翌日。学園で警備員として働くことになった一香が駒王学園側の警備員室で制服に身を包んだ姿で、さっそく誠輝たちを会いに向かった。
「ハロー、息子と娘達、義妹たち!」
「・・・え、お母さん・・・・・?」
「え、何でその恰好をしているの!?」
「どう、似合ってる? 私もこの学園の警備員として雇われたのよ。実家に閉じ込められる時間より、この学園でいる時間の方が好都合だから」
「「えええー!?」」
「・・・よく、式森家の方々は許してくれましたね?」
「完全にじゃないけどね。仕事が終わったら家に帰ってくる条件で実家から離れることができたのよ。警備員に関してこれ、息子の提案よ?」
制服のお披露目ができて嬉しそうに笑む母に、誠輝達はおっかなびっくりをして警備員の母をまじまじと見つめる。
「じゃあいっくんはもうこっちに来てくれないの!?」
「あれ、私より息子の方がいいなんて地味に寂しいわよ悠璃」
「ぶっちゃけ、義姉さんかいっくんを選べって言ったらいっくんを選ぶよ」
「酷いわ悠璃ちゃん! 楼羅ちゃんは、私を選んでくれるわよね?」
縋る気持ちで期待に満ちた目を楼羅に向けると、悠璃の姉は首を横に振った。
「選ぶつもりはございません。ですが、あまりここに長居してはDさんが怒りますよ?」
「大丈夫よ。この学園の方は私に一任してくれたから。謂わば私が法律みたいなもの―――」
「・・・・・働け」
スパーンッッッ!!!!!
「いったぁあああああー!?」
元母親の背後に気配無く近づき、形のいい臀部に思いっきりハリセンで引っ叩く警備員。凄く痛そうな音が教室中に響き渡った。
「・・・・・後輩、初日、サボり、いい度胸」
「い、一誠・・・だから私は後輩じゃなくてあなたの母親・・・・・」
「・・・・・仕事、家族、無関係、公私、区別、否?」
ギロッと一香を睨む警備員。
「・・・・・真面目、働く、拒絶、式森家、送還」
「わ、わかったわよ・・・・・だからもうお母さんを叩かないでよ」
「・・・・・元母親、事実、仕事、続行、後輩」
「だからまだ現役―――ちょ、首を掴んで引っ張らないで! 自分で歩くからぁ!」
無理矢理教室から連れ出され、強く扉を閉められた。
「・・・お母さん、D兄さんに雑な扱いをされてるのね」
「あんなお母さん、見たことないんだけど」
「・・・・・お母さん」
「楼羅、いっくん今日も格好よかったねー」
「そうですね悠璃。しかし、お義姉さまが警備員になるなんて思いもしませんでした。でも、式森家の元当主でしたからDさんのような警備もできるから、提案をされたのでしょうね」
早々に一香が警備員の仕事を全うしてくれるか怪しく不安となったD。よもや一香まで監視しなくちゃいけないのかとあからさまに溜息を吐いて嘆いたその日。
リアス・グレモリーが部長とするオカルト研究部の部室にて、グレモリー眷属、シトリー眷属、アザゼル、バラキエル、違う空き室で本国の天界にロキの件で連絡するため離れているオーディンとロスヴァイセ。そして、禍の団所属のヴァーリチームが揃っている。ディオドラの件で倒され捕まっていたはずのコカビエルとフリード、さらには禍の団の首領ことオーフィスが当然のように同伴していることにリアス達は警戒心を剥き出しにしてる。
「久しいなアザゼル、バラキエル」
「お前さんもなコカビエル。随分と楽しい生活を満喫しているようで」
「ああ、もっと早くしていればよかったと思うほどにな。赤龍帝の提案を乗って正解だった。くくく、何せ今は公に北欧の神と戦える機会が得れたほどだからな」
「・・・・・くれぐれも他の者たちの邪魔だけはしてくれるなよ」
「さて、それは目の前で不様に倒れていなければ巻き添えだけはしないと口約束しかできないな」
自分たちに負けた堕天使が何をっ、と思っても口にしない。言い合うよりも大事な会議をしなくてはならないのだ。
「アザゼル」
その時、オーフィスが口を開いた。
「D、どこ?」
「誘ってもきやしねぇよ。自分の仕事を優先するんだからよ。仕舞いには、ヴァーリとクロウ・クルワッハが揃ってれば神なんて余裕だろ、と言う始末だ」
だから、とアザゼルは付け加えた。
「いつの間にか新しく警備員になっていた一香の協力で強制的に連れてきてもらった」
式森家の魔方陣が床に浮かび上がり、二人分の姿が見えた。
「・・・・・巻き込むな」
「痛い痛い痛いっ! 手を離しなさい一誠、お母さんの顔が歪むでしょう!? アザゼルがどうしてもって言うからー!」
「・・・・・お前か(ガシッ)」
「自然に俺の顔を掴んで握力を込めるなよ! ぐぬあああー!?」
龍の力で掴まれては堕天使だろうと頭蓋骨は割れる。その前の痛みに悶絶する二人を見せられる一同は神妙な顔でしばし言葉を失った。それからすぐ、解放された顔を押さえる二人を無視してバラキエルが話しを進めた。
「ヴァーリ、再度質問する。お前たちは我々と共闘をすると言うが、何を企んでいる。真の目的はなんだ」
「コカビエルと同じ気持ちさ。私はロキとフェンリルと戦いたい。仲間たちは承諾してる」
「それは禍の団と繋がっているか」
「いいや。お互い干渉しないよう距離を置いている。英雄派も今回の件とは関わっていないよ。しかし、そろそろ潮時だと思ってはいるぞアザゼル」
意味深に言うヴァーリの言葉に若い悪魔たちは怪訝になった。
「どういうこと、アザゼル。大体、禍の団の首領の親玉までここにいるなんて、ロキとフェンリル戦前にいくらなんでもこれは非常識だわ、アザゼル! そのドラゴンは各勢力に攻撃を加えるテロリストの親玉! 悪魔の世界にも多大な損害を出しているいわば仇敵なのよ!? どうしてあなたがその怨敵をここに招き受け入れるの!?同盟にとって重要な場所となっているこの町の、しかもこの学園に! オーフィスがここに入れたってことは、ここを警備する者達を騙して入れたってことよね!? どうしてそこまでして、あってはならない一件よ!」
リアスの言う通り。この町は天界、冥界が協力関係を取り、他勢力との交渉の場にも使われている最重要の場所。天使、堕天使、悪魔のスタッフがリアスたち以外にも複数入り込んで場を維持しているところでもある。そこにオーフィスが入れたという事は、アザゼルがスタッフたちを説得したか、現在進行形で騙しているのだろう。
「D、約束、遊びに来た」
「・・・・・ん、久しぶり」
おまけにDとオーフィスは旧知の仲であるように親しく、話し合っているのだからますます理解に苦しむ一方だ。
「あーそいつはまだ教えられねぇ一件だ。これは各勢力の上層部、それも一部のみしか教えていねぇシークレットな話でな。だから朱乃、バラキエルをどんな手を使って吐かせようとしても、バラキエルにも教えていないことなんで、聞き出せないからな」
「あら、それは確かめてみないとわかりませんから、今夜お母様と二人でお父様をイジメながら聞いてみますわ」
ドSな一面を伺わせる娘を見て青ざめながらも、ちょっぴり期待と興奮しているバラキエル。それを逃さず観察していたDが呟いた。
「・・・・・バラキエル、嬉しそう」
「なっ、ち、違うぞDくん! 私は別にイジメられるのが好きなのではなくてっ」
苦しい言い訳をするバラキエルの両脇から同じ堕天使が訂正した。
「好きだろ~? ドエムケツハットのバラキエルく~ん?」
「お前は尻を叩かれる快感で堕ちた天使ではないかバラキエル」
「貴様らー!?」
へぇ、そうだったんだ。とDは徐にバラキエルの背後に移動してハリセンを思いっきり振るったら、パーンッ! と音がバラキエルの尻から聞こえた。
「ぬぐっ・・・・・くっ!」
痛みに堪えたのか、それとも別の感覚に堪えたのか、顔をしかめて短く唸って耐えたバラキエルの反応を伺い、背後から朱乃に確認を求めた。
「・・・・・こう?」
「あらあら、イッセーくん。そうではありませんわ。お父様は鞭がお気に入りなのですよ。興味があるなら、今夜一緒にどうです?」
「・・・・・興味、研究、誘われる」
首肯するDが家に来てくれることに、朱乃が満開の花弁のごとく嬉しそうに喜んだ。
「うふふ、やった! 今夜、イッセーくんと一緒にいられる!」
「喜ぶな朱乃! Dくんもいきなりそんなことしてはいけないぞ!」
バラキエルの叱咤に怒られた二人は気にもしなかった。が、リアスと一香が待ったをかけた。
「ズルいわよ朱乃、私だってイッセーと二人きりになりたいのに!」
「変なこと覚えちゃいけないわよ一誠!」
「あらリアス。二人きりではないわよ? お母様とお父様もいるのだから・・・・・うふふ、まるで恋人を紹介するような感じになっても仕方がないわよね?」
「・・・・・叩く、変?」
言い返す二人の言葉に話がヒートアップして、本題に中々入れない事態となり、アザゼルが叫んだ。
「お前ら、話しを止めろっ! Dはヴァーリのとこにいけ! 一香と朱乃はいいと言うまで口を閉じてろ! いいな!」
「「「・・・・・」」」
「よし、話を再開すんぞ。ヴァーリに関してはいったん置いておく。さて、話はロキ対策の方に移行する。ロキとフェンリルの対策をとあるものに訊く予定だ」
「ロキとフェンリルの対策を訊く?」
アザゼルがリアスの言葉にうなずく。
「そう、あいつ等に詳しいのがいてな。そいつにご教授してもらうのさ。・・・おい、そこで話を聞いていない話し込んでいる龍神と天龍と邪龍。お前達にの力を借りるつもりだから協力しろよ」
「・・・・・俺、不必要」
「いーや、今回ばかりは何が何でも協力してもらうぞ。ドラゴンの力で龍門を開き、あるドラゴンの意識だけを召喚するんだからな」
アザゼルの言葉に頭の中で考え、察した。
「・・・・・ロキ、フェンリル・・・・・ミドガルズオルム?」
関連するロキが産み出した怪物の中にいるドラゴンを口にするとアザゼルは頷いた。
「そうだ。そいつを呼ぶ。ミドガルズオルムがロキとフェンリルのことを一番知っているからな。他にヴリトラの力とタンニーンの力も借りる」
「もしかして、お、俺もですか・・・・? 正直、怪物だらけで気が引けるんですけど・・・・・」
おそるおそる意見を言う生徒会メンバーでありシトリー眷属の『兵士』にして、ヴリトラを宿す少年こと匙。
「まあ、要素の一つとして来てもらうだけだ。大方のことは俺たちや二天龍に任せろ。とりあえず、タンニーンと連絡が付くまで待っていてくれ。俺はシェムハザと対策について、話してくる。お前らはそれまで待機。バラキエル、付いて来てくれ」
「了解した」
アザゼルとバラキエルはそう言って部室から出ていく。残されたグレモリー眷属、シトリー眷属、そしてヴァーリチームとDに一香の面々。
「D、我と話す」
「・・・・・仕事、戻る、話せない」
「わかった。なら、ドライグと話す。中に入る」
「・・・・・ん、わかった」
左腕に赤龍帝の籠手を装着する。その籠手の緑色の宝玉に手を触れたオーフィスが濡れ羽色の光の奔流とかして、宝玉に吸い込まれていくように入っていなくなった。
「一誠、何時の間に龍神と仲良くなっていたの? 私と誠さえ存在だけは知っていても見つけれなかったドラゴンなのに」
「・・・・・四年前、偶然、クロウ・クルワッハ、同時期」
「というか、オーフィスのことアザゼルは知っているわよね? それどころか、アザゼルはオーフィスも堕天使の陣営・・・バラキエルと副総督のシェムハザしか認知していない状態で抱え込んでいたわね絶対」
「な、それでは『禍の団』は堕天使が裏で操っているようなものですか!?」
もしもそうなら世界を敵に回している最悪な組織であるとまた激昂するリアスの考えを、Dとヴァーリは否定した。
「・・・・・アザゼル、否」
「『禍の団』に関しては四年前に結成される前兆、予兆はあった。奴らは組織の絶対的な力の象徴としてオーフィスを祭り上げることも決まっていた」
「四年前、四年前って・・・あなた達は一体、四年前に何をしていたのよ!」
当事者しか知り得ない出来事ゆえにリアスや他のメンバーは分からないで詳細を求めたい思いであった。
「教えるか、D?」
「・・・・・アザゼル、許可」
「だ、そうだリアス・グレモリー。これは当時、悪魔側には無関係な事件だったからね。堕天使、それに与する人間、魔法使い、教会の戦士、そして事件の中核だった五大宗家が関わり忘れられない事件でもあった」
「・・・・・フリード、二度、遭遇」
「いや~、あん時はホント、べらぼうにハイパーにやべー兄さんにダヴィードセンセーと一緒に殺されかけたのが運命の出会いでしたね!」
懐かし気に語るフリードを、Dを見てゼノヴィア達は大きく目を丸くした。
「じゃあ、あなただったの? あのダヴィード・サッロさんを二度も倒した謎の赤髪の人って!?」
「聖剣ガラティンも奪ったというのも事実なのか?」
「・・・・・これ?」
魔法陣から異様なオーラを放つ長剣を一本取り見せつける。間違いなくそれだとゼノヴィアとイリナ、もう一人の教会の戦士、ルーラー・J・ダルクは恐縮そうに言う。
「あの、奪った聖剣を返してくれると非常にありがたいのですが」
「・・・・・拒絶、慰謝料」
「ほう、エクスカリバーの兄弟剣のガラティンをここで見れるとは」
背広を着た若い男性がやって来ては興味深そうに聖剣を見つめた。
「・・・・・そっち、聖剣」
「知っておりましたか。ええ、これが失われた最後のエクスカリバー・ルーラーです。そしてこれは我が家宝の聖王剣コールブランド。ああ、失礼。あなたとは初対面でしたね。私はアーサー・ペンドラゴンです。以後お見知りおきを」
続いてDに興味ありありだと名乗り出る甲冑を着た若い男。
「俺は美猴だぜぃ赤龍帝! んで、ついでにこっちは」
「私を次ついで扱いにしないでくれるお猿さん。はーい、私は黒歌、白音のお姉さんだにゃーん♪」
豊かな胸を覗かせるほど黒い着物をはだけている猫耳と二又の尻尾を生やす黒髪の女性。
「・・・・・D、後輩、仕事」
「え、アザゼルは待てって・・・ぐえっ、襟を掴んで引っ張らないでよ! わかったから!」
ミドガルズオルムを呼ぶ程度なら二天龍はいらないだろう、仕事が優先だと言わんばかりに一香を引っ張って部室を後にするD。
「オーフィスが入ったままだがヴァーリ」
「構わないさ。力を与えてくれなかったからと反魔王派や英雄派からには、本当にただの力の象徴と言う置物にしかならない偶像と疎まれている。まぁ、どこかの赤い龍がそう仕向けているからだけどね」
「オーフィスの願いすらも“フリ”であることを知らず、こちらの思惑に気付かずオーフィスの力を得ようと集まった者が殆どだがな」
聞き耳を立てて白龍皇と邪龍の言葉を頭の中で復唱、咀嚼して・・・・・そんなまさかと思う考察が浮上した。これがもしも本当であった場合、やはり堕天使は・・・アザゼルはとんでもない人物だと認定してしまう。アザゼルに深く関わっているヴァーリだけでなく、赤龍帝のDも世界から責められる存在となる。