトウカイテイオーだが、涼しい顔でメジロマックイーンに言い返された。

 

「私とトレーナーさんは一心同体ですもの。この状態になるのは自然ではありませんか。というより、トレーナーさんの右腕に抱き着いたままのあなたに言われるたくありませんわ」

 

「むぅ~・・・・・」

 

因みに左はライスシャワーがトレーナーの左手をしっかり握って確保している。

 

「ふむ、どちらも市街地で応戦するらしいね」

 

「戦車の戦いって怪我しないのかな」

 

「・・・・・安全面は考慮されていると思います」

 

「車みたいに早くて小さいのも戦車?」

 

「じゃないかな」

 

互いが敵と合間見れば砲弾で応戦し、機動力で牽制や追い込みをかけ各個撃破していく。どちらも撃破された戦車はその場で放置されたまま続行する模様。しかし、しばらくして撃破された戦車とその搭乗者達は運営側が回収するようだった。

 

「今のところ、複数校が撃破を重ねて勝ってるね」

 

「でもまだまだ勝ち越せる範囲だと思うね」

 

 

 

 

 

「楼羅、そろそろ頃合いでいいよね」

 

「あの子が観てくれている手前、敗北する様は見せられません。―――全車両、お遊びは終わり。流桜作戦開始です」

 

 

 

大和女学園の戦車の動きの変化に気付いたのは最初に複数校の各隊長だった。更に射撃の正確さと鋭敏な動きとなり、命中率が必中となり履帯を破壊されて動きを封じられるようになった。

 

『あいつら履帯を狙って来るぞ気を付けろ!!』

 

『今までとは違う動きをするようになってきたわね』

 

『緩やかな動きで攻撃も消極的だったのに。ここに来て本気で倒しにかかって来たわね』

 

『みほ、気を付けろ。他の車両の動きを封じつつフラッグ車に襲ってくる』

 

『ならばこちらは吶喊攻撃をしましょう!』

 

『それは刹那主義だから賛同しないね』

 

『カチューシャにそんなの通用しないわよ!! って、ああっ!! 履帯がぁっ!!』

 

複数一組に動き、先に一輌が走り去りながら射撃、二輌、三輌目が履帯を執拗に狙う戦法をする大和女学園の戦車に翻弄される残存の味方車輛。それでも冷静で返り討ちにする味方がいるが履帯を破壊された車輛の方が多かった。

 

「味方の戦車が次々と・・・・・こうも早く的確に発見されるなんて」

 

「通信を傍受されているのでしょうか?」

 

「そんなことするのサンダースだけだよ」

 

「だが、空から偵察でもされない限り短時間で発見されるのは不自然だ」

 

「私達も発見されていてもおかしくありませんね」

 

ショートボブの髪型。茶髪に茶色の瞳は同戦車の搭乗者の少女達の話を耳にしながら周囲を見回す。そしてその瞳に屋根の上に立つ大和女学園の生徒の少女と目が合った。その首には通信機を嵌めてることから戦車の車長を勤めている者か、あるいは別の者かなどはさておき・・・・・こちらを特定された時点で。

 

「判断が遅いね」

 

「っ!!」

 

移動中の広い十字路の四方の向こうから大和女学園の全残存戦車がこちらを囲うつもりで集まって来た。

 

「全力で前進してください!」

 

包囲網から脱するフラッグ車に四方から迫る車両が同時に停止、綺麗に横並びに並んで一斉射撃。味方同士に当たろうが戦闘不能になろうが構わずたった一車輛のために撃ち続ける。そんな気配を窺わせる大和女学園に息を呑む少女達に助けが入った。黒森峰の戦車二両が四方の一角を陣取っていた大和女学園の戦車に落雷のごとき轟音と共に砲撃で、背後から狙って白旗が上がって戦闘不能にした車輛を後ろから強引に押し出して脱出口を作ったのだ。

 

「お姉ちゃん!」

 

「脱出するぞ」

 

「うん!」

 

しかし、相手は甘くなかった。一角に穴を開けられようと三方向から履帯の破壊を狙った砲弾が放たれた。フラッグ車は戦闘不能になった大和女学園の戦車と黒森峰の戦車を一時盾になってもらい、一度目の砲撃を受け流してから全速力で包囲網を突破―――。

 

ドンッッ!!!

 

が、次の曲がり角の道路に潜んでいた戦車が黒森峰の戦車とフラッグ車諸共に突進して建物へ押し込んで零距離から砲撃された。黒森峰の戦車一輌に白旗が上がった。

 

「隊長!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「構うな、行け」

 

自分を庇って倒されてしまった姉に悔やみながらも少女を運ぶフラッグ車は包囲網を突破することに成功したその後ろ姿に―――長距離から射撃した戦車の砲弾に履帯を当てられた。

 

『悠璃、戻って来なさい』

 

「うん。今年の他校も面白いね。メインの戦車じゃなければこうも抗戦してくれるなんてさ」

 

『本来使うはずの戦車でも同じ結果だと思いますよ。しかし、それを加味してもやはり西住流の者は侮れませんでした』

 

「昔からコレで食べて生活しているから当然じゃない? それに比べてまだ大会出られない私達がこうして模擬戦とかエキシビションマッチじゃないと勝負できないんだし」

 

フラッグ車の走行不能により、大和女学園側の勝利としてエキシビションマッチは幕を下ろした。

 

「終わったなトレーナー。これからどうする」

 

「・・・・・観光」

 

異論はないウマ娘達。見学を誘われただけであの二人と顔合わせを望んでいない。

せっかく都心から離れた町に来たのだから見聞していない様々な未知を既知に、と思って観光を口にした。

 

「D様。どうでしたか、お二人が率いる戦車道は」

 

何時からそこにいたのかと自然体過ぎて空気と化していたみたいになっていた人物の声。気付かなかった一同がトレーナーを話しかける女性に後ろを振り返れると、銀髪琥珀瞳のメイドが佇んでいた。

 

「・・・・・興味ある」

 

「彼女達が通う学園がある艦は観光もできます。こちらからお申し出すれば見学も可能でしょう。特にお勧めなのはアンツィオ学園。ローマよりローマ風なレプリカの造形物がたくさんあり、イタリア料理も破格な値段で作られております」

 

「・・・・・デザート」

 

「ありますよ」

 

見上げてくるメジロマックイーンの目が期待に輝く。是非とも行ってみたいという気持ちが強く伝わってくるウマ娘の頭を撫でる。

 

「観光」

 

「では、申し込みして参りましょう。丁度、アンツィオ学園の戦車道の生徒がおりますので」

 

そう言うメイドの背中に続いてついていけば、戦車道の関係者しか入れない生徒達が、白い生地の着物の各部と頭に巻いてる鉢巻に日の丸の刺繍がされている少女達が集っている場所に辿り着いた。

 

「楼羅様、悠璃様」

 

「あ、リーラさん。いっくんは―――」

 

メイド、リーラの後ろにいるトレーナーを見るや否や大和女学園の生徒、兵藤悠璃が観衆の目も気にせず顔を輝かせて歓喜の色も浮かべながら弾んだ声で話しかけて来た。

 

「いっくん! 会いに来てくれたんだ!」

 

「・・・・・久しぶり」

 

喜々として抱き着き、抱き返す悠璃とトレーナー。初めて出会った時の光景がフラッシュバックするウマ娘達は空気と化することに専念した。相手が相手なために、下手に口に出そうならば何が起きるか分からないためだ。

 

「い・・・Dくん、お久し振りです」

 

「・・・・・楼羅、久しぶり」

 

彼女の黒髪に手を置いて優しい手つきでさらさらした毛質を感じながら撫でる。それがくすぐったくも嬉しそうに口元を緩める楼羅を見た他の大和女学園の戦車道の生徒達はざわめつく。

 

「楼羅さんと悠璃さんが笑ってる・・・・・?」

 

「今まで見たことが無い表情を・・・・・可愛い」

 

「あの殿方とお二人は親しい関係みたいですのね」

 

「お二人をお会いに来たのでしょうか?」

 

 

「はい、いっくん。アップルパイだよ」

 

「・・・・・ありがとう」

 

自然な流れでどこからともなく取り出した、手作り感があるアップルパイをトレーナーに渡して食べてもらえば、心底幸せそうに美味しそうに純粋な満面の笑みを浮かべるショタ狐と化するトレーナーを見て、大和女学園の生徒達は二重の衝撃を受けた。

 

 

かっ、かわっっっ!!!!!

 

 

ウマ娘達も、んくっ! と身悶える。ショタ狐となったトレーナーを抱き上げ頬擦りする妹と一緒に触れる姉の楼羅にリーラは乞うた。

 

「楼羅様、悠璃様。もしよろしければご主人様にアンツィオ高校の方々をご紹介させていただきませんか」

 

「アンツィオ高校に? どうしてですか?」

 

「彼の学園艦を観光する了承を得るためです。ご主人様はまだその手続きの仕方が知りませんので顔合わせも兼ねてご紹介をさせようと」

 

「私達の学園艦に来てくれないの!?」

 

「いずれ参られますのでご安心を」

 

まず最初にアンツィオの学園艦を見学する、トレーナーの思いを酌んで楼羅が頷く。

 

「わかりました。紹介しましょう。こちらです」

 

「うー、最初に私達の学園艦から来てほしかったなぁ・・・・・」

 

食べ終えてたトレーナーをまだ抱え持つ悠璃もアンツィオ高校の元へ連れていく。

 

アンツィオ高校はエキシビションマッチに関わった全ての者達の労をねぎらう食事会の途中のようだが、今は残された料理しかなく人は誰もおらず無人だった。

 

「トレセン学園の食堂に負けない量だな」

 

「どれも美味しそうだ・・・・・」

 

「・・・・・オグリキャップ、食べない」

 

「これらはエキシビションマッチに参加した者達のみ用意されたものだろうから、私達が食べていいものではないね」

 

酷く残念だとオグリキャップの腹から盛大に鳴る空腹の音。もう少し我慢してもらい、早めに切り上げるかと思いながらメイドの足が停まる様子に一堂も足を停めた。その理由は十人ほどの男達による酒池肉林が築き上げられていたからである。羞恥で顔を真っ赤に、青空の下で裸にされ怒りで歪む顔、理不尽に強いられて流す涙で頬を濡らし、恐怖に怯え身体を震わす、絶対に許すまじと睨みつける―――そんな少女達を椅子代わりにして華奢な身体の上に座って暴君のごとき振る舞いをしてる男達が、エキシビションマッチに参加していた各学園の戦車道の少女たちの身体を弄んでいたのだ。

 

「・・・・・あいつら」

 

「知ってるの、いっくん」

 

「・・・・・三年前、シンボリルドルフを始め、トレセン学園の女子生徒、強姦した」

 

「・・・・・」

 

ウマ娘達へ振り返る楼羅の視界に入るのは、顔を強張らせ拳を力強く握り締める幾人のウマ娘達。楼羅は瞋恚の炎を瞳に孕み、悠璃は奥歯を噛みしめ怒りの感情を高め、トレーナーは己の情報収集から免れた一部の者達が都合よく集まっているならば、遠慮することはない。

 

未だトレーナー等の存在を気付いていない様子。兵藤家の家紋を背負っている者達はすっかり頭にまでアルコールが回っているようで、トレーナーが元の姿に戻り警備員の制服で身に包んだ姿になって、全裸の少女達の背後から忍び寄り、兵藤家の2人の首を掴んで持ち上げた。

 

「ぐぇっ!?」

 

「な、なん―――」

 

手から放たれる放電により汚い悲鳴が周囲を響き渡る。黒焦げになった2人を無造作に手放し次を狙う眼差しは獲物を見つけた獣のそれだった。逆に非捕食者達は反射的に椅子代わりにしていた少女達から立ち上がってはトレーナーを一目見て―――酔いがすっかり冷めた青を通り越して紫色に顔が染まった。

 

「お、お前っ・・・!! な、何でここにいるんだよぉっ!?」

 

かつて絶対的地位と権力者の一族の者として、問題を起こしても本家が干渉・介入してこないことを先輩から教わり、一緒に己の欲望を満たせる楽園の中で下級貧民の人間を弄ぶ娯楽を、後から入学してきた年下の者達にも教えながら自分達の楽園を謳歌していた時に現れた絶対的な暴力の象徴。それが目の前にいるトレーナーだ。反撃しても、反論しても、全ての自分達の力では覆せない強さと力の前では全ての無意味にされ、いざ親の力で解決してもらおうと思ったが、学園に干渉しない本家に、学園の長にも見放されたような結果で関わってもらえず、何時でも何処でも必ず現れては過酷な体罰を与えられ、恐怖を骨の髄まで教え込まれた。卒業してやっと恐怖から解放されて、親のコネで入った仕事先で働きつつ学園にいたころと変わらない生活を謳歌していたのに―――!!

 

「・・・・・性欲の獣、所詮は獣、今度は檻に閉じ込める」

 

「は・・・はっ、今そんな事できるのか? 俺達は卒業した身だぜ。お前がいくら学園に守られているからといえ、今の俺達は兵藤家の権力を振るえるんだぜ! お前みたいな身分の低い奴なんざ闇に葬ることも容易い!」

 

腰が引けながらも威勢を張る男は股間を蹴りあげられ、急所から伝わる激痛に堪え切れず汚い叫び声をあげて地面に横たわって悶絶する。そんな仲間を見て恐怖が伝播する。

 

「そうだっ、それぞれ権力ある職に就いてる今の俺達が一言いえばお前なんてすぐにどうにもできるんだぞ? 仲間だって大勢いるんだ!」

 

「因みに俺は兵藤家専属の弁護士を務めてる。お前が攻撃してくるなら国家反逆罪で国外追放や死罪にだって―――」

 

そう発する者等は地面から足が浮く正拳突きで黙らせられ、いつの間に殴られたのか解らないまま、吐瀉物を地面に撒き散らして横たわる。

 

「・・・・・やってみろ」

 

「はっ? ぎゃっ!!」

 

「なっ、ぐぼえっ!?」

 

「・・・・・お前等、潰す」

 

残り片手で数えるぐらいしかいない兵藤の一人が焦燥に駆られ、両手を前に突き出しながら説得を試みようとしだした。

 

「ま、待てっ!? は、話し合おう!? もう二度とこんなことしないから―――!?」

 

「・・・・・前回も言った、今回も聞いた、反省しない愚者共。ここで潰す」

 

完全に気圧された彼等に宣告するトレーナー。慈悲と救いの女神は見放されたも当然。

敵う相手ではない。逃げる事しかできない彼等は脱兎のごとくトレーナーへ背を向けて走ろうとする。それを許さないトレーナーの動きが加速して一人残らず上空へ殴り飛ばした。

 

「つ、強い・・・!」

 

「誰なのあの人・・・?」

 

「カッコいい・・・・・」

 

少女達はトレーナーの戦う様に自分達が裸でいる羞恥心を忘れてしまうほど、夢中に見ていたり見惚れていた。兵藤家10人に対する鎮圧は反撃も反抗もさせないまま、トドメは雷の魔法で意識を奪い終わらせた。

 

「・・・・・リーラ、ゴミ捨て」

 

「すでに整っております。しばらくお待ちくださいませ」

 

その後、リーラの魔法で転移してきたメイドや執事達が兵藤家の者達を縛り上げてまた転移魔法でどこかへ連れ去った他、リーラが召集したメイド達によって戦車道の少女達は手厚く保護された。が、問題がまだあった。リーラ曰く。

 

「全員、かなり強力な媚薬を飲まされてるご様子です。触れられることすら快楽に感じてしまい、今の彼女達は体力と精神が激しく消耗しているかと思われます」

 

「・・・・・浄化する」

 

布を肩から羽織って体を隠す少女達へ鎧を解いては、代わりに6対12枚の金色の翼を持つ天使となり、彼女達が服用された媚薬の成分を浄化する。優しく温かな翼の中に包みながらだ。全員の浄化がし終える頃にリーラが連絡したのか兵藤源氏が式森和真と共に転移魔法でやってきた。

 

 

その日の夜。

 

 

別れを凄く惜しむ楼羅と悠璃と別れ、大洗の宿泊施設に1泊することにした。海鮮料理を始め様々な料理を食べて味を堪能するトレーナー達は和気あいあいに楽しんでいた。

 

「すみません。ここからここまで全部10人前お願いします」

 

「オグリさん、ちょっとはご遠慮しませんか? まぁ、今日の夕飯はトレーナーさんが払うわけじゃないんだけどさ」

 

「トレーナーのご祖父からのささやかな謝礼として、ここの兵藤家のホテルを貸し切ってくれたのだからな」

 

「さらっとホテルの権利も渡そうとされた時はど、度肝を抜かれましたぁ~・・・・・」

 

「あん肝なだけに度肝を抜かされた・・・・・ふふっ」

 

「お兄様が判らずその権利書を受け取ったからホテルの経営者になるのかと思っちゃった」

 

「さすがにトレーナーさんもトレーナー以外に仕事があるから無理なのだけれど、リーラさんというメイドの人が代わりに運営してくれるようになったのよね」

 

「実質この旅館はトレーナーさんの物になったのは変わりありませんわ」

 

「旅館を手に入れたマスターは若旦那と呼称されるならば、私達は若女将と言うことになりますね」

 

「ボク達が若女将・・・・・?」

 

「想像できませんね・・・・・あの、コーヒーを淹れてもいいでしょうか?」

 

「トレーナー、訊きたいことがある」

 

担当ウマ娘達の会話を聞きながら隣に座るナリタブライアンから質問を投げられた。

 

「失礼します」

 

質問を聞く前に頼んだ料理を運んで来てくれたのかと意識して見やる開く襖の向こうから従業員―――ではなくリーラが入って来た。

 

「ご主人様、少々お話がございます」

 

「・・・・・ん」

 

腰を上げてリーラについて行く。トレーナー達が食事していた部屋の階から下りて宴会場に続く廊下を歩き、百人も優に座れる大広間へ足を運んだらそこに旅館の料理を食べていた各学園の制服姿の少女達がいた。

 

「・・・・・経緯」

 

「あの後、各学園の戦車道の皆様からご主人様に感謝の言葉を送りたいと大和女学園に連絡が入り、楼羅様と悠璃様がご主人様と会える口実を得られることからその願いを聞き受け入れ、ここに集いました」

 

私情が混じってるが、呆れた溜息を小さく吐いた。別に気にしなくてもいいのにと。トレーナーが来ていることを気付いた少女達が食事を止めて、立ち上がって近づいてきた。

 

「こんばんわ。私は聖グロリアーナ女学院の戦車道の隊長、ダージリン。まさか、私たちを助けてくれたのが兵藤家当主の親類だったとは思わなかったわ」

 

長い金髪を編み後ろに結った碧眼・・・・・外国人の印象を窺わせる顔立ちの少女が開口一番に言いだした。知られていない事実を知っている彼女がどうして知っているのか、大方二人が話したからだろうと推察する。

 

「サンキュー、あなたのおかげで助かったわ。私はケイ、サンダース大学付属高校の戦車道の隊長よ」

 

髪はウェーブの掛かった金髪で、開放的で明るい性格そうな彼女から手を伸ばされた。握手に応じてその手を掴み握った。

 

「私はアンツィオ高校の戦車道の隊長、アンチョビだ」

 

黒リボンで結んだドリルツインテールとツリ目が特徴の少女とも握手を交わす。

 

「私はカチューシャよ。よーく覚えておきなさい」

 

彼女の容姿を語る上で外せないのが身長であり、127cmと女子高生とは思えないほど低い。瞳の色は青。八重歯がチャームポイント。金色のショートボブで、両サイドが若干広がっているカチューシャと自称した少女とも握手を交わす。

 

「私は知波単学園の西絹代と申します! 兵藤家の当主のお孫様とお会いできて誠に光栄であります!」

 

艶がある長い黒髪と黒目、軍人のような敬語を使う少女と握手を交わす。

 

「黒森峰女学院の戦車道の隊長、西住まほです。助けてくれて感謝します」

 

強い意志を秘めた瞳にショートボブカットの髪型な少女の手を握る。

 

「大洗女子学園の戦車道の隊長をしてます、西住みほです」

 

同じ西住、姉妹であることを認識した後に握手しながら口を開く。

 

「助けてくれてありがとうございますお兄さん」

 

「・・・・・気にするな、みほ」

 

お互い初対面ではない会話をすれば必然的に問われる。

 

「いっくん、知り合いなの?」

 

「みほ、彼と知り合いなのか?」

 

「うん。ボコ関係で初めて会ってからも、何度も会うからお友達なの」

 

「・・・・・ボコ仲間」

 

「ボ、ボコ・・・・・?」

 

男女の関係ではない様子だが、よくわからない関係で楼羅と悠璃はすぐに携帯で調べ始める。

 

「でも、お兄さんが兵藤家の当主の親類の人だったのは知らなかったですよ」

 

「・・・・・戦車道、知らなかった」

 

「お互い、深く詮索しないでいましたからね」

 

そして最後は一人だけ席に座ってるチューリップハットをかぶった長髪の少女。縦縞のセーターで身を包みフィンランドの民族楽器・カンテレを携えて鳴らした。

 

「継続高校の戦車道の隊長、ミカ」

 

以下8人からの自己紹介を聞き追えたトレーナーは一つ頷き、悠璃が代弁した。

 

「この子はいっくん。今はDって名乗っているけど、トレセン学園のトレーナー兼警備員兼女子寮の寮長の仕事をしてるよ」

 

「本名じゃないんでしょ? 新聞で見たわ。どうして兵藤の名を名乗らないかは聞かないけど、兵藤家の人間ってあんな奴らばかりなわけ? 楼羅と悠璃」

 

「全員が全員ではありませんが、力が全てと思い権力を暴走させる者が後を絶たない現状かと」

 

「目の上のたんこぶだよ兵藤家の重鎮の人にとって。世間に公表されたら間違いなくアウトな案件だし、それを必死に揉み消して隠そうとする兵藤家の人達も苦労していると思うよ」

 

「天皇家も一枚岩ではないということか」

 

「相手を格下として蔑む者はどこにでもいますからね」

 

そう言いつつカチューシャへ視線を送る楼羅。なによ、と言いたげに睨み返すカチューシャ。

 

「ところでさ、あなたはエンジェルなの?」

 

「・・・・・違う、天使になれる神器」

 

「はー神器を持っているのか。羨ましいな」

 

ケイの質問に同意すればアンチョビが感嘆の息を吐いた。

 

「安斎千代美さん」

 

「何度言えばわかる。私はアンチョビだ。で、なんだ楼羅」

 

「一般人が学園艦に入る時の手続きをこの子が知りたいって。アンツィオ学園を観光したいようです」

 

「そうなのか? それはネットで予約をすればいいんだぞ」

 

悠璃からアップルパイを貰うトレーナーがショタ狐となる姿に「うぇっ!?」とがおっかなびっくりしたアンチョビ。

 

「え、誰だ・・・・・?」

 

「え、いっくんだよ? アップルパイを食べる時だけちっちゃくて可愛くなるんだよ」

 

その際の身長は106cmとカチューシャより小さい幼稚園児並みである。

 

「ワオ! キューティクル! 可愛いじゃない!」

 

「おお・・・・・言葉に表せないこの不思議な気持ちは一体・・・・・」

 

「本当に愛らしい姿になるですのね」

 

「カチューシャより小さくなってる・・・・・」

 

「あの尻尾・・・・・みほより柔らかそうだ」

 

「お姉ちゃん? 何のこと言ってるの?」

 

「・・・・・(テレ~ン)」

 

あっという間に魅了されたかのようにショタ狐へ群がり、頭を撫でたり尻尾を触ったりなど相手が兵藤家当主の孫だろうとそんなこと忘れてしまう愛らしさに夢中になった。それから順番ずつ膝の上にトレーナーを乗せて抱きしめた状態で写真を撮る撮影会が始まり、カチューシャの場合は横に並んで撮る。

 

「・・・・・もういい?」

 

「ごめんねいっくん。もういいよ」

 

アップルパイを食べ終えてからもずっと撮影会が続き、頃合いを見て元の姿に戻るトレーナーに質問を飛ばされた。

 

「ねぇ、大きくなったり小っちゃくなったり・・・・・どうしてそんな事できるの?」

 

「・・・・・マジック、魔法」

 

「魔法? それ、自分以外にも魔法で身長を変えられるの?」

 

可能、と答えた矢先カチューシャが懇願した。

 

「カ、カチューシャにも大きくしてくれない?」

 

「・・・・・? 大きくなる?」

 

「だからお願いをしているんじゃない! ひっ!? えっと、な、なりたいんです、お願いします」

 

兵藤家当主の孫相手に失礼な言動をしてはならない、それ以前に悠璃の「何いっくんにそんな口の利き方をしているんだお前」と鋭い目つきと共に送られる無言の威圧(トレーナーが見えない位置から)に怯えて心が折られそうになり言葉遣いを訂正した。

 

「・・・・・明日の24時まで」

 

カチューシャの望みを一時的に叶えることにし、彼女の足元から魔方陣を展開。その中にいるカチューシャの身体がみるみるうちに成長していって、150cmほどで止まった。

 

「や、やったぁー!!」

 

念願の高身長を手に入れた喜びを全身で露にするカチューシャは、トレーナーに感謝の言葉を送ってから退室していった。

 

「ふふ、成長したカチューシャさんの姿はもう2度と見ることが無さそうね」

 

「あそこまで喜ぶほど、自分の身長に絶望していたんだろうな」

 

「儚い夢に終わるけれどね(テレ~ン)」

 

「ミ、ミカさん・・・・・」

 

程なくして彼女達も学園艦に戻る時間に迫ったのでお暇することになった際。

 

「これは助けていただいたお礼です。今度聖グロリアーナ女学院に遊びに来てほしいですわ」

 

「Dさん、是非ともアンツィオ高校に来てくれ!! たっぷりと料理を振る舞って歓迎してやるからな!」

 

「知波単学園にもお越しください!」

 

「美味しい料理をありがとう」

 

「サンダース大学付属高校にも来てね!」

 

別れの言葉を告げて去る各学戦車道の隊長たちを見送る。残りは西住姉妹のみとなった。

 

「お兄さん、今日は本当にありがとう。またボコミュージアムで会おうね」

 

「今回のことはお母様に説明させていただきます。きっとお母様からのお誘いが掛かると思いますが」

 

「・・・・・わかった。気を付けて帰る」

 

二人の頭に手を置いて優しい手つきで撫でる。父親以外頭を撫でられたことがないまほとみほは、新鮮な気持ちと大きな手から伝わる温かさにちょっとこそばゆく感じた。

 

「んっ!」

 

「・・・・・」

 

それがジェラシーに感じてならないと、楼羅と悠璃が頭を突き出して自分達も撫でろ! と込めて全身で訴えてきた。

 

 

「帰って来たわよ!」

 

「お帰りな・・・・・(硬直)」

 

「「んなっ(困惑)」」

 

「・・・・・(思考停止)」

 

とある学園艦に戻った隊長の変わり果てた姿を見た履修者達は幽霊を目撃したかのような言動をし、いつもと違う隊長に戸惑う1日を過ごすことになったのは別の話であった。

 

 

 

楼羅達も学園艦は帰り、ダージリンから貰ったティーセットと多くの紅茶の缶詰を持ってウマ娘達のところへ戻るや否や、トウカイテイオーが「トレーナーから知らない女の匂いがするー!」と騒ぎだしたので、自分達の知らないところで女と会っていたのかと嫉妬を込めた追及をされたトレーナーは。

 

「助けた戦車道の隊長達の前でアップルパイを食べたら撮影会させられた」

 

という説明をし、訊いた彼女達は頭では納得せざるを得ないものの心が納得いかない。

 

「むー、トレーナーの匂いを上書きしてやる」

 

という発言から就寝はトレーナーと添い寝をすることで自分を納得させることにしようとしたが。

 

「申し訳ございませんが、プライベートで未成年の異性のあなた方がご主人様と添い寝するのは控えさせていただきます。明日の週刊誌、新聞に『兵藤家当主の孫、旅館で担当ウマと密事!』という内容が載る可能性があります。それはあなた方にとってもご主人様にとっても避けねばならない事態です」

 

「どこかで私達を視ている者がいるということですか」

 

「一般人に変装している者も少なくはございません。そう言う者達は相手の隙を突いて撮るのが得意な者達なので、彼等に格好の餌食となるような言動を成人になるまでは『神器や魔法でも探られない場所』以外濃密な接触は自重してくださいませ」

 

意味深な言葉を交ぜてトレーナーとの添い寝を阻んだリーラ。彼女の言葉に従い別々の部屋で眠ることにしたのだが。

 

「ではご主人様。まずはご入浴をしましょう。何時までも女性の体臭を纏われていては他の女性が良く思われません。私が丁寧に隅々まで洗って差し上げます」

 

「・・・・・リーラ、入る?」

 

「私はご主人様の専属メイドの一人ですから」

 

酷く気になる言葉が聞こえてトレーナーに恋するウマ娘達の心を激しく揺さぶった。故に気になって仕方がなく一時間も待って旅館の風呂から出てきた二人が、リーラがトレーナーと同じ部屋に入る瞬間を目撃した。

 

 

 

 

 

 

 

西住家―――。

 

 

「まほ、みほ。あなた達に縁談の話があるわ」

 

「え・・・っ!?」

 

「お母様、私はドイツに留学しなければなりません。それにみほに縁談は早いのでは」

 

「あなた達がまだ幼い頃に交わした兵藤家との約束は反故できません」

 

「兵藤家・・・・・先日、私とみほはその兵藤家の者達に陵辱を受けたばかりだと言うことをお忘れですか」

 

「それとこれは関係ないことよ。相手は現当主のご子息。覚えてないでしょうけれど、二人と面識あるわ」

 

「兵藤家当主のご子息? ・・・・・Dさん、ですか?」

 

「彼は兵藤家の者ではないわ。もう一人の方、兄の誠輝さんよ」

 

「「・・・・・」」

 

「それとも、二人は恋慕を寄せてる相手がいるのかしら?」

 

「・・・・・いえ」

 

「・・・・・」

 

「なら、二人に杞憂させることがなければ縁談の話は進みます。よろしいですね」

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