ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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元母親 兵藤一香襲来

 

 

 

その日、秋のレースに向けて一層ウマ娘達のトレーニングに力が入っている。その姿を記録に残そうと多くの記者やカメラマンがトレセン学園に集まりトレーナーやウマ娘、そのチームに足を運ぶ。だが、いつものトレーニングの姿や光景がなくコースに巨大なガラス玉が浮いている中心に向かう姿が見受けられる。神妙な顔でそれを見ていた男性記者が吐露する。

 

「話は聞いていたんですが、本当にあの中でトレーニングをしているのですか?」

 

「あなたは初めて? じゃあ、出入りの仕方も知らないでしょうから教えてあげるわ」

 

「助かります。けど、俺が取材したいのはあっちなんですよ」

 

とある男性の記者が目を配った先に、ウマ娘に負けない走りをしているトレーナーがいた。何故か大外、柵を沿って担当ウマ娘と走っているのだが、記者たちは誰も知っているはずがなく何やっているんだと思いを抱く。

 

「チームシリウス、ね。トレーナーは兵藤家当主の孫という事実を知った時は口から心臓が飛び出すかと思った」

 

「しかもそれだけじゃなくて、兵藤家と式森家の元当主の子息だって言うんだからなおさら」

 

「そんな人がどうしてトレーナーになったのか気になるところだけど、取材がNGなのよね」

 

「トレーナーに対して、ですよね? ウマ娘はそうじゃないと思いますよ。ということで行ってきます」

 

男性の記者が待機している他のチームシリウスのウマ娘から話を伺いに向かおうとしたが。

 

「ま、待ちなさい。行ってはダメよ!」

 

慌てて男性の記者を制止する女性記者に胡乱気な目で見ては、理由を問うと。

 

「一般の学生が見えるでしょ」

 

「え? ・・・ああ、確かに。Dトレーナーのファンか何かです?」

 

実際に走っているトレーナーに向かって声援を出している。その声音も弾んでいて好意を抱いてるのが何となくわかる。

 

「それだったらあなたを止めやしなかったわ。・・・・・彼女達、兵藤家の子供達よ」

 

「は? 本当ですか?」

 

「嘘言ってどうするの。だから他の記者たちがチームシリウスだけ近づいていないのよ。将来トレーナーになるから、Dトレーナーからイロハを教えてもらうためにいるらしいわ」

 

触らぬ神に祟りなし、な兵藤家。当然ながら悪面の方もしっかりと耳に届いているが、上から逆らえない権力と言う圧力を掛けられて、世間にその日起こした彼等の事件や騒動を報じることはできなかった。

 

「・・・・・八百長が起きやしませんか」

 

「そんなことは起きないと祈るしかないわよ」

 

 

―――トレセン学園に新たなトレーニング施設!!

 

 

という見出しが、後日新聞や特集号に載って事細かに記載された。それを読んだ人々は関心を抱き、その内容を世界にまで広がり、外国のトレーナーやウマ娘も少なからず興味を持った。それも各国の首脳陣たちの耳にも入るのも時間の問題だが、信用するかどうかは別の話。

 

 

式森家―――

 

 

「見に行きたい!」

 

一人の女性が叫んだ朝。またか、ともう日常になりつつある彼女の突拍子的な言動は、最高の魔法使いの一族のが住まう家の食卓で始まった。

 

「姉上が行かなくとも判ることです。まだ書き留めていない魔法があるでしょう。全部本に模写してもらうまで出禁であることを忘れないでいただきたい」

 

「弟の癖に生意気よ! あんたたちの監視のせいで身体がナマっちゃいそうなぐらい一日中座っての事務仕事・・・私はOLか!!!」

 

「当主の責務を放り出して、世界中を漫遊していたバカ姉の自業自得でしょう」

 

カチンと来て、姉の手が素早く弟の口の端を力強くつねりながら引っ張った。

 

「いけないお口はこれかなー? 親愛あるお姉さまに向かってバカと言う口は永遠に閉ざしてやりましょうかー?」

 

「は、ははへっ!!」

 

姉弟喧嘩も彼女、兵藤一香が帰ってきてから毎日のように繰り広げられ、二人の両親は溜め息をはいた。

 

「和真、一香。朝からそれも朝食の時に喧嘩するな。料理が不味くなる」

 

「そうよ。喧嘩は外でやりなさい。魔法を使うなら地下でやりなさいよ」

 

式森一陽と式森麻紗美。元式森家当主で和樹の祖父と祖母にあたる二人の制止に一香は和真から手を離してそっぽ向く。

 

「だがしかし、こうも大々的に公表されては気にならないというのは嘘だ。中国本土の面積と変わらない広さと空間、か。次元の狭間で自分達の領域、世界を作ったオズの魔法使い達のようにお前の息子も道具の中でも世界を作り出すとはな」

 

「ふっふーん! さすが私の息子でしょ!」

 

「絶縁された上に親の顔を殴ったり蹴ったりするほど嫌われているくせに」

 

「タマ、潰すわよ」

 

鬼の形相を浮かべて和真に怒りの矛先を突きつける一香。もはやその事に関して禁句に等しいので、一香を激怒させてはならないと式森家の間で暗黙のルールとなっている。

 

「ねぇ、いいでしょ? たまには身体を動かしたい、誠に会いたい、子供たちとも会いたい~!」

 

「いい歳して子供のように駄々を捏ねるな一香」

 

「精神的にまだ大人に成長していないだけですよ」

 

「困ったことに昔と変わらないわね」

 

ほとほと困ったと嘆息する三人。このまま癇癪を起こして式森家を爆発させるほど暴れられるより、鬱憤を少しでも解消させてやる気を出させる方が懸命かと思った。

 

「・・・・・そう言えば和真」

 

「なんです」

 

「お義父さんと一緒にどっかに行ってたみたいだけれど、どうしてお風呂上がりみたいに髪を濡らして戻ってきたわけ?」

 

「・・・・・濡れた覚えはないのですが」

 

一瞬だけ一香から目をそらした。しかし、それがいけなかった。目敏くその一瞬の仕草を見逃さなかった一香はさらに畳み掛ける。

 

「あんたって髪を適当に乾かす癖って直ってないのよね。だから誤魔化せないわよ」

 

「・・・・・」

 

「お義父さんと温泉かお風呂に入っていたの? 外でわざわざ?」

 

「それは・・・・・」

 

「答えなさい。今なら半殺しで済ませるわ」

 

実質それは、拷問も辞さないと言っているのと変わりはない発言だった。これは白状しないと納得してくれない面倒な事だと、また溜め息をはいて一香に話し掛ける。

 

「偶然そうなったことなので、絶対に聞いたあとでも大人しくしていてください。絶対ですよ」

 

「はいはい、判ってるわよ」

 

本当に判っているのか信じられないが、言わないと終わらないなら言って楽になりたい和真は詳細を伝えた。

 

「とまぁ、そう言うことです」

 

「・・・・・」

 

不穏な気配を発する一香を警戒した。何を仕出かすかわからないため、一陽達も警戒して何時でも対応できるよう臨機応変―――。

 

「・・・・・部屋に戻るわ」

 

「「「?」」」

 

一香はスッと立ち上がって部屋へと踵返して家族から離れた。それが心底不思議で、思っていた反応、言動、想像とは違い豆鉄砲を食らった鳩のように面食らう三人。娘、姉の後ろ姿、背中を最後まで見送ったあとに顔を突き出し合う。

 

「何時もの姉上ではない」

 

「心の中で落ち込んだのかしら?」

 

「てっきり、怒りだすかと思っていたのだが・・・・・」

 

頭の上に ??? を浮かべて一香の心情を露にも知らない家族達であったが・・・・・。

 

「だ、脱走だぁー!!!」

 

監視の目や監視網から綺麗かつ簡単に抜けて、捕まってから牢獄のように閉じ籠られた式森家から脱出を果たした一香を、和真たちは度肝を抜かされた。

 

 

兵藤家

 

 

「親父~頭が疲れてもうやる気がでねぇよ・・・・・」

 

「この程度でへばるとは情けないぞ。これらを終わらせない限り休ませることはないと知れ」

 

「頑固ジジイめっ!」

 

山積みの本に埋もれる形で机に突っ伏した誠。今日も今日とて当主の務めを全うしてもらうために調教もとい教育の時間を過ごし、過ごされている。学園へ行った楼羅達がいないので、源氏はこの機に誠を念入りな教育を施すことにしたのだが。

 

「当主!」

 

転移魔法陣と共に焦燥の色を浮かべる和真が無礼を承知の上で二人の前に現れた。

 

「何事だ。・・・・・いや、まさかなのか?」

 

「はい、姉上が脱走しました。姉上の為に開発した魔法が悉く無効化されて、こちらが関知しない術式を密かに開発していた模様で・・・・・申し訳ありません」

 

「・・・・・誠、一香はどうする気かわかるか」

 

「俺を迎えに来ることは確定だから、きっと一誠のところに行くんじゃないか。俺と同じく絶縁なんて認めていないんだから話をしに行くだろう。と言うか俺だって同じことするわ!」

 

と、誠の予想を聞いて和真はジト目で見下ろした。

 

「そんなことだろうと、学園に姉上捕縛隊を送っている。貴様が言うまでもなく、どっちも分かりやすいからな」

 

「おいこら、どー言う意味だそりゃあ。ていうかなんだよ姉上捕縛隊って。三ヵ月も経たずに家から抜け出されたんだから、お前ら程度の魔法使いが一香を捕まえることなんて永遠に無理だバーカ」

 

「ぬぅっ、貴様・・・・・!!!」

 

「―――とにかくだ」

 

言い争いかけた二人を仲裁するプレッシャーを放つ源氏。ピタリと言い合いを止めて一人の男に意識を向ける二人は語られる言葉に耳を傾ける。

 

「ある意味ではバカ息子より厄介な相手が自由を取り戻し、何を仕出かすか分からない以上は遺憾ながらあの者の協力を必要とする」

 

「・・・・・可能ですか?」

 

「誠の言う通りならば、否が応でもそうなる。だが和真・・・その後はどうする。また繰り返すぞ」

 

源氏の言わんことは誠と和真も理解している。兵藤家の秘術のように相手を強制的に捕縛する術は式森家になく、魔法で牢獄を作るのが主流なのだ。それが、一香用の特別な牢獄が突破された以上、一から術式を構築し直さなければならない。その時間と労力は計り知れないし、その間一香は散歩する風に外へ逃げだすことだろう。源氏はそれを和真に指摘したのである。

 

「・・・・・留まらせる案はまだありません。しかし、希望があるとすればあの者の助力でしかないかと」

 

「・・・・・はぁ、情けない限りだな私達は」

 

「あの子には真に申し訳ない思いです」

 

「まったくその通りだぜ。俺の息子に迷惑を掛けんじゃねーよ」

 

腕を組んで責めるような眼差しを送る誠の言葉に、ブチっと何かが切れた音の後。事前に打ち合わせしたかのような動きをする源氏と和真が握り拳を作った。

 

「「お前/貴様もだろうが!!!」」

 

「ぐはっ!!?」

 

普通なら避けられる拳。しかし秘術で身体の制御が奪われ、避けることも防ぐこともできないまま容易く顔面に突き刺さって殴り飛ばされる誠。

 

そうしている間にも―――。

 

「式森、いや・・・兵藤一香、大人しく神妙にお縄につけ!」

 

「何時の時代の言い方よ! もうそんな古い言葉とあなた達程度が私に通用すると思わないで、私の邪魔をするな!」

 

「・・・・・どっちも、仕事、邪魔!!!」

 

最高の魔法使いの一族VS世界最高の魔女VS(赤龍帝)トレーナーの三つ巴、三竦みの戦いが勃発していた。

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