ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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七泊八日の宿泊(7)

「Dトレーナー、アタシとタイマン勝負だ!」

 

「・・・・・承諾」

 

―――3分後

 

「ま、負けたぜ・・・・・」

 

「次は私とだDトレーナーさん」

 

「・・・・・ん」

 

―――2分後

 

「・・・・・勝ち」

 

「く・・・!」

 

「次は私とお願いしまーす♪」

 

「・・・・・いい」

 

 

 

 

「リギルのウマ娘、全員負けちゃってるなぁおハナさん?」

 

「うっさい、彼が元から速いのはあなたも知っているでしょ」

 

Dと走るチームリギルのウマ娘の得意な実寸大のレースの観客席から見守る二人のトレーナー。全戦全敗な結果は百も承知だと達観している東条ハナにからかいに来た沖野。

 

「何しに来たのよ」

 

「大したことないちょっと不思議な疑問の答えを聞きにさ」

 

「はぁ? 疑問?」

 

ああ、と怪訝な東条ハナに沖野は相槌を打った。

 

「あのウマ娘を模した木バのタイムはどうなってるのかなーってさ」

 

「どうって・・・実際にゴールまで走って叩き出したに過ぎないんじゃない」

 

「おハナさん、見た目通り頭がお硬いねぇ・・・」

 

「は? 喧嘩売っているなら買うわよ」

 

険呑になりかけた彼女に頬を引き攣り、降参のポーズを取る沖野は東条ハナに分かりやすく教えた。

 

「木バのタイムはDくんが設定しているなら、そのタイムはどうやって決めているのかって気になったんだ」

 

「どうやって決めている・・・そういうことね。それは確かに気になることだわ。現にDと走っているヒシアマゾン達が木バに負けていることが多いもの」

 

「そうだろう? 俺のウマ娘達もそうさ。勝ったことがない。だから気になったのさ」

 

最初にそれを気付き、言われるまで疑問すら抱かず気付かなかった東条ハナが、頭が硬いと言われても仕方ない内容であった。それが何だか悔しくなり、解消するためには―――。

 

「・・・・・決めてる?」

 

「そうよ。あなたが作った道具なのだから当然知っているでしょう」

 

直接訊ねた方が手っ取り早い。リギルのウマ娘全員と走っていても汗一つ掻いていないDのもとに足を運んで問い質す東条ハナと沖野を交互に見て小首を傾げた。

 

「・・・・・わから、ない?」

 

「気になるから訊いているんじゃないの」

 

「・・・・・先輩、も?」

 

「ああ、そうだよDくん」

 

「・・・・・本当、に?」

 

再度問うた後輩に先輩のトレーナー二人が試されている風な気がして顔を見合わせた。トレーナーなのに本当に判らないのか? と。

 

「・・・ちょっと待って、少し考えるわ」

 

「うーん・・・・・」

 

木バのタイム・・・何を基に設定されているのか。ランダム? この道具を作った本人が直接? それとも実際に走ったウマ娘の・・・・・。

 

「「あっ、そういうこと!!」」

 

「・・・・・」

 

言ってみろ、と沈黙しているDの視線は二人にそう訴えた。東条ハナと沖野はそれぞれ考えに至った答えを口にした。

 

「木バのタイムは実際に走ったウマ娘のタイムね!」

 

「しかも今日までの全てのウマ娘のタイムだ。違うかDくん?」

 

二人の答えにDは・・・・・否と風に首を横に振る。

 

「・・・・・90点」

 

答えが不足していた二人。ほぼ当たっているがまだ足りないとDはそう言った。

 

「じゃあ、残りの10点は何よ」

 

「・・・・・過去、現在、実寸大のレース、全て、一着、ウマ娘、タイム」

 

「一着した、ウマ娘のタイムですって?」

 

「しかも過去から現在までのかー」

 

それでは自分のウマ娘が木バに負けるのも納得のいく道理だ。話を聞いていたリギルのウマ娘も感嘆の念を零した。

 

「一着したウマ娘の記録を設定された木バがいたのね」

 

「何度か一着でゴールしたアタシ達がそれに負けていたら、アタシ達が遅くなっているってことだろう?」

 

「そんな事実を叩きつけられると、かなりヤバいね」

 

「オーノー!?」

 

「せ、世界一、最強、ナンバーワンを目指す私にとっても大変デース!!」

 

「私自身と走れるコースもありますし・・・自分自身に負けるようではこの先も・・・・・」

 

「Dトレーナー・・・なんてものを作っているのだ」

 

そして真意も知り絶望に打ちひしがれるのだった。

 

「因みに、現在のウマ娘と過去のウマ娘のタイムの記録も把握しているわけ?」

 

「・・・・・ウマ娘、育成、トレーナー、当然、違う?」

 

「あははは・・・・・耳が痛い」

 

「同じく、よ・・・・・」

 

苦笑いする沖野とやっぱり悔しい顔を浮かべる東条ハナ。自分達よりウマ娘の為に指導に力を入れているDに。過去のウマ娘のタイムまで比較して担当しているウマ娘達にトレーニングを課しているのだ。“今”しか見ていない二人と違い、過去と現在の“全体”を見ているD。四年前、あんなにトレーナーになることを拒んでいた少年とは思えない変わりようではないか。

 

「も、もう一度走りマース!」

 

勢いよく立ち上がり駆け出そうとするエルコンドルパサーだったが、彼女の前に瞬時に回って立ちはだかった。

 

「・・・・・ダメ」

 

「ホワッツ!?」

 

ガビーンッ!! とショックを受けたエルコンドルパサーに理由を告げる。

 

「・・・・・全力、本気、体力、疲労、再度、走る、一度目、二度目、遅い、休む」

 

「本番のレースのように全力で走った後、疲労が残っている内に最初のように走れることはできないでしょ。ってこの子がそう言っているわよエル。それはあなた達も例外ではないから、今走っても最初の頃よりタイムが落ちている結果にしかならないわ」

 

「しかも全部の木バは現在まで一着したウマ娘の記録を基に走っている。おハナさんの言う通り、今走っても自分が望む結果にならず落ち込むだけだぞ」

 

うんうんと二人の意見に同感と頷くDも見て、エルコンドルパサーはしょんぼりした。

 

「・・・・・強く、誰よりも、走る、先に、とても、単純、純粋、目指す、頑張れ」

 

「ト、トレーナーさんッ・・・!」

 

そんな彼女の頭に手を置いて撫でながら慰めるDの言葉に、感動で胸が熱くなったエルコンドルパサーであった。

 

「えへへー気持ちいいデース・・・・・ハッ!?」

 

「エルちゃん、他のトレーナーさんに抱きつくのは度を超えていると思いますよ?」

 

「エ~ル~?」

 

羨ましさと嫉妬で、目の前で慕っている男に甘えイチャイチャするチームメンバーに許すまじと恋敵に駆けだしたグラスワンダーとタイキシャトル。脱兎のごとくエルコンドルパサーはDから離れて逃走を図った際のタイムをDが計ったら。

 

「・・・・・ハロン、現在、全てのウマ娘、一番、記録」

 

「こんな形でタイムを更新しなくてもいいじゃないのエル・・・・・」

 

「あっはっはっはっ! やっぱり誰かに本気で追われる大逃げの方がタイムの上りがいいな!」

 

悲鳴を上げるエルコンドルパサーはその後二人に捕まり、どうなったのかは・・・・・別の話に。

 

「覚悟は~」

 

「オーケー?」

 

「ノオオオオォォォォ!!?」

 

 

その頃、外では・・・・・D達が利用している宿泊施設に一台の高級車が止まった。

 

「お爺ちゃん、ここが泊まる場所? 辺鄙な所にあるんだね」

 

「兵藤家が昔から管理している歴史ある古い旅館だ。兵藤家の者は皆、一度ここで宿泊している」

 

「ふーん。目の前に海があるのに可愛い子が一人もいないのもつまらないな。花が足りないよ花が」

 

「そんなものは必要ない。お前に必要な物は私の地位と権力を継ぐ知識と実力のみだ。わかっているな」

 

「はいはい、もう聞き飽きたよその言葉。かたっ苦しい掟や仕来りばかりな生活より、自由で派手な生活の方が好きなのに」

 

中から出てきたある男の顏と似ている中年男性と3人の従者、若い女性に若い2人の少年少女が旅館に来ることを想定できなかったリーラ達は困り果てた。何せ来訪した4人は―――。

 

「事前に連絡をいただけないと困ります。大統領」

 

で、あるからだ―――!

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

昼食までのトレーニングは終わり、旅館へ戻る一行が見覚えのない高級車に目が留まった。

 

「あれ、別の人達も来たのかな」

 

「もしくは、兵藤家の方かもしれません。あの車の家紋、兵藤家の家紋ですわよ」

 

「え、それが本当なら私達だけ利用できるんじゃなかったの?」

 

「・・・・・兵藤家」

 

「こっちのことなんて無視するってこと、なんですね」

 

「確かに兵藤家の者がしてもおかしくないか」

 

げんなりと一行は辟易する。兵藤家だからという単純な理由で。

 

「お帰りなさいませ。少々お話がございます」

 

「・・・・・兵藤家、来た」

 

玄関で一行を迎えるリーラが申し訳なさそうに頷いた。

 

「はい。本日のご予約を取らず直接お越しになされました。私共は御引き取りを願えず、中に招き入れてしまいお寛ぎして頂いております」

 

「・・・・・帰る?」

 

「しばらく滞在する予定です」

 

「え、それって・・・私達が帰るまでにいるってことですか?」

 

リーラは頷く。となれば旅館内で会うのは必須。これはどうなるのか、どうするべきなのか大人達は悩んだ。

 

「・・・・・対応」

 

「不埒な真似事はこちらで対応いたしますが、相手は・・・大統領です」

 

『んなっ!?』

 

大統領―――天皇一族兵藤家の当主とは別に実質日本を統治しているのは大統領だ。しかも兵藤家の人間であることは日本で知らない者は幼い子供ぐらいだろう。よもや、そんな大物が同じ宿泊している旅館に来るとは、この場にいる全員が予想もできなかったことだ。

 

「そして、兵藤源氏様の弟君でもあります。孫もおります」

 

『はいっ!?』

 

「・・・・・知らなかった」

 

自分に従兄弟姉妹がいることを地味に知らずにいたDも、目を丸くした事実に本当なんだと周囲も知った。

 

「・・・・・孫、性格、は?」

 

「お一人は少女で見た限りでは御淑やかだと思います。もう一人は少年で女好きだと見受けました。初対面の私に対して一緒に熱い夜を過ごすお誘いをしてきましたので」

 

「・・・・・殺して、いい?」

 

顔は無表情なのにあのDが脈絡もなしに怒っている!? しかも拳に黒い炎まで発火させている!

なのにその手を恐れず痛がらず白魚のような手で包み触れるリーラが微笑んで窘めた。

 

「大丈夫です。私の身と心はご主人様のモノです。他の男性に髪の毛一本も触れさせることも許すつもりは毛頭もありません」

 

「・・・・・? ・・・・・そう?」

 

「はいそうです。私のことを女として愛してくれているならば、アップルパイを食べている時のように喜んでくださっていいのですよ私の愛おしいご主人様」

 

『な―――!?』

 

目の前で堂々と、メイドが主に忠誠以上の感情をさらけ出した上に告白した!! トレーナーを異性として慕う少女達からすれば、このメイドが凄く厄介極まりない女として最大の恋敵かもしれないと認識を変えざるを得なかった。

 

「・・・・・リーラ、アップルパイ、否、食べれない」

 

「食べれますよ?」

 

「・・・・・? ・・・・・どうやって?」

 

「気になるなら教えて差し上げます。今夜、私が眠る部屋にて―――」

 

ガシッ!! とリーラの背後から同じメイドの女性達が手を伸ばして彼女を持ち上げた。

 

「リーラさん、お一人だけ美味しい思いをさせませんよ」

 

「ご、ご主人様は共有財産であることをお忘れずに」

 

「仕事が終わらないので早く戻りましょう」

 

「皆様。ご昼食はお時間通りにお運びいたしますので大広間にお待ちください」

 

「失礼します。そして、くれぐれも夜間に旅館内を出歩かないでくださいね? これは絶対にですよ」

 

廊下の奥へとリーラが連行されて取り残された面々は呆ける他なかった。

 

「・・・・・人間、食べられる?」

 

「人間は物理的に食べれないから彼女の言葉は全部忘れなさい。いいわね」

 

「・・・・・リーラ、嘘、否・・・・・同じ、女性、東条先輩、食べられる?」

 

「は、はっ―――!?」

 

東条ハナの顏が一気に紅潮と瞠目して狼狽する。その反応がとても不思議で堪らずジーと彼女の目を覗き込んだ。

 

「・・・・・教えて?」

 

「な、ちょ、顔、近っ・・・・・!」

 

あと数センチで互いの唇が重なりそうなところで横からウマ娘達がDを持ち上げ、靴を脱がしてそのまま連行した。

 

「トレーナーさん、その話はひとまず横に置いて大広間に行きましょう」

 

「そうだね!! うん!!」

 

「トレーナー、行こう。私はお腹が空いた・・・・・」

 

チームシリウス総出でDを運び出され、取り残された面々は顔が赤いまま腰を抜かした東条ハナを見た。

 

「おハナさん、もしかしてDトレーナーのこと好きなのかぁ?」

 

「バ、なっ、バカなことを言うんじゃないわよアマゾン!」

 

今まで見たことがない彼女の反応に、沖野もこれは意外だという風に無精ひげが伸びた後に手を添え、Dに感心した。

 

「うーん、何時の間におハナさんを攻略したんだDくん。凄いな」

 

「あんたも何勝手なことを言っているのよ!?」

 

「トレーナーさん。ちょっとじっくりそのお話を聞かせてください」

 

「とっても興味あるのデース」

 

「イエス、逃がしませんよ」

 

「ふふふ、私もトレーナーの恋バナに興味があるね」

 

「おいお前達、トレーナーに困らせる真似はよせ・・・ってお前までその目は何だ」

 

とても興味あります! という顔と雰囲気を纏っているマルゼンスキーに気付くエアグルーヴは困った顔をした。

 

「まぁまぁ、私達はトレーニングをしているけれど無礼講の休暇を過ごしているじゃない。だから恋バナの一つや二つ、してもいいと思うわよ? と言うことで、私がトレーナーさんも運ぶわよ。それっ、スパーカーの如く!」

 

「待ちなさいマルゼンスキー! 廊下の中で走るのはぁあああああああああ!?」

 

片腕で抱えられたまま連れて行かれる東条ハナの悲鳴の後に沖野達も旅館内に入り、昼食前に汗を流しにウマ娘達は浴場へと足を運んだ。

 

「あんな大声を出してまぁ。兵藤家の人間がここにいることを忘れちゃいないだろうに」

 

「何か言ってくるならばDくんに対応してもらいましょう」

 

「適材適所だね」

 

「そうするのが一番だ」

 

沖野も同感と頷いて兵藤家に関する面倒事は対応ができる人間に押し付けよう! 取り残された男性トレーナー達の発言にそれぞれのチームのウマ娘はここぞとばかりジト目をした。

 

「トレーナー達。それはさすがに他力本願じゃねぇか? あのトレーナーがいなかったらどーすんだよ?」

 

「そうです! トレーナーさん達も頑張ってください! Dトレーナーさんばかりに甘えちゃダメです!」

 

「考え方が逃げ腰で最低です。ここは大逃げを想定した勝利をするべきです」

 

「それだからDトレーナー以外のトレーナーは兵藤家の奴に情けない噂も聞くんだ。黒沼トレーナー。その身体は見掛け騙しの為のただの飾りなのか。・・・・・情けないぞ」

 

「「「「・・・はい、すみません」」」」

 

担当ウマ娘からの叱咤に沖野達は肩身の狭くなってしょんぼりとした。こんな自分だから王嶽トレーナーは、担当ウマ娘のシンボリルドルフを自分達に託さなかったんだと痛感もした。

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