ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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二度目の・・・・・

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ある日の放課後、そしてオーディンが日本神話の神々と会談をする日でもある。Dは夕日で朱に染まり夜の帳が降りる前の空を廊下の窓から見上げた。

 

「・・・・・黄昏」

 

刹那、何とも言い難い不安がDの胸中に渦巻いた。戦いで不安を抱いたことはないのにこの強烈な懸念の想いは一体何だろうか? 左眼を細め脳裏に浮かべるロキに対して睨みつけると一人の男子生徒が話しかけてきた。

 

「何か思うところがあるの?」

 

「・・・・・」

 

視線をその生徒に向ければ式森家の生徒、式森和樹がDを見つめた。ハイライトが無い目で和樹を視界に入れて見下ろされる和樹はDの心情を気付かず言い続ける。

 

「僕たちも今日、神々の護衛に入ることになった」

 

「・・・・・」

 

「兵藤家の人たちも一緒だってさ」

 

胸中に渦巻く不安要素はそれか~・・・・・とDが小さく息を吐いた。

 

「・・・・・期待、皆無」

 

「君にそう言われても仕方がないところもあるけど、僕たちは弱者じゃないよ」

 

「・・・・・戦闘経験、皆無」

 

「確かにそうだね。訓練だけはしているけれど、実際に戦う機会は本当にないんだよ兵藤家も式森家も。誠さんと一香叔母さんのように世界を旅して超常、超越の存在と自分から接触しない限りは」

 

「・・・・・引き籠り」

 

「だから機会が無いんだって」

 

苦笑いする和樹。そうか、ないのか、それならしょうがない―――。

 

「・・・・・言い訳、無用、今夜、戦闘、参加」

 

「でも、それは君たちがする手筈なんじゃ?」

 

「・・・・・無能、機会、逃す、後悔」

 

「・・・・・」

 

「・・・・名ばかり、魔法使い、無能、否、魔法使い、神との戦い、経験、体験、証明」

 

そう言ったら、和樹の背後から一香がやって来て時間が来たと述べた。

 

「それと一誠。あんまり式森家のこと無能だの無能家だの言わないであげて。式森家は戦うために生まれた魔法使いじゃないんだから」

 

「・・・・・存在、理由」

 

「知らないわよそんなこと。皆、引き籠って魔法の開発や研究ばかりして、その費用は国民の税金で賄っているのだから」

 

「一香叔母さん・・・・・」

 

天皇家なんだから大した理由ぐらいはあるだろうに・・・・・とやっぱり呆れるDだった。

 

「・・・・・金、虫食い、魔法使い、最高、ニート、魔法使い、血税、無駄遣い、貪る」

 

「待って、待って、そんな認識をしないで! 僕たちをウジ虫を見る目で言わないでよ!」

 

「そうよ。一つや二つぐらい日本で貢献しているのだから式森家は役立たずじゃないわよ!」

 

「・・・・・? ・・・・・見聞、否」

 

「「信じてお願いだから!」」

 

廊下に響く悲痛な叫びの後、うるさいからの理由で理不尽なハリセン叩きに遭う二人だった。

 

 

―――〇●〇―――

 

 

―――決戦の時刻。

 

 

すでに日は落ちて、夜となっている。Dたちはオーディンと日本の神々が会談するという、都内のとある高層高級ホテルの屋上にいた。周囲のビルの屋上に式森家の魔法使いとシトリー眷属が各々配置され、待機していた。アザゼルは会談での仲介役を担うためにオーディンのそばにいる。戦闘に参加できないアザゼルの代わりにバラキエルが同じくDたちと屋上で待機。ロスヴァイセも戦闘に参加ということで鎧姿のまま待機中である。遥か上空には悪魔に転生した元龍王の一角にして最上級悪魔の『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーン。さすがにそのままの姿では人の目に留まって大騒ぎになるかもしれないので、普通の人間には視認できないように術を掛けている。

 

そして―――。

 

兵藤家と式森家から戦闘に参加する多くの人間がいる中、兵藤家当主の源氏と大統領の玄弥、誠、誠輝、楼羅と悠璃、香織と聖華に天王や迦楼羅、式森家当主の和真や一香、和樹がいることに複雑な気持ちで見て、一行から離れた場所でDはヴァーリ達とその時を待っていた。外に出したオーフィスと一緒にアップルパイやバナナを食べながら。片手にバナナを持って食べているクロウ・クルワッハも同様に。

 

「ククク・・・・・、神と悪魔と堕天使の戦いとは三大勢力戦争の時を思い出して血が騒ぐ。今回は悪魔と共闘だが悪くない戦いができそうだ」

 

「ひゃははは! そうっすねコカビエルの旦那ー!」

 

いつも通りな戦闘狂の堕天使と元教会の戦士へ不意にDは近寄った。

 

「・・・・・フリード」

 

「おんや~? 俺に用っすか?」

 

「・・・・・武器、詳細」

 

「へい、これっす。愛用の対悪魔専用の光剣と銃っす」

 

絶対に逆らえない相手に素直に見せるのは、神と伝説の魔物相手には通用しない玩具程度の物。それを見てこの中では一番戦闘力が低いフリードとして認識し、魔方陣から召喚した一振りの剣をフリードに突きつけた。

 

「・・・・・あげる」

 

「わぉ、マジっすか! しかもセンセーの愛剣だった聖剣ガラティンじゃあないですかー!」

 

喜々としてその聖剣を受け取ったフリードは何度か素振りをし、歪んだ笑みを浮かべた。コカビエルが問う。

 

「いいのか? くれてやったら死ぬまで手放すつもりは無いぞ」

 

「・・・・・ある種、元の鞘、死後、回収」

 

「そうか。―――ほう?」

 

ならこれ以上は言うまいと風なコカビエルが上空を見上げた。

 

「小細工なしか。恐れ入る」

 

ヴァーリが苦笑した。その理由はほぼ全員が理解する。―――ときが来た事を。

ホテル上空の空間が歪み、大きな穴が開いていく。そこから姿を現したのは―――悪神ロキと巨大な灰色の狼、牙を抜かれたフェンリル。正面から、堂々と出てきた相手に。

 

「目標確認。作戦開始」

 

バラキエルが耳に付けていた小型通信機からそう言うと、ホテル一帯を包むように巨大な結界魔方陣が展開し始めた。戦闘に参加しない式森家の魔法使い、ソーナ・シトリーを始めとしたシトリー眷属がDたちとロキ、フェンリルを戦場に転移させるため、大型魔方陣を発動させたのである。ロキがそれを完治するが、不敵に笑むだけで抵抗は見せなかった。そして、Dたちは光に包まれ―――。

 

・・・・・。

 

転移させられた場所は大きく開けた土地だった。いまは使われていない岩肌ばかりの古い採石場跡地。Dとヴァーリ達から少し離れたところに兵藤家、式森家、グレモリー眷属、教会の戦士トリオ、バラキエルもロスヴァイセも全員いる。

 

「・・・・・」

 

話し合いは無用とばかり、北欧の術式の魔方陣を幾多も展開して先手必勝と撃ち放った。

 

「恐れ入る赤龍帝! 話し合いは不毛と言う事か。だが、それはこちらとしても同感だ!」

 

迫る光の帯状に対してロキも全身を覆うように広範囲の防御式魔方陣を展開させる。―――と、思ったら、その魔方陣から魔術の光が幾重もの帯となって、Dに放たれる。

 

「・・・・・」

 

小さな六角形の透明な防御式魔方陣を一枚だけ形成・展開させ、ロキの魔術の威力を分散して防いだ。対してDの北欧の魔術をロキも防ぎ切った。

 

『|Vanishing Dragon Balance Breaker《バニシング・ドラゴン・バランス・ブレイカー》』

 

ヴァーリも一切曇りのない白い全身鎧(プレート・アーマー)に身を包んだ。二人でロキに突っ込むのかと思えば・・・・・Dは魔力で地面から石造の石を作るとそこに座り出した。その行為にヴァーリは問うた。

 

「戦わないのかい?」

 

「・・・・・様子見、状況、動く、兵藤家、式森家、お手並み拝見、それに・・・・・」

 

「それに?」

 

Dはコカビエルとクロウ・クルワッハを見やった。

 

「・・・・・俺以上、戦い、二人、楽しみ、奪う、クロウ・クルワッハ、ロキ、逃走、阻害」

 

「逃がさなければ神との戦いを譲ってくれるのか。なら、そうさせてもらおう」

 

翼を背中から出しロキの前まで飛んで行ったクロウ・クルワッハ。

 

「そのオーラ、貴様も邪龍か・・・・・!!」

 

「『三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)』クロウ・クルワッハ。悪神との戦いを望みにやってきた」

 

ロキは目元を引くつかせた。

 

「クロウ・クルワッハ・・・ケルト神話で滅ぼされたバロールの元眷属の邪龍が、我の邪魔をするな!」

 

「断る。こんな楽しい機会は滅多にないからな」

 

そう言った直後に姿が掻き消えたクロウ・クルワッハがロキの懐に飛び込んで殴りかかった。

 

バリンッ!

 

そのたったの一撃でロキを覆う魔方陣が全部音を立てて消失するだけでなく、反応できなかったロキは地面に殴り飛ばされ激しく激突した。

 

「―――おのれぇっ!!!」

 

立ち籠る土煙を吹き飛ばしながら憤慨するロキは両腕を広げた。

 

「赤龍帝対策に奔走した最中に北欧から連れてきた奴をお前に宛てることになろうとは!」

 

グヌゥゥゥゥン。

 

ロキの両サイドの空間が激しく歪み出した。さらには北欧の術式の巨大な魔方陣が展開される。

 

ヌゥン。

 

最初に空間の歪みから、何かが新たに出てくる。灰色の毛並み。鋭い爪。感情がこもらない双眸。そして、大きく裂けた口。

 

「スコルッ! ハティッ!」

 

ロキの声に呼応するかのようにそれらは天に向かって吠えた。

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

 

夜空の雲が晴れ、金色に輝く満月が姿を現す。月の光に照らされて、二匹の巨大な獣―――狼が咆哮をあげていた。・・・・・フェンリルだった。三匹となったフェンリルを従え、ロキが言う。

 

「ヤルンヴィドに住まう巨人族の女を狼に変えて、フェンリルと交じらわせた。その結果生まれたのがこの二匹だ。親よりスペックは劣るが、牙は健在だ。十分に神、そして貴殿等を葬られるだろう」

 

さらに大トリとばかりの巨大な魔方陣からは・・・・・。

 

『がはははははっ! 来てやったぞ、ロキィィィィィッ!!!』

 

背中に翼を生やし、蛇の下半身を持った青い肌の巨人。この存在にDすら驚きを隠せなかった。

 

「・・・・・魔物、王、テュポーン」

 

『おやおや、懐かしいですね・・・・・』

 

Dの内に宿る一体のドラゴンが吐露した。ヴァーリやクロウ・クルワッハは驚きはしなかったが楽し気に笑みを浮かべていた。

 

「テュポーン、変更だ。赤龍帝でなくそこにいるクロウ・クルワッハと戦ってほしい」

 

『ほう、かの邪龍とか! いいだろう。かの天龍と戦える機会だから協力を承諾したが・・・なんだ、白龍皇もいるではないか! ふむ・・・何やら懐かしい気配もあるではないか』

 

大きな目でギョロッとDを注視するテュポーン。

 

「ふふふ、神だけでなく魔物の王とも戦えるとはDの誘いに乗って正解だったッ」

 

「クロウ・クルワッハ。独り占めは頂けないぞ。私も戦うさ」

 

『俺はどちらでも構わないぞ! いやむしろ纏めて相手になってやる!』

 

その言葉に二人はテュポーンを見た後、互いに顔を見合わせた。

 

「だ、そうだがどうするクロウ・クルワッハ」

 

「面白くはあるが・・・・・」

 

ロキが自身の影から数多の蛇の体躯をした巨大なドラゴンを出し始めた。

 

「ミドガルズオルムも量産していたかッ!」

 

憎々しげに吐いたタンニーンほどのサイズのドラゴンが10匹が現れた。さすがに動かねばいかないと腰を上げたDは漆黒や深緑、深紅、紫、群青色の魔方陣を展開して・・・・・ドライグ以外のうちに宿る全ての邪龍を召喚した。

 

「Dも本腰を入れる気になったようだ。早い者勝ちといこう」

 

「わかった」

 

話し合いを終えて、二人はテュポーンに挑みかかった。

 

『お久しぶりですねぇ。相変わらず元気なようで』

 

『戦っている最中に話しかけてくるではないわラードゥン! 討伐されたと聞いていたが復活していたか!』

 

『ええ、この者の力によって。ですが、今は敵対しているのでお話はまた今度にしましょう。私も久しく動きますので』

 

『近い内に必ず会いに行くでな! ぬおおおおりゃあああー!!』

 

樹木が身体のドラゴンとテュポーンに関係がある会話があったが、今はそれどころではないこと。浅黒い肌に銀の瞳を持つ巨人型のドラゴンも戦意と狂喜の光を瞳に孕ませ、哄笑をあげながらテュポーンに殴りかかった!

 

『俺も交ぜろやっ!!』

 

『何人でも来い! 全員纏めて相手になってやろう!』

 

巨体が空を飛ぶ。翼を羽ばたき、空中に飛びながらテュポーンが上空の天候を操作して、局地的な雷雲を作り出し、二人と一匹に極大の稲妻を浴びせようとする。ヴァーリとクロウ・クルワッハは避け、巨人型のドラゴン、『大罪の暴龍(クライム・フォース・ドラゴン)』グレンデルは避けることすらせずその稲妻を浴びるが―――巨体にスパークが走るだけで、ほぼノーダメージだった。お返しとばかりグレンデルが腹部を大きく膨張させて、口から火炎球を何度も吐き出していく。テュポーンはそれを強風で消し去るが、ヴァーリとクロウ・クルワッハがその隙に莫大なオーラをぶつけてきた。

 

『ぬぐぅぅぅぅぅぅっ! 何たる威力ッ!』

 

視点を変えれば腹部が黄銅色、漆黒の鱗に覆われた巨大な蛇型のドラゴン、外法の死龍(アビス・レイジ・ドラゴン)ニーズヘッグが同じ体系のロキの影から出てきたドラゴンの体に食らいついていた。文字通り捕食しながらだ。

 

≪グヘヘヘヘッ! く、喰う! いっぱい喰う!≫

 

八つの頭を持つ『霊妙を喰らう狂龍(ヴェノム・ブラッド・ドラゴン)』八岐大蛇もまたDの指示に動き、炎を吐いたり、噛みついたり、毒を撒き散らしながら蛇型のドラゴンと戦う。

 

『奴らめ、好き勝手に暴れているな』

 

『大暴れ!』

 

『ヒャッハー! まさに戦争そのものだ!』

 

≪私達もこれから交ざるのだがな≫

 

魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)』アジ・ダハーカの頭の上に乗っている黒い祭服を着た褐色の肌の美青年。その正体は『原初なる晦冥龍(エクリプス・ドラゴン)』アポプス。ロキに対して闇と禁術の魔法を放ち、戦っている他所に。

 

「・・・・・防御」

 

『あの人間達をですね』

 

樹木が身体である『宝樹の護封龍(インソムニアック・ドラゴン)』ラードゥンは邪龍達の余波を受けないよう結界や障壁を張って守る役割に徹する。一方、フェンリルは―――地上にいる兵藤家と式森家、グレモリー眷属、に教会の戦士トリオやヴァーリチームが戦っていた。

 

「こなくそ!」

 

「防御に回ったら負けよ! 攻めて!」

 

美猴とリアスの声。ヴァーリチームもグレモリー眷属達は子フェンリル二匹と死闘を繰り広げ始めていた。

 

「雷光よッ!」

 

カッ ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

バラキエルと朱乃の放つ雷光の十倍以上―――極大とも言える大出力の雷を天から落とし、子フェンリルにぶつけるが―――。

 

二匹は、ダメージを受けても平気な様子で攻撃を再開する。

 

「はあッ!」

 

木場は神速で動き回り、子フェンリルの動きに追いつき、相反する筈の聖と魔の力が宿った剣を振り下ろす。その剣が頭部に突き刺さり、子フェンリルの額から鮮血が噴き出した。

 

「ぐわっ!」

 

その隙に攻撃を加えようとしていた教会の戦士、緑色のメッシュを入れた青髪の少女ゼノヴィアが子フェンリルに前足での反撃を受けて吹き飛ばされていく。鮮血を噴き出す彼女を見てDが頭上に金色の輪っか、背中から生やした金色の十二枚の翼を羽ばたかせ、瞬間移動してゼノヴィアの傍に立つと癒しの力を付与した。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

互いに一瞬だけ目を合わせ、ゼノヴィアは戦線に復帰する。

 

「ギャスパー! やつの視界を奪って! 小猫はその瞬間に仙術での打撃をどこでもいいから入れてちょうだい!」

 

グレモリー眷属の司令塔が叫んだ。体を無数のコウモリと化したギャスパーが子フェンリルの目に集まり、視界を奪う。

 

「少しでもフェンリルの気を断ちます!」

 

「・・・・・フォロー」

 

『Boost! Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!』

 

『Transfer!』

 

倍加した力を譲渡された小猫は目を丸くし、片手に仙術の力を込めた拳を握っているDを見上げた。

 

「・・・・・ここ、有効」

 

「・・・・・はいっ」

 

腹部、それも急所と思しき場所に二人の拳が一発入った。

 

ズドンッ!!!

 

高く子フェンリルが地面から浮いたところを狙うコカビエルの巨大な光の槍。

 

「ぬぅんっ!!」

 

「合わせる!」

 

バラキエルの雷光が投げ放たれたコカビエルの槍に纏い、さらに加速した状態で子フェンリルに直撃した。

 

「・・・・・学ぶ、リアス、朱乃」

 

「「っ!?」」

 

いつぶりか呼んでくれた幼馴染みの男に現在戦闘中であるのに心が歓喜に震えてしまった二人。提案を持ち掛けられると二人は喜んで了承した。

 

「・・・・・やる」

 

「ええっ!!」

 

「はいっ!」

 

Dの莫大な魔力にリアスの滅びの力と朱乃の雷光がひとつになり、危険極まりない一撃が子フェンリルに放たれた。

 

ドガッ! バリバリガガガガガガドオオオオオオオンッ!!

 

放たれたDの魔力が凶悪なドラゴンの顔と化して、子フェンリルに牙を突き立てたところから滅びの力が纏う雷光が、全身を砕きながら子フェンリルの身体を打ち砕き滅していく。

 

 

一方、兵藤家と式森家の方も。

 

「親父、他の連中もそうだがそんなやわっちぃパンチじゃあこの狼に勝てねぇぞ! もう年なんだから休んでろ!」

 

「黙れっ!」

 

「ほらほら、二人とも全然魔法の威力が足りてないわよ! フェンリルとはいえ、子供のフェンリルを倒せないんじゃあ最高の魔法使いなんて言えないわよ!」

 

「くっ、わかっています!」

 

「僕の全力を見せてあげますよ!」

 

なんとか、というレベルでもう一匹の子フェンリルと戦っていた。誠と一香が主力として戦い、源氏たちは悪戦苦闘しつつ血を流しながら伝説の魔物の子供と奮闘している。

 

「うわ、速すぎるっ!?」

 

「目では捉えきれない生物がこの世にいるなんてっ!」

 

「悠璃、足を停めますよ!」

 

「わかってるけど、こいつすぐに影から抜け出す!」

 

「ぐわっ!」

 

「天王!」

 

「身体は丈夫なので問題ありません。しかし、これが世界の裏・・・超越者たちの戦いがこうも激しいものとは知りませんでした」

 

さらにヴァーリチームの方は。

 

 

「にゃははは♪ 捕獲完了にゃ♪」

 

親フェンリルが黄金の鎖に縛られ、身動きが封じられていた。悲痛な咆哮をあげる親フェンリルの声にロキは聞こえるも、アジ・ダハーカとアポプスの相手で手一杯であった。量産型のミドガルズオルムもタンニーンの火炎で吹っ飛ばされながら、ニーズヘッグと八岐大蛇に倒されていく。フェンリルも子フェンリルだけとなり、ロキの戦力は劣勢となった。

 

「くっ、ここは一度逃げさせてもらう!」

 

邪龍の魔法を掻い潜りながら空高く飛び上がるロキ。

 

「だが、どう足掻こうがお前たちの負けだ! 何せーーー!」

 

我の協力者が既に直接オーディンを狙っているころであるからな!

 

突然、黒い炎に包まれつつ逃走を図ったロキの真上に転移したDが、手に入れたフェンリルの牙を突き立てた。

 

 

アザゼルside

 

「では、わしの話はこれで以上じゃ」

 

日本神話の神々とオーディンの会談は順調に進み、あいつらがロキと戦ってくれたおかげで無事に終わった。あっちではどうなっているのか、こっちからじゃ何も分からないが副総督のシェムハザからの通信じゃあ、匙のやつを戦場へ送ったそうだ。Dやリアス、お堅い天皇家の奴らも誠や一香もいる。ロキが憐れすぎると思う強者たちが揃ってるんだ。絶対に負ける要素はないはずだ。

 

「此度の会談でユグドラシルの情報は有益なものだと思っている。機会があれば直接訪れて見たいですな」

 

「そうすることが可能になるよう、この年寄りの骨身を粉にして実現―――」

 

オーディンの爺さんが最後まで言いきる前にこの部屋の壁、強いては北欧や式森家の防御や結界、障壁などの魔法や術式等が張られている完全防備を嘲笑うかのように貫く何かが、真っ直ぐオーディンを狙って飛んできた! 仲介役としてオーディンの隣にいた俺が手の中で具現化した光の槍を瞬時に振るって弾こうとしたが、俺の光の槍と触れた部分が消滅して勢いが止まらないままオーディンの胸に吸い込まれ―――!

 

カッ! ―――ドスッ!

 

突然、円卓に出現した魔方陣から金色の繭みたいなのが飛び出してきた。だが、俺の光の槍を消滅させたように金色の繭も簡単に貫き、何かに刺さった音がした。よく見れば繭と思しき塊は翼であって・・・・・その翼が光を放ちながら霧散し、身体を張って矢を受け止めたそいつの正体を見て言わずにはいられなかった。

 

「Dッ!!」

 

「・・・・・まだッ!」

 

「っ!?」

 

叫んだ直後。壁の向こうからまた穴を開けながら飛んできた矢が、今度はオーディンではなく日本の神々に向かって貫こうとする。Dはその矢を手刀で叩き落とし、また矢が飛来してくれば誰かを守るために矢を叩き落とす。

 

ドス―――ッ!

 

「ッ・・・・・!」

 

Dの体に二本目の矢が刺さった。そこから赤黒い血が服を汚して・・・待て、にしては最初に刺さった胸の矢を抜かず血を流し続けているのはなんでだ。それにいつもより動きが鈍いしキレがない魔力も使わないのは・・・・・―――まさかっ。

 

「おい、D! まさか、毒を受けているんじゃないだろうな!?」

 

「・・・・・っ」

 

「沈黙は肯定と受け取るぞバカ野郎!」

 

見えないアーチャーに警戒しているDのカバーに入ろうと動く俺より先に動くあいつは、女神の背後の壁から飛び出してきた矢に神速で移動して女神の背中を守った途端。

 

「―――がはっ!!!」

 

ビシッ!

 

口から大量のどす黒い血反吐。そして、Dの顏に亀裂が走った。なんだ、あの亀裂は・・・嫌な予感しかしねぇ。くそ、そう思っていたら三本目の矢がDの脇腹に刺さった!

 

「兵藤一誠!」

 

「むぅ、これ以上は見ていられん!」

 

「すまないが、派手にやらせてもらうぞ堕天使の総督殿」

 

日本神話のある男神が一振りの剣を握り締め、瞑目する。精神を集中しているのは分かるがこの状況でそれは無防備を晒すことに・・・・・。

 

「―――そこか」

 

剣に神力を帯びさせた状態で一点に向かって突いた。

 

ドバァァァァァァァァンッ!!

 

まるで大砲の弾が貫いたように壁に大穴を開けて、外まで斬撃と神力を飛ばした。斬撃の跡はまるでバターを切ったようにあら削ったものではなく、まさしく“斬った”痕跡を残した。塵一つ残さず、丸く斬ったんだ。こんな芸当が出来るこの男神は、須佐之男命は他の神々に劣らない実力を持っていやがるぜ。

 

「・・・・・逃げたか。斬った手応えがあったもの不届き者の顏を見られなかったのが残念だ」

 

「そうかい。さすが武神と呼ばれている神なだけある。だが今は・・・・・」

 

Dの方が問題だ。毒矢を受けたのは確かだが、ドラゴンを毒殺するほどの猛毒は確かにある。恐らくロキが用意したんだろうな。だが、ロキは採石場跡地でDたちと戦っていた。なら、考え得るのはあいつに協力する何者かが毒矢を射抜いたんだろうなくそったれが!!

 

「・・・・・アザ、ゼル・・・ぐうっ!」

 

「どうしたD!」

 

「・・・・・毒・・・魔力・・・・・不安定、乱れ・・・・・がぁぁぁっ!!」

 

―――ッ!!!

 

脳裏にフラッシュバックした昔の記憶。川神院が丸ごと消滅するほどの大爆発の記憶を。それがまた起ころうとしている。顔の罅が首から下まで伸びているようで、それに呼応してDの魔力が奔流と化しながら漏れ出し始めた!

 

「相反する力をグレートレッドの肉体と言う頑強な器にドラゴンの命を脅かす毒のせいで、脆くなって開いた穴に魔力が漏れたことでバランスが崩れたってことか!」

 

「にげ・・・・・ろ・・・・・!」

 

今まで見たことが無いぐらい脂汗を浮かべ、苦痛に顔を歪ませるDを見れば本当にヤバいようだ! Dを中心に溢れ出る魔力がこの高層高級ホテルの天井を貫き、全て吹っ飛ばしてはこのフロアを展望台にしてしまった! その衝撃から障壁を張って身を守るしかできない俺たちもこれ以上ここにいては危険だ!

 

「総督殿、これは一体!」

 

「アザゼル、孫はどうなっておるんじゃ!」

 

「今説明している場合じゃねぇんだがな! Dの中の相反する力のバランスが崩れて、今でもDを体の中から苦しませているんだ! 魔力と闘気が人間と言う器に納まりきれないほど増えながら最終的に周囲を巻き込む爆発を起こす! 前に一度Dはその爆発を起こして死んだんだよ!」

 

表向きはな! さらに詳しく説明している暇はなねぇから質問責めしても答えは受け付けないぞ!

 

「ならば、その魔力と闘気をなくなるまで減らせばどうにかなるのか」

 

「お前―――!」

 

採石場跡地にいるはずのヴァーリがどうしてここにいるんだ、と目を丸くする俺の心情を読んだようにあいつは言った。

 

「アルビオンがドライグからDの状態を訊いたんだ。私の半減なら助かるかもしれないとな」

 

「・・・・・確かに、それならDの魔力と闘気を最終的に減らせることができる。やってくれ」

 

「ああ。私のライバルを自爆何かで死なれてしまうのはもうごめんだからね」

 

純白の鎧を纏い、Dに触れながらヴァーリは半減の力を行使した。何度も何度も半減を繰り返すうちに、亀裂から漏れた魔力が収まり幾分かDの表情が苦痛から和らいだように見える。

 

「天龍を脅かす毒か・・・一体なんだアザゼル」

 

「色々とあるが、サンプルを採取して調べる必要がある。ヴァーリ、ロキの方は?」

 

「Dがフェンリルの牙を突き刺したからな。おそらく死んでいるんじゃないか?」

 

「おい、いくらなんでも殺すなよお前。オーディン、主神として判断はどうする。神殺しの大罪人として罰するか。っと、人じゃなくて龍か」

 

「・・・・・生きていようが死んでいようが、奴が仕出かしたことは許し難いものじゃ。仮に死んでおったとしてもわしは孫を責めん。わしや日本神話の神々を守ってくれたからの」

 

そうかい。そう言ってくれるとこっちは助かるぜ。

 

「がは・・・っ!! があああーっっっ!!?」

 

「・・・・・アザゼル、さすがに毒までは半減できない。加えて言わせてもらえるなら、身体に回っている毒のせいか半減の力がうまく発動できないぞ」

 

吐血するDを見てヴァーリはそう言った。

 

「なんだそりゃあ。ロキめ、とんでもない毒を用意してくれやがって・・・!」

 

って、待て・・・! Dの身体からさらに魔力、さらに闘気まで入り乱れながら増幅したー!? 障壁や結界を張って身を守る俺たちがいよいよ押され、中には吹っ飛ばされた日本の神がいた。

 

「なんだ、この魔力量! 完全に俺たちより凌駕してるじゃねぇかよ!」

 

「グレートレッドの肉体なんだ。いままで相反する力を宿しておいて大爆発が起きなかったのは、Dの器の容量が魔王より越えて神に匹敵して、さらに今の今まで増えていたのがダムの放水のごとく溢れ出ているのがこれだろう」

 

「ぬかった! 人間の頃より頑丈な肉体だから相反する力に耐えることができる先入観が、ここで裏目に出るとは!」

 

なんで今まで気づかなかったんだ! 魔力と闘気がDの中でずっと人間の頃より増えていることを! Dがコントロールしていたんじゃない。いや、コントロールできているだろうが本人すら把握できていなかった想像以上の容量! ここに来て器のあいつを苦しませるなんて誰が予想できたか!

 

「ぐっ、ああああああああああああー!!」

 

Dが立ち上がり両手に魔力と闘気の光を纏い、それをひとつに―――感卦法か!? この状況でできるのかD! 信じられないものを見る目で見開いた俺の目の前で、それを実行するDが相反する力を融合させる・・・・・!

 

バチッ!

 

失敗した! 魔力が乱れているからかちくしょうめ! と愚痴を零し何もできないでいる俺の目の前で、Dの体が限界に近づいたのか、全身を真っ赤に染めた服から鮮血を迸らせる!

 

「っ・・・また、お前を見殺しするしかないのかよ―――!!!」

 

対策はしていた、万が一の為に。だが、俺の予想を超える莫大なオーラにこれは失敗するとすぐに頭に浮かんでしまった時点で、俺は棒立ちしているしかできなかった。

 

「・・・・・ッ!!!」

 

突然、Dが空を飛び出した! どこへ―――! 

 

「まさか、海へ? 私たちを巻き込まないために一人だけ・・・・・」

 

「ま、待ちなさい兵藤一誠! 早まってはいけない!」

 

もう既に空の彼方まで行ってしまっている。もう誰の声も聞こえない。もうDは誰にも迷惑をかけない場所で死を迎えようとして・・・・・。

 

「アザゼル、Dから伝言だ」

 

「・・・・・」

 

ドライグがアルビオンを介して伝えるDの伝言に無気力気味に耳を傾けた。

 

『「アザゼル、最後の最後、二度も迷かけてごめん」』

 

「・・・・・バカ野郎ッ」

 

音より速く海の方で超巨大な光の柱が夜天に昇った。ここからでも感じる莫大な魔力。おそらくここ東京をまるごと巻き込みかねない広範囲の威力があるかもしれない。あいつは、Dは己の命ひとつで自分より他者を優先して多くの人間を守った。だがな・・・・・言ったはずだぞ! お前の死で影響する奴らがいるってことをよ・・・・・っ!

 

「・・・アザゼル、アレを見ろ」

 

ヴァーリの指摘に下に落としていた視線を上げると、あいつの死に場所である海上の空間に歪みが生じた。歪みは広がりを見せて、大きな穴の向こうに次元の狭間の空間である、万華鏡の中を覗いた様な空間が確認できた。空間が歪み広がった穴の原因が何なのか、そこから巨大な赤い龍が出てきたことで俺は目を丸くした。

 

「グレートレッド? なんでこのタイミングで、現世に現れた・・・?」

 

「Dが今解き放たれた莫大な力、グレートレッドとオーフィスの力に反応して引き寄せられたのかもしれないな」

 

何をするつもりか、俺たちは見守るしかない。あの赤い龍は興味を持っているのか天を衝く光の柱の周囲を何周か回るそんな時だった―――! 夜空を照らさんばかりの空を覆う巨大な翡翠の見たことが無い魔法陣が突如浮かび上がり、扉のように開きだすとそこから今まで生きていた中で見たことが無い数のドラゴン達が出てきてDを死に至らしめた暴走した闘気と魔力に群がり始めやがった!

 

「なんだ、あの数のドラゴン!?」

 

「Dの暴走した力を・・・・・喰らっている?」

 

そうだ、我先と光の柱に顔を突っ込んでは口の中に入った食いもんを咀嚼する仕草を窺わせてくれる。中には食ったドラゴンの体が大きく成長するか、進化をしているみたいに変化が起きていた。それだけでも信じられない光景なのにさらに驚くことが起きた。未だ開きっぱなしの魔方陣からミドガルズオルムを軽く超える巨大すぎるドラゴンまで数匹も出てきては、天を衝く光を遮り大きな口を開けて水を飲むか、口から突き出した舌でストローのように吸引するごとく受け止める光景に俺たちは開いた口が塞がらない。

 

やがてDの命と引き換えにした力の暴走の光が収まり、消失するとドラゴン達も翡翠の魔方陣の奥へと戻りいなくなっていく。その中の一匹が他のドラゴンの動きに反して・・・・・こっちに向かって来やがった!

 

「・・・・・こいつは、天龍を越えていやがるな」

 

「アルビオン、お前もそう思うか?」

 

『ああ、生前の私でも歯牙にもかけられないドラゴンたちばかりかもしれない』

 

湖色の東洋の龍が俺たちを見下ろし、視線をヴァーリに向けた。いや、アルビオンを視ているのか?

 

{この世界の赤龍帝の番、白龍皇よ。原初龍からお前たちに贈り物}

 

初めて聞く声に口から出した紅白の結晶体。ヴァーリが受け取る様子を見た後に踵を返して翡翠の魔方陣の扉の奥へと消えていき、全てのドラゴンがこの世界からいなくなった後に空を覆うほどの広大な魔方陣が消失した。

 

「この世界のDの番? アザゼル、もしかして・・・・・」

 

俺は無言で小さく頷いた。まさかこんな形で接触して来るとは思わなかったな。―――Dが渡してくれたあるファイルに記されていた名前の人物と・・・・・。だが、肝心のDはもう・・・・・。

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