二学期が始まって数日後。駒王トレセン学園は迎える体育祭に向けて準備期間に入った。体育祭は一般生徒とウマ娘、例年通り変わらず別れて行われる。なのでどちらかが一方の方へ向かうことはないし、行くこともできない。ただし外部から来た者は例外だ。
―――深夜、某港。
「よーし、お前達! これから彼の学園の体育祭にお邪魔してじゃんじゃん料理を作って稼ぎに行くぞー! Dさんの邪魔しないようにな!」
「「「「「はい総帥!」」」」」
「久々にアニキと会えるっすね!」
「総帥、他の皆さんも各地で港に到着して向かっているみたいですよ」
「そうか! ならこっちも遅れるわけにはいかないな! 急いで支度を済ませて出発だ! アンツィオ高校が生まれ変わったところを他の学園に見せつけてやるんだ!」
「「「「「「「「「「はい総帥ッッッ!!!!!」」」」」」」」」」
「隊長。全ての準備が整いました」
「わかった。すぐに出発するぞエリカ」
「はい」
「うーん、東京の空港からじゃなくて直接学園に着陸できたらいいのに。そう思わないナオミ?」
「ヘリぐらいなら可能だろうけど、大荷物を抱え込んで飛ぶのは無理がある。陸路でしかないから仕方がない」
「というか、アタシ達が行く必要ってあります? 他の学園の体育祭に参加するわけでもなく、出店を構えるだけでしょ?」
「だってー、こんな面白い提案に乗らないなんてつまらないじゃないアリサ。あ、そーだ。アリサの恋愛相談の相手になってもらうようお願いしちゃおうかしら」
「いいんじゃないか。進展どころかスタート位置すら立っていないアリサの為になるような助言が聞けそうだ」
「ちょっとどういう意味よ! アタシは下準備を入念と慎重にしているだけなんだからッ!!」
「ダージリン様! お車が空いておりますからかっ飛ばしていきましょう! 先に着いていい場所をかっぱらいますですの!」
「ローズヒップさん落ち着いてください。ちゃんと交通のルールを守らないとダメですよ」
「ダージリン、連れてきて大丈夫なのですか? 少し心配・・・いえ、あちらで大変なご迷惑を」
「仲間外れは可哀想でしょう?」
「もうそろそろ着きますよ」
「zzz・・・・・zzz・・・・・」
「完全に寝ておられますね」
「深夜ですから仕方がありません。それより同志、わかっていますね」
「ええ、もう二度とあのような姿をさせません」
「ねぇ~、本当にいいの? 私達だけ用意していないと思うよ?」
「心配性だなアキはー。ウチらもちゃんと用意しているんだぞ?」
「そりゃあ、用意はしたよ。したけど・・・・・」
「時には大より小の方が大事だよ。それは相手にとって良いことか悪い事かその時によって違うから、世の中は分からないことだらけなのさ」
「もー、またミカはわからないことを言うんだからー」
「いつものことじゃん」
「おーし、全部荷物を詰めたところで出発だ!」
「お前達、くれぐれも許可をくれた相手先に失礼のないよう言動には気を付けるんだぞ」
「まさか、許可してくれるとは思いもしなかったけれどねー」
「楽しみですね駒王トレセン学園。話ではウマ娘を育成する大規模なトレーニング施設だとか」
「・・・少し違う。ウマ娘を育成する施設は一般の生徒とウマ娘と完全に分かれているらしく、一般の生徒はウマ娘と交流することは殆どないらしい」
「そうなんですか。今時珍しいですね。男子高校生と女子高校生以外にも分けられているなんて」
「じゃあ、Dさんと一緒にいたあの子達もウマ娘しかいない教室にいるんだね。はぁー早くDさんに会いたいなー。ね、みぽりん」
「うん。まさかこんな形であの人の学園に行くなんて思ってもみなかったよ」
「さぁ皆! 準備はいいか!」
「完了であります西隊長!」
「全て用意完了であります!」
「何時でも出発できます!」
「号令を隊長!」
「うむ! では行くぞ、駒王トレセン学園へ!」
―――なお、どうしてこうなったのか数日前に遡る。
理事長に呼ばれ、デスクの前に立っている秋川やよいに用事を尋ねると。
「来訪! 体育祭当日に外部から来た者達の出店を構えることにした!」
「・・・・・例年通り、否、理由」
「提案! 外部の学生から体育祭をさらに盛り上げるための出店の許可の連絡が入った! トレセン学園も例年同じ繰り返すことばかりではなく変化も加えてきたが、今回はその連絡を聞き出店を設ける変化をしようと決定した! つまり、今月行われる体育祭は文化祭も兼ねて行おうと思う! さーらーに! 地方から多くのウマ娘達を招き中央のここ、トレセン学園のウマ娘と交流を図る!」
「・・・・・お祭り騒ぎ」
「肯定! 今まで学園内だけで行って来た体育祭は、今年は外部からウマ娘や一般生徒のご家族も招いて行う! D警備員には大変な苦労を掛けるが、頑張ってほしい!」
「・・・・・すでに決定事項、異論、否、権利、皆無、仕事、増加、確定・・・・・はぁー」
その日の内に、Dは兵藤源氏に連絡を取った。
「・・・・・来る?」
『その前に一つ知りたいことが一つある。学園にいる兵藤家の者達は今まで体育祭の時はどうしていた』
「・・・・・一部、不在、ボイコット、一部、完全に不参加、見学、罵倒、野次を飛ばす、一部、女子生徒、女教師、強制連行、性欲の獣」
『・・・・・今年も同じことを繰り返す可能性は』
その問いに無言となるDは去年を思い返す。性欲の獣にはならなくなったが、他は大体不参加の一択だったなと。
「・・・・・不明、可能性、アリ」
『・・・そうか。・・・・・ならば秋川やよい理事長に一つやってもらいたいことがあると伝えてくれるか』
「・・・・・ん、わかった」
聞かされる内容をそのまま秋川やよいに伝えると、彼女は了承してすぐに行動に出た。その結果が判る時は体育祭当日である。Dはまた別の人物にも声をかけてみた。
「・・・・・来る?」
『そうしよう。この目で直接学園の様子を見るいい機会だ』
そしてそれから数日後―――。外部から来る者達の出迎えを待っているとDの予想をはるかに上回る車両とその数が来賓用の駐車場に入って来た。しかも運転しているのは大人ではなく学生なのだから―――いや、スーパーカーをかっ飛ばすマルゼンスキーがいたのでさほど驚かないが、まさか・・・・・。
「ハーイ、久しぶりねDさん!」
「お久しぶりです」
「久し振りね」
サンダース大学付属高校の戦車道の少女達がやってくることを一切聞かされていなかったDにとって、意外過ぎる人物たちだったのだ。
「・・・・・なん、で?」
「うん? この学園の体育祭に出店を出すって許可をもらったからよ?」
「・・・・・どうして?」
「もしかして、何も聞かされていないんですか?」
「・・・・・肯定」
「はー? ちゃんと説明してほしいわねこの学園の理事長」
まったくだとDも頷く。どうして出店をこの学園でするのか問うと、事の発端は聖グロリアーナ女学院の戦車道の隊長が、Dがいる学園が体育祭兼文化祭を開催する情報をどうやって得たか不明だが、文化祭に自分達戦車道の存在をアピールする目的も兼ねて出店を構えてみないかと各学園艦の戦車道の隊長に一報を送ったのだ。
「・・・・・各、学園艦、戦車道」
「大洗、黒森峰、聖グロリアーナ女学院、私達サンダース、知波単、継続、プラウダもくるわね。総勢100人を超えるんじゃない?」
「体育祭期間の間はお世話になります」
「ということで、案内をよろしく頼むわ。後からどんどん来るから誘導をしてくれる? 私達だけでもそれぐらい来てるのよ」
―――説明不足にも程がある! あのチビ理事長、後でシバく!!
「・・・・・車両、駐車、数、不足」
「何ですって?」
「じゃあ、別の場所に止めるしかないわねぇ」
「しかし今から探すのは難しいのでは? 他の学園の皆もそうするだろうから、すぐに駐車場は埋まる」
まさしくその通り。であるから今さらケイ達にそうさせる、説明不足の理事長にお仕置きする手段を考えながらのDは、魔法の道具である大きい模型が入ってるガラス玉のドームも魔法で召喚した。
「・・・・・この中」
「え? 今どうやって?」
「この中って、どうやってよ?」
「理解に苦しむのだが・・・・・」
そんな三人を離れさせ、ガラス玉の前に展開した広大な魔方陣の中に車を移動させろと指示を出すDだが、やはり訳がわからないと動かない三人に対して無人の車に近づき、バックから一人で魔方陣まで押す膂力にケイ達は目を丸くするも、魔方陣の中に入った車が光に包まれて消えた光景に。
「え、えっ!? 車が消えたわよ!?」
「アンビリーバボー!」
「どうなって・・・・・」
「・・・・・移動、入る」
「「「増えたっ!?」」」
分裂したDに驚愕する間もなく、魔法で浮かされて分身体と共に魔方陣の中に移動されて光に包まれて消えた。
「・・・・・次」
それを繰り返すこと数時間。サンダース以外の学園艦から来た戦車道の女子生徒達もガラス玉の中へ一時収納庫代わりに車を収容させた。魔法の道具の中に車と一緒に入られさせられた少女達は、外にいるかのような感覚で周囲を見渡す。運転してきた車、業者から借りた車は学園艦ごとに分かれて駐車されており、少女達はそのしばらくガラス玉の中で待機されていた。その少女達の中で代表者が分身体のDに集まっていた。
「あの、Dさん? ここはどこなんですか?」
「・・・・・魔法の道具、ガラス玉の中」
「おおー! 魔法の道具ですか! では、この中の全ては本物なんですか?」
「・・・・・一応」
「活用するんですか?」
「・・・・・する。この中、外の時間の流れ、変更、長い時間、活動可能」
「どういうことなのよ?」
首をかしげるカチューシャの疑問は集まった少女達の気持ちでもあった。Dは説明する。
「・・・・・現在、早朝前、この中で六時間睡眠、外に出る、六時間前のまま、一分、十分、時間、過ぎた程度」
「え、えーと・・・・・?」
「それは本当か!?」
小柄で腰まで長い黒髪の少女が目を大きく開いて歓喜した。まだ理解に苦しむ少女達は何だと目を向いた。
「どうしたの麻子。そんな大きい声をあげて。何かわかったの?」
「逆にわからない方がおかしすぎる! ここは私にとって夢の中の夢だ! この中なら一週間好きに寝ても、ご飯を食べるためだけに外に戻ったらこの中に入った時間からたったの一秒しか時間が進んでいない状況にすることができるってことなんだぞ!」
麻子と呼ばれた少女の解説に、そんなまさかー的な雰囲気や反応をする少女達であるが、理解力の早さに感心したDが拍手を送った。
「・・・・・正解、その通り、真実、事実」
Dも認めたことで理解できなかった少女達もようやく有用性を理解できた。
「欲しい! 是が非でもこの魔法の道具を欲しい!」
「ま、麻子がここまで興奮してるところ始めてみた」
「おお、時間が足りない時にこの中で足りない時間を補えることができる、魔法の道具ということなんですか。この西絹代、感服致しました!」
「へえ、とても便利な道具なのね。サンダースも一つ欲しいわ」
「練習量が普段よりも数倍できる、という利点を考慮すればこれ以上のない練習道具となるだろう」
「うーん、これからのアンツィオも欲しいところではあるが・・・・・」
「この中で誰よりも早く大人になれるのかしら?」
「・・・・・テレーン」
「自分好みの空間に作り替えることも可能かしら」
わいわいと騒ぎになったところで、Dは皆に告げる。
「明日、面会、睡眠、この中、了承、問題」
「大丈夫よ。寧ろだけどこの中を歩き回っていいかしら? 何があるか興味あるの」
「・・・・・許可、宿泊、案内」
「え、この中に建物があるんですか?」
「・・・・・個人用、ウマ娘、トレーニング用、戦車道、全員、不可」
「さすがにウチら全員が寝れるスペースも寝台もないっすかー」
何も言わず歩きだすDに、一同の少女達はついて行けば木造の大きな別荘が鎮座している場所まで歩いて招く。
「本当にあるんですね。これはDさんが用意したのですか?」
「・・・・・創った」
「す、凄いわね・・・・・」
中に入り、寝室とトイレ、浴場を案内すれば後は好きなように使っても構わないとお達しに少女達は明日に備え、入浴の時間と寝室の取り決めを話し合った。
「・・・・・みほ」
「はい?」
「・・・・・五人?」
「あ、私達だけなのかってことですか? 明日中に他の戦車道の仲間が来ます。私達は先に来て場所取りや注意事項を知ったら連絡するんです」
「・・・・・何人」
「27人です」
出店のスペース、足りる・・・・・? 本当に100人以上の少女達がこの学園に集う事の心配がして来たDだった。
・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・。・・・・・。
・・・・・。
翌朝。全校生徒が教室で授業を受けている最中の時間帯で、Dの計らいでみほ達はトレセン学園の体育館に移動した。戦車道の少女達に会わされたのはトレセン学園の理事長こと秋川やよいその人だ。歓迎の二文字の扇子を広げながら、設置されたパイプ椅子に座る彼女達に語りかける。
「歓迎! ようこそ、トレセン学園へ! 私は理事長の秋川やよい! 短い間であるが体育祭兼文化祭を皆の力で盛り上げて欲しい!」
秋川やよいの容姿、身長と言葉口調が新鮮だと思う少女達が色めきたち、話の途中に喋る者には威圧を放つDに恐れ緊張して口を閉ざした。
「調査! これから君達が出店する場所を決める前に、持参した物の確認をさせてほしい」
「あの、調査って何でですか?」
「仰天! 従来の一つのお店を出すと予想していた我々だが、多くの車両兼店丸ごと持ってくるとは思いもしなかったのだ! この学園は広いが、君達以外にもお店を出す人のスペースも考えねばならない! 他にも!」
まだあるのかと、話を切り出す理事長の口から出る言葉に耳を疑う事が。
「注意! この学園には、兵藤家の若者達が多く通っている!」
「えええ!? 兵藤家の人達がここに?」
「カチューシャに、あんなことをさせたやつらの・・・!」
「Dさん、大丈夫ですわよね?」
「まさか、同じことをしているはずがないと思いたい」
先日、十人の兵藤家の者達に恫喝、力で屈服させて青空の下で全裸にさせられた彼女達にとって、忘れたくも忘れられない忌まわしい事件だ。しかし、まだ未成年の兵藤家の生徒ならそんなことするはずがないど希望的客観視をするが。
「・・・・・あの仕打ち、この学園内、日常茶飯事、女の身体、性欲の獣、一年中、酒池肉林」
「な、なんですって! 私達をあんな目に遇わせたことがこの学園でもしているっての!?」
「・・・・・四年前、今より、地獄」
「地獄って、どのぐらい酷かったんですか?」
「・・・・・時間、場所、相手の意思、問わず、性的行為、虐待、暴力、恐喝、至極当然、兵藤家、権威、嵩を着る、逆らえない権力、従わせる、家族、脅迫、好き放題やりたい放題、この学園、崩壊、間近」
顔を青ざめる、強張る、恐怖を抱く少女達。
「・・・・・被害者、おおよそ千人以上、自殺者、少数、退校の者、おそらく千人以上、四年前以前、地獄の日々、らしい。現在、被害者、存在、有り」
「そ、そんなっ。警察とか学園側で対処しないんですか!?」
「・・・・・兵藤家、全て、なかったことにする、闇に葬る、事件、もみ消す、握り潰す、簡単、兵藤家、対応、否、全て学園、責任、問題、解決、協力、不可」
最悪すぎる悪辣な環境の学園に来てしまったと、少女達はこのあと待ち受ける運命から逃げ出したい思いを抱いたが、西住みほは訊いた。
「Dさん、今もそうなんですか?」
「・・・・・否、改善中、被害者、少数」
「肯定! 彼が四年前から献身的に学園の秩序と平和を取り戻す活動により、今では比較的平和な学園生活が送られるようになった! 感謝感激!」
おおーっ。と秋川やよいの言葉にDを見ながら感嘆の息を漏らす面々。ならばあの時の強さもここで活かされているなら安心できるというもの。
「・・・・・本題」
「考案! これから学内の地図を渡す! 外、または中で出店の希望ある決めた者は私と要相談! そのあと、D警備員による現地兼学園の案内を実施する!」
「・・・・・静寂、行動、約束、否の場合、兵藤家のクラス、放り込む」
「「「「「・・・・・」」」」」
それは嫌すぎるので、行動する際は質問する以外は静かにすることを強く決心した一同であった。