ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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中華最強ウマ娘

とある日、トレセン学園にひときわ異彩を放つウマ娘の集団と初老の男性が辿り着き、正門の前に佇んでいる緑色の帽子と制服で身に包む女性、駿川たづなと初老の男性が言葉をいくつか交わすと、学園内に招かれるが二人ほど集団から途中で抜け出して敷地内を散策を独断で始めた。耳を澄ませ声を聞き取って一番多く聞こえる〝声〟の方へと足を進めたところ。

 

「はい?」

 

「・・・・・」

 

実寸大のトレーニングコースでヒトとウマ娘が併走している光景を目の当たりにしたのだった。それもそれなりに速いウマ娘とである。ヒトがウマ娘と走ろうと決して追いつくことも抜くことも出来ない。それがヒトとウマ娘の常識―――なのに―――。

 

「トレーナー、やっぱり速いねー」

 

「理由がアレだから絶対に勝てないでしょ」

 

「それでも、いつか必ず追い抜いてみせる」

 

聞えてくる会話。・・・・・ウマ娘が、勝てない? そんな人間がいるなど有り得ないと全てのウマ娘はそう一蹴するだろう。しかし実際はどうだ? トレーナーらしき赤い長髪男が圧倒的な差を開いたままウマ娘を置き去りに走り戻ってきたではないか。

 

「「・・・・・」」

 

「・・・・・」

 

唖然と見つめていたら名も知らぬトレーナーと目が合った。いくら距離が離れていようと目立つか―――。

 

「・・・・・誰」

 

「「っ!」」

 

コースにいたはずのトレーナーが音もなく一瞬で目と鼻の先の距離まで移動してきた。何だこの人間、本当に人間なのかと目を丸くし反射的に身構えた二人に再度問いかけられた。

 

「・・・・・誰」

 

「私達は中国から来た者だ」

 

「・・・・・理由」

 

「日本と中国のウマ娘、つまり私達とお前達と交流をするために」

 

そんな話は聞いていない。と言いたげに首を傾げるトレーナーを見る限り何も知らされてないのだろう。

 

「・・・・・二人?」

 

「私達が所属しているチームとトレーナーと一緒だ。ここに来たのは私達の独断であるがな」

 

「・・・・・わかった」

 

納得した様子のトレーナーは踵を返し、また音もなくトレーニングコースに置いてきたウマ娘達の元へ戻って行った。

 

「お姉様。あの男は一体・・・・・」

 

「わからない。だが・・・・・先程の走りを見せつけられて個人的に走ってみたくなってきた」

 

 

 

「お兄様、誰と話しているんだろう」

 

「見たことが無い服を着てるね。地方から来たウマ娘かな?」

 

「いや違う・・・・・! あのウマ娘は―――」

 

「ルドルフさん知ってるの?」

 

シンボリルドルフの反応にトウカイテイオーが素朴な疑問をぶつけた。返ってきた言葉はとんでもない答えで会った。

 

「あの巨躯で燃えてるような長い赤髪、そしてあの枷・・・・・間違いない。彼女は中華最強のウマ娘だ。名前は呂玲紀。またの名を赤兎―――」

 

「中華最強!?」

 

「文字通りだ。コースを選ばず短距離、マイル、中距離、長距離、良バ場だろうが不良バ場だろうと全て走り―――全てのレースにレコードタイムを叩き出し、走る全てのレースでは1着が当たり前だと傲岸不遜のウマ娘。それが彼女、赤兎だ。既に12冠以上の記録の保持者でもあるし私より速いウマ娘でもある」

 

「マジですか・・・・・。いや、何でそんな最強のウマ娘がこの学園に? まさかトレーナーさんの仕業?」

 

「「あり得る」」

 

「・・・・・違う」

 

「うわっ!?」

 

ナイスネイチャの言葉を否定しながら突如として戻ってきたトレーナー。吃驚した声を発するウマ娘達を気にせず淡々と話を進めるのだった。

 

「・・・・・学園側、日中のウマ娘の交流、あの二人以外、まだいる」

 

「トレーナーさんすら認知していない事実、ということですの?」

 

首肯するトレーナー。

 

「・・・・・訂正、シンボリルドルフ」

 

「一体何を」

 

「・・・・・信じてる、託された俺の皇帝」

 

「―――――」

 

相手が最強だろうが何だろうが、お前の方が速いと信じている。そう言外された気がしてならないシンボリルドルフの心が歓喜で熱く震えた。

 

「んっ・・・・・すまないトレーナーさん。少し弱音を吐いたようだ」

 

冷静に装うとしても揺れる尻尾までは気が回っていない様子で「あっ、言われて嬉しかったんだな」とシンボリルドルフの心情を彼女の近くにいたディープインパクトに察しられていた。

 

「・・・・・続き、トウカイテイオー」

 

「はーい!」

 

話は終わりだとトレーナーと並走するウマ娘を指名し、スタート位置に着くと同時にコースを走り出す。

 

 

 

「・・・・・手を抜いている様子ではない、か」

 

「目の前にしても目が疑う光景ですわお姉様。あれから何人ものウマ娘と並走しているというのにあのトレーナーの体力と末脚は無尽蔵ですの? 疲れの色を一切見せないなんて化け物ですわ」

 

トレーナーから話しかけられた後でもしばらく様子見していて、実寸大のトレーニングコースで走る数多のウマ娘が視界に入ろうが、ウマ娘と走る赤髪のトレーナーを注視していた。彼以外にもウマ娘と走るトレーナーがいて中央トレセン学園はこんなことをするのだなと新鮮さも覚えていた時に二人の背後から近づきながら声が飛んできた。

 

「あっ! こんなところにいた! 勝手な行動をしちゃダメでしょ!」

 

「もー心配したよー」

 

二人と同じ制服で身に包み、両腕と両脚に枷を着けたウマ娘達を率いる初老の男性が駿川たづなに案内してもらっているようだ。そしてトレーニングコースを眺めている二人のように皆も見下ろして眺めるのだった。

 

「へぇ、ここが日本の中央トレセン学園のトレーニングコース? コースの種類は色々あるみたいね」

 

「うん? なんかウマ娘と走ってる人間の人がいるねちらほらと」

 

「珍しい。私らのトレーナーとは大違いだ」

 

「あはは、確かにねぇ~」

 

ジッと他国のウマ娘の走る姿を目に焼き付けている中華のウマ娘達を他所に、初老の男性は駿川たづなに尋ねていた。この学園が誇るトレーナーはいるかと。彼女は笑顔で答えた。

 

「はい、おりますよ。Dトレーナーさ~ん!」

 

離れたところから呼ばれた声を拾って、トレーナーは脚に力を入れて軽く跳躍し駿川たづなの元へ移動した。その行動に中華のウマ娘達は目を丸くした。

 

「・・・・・なに」

 

「ご紹介したい方がおります。こちら中国からお越しいただいた箔さんと担当ウマ娘の皆さんです。後日理事長からご説明されるかと思われますが、日中のウマ娘の交流を深めるべくしばらくこの学園に滞在することになりますのでよろしくお願い致します」

 

説明を耳にしながらもトレーナー同士見つめ合っている。中国のトレーナー箔から手を差し伸べられ、握手に応じてその手に伸ばし握った瞬間だった。

 

握手し合ったトレーナー同士が突然宙で回って宙で体勢を立て直して立ったのだ。

 

「凄い。何者? トレーナーの手癖を初見で対応するどころか、あのトレーナーに同じことをしてみせるなんて初めて見た」

 

「・・・・・なるほど、そういうことか」

 

「赤兎? なにか分かったの?」

 

「あのトレーナーも武術の達人かそれ以上の領域に立っている。だからトレーナーの『試し』に反応で来たんだ。でなければ素人の人間がトレーナーを回すなんてことできる筈がない。おそらくあのトレーナーがこの学園で強い人間だ」

 

日本のトレーナーの担当ウマ娘達が何事だと駆けて来た。だがそれ以上の介入はできなかった。

 

「ふむ。中国からの客人の気配を感じて来てみれば、懐かしい顔がおるではないか。のぉ、箔」

 

中央トレセン学園の相談役である川神鉄心の登場で箔は構えを解いたからだ。どうやら昔からの知り合いらしく箔も返答した。

 

「・・・・・久しいな鉄心」

 

「そうじゃの。じゃが、いきなり勝負を吹っ掛けるではないわまったく。しかも相手は兵藤源氏の孫にじゃ」

 

「知っていた。先の大会を見て、元からそのつもりで試したまでだ。さすがはあの男の孫なだけある。いい動きをする」

 

「ふぉっふぉっふぉ。そうじゃろうそうじゃろう」

 

「なぜお前が自分の孫のように笑う」

 

赤兎達は別の意味で驚いていた。寡黙なトレーナーがあそこまで流暢に、長々と誰かと話しているところは今まで見たことが無いのだ。表情筋などないのではないかと疑うぐらい無表情が、箔の心情を表すかのように変わる様は愕然ものである。

 

「トレーナー、大丈夫か?」

 

オグリキャップからの問いに首肯で返すトレーナーはトレーニングの再開するべく踵を返そうとした。

 

が、何を考えての行動か。赤兎がトレーナーの肩を掴んで話しかけた。

 

「待て」

 

「・・・・・?」

 

「日中のウマ娘の交流の話を聞いたな。早速だが私と併走してもらおうか」

 

赤兎の提案に中国側のウマ娘達が「何を言い出すんだ」と風な表情を浮かべた。

 

「お姉様・・・・・いくら何でもそれは相手の方が可哀想ですわ。いくらウマ娘と走れようとお姉様の壁を超えられるほどではないかと」

 

「むっ! それは聞き捨てならないね! ボク達のトレーナーは相手が誰であろうと追い越すんだから!」

 

いち早くトウカイテイオーが否定するも、中国側はそれは無いといった雰囲気を醸し出す。

 

知っているからだ。全世界中のウマ娘が束になろうと赤兎には敵わないと。実際外国のウマ娘達と走ったわけではないが、生物的な本能で赤兎に勝てないと散々分からされてしまっているのだ。それは彼女達だけでなく本国の中国に住まうウマ娘達も例外ではない。だがトレーナーは肯定した。

 

「・・・・・わかった。3200M」

 

「いいだろう。武術の達人でありウマ娘と走れる相手だ。最初から全力で走るとしよう」

 

枷に手を伸ばし、鍵で全て外す赤兎を絶句する騅達。まさかそこまでの相手なのかと目を疑っているのだろう。

 

ドンッ!!

 

「「「・・・・・え?」」」

 

軽く地面が凹む。赤兎が外した首の枷を落とした原因だ。一つの枷にどれぐらい重いのか想像もつかないシンボリルドルフ達は二人の勝負の行方が分からなくなってきたことを悟った。

 

スタート位置に並ぶ二人の為に、これから走る芝のコースでトレーニングしていたウマ娘達に声を掛けて空けてもらった。どうして中国のウマ娘がいるのか、どうして相手がウマ娘ではなくトレーナーなのか疑問を抱くも興味津々で二人の走りを見守る姿勢になり、シンボリルドルフがスタート宣言を買って出て手を挙げた。

 

「よーい、スタート!」

 

と訊いた刹那。二人の姿が瞬く間に消失した。スタート地点から一気に駆け出す二人はもう200Mを越えた先にいたのだ。

 

「嘘!? あのお姉様の全力の走りに併走できますの!?」

 

騅の驚愕は赤兎にとって嬉しい誤算であった。今の全力の自分なら同じレースを走るウマ娘達などこの瞬間から置き去りにして勝ちレースばかりであった。当然全員が全員ではないがそれでも後ろではなく隣に、肩を並んで同じ速度で併走できるウマ娘おろか人間だっていなかった。赤兎は己の選択は間違いではなかったことに狂喜、3200Mではなく時間無制限の持久走にすればと残念がった。何故ならもう光陰矢の如し以上も早く、そんな思考の海に潜って考えていた間に―――3000Mも走り切って今ではもうゴールが目の前なのだから。赤兎の隣にはまだ赤髪のトレーナーがいる。自分を超える最も近い存在が―――。

 

―――ようやく、敗北を知ることができるか? この私が負けるのか・・・・・? そう過る思考の中、赤兎の心が激しく燃え盛り出す。仮に負けるとしても限界の先を超えてから負けるべきではないかと!

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

芝が大きく抉り大穴を作るほどの末脚を発揮し、ここにきてラストパートを仕掛けた赤兎が文字通り長髪と瞳を燃え上がらせた。まるで炎に生命が吹き込まれたかのように、彼女の速度を更に後押ししていく。

 

「・・・・・久しぶりに見た。お姉様の火炎・・・・・」

 

これまで片手で数えるしかしなかった全力の走りをし、ここまで自分を敗北を匂わせる相手は今初めてできたにも拘らず、この瞬間を後悔しない走りをしたい強い想いを末脚と心に宿した赤兎の目の前にトレーナーの背中が視界に入る。限界の先、最高速を超越した者しか分からない世界の領域に足を踏んでいるというのにこの男はっ・・・・・!!

 

「・・・・・強いなっ」

 

それでも赤兎の末脚は衰えずトレーナーに食いつくどころか追い越さんと肩を並べるまで追いついた。このままゴールするのかと思われたが、最後にトレーナーが赤兎より前に顔を出した状態でゴールしたことで勝敗はトレーナーの勝利に収まった。

 

「負けたか・・・・・」

 

「・・・・・一番、ちょっと疲れた」

 

初めて負けた気分はこんな感じかと敗北を噛みしめている赤兎は深い息を吐くトレーナーへ手を伸ばした。

 

「今まで走った中で最高だった。お前がいるこの日本に来てよかった。また私と走って欲しい。次は絶対に負けない」

 

「・・・・・また、負かす」

 

「言ってくれる。だが、それでこそ私を負かした男だ」

 

トレーナーが赤兎の握手に応じて手を握った矢先だった。握手しながら抱擁するつもりなのかもう片方の手をトレーナーの背中―――。

 

「お前のことが気に入った。私の伴侶になってもらう」

 

「・・・・・え?」

 

ではなく、逃がさないよう後頭部に回した状態で握手した手を自分の方へ引き寄せた赤兎が、あろうことかトレーナーの唇を重ねたのである。

 

『っ―――!?!?!?!?』

 

「んなっ、おっ、おおおおおお姉様ぁああああああああああああああああああああ!?」

 

日中のウマ娘全員に雷の衝撃が襲う。特にシンボリルドルフ達は好意を打ち明けようとそれ以上の事は誰もせずにいたのに、よりにもよって虎視眈々と狙っていたトレーナーの初めてを目の前で奪われたショックは凄まじい。阿鼻叫喚の叫びがトレーニングコース中から響き渡った。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

『えーっ!? Dがキスされたぁー!?』

 

シンボリルドルフ達のみ集まり、トレーナーに対しての議題を話し合うことになりカフェテリアで深刻そうな面持ちで顔を突き合わせた時。シンボリルドルフの携帯が鳴り出し連絡相手が皆川夏梅であったためにスピーカーモードで繋げた。彼女からトレーナーの近況を聞かれたので今日起きた事をありのままに教えたら素っ頓狂に驚かれた。

 

「トレーナーさんなら回避など容易い。なのに敢えてしなかったのは予想外だ」

 

『あー・・・・・あなた達は知らないわよね。Dって敢えて躱そうとしない傾向があるのよ』

 

「躱さない? それは何故?」

 

『それは私達も理由が分からないわ。致命傷の攻撃を自ら受けて戦うDは、自分の身体がどれだけ傷ついても厭わないから』

 

夏梅達しか知らないトレーナーの情報はシンボリルドルフ達にも伝わる。

 

『心が壊れているからって理由にはならないでしょうけど、Dは基本的に受けの姿勢で戦うことが多いわ。大方簡単にキスされたのも無関心だったかもしれない』

 

「無関心って・・・・・」

 

『キスされても態度、変わらなかったでしょ?』

 

そう言われて赤兎に唇を奪われた直後のトレーナーを思い出し、確かに無表情だったと認知した。

 

『まぁ、もしもあなた達がキスやDをエッチな意味で襲い掛かろうとDは受け入れてくれると思うわよ』

 

「「「「「んな―――っ!?」」」」」

 

幾人か顔を赤くなる。通信状態ではウマ娘達の様子はわからないが、声からして動揺しているのだろうと夏梅は微笑する。

 

『あ、でも無理矢理は駄目だよ。Dは繊細だからね』

 

「「「「「繊細?」」」」」

 

『心がだよっ!?』

 

一体どの辺りがと思っていたら夏梅からの指摘に納得した。

 

「ところで、夏梅さん達はトレーナーさんと会わないのですか?」

 

『しばらくは会わないかなー。てか、アザゼル総督のせいで堕天使の陣営から離れちゃったから、今まで利用できた場所もDは利用できなくなってるからねぇ。ヤンキー共はともかく鳶雄と氷の魔女さんもといラヴィニアはバーで働いている方が多いから会えるしいいけどね』

 

「バー?」

 

『うん、そうよ。気になるならDに頼んでみたら? 案内してくれると思うわよ。鳶雄の手料理も美味しいから損はさせないわ』

 

「わかりました。いずれ行ってみます」

 

『うん、それじゃそろそろ切るね。また近況確認するかもだから。じゃーね』

 

通信が切れた携帯を仕舞うシンボリルドルフ。

 

「マスターは受け・・・・・」

 

「ブルボンさん、トレーナーさんに変な考えをしてはなりませんわよ」

 

「ですが、今思えばマスターは嫌な顔を一つもせず私達の要望を応えています。そう言う意味で受けの姿勢ではないかと」

 

「確かに・・・・・」

 

「お兄様を休ませることができないかな」

 

「そもそもトレーナーの休日ってどんな過ごし方をしているのか、当たり前だが私達は知らないぞ」

 

ナリタブライアンの言葉で唸りながら悩む一同だったが、マンハッタンカフェがポツリと零す。

 

「常に同じ場所にいる人ならば知って良そうですが・・・・・あっ」

 

「心当たりでも思い出した?」

 

「多分・・・・・玲子さんなら知っていると、思いますが」

 

あの幽霊ならば・・・・・というマンハッタンカフェの指摘でシンボリルドルフはテレビを点けて映像の中にいる住人を呼んだ。

 

「アノ皆サン、私ニ何カ・・・?」

 

単刀直入に普段トレーナーは休日になるとどんな風に過ごしているのか、かくかくしかじかと尋ねた。

 

「Dサンハ普段、ウマ娘ト過ゴシテイマスヨ?」

 

そのウマ娘とは自分達の事だと気付かされるウマ娘達だった。

 

「私達と過ごしていない時のトレーナーさんを知らないかしら?」

 

「ワカリマセン。出カケテイルコトガ多イノデ」

 

「出かけている?」

 

「多イ時ハ、タクサンノ食ベ物ヲ買イ溜メシテ料理ノ研究ヲシテイマスネ。皆サンニ食ベサセルタメニ」

 

何だか自分達の為に休日すら動いているように思えてならず、休んでいないのではないかと申し訳なく感じてしまう。

 

「遊びに行かないのかねぇトレーナーさん」

 

「いや、トレーナーが楽しそうに遊ぶ想像できないだろ」

 

「・・・・・ひ、否定できないっ!」

 

笑うなんて、好物を食べることぐらいしか浮かべない。他はどんな時に笑ったか? 見たこともない!

 

「ところで、トレーナーさんはどこに?」

 

「トレーナーの部屋で仕事じゃない?」

 

否、トレーナーはテーマパークに訪れていた。そこで待ち合わせした茶髪のボブカットの少女、暗い顔をしてる西住みほと会った。その隣には姉のまほまでおり。

 

「お、お久し振りですっ」

 

「こんにちは」

 

「・・・・・こんにちは」

 

「・・・・・」

 

みほと同じ学園の生徒であり、西住姉妹と一緒に助けた見知った顔が4つも並んでいた。

 

「・・・・・理由」

 

「理由・・・・・?」

 

「・・・・・まほとみほ」

 

顔が暗い理由を教えろ、と伝えたいDの気持ちを酌んだ大和撫子風の美少女が懇願する。

 

「みほさんとお姉さん。兵藤家の方と縁談の話が挙がって、このままでは学園艦から離れて結婚してしまうかもしれないのです」

 

「・・・・・」

 

「あ、あのっ! あなたならなんとかできませんかっ!? みぽりん、まだ結婚したくないって、私達に酷いことをした兵藤家の人となんて絶対に結婚なんて、私達もさせたくないんです!」

 

「身勝手なお願いですが・・・・・兵藤家相手では私達はどうすることもできません。力及ばすの私達は無力で悔しいです」

 

「お願いする。西住さんを救ってください」

 

彼女の友人達の真摯な想いを耳にしながらも、Dは姉妹に左目で視線を送る。

 

「・・・・・まほ、みほ、嫌? 縁談、断れる」

 

「・・・・・まだ、結婚も皆と離れるのも嫌です。でも、お母さんは断れないって。相手は兵藤家の当主の子息だからって、お姉ちゃんと結婚させられそうで」

 

「・・・・・」

 

あの男が助けたばかりの二人の相手? Dの中で沸き上がる怒気を抑え込み、二人の頭に手を置いて断言した。

 

「・・・・・任せろ。二人を守る」

 

「っ・・・・・Dさんっ」

 

「・・・・・お願いしますDさん」

 

「「「「お願いします!」」」」

 

四人の少女達から頭を下げられたDは、まほとみほから離れ少し待ってもらう言葉を残し、一気に京都へ転移魔法で跳んだ。死んでも来たくもない場所だが、理不尽に抗えない無力な者のために動くことを惜しまない。

 

「・・・・・リーラ」

 

『何でしょうご主人様』

 

「・・・・・お爺ちゃん、今すぐ会う。京都にいる」

 

『そのようにお伝えします』

 

リーラとの通信が途切れ兵藤家の本家の門の前で待つこと五分。鈍重に開きだす門の向こうから兵藤源氏が佇んでいた。

 

「孫よ。どうした」

 

「・・・・・兵藤誠輝、縁談」

 

「・・・? すまない。その話は身に覚えがない。ましてや馬鹿息子の子供の縁談など、設けた覚えもないが」

 

「・・・・・? 戦車道、西住、兵藤家当主の息子、縁談」

 

「戦車道だと? ・・・・・ついてきなさい」

 

言われるがままに本家の中に入り、真っ直ぐ当主の一家だけが入ることを許される家屋に足を運んだ。源氏は目的の人物である兵藤誠のところへ足を運び、書物に囲まれ精神的に疲弊してる自分の息子に一言申した。

 

「誠、説明してもらおうか」

 

「何が、って一誠・・・・・なんでここにっ」

 

「・・・・・戦車道、西住、縁談」

 

「戦車道の西住? ああ、確かに昔会ったことがあるぞ。お前と誠輝がまだ小さかった頃にな。でも、どうしてお前が西住さんのこと知ってるんだ? それに、縁談って・・・あっ!」

 

いま思い出したと声を出した誠にこいつ、忘れていたな。Dと源氏の気持ちがひとつになった。

 

「馬鹿息子、私の知らないところで縁談の話をしたのか?」

 

「いや、えと、四人とも仲良かったから成長したらお互いの子供を結婚させようぜ! ってきな話を酔った勢いでしたような・・・・・」

 

「・・・・・殺す?」

 

「殺しても勝手に復活する馬鹿息子だから無理だ孫よ」

 

酒が入った状態で勝手に結婚をさせられかけた子供の気持ちを、どうやって教え込んでやろうかと思うも、面倒になったので殺気を消した。

 

「・・・・・向こう、覚えてる。縁談、結婚、そのつもり」

 

「そうなのか・・・・・。因みに一誠、お前は結婚するきはあるか?」

 

「・・・・・身勝手な婚約をされてる」

 

「えっ、お前が婚約を!? 相手はどこの誰だ!」

 

「・・・・・姫島」

 

小さく呟く相手の名前に源氏と誠の目が見開いた。

 

「正気か一誠!?」

 

「・・・・・お前に言われたくない。酔っぱらって婚約の口約束、子供の人生軽視してる。しかも忘れていた」

 

「確かにな。兵藤家の者として何を考えているのだ貴様。先方の方をその気にさせておいて貴様は何一つ準備も進めていないではないか」

 

「ぐっ! い、今からなんとか準備をするよ!」

 

「何の準備だ?」

 

「え、えっと・・・・・」

 

ダメだこいつ。と源氏とDは呆れた顔で深い溜め息を吐いた。

 

「言っておくが私は手を貸さないぞ。お前と義娘の仕出かしたことだからな。自分の不始末は自分で解決しろ」

 

「い、一誠・・・・・?」

 

藁にすがる誠の態度にゴミを見る目で見つめながら、手を伸ばす。

 

「・・・・・手紙、寄越す」

 

「手紙? なんのだ?」

 

「・・・・・婚約破棄。嫌だと言わせない」

 

「もしかして、向こうはそれを望んでるのか?」

 

「・・・・・姉妹、理不尽、嫌がってる。兵藤家、正式の婚約破棄の証。寄越す。それで解決」

 

それを聞いて誠は急いで手紙を用意する。口約束した本人が忘れていたならば、本気で縁談をしようとも思ってなかっただろうし、準備すらしていないのだ。兵藤家の当主としてそれはあってはならないことである。今さら婚約の縁談の約束を忘れていたなど言える筈もなく、当人同士が話し合い兵藤家と直接関係してるDだからこそ、こうして婚約破棄の話を持ちかけられるのだ。それで誠の名誉も守られ、穏便に事が進めるなら手紙の1通や2通、いくらでも書いてみせると言う誠の気持ちが1通の手紙に込められた。内容を確認して問題ないと頷き、折り畳んで封の中に仕舞った。

 

「頼んだ一誠! 俺の息子よ!」

 

「・・・・・貸し、大きい。お爺ちゃん、また」

 

「すまない孫よ。こやつの尻拭いをしてもらってな」

 

「・・・・・次、アップルパイ」

 

「アザゼル殿に頼んでドラゴンアップルパイを用意しよう」

 

源氏から嬉しい口約束に、薄く笑って魔方陣の光に包まれて二人の前からいなくなった。

 

「・・・・・一誠、笑ったか」

 

「記録に残したかった」

 

そして、テーマパークに戻ったDはしばらく待ってもらっていた少女達に、まほに手紙を渡す。

 

「・・・・・確認」

 

「はい」

 

封から取り出す手紙を開いて、誠が書いた内容を横から見るみほと静かに目を通して読み確認する。少しして読み終えた二人も納得と安心できる内容であることにDに深々と頭を下げた。

 

「ありがとうございますDさん。これでお母様も縁談の話を無かったことにするしかないです」

 

「お兄さん、ありがとうございます!」

 

「・・・・・ん、よかった」

 

心から安堵する姉妹を見て、Dも安心して笑った。その笑顔を見たまほとみほは目が離せなくなり、みほの友人達も見惚れた様子でDの顔を見つめる。

 

「・・・・・みほ」

 

「なに、お姉ちゃん」

 

「Dさんは素敵な男性だ。私達のために不可能を可能にしてくれた。無名校の学園から戦車道を復活させて、不可能だと決められていたお前達が黒森峰を打破して優勝したように」

 

「それは皆のおかげだよ」

 

それは間違いない。友人達がDと携帯を突き出し合いアドレス交換をしているようで、特に明るい茶髪のセミロングの少女が携帯を天に掲げて、初めて異性の電話番号とアドレスを手に入れた喜びで顔が凄く輝いていた。

 

「・・・みほ、Dさんのことどう思っている」

 

「素敵な人、だって思っているよ。・・・もしかしてお姉ちゃん」

 

姉妹の中で通じてしまった。妹が言わんとしていることを姉は口元に人差し指を立てて「しー」と、姉妹の間のみの内緒にした。

 

「私も彼と交換してくる」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

優しい笑みで姉を見送るみほは確信する。Dの大きな手に頭を撫でられ小さく口元を笑むまほを見て。

 

「負けられない、かな?」

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