ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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七泊八日の宿泊(8)

宿泊の特権を得た利用客と大統領一家と旅館内で出会う確率は高確率だった。昼餉の時間には大体の人間が大広間に揃って運ばれてくる料理を舌鼓する。そんな中で同じ場にいる大統領達は真紅の長髪の男を注視した。

 

「お爺ちゃん。あの男って力の大会に優勝した奴だよな」

 

「・・・・・そうだな」

 

「あら、こんな所で会うのは偶然ですね。ご挨拶でも行きましょうか」

 

「はい」

 

立ち上がった女性と少女に続き、大統領と興味あると少年も腰を上げてDの背後に近寄る前に四人へ振り返り視線を送っていた。大統領達が動き出した直後にそうしていたDは警戒を強めていた。生気のない、目に光がない、間近にいるのに空気のように気配がまったくない、一瞬でも目を離せば煙のようにいつの間にか消えるような印象が最初に四人に抱かせた。

 

「初めましてだね。僕は兵藤天王。当主の孫で従兄弟と会うのは初めてだ」

 

「私は天王の長女、兵藤迦楼羅です。以後お見知りおきを」

 

「・・・・・D」

 

「Dって偽名だろ? 兵藤一誠って名前が本名―――っと、わかったよ。偽名の方で呼ぶから睨んできながら殺気を向けないでくれ」

 

相手が兵藤家なら等しく誰であろうと関係ないDの周りにいたトレーナー達はハラハラドキドキ。大統領夫婦も口を開いて名乗り出した。

 

「私は兵藤聖。こちら日本を統治しておられる私の夫、兵藤玄弥です」

 

「「・・・・・」」

 

しかし、言ったのは天皇の妻のみ。大統領兵藤玄弥はDを見つめ、Dも玄弥を見つめる。

 

「・・・一つ答えろ。兵藤家のことどう思っている。嘘偽りなく申せ」

 

「・・・・・大嫌い、兵藤家、絶滅、日本の為」

 

真正面からハッキリととんでもない爆弾発言をしたDにトレーナー達は顔を覆いに引き攣った。

 

「理由は何だ」

 

「・・・・・若い兵藤家のガキ共、犯罪者、女、全員、強姦、兵藤家の権力、乱用、脅迫、脅し、その他諸々、性欲の害獣、四年前から、駆除、被害者、100人以上」

 

え、マジで? と天王と迦楼羅は目を大きく見張った。

 

「・・・・・大統領、知らない? 知っていて、無かったことしてる? 知らない振りしている?」

 

「・・・・・時折だが、駒王トレセン学園で兵藤家の者に暴虐の限りを尽くしている警備員がいると報告が挙がっていた。だが、あの学園で起きた事は兵藤家が関わらないことに定めたのは私だ。例え兵藤家の者を相手に手を出す者がいたとしても介入はしない」

 

「・・・・・心に傷、その後の人生、生きることになった人間がいても? 今の兵藤家、それ、教育方針?」

 

「言い訳に聞こえるだろうが。若い者達を育成するのは兵藤家の現当主と本家の者達だ。大統領を始め日本政府に関する機関に身を置く我々は分家であり、当主達の教育方針に一切の関与はしないしできないのだ。私の兄、源氏は日本の国力の中枢に足り得る若い者達の育成を。私達は日本の舵を取る役目を分担して行っている」

 

静かに耳を傾けるDは聞く姿勢を保つ。

 

「もしも日本が全て沈没するような災害が遭った時、迅速に事を運ぶための案を考えるのが私達の仕事だ。個の問題は兄、全の問題は私とはっきり区別されもう兄とは百年以上も顔を合わせてはいない」

 

「・・・・・クソ親父も?」

 

「兵藤家の悪童のことだな。そうだ、向こうからも会いに来なかった。私のことを一切教えていないからだろうな。お前もそうなのだろう」

 

「・・・・・知らなかった」

 

素直に肯定するDに天王と迦楼羅も同意する。

 

「僕達も知らなかったんだけどお爺ちゃん」

 

「当たり前だ。本家と関わることは一切ないのだからな」

 

「では、他の従兄弟姉妹と出会うことも?」

 

「断じてない。ましてや兵藤家を嫌悪している者が兵藤家の者と交流など苦でしかないだろう」

 

Dを見ながら言う玄弥。天王達もそうなのかと風に見て質問した。

 

「なぁ、どーして兵藤家をそこまで嫌うんだ? 初めて知ったけど学園で犯罪行為をしているからか?」

 

「・・・・・昔、兵藤家、俺、弱い者、虐める、強さ、偉い、虐め、正当、大人も、兄も見捨てる、弱い者、牢屋、一週間、カビのパン、水、それすら貰えなかった、餓鬼状態、ミイラ・・・・・」

 

「・・・あ、あなた、よく生き残りましたね。そこまで酷いことされていたなんて・・・・・」

 

「・・・・・死に損なった、殺すなら殺してほしかった」

 

「お、お前・・・・・」

 

本気で言っている目を見てしまった。だから目に生気がないのかと悟ってしまった天王と迦楼羅は口を噤んだ。

 

「・・・今も、死にたいと思っているのか」

 

「・・・・・願わくば、死ねるなら、死にたい」

 

でも・・・・・とさらに言葉を付け加えた。

 

「・・・・・今、守って、死ぬ、と、思っている」

 

「・・・そうか。ただの犬死にするような真似はしないなら、後悔のない死に様をするがいい」

 

先に席へ戻りに踵を返した玄弥、その後に聖も続いた。

 

「D、せっかく出会ったんだ。今夜、もう少し話をしていいか?」

 

「私もよろしいですか?」

 

話を聞いて、Dに興味を抱いた2人に少し考え込み頷きリーラにある頼みを求めに呼んだ。

 

 

その日の夜。

 

 

「・・・・・リーラ、ありがとう」

 

「はい、行ってらっしゃいませご主人様」

 

夕餉前に大統領一行を呼び、身内同士で食事はどうだと誘うDに玄弥達は不思議に思ったが、向こうからの誘いに断る理由はない。誘いに乗った玄弥達と大広間にに集まっては、リーラに感謝の言葉を述べながら5人は足元に展開した魔法陣でどこかへ転移した。

 

「・・・・・ここは」

 

転移先は歴史ある古い建物の中だと言うことだけがわかる。来たこともなければ見覚えもない場所ではない、遥か昔に過ごした場所である古い記憶が一気に鮮明に思い出して、玄弥の目は丸くなった。隔てる壁や襖がない吹き抜けた大広間。外に繋がっている襖を開けば何かしらの風景や光景が見られるだろう大広間は明かりがなく、真っ暗な状態の中を、Dは魔力の光球で照らし始める。

 

「え、どこだ? 僕達はいつの間に?」

 

「・・・・・魔法、経験、皆無?」

 

「元いた旅館から別の場所へ? ・・・・・凄い、始めて経験しました」

 

「一瞬過ぎて実感がないよ。D、もう一度―――」

 

ドドドドドドドッ!!!

 

「いっくんの匂いがするー!!」

 

そんな歓喜の大声が聞こえた時、閉まりきった大広間の襖が勢いよく横に開かれると喜色で顔が満面の笑みを浮かべる悠璃がDを見るや否や飛び付いた。

 

「いっくーん!!」

 

「どちら様だぁ!?」

 

「凄い、喜びようですね・・・・・」

 

Dと背後へ転がる悠璃を知らない天王と迦楼羅。これが犬であったら尻尾を振り千切れんばかりに振って身体全体で嬉しさをアピールしているだろう。いや、もう悠璃はそうしていたが遅れてきた楼羅が影から出てきて悠璃の襟を掴んでDから引き離した。

 

「悠璃。来てくれて嬉しいのはわかりますが、もう少し静かに喜びなさい。あなたは犬ですか」

 

「いっくんのメス犬になれるなら犬になるよ!」

 

「・・・・・悠璃?」

 

「ごめんなさい!?」

 

妹の顔面を掴みアイアンクローを仕掛けた姉のお仕置きは、Dが楼羅の肩を叩いた。

 

「・・・・・お客」

 

「えっ? ・・・・・どちら様ですか?」

 

「・・・・・お爺ちゃん、弟、家族」

 

「お父様の弟!?」

 

「えっ? お父さんに弟がいたの?」

 

実の娘にも伝えられていない事実に教えられた2人もやはり驚いた。

 

「えーと、D? もしかしてその2人は当主の娘?」

 

「・・・・・正解、姉、楼羅、妹、悠璃。お爺ちゃん、娘」

 

「そうでしたか。初めまして、私は兵藤迦楼羅です。本家の当主の御息女と会うとは思いませんでした」

 

「本家・・・あなた達は分家の?」

 

「そーだ。大統領の孫だよ僕達」

 

「ふーん、そうなんだ。いっくん、もしかして五人分用意してほしいって」

 

「・・・・・家族、団欒」

 

そう言うDの見る先には源氏が突っ立っており、玄弥を複雑な顔で見ていた。

 

「・・・・・百年ぶりか、弟よ」

 

「・・・・・そうだなクソ兄貴」

 

逆に玄弥は出会いたくなかったと言わんばかり凄く嫌そうな顔をして、自分の兄弟に対してクソ呼ばわりした。

 

・・・・・クソ兄貴?

 

「お爺ちゃん。当主ともしかして仲、悪いのか?」

 

「個人的な話だ。まだ幼い頃、私が回りと少し弱いだけで辟易するほどクソ兄貴と比べられ、当の本人は弱いから悪いんだの一言で済ませるし、弱い理由で虐められているところを見られても、そのぐらい自分で乗り越えろと見捨てるし、お前は当主など向いていないなど、勝手に決めつける」

 

「・・・実際にお前は大統領になった。私の判断は間違っていなかった」

 

「うるさい! 強さだけが全て決まるわけではない。強さだけで物事が簡単に進める筈がないだろうが!」

 

「・・・・・ああ、そうだな。お前の言う通りだ玄弥」

 

源氏が深い溜息を吐いた。

 

「強さだけ固執するあまり、質の悪い者共が多く輩出してしまった。兵藤家が始まって以来の新しい黒歴史のページが増えた」

 

「話は聞いたぞクソ兄貴。本当に随分と質の悪い教育のせいで、他の若者達の人生を滅茶苦茶にしているそうだな。お前の孫もその一人のようじゃないか。しかも昔の私と似ている点が多い始末だし、次期当主はあの悪童、お前の子供なのだろう。兵藤家の未来が不安だらけではないか」

 

「・・・・・そのための分家だ。本家が失墜した時、分家の者が奮起してもらう」

 

「面倒事を全部俺に押し付ける気かクソ兄貴!」

 

とうとう一人称が私から俺になった玄弥と源氏の会話を見聞していたDが呟く。

 

「・・・・・兵藤家、親子、兄弟、仲悪い、習慣?」

 

Dから質問を受けた天王と迦楼羅はどうなんだろう? と思いを抱いた。

 

「いや、お爺ちゃんと父さんは悪くはないと思うぞ。というか、こんなお爺ちゃん初めて見たし」

 

「私もです」

 

互いの祖父、兄弟の言い合う姿を流石にそろそろ止めるべきだと動く直前、また別の人物がやって来た。

 

「おい、クソ親父。何時まで油を売っているんだ。料理が冷めちまう―――一誠っ!?」

 

「・・・・・チッ」

 

「おい、お前も仲が悪いじゃんか」

 

「・・・・・自由奔放、旅、実の息子、邪魔、兵藤家、押しつけ、クソ両親、片割れ」

 

「そうなんですか・・・それは災難でしたね」

 

Dの父親だと認識しつつ、Dが兵藤家の者達に虐められることになった原因の人物とも認知したところで焦燥に駆られた誠が待ったをかけた。

 

「待ってくれ、どこの誰だか知らないが誤解なんだ! 旅をしていたのは事実だが放蕩してたばかりじゃないんだよ! ちょっと神々と世界規模の話の打ち合いをしていたんだ!」

 

そんなことどうでもいいとばかり、二人に指すDは教えた。

 

「・・・・・お爺ちゃん、弟、孫」

 

「・・・親父の弟、孫だと?」

 

初めて聞いた風に反応する誠。やっぱり実の息子にも教えていなかった源氏はジト目で玄弥に睨まれた。

 

「いくら俺と関りが持たなくなったとは言えども、お前の親類の誰一人俺のことを教えていないのはどういう了見だ」

 

「知ったところでどうなる。本家と別れた分家の者と出会うことはないというのに。お前もそうだろう」

 

「理由は違うがな! クソ兄貴のことを教えたくなかっただけだ!」

 

噛みつく勢いで怒鳴る玄弥の態度に誠は唖然とした。

 

「・・・・・俺以外クソ親父のことをクソ呼ばわりする奴、初めて見た。本当に兄弟なんだな」

 

「・・・・・クソ親父」

 

「俺に向かって石ころを見る目でクソ呼ばわりするなよぉっ!?」

 

実の息子にクソ呼ばわりされるのが堪らなく悲しみ嘆く誠。兵藤家の当主の家系は仲が悪い特徴かもしれない事実が浮き彫りして来た所で。

 

「あなた達・・・・・何時まで待たせるのですか・・・・・?」

 

『あ』

 

薙刀を持ち怒髪冠を衝く般若の女性が現れた。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

本家と分家、当主と大統領、その妻と息子と孫と同じ食卓に着く極めて異常な光景がDによって作り出された。本家と分家の兵藤家のツートップ、兄弟が共に食事をするなど百年以上ぶりとなるが。

 

「クソ兄貴、それは俺が狙っていた肉だぞっ」

 

「出遅れる方が悪い・・・・誠、勝手に私の肉を奪うな」

 

「出遅れる方が悪いんだろ? バーカって、ああっ! アンタ、俺の取るなよ! 大統領のする事か!」

 

「「野菜も食べなさい?」」

 

「「「・・・・・はい」」」

 

「「・・・・・」」

 

「こっちはこっちで、食べづらい雰囲気を出すなぁ」

 

「だって、いっくんを見捨てた事実は本当だもん」

 

「ですが、具材をよそってあげるぐらいはしますので邪険に扱っていないのでは?」

 

「食事まで喧嘩するような大人ではないのはホッとするわ」

 

「はい、あちらのようにね」

 

「いつにも増してお父様は騒がしいですね」

 

率先して全員分の具材を器によそって手渡すD、無言で貫く複雑極まりない表情を浮かべる誠輝。Dの左右を固める楼羅と悠璃、香織と聖華、天王と迦楼羅と兵藤家のトップの子供&孫が固まって用意してもらった鍋を囲っていた。

 

「いやー、本家の、お爺ちゃんの兄の娘と孫と一緒に食べるなんて思いもしなかったぜ」

 

「本当ですね。本家の兵藤家の方と交流すること自体もありませんから」

 

「それは同じ気持ちです。分家の方がいることは知っていましたが、本邸におらず別の場所で暮らしていてどなたが分家の者かわかりませんから」

 

「ぶっちゃけ、皆同じ顔に見えるから区別が出来ないよ。いっくんは別だけどね」

 

笑みを浮かべながらDに肩を寄せる悠璃。

 

「私と香織は純粋な兵藤家の人間ってわけじゃないから、色々と分からないことがたくさんあるわ」

 

「聖華と一緒でDお兄さん寄りね。でも将来は、私も外で働きたいなー。Dお兄さん、トレーナーってどんな感じ?」

 

「・・・・・レース、一着、達成感、凄い」

 

「自分が育てたウマ娘がレースで一着になってくれたら、確かに嬉しいよねいっくん。あーあー、私もウマ娘だったらいっくんに色々と育てられて・・・・・きゃっ」

 

「悠璃・・・・・気持ちは分かりますが煩悩を抑えなさい」

 

話しがズレてきたのでDは訂正した。

 

「・・・・・頑張るウマ娘、応援したくなる、トレーナー、色々考える、それに応じるウマ娘、一心同体」

 

「大変な事とかある? 悩むこととかもある?」

 

「・・・・・大変、知識、東大より狭い門、問題、難解。・・・・・悩み、自分の考え、トレーニング、作戦、全て正しい、否、葛藤、必然」

 

「それは今もですか?」

 

迦楼羅の指摘にコクリと頷く。

 

「・・・・・でも、楽しくある」

 

「そっかー、トレーナーってそんな感じなんだねー・・・・・うん、決めた。私もトレーナーになってみたい」

 

「奇遇ね香織。兵藤家にいるよりは仲のいいウマ娘と頑張って応援する日々を過ごすのも楽しいかも。D兄さん、兵藤家の人間がトレーナーって他にもいる?」

 

どうだったろうか。展開した魔法陣からファイルを取り出して過去のトレーナーも含めたトレーナーの情報を流し目で探すD。

 

「・・・・・不思議、0人。お爺ちゃん、理由」

 

すぐ傍で騒がしい卓にいる祖父に尋ねた。聞いていたのだろう直ぐに源氏は答えた。

 

「兵藤家の人間はそれぞれ実力と成績に見合った職に就かせていることが多いが、中には実力があるのに己の夢を叶える者や漁業に興味を持ち漁師になる者、花屋を営む鍛冶を好む者と幅広く兵藤家の枠から外れる者が多くいる」

 

「それで?」

 

「だが、兵藤家という理由で八百長が起きてしまうこともある。事前にそうなることが判るならば私達はそれを禁止にしている。トレーナーもその一つだ」

 

それは・・・・・否定できないことだった。天皇家の一族に勝たせなければどんな目に遭うのか分かったもんじゃないと、トレーナーは臆し自分の担当のウマ娘にわざと負けろと言い兼ねないし、わざと勝たされるウマ娘も心を苦しみ苛む結果になるだろう。

 

「・・・・・孫は兵藤の名を捨て、兵藤家の者としてあるまじき問題児共を4年前から粛清し続けたから兵藤家の人間とは思われないでいた。それが幸いにしてトレーナーを続けられた」

 

だが、正体を明かされた今・・・今後はどうなるか分からない。わざとウマ娘に負けろと言うトレーナーがいないことを信じるしかないDは姉妹に振り向いた。

 

「・・・・・理由、以上」

 

「兵藤家だから、出来ないこともあるなんて・・・・・じゃあ、兵藤家であることを伏せればいいってことね」

 

「それが妥当ね」

 

香織と聖華がDを見てお辞儀をしだした。

 

「「トレーナーの先輩としてよろしくお願いします」」

 

「・・・・・なに、を?」

 

「もちろん、トレーナーのイロハよ。学園に編入したら教えてね?」

 

「出来れば近くでトレーナーをしている様子を見てみたいわ」

 

二人の中では既に確定した。トレーナーになった兵藤家の人間がいないなら、自分達がその初めてとなり有名なトレーナーとして名を残してみたい気持ちが強く湧いた。兵藤家の名を捨てたとは言えどDは兵藤家の血縁者。捨てなければ兵藤家で初めてトレーナーとして名を残した存在となっていたのだ。ならば、それを実現してみようじゃないか、私達が―――!!

 

「・・・・・」

 

そんな二人を脳裏に想像して・・・・・愉快だとDはくすっと笑みをこぼした。

 

「・・・・・将来、楽しみ、ライバル」

 

「「―――――」」

 

綺麗な笑みだった。笑ったDの顔を見て香織と聖華は思わずと赤面した。そんなDからバッと顔を反らして赤くなった自分の顔を隠す二人に小首を傾げるD。

 

「・・・・・格好良すぎでしょ」

 

「・・・・・ヤバい、なんか段々と、色々と・・・・・」

 

「・・・・・?」

 

「いや、無自覚かい」

 

天王がツッコミを入れる。隣に座っている迦楼羅が胸に手を当てて何かに堪えていた。

 

「危なかったです。間近で直撃したら私も惚れてしまいました」

 

「え、ちょろ(ドスッ)ぐはっ!?」

 

迦楼羅にド突かれた天王を視界に入れる誠輝。

 

「・・・・・天王、だったな」

 

そこで沈黙を貫いていた誠輝が初めて口を開いた。天王はようやく喋り出したDの長男に反応して話を聞く。

 

「おうそうだ。何か聞きたいことがあるなら何でも聞いてもいいぜ誠輝」

 

「・・・だったら聞くけど、分家は何時もどこで何をしているんだ?」

 

「そんなことか。分家は東京で居を構えてだな、多分本家と変わらないことをしているぞ。兵藤家の歴史を学ぶ他、文武両道の授業を受けている。後は、過酷なトレーニングや鍛練もしている。な、迦楼羅」

 

「男女共通で行いますが、女性だけしか受けれない授業もあります」

 

「なにそれ? 舞とか?」

 

それだったらうちもしている事だと、何てことなさげに言う悠璃であったが、迦楼羅は首を横に振った。

 

「いえ、嫁ぐ者として恥ずかしくないよう家庭的なものと四十八手を」

 

「「「「「四十八手?」」」」」

 

聞いたことがない単語だと鸚鵡返しをした途端。源氏達の方から「ぶほっ!!」と噴いた。そして真正面にいた妻に噴いた物が掛かって仲良く揃ってお仕置きされる流れになった。

 

「・・・・・」

 

訊き返さず一人携帯で四十八手の検索をして、これかとDが迦楼羅に見せつけたそれは・・・・・。

 

「はい、それで間違いないです」

 

「・・・・・男女、性的行為、四十八、性交、体位」

 

「なっ・・・!?」

 

性行為の関するものだった為に赤面する誠輝と呆れる天王。

 

「さらっと女の子がいる前で言うなよ・・・・・というか迦楼羅がそんな授業を受けていたなんて地味に知らなかった」

 

「知識だけ学んでいるだけです。実技は将来結婚する殿方と出会うまで致しません」

 

「え、結婚する気あったのか?(ドスッ!)ぐえっ!?」

 

「失礼ですよ愚弟。女であれば誰でも構わないあなたと、理想の殿方を求めている私と違います」

 

思いっきり横っ腹を殴り天王を吹っ飛ばした迦楼羅。未成年とは言え男一人殴り飛ばすだけの力があるのはさすが兵藤家の人間と言ったところだろう。聖華が挙手した。

 

「はい質問。迦楼羅の理想の相手ってどういう人か決まっている?」

 

「そうですね・・・・・政略結婚やお爺様やお父様がお見合いで決めた殿方以外でしたら、興味本位ですが○○○が大きい方でしょうか。四十八手を学ぶ際に私の相手となる殿方の事を思ったら、次第に○○○に興味を持ってしまい、見かける同い年や大人の殿方の下半身に目を追って視てしまうほどに・・・・・」

 

聞かなければよかったと思わずにはいられない少女の口からとんでもない言葉が出てきてしまった故に。

 

「ちょっ―――!?」

 

「あ、ああああなた・・・・・っ!?」

 

香織と聖華が林檎のように顔を真っ赤にして、誠輝と天王は聞いてて恥ずかしいと顔を反らし、楼羅と悠璃は平然としてた。

 

「・・・・・外国人、たくさん」

 

「そうですか。それは大変興味あります。愚弟はちっさいので」

 

「ちっさくねぇよ!?」

 

全力否定する天王。ここで反論しなければそうなのだという印象を与えてしまう哀しい理由に。

 

「大体そう言うことなら、男は気持ちよくなってくれるおっぱいが大きい女の方が好きなんだぞ! 迦楼羅は体力バカだから。どうせ相手を泣かせてばかりで男に逃げられるのがオチだろ!」

 

「は? 同じ体力バカの愚弟に言われたくありませんけど?」

 

「・・・・・なんでこんな話になってしまったんだ」

 

「・・・・・発端、クソ兄貴」

 

「兵藤家の人間って、こんなのばかりなの・・・・・?」

 

「いろんな意味で恥かしいわ・・・・・」

 

「ねぇ、楼羅ー」

 

「今は黙ってください。余計ややこしくなるだけです」

 

猥談な話で騒ぐ娘と孫達を他所に当主と大統領は窘めることができず、妻の肩を揉んでご機嫌取りで必死だった。

 

「・・・・・なんだ、この状況」

 

一人蚊帳の外に置かれた誠は神妙な顔つきで見ているしかできなかったその後。そのまま本邸で寝泊まりすることになり、浴場でDを見た誠輝と天王が凄く絶望した暗い顔を浮かべ、二人仲良く隅っこで慰め合うほど仲良くなったのは別の話。

 

「・・・・・す、凄いですっ」

 

そして男湯の方へ視線を凝視する迦楼羅に気付かずに。

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