そんな光景を体育館から魔法で見せられていた多くの男女―――全員、駒王学園に通う兵藤家の生徒の親類である。例年通り、兵藤家の親類は体育祭に顔を出さないのが駒王学園の認識。理由は兵藤家が駒王学園に干渉しないためだ。それ故に子供が今の今まで学園で何をしているのか、どんなことをしていたのか親の目や耳に届かなかったために兵藤家の人間としてあるまじき行為を日常的に行われていたことを露にも知らなかったのだ。
「・・・・・」
そして今現在、体育祭が始まっている真っ最中。駒王学園でも体育祭はスムーズに進んでいるが高学年の兵藤家の生徒は―――半数以上がグラウンドにおらず、残りは参加している形だけの傍観者としっかり体育祭を参加している少数派が目立っていた。それに比べて初めて参加する分家の兵藤家は全員揃って競技に出ている。
「・・・・・今年、今回、コレ」
「「・・・・・」」
なお、クラスごと色に分かれて競技に参加する対抗戦ではなく、各教室での対抗戦である。よって、本家の兵藤家は一番下から数えた方が早い結果で、一番は分家の兵藤家が君臨している。本家と分家のトップ、源氏とその息子の誠と大統領の玄弥は眉間にしわを寄せ無言で見ていた。
「・・・・・警備員。あの場にいない者は何時もどうしているかわかるか」
「・・・・・男子寮、学園の外、体育祭に乗じ、性欲発散」
「学園の外で何をしている」
「・・・・・百聞は一見に如かず」
パッと数々の立体映像が魔法で映し出された。本家の兵藤家の生徒全員に施した追跡用のマーキングや監視の目が源氏達の前に展開された。体育祭を不参加している彼等は―――。学園の外にいてそれぞれ違う場所で遊び呆けていた。自分が兵藤家の人間であることを言い触らし無銭飲食、不良を従えて闊歩中のところ通報を受け駆け付けた警察官を生意気だとリンチした上に銃を奪い一般人に見せながら発砲、中には朝っぱらからその辺で無理矢理捕まえただろう複数の女と性的行為を励んでいた。
『・・・・・っ』
その中に自分の子供がいた親は衝撃と絶望を覚え、怒りも覚えた。こんなことをさせる育て方をした覚えはないと涙流し嘆く親もいた。
「・・・・・学園外、性欲の獣、楽園、四年前以前から、ずっと、可能性、高い」
「・・・お前は、ずっとそれを知っていて放置していたのか」
「・・・・・優先、駒王トレセン学園、全て、対応、不可能、俺、兵藤家、責任」
「「・・・・・」」
責められるいわれはないが責任は覚えている警備員に見せられている光景の根本的な元凶の兵藤家当主と大統領の二人は口を固く閉ざして何も言えなくなり沈黙を貫いた。
「・・・・・対応、選択、➀現場に親、➁俺が処刑、➂ここに召喚、➃放置」
「・・・・・➁の後に➂だ」
「・・・・・了解、待機」
数多く分裂した警備員が髪と制服の色を多種多彩な染めた後、トレーナーバッチも外しに、マーキングされたことも知らない若い兵藤家の者のもとへ転移魔法で向かい、目の前に現れると全員揃って警備員を見て愕然と顔を青褪めた。
『な、なんでテメェがここに現れるんだよ!? 学園の外まで見つけようとしなかったくせに!』
『け、警備員!? こ、これは違うんだ! 同意の上で遊んでいただけなんだ!』
『学園の外で俺を甚振ったらテメェは終わりだぞ!? 世間が兵藤家の俺を暴行したってニュースが社会的にお前を殺すんだからな!』
『お前ら、あいつを足止めしろ! クソ、何であいつが学園の外に!? 今まで学園から出ようとしなかったってのに!!』
『・・・・・これから、そうする』
『・・・・・性欲の獣、処刑』
『・・・・・関係ない、どうでもいい』
『・・・・・邪魔』
全員、両手足の骨を砕いて逃がさないようにした後は全身を殴り蹴り、魔法の業火で火炙り、雷で絶え間ない激痛を、不良ごと逃げる兵藤家を凍らせる。待機中から集めた水分の塊の中に閉じ込め、魔力で具現化した武器で串刺し―――。
「・・・・・これが、孫にとって日常的に繰り返して来たことか」
「・・・・・嗤っているな」
「・・・・・一誠」
ただ一人、嗤っているのが本人だけ。他は無表情で事務的に、淡々と粛々と処刑をしている。それから全員が処刑した兵藤家の生徒と共に体育館に戻って来た。地獄絵図とはこのことか、例外なく一人も残さず重症を負った状態であった。
「・・・・・終わり」
「・・・・・回復を頼めるか」
「・・・・・ん」
断られるかと思ったが、あっさりと治癒の力を処刑した数十人の者の傷を癒し、気絶した者は叩き起こした。そして警備員よりよっぽど恐れる存在に気付くと、顔色が蒼を越えて紫になった。
「と、当主に・・・だ、大統領?」
「な、なんで俺の親までいるんだよ・・・・・!?」
「・・・・・ま、まさかっ!?」
そのまさかである。
「・・・・・全て学園の外で何をしていたのかここに集まっている貴様等の親達と俺と大統領が見ていた。貴様等・・・・・我々の目の届かぬ場所であのような事を日夜繰り広げていたとはなぁ・・・・・!!!」
「貴様等は人間以下のクズ、いや、野良犬よりも下の存在価値だとわかった。此度の件、貴様等の日々の行いが兵藤家の誇りや名声を奈落の底に貶めた罪は国外追放では生温い!!」
日本の二人のトップが本気で怒っている。報告されるよりも実物を見せられた方が怒りの度合いが大きく違う。
「情けを掛ける酌量の余地もない。いなくなった方が日本の為だろう。学園内にいる兵藤家の者として相応しくない者も含め・・・・・全員、即刻死刑に処す!」
『なっ!?』
「無論、貴様らだけではない! 四年以上前に一度学園を崩壊させた兵藤家の者と関わりある者も全員、一人残らず例外なく死刑にする! 貴様等と貴様等のような輩共をのうのうと生かしておけば、これ以上の最悪と被害が増大するだけだ!」
「大統領に同感だ。今回の一件で兵藤家は真の意味で生まれ変わらなければならないと悟った。その期間は貴様等のおかげで100年は足らない。―――1000年だろうな」
マジで言っている当主と大統領から逃げようとする生徒が体育館の扉に駆けるが、亜空間から飛び出した無数の鎖が彼等の体に巻き付け逃走を妨害しながら源氏の前に引き寄せる。
「当主、死刑だけは勘弁してください! 俺、生まれ変わりますから! お願いします死にたくない!」
「父さんと母さん、助けてくれよ!? なんで俺が死刑されなくちゃならないんだよ!」
「嫌だ、死にたくない! ここから出してくれ!」
「警備員、ここから出せよ!」
阿鼻叫喚の一言。定められた死の運命から逃れたい生徒達の言動を冷めた目で見つめる者は少ないが、自分の子供達の仕出かしたことは決して許されない、当主と大統領の決定を覆せない諦観する親が多かった。
「当主、息子の代わりに罰を受けますからどうか死刑だけは・・・・・」
「私もお願いします。可愛い子供をまだ若くして死なせるのは・・・・・!」
「お願いします・・・・・!!」
だが、庇護する親は全くいなかったわけではなかった。そんな親を見た警備員が怒りをお覚え、右目の眼帯を外し叫んだ。
「ふざけるなっぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!! 性欲の獣の被害者に申し訳ない気持ちより自分の子供の方が大事なのか!!! 心を壊された者、心を傷つけられた者、身体を壊された者の気持ちを知らないクズの親もクズだな!!!」
「ひぃっ!?」
「お前ら、今の言葉を被害者全員に言えるのか! 自分の息子が死刑を宣告された。まだ若いのに死なせたくない、可愛い子供がしたことを許してくれとその口から厚顔無恥で言えるのか!? それで許す被害者、親族がどこにいる!! 見ろ、あのクズ共は死刑されること嫌がって責任からも逃げようとしている。本当に罪悪感を抱いているならあんな行動は絶対にしないぞ! そもそもだ。人として死刑を言い渡されることするはずがないのは当然だろうが!!」
「そ・・・・・それ、は・・・・・」
「仮に死刑を免れる条件として被害者全員の許しを得る場合、お前らはどうする気だ。莫大な金を摘むか? 兵藤家の権力を振りかざして無理矢理、許させるつもりか? はっ、本当にしたら―――兵藤家ってのは随分とヤクザや極道めいたことをするクズの集まりだな」
「っ・・・・・」
「だったら俺は、俺みたいなやつをこれ以上増やさないためにそんな兵藤家を日本から潰すぞ。京都の大穴のように、今度は俺が大穴を作る。日本から兵藤家がいなくなりゃあ本当の意味で兵藤家に怯えない日々を過ごせる平和になるからな!!」
「い、一誠・・・・・」
ギロッと何か言いたげな誠を睨み利かせ、祖父の源氏にも目を向けた。
「死刑、本気?」
「ああ、一度口にしたことは当主として曲げることも覆さない。息子や娘、孫の言葉でも決定を変えない」
「・・・大統領も?」
「異論はない。いや、この場合は私も責任を負わなければならないことだ。今回の件で大統領を辞する。後任は兵藤家の者以外にしよう。私の決定でこの学園を生み出したと言っても過言ではない」
「・・・・・私はそこでだんまりしているバカ息子だがな。目の前にいる孫より厳しくなく甘さがある故に兵藤家の未来は不安だ」
それはご愁傷様と声をかける警備員は徐に黒い魔法陣を展開した。
「死刑するなら、やらせて。手早く終わらせる」
「・・・・・いいのだな」
そう答えた源氏。玄弥も同じ気持ちで警備員を見る。
「長年相手をして来た性欲の獣だ。なら最期まで面倒を見るのも警備員の仕事だ」
「・・・・・わかった。お前に任せる」
「・・・・・すまないな」
了承を得たことで生殺与奪の権は完全に警備員が得た。警備員は最後に親達へ語り掛けた。
「自分の子供が死ぬ前に掛ける言葉があるなら今の内だぞ。もっとも、性欲の獣を育てたお前達にも責任はあるがな」
「「「「「・・・・・」」」」」
「・・・薄情だな。これから自分の子供が死ぬってのに別れの言葉すら掛けないのか。やっぱり兵藤家は嫌いだ」
展開していた黒い魔法陣から紫色の発光現象が時折見える黒い三頭龍のが中途半端に出てきた。
「アジ・ダハーカ、こういう呪印をこの人間のクズ共に刻めるか」
その内容は念話で語られ警備員に訊かれたアジ・ダハーカは当然できると肯定した。
「じゃあ、一人残らずお願い。グラウンドにいるえーと、こいつら以外の兵藤家の人間にも頼む」
警備員の願いを聞き、アジ・ダハーカの六つの目が妖しく輝き、兵藤家の生徒達の額に黒紫色の紋様が浮かび上がった。
「ありがとう」
黒い魔方陣に引きずり込まれる感じにいなくなった黒い龍を見送った後、何をしたのか警備員に源氏は問い掛けた。
「何をしたのか。死刑を執行するつもりではなかったのか」
「殺したらそれであいつらは終わり。生きながらこれからいつ死んでもおかしくない恐怖と絶望を味わわせる」
「呪印とやらでか」
「ん、そう。あの呪印は他にも同じ呪印を刻まれた人間と繋がっている。魂のレベルでだ。だから・・・・・」
魔力弾を一人の兵藤家の生徒に当てると、何故か当たっていない他の者達にも同じ痛みを受けたような反応をする。
「あんな感じで苦痛は死ぬまで共有化されている。死も例外じゃない。一人死ねば同じ呪印を刻まれた性欲の獣も道連れに死ぬ。呪印を解除しようならば死ぬ。さっきのドラゴン以外は解呪できないから」
「・・・・・」
「さらに面白い仕様にしてくれた。世間的に悪さをしたという認識を覚えたら激痛が走る。それが俺の死刑のやり方。まぁ、今日か明日辺り悪さして死んでいそうだけどな。獣だから」
警備員は親族の方へ顔を向ける。
「もう自分の子供が死んでといいなら構わないけど、死なせたくなかったら0から教育し直すことを推奨する。悪さをせず学園の行事を真面目に参加、授業にも出るよう言い聞かせてな。だが、それで許される、終わりではないから。被害者全員からの罰を一家揃って受け入れろ。親の責任でもあるからそこのところ忘れるなよクズの親共。あとは勝手にしてろ。どうせ追放されるだろうしな」