兵藤家が所有してる高級宿泊施設に行く日が間近に迫ったある日。
「トレーナー、聞きたいことがある」
トレーニングの休息中にナリタブライアンはトレーナーに訊ねた。
「私達は13人で宿泊するが、20人まで残り空いた人数がまだある。誰か誘うつもりはあるのか」
「・・・・・未定」
「未定か。なら、その空いた枠に姉貴も加えてもいいか」
姉のビワハヤヒデも誘いたい姉思いの妹ナリタブライアンに「本人が来るなら」と許可を出した。
「あの、それでしたら彼女も誘いますか?」
マンハッタンカフェの言葉の裏にはアグネスタキオンのことを指して言っている。同じチームのウマ娘を誘わず置いていくのは少しだけ忍びないマンハッタンカフェにトレーナーは頷く。
「・・・・・残り、4」
「え? 4? ・・・5ではないのか?」
「・・・・・貞塚玲子」
全員納得した。実体ある幽霊であるが、深く追求されなければヒトとして認識されるので1人の人間として数えられることは間違いない。
「あーあのヒトも誘うんだ。でも、あと1人は?」
「・・・・・アグネスタキオン、チームシリウス」
「えっ、他にもいたの!? でも、一度もトレーニングもレースもしていないじゃん!!」
シンボリルドルフ、ナリタブライアン、サイレンススズカ、ナイスネイチャまでしかいなかった頃。人数が一人足りずツィンクル・シリーズに出馬出来ない時、走れば速いだろうにレースよりもウマ娘の可能性を見出だす研究が夢中なウマ娘と出会い、幽霊部員としてチームに入ってくれることをシンボリルドルフと説得した。この事は当時の二人のウマ娘とトレーナー以外誰も知らないことなのだ。
「彼女のことはツィンクル・シリーズに参加るすための人数合わせにアグネスタキオンを幽霊部員としてチームに加わってもらったんだ」
「なるほど、どーりでまだ人数が足りないのに参加できた不思議な謎がそういうことだったんだ」
一人納得するナイスネイチャにトレーナーはさらに付け加えた。
「・・・・・条件、食事の用意」
「トレーナーの手作り料理を毎日食べてる、だと?」
私も毎日食べたいのにっ、と衝撃と羨望に嫉妬の気持ちが混濁したオグリキャップだった。
「・・・・・だから人数、残り、4。他、誘う?」
「うーん誘いたい娘がいないかな。マックイーンは?」
「いないわけではありませんが、全員は無理ですから誘えませんわ」
少なくとも4人以上はいるので、マックイーンが誘うウマ娘で空欄を埋めてしまうのは申し訳ないとマックイーン首を横に降る。
「トレーナーさんが誘いたいと思うヒトを誘えばいいんじゃないかしら」
「・・・・・わかった。相談」
トレーナーはその日のうちに沖野と東条ハナに声をかけて、空いている枠のことを相談した。
「あー確かにな。スピカだけだとまだ10人以上も誘えるな。これはちょっと勿体ないか」
「それじゃあ、他のチームのトレーナーとウマ娘も誘う?」
「だな。というわけでD君には俺のチームの残りの人数枠を5人までなら誘っていいプレゼントをあげよう!」
「無料で宿泊できるのはあなたのおかげだからね。私も5人までなら誰でも誘っていいわよ」
とてもありがたいプレゼントを承ったトレーナーはマックイーンに一緒に行きたいウマ娘を誘っていい話を持ちかけた。
「本当ですか? では皆さんに声をかけてみますわ」
マックイーンが3日前まで誘えたのはメジロアルダンとメジロブライト。他は都合があるという理由で断られた模様。
「トレーナー、どーするの? まだ空いてるよ?」
「・・・・・6人聞く」
「6人・・・・・ま、まさかっ・・・・・!!」
「・・・・・全員、オーケー、あと2人・・・・・」
恐れおののくトウカイテイオーを他所にラストはとある氷の魔女と四凶の使い手の一人と決まった。
宿泊当日
兵藤家の高級宿泊施設は海と面してる場所にあり総勢60名の利用客となった一行はバスを使わず、時間を短縮する意味も兼ねてDの転移魔法であっという間に宿泊先の玄関前に着いた。そして開口一番にダメ出しの声が上がった。
「風情! Dさん、ここまで見れた景色を一刀両断しちゃダメですよ! 長い道のりの醍醐味ができなかった!」
「・・・・・ダメ?」
「ははは、まぁ、速く着いて悪いことじゃないさ。時間はたくさんあるし海で遊ぶのも町の観光も良しとしよう」
「そうね。予想より速く来たのだからその分楽しみましょう」
涼子のダメ出しに、不思議げに小首をかしげるDを沖野と東条ハナがフォローする初日となった。
「そんじゃお前達。こっちで決めた部屋割りに移動してもらって荷物を置いたら自由にしていいぞ! 地の人達に迷惑をかけないようにな!」
はい! と数十人の少女達の返事の声が沖野の注意事項に元気よく応えた。
「それじゃ黒沼さんと南坂さん、沖田さん。俺達も行きましょうか」
「ああ、誘ってくれて感謝する」
「他のチームとこうして交流しながら過ごすことも大切ですね」
「それに倣い我々も過ごしましょう」
トレーナー陣も荷物を持って旅館へと向かう最中、Dは振り返った。駐車場には運よくここで宿泊できる特権を得た人達が乗って来ただろうバスが十台以上ある。早く来たつもりだが、もう到着した先着の者達が旅館の中にいるのだろう。
「Dさん? どうしました?」
「・・・・・ん」
何でもないと風に足を運び、全員が旅館の中へと入ると。
「「「「「ようこそお出でくださりました」」」」」
和風の出で立ちの旅館のなのに和服ではなく洋風、それも女将ではなくメイド達が一行を出迎えた。しかも彼女達の先頭には。
「あ、あれ? メイドさんがいっぱいだ」
「しかも彼女は・・・・・」
「いて当然か。ここは兵藤家の旅館だからな」
「でも、実際浮いてるよね」
「おい、失礼じゃないかい」
場に似合わぬ者達の出迎えにざわめき、先頭にいる銀髪のメイドが説明を語り出した。
「初めまして。この度皆様がお楽しみいただけるよう身の回りのお世話をさせてもらいます、当旅館の責任者兼兵藤家の従者の教育係代表者、リーラ・シャルンホルストでごさいます。長い道のり、ではなくお越しいただきました皆様のお部屋をご案内いたします」
何気に魔法でここに転移したことが気付かれている。リーラの他のメイド達が素早く動き出し、一行の荷物を持つと部屋へと導き出す。
「・・・・・」
なお、Dには。
「ご主人様。こちらです」
「お荷物をお持ちいたしますね」
「お部屋に参りましょう」
「私達のあとに着いてきてくださいね」
「こ、転ばないよう足元をお気をつけてください」
5人のメイド達に、しかも親密な関係を窺わせる密着具合でDの手を取り、背中を押して歩かせるので。
兵藤家の従者、それも当主の孫で次期当主の息子であるならば優遇されるのも仕方ないが、どこか悠璃と楼羅と似た感じを覚えてしまう。それが気になりながらもウマ娘達は廊下を歩く。
全員の部屋割りは、和風の一部屋6人となって、複数のチームのウマ娘が普段一緒に居るチーム以外のウマ娘と7泊過ごすことに決められた。沖野から指名されたウマ娘達から部屋に入り荷物を置いて、先ずは旅館の中を探索することにした。一般生徒の涼子達と魔女のラヴィニアもウマ娘達と一緒に寝泊まりする。トレーナー達は女性の東条ハナ以外男女別で充てられた部屋に。ただしDは強制的に別室にされた。
「ご主人様、私達に仰ることがありますよね?」
メイドたちに囲まれながらちょこんと正座するDは、久しぶりに再会した彼女達を見回し言うべきことを口にする。
「・・・・・ただ、いま?」
「はい、正解です。またお会いできて私達は嬉しいでございます」
「ああ、よかった・・・ご主人様、生きてくださって本当によかったです・・・・・!」
「昔のあなたを知るメイドとしてご主人様の成長ぶりに深く感動しました」
「う、うう・・・・・っ」
一時的で過ごした時間は少ないが、それでも彼女達はDを大切にし、Dも自分と過ごした彼女達を気に掛けていた。こうして再び再会することもお互い望んでいたのだった。
「・・・・・別の主」
「今の私達はリーラ様の采配でフリーです。とは言ってもリーラ様のサポートをするお仕事をしておりますが」
「で、でもご主人様がもう一度私達をお望みならもしかしたら・・・・・」
「ダイドー、非常に残念ながらご主人様は兵藤家の人間ではありません」
「それに近頃の男性従者の方々からの話では、仕えている主の言動が悪質で、どんなに諫めても改心してくれなくて困ると嘆いておりました」
「ですがご主人様。源氏様からの命で主に対する制裁を義務として付け加えられました。さらに主の従者として監視を強めることになりました。故に盗撮も盗聴も許されることになったのです」
中々どうして、何て言わない。ある程度の自由が制限されてもあの手この手を使って好き放題やりたい放題をする兵藤家の人間は確かにいる筈だ。警察や弁護士、報道関係者も掌握している人間もいない筈がない。結局は一握りの者しか信じられず、他は己自身のみだ信じられるのは。
「・・・・・いま、遅い」
「心中お察しします。しかし、当主様も苦悩に苛まれているのです。どうかご容赦を」
「・・・・・」
小さくなずくDは、もう一度メイド達を見回し「仕事は?」と問うた。
「「「「「・・・・・」」」」」
不思議な沈黙を貫くメイド達にキョトンとするDは、充てられた部屋の扉に目を向けると、絶対零度の眼差しを彼女達に向けるリーラが立っていた。
「仕事はどうしたのですか」
「少しばかりご主人様のご説明をしてから戻るおつもりでした」
と返した銀髪のメイドの返答にリーラはDを一瞥し、淡々と告げた。
「そうですか。では、早急に自分の持ち場に戻りなさい。誰かがいなくなって仕事が円滑に進めなくなり支障が出ております」
「申し訳ございません。すぐに」
「ご主人様、また、ね?」
Dから離れ部屋を後にした五人のメイド達を厳しい目で見送るリーラが変わるように入り、扉を閉めるとDの前に腰を落とした。
「お久し振りでごさいます。本日から七日間、どうかごゆるりとお寛いでください」
頷くD。立ち上がって荷物を持つと沖野達がいる、事前に決め合った本来いるべき部屋へと戻ろうとするもリーラが制した。
「勝手ながらこの部屋をご主人様がお使いください。他にこの旅館に訪れる方はおりませんので、空き部屋はこの部屋のみですから」
なんで、と思っても旅館にいる間でも自分を慕う女子達が遊びに来る可能性が捨てきれない。他のトレーナー達と過ごしていてもお構い無しにだ。それならば言葉に甘えるDはもう一度荷物を置いた。
そして・・・・・。
「いやっほーい!! 海だぁー!!!」
全員、水着に着替えて海に繰り出した。青天の空がどこまでも広がり、紫外線防止のための日焼け止めを身体に塗りたくる女子がいればそうでもない女子もいる。この時のために持ってきた複数のシートとパラソルを砂浜に設置するトレーナー達の行動により、パラソルの下で寛ぐウマ娘も多い。
「彼女達は元気ですね」
「そうだな」
「大人の俺達はあいつらを見渡せる旅館でのんびり、とですね」
「私達も一時トレーナー業から離れ、このゆとりを噛み締めましょう」
男性トレーナー達はウマ娘の好きにさせて部屋で過ごす中、東条ハナは砂浜でDと監督を勤めている。もしも、何か遇った時のためになのだが。
「Dトレーナー、オイルを塗ってくれない?」
ダイワスカーレットが期待に満ちた眼差しと共に、片手にサンオイルを持ってDにお願いした。断る理由がないDは承諾して高そうな瓶を受け取った。入れ替わるように退いたDが座っていた場所に寝そべり、群青色の大胆な水着のブラの紐を外し、無防備な背中を晒した。
「・・・・・塗る、冷たい」
「はーい・・・・・あっ」
柔肌なダイワスカーレットの背中にオイルまみれの両手で触れる。温かい肌に冷たさを感じるより、Dの大きな手が背中を触れる感触が心地よく自然と笑みが浮かんでしまう。
「ねぇ、Dトレーナー。誰かにこうしたことがあるの? 上手じゃない」
「・・・・・初めて」
「へ、へぇ・・・・・初めて、つまり私が最初で一番目なんだ」
「・・・・・そう」
何事も一番を目指すダイワスカーレットの赤茶の尻尾が大きく揺れ始め、今の彼女の心情を露にしている。不意に背中からDの手が離れた。ちょっと不満になり首だけ後ろに向けると。
「スカーレットさん、抜け駆けはダメですよ?」
「トレーナーさん、次、私達もお願いします!」
サトノダイヤモンドとキタサンブラックがDの肩を掴んでダイワスカーレットから離していた。スピカの中でこの二人もDを慕っている。ダイワスカーレットがオイルを塗っているところを見て負けん気が発揮したのだろう。
「・・・・・交代」
「はぁ・・・残念ね。でも、トレーナーの初めてを私が取ったから一先ず良しとしようかしら」
「「は、初めてっ?」」
ニヤリと不敵に笑うダイワスカーレットの言葉の意味がわからない。が、それが何なのか知る彼女はブラの紐を結び直してから起き上がった。
「ありがとうねDトレーナー。またお願いするわ」
豊かな胸を大きく揺らしつつライバルのウォッカのところへ
駆ける。続けてサトノダイヤモンドとキタサンブラックにもオイルを塗り始めれば、塗って欲しいウマ娘が続出した。
ようやくオイル塗りが終わり、一息つける暇もなく一般生徒の福井愛花達がやってきた。ただし、彼女達の美肉体に引き寄せられた獣が数人連れてきて。
「Dさーん!」
「・・・・・」
「あなた、トラブルに愛されてるわね」
嫌な愛だと息を吐き、立ち上がってアイ達に近付いた。
「ごめんねー? 私達だけじゃないの。ちゃんと保護者も来てもらってるからお誘いは遠慮するわ」
前上涼子がDの腕に抱きついてこれでもかと豊満な胸を押し付け、ナンパしてきだろう男達に見せつけた。愛花達もDを囲い彼等に拒絶の態度で示す。だが、ナンパ達は極上な肉体の彼女等をみすみす逃すのは惜しいらしく、六人の少女達に話し掛けた。
「そう言わずにさ、俺達と遊ぼうって。なぁ保護者の兄さんも、その子達と遊ばせてくれよ」
「せっかくの夏なんだから羽目を外してもちょっとぐらい問題ないって」
「そうそう、俺達いいところ知ってるんだ。今日一日の食事は全部俺達が奢ってあげるからさ」
「ということだからいいよな?」
と、言いながら自分達の首から下を見ている分かりやすい彼等に辟易するアイ達だが、Dが告げた。
「・・・・・今日、奢り?」
「そうそう、俺達が奢るから」
「・・・・・六人以外、友達、いる」
「おっ、どの子?」
他にも可愛い子がいることに反応したナンパの一人が、Dの指す方へ見て・・・・・固まった。数十は軽くいるウマ娘が海辺で遊んでいるのだ。
「・・・・・六十人、全員分、奢り、許す」
ただし、健啖家が何人もいることを知らないナンパ達。それ以前に全員分も奢ったら破産確定であるため。
「あ、そ、そう言えば俺達これから用事があったんだった!」
「そうそう! いやー仲良く遊びたいのに残念だよ本当に!」
「ということで失礼しました!」
「またねかわい子ちゃん達!!」
砂埃を巻き上げながら脱兎のごとく逃げるナンパ達に呆れるD。
「・・・・・甲斐性なし」
「いやいや、さすがに無理ですよ。あんな人数分を奢れって」
「というか、本当に奢れたら私達がどうなるかわかってるでしょう?」
「・・・・・本気、否」
「ああ、やっぱりそうでしたか」
苦笑する福井莉緒。自分達を守ってくれないはずがないのだこの頼りになる男は。初めて会った時も今も、これからもきっと大切に守ってくれるとても格好いい男性・・・・・。
「えいっ」
「あ、ズルい。私もー!」
「えっと・・・・・」
莉緒が先にDの正面から抱きつき、涼子も抱き付いた。愛花も抱き付きたいが右手を握ることにした。黒井黒子と榊田巫、秋月優姫は、こっちに走ってくるトウカイテイオーとメジロマックイーンを見て、距離を置いて砂浜に倒れ込む六人から躱した。
「・・・・・」
戻って来たDと微妙な距離を作って離れていた東条ハナ。すらすらとスケッチブックに筆を走らせ何かを描いているDを横目で何度か目配りし気にしないように前を向いたが、やはり気になって訊いた。
「何を描いているの」
「・・・・・」
無視された。いや、集中しているからか。どちらにしろ東条ハナの問いを返さず流暢に描いていくDとの距離を縮め、横から覗き込むと―――目の前で遊んでいる各々のウマ娘達の姿が描かれていた。しかもとても綺麗で上手に描かれているではないか。
「・・・・・あなた、絵が上手に描けるのね」
「・・・・・趣味」
そんな趣味があったのかと今日初めて知って東条ハナはフッと口元を緩めた。心が壊れていると言っているのに、心が無ければこんな楽しい絵を描けるはずがない。描くDの横顔を眺めて時間を過ごすのも悪くないと思っていると、二人の傍に氷の魔女ことラヴィニアが来た。
「D、絵を描いているのですね」
「・・・・・ん」
「とても上手なのです」
後ろから抱き着いたラヴィニアの豊かな胸に当たっても気にする素振りも恥ずかしがる言動もせず、絵を描く意識は変わらないDを見て、二人の関係が判らない東条ハナは問うた。
「あなたはDとどういう関係なの?」
「私だけでなく夏梅もDと仲間なのです。堕天使の陣営に与しております」
「そう、だったの。あなたのような人がいたなんて知らなかったわ」
「この子は自分から何も言わないことが多いのです。知らないのも無理もないのです」
可愛がってDの頭を撫でるラヴィニア。
「でも、あなた達のことは教えてくれますよ」
「え?」
「東条ハナさんですね? Dがあなたのことを多くの優秀なウマ娘を育てた女性先輩トレーナーがいる、判らないことを親切に教えてくれる優しくて頼もしい人だとDから教えてくれましたよ」
自分の知らないところで自分のことを語られていたことを知り、自然と照れと羞恥でほんのりと淡く朱を顔に散らばめた東条ハナ。
「これからもDのことよろしくお願いします東条ハナさん」
「・・・・・もう私を頼らず立派なトレーナーになっているから、お願いされることはもう無いと思うわよ」
「はい、構いません」
トレーナー! と呼ぶウマ娘が海から大きく手を振った。その声に絵を描いていた手を止めて、鞄の中に仕舞うと立ち上がったDがウマ娘達の所へと近づいた。あっという間にうら若きウマ娘達に囲まれた後に、海水を使った乗っても落ちないよう水の性質を変えた大きな遊具を魔法で作ったり、100メートル先の海上で立つ水柱のところまで水球の中に入り走って戻ってくるレース、他にも海ならではの遊びを尽くした。
昼食はいつもより大幅な人数であるにも拘らず旅館で用意された料理は数も質も量も極めて高い。Dの手作り料理と遜色がないと言ってもいい。妊婦の腹の如く膨らんだオグリキャップも満足したその日の夜、トレーナー達が集まって会議を始めた。
「七泊八日の宿泊とは言えども、そんな長らくあいつらを遊ばせておくのは惜しい」
「そうですね。トレーニングも組み込みたい気持ちはあります」
「俺も異論はない」
「私もです」
「それならば、合同で行えるトレーニングを考えましょう。と、言いたいところだけど」
意味深に言いDへ視線を送る東条ハナ。なに? と見つめ返すDに質問をした。
「D、あなたの魔法であの魔法の道具が使えない?」
「・・・・・可能、利用?」
「ええ、あの中なら心置きなく走れるでしょう」
「おー、さすがおハナさん。目敏いじゃないか」
三人しか分からないことを他のトレーナー達が判るはずもなく、後で実物も交えて説明し明日は魔法の道具の中でトレーニングと決した。