ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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兵藤家と西住家

「・・・・・」

 

現在、ウマ娘達の親族と面談をしているトレーナー。大事な娘を預かっている親の信頼を得る大切な機会。一人一人親と娘が一緒に連れ添ってトレーナーと娘の学校生活の話をするのだが。

 

「娘の担当トレーナーさんが兵藤家当主のお孫さんとは知らず、娘が粗相な事をしておりませんでしょうか?」

 

「・・・・・トレーニング、真剣、問題はない。チームメイトと関係は良好。トレーナーとウマ娘、レースに向けて真摯に練習」

 

「そ、そうですか。あ、あの・・・これからも娘のことよろしくお願いします。もしも娘が失礼なことをしたらどうか教えてください。お詫び申し上げにまいりますから」

 

「・・・・・ん」

 

兵藤家を拒絶、親子の縁を切ろうが出生の事実を変えられない。兵藤家の~という肩書も常に付き纏ってくる。面談したほぼ全員がトレーナーのことを兵藤家の名を口にして畏怖して辟易させた。そんな親とトレーナーの会話と態度を知らないウマ娘はトレーニングを休みにされて、トレーナーの部屋で過ごすウマ娘はそこから当たり前のように自分の両親とトレーナーの会話のやり取りを盗撮盗聴していた最中、次の面会相手が入ってくる。

 

「・・・・・初めまして、サトノダイヤモンドのお父さん」

 

「初めましてチームシリウスのトレーナーさん。暴漢から娘を救ってもらった話を聞いた時からいつかお会いしたいと思っておりました」

 

「・・・・・感謝、不要、できること、実行」

 

「だとしても、娘が傷物にされずに済んだのはトレーナーさんのおかげです」

 

頭を下げるサトノダイヤモンドの父親は次に質問をした。

 

「チームは違いますが、娘はどうですか。元気でやっていますか」

 

「・・・・・走っている姿、スピカのトレーナーの指導、友人、良好」

 

「そうですか。ところでトレーナーさんとも交流は?」

 

「・・・・・ある」

 

大事な愛娘とどう過ごしているのか気になる父親か、娘が見ていることを知らず根掘り葉掘り知ろうとしてて、後でドヤされることもしらず更なる関係も聞いた。

 

「蝶よ花よと愛情を注いで育てたので、贔屓目でも美しい娘になったと自負していますが、トレーナーさんからも見てダイヤは可愛いと思いますか」

 

「・・・・・結婚、花嫁、自慢」

 

「トレーナーさんもお墨付きとならばどうでしょうか・・・・・娘と結婚を前提にお付き合いをしてみますか?」

 

「・・・・・? ・・・・・来る」

 

何かを察知したトレーナーの呟きにサトノダイヤモンドの父親は不思議そうに首を傾げ、勢いよく開かれる扉に驚いて反射的に振り返る。

 

「お~父~さ~ま~・・・・・」

 

「ダ、ダイヤッ・・・・・?」

 

そこには羞恥心でからか、純粋な怒りからか・・・顔を真っ赤にしたサトノダイヤモンドがいて自分の父親に詰め寄って叫んだ。

 

「―――トレーナーさんに恥ずかしいこと言うお父さまとはしばらく口を利きません!!」

 

「んなっ―――!?」

 

「それにトレーナーさんとはまだ恋仲の関係ではないのに、勝手に決めないでください! 私がトレーナーさんの心を射止めてみせます!」

 

「・・・・・射止める、攻撃?」

 

「違いますよ。恋愛的な意味です」

 

恋愛的な意味でどうやって自分の心を射止めるのか理解できないトレーナー。心底不思議そうにサトノダイヤモンドを見て、次に父親へ見やる。

 

「・・・・・お父さん」

 

「なんでしょう」

 

「・・・・・夏季休暇後、学園側、恋愛届なるもの、トレーナーとウマ娘の恋愛認知、判子」

 

「・・・・・わかりました。娘から改めて話を伺うことになることでしょう。慎重な検討をします」

 

面談の時間は終わって退室するサトノダイヤモンドの父親は、娘の機嫌を直すべく部屋から出ると奮闘し始めたのはい別の話。

 

「・・・・・終わり」

 

「はい、お疲れ様ですトレーナーさん」

 

お茶を淹れた駿川たづなが入って手渡す。

 

「どうでしたか?」

 

「・・・・・兵藤家、認識」

 

「仕方がありません。世間はDさんのことを強くそのように認識してしまっていますから」

 

テーブルに上半身を突っ伏し、アザゼルに対する愚痴を心の中でするトレーナーを知らずとも駿川たづなは優しく話しかけ労った。

 

「・・・・・この後」

 

「はい、Dさんの面会は終わりです」

 

「・・・・・なら、行く」

 

お茶を飲み干した湯飲みを彼女に返し寮長室へと戻りに行くのだろうトレーナーに、お疲れ様でしたと言葉を送る駿川たづな。トレーナーはこの後、一人で次なる学園艦へ遊びにおもむくつもりだ。

 

 

大和女学園へ。

 

 

―――大和女学園。

 

華道・茶道といった女子の嗜みと礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指している学園艦。他の学園艦と違うところは良き妻、良き母、良き職業婦人を目指す精神統一、ガチ勢であること。大和撫子の体現、日本女子の代表として心身共に美しく―――。

 

「いらっしゃーい! いっくーんっ!!」

 

学園の正門の前、笑顔で出迎える兵藤悠璃の抱擁から歓迎が始まった。赤と白の和服を制服として身に包んでいる彼女とDを微笑む楼羅も夏の太陽の日差しに照らされているのに、汗一つ掻かないでいる。しかもDがいる場所は北海道の港だ。

 

「Dさん、他の方は? ウマ娘の皆さん来ていらっしゃらないのですか?」

 

「・・・・・物凄く拒絶された」

 

「まぁ、そうでしたか」

 

「いてもいなくても、私はいっくんが来てくれただけで嬉しいけどね」

 

また秘密にしなくてはならないことが起きるならば、機嫌を損なってしまう考慮も含めてトレーナーの誘いを断固拒否したウマ娘であった。

 

「・・・・・学園艦、案内」

 

「色んな所へ連れて行ってあげるよ!」

 

「ではまず、私達の学園の中を案内します。今は休校しているので部活動している生徒以外は他の生徒の方々の目に入りません」

 

「戦車も乗ってみるー? 戦車道だけは土曜と日曜以外一日もやってるんだー」

 

「・・・・・乗る」

 

日本家屋の作りの学園はとても広く、悠璃と楼羅と来客用のスリッパを履いて中を歩くD以外生徒教師は誰もおらず、静寂に支配されている。まず向かった先は何百と敷かれた畳の広間。ここで全員揃ってから昼食するそうだ。黒檀の横長のテーブルが数えきれないほど設置されていて、二人のような制服姿の女子たちが正座して一誠に食べる想像は難しくない。料理のメニューはすべて和食もので、寒い時期になると鍋料理が食べられるとのこと。

 

「ここはこんな感じだけどだけど、トレセン学園の食堂はどんな感じ?」

 

「・・・・・空間、料理、広い、豊富。俺も作る」

 

「Dさんも作られるんですか?」

 

「食べてみたい! 出きるなら今日!」

 

手作り料理を作る約束を交わしたDは二人に次の場所へ案内してもらった。部活動している女子生徒を眺め、体験できる部活は体験させてもらったり、たまに体を触ってきたり二人とはどういう関係か質問を受け(幼なじみ以上恋人未満)・・・・・悠璃が「婚約している!」 と豪語したことでDもそう言えば、と思い出した。

 

そう言い触らしたので後日、大和女学園は二人の話題で持ち上がるがDは知る由もないことだ。

 

「それじゃあ、本命中の本命の―――戦車道だよ!」

 

学園艦から出発した車で向かった先、空気が戦車の発砲で轟く場所で悠璃が叫んだ。北海道ならではの広い敷地で射撃と走行、バトルロワイヤルなどして練習に励んでいる。

 

戦車同士が発砲しあって相手を倒す光景を見守るのはDだけでなく、気配を殺してかなら遠くから眺めている複数以上、さらには堂々と変装してスパイ行為をしてる大洗女子を見掛けたときは首をかしげた。

 

「放っておいていいよ」

 

「私達は大会に参加できないので他の戦車道の人達が紛れ込んでいようと自由にさせているのです」

 

「・・・・・危機管理」

 

「大丈夫だよ。秘密にしてるようなものなんてないし、どこの戦車道チームと大体同じだし」

 

同じなのかどうかはさておき、悠璃が運転する車は北海道の街道町へ走り有料の駐車場へ止めて二人はDの両脇を固めて北海道のグルメを楽しむ考えを決行した。

 

「えへへ、いっくんと食事なんてホント久しぶりだね楼羅!」

 

「本当に。あの頃の子を知っている者として、今のDさんが色んな料理を食べるようになっていることに喜びを感じます」

 

「・・・・・」

 

ある店の中に入り注文をした三人の脳裏に、子供だった頃の過去が過る。

 

「・・・・・メイド」

 

「ベルファスト達は私達が高校生になると従者の任が解かれて、別の兵藤家の者の従者になっております」

 

「・・・・・全員?」

 

「うん。でも、未成年の私達が外出する際は離れた従者を一時だけ呼び戻して侍従させることができるよ」

 

何時だったか、鳶雄達といた頃に出くわした三人の愚者の主に従っていた従者もその類だったのかもしれない。

 

「Dさん、異世界は楽しかったですか?」

 

「・・・・・普通」

 

「いっくんが過ごした世界にいる私達はどうだった?」

 

「・・・・・家族団欒」

 

「では、結婚していたのですね悠璃」

 

「そうだよきっと。そして私達もね」

 

喜々として声を弾ませる悠璃、綺麗な微笑みをDに向ける楼羅に挟まれる形でいるD。幸せオーラを放ち周囲の客達が微笑まし気に見ていたことに気付いていないが、三人は運ばれてきた料理の味を楽しむため箸を持った。

 

「う~ん、美味しいね。何度も食べても北海道の料理は美味しいよ」

 

「食べ慣れていない料理を食べるのがこんなに楽しく思うなんて、思いもしませんでしたからね。お父様たちにお土産を買いましょうか」

 

「・・・・・」

 

両脇から聞こえる話でDもお土産に買おうと心に決めた。好物が分かりやすいメジロマックイーンにはあったらメロンでも買えば喜んでくれるだろうと。

 

「いっくん、またこうして一緒に食べに行こうね」

 

「・・・・・約束」

 

「ええ。次はどこで何を食べましょうか」

 

久し振りに幼馴染みの二人と食べる時間は懐かしく思い出させる。食事や観光がてら歩き回って歩くDは、二人に背中を押されるのではなく自らの意思で二人と肩を並べて歩く今、昔の自分と比較するまでもなくあれからもうこんなに時が過ぎたんだなとも感じた時だった。ポケットに仕舞っていた携帯からメロディが聞こえる。

 

「・・・・・はい。・・・・・。・・・・・わかった」

 

「誰から?」

 

通信を切った瞬間から悠璃が尋ねた。

 

「・・・・・トレセン学園、俺に客、西住家」

 

「もしかして西住まほとみほの家の?」

 

首肯するD。兵藤家が迷惑をかけたことに関してなら自分達も無関係ではないのが、Dが働いている場所の見学できる気持ちで同行する思いを伝えた。

 

「・・・・・門限」

 

「大丈夫ですよ」

 

「そもそも私たち夏休み中は兵藤家に戻っているから、学園艦にいないんだよ」

 

Dのためにわざわざ学園艦に戻って案内した事実を察し、感謝の言葉を送った。トレセン学園へ二人も一緒に戻ることに異を唱えないDは魔法であっという間にとんぼ返りする。

 

「ここが中央トレセン学園」

 

「いっくんが三年間働いている場所なんだ・・・」

 

神妙な表情で感傷に浸る二人。誰にも気づかれていない内にこの場所で三年も過ごしていたDはどんな気持ちで過ごしていたのだろうかと、二人の内心を知る由もないDの催促の声に従い足を運び出す。

 

軽く学園内の詳細を教えつつ赴いた学園長室に辿り着き、ノックして中から入室の許可の声が聞こえると扉を開けた。中には黒い長髪と黒い瞳、黒いスーツで身に包んだ女性を挟み、先日の婚約騒動を解消した姉妹もソファーに座っていた。

 

「感謝ッ! では、私は席を外す。ゆっくりと話し合いをしてくれたまえ!」

 

被った帽子の上に黒猫を乗せる変わった見た目が少女の女性の秋川やよいが去ることで、件の当事者と母親のみの空間となりD達は彼女達の前にあるソファーに座る。

 

「この度、私の娘達を助けていただき感謝します。私は西住しほ、二人の母親です」

 

名乗る女性は短くお辞儀して悠璃と楼羅にも目を配る。

 

「そちらの方々は」

 

「申し遅れました。私は兵藤楼羅。こちらは妹の兵藤悠璃。天皇兵藤源氏の娘です」

 

「・・・・・天皇の皇女様でしたか」

 

「・・・・・久し振り」

 

不意にそう言い出すDに四人の少女等が「えっ?」と漏らした。Dの視線は西住しほに向いている。つまりは・・・・・。

 

「お母さま、Dさんと知り合いでしたか?」

 

「・・・ええ、少しの間だけね」

 

「・・・・・屋台のおでん、一緒に飲食、その帰りにナンパに絡まれた。助けた」

 

娘の知らぬ間にそんなことがあった話を初めて知った。Dは西住家の恩人となっていたことも驚きであるが、いつの間に出会っていたのだろうか?

 

「本題に入らせてもらいます」

 

「・・・・・お願い」

 

ここに来たのと自分を指名した理由の催促するDに視線を戻す西住しほは、懐に忍ばせていた封筒を取り出しDの前に置いた。

 

「娘達から渡された兵藤誠さんからの謝罪文を読ませていただきました。当時、酔いが回っていた私も相手が相手だったために無下で断れなかった―――という理由で言い訳をするつもりありませんが・・・・・」

 

「・・・・・そっちも酔っ払い、事実」

 

ジト目で睥睨されるその視線から逃れる風に瞼を降ろす西住しほ。

 

「婚約を臨んでいなかった娘達の為に、絶縁した自分の父親に謝罪文を書かせたあなたの深意を知りたく、ここに来ました。一体なぜ親同士の口約束とはいえ同意した婚約を無効にしたのか、と」

 

「・・・・・理不尽」

 

「それだけ、ですか」

 

頷くDに西住しほは肩透かした気分だった。

 

「親の言動に子が理不尽に思うのは仕方のないことです。それは常日頃だとしても受け入れる精神力と気持ちがなくては―――」

 

「・・・・・心が壊れても構わない、そう言いたいのか」

 

左眼の瞳孔が鋭くなりDから放たれる威圧に、西住しほは押し黙った。

 

「・・・・・今回、助けられた。でも、他の理不尽、できない。二人は幸運」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・いる、断れない相手、存在。だけど、嫌がる、理不尽、苛まれる心、抗えない子供、少しでも助ける、親心皆無か」

 

追及される西住しほから言葉が返ってこないことに目を細め、苛立ちを覚えるところ。彼女が静かに口を開きだした。

 

「自分も命にかかわる壮絶な理不尽に遭ったから、他人事のように思えない気持ちで婚約を解消させたのだと言いたいのですか」

 

「・・・・・否、第二の俺、阻止。子供の人生、子供の。親の、大人の玩具、否」

 

「・・・・・」

 

「―――親だからって自分の意見を突っぱねないで、子供の本音を聞け。それでも親なのか。お前は嫌いなクソ親父と同類だ」

 

年下から耳が痛いことを言われても表情を一つも変えない西住しほも質問をした。

 

「ご両親のことは嫌いなのですか」

 

「・・・・・家族愛、皆無。存在感、虚無」

 

「復縁を求められてもなのですか」

 

「・・・・・殴り飛ばす、蹴り飛ばす」

 

本気で言っている目をしているDを見てしまったまほとみほ。自分では絶対にできないし、しないことをするつもりでいるDからそこまで嫌っているのかと思わされるほど伝わり、関係の修復は絶望的だと察した。

 

「お母さま。私とみほにDさんのような思いを抱かさせないでください」

 

「・・・・・わかってます」

 

自分達もDのようになってもおかしくない危機感を覚えたのは言うまでもない。

 

「・・・・・用件、終わり?」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

であれば、もういいだろう。どこからともなく取り出したアップルパイを一口食べればショタ狐となるD。

美味しそうな顔で食べる表情と愛らしい姿に四人の少女達の視線を釘付けにした。

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

せっかくトレセン学園にきたのだから、見学させようとDの図りで五人は学園内を案内を受けることになった。なので形から入るDは警備員の制服を身に包んだ姿で案内する。

 

「いっくんの生制服姿だぁー!!」

 

「素敵です。Dさん・・・っ」

 

初めてみる悠璃と楼羅からすれば記念すべきDの晴れ姿だ。昔のDを知る者として、涙を流してもいい成長ぶりなのだ。携帯で撮影してフォルダに貯める二人の姿に西住家の三人は唖然と見つめるしかなかった。

 

「いっくん。中央トレセン学園って実際どういう学園なのかな? 殆どの中高の学校は学園艦しかないんだよね」

 

「・・・・・トレセン学園は一般とウマ娘、二つに分かれた学園」

 

「どうしてなの?」

 

「・・・・・元々、一般とウマ娘、一つの学園。でも、兵藤家の若い連中、蛮行、学園が崩壊」

 

他人事ではない悠璃と楼羅。具体的には? と質問するまでもなくDが語り続ける。

 

「・・・・・三年前まで脅迫、恫喝、暴行、暴言、女子生徒、女性教師に対する凌辱、強姦、性的暴行。日常茶飯事」

 

信じられないといった気持ちを露にする五人に対して、他人事のように淡々と述べる。

 

「・・・・・問題視、学園側、試行錯誤、今の学園。でも、兵藤家、変わらない。権力の笠、性欲を貪る獣、被害者続出」

 

「それでも、Dさんがこの学園に来てから被害者を無くしたんですよね?」

 

楼羅の問いに頷くD。

 

「・・・・・三年前、警備員兼女子寮の寮長、学園、女子寮、時と場所弁えない獣、物理的駆除」

 

「く、駆除・・・?」

 

「・・・・・一日数人、毎日その規模、毎日駆除、徐々に減少、今年、やっと終わりが見えて来た」

 

しかし、それは学園内の話で学園外ではその倍以上、密かに行われていることを察している。自分が気付いても意味がない。兵藤家の手腕が掛かっているのに、兵藤家はそれに気付いているか怪しい。

 

「でも、学園外では大人しくなっているわけじゃないみたいだね楼羅」

 

「徹底的に調べてもらいましょう。私達も初めてあんな光景を作り出す身内がいることに怒りを通り越して驚愕しました」

 

「・・・・・よろしく」

 

続いて実寸大コースへ案内した。髪と尾をたなびかせて燦燦と降り注ぐ陽光の熱に負けずコースを走るウマ娘達の姿を見せた。

 

「・・・・・ウマ娘、練習用コース」

 

「ツゥインクル・シリーズに臨むウマ娘達がここで練習を積み重ねているんだねぇ」

 

「実際に見るの初めてです。ここでDさんが担当しているウマ娘も走っているんですね」

 

事実、Dが担当しているウマ娘が自主的に他のトレーナーの担当ウマ娘と交じって走っている。中国のウマ娘の姿も見られる。それは向こうも同じであり、Dの姿を見つけた中国のウマ娘が赤髪のウマ娘、セキトに伝えると離れた距離から跳躍で一気に詰め寄った。

 

「久しぶりだなDトレーナー。私と併走を頼む」

 

「・・・・・ウマ娘」

 

「ここのウマ娘達とは大体圧勝した。残りは私に勝てるわけがないと断る腰抜けのつまらんウマ娘だけだ。お前のチームのウマ娘はまだ走っていないがな」

 

決定事項だとばかりDの手を掴みコースへ連れていこうとするセキトだが、それをよしとしない悠璃がもう片方のDの手を掴んで引っ張りセキトの足を止めさせた。

 

「ちょっと、いっくんを勝手に連れて行かないでよ」

 

「誰だ? ちょっとぐらいいいだろ。10分も掛けないぞ」

 

「いっくんには私達を学園の案内してもらっているんだから後にしてよ」

 

「Dトレーナー、この女は誰だ」

 

互いの主張の張り合いは平行線でしかなく、セキトは関係を追求した。悠璃も同じ気持ちかウンウンと頷くので説明する。

 

「・・・・・中国のウマ娘、セキト。日本のウマ娘、交流目的、留学。兵藤悠璃、兵藤楼羅、姉妹。兵藤家現当主、娘」

 

「兵藤家の当主の娘? 皇女ってことか。ん? Dトレーナーは兵藤家当主の孫って話を聞いたが?」

 

「・・・・・事実。二人、長女と次女、俺、孫」

 

「てっことは、兵藤家当主にはこの二人以外にDトレーナーを作った子供がいるわけだ。となるとDトレーナーにとってこの二人は・・・・・叔母さんの家族構成になるのか」

 

ピシッ!!!

 

しほ限らずまほとみほも空気が凍り付いた音の幻聴が聞こえた。

 

「受け入れたくない事実をよくも口にしましたね・・・・・」

 

「本当だよ。いっくんの幼馴染の肩書だけでいいのに、余計な肩書まで一生付き纏う私達の気持ちを知らずに・・・・・!」

 

どうやら二人にとってDの家族構成図が大変お気に召さない禁句、タブーだったようだ。優しい微笑みを浮かべていた楼羅が、黒い瞳からハイライトが消えて空気が重たくなった気がしなくもない。

 

「んん? 怒っているのか? ならば申し訳ないな。だがこの場合はどうなることやら」

 

「何が?」

 

「私はDトレーナーを気に入っている。何時か私はこのトレーナーの伴侶となるから私と二人の関係はどうなる? と疑問に思ったまでだ」

 

「「は?」」

 

一触即発。もはや二人にとってセキトはただの恋敵ではなく宿敵に近い認識した。このアマ・・・どうしてくれようか! 皇女として浮かべてはならない形相をする悠璃、微笑んでいる顔から恐怖に似たプレッシャーを放つ楼羅。

 

対してDは明後日の方へ顔を振り向いていて、左眼を細めた。

 

「・・・・・侵入」

 

「え、いっくん?」

 

「・・・・・排除、急行、待機」

 

突然、金色の六対十二枚の翼と金色の髪、頭上に輪っか、左眼が碧眼に変貌したDが光の軌跡を残してどこかへ行ってしまった。

 

「侵入? 排除? どういうことです? あなたは分かりますか?」

 

「え、あ・・・えっと、おそらく学園に不法侵入した者を気付いて対処に向かったのかと思われます。彼はこの学園の生徒・教師・トレーナー達から『兵藤家の天敵』『女子寮長の守護神』『千里眼の警備員』という渾名や称号を付けられてしまうほど、学園の秩序と平和を取り戻し維持し続けています」

 

「そんな渾名と称号を付けられるほど、兵藤家の男子達は女性に対して尊厳を踏みにじり、純潔を穢していたのですか」

 

「・・・・・その通りです。私も兵藤家の生徒に無理矢理押し倒され、抵抗も虚しく凌辱を強いられました。ですが、最後の一線は彼が駆け付けてくれたので守れました」

 

彼女もまた兵藤家の被害者であった事実と、光の速さで五人の若い大人を鎖で拘束して戻ってきたDが現実を突き付けた。捕らわれている者達はDに向かって野良犬の如く吠えまくる。

 

「てめぇっ!! こんなこと許されるとでも思っているのか!? 俺達は天皇兵藤家の人間なんだぞ!」

 

「今すぐこの鎖を解け!」

 

「兵藤家の人間に対してこの仕打ちはなんだ!! 人の楽しみを邪魔しやがって!!」

 

「俺達はこの学園のOGなんだぞ! 久しぶりに遊びに来ただけだろうが!」

 

「社会的に殺してやる! 兵藤家に手を出したことと、俺達に狼藉を働いたことに対して親父に言えばお前なんかすぐにこの世から抹消できるんだぞ!」

 

と、自分達は何も悪くないと風に叫び散らすがDは淡々と述べる。

 

「・・・・・プール、女子、無理矢理、性的暴力」

 

「「・・・・・」」

 

証拠もしっかり携帯のカメラで写真と映像を確保していた。部活中の水泳部の女子たちに対し、無理矢理組み敷いていたり、水着をはぎ取り、全裸にして横並びに立たせる男たちの姿も収めてあった。

 

「いっくん、こいつらをどうする?」

 

「・・・・・実験室送り」

 

「おい聞いているのかこの下等貧民が!」

 

「・・・・・うるさい」

 

鎖持つ手を思いっきり振り上げて五人を空高く放り投げたDは、巨大な雷竜を放って攻撃した。晴天なのに迸る稲光と轟く雷鳴で五人の悲鳴は聞こえず、それから受け身も取れないまま地上に落ちて来た彼等に対してDはゴミを見る目でまた鎖を掴み持った。

 

「・・・・・来る」

 

しほたちも従うしかなく、白目向いて気絶している五人を引きずるDの背中を追いかけた。東条ハナとセキトは残される形で見送る。そして六人が向かった先は―――。

 

様々な科学研究の道具が置かれている部屋と何ともオカルト的な不思議な空間で、現実と分断されているがこちら側と繋がっているような・・・・・そんな相反する学園の旧理科準備室に来た。そしてその部屋の住人が揃っていた。

 

「おや、ようこそトレーナー君。本日はいろんなお客さんを連れて来たんだね」

 

「・・・・・トレーナーさん」

 

栗毛のふわふわショートヘアに、頭頂部からアホ毛が伸びている。右耳には化学構造式を模したイヤリングが揺れる。ハイライトの無い瞳には狂気が滲んでおり、Dの手から伸びる鎖に繋がっている五人の若者を見て喜色を浮かべていた。

 

猫のカップを持ってコーヒーを飲んでいた青鹿毛(漆黒)の長い髪と白いアホ毛、金色の瞳を持つ物静かなウマ娘。

 

「いっくん、誰?」

 

「・・・・・担当ウマ娘の一人、アグネスタキオン、マンハッタンカフェ」

 

「アグネスタキオンさんは初めてお会いしますが、他にもいらっしゃったんですね」

 

アグネスタキオンは基本的に練習の参加をしないいので知らないのも無理はない。

 

「トレーナー君、縛られているソレは私の贈り物で間違いないかい?」

 

「・・・・・新鮮」

 

「クッ・・・今回は成人の男性、兵藤家の者たちかね?」

 

「・・・・・そう」

 

「丁度いい。モルモットに使う薬品が溜まっていたところなんだ。さぁ・・・・・実験開始と行こうか!!!」

 

うきうきと気絶している五人の内の一人を軽々と掴み持ち、寝台に乗せると怪しい色の液体が詰まったフラスコを装備した。静かにこの場から出るDに続き、マンハッタンカフェも教室から出てアグネスタキオンを閉じ込めるように扉を閉めた直後。男の絶叫が扉越しで聞えて来た。しほは聞かずにはいられない。

 

「兵藤家の者にあんな所業をして問題ないのですか」

 

「・・・・・いつもの日常」

 

「に、日常・・・・・?」

 

「Dさんにとって、兵藤家の者たちに対する対処が日常・・・・・」

 

「・・・・・楼羅」

 

「ええ、早急な対応策をしなくてはならないようですね」

 

今更ながらこの学園、危険じゃないかと思わずにはいられなかった悠璃と楼羅は実父に懇願するべきだと悟っても案内は続く。

 

「・・・・・食堂」

 

夏季の長期休暇の時期なので、食堂は無人であるのはトレセン学園も同じだった。興味津々に食堂を歩く五人はすぐに気づく。

 

「お兄さん。どの料理にも値段が書かれてませんけど」

 

「・・・・・ウマ娘の大食堂、すべて無料」

 

「無料!? それってお代わりも無料なんですか?」

 

首肯するDに学園艦の学校では有料で食べている悠璃たちにとってなんとも羨ましいことだ。

 

「それで学園側の運営費用が圧迫されないのですか」

 

「・・・・・問題ない。戦車道より、ウマ娘のレース、大人気」

 

「テレビ放送すらされませんからね戦車道」

 

「最近になって一部の地域だと放送されるようになってるけどね」

 

大体は深夜番組で放送されるようだが、戦車道の大会後は優勝高校の情報を新聞に載せて世に出回るだけで終わる。

 

「・・・・・戦車道、人口、少数?」

 

「そうなんだよ。黒森峰、プラウダ、サンダース大学付属高校、聖グロリアーナ女学院のように戦車も資源も裕福じゃない学園艦が多いから、大会に出場しても初戦敗退する戦車道の学園は何度も同じ結果で終わっちゃうしね」

 

「なので、戦車道を廃部にする学園艦は少なくなく、悠璃が挙げた学園艦の戦車道の試合ばかりで終わります」

 

言わばできレースのようなものか。ベスト4まで勝ち残れば御の字だと思う戦車道の履修者達は多いだろう。3着までしか輝けないトゥインクル・シリーズと違って。

 

「・・・・・戦車、楽しい?」

 

「うーん・・・別にかな」

 

「私達は義務で乗っているだけですし、大会にも参加できませんから」

 

「え、そうなんですか?」

 

気になったみほが思わず反応した。まほも話に加わった。

 

「資金力と豊富な戦車を兼ね備えている大和女学園は、ここ数十年も大会に出ないのは何故だ?」

 

「強すぎるからです」

 

それだけ? と思わされるのも理由があった。

 

「私達が生まれる前、黒森峰みたいに9連覇したように昔の大和女学園も常勝し続けたんだよ。数十年間ずっとね」

 

「強すぎるあまりに結果が決まった大会。常勝し続ける大和女学園が何時までも頂点に君臨していては真の意味で切磋琢磨などありえない。昔の大和女学園の戦車道をしていた、ある隊長が大会出場を禁じることを提唱したのです。それ以来、数十年間大和女学園の戦車道は廃部だけはせず、先輩から受け継いできた技術を後輩に受け継がせる伝統をしてきました」

 

昔の強さを継承し続けている大和女学園。先日の試合でその一端を見せつけられたまほとみほは驚嘆を禁じ得なかった理由であった。

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