ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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忌避されし存在の始動編
時は流れ~~~四年後


東京都府中市 駒王トレセン学園

 

小中高等まで教育義務を一貫制度にした学園がそこにあった。その学園には数多の神器(セイクリッド・ギア)の所有者が集い制御する学園でもあり、ある一部の神器(セイクリッド・ギア)の少女達の為に設立されたと言っても過言ではない。

 

さらには悪魔、天使、堕天使、人間、人間の血を引く異種族が共に学園生活を、青春を送る教育施設に日本を統治する兵藤家と式森家の人間も通っている。が―――品性高潔、品性方正とは言い難かった。

 

 

人気のない場所で一人、また複数の見目麗しくプロポーションが抜群の少女に対して強姦行為を行うことが日常茶判事な兵藤家の生徒によって、被害に遭った女生徒は登校拒否、または学園から去っていくのだ。何度も学園側はこの問題に対して厳しい取り締まりをしようと試みたが、相手は皇族。皇族が犯した悪事は闇に葬られるか抹消され、一切の問題はないどころか逆に世間に対する良好なアピールを知らされる。

 

逆に兵藤家の者を手出しする者ならば国の反逆者とみなされ、罪人扱いされる。裁かれないことを逆手に、いいことに学園外でも傍若無人、悪逆非道を繰り広げるので始末に負えない。

 

誰もが泣き寝入り、誰もが諦観、誰もが若い兵藤家の者達の悪道を見ぬ振りや絶望して受け入れる他なかった。

 

―――一人の青年が学園の警備員として、女子寮の寮長として、数奇なことにトレーナーとしても現れるまでは。

 

 

 

 

 

ドドドドッ・・・・・!

 

『ゴ~~~ルッ!!! 今年最後のクラシックを制覇したのは、同時に新たな三冠ウマ娘が誕生しました!! ミホノブルボン、ミホノブルボンが三冠を達成したのです!』

 

大阪で行われた大きなレースに参加していた少女達が今走り終わり、誰よりも早く一着になった少女は全身に襲う疲労感よりも、願望を現実にした喜びが大きく自分を信じてトレーナーとして全うした男の下へ移動した。

 

「マスター・・・・・やり遂げました・・・・・」

 

「・・・・・信じていた。おめでとう」

 

「すべてはマスターの指導の賜物です。お父さんに吉報を送れることができます」

 

「・・・・・後でする。記者会見行く」

 

「はい・・・・・」

 

 

一つの夢が叶い、多くの夢が破れた語られることはないレースの始まりも含め青年の物語の新章が今始まる。

 

 

 

ドゴンッ!!!

 

 

放課後。夕陽に染まった校舎の裏側。たった今、頭に馬の耳と尻尾を生やした二人の女子生徒に強姦をしようとしていた複数の男子生徒を拳による鉄拳制裁を終えた警備員。犯罪者達を縄で縛り上げ掘った穴の中に首から下まで埋めた後、はぎ取られた制服、瑞々しい裸体を晒す少女達は警備員の背中から生えた金色の翼で包まれ、女子寮へ運ばれた。

 

「お帰りなさーい!」

 

ボフッ、と警備員の身体に飛び込んだ女子生徒。前髪が御簾のように目元までかかった髪と後ろ髪を結い上げた髪型。年齢不相応なたわわかな胸も押しつけながら抱き着いてきた少女、前上涼子はすぐに二着分の制服を持って背中から生えてる翼を見て悟った。

 

「ま~た、悪い狼からか弱い女の子を助けたんですね。もう今月で十何人目です?」

 

「・・・・・」

 

「同時に貴方のことを信頼する女の子が好感を得た人数でもありますけどねぇ?」

 

下から覗くように見上げる少女は歩き出す警備員の横にくっついて一緒に歩き出す。制服に書いてある名前を確認した少女が二人の部屋の扉を開けて、伸びる翼だけ引っ張って包まれていた女生徒を翼から優しい手付きで剥がす。

 

テキパキとベッドの布団の中に寝かせ、静かに部屋から退出する。その行動をもう一度繰り返した後に涼子は、頭を撫でられた。ナデナデ と。警備員は女子寮の寮長も兼ねて働いてるが、女生徒の個人部屋まで入ることを基本的に禁じられ(女子の了承があれば入室可)、当初強姦された女生徒の部屋へ運ぶところを見掛けられてあわや騒ぎに発展したものの、理由を知ったそれ以降は寮内にいる女生徒達の誰かと同伴のもとで入室するようになったのである。

 

「これで感謝するのはいいですけど、そろそろ別の感謝の印を欲しいんですが」

 

「・・・・・?」

 

「次の休みの日、私の買い物に付き合ってください。勿論、荷物持ちをお願いしますよ?」

 

そういうことなら構わないと頷き、少女は嬉しそうにはにかんで笑い警備員から軽い足取りで離れた。

 

「お疲れ様です。警備員さん」

 

「お仕事お疲れ様です!」

 

不意に声を掛けられ首だけ振り向くと小柄な体格と大きな胸、端正な顔立ちという容姿をしており、学園の内外問わず周囲の男性から注目を集めている女生徒、福井愛花、皆からはアイちゃんと渾名で呼ばれてる少女が片手に鞄を持って立っていた。もう一人は中等部の制服に身を纏っている女子生徒の妹の福井莉緒。

 

「お見送りをお願いします」

 

「・・・・・」

 

これから彼女達はバイト先の喫茶店に向かうため同行を求めた。肯定の意味で玄関へ足を運び少女と靴を履くと足元に転移魔方陣を展開して、女子寮からバイト先まで跳んで辿り着いたのだった。彼女達もまた兵藤家の毒牙に掛かって助けられた一人である。それからこうして最短最速、最も安全な方法でバイト先に送られるように。

 

「では、行ってきますね」

 

「・・・・・」

 

「大丈夫ですよ。ちゃんと肌身離さず持ってますから。もしもまた私が襲われたら使います。お店の先輩達も同じ物を持ってくれてフォローしてくれますから」

 

ジッと見つめてくる視線の意図を汲んで、小さなボタンを見せそう言うアイ達は警備員に見送られながら店内へ入って行った。バイトの時間が終われば迎えに来て欲しい連絡もされることも今では日常的になっている三人である。女子寮にまた魔法で戻れば学園内の見回りの仕事を再開する。警備員がこの仕事を始めてから死角になる場所、人が寄り付かない場所等を含めて全ての部屋に監視の目を置いて兵藤家や他の生徒の悪巧みを見聞、記録して未然に防いでいるおかげで生徒達の間では『兵藤家の天敵』『女子寮長の守護神』『千里眼の警備員』という渾名や称号を付けられてしまっている。が、本人は気づいておらず今日も警備員として秩序を守るための仕事を全うするのであった。

 

 

逆に言えば、兵藤家から目の敵にされ敵視されている。数度、数にものを言わせて襲撃を受けたことがあるものの―――悉く軽く警備員の制服すら触れさせず一蹴した実績を経てからは襲撃されることもなくなった。なくなったが・・・・・。

 

「勝負だ警備員!」

 

別の意味で警備員に挑む生徒が現れるようになった。その代表が警備員を見つけるや否や拳を構えた。艶がある腰まで伸びた黒髪、鋭い目つきの赤眼の高等部の制服を着た女子生徒は喜々と勝負を申し込むに対して分裂する警備員。分裂した方の警備員が挑みに現れた女子生徒を転移魔方陣でどこかへ一緒に転移、一拍遅れて学園中に轟く重音が聞こえるようになった。自分の代わりに思う存分戦えとばかり分身体を身代わりにして見回りを続行しようとした足が不意に停まり、後ろへ振り返った。

 

「お仕事ご苦労様です。少しよろしいでしょうか」

 

目元に泣きぼくろがある金髪の美少年が警備員の後ろに立っていた。用があると言う生徒に対して後ろに振り向けた首を前に戻して前進し出した警備員。これに生徒は慌てもせず口を開いた。

 

「今夜お時間がおありでしたらオカルト研究部にお越しください。僕の主、リアス・グレモリーがお待ちしております」

 

「・・・・・」

 

リアス・グレモリー。元72柱の一柱の悪魔グレモリー家の娘。話があるのだと使いを出してまで警備員に伝えて来た理由は不明。だが、返答をせず男子生徒を残して歩を進めた。

 

 

そして放課後―――部活活動の時間となった。警備員はある一部の神器(セイクリッド・ギア)の少女達の訓練にトレーナーとして指導する。警備員以外にも老若男女問わず大勢のトレーナーが体操着姿の少女達と固まって、ここ実寸大のトレーニングコースにいる。そのトレーナーの元に集まる人数はまばらで、多い所には20人以上もいる。

 

「トレーナー!!」

 

警備員改めトレーナーの元に集まってくる少女達。右耳に青いリボン、やや黒みを帯びた濃い茶色の茶褐のポニーテールの根元に桃色のリボンをつけている少女。前髪の一部にメッシュが入っていて小柄だが活発で明るい様を周囲に振る舞ってダンスや歌が上手いという評判を持つ少女が、駆け寄ってくる途中で足に力を入れてトレーナーの顏に抱き着いた。とてもトレーナーに懐いている表現をこれでもかと見せつける。

 

「まったく、またトレーナーさんに抱き着いているのか」

 

長い髪を揺らす色は茶褐で前髪の三日月のように曲がってるメッシュが特徴的の高等学年の少女が呆れ混じれに言い、トレーナーにひっつく後輩を力強く引き剥がさんと手を伸ばす。

 

「ほら、離れるんだ。トレーニングが出来ないだろう」

 

「うー!! 皆が来るまでいいでしょー!!」

 

「その皆がもう、来ているのだ」

 

部活活動が始まる五分前にはトレーナーのところに集まらなければいけない。よって、この場にトレーナーが指導する少女達が集合するのだった。

 

「お兄様、おまたせっ」

 

漆黒の髪、右目が前髪で隠れており、青いバラを付けた小さな帽子がトレードマークのトレーナーに抱き着いている少女よりもさらに小柄な少女。トレーナーをお兄様と呼ぶほど親しい関係が窺える。

 

「きょ、今日もよろしくお願いします・・・・・」

 

焦げ茶色の髪にアホ毛とくせ毛と一緒に真っ直ぐメッシュが入った耳に青紫のリボン、頭にピンクのカチューシャを着けて豊満な胸を揺らす少女。

 

「マスター、指示をお願いします」

 

栗毛のロングヘアーに硬質な白い髪飾りのついたカチューシャが特徴の少女の言葉に同意だと、黒毛で後ろ髪を橙と白の紐でくくり、鼻の先に白い絆創膏をつけている高学年の少女が腕を組んで待っていた。

 

「待たせて済まない」

 

連なったひし形の髪飾りを付けている銀髪に近く、頭頂部は黒っぽい髪の少女や明るめの栗毛のロングヘアーで、緑色の耳カバーとカチューシャなどをつけている少女、紫がかった芦毛のロングヘアーで、右耳に緑色のリボンをつけている小柄な少女、赤みのかかったボリュームのある鹿毛をツインテールにまとめた、赤と緑の耳カバーが特徴のウマ娘―――黒い鹿毛の髪、見つめると吸い込まれそうな青色の瞳で色白な肌の小柄な体で、右耳に青色のリボンをつけているウマ娘―――以下11名の少女達が集った。彼女達は全員ある一部の神器(セイクリッド・ギア)の所有者でありその身に宿す力は―――かつて過去に存在していた―――絶滅してしまった馬の名を引き継ぎ、その力を常時発動しているのだ。

 

それが証拠にトレーナーの前にいる少女達の頭には馬の耳、腰から尻尾が生えている。彼女達のような存在は世界中にもいて、世界は彼女達を容認して女性しか発現しないことから、『ウマ娘』という人間とは異なる種族に部類する位置づけを決定した。

 

さらに彼女達は国民的スポーツ・エンターテイメントである「トゥインクル・シリーズ」への参加に向けて特訓に励んでいる。今現在それに臨むウマ娘が多数派を占める。ただし、いずれの種目においても体力の違いから一般アスリートとは別枠となっている。

 

耳と尻尾以外は普通の人間と同様の見た目を有するが、容姿に優れるため、アイドル的な人気を得ていることもあってスポーツに参加せず、芸能界、もしくは一般人と同じ職業に就いて生活を営んでいるウマ娘も存在する。

 

「・・・・・」

 

ベリッ、と聞こえそうな勢いで引っ付き虫を剥がし地面に降ろすトレーナーは、自分が担当することになった皆の顔を見回す。

 

「・・・・・出席。トウカイテイオー」

 

「はい!」

 

「シンボリルドルフ」

 

「はい」

 

「ライスシャワー」

 

「はい」

 

「メイショウドトウ」

 

「はい」

 

「ミホノブルボン」

 

「はい」

 

「ナリタブライアン」

 

「ああ」

 

「オグリキャップ」

 

「はい」

 

「サイレンススズカ」

 

「はい」

 

「メジロマックイーン」

 

「はい」

 

「ナイスネイチャ」

 

「はいよー」

 

「ディープインパクト」

 

「はい」

 

集合した少女達の名前順に呼び点呼を取るトレーナー。全員いることを確認してから再度口を開く。

 

「・・・・・報告」

 

「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」」

 

「・・・・・二週間後、いつものトレーニング。する。一週間の着替え、水着用意」

 

それは所謂トレーナーと担当ウマ娘達だけの特別なトレーニングである。このトレーナーだからこそできることであるから、他のウマ娘では体験できないことが出来る。ただしそれは、自慢できる体験ばかりではない。一部のウマ娘が死地に送り出される兵士のような緊張の面持ちを浮かべたり、顔を蒼褪めたりしていた。

 

「トレーナー・・・・・今度は虫を使ったトレーニングは絶対になしだからねっ!!」

 

「・・・・・テイオー、思い出させないでくださいまし!! あれは、トラウマものですわっ!?」

 

「「ううっ・・・・・」」

 

被験者達は当時のトレーニングを思い出して、今からトレーニングをするというのにコンディションが下がってしまった。が、そんなことトレーナーは気にもかけないで改めてトレーニングを始めさせようとする。

 

「・・・・・ウォーミングアップ、ランニング」

 

「わかりました。では皆、行こう」

 

まとめ役としてシンボリルドルフが一緒に肩を並べ走り出す。―――皆を指導する立場であるトレーナーとだ。全力疾走するウマ娘の走行速度はおよそ時速70キロメートルにも達する彼女達の足について行けるどころか、差し抜いて追い越すことが出来る人間は学年において片手の指の数しかいない。その一人がトレーナーであり、己の全力でも勝てないトレーナーに興味を持ったり、トレーナーと接して担当になってもらったり等の理由で集ったのがシンボリルドルフ達なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・で、結局顔を出すつもりもないのね彼は」

 

夜の帳が降りた時間帯にて本校から離れた木造の校舎にオカルト研究部というクラブの部屋が存在している、学校が終わってから設置されていた長椅子に優雅な姿勢で座って待っていた紅色の長髪の女子生徒、リアス・グレモリーが呆れ交じりのため息を吐く。いくら待っても警備員が来る気配が感じられないまま時間が過ぎるだけで次回に持ち越そうと帰宅する。

 

「初めてね。この私の誘いに興味も関心もなく訪れなかった者は」

 

「そうですわね。ですが、女子寮に行けばあるのでは?彼は寮長でもありますし」

 

「大事な話があるのだから来てほしかったのよ」

 

「それは他の生徒達がいる前では言えないことですの?」

 

「兵藤家のことよ」

 

ああ・・・・・と納得した面持ちで吐露したのは大和撫子の雰囲気を纏いポニーテールにした長い黒髪と紫の瞳、男女問わず魅了するプロポーションを我が物にしたい兵藤家の男達に幾度も告白や誘い、中には無理矢理強引に迫れた。それでも個人としての強さは確かで撃退してきた。話し合いで済むなら越したことではないが、力尽くで来るならこちらも容赦はしない女子生徒は冷たい眼差しと共に魔法で迎撃した。

 

「警備員兼女子寮の寮長としてこの学園に働いてから年々、兵藤家の者達が起こす事件が減ってきたのは勿論学園側からすれば喜ばしいことよ。でも、その実はやり過ぎている」

 

「やり過ぎている? 兵藤家に散々辛い目に遭ってきた者達からすれば当然だと思われても仕方がないですわよ?」

 

「兵藤家から苦情が殺到しているのよ。自分達が被害者ぶりを徹底してるようでね。今すぐ警備員の彼を解雇しろだの、罪を償わせろなど見当違いも甚だしいことだわ」

 

「その程度で彼を呼び出すの?」

 

「兵藤家に対する対処をもう少し穏便にしてもらいたいのよ。逆恨みで何をしでかすかわからないですもの」

 

困り顔でため息を吐くリアスに、柔和に笑む女子生徒。

 

「女性の敵に対して無理なことですわね。特に被害に遭った女性達からすればまだ生温いじゃなくて?」

 

「許せないのは理解しているし同じ女としても気持ちはわかるわ。でもね、限度ってものがあるのよ。彼には酷な話だけれど相手が悪すぎるわ。兵藤家が本格的に権力を振りかざしてくるならばいくら公爵家でも庇いきれないもの」

 

 

 

 

 

学園内の料理は様々な外国の料理が無料で食べられることが出来る。しかも料理人は現地から招集された外国人。その中には寮長も交じって料理を振る舞って、この学園の寮しか味わえない食事のシステムに大人気な生徒達は外国の料理を食べ胃袋に収めていく様子を見ずともわかるように料理を作り続ける。

 

「今年の夏は特大イベントが始まるわね」

 

「何たって兵藤家が主催する現当主の娘の婚約者を決める催しでしょ? 優勝しても賞金が30億円とか凄すぎだよ」

 

「誰が優勝するのか想像もつかないけど、絶対兵藤の連中にだけは優勝してほしくないわ。皇女様が可哀想過ぎるから」

 

「本当にそうね。というか、この世から消えてなくなって欲しいわよあんな奴等」

 

「死んでも誰も悲しまないでしょうし」

 

とある女子達からそんな話し声が聞こえ寮長の目に決意の光が淡く光り出した。厨房を後に女子寮の寮長室へ戻ると、可愛らしいぬいぐるみや装飾品、生活用品と寮長が巨大なテレビにテーブルの上に置きっぱなしにしていた携帯を手に取ってどこかへ連絡した。何度目かのコールで向こう側の携帯と通信が繋がった。

 

『よぉ、まさかお前さんから連絡をしてくるなんて初めてじゃないか。もう一生連絡なんて取り合わないだろうと思ったがな』

 

「・・・・・頼む」

 

『おう、なんだ』

 

「・・・・・大会、出る」

 

『大会ってことは、兵藤家が開催するアレか。それだけでお前の考えていることが分かってくる。・・・・・だが、覚悟はできているのか』

 

「・・・・・」

 

『・・・・・わかった。形式次第で鳶雄達にも手伝うよう声を掛けておく。お前はあの娘っ子達のことだけ集中しろ。じゃあな』

 

向こう側との通信が途切れ携帯をテーブルに置き入浴しようと動いた寮長の扉にノックがされた。扉を開けると筆記用具と数冊のノートを持ったバイトから連れ戻した福井姉妹と紙袋を片手に持つ涼子、更には顔にほくろがある眼鏡を掛けた女子の黒岩黒子や目つきの悪い女子の榊田巫、髪を一つに結い上げた女子の秋月優姫が揃って立っていた。

 

「遊びに来ちゃいました。てへっ☆」

 

「すみません。数学で分からないところがありましてご教授お願い致します」

 

「私もです。あの、よろしくお願いします寮長さん」

 

「「・・・・・」」

 

「お手数ですがよろしくお願いしまーす」

 

寮長室の中に勝手知った風に入る少女達。慣れた感じで寮長室に入る彼女達はこれで初めてではない。最初は一人、その次に二人、また一人ずつ増えて今に至ったことを思い出す暇もなく、わいわいきゃっきゃっと男性が寝泊まりしている部屋の中で姦しくする彼女達を見て小さくため息を吐いて扉を閉めた。

 

「何度来てもここはデカすぎるテレビ以外必要な物以外何にもないですねー」

 

「そう言って何勝手にまた物を増やして置いているのですか」

 

「可愛いでしょ?」

 

「はい、可愛いですっ」

 

「どこで買ったんですかー?」

 

「寮長さん。早速ここを教えて欲しいのですが」

 

「・・・・・」

 

兵藤家の毒牙から守った少女達が寮長室に居座るようになって短くはない月日と共に過ごしてきた。それも絆が深まらない筈もなく寮長に対して信用と信頼を寄せるのも時間は掛からなかった。だが、寮長からすれば・・・・・どうしてこうなったとの一言に尽きる。それでも縁を結んだからには捨て置くことが出来ず、こうして交流を持っているが未だ慣れないでいるし線を引いて距離を置いている。自分がもし―――であることを知ったらこの少女達も手の平を返すだろうという思いがあるからだ。

 

「寮長、貴方の好きなアップルパイも持ってきてありますよー」

 

「!」

 

好物を見せられ反応せずにはいられない寮長は意味深な笑みを浮かべる前上からアップルパイを受け取り、一齧りするや否や身体を小さくして狐の耳と九つの尾を生やす姿になると少女達の間で空気が変わった。

 

「無表情で寡黙な寮長が、好物の食べ物には幸せオーラを醸し出し食べる際に体を小さくする・・・・・」

 

「超ド級の破壊力がある魅力・・・・・」

 

「やっぱり、可愛いです! お持ち帰りしたい!」

 

「凄く気持ちがわかる。尻尾を抱き枕にしたら夢心地がよさそうだよね」

 

「実際触ってもすっごいモフモフ感があるしさ」

 

「モフモフ・・・・・ふふっ」

 

どうしてこうなったと気持ちを抱く寮長であれば、少女達は寮長のこの事実を知って―――もっと彼のことが知りたい! という想いをたわわかな胸に宿して太く長い九つの尾の一本を手にして触り心地を堪能するのだ。

 

「ほ~ら、寮長。まだまだありますからねぇ~?」

 

「・・・・・」

 

ちょうだい、と最初のアップルパイを食べ終えた寮長が見せつけながら下がって移動する前上を追いかける光景すら、彼女達を可愛すぎるあまりに悶絶してしまう。次は私がっ・・・・・!と密かに戦意に似た強い決意を秘めて顔を赤くするそんな彼女達にトドメを刺すのがコレだ。中々貰えないことに思わず涙目を浮かべ、前上の脚に両手と尾でしっかり抱き着き上目遣いで・・・・・・。

 

「・・・・・食べさせて?」

 

「グフッ!?」

 

『カハッ・・・・・!』

 

母性本能のゲージを臨界突破させる涙目+おねだりだ。もれなく全員幻覚で大量の吐血を吐き、リアルで鼻血を流す少女達。

 

「や、やっぱり可愛い・・・・・可愛すぎるよう寮長ぅ・・・・・」

 

「寮長と結婚したら、こんな悶絶する思いをする日々を過ごすと思うと色々な意味で身が持たないわ。・・・・・主に理性が」

 

「でも、ちょっとイイと思う自分がいて・・・・・・」

 

「だけど、この事実を他の女子達には教えたくないというか」

 

「う、うん・・・・・絶対私達だけの秘密にしようよこれ」

 

「可愛すぎるあまりに女子達が兵藤家の男連中の様に襲いかねないからね・・・・・」

 

でも、もしもそう言う意味でおねだりされたら自分達は理性で我慢できるか?と問われると・・・・・自信がない、逆に自分が手取り足取り教えて・・・・・と欲に塗れた考えを過ってしまう。ティッシュを取り鼻に摘めるうら若き乙女がするべきではないことをして・・・・・。やっともらえたアップルパイを幸せオーラを醸し出し食べる寮長を見ては、また悶絶するループから抜け出せそうにない少女達だった。

 

 

 

 

 

 

就寝時間となった少女達が自身の寝室へと戻った頃。初めて大きなテレビの電源を入れると某ホラーを再現したようなうす暗い背景と森の中に石造りの井戸があった。そんな映像を映すテレビの画面から・・・・・・ヌゥと長い黒髪で見えない女性が出て来た。人間の類ではなく女性は霊だ。学園の警備員兼女子寮の寮長として働くことになった寮長を知る一人の友人が「コレでも見てもっと女のことを興味持てよ」と善意? によるプレゼントとして・・・・・エッチなDVDを大量に大きめの段ボール箱に詰めて送ってきたのだ。初めて最初にパソコンでDVD観賞しようとしたのがまさかの貞〇ばりの幽霊が・・・・・豊か過ぎる胸で面が小さすぎて出てこられなかった何とも間抜けな経緯を経て、寮長は大きなテレビを買い付けて幽霊の女性と奇妙な交際を始めた。が、当初の幽霊の方は寮長を殺そうと憑りついて―――既に宿っていた伝説の妖怪・伝説のドラゴン達に囲まれて逆に幽霊なのに殺されかけたこともあって、憐れ過ぎて寮長が保護した。それ以降、夜の見回りの際には毎夜共に学園内を徘徊する事となり、背後にピッタリとくっついている幽霊に憑りつかれてる寮長を見た教師や学園に忍び込んだ生徒に目撃された経緯から『学園の恐怖の七体験』の一つに数えられているのであった(当の本人達は一切気付いていない)。故に夜間の見回りをする寮長と遭遇したら自分も呪われると教師達の間で恐怖の対象となり、寮長(と幽霊)を避けるようになった(これも本人は気付いていない)。

 

「コンバンワ・・・・・」

 

「・・・・・」

 

小さく頷く寮長は幽霊の手を掴んで夜間の見回りを始める。握られた手から感じる温もりが幽霊の心を温めたりちょっぴり恥ずかしがらせたりもするが、生前の時には経験したことが無い―――淡い恋心を芽生えた幽霊は耳まで紅潮させて大人しく従う風に寄り添ってついていく。

 

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

 

そんな生活と仕事を繰り返す日々を送ることしばらくして学園内にとあるニュースが知れ渡った。高等部三年のリアス・グレモリーが婚約破棄を懸けた『レーティングゲーム』を行う最新の情報の報せが瞬く間に広まり、教師と生徒達の間では話題のネタとして盛り上がっていた。相手は元72柱の一柱の悪魔の家系『フェニックス』。ダメージを与える傍から回復する不死身に近い能力を持つ相手にどう戦い勝つのか、皆興味津々だ。今日も性欲に忠実な獣(兵藤)に鉄拳制裁して女子を助けていたら紅髪を揺らして近づいてくる女子生徒が現れた。

 

「話があるわ」

 

「・・・・・」

 

「放課後、オカルト研究部の部室に来てちょうだい。いい、絶対よ。関心がないからって無視を決め込むなら私の方から寮長室に行くわよ」

 

それだけ言い残してすぐ去って行った紅髪の女子生徒に警備員と助けられた女子生徒は呆然と見送ることしかできなかった。鬼気迫るどこか切羽詰まっている雰囲気を発していたのだ彼女は。その理由を二人は当然分からないし念を押し、釘を刺すほどとても大切な事か―――警備員はどうせ自分に関係のない話だろう、と自己完結。放課後になってもオカルト研究部に顔を出さず姉妹の少女達をバイト先へ送り、女子達の為に料理を振る舞って、またバイト先から迎えに行って自室に遊びに来た少女達の勉強を見てやったり、アップルパイを強請ったりして彼女達を悶絶させる時間を過ごした後、幽霊の女性と夜の見回りをしていた時だった。 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・ッ! と擬音が聞こえそうな紅いオーラを全身から滲みだしながら腕を組みこちらを睨んでいる紅髪の女子生徒が廊下のど真ん中で待ち構えていた彼女を見て、ひっ! と怯える幽霊の女性は警備員の背後に隠れる。

 

「・・・・・ねぇ、今何時だと思っているのかしら? どれだけ待っても私のことがここまで関心も興味も抱いていない人は貴方が初めてよ」

 

「・・・・・」

 

「貴方は警備員と女子寮の寮長、トレーナーとして務めているのは判るわ。そこにいる幽霊と一緒にいるのは理解不明だけれど、それでも仕事の合間に顔を出すことぐらいはできるでしょう?」

 

「・・・・・」

 

「何か答え―――」

 

沈黙、寡黙を貫く警備員にシビレを切らして突っ掛かろうとした女子生徒に静止の声が掛かり、彼女の後ろから大和撫子風の制服姿の女子生徒が現れた。警備員はその女子生徒に対して一瞬だけ人違いをした。あの人の話を聞かず自分を婚約者扱いにする者と容姿が酷似していたためだ。

 

「リアス、貴方の問題はまだ猶予があるわ。そんな性急に事を欠いては駄目ですわよ」

 

「っ・・・・・そうね」

 

荒ぶる精神を吐く息と共に落ち着かせた後、改めてと言った。

 

「時間は取らせないわ。この場で話をさせてちょうだい。その間は私の眷属が貴方の代わりに学園の見回りをしてもらっているから」

 

「・・・・・」

 

「本当に何か返事をしてもらえないと会話が続かないわね・・・・・」

 

困ったように眉根を寄せる女子生徒に警備員は自分の代弁をしてもらう相棒に頼んだ。

 

「すまぬの。この者は滅多に会話をせんのだ」

 

警備員の影から飛び出す小さな子狐。ただし尾は九本もあるので普通の生物ではないことが明らかである。

 

「妖狐?いえ・・・・・妖怪特有の力が感じられないわね」

 

「妾は独立具現型神器(セイクリッド・ギア)、名は九桜と申す」

 

「独立した神器(セイクリッド・ギア)・・・・・・初めて見たわ。貴方が彼の代わりに意思疎通を?」

 

「うむ、そなたの頼み事やらは妾から聞こう。単刀直入で話してみよ」

 

紅髪の女子生徒はようやくと本題に入る。

 

「十日後、婚約の破棄を懸けたレーティングゲームをすることになったの。だから彼の力を借りたいの」

 

「理由は? この者ではなくとも他にも指折りの強者が片手で数えるぐらいはいるはず」

 

「・・・・・頼んでもないのに一方的に堕天使の総督から貴方のことを推薦されたのよ」

 

「・・・・・」

 

目元を細め、脳裏に浮かべた今度会ったら黒歴史で苛めてやると中年男性の顔を殴り飛ばした。

 

「とんとん拍子でいつの間にかライザーを倒さない設定なら仮眷属として一人だけ参加を認めるってことになってたし、あの堕天使がどうして横から介入してきたのか今も理解に苦しんでるわ」

 

「そうか。妾等は何も聞いておらなんだが、そう言う事情なら手を貸すことも吝かではなかろう。のぅ?」

 

「・・・・・」

 

九桜の同意を求める言葉に警備員は頷いた。協力してもらう了承を得たことで紅髪の女子生徒は安堵で胸を撫で下ろした。

 

「ありがとう。取り敢えず話はここまでにしましょう。私達はこれから十日後の『レーティングゲーム』に向けてしばらく修行するわ。どう、貴方も参加する?」

 

「今のこの者にそんな時間はないので遠慮させてもらう。その代わりに推薦されたからには約束された勝利を献上しよう」

 

「期待しているわ。それじゃ、十日後にまた会いましょう」

 

約束の期日を決め別れる両者。九桜と幽霊を連れて踵を返す警備員の後ろ姿に紅髪の女子生徒リアス・グレモリーは見つめるその隣で、黒髪の女子生徒は訊いた。

 

「・・・・・どうしました部長?」

 

「彼と初めて会ったはずなのに、不思議とそうじゃない感じがして」

 

「・・・・・そうリアスもなのね。実は私も何となくそんな感じがしていましたわ」

 

しかし相手は素性が判らない赤の他人。不思議に思うも気のせいだろうと二人も帰路に着く。

 

 

そして、あっという間に時が過ぎ『レーティングゲーム』当日となった・・・・・。

 

 

深夜十一時五十分頃―――。

 

 

警備員はリアス、リアスのグレモリー眷属たちと旧校舎の部室に集まっていた。ゲームをする前に自己紹介するわね、とリアスは警備員に自分の眷属達を軽く紹介した。グレモリー眷属のメンバーをどうでもよくとも把握できた後、銀色の魔方陣が光り出し、グレモリー家に仕える銀髪のメイドのシルヴィアという者が現れ戦闘用の使い捨てのフィールドに転送される説明をしたあと準備は済んだか確認する。

 

「そろそろ時間です。皆さま、魔方陣の方へ」

 

その後シルヴィアに促され、一同は未だ光り輝いている魔方陣に集結する直前。警備員は左手に赤い籠手を装着、魔力を迸らせて赤い龍を模した全身鎧を装着した。

 

「貴方、その姿・・・・・」

 

「・・・・・そうですか。貴方は赤の龍の帝王に憑りつかれし者でしたか」

 

魔方陣の紋様が見知らぬものへ変わり、光を発した。ゲーム用の魔方陣の転移用魔方陣か。そんな事を思っていると警備員達を光が包み込み、転移が始まった。

 

 

 

 

 

『皆さま。このたびの「レーティングゲーム」の、「審判役(アービター)」を担う事になりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』

 

戦闘用のフィールドに転送された一同がいる異空間の校内放送、警備員の耳に知らない女性の声が聞こえてくる。

 

『我が主、サーゼクス・グレモリーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願いたします。さっそくですが、今回のバトルフィールドはリアスさまとライザーさまのご意見を参考にし。リアスさまが通う人間界の学び舎「駒王学園」のレプリカを異空間にご用意いたしました』

 

似て非なる世界。窓の外の空は緑のオーラみたいなものが警備員の視界に映り込んだ。

 

『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアスさまの本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザーさまの「本陣」は新校舎の生徒会室。「兵士(ポーン)」の方は「プロモーション」をする際、相手の本陣の周囲まで赴いてください』

 

「貴方はこのゲームの仕組みとライザーの眷属のこと知らないから噛み砕いて教えるわ」

 

リアスから聞かされるライザーの『兵士(ポーン)』8人がこの本陣に来たら『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『僧侶(ビショップ)』、『女王(クイーン)』にプロモーションが出でき、大抵は『女王(クイーン)』に成るのが定石だと。

 

「全員、この通信機を耳に付けてください」

 

朱乃がイヤホンタイプの通信機を配る。それをつけながらリアスが言う。

 

「戦場ではこれで味方同士やり取りするわ」

 

これで離れた場所から命令を受けたり聞いたりするのか、と把握したところで。

 

『なお、今回のゲームで堕天使の総督アザゼルさまのご希望で一人、リアスさまの眷属として特別に参加をしてもらってます。その者だけは「(キング)」以下の駒しか撃破しない設定で参加しておりますが「(キング)」を倒してしまった時はライザーさまの勝利となります』

 

本当にこのゲームに関わっていた堕天使の中年男にどう精神攻撃をしてやろうかと頭の中で模索する。

 

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』

 

 

キンコンカンコーン。

 

 

鳴り響く学校のチャイム。これが開始の合図だと認識した警備員は一足早く部室を後にする。後ろから静止の声が掛けられても相手を倒せばそれで終いだと警備員の考えは間違っていない。故に警備員がとる行動は―――。空高く浮き上がり旧校舎から離れた新校舎付近に動く敵の気配、姿を捉えて―――数多の展開した魔法陣から魔力を豪雨のごとく放った。

 

「「え、なにっ?」」

 

「凄まじい魔力の数が、こっちに来てる!?」

 

「まずいっ、全力で回避よ!」

 

体育館に入るだろうグレモリー眷属を監視していたが狙われていることに気付くライザーの眷属は、体育館に逃げ込んだが上空に浮かび上がった魔方陣から放たれた魔力の塊が体育館ごと呑み込まれて消滅させた。

 

『ライザー・フェニックス様の「兵士」(ポーン)三名、「戦車(ルーク)」一名、戦闘不能』

 

間も置かず。

 

『ライザー・フェニックス様の「兵士(ポーン)」五名、「騎士(ナイト)」二名、「僧侶(ビショップ)」二名、「戦車(ルーク)」一名、リタイア』

 

「・・・・・?」

 

一人倒し損ねた敵がいることに不思議を覚えて今度は直で倒すことにした警備員が動いた。最後に残っていたのは杖を持った妙齢の女性だった。周囲に張った魔方陣で防御して身を守ったのだろう無傷な姿で宙に佇んでいた。

 

「今の魔力は、貴方なのね・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「でも、貴方の魔力はもう底についてるはずよ。あれだけの魔力を一度に使い切ったのだから―――」

 

真紅の魔力の領域(ゾーン)を作り出す警備員に女王(クイーン)は言葉を失った。

 

「これは、まさか全部魔力・・・・・!? これだけ放出、維持をするだけでもかなりの魔力の消費が激しガッ!?」

 

魔力による攻撃が襲い始まった。この領域(ゾーン)を抜け出さない限りは警備員による公開処刑が続く。防壁の結界を張ろうが内側から魔力の攻撃を防げないし、警備員の魔力が底を尽かない限りは永遠に止まらない。それまで耐えきりる防御力と精神力があれば何とかなったかもしれないが、如何に女王(クイーン)であろうと元来は魔法使いの女。耐えられる道理はないのだ。空間全てが警備員の攻撃範囲。大海の津波ごとく全方位から攻撃を受ける敵の女王(クイーン)は反撃を許されないまま光の粒子と化してフィールドから退場した。

 

『ライザー・フェニックス様の女王(クイーン)一名、リタイア』

 

 

残りは一人、警備員は倒せないルール。そう『倒してはいけない』ならば戦ってはいけないルールではないのだ。降ってくる業火の塊を片手で受け止め空を見上げる。

 

「まさか赤龍帝を参加させていたとはな。俺の女王(クイーン)を倒すだけの実力はあるってわけか。だが、お前は俺を倒せない。そういうルールだからなぁ?」

 

「・・・・・」

 

背中に炎の両翼があるライザー・フェニックスの嘲笑に警備員は亜空間から白い籠手を取り出した。それを右手の赤い籠手を解除してから装着した

 

「―――鬼手化(バランス・アジャスト)

 

white Dragon counter Balance(ホワイト ドラゴン カウンター バランス)!!!!』

 

かけ声と音声と共に一気に弾けた。そこに出現したのは。白い龍を模した全身型鎧を装着したDだった。背中に四枚の青いドラゴンの光翼が生えており、頭部には鋭利な一本の角が伸びていた。白い極光の極大なドラゴンのオーラを身に纏う警備員に目を見張るライザー・フェニックス。

 

「白い龍、だと? ―――馬鹿なっ!!!」

 

現実を受け入れたくなく叫んで否定するライザー・フェニックスの懐に光の軌跡を残して光速で飛び込み、腹部に抉り込むように殴った直後。

 

「『Divide(ディバイド)』!」

 

身体の各部の宝玉から音声が発し、ライザー・フェニックスの力が『半減』した。

 

「な、なんだ、とっ・・・・・!?」

 

自分から力が失った感覚を覚える敵総大将に構わずそのままリアスのもとまで連れながら『半減』していく。旧校舎から出て来た所のリアスの前に降り立って弱ったライザーを放り投げた。

 

「白い龍・・・・・? 貴方、赤龍帝ではなかったの?」

 

「・・・・・」

 

ライザー・フェニックスを足蹴りする。さっさとこいつを倒せとばかり促す警備員にリアスは怪訝な表情を浮かべるも赤黒い魔力を出しながらよろめきながら立ち上がったライザー・フェニックスに降伏勧告を告げる。

 

「ライザー。投降(リザイン)しなさい。貴方はもう詰んだわ」

 

「ふ、ふざけるな・・・・・こんな勝敗は絶対に認めんぞっ・・・・・! リアス、お前も俺の眷属達と戦わずこの男に任せて勝った勝利に誇れるのかっ!?」

 

「私も思うところはあるけれど、どんな結果でも勝敗は区別されるわ。貴方はたった一人に負けたというこれから背負うことになる事実をね」

 

―――後にリアス・グレモリーとライザー・フェニックスの『レーティングゲーム』はリアス・グレモリー側の勝利として幕を閉じた。だが、観戦していたギャラリーからすれば 助っ人として参加した者の一人勝ちだこれは という認識を抱いた。赤き龍にもなり白き龍にもなる正体不明の存在が気になり、興味を持ち探る者も現れる。ゲームが現実世界のオカルト研究部の部室で両者は話し合った。

 

「色々と訊きたいことが出来たけど、先ずは感謝するわ。貴方のおかげで婚約は破棄されることになったから」

 

「・・・・・」

 

「もしよければ仮ではなく正式に私の眷属になるつもりはないかしら。ライザーを相手に勝てる人材は遊ばせておくのが勿体ないくらい貴方はかなり優秀よ」

 

警備員は首を横に振って拒絶の意を示す。あまり残念そうではなくとも小さく息を吐いた。本当に勿体ないと。

 

「わかったわ。貴方の気持ちを尊重します。それと推薦されたと言ってもご褒美を上げなくちゃね。何か望むものがあれば何でも言ってちょうだい?」

 

「・・・・・」

 

珍しく考え込む警備員が望む物を考えた末・・・・・ある物を要求した。

 

「・・・・・ドラゴンアップル」

 

「ドラゴンアップルって・・・・・本当に?」

 

こくり、と頷く警備員にリアスは少々困り顔を浮かべた。

 

「私の一存では決めかねるわそれは。少し時間をくれない? 何とか用意するから」

 

「・・・・・約束」

 

「ええ、約束を果たすわ」

 

口約束でも確と聞いた警備員は踵を返し、扉から出ず魔方陣で部室からどこかへ跳んでこの場から去った。

 

 

『よーう、相も変わらず強さを見せつける戦いだったな。鳶雄達と観戦していたぜ』

 

「・・・・・黒歴史、バラまく」

 

『ちょっと待とうか! 俺が勝手なことをしていると思っているのはこれには深い理由とお前の為でもあったんだ!』

 

「・・・・・?」

 

『ここ最近、コカビエルの奴がキナ臭い動きを見せ始めた。もしかすると、何か余計な事を起こすかもしれない。その対処をお前さんに頼みたいんだ』

 

「・・・・・そっち」

 

『それは難しい。特に俺や堕天使の幹部が動けば相手にいらん刺激を与えてしまう。だから堕天使側にいる者に頼みたい。その為にお前さんの強さを周囲に納得させるために見せつけたかった』

 

それが自分の事だと察し、携帯越しで わかった と首肯した。

 

『頼んだ。ああ、それとリアス・グレモリーと姫島朱乃はどうだった。久しぶりに会って懐かしかったか?』

 

「・・・・・どうでもいい」

 

『それ、本人達の前に言うなよ。絶対凹むぞ―――Dよ』

 

それすらどうでもいい と警備員―――Dは通信を切った携帯をテーブルに置きベッドに横たわっている幽霊へ近づいた。

 

 

 

 

―――ある日の休日。

 

 

学園が休みの日。警備員、トレーナーとしての仕事も休みだが学生は部活がある。部活中の女子を狙う兵藤家を警戒して学園中に監視の目を休まず、全ての部活を分身体に参加させている。その間Dは寮長室でのんびりと寛ぐつもりでいたが。

 

「寮長ー! 一緒に外へ行きましょうー!」

 

寮長室に来た少女達によって休日は騒がしくなりそうだった。

 

 

 

「本当に魔法って便利ですね。どこでもひとっ飛びみたいな感じですぐに着いちゃって」

 

転移した場所は東京。学生にとって小遣いから電車賃を払うことなく済むありがたさをDに感謝を込めて礼を言ったあと、秋葉原に来た。

 

「前上さん。どうして秋葉原に? そもそも東京なら色々と行く場所があるのに」

 

「ふっふーん。それはもちろん、コスプレの衣装を買いに来たんだよ」

 

「どうしてそんな物を・・・・・」

 

「偶然見ちゃったんだよねー。Dさんが触ろうとした野良猫に全力で逃げられて残念がってるところを!」

 

ピクッと肩を揺らしたDを見上げていた少女達からでもその事実は本当であると窺わせた。

 

「日頃のお礼に猫のコスプレをした私が猫の代わりに可愛がられてあげようかとね」

 

「なっ」

 

巫の顔を紅潮させる涼子は思いついた表情を浮かべた。

 

「あ、榊田さんは現役の神社の娘で巫女だから巫女さんプレイが出来るね?」

 

「聖職に対する暴言よねそれ?」

 

ジロリと睨む十代の少女とは思えない目つきの悪さ。

 

「猫と言えば、東京に猫カフェという猫と触れ合うことができる喫茶店みたいなのがあるとか」

 

「知ってる。猫好きの人にとって楽園だとか」

 

「へぇ~行ってみたいかも。というか行かない?」

 

「喫茶店だから小休止にも丁度いいかもね。Dさん、猫カフェに行きません?」

 

勿論いくと首肯するDの了承を得て、六人の少女達は秋葉原でコスプレの衣装やゲーム、家電製品を物色や購入をして時間を過ごした後は猫カフェに訪れた。―――のだが。

 

「・・・・・あの時見た野良猫だけかと思ったんだけどねぇ」

 

「あ、あははは・・・・・・」

 

Dを見た猫達が一斉に逃げ惑うようにDから距離を置いて他の場所や来客の下へ集まる現象を目の当たりにしてしまった少女達。一人寂しく、店の隅っこの席で体育座りして心底落ち込むDに店員も当惑する。

 

「やっぱり、猫にコスプレして猫の代わりに可愛がらせてあげるしかなさそうね」

 

「ちょっと、あれは気の毒すぎます」

 

「そ、そうだね・・・・・うん」

 

店員も気の毒に思ったか、一匹の猫を抱えてフォローを試みたがDに近づきたくないとジタバタ暴れ出して店員の腕から逃げ出す猫を見て、ますます何とも言えなくなった。

 

「注文、してないけど出ようか」

 

「うん」

 

自分達だけ猫に囲まれて楽しむのはどうも心苦しいというか申し訳ないというか・・・・・とにかくDがいては店側にも悪影響が出そうだと早々に退店した。

 

「・・・・・ごめん」

 

「あ、いえっ。私達も流石に予想外と言うか想像していませんでした」

 

「Dさんも知らなかったのですか?」

 

「私達も思いっきり猫に拒絶反応されるまでは気付かなくても仕方がないですが、Dさんの意外なことがあるんですね」

 

改めて手近な店でも小休止をと、携帯で調べる。

 

「メイド喫茶でいいですか?」

 

「まぁ、いいんじゃない? 女の子でも行くでしょ」

 

「Dさん。いいですかね?」

 

異論はないと首肯するDを見て、別の喫茶店へ赴く一行。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 

銀髪の大人のメイドが一行を出迎えた。外国人か日本の女性とは異なる美しさを誇っており、メイド服に包まれている体つきは豊かさを主張している。更には店に働いている従業員も殆ど外国人っぽく全員が全員美少女や美女ばかりだ。レベルの高い綺麗なメイド達がいる店に来た少女達は気後れしてしまった。自分達より綺麗なメイド達にたじたじだ。

 

「き、綺麗・・・・・!」

 

「ヤバい、何か逆に緊張してきた」

 

「ど、どうする?」

 

「どうするって言っても・・・・・Dさん?」

 

メイドから出入り口の方へ振り返っていたDに気付き、後ろに何が・・・・・と振り向いた矢先だった。来訪者を知らせる鐘の音と共に開かれた扉の向こうから、如何にも朗らかで優しい一般人とはかけ離れたヤクザ達が入ってきた。ギョッと怖い人達の来店にDを盾にして隠れる少女達と盾にされたDは。

 

「また来たぜリーラちゃん! 今日も綺麗だねぇ!」

 

「お帰りなさいませ。お好きな席にお座りくださいませ皆さま」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

―――彼女を前にして全員デレデレして、子供みたく元気よく返事をすると礼儀正しく座る光景に唖然とした一行にリーラと呼ばれたメイドが話しかけた。

 

「申し訳ございませんでした。お席にご案内いたしますご主人様。どうぞこちらへ」

 

「・・・・・」

 

Dに向かってそう呼ぶメイドが先に歩き追う一行。そこへ向かう道中。

 

「おい、あの先はVIPルームじゃねぇかっ」

 

「この店が開店して以来、彼女を求め各国のお偉いさんが来てもあの部屋には一切入れさせなかったっていうあの秘密の部屋へ!?」

 

「何(もん)なんだ、あのカタギ等は・・・・・」

 

何やらとんでもない場所へ招かれようとしていることにますます緊張が高まり、Dを信じ頼るしかない少女達は案内された部屋に繋がる通路を入った。距離はあっという間で一目で高級とわかる桃花心木(マホガニー)の扉をメイドが開け放つ先には、同じ木材で加工されたUの字の長椅子と円卓。床にはふかふかな絨毯が敷かれており、天井には豪華絢爛なガラス製品のシャンデリアが淡く灯っている。神話体系の神々や楽園を描いた壁面がズラリと描かれていて、一言で言うと一般市民が入って良いような身分不相応な部屋だと察するに難しくはなかった。

 

「メ、メイド喫茶なのに何でこんな部屋が・・・・・?」

 

「あ、あのっ。高級な料理とか出てきませんよねっ?」

 

「ご心配なく。ここは表の席と違いお客様の要望に全て叶えるために設計した部屋です。どんなにお料理を食べてもお支払いは全て無料で、お客様がお食事したい料理を全てご用意させていただきます」

 

「無料って・・・・・嘘ですよね?」

 

「真実です。このお部屋は私が招いてもよいと思った者しか入室をさせない決まりがございます。全ては当店のオーナーである私の一存でございます。お客様達はごゆるりとお寛ぎくださいませ」

 

本気と書いてマジで言っているんだこの人は。とそう思わずにはいられない面々はメニュー表を手にして恐る恐ると料理を注文したのであった。

 

 

 

 

 

 

「もう、あの喫茶店には行かないようにしよう」

 

「料理は本当に美味しかったけれど、緊張感で食べ辛かったし食べた気がしなかった・・・・・」

 

「あんな食事はもう二度としたくない。美味しかったけれど」

 

「うん、美味しかったのはわかる。でも、あの場所では食べたくない。中華風だったらまだマシだったかもしれない」

 

前神達が口々に言うも、肌には合わなかったVIPルームでの食事会はある種の思い出になった。ただ一人Dだけは違った。脳裏に銀髪のメイドを思い浮かべていたのだった。それは―――彼女も同じだった。

 

 

 

 

 

VIPルームに招いたメイドは先ほどこの部屋で食事した客達の中にいた青年の隠しカメラで撮影した姿を見ていた。写真にもしてそれを愛おし気に触れて撫でる。見つめる眼差しも慈愛で満ちていて小さく笑む。

 

「我が主・・・・・ようやく再び会えました」

 

 

 

 

 

東京で散策する時間はあっという間に過ぎていった。すっかり空は世界を黒く塗りつぶさんとする暗闇で覆う対極的に地上は闇を引き裂く煌びやかな星々を彷彿させる数多の輝きで照らされていた。そろそろ女子寮に戻らなくてはいけない時間帯になるほど楽しんだ一行は帰宅ムードを醸し出した。

 

「最後はどこか食べてから帰ろうか」

 

「そうだねー。どこかいいところがないかな」

 

「・・・・・ある」

 

ポツリと呟いたDの主張に少女達は一斉に振り向いた。珍しく主張した彼のお勧めの場所なら、と言うことで転移魔法による移動方法で電車も使わず一直線に跳んだ。そこは駒王町から、電車で二駅行ったところにある駅周辺の繁華街、その一角に存在するバーだった。夜にこんなところに訪れるため、学園の制服というのもまずかっただろう。警察に見つかったら面倒くさいことになっていただろうから。表に出ている立て看板には、『黒狗』と書かれていた。

 

「・・・・・ここ」

 

「もしかして、バー、ですか?」

 

「うわ、大人のお店っ・・・・・!」

 

「でも意外・・・・・Dさんがこんなお店を利用していたなんて」

 

「メイド喫茶よりは幾分か緊張しなくてよさそう」

 

看板のあるところから階段で二階に上がる。一階はレストランのようだった。モダンな雰囲気の扉を開けると―――。

 

「――――――♪」

 

心を奪われそうな美しい歌声が、店内を包み込んでいた。見れば、奥に設置されたステージで、白いドレスを着た金髪の超絶美女が見事な歌声を披露していた。客の皆々も、話すのも止めて、歌に聞き入っていた。

 

「す、凄い・・・・・!」

 

「どこの国の歌なのかわからないけど、本当に綺麗な歌声・・・・・」

 

少女達も心を奪われて、立って聞いているだけでもお金を稼げるだろうと思っていたらDが動いたので追従する。カウンター席に座ると、向かいに立っていた一人の若いバーテンダーが朗らかに話しかけて来た。

 

「久しぶりだねD。君がこの店に顔を出すなんて二年振りじゃないか」

 

「・・・・・久しぶり、鳶雄」

 

若いバーテンダーとDが会話を交わす光景に目を丸くする少女達。

 

「え、あの、Dさんとお知り合いですか?」

 

「うん、彼とは親しい友人だよ。もしかして意外だったかな?」

 

「は、はい。Dさんのことはまだ全然知らないので」

 

「仕方がないだろうね。君達も知っての通り、彼は無表情で寡黙だ。喋ること自体だってスケッチブックで済ますこともある。自分のことも一切話さないのも話したくないからだ」

 

本人はスケッチブックで何かを描いていて、それをバーテンダーに見せつける。

 

「そして彼はこんな風に俺をからかうのさ。D、後でそれを渡してくれよ。いや、本当にね?」

 

意外や意外。Dが人をからかうこともするのかと初めて知った少女達は、Dの絵の技術力もハンパなく上手いことも知った(目の前の男性と見知らぬ女性が上半身裸で抱きしめ合っている絵)。

 

「・・・・・からかい甲斐が無くなった」

 

「流石に耐性が付くって。だけど恥ずかしさだけは健在だから人前でそういう絵を描くのは止めて欲しい」

 

「・・・・・子供、できた?」

 

「D!」

 

「「「「「「・・・・・」」」」」」

 

本当に親しい友人なんだ、と認知した少女達はバーテンダーと普段より多く喋るDを見てたら、Dの背後から近づき抱きしめるステージで綺麗な歌声を披露していた美女。

 

「お久しぶりなのですDくん。来てくれて私は嬉しいのですよ?」

 

「・・・・・久しぶり、ラヴィニア」

 

「はいっ」

 

 

衝撃が走る! 美女の外国人に抱きしめられ、明らかに自分達より大きいたわわかな塊を押しつけ親しいところを見せつけられた。硬直、唖然とする六人にバーテンダーは説明に入った。

 

「彼女もDと親しい仲だよ」

 

「そ、そうですか・・・・・」

 

「うん。だから出来たら君達も彼とこれからもあんな風に仲良くしてくれると嬉しい。彼は・・・・・一度心が壊れているんだ」

 

唐突なシリアス、そして衝撃的な事実。少女達は絶句してバーテンダーの話に耳を傾けた。

 

「心が、壊れてる?」

 

「彼の心が壊れることが昔あったことは数年前からDと交流している極少数の者しか知られていない。それでもその全容を知っているのは更に少ない。俺と彼女、他にも数人の友人達でもまだ教えられていないんだ」

 

「「「「「「・・・・・」」」」」」

 

「心が壊れて以来、彼は無表情と寡黙になってしまったこと程度しかまだわからない。今もDは心が壊れたままかもしれない。だから、それぞれの道に歩んだ俺達と離れているDと、Dの傍にいる君達に身勝手なお願いをする。これからも彼と仲良くして欲しい」

 

話しながら作ったジュースを彼女達に配るバーテンダー。今もまだ美女に抱きしめられて頭を撫でられてるDを見て、黒子は尋ねた。

 

「Dさんは彼女とかいないんですか?」

 

「うーん。異性との交流なら少なくはないけど、そういう話は聞いたことが無いかな。というか、Dと交際する女性は身内しか浮かばないかな。その身内の女性達でもそんな関係じゃないから、多分いないと思うよ」

 

よしっ! と拳を握る前上。

 

「ただ、Dは凄く異性に囲まれやすい体質だからいてもおかしくないのも事実だ。君達のようにね」

 

正しくその通りだと、思わず恥ずかしくなって顔を朱に染める幾人かの少女達。涼子が宣言する。

 

「わかりました。頑張ります!」

 

「ありがとう。さて、君達は何が食べたいかな? 今日はDが奢りに来ただろうし遠慮なく注文してくれ」

 

「・・・・・アップルパイ」

 

すかさず、Dがそう言うのでバーテンダーは苦笑を浮かべる。

 

「サンドウィッチならできるからアップルパイはまた今度ね」

 

「・・・・・」

 

「そんな姿で物欲しげな目をしても時間が掛かるからできないって」

 

身体を小さく、獣の耳と九つの狐の尾を生やす姿となって見上げて強請るDに少女達は んくっ! と悶絶する。ラヴィニアと呼ばれた美女も「久々の姿のDくん、可愛いのです」と言って豊満な胸に寄せて抱きしめた。それからバーテンダーに注文した料理は全部美味しくて、ここならまた行きたいという少女達はDに連れて行ってもらおうと決め合った。

 

「・・・・・鳶雄、コカビエル」

 

「うん、俺も話だけは訊いてる。どうやら一部のはぐれ神父達と何か企んでいるらしい」

 

「・・・・・」

 

「多分、教会から刺客が放たれてるかもしれない。一応気を付けてね」

 

小声である会話をして事を気付かずに―――。

 

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