ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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誘い

 

 

燦燦と照らす夏の太陽光が地上に熱気を籠らせる変わらないその日は、一人のトレーナが騒動を起こしてしまった。

 

「どういうことなんですかトレーナーさん」

 

「・・・・・」

 

沈黙を貫く、否、『してやられた』自分の不甲斐なさに落ち込んで口を閉ざしているトレーナの体の一部が変化していた。

 

「トレーナーさん・・・その耳と尻尾は・・・・・」

 

「ボク達と同じウマの耳と尻尾、だよね・・・・・」

 

ペタリと『ウマ』の耳が垂れ、長いウマの毛の尾が黄昏てる風に力なく垂れている。

 

 

―――彼はドラゴンではなかったのか?

 

―――どうして自分達と同じウマ娘―――否、ウマ男になっているの?

 

 

トレーナを囲み、耳と尻尾を触れて確かめて見ても自分達と同じ本物だと認識するシリウスのウマ娘達。更なる疑問が疑問を抱き湧いてしまう。

 

「トレーナ、何が遭ったんだ」

 

「・・・・・堕天使の総督、アザゼル」

 

 

『ようD。前回の謝礼としてドラゴンアップルで作ったアップルパイとジュースを用意したんだ。ちょいっと堕天使領まで来てくれや。早く来ないと俺が食べちまうぜーw』

 

 

「・・・・・受け取りに行った。そこから記憶がない。目が覚めたらこれ」

 

「・・・絶対その記憶がない間にトレーナーに何かしたんだよ堕天使の人に」

 

詳細は分からないが想像しやすい展開でトレーナーもウマの力を得てしまった。さらに聞けば、自分で実験台にしたと朗らかに明かした堕天使には、一ヵ月間悪夢にうなされる魔法をプレゼントをしたそうだ。

 

「・・・・・ウマの魂が宿る神器、得た」

 

「そのぉ、身体に変化はありませんか~?」

 

「・・・・・」

 

メイショウドトウの質問の返答にウマ耳と尻尾だけと言わんばかりに動かすトレーナー。

 

「日常生活に困らない、というより身体的な変化だけで特に問題はないと認識しても?」

 

「・・・・・逆、赤い、熱?」

 

ディープインパクトの質問に質問で返すトレーナーの言葉通り、チームシリウスのウマ娘達の顏はトレーナーを見て顔が赤くなっている。ディープインパクトの頬に手を添えるとピクッと擽ったそうに震えた彼女の額と自身の額を重ねる行為をしたトレーナー。

 

「ト、トレーナー、か、顔ッ、ちかっ!?」

 

「・・・・・熱、あり、休む」

 

「これは、トレーナーのせいだよっ・・・!」

 

どうして俺のせい? 訳が分からないトレーナーの両腕をトウカイテイオーとメジロマックイーンが掴みディープインパクトから引き剥がすが。

 

「・・・・・トウカイテイオー、メジロマックイーン、離れる」

 

「「・・・・・」」

 

トレーナーの腕を抱擁する二人のウマ娘に告げる。が、磁石のように離れないのでシンボリルドルフとナリタブライアンが二人の首を掴んで強引に引き剥がしに掛かった。いつもの光景を繰り広げるチームシリウスに赤い閃光が迫った。

 

「Dトレーナー!」

 

脚に万力のごとく踏み込んでから一気にトレーナーの懐に飛び込み、タックルをかますのはセキトであった。受け身が取れず芝の上に倒れながら滑るトレーナーの上に覆い被さるセキトは興奮で荒く熱が籠った吐息を繰り返し、今にも襲いかからんとする気配を醸し出して、馬乗りにした男を見下ろす。

 

「どうしたんだその姿は・・・・・見ただけでここまで私を興奮させるその姿は」

 

「・・・・・実験台にされた」

 

「そうなのか。私的には今のトレーナーはどんなウマ娘も魅了する魅力的になって大好きだぞ」

 

遅れて総出でトレーナーから引き剥がす自分の担当ウマ娘達を視界にいれながらセキトの言葉に不思議がった。

 

「んなっ!? ボ、ボクだってトレーナーのこと大大大好きなんだから!!」

 

「私もですわ!!」

 

セキトの言動はトウカイテイオー達にとって多大な影響力を与え、焦らせる。慕っているトレーナーのファーストキスを奪った恋敵だ。自分達よりも真っ直ぐ自分の気持ちを打ち明ける彼女に負けん気を発揮するが、セキトはある箇所を見て鼻で笑った。

 

「その程度で私に敵うとでも?」

 

「「・・・・・」」

 

身長もスタイルの差は歴然。指摘をされた以外のウマ娘にもその余波が襲い、顔を暗く落ち込む。

 

「ふ、ふんっ! トレーナーは色々と大きい女の子より小さくても好きになってくれるもん!」

 

「それはロリコンなのでは? お前の年齢と身長的に」

 

「ロ、ロリ・・・・・」

 

「トレーナーさんは一人の淑女として愛してくれますわ!」

 

「淑女以前にトレーナーからすれば子供扱してるだろう」

 

「・・・・・否定しない」

 

「ぐはっ・・・!」

 

「マックイーンッ!? しっかりしてー!!」

 

痛恨の一撃をもらい芝の上に倒れるメジロマックイーン。誰もセキトに負かすことはできない。レースだけでなく口も最強かと思われたが、こっちに走ってくるウマ娘が現れた。

 

「お姉様ぁーっ!! 他のチームの方々に迷惑をかけてはいけませ―――お姉様、どこに乗られておりますかぁー!?」

 

「見てわからないのか騅。トレーナーの○○○の上だ」

 

「口に出さなくて結構です!! お姉様は女性なのですから恥じらいをするべきです!!」

 

「私の全裸を凝視するお前に言われたくないぞ。写真まで撮られる私の気持ちにもなれ」

 

「それはそれです! お姉様の黄金比の御体は永久保存しなくては世界にとって損なのです!」

 

「世界は大袈裟だろう」

 

「とにかく! これから東日本まで走るのですからトレーナーさんから離れてください!」

 

ライスシャワーと同じくらいの体型なのに、セキトの襟を掴んで引っ張って連れていく騅。中国のウマ娘の身体的能力の高さを窺わされる。

 

「中国のウマ娘って色々と凄いよね。中華一のウマ娘を相手にあんな扱いをするし」

 

「そう言えば、赤兎って何歳ぐらいなんだろう? トレーナー、わかりますか?」

 

起き上がるトレーナーにナイスネイチャが問う。

 

「・・・・・聞いた、一番年上、騅」

 

「はい!? お姉様って呼んでるのにあの子がセキトより年上!? 」

 

「見た目で判断できないですね・・・・・他に何か知っていますか?」

 

トレーナーは頷く。

 

「・・・・・調べた」

 

赤兎を始めとする箔のチームの成績をまとめた魔法による立体映像の一覧を個別に表示した。それを見てシリウスのウマ娘達に唖然と愕然とさせた記録が視界に入った。

 

「嘘・・・この絶影、的盧、白鵠、それに騅も赤兎に劣っているけど」

 

「少なくとも私達より確実に速くて強い」

 

それだけではない。なんなら日本の各レースのレコードタイムを上回っている。言うなれば中国のウマ娘は日本のウマ娘より勝っているという事実を証明しているのだ。

 

「・・・・・全員、自然、鍛えている」

 

「私達とは異なる手段と方法で己を鍛えている、ということですか」

 

「首と両手足に付けているあの拘束具もかなり重いみたいだしね」

 

「この自分の体重の二倍の重みの中で動いている私達よりもだろう」

 

トレーナーはまた頷く。まったくその通りなのだ。あの重りの総量は5倍なのである。

 

「・・・・・あの服も重り」

 

「そこまでですの!?」

 

「え、じゃあトレーナーと走った赤兎はまだ全力じゃなかった?」

 

赤兎本人から言わせれば全力だったがまだ余力は残っている、と。トレーナー的には、シンボリルドルフ達に良き目標が現れたと感じてトレーニングに精が出る。

 

「・・・・・始める」

 

話しは終わり。立体映像を消してウマ娘へ告げるトレーナーであったが、背後から現れた人物に意識を向けざるを得なかった。

 

「よーD、ウマ男になってウマ娘達にモテているかー?」

 

堕天使の総督アザゼルその人だった。トレーナーはその声の男に振り向かず、ウマ娘達に向かって言った。

 

「・・・・・今後、渾名、未婚の堕天使、呼ぶ」

 

「ウマ娘達に変な渾名で定着させようとすんな! てか、魔方陣を消して臨戦態勢を解け!」

 

「・・・・・イタズラ返し」

 

アザゼルが心底嫌そうにツッコミをして、迎撃の構えを取るトレーナーを落ち着かせようとする。が、イタズラされたばかりで、そうした元凶が悪びれた様子もなくやってきた相手に耳を傾ける必要性は皆無だと魔方陣から放った純白の閃光。

 

放たれた一条の光に堕天使式の防御魔法結界を張って防ごうとしたアザゼル。しかし、その結界がトレーナーの魔法とぶつかるとガラスのように砕けてアザゼルの頬を掠ってはトレーニングコースの地面が抉れ穴を作った。何の抵抗もなく破られた事象にアザゼルは聞かずにはいられない焦燥感が湧いた。

 

「おいなんだ、その魔法は!」

 

「・・・・・並行世界、魔法。分解と貫通攻撃」

 

未知の魔法の説明でヒクッと痙攣する頬に冷や汗を垂らしたアザゼル。そんなことできるなんて聞いていないぞ!? と悲鳴染みた叫びをしたい衝動を何とか堪え、次は光弾として放たれる魔法を見て、並行世界で得たのは技術の結晶だけでないことを今初めて知り、また気付いた堕天使は事を穏便に済ませたくなりその場で土下座をした。

 

「イタズラに関して悪かったから話を聞いてくれ!」

 

アザゼルに当たる直前、光弾が霧散した。彼の堕天使の話ぐらいは聞いてもいいということだろう。

 

「・・・・・一言」

 

「直接赤龍帝の力を見たいという奴が来たんだよ」

 

一言で言い切ってみせたアザゼルに首を傾げる。

 

「・・・・・誰?」

 

「北欧の主神オーディンのジジイだ」

 

「・・・・・若手悪魔同士、レーティングゲーム、グレモリーとシトリー?」

 

自分が知っている情報を照らし合わせる思いで問うとアザゼルは否と答えた。

 

「ああいや、あいつらじゃ重荷だからサイラオーグ・バアルだ。あの二人が戦うその後にな。ということで頼まれてくれるか」

 

「・・・・・断る、面倒、忙しい」

 

頼みを無下に断るトレーナー。土下座を止めて立ち上がるアザゼルから溜息が零れた。

 

「どうしてもか」

 

「・・・・・どうしてもか?」

 

「質問を質問で返すなよ。別にこれは強制ではないから断れてもこっちが困ることはない」

 

なら拒絶しても問題ない、と口を開きかけた時。

 

 

―――あなたの世界の私達をよろしくお願いね。

 

 

脳裏に浮かんだ紅髪の女性からの頼みが過った。『彼女』にも世話になった手前、頼みを守らないといけないことを思い出して、小さく息を吐いた。

 

「・・・・・条件」

 

「お、断れると思ったのに。どういう風の吹き回しだ」

 

「・・・・・並行世界、用事、思い出しただけ」

 

「そうか。んで、条件ってのは?」

 

トレーナーはここで初めてアザゼルへ振り返った。

 

「・・・・・グレモリー眷属、シトリー眷属、両方、戦う」

 

「力の差は歴然過ぎて試合にもならんぞ」

 

「・・・・・勝敗、否、示唆」

 

「示唆? あいつ等をお前が導くつもりか?」

 

「・・・・・教える、並行世界、もう一人の彼女達の戦い方、それだけ」

 

顎に手をやってトレーナーを見つめながら考える仕草をするアザゼル。そして口の端をニヤリと吊り上げた。

 

「そいつは興味があるな。いいだろう。だが、あの二人が共闘をしてもお前には勝てんだろうから細かいルールがお前を縛ると思う。それでいいなら掛け合ってやるぜ」

 

「・・・・・構わない」

 

「よし、善は急げだ。当日になったら迎えに行くからな」

 

そう言うアザゼルから離れウォーミングアップを始めるトレーナー。アザゼルはトレセン学園を後にして冥界にいるトップ達の所へ戻り、。

 

余談であるがウマの魂を宿す神器を封じることでウマの特徴だった耳と尻尾が出なくなったことにより、トレーナーは密かに安堵したのは言うまでもない。逆にシンボリルドルフ達は心なしか凄く残念がっていたがトレーナーは気付かなかった。

 

「・・・・・?」

 

ウマ娘達の走りのタイムを計っている最中、携帯が鳴り出し相手がこの場にいない沖野トレーナーであることを確認して通話状態にした。

 

『よーD君。今夜おハナさんにも話をしたいことがあってだな。君も来てくれるか?』

 

「・・・・・わかった、いつ?」

 

『今夜の21時、場所は―――』

 

 

 

東京都とある某バー

 

時間通りに指定された店に入るとすでにカウンターで沖野と東条ハナが座っていた。

 

「・・・・・遅れた」

 

「いや、時間ピッタリだぞ?」

 

「単純に私達が早く来ただけよ」

 

一体どのぐらい早く来たのか気にせず東条ハナの隣に座るD。

 

「何を飲む? 奢るぜ」

 

「・・・・・遠慮、酔う、警備、できない」

 

「今日ぐらいは・・・・・いや、何でもない」

 

断固拒否と鋭い眼光を沖野に放って睨んで酒の誘いを止めさせたが、東条ハナが沖野に助け舟を出した。

 

「あなたは働き過ぎよ。さすがに夜間まで侵入してこないでしょ」

 

「・・・・・去年、ある、油断できない」

 

「そうだったの」

 

「・・・・・東条先輩、家、侵入、試み、阻止」

 

「そ、そうだったの・・・・・」

 

「おハナさんの家にも入り込もうとしていたのかよ・・・」

 

警備を緩めたら女子寮に住んでいる女子達に被害が及ぶ。深い酔いで眠りについてしまった間に起きてしまえば女子達に顔向けができまい。学園内にいる兵藤家に対する最後の砦と信用と信頼をされている以上は安心と平和を保たなければいけないのだ。

 

「・・・・・他の警備員、アテにならない」

 

「事実上、彼等の仕事を奪っているのに辛辣だなD君」

 

「実際、この子がいないと学園も維持できないわよ。私の担当のウマ娘も世話になったし」

 

「そ―言われると俺も世話になってしまったなー」

 

「・・・・・リンゴジュース、ある?」

 

酒は飲まずともジュースは飲む気はあるDの要望にバーテンダーの彼は頷き、用意に取り掛かった。

 

「・・・・・先輩、話」

 

「そうだったな。D君も来たしおハナさんにも提案の話をしようか」

 

「なに? また合同でトレーニングしようって?」

 

「惜しいがそうじゃない。ほら、力の大会で偶然にも無料で宿泊できる権利を得ただろう? だから交流を兼ねて三チームで行かないかって提案だよ」

 

そんなことか、とDと東条ハナは心を一つにしてなんてことのない話の会話を広げた。

 

「・・・・・夏季休暇、最終日前、予定」

 

「なによ。あなたもそうするつもりだったの?」

 

「なーんだ、話し合う必要もなかったのか。スピカもそうするつもりだったぜ」

 

ウマ娘のコンディションを考えるならば前日にリフレッシュしてもらい本番に最高潮のコンディションでいてもらいたいトレーナー達の思いは似ていた。しかしだ。出来上がったリンゴジュースを受け取りゆっくりと飲むDは懸念する。宿泊先にも兵藤家がいないとは限らないからだ。

 

「ところでD君はあれから何か身の回りで変化があったか? 大会に勝って皇女達と婚約したからさ」

 

「・・・・・婚約、解消」

 

「あ、もう婚約者がいるから? ってすごく嫌そう・・・・・」

 

顔がこれでもかとしかめっ面になったDを見ることになった二人は、婚約に関するキーワードは禁句扱いにすることにした。不機嫌になられてはこっちも困るからだ。

 

「って、解消できるものなのか? 相手は皇族なのに?」

 

「・・・・・願い事、一つ、保留」

 

「ああ、それでか。納得したよ」

 

ジュースのお代わりを頼んだDにポンと手を叩く沖野。続いて東条ハナも問う。

 

「皇女達の方は問題なかったの?」

 

「・・・・・荒れた、らしい」

 

どちらにしろ、兵藤家に婿入りする者がドラゴンでは婚約は人間ではならないのでDは兵藤家からも断れていた。それ以前に兵藤家に戻るつもりは毛頭もないから、敢えて保留にした願い事のひとつを使ってまで婚約を解消したのだ。

 

「・・・・・残りひとつ、どうしてくれようか」

 

「あー・・・・・穏便に済ませろよ?」

 

「暴れたらダメよ」

 

「・・・・・善処」

 

お代わりのリンゴジュースを受け取り一気に呷った。

 

 

それからしばらくして~悪魔のレーティングゲームに出る日が、アザセルが迎えに来たことで当日だと悟った。

 

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