ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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英雄派

一足早く二条城の門の前に着き近づくと勝手に門が開いた。開いた門を潜り二条城の敷地内を進み、二の丸庭園を抜け、本丸御殿を囲む水堀が見えてくる。本丸御殿に続く『櫓門』を潜った先に―――古い日本家屋が立ち並ぶ場所にたどり着いた。それらがライトに当てられて闇夜の世界でも映えていた。

 

「いるんだろ。出てこいよ」

 

周囲に聞こえる声量で話しかける誠。少ししてそれに呼応するかのように庭園や建物のあちらこちらの陰から姿を見せた。

 

「久しぶりですね、兵藤誠さん。そして始めまして兵藤一香さん」

 

あいさつをくれたのは学生服を着た黒髪の青年だった。学生服の上から中国民族の衣装のひとつ漢服らしきものを羽織っていた。手には槍を持っている。オーラを発していることからただの槍ではないことを、力の大会で一度、彼と槍と拳を交えたことがある誠が知っている。青年の周囲には似たような学生服を着た複数人もいる。

 

「単刀直入に言うが、八坂さんを返してもらおうか」

 

誠の視線の先には着物姿の綺麗な女性が佇んでいる。頭部に狐の耳、腰に複数の尻尾も生えている。黒髪の青年は槍の柄を肩にトントンとしながら答え始めた。

 

「ええ。構わないですよ。ただし、先に俺たちを倒してからでも遅くはないでしょう」

 

青年はそう言うと、槍の石突で地面をトンッと叩く。刹那―――。

 

「う・・・・・うぅぅ、うあああああああああああっ!」

 

八坂が悲鳴をあげはじめ、様子が激変していく。身体が光り輝き、その姿を徐々に変貌させていった。身体がどんどん大きくなっていって、九つの尻尾も膨れあがっていく。

 

オオォォォォォォォンッ!

 

夜空に向かって咆哮を上げる巨大な金色の獣―――。誠の前に現れたのは、巨大な狐の妖怪だった。

 

伝説の妖怪―――九尾の狐。フェンリルの容姿もすらりとして獣らしい美しいフォルムであったが、九尾の八坂の真の姿も負けないぐらい見事であったため、誠と一香は一瞬だけ見惚れた。

 

「実験って、なーにするつもりなんだ? 各所のパワースポットの力と八坂姫を使って何かするつもりだというぐらい、こっちは理解しているぞ」

 

「そうでしたか。次元の狭間の疑似京都の空間も見つけたことも、流石は兵藤家と式森家といったところでしょう。だが、俺たちがしようとしている事まではわからないなら教えましょうか」

 

制服の上にローブを羽織った青年がひとつの魔方陣からある人物を召喚した。誠の目が怪訝に細めて、一香は思考が停止しかけた。

 

「この子はごく最近回収したある人物の腕の血肉、そして内包されていた龍王数匹分の魔力に匹敵する魔力から新たに作り出したドラゴン。最初は俺たちの間で意見が分かれたんだ。この腕の魔力を利用してグレートレッドを呼ぶか、血肉と魔力を素材に新しい『真龍』と『龍神』の力を併せ持つ存在を創るかと」

 

「「・・・・・っ!?」」

 

「グレートレッドに関してはあなたの息子、Dが自身で証明してくれた。あの莫大な真龍と龍神の力を解き放たれると否が応でも引き寄せられることをね。ならば、その力を持つ新たな存在を創り、俺たちの支配下に置いて利用できれば色々と出来るんじゃないかと意見が多くてね。それを実行して生まれたのがこの子だ」

 

青年が語り続ける言葉に思考が停止しかけた誠と一香は、ローブを羽織った青年の隣に立つおにぎりを食べてる子供を凝視し続けた。彼の青年の言葉が事実であれば、その腕は―――!

 

「お前・・・・・その腕、俺の息子の遺体を弄び、利用するために創ったとよくも俺たちの目の前で、言ってくれるなッッッ」

 

「親として、あなたたちを許せないわ!!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

二条城が激しい震動でふたりの怒りに呼応して震え出す。青年たちはその揺れに襲われながらも誠と一香と対峙する。青年は涼しい顔でそんな誠に言った。

 

「だが、同じ血肉で瓜二つのあなた方の息子が生まれ変わった道理ではないだろうか?」

 

「っ、黙れ!」

 

地面を凹ませる脚力で一気に飛び出し、突き出した誠の拳を槍の柄で受け止める青年と鍔迫り合う。

 

「動きが単調ですよ」

 

「その単調な動きに押されている奴の言葉とは思えないな!」

 

「いえいえ、まだこれからですよ」

 

カッ!!

 

眩い光が放ち始めた。誠が横目で見ればローブを羽織った魔法使い風の青年が手を突き出した。青年の周囲に各種様々な紋様の魔方陣が縦横無尽に出現した。魔方陣に羅列されている数字や魔術文字らしきものが物凄い勢いで動き回り、御大将の足元に巨大な魔方陣が展開した。

 

オォォオオォォォォォンッ。

 

九尾の御大将が雄叫びを挙げる。相貌が大きく見開いて危険な色を含み始め、全身の金毛が逆立った。

 

「止める!」

 

魔方陣を出現させる一香に反応して魔法使いの青年を守る風に子供が前に出た。

 

「一誠、どきなさいっ」

 

「いや、おかあさんを守る」

 

「・・・おかあさん?」

 

魔法使いの青年をおかあさんと呼び、黒い異形の姿に変貌を遂げる子供に飛び掛かられて、魔法を中断せざるを得なく触れないよう回避する。まさか、相手の体力と魔力まで奪う両家にとって禁忌の力まで発現していたとは予想外すぎることであった。

 

「今回の計画は、グレートレッドを呼ぶ実験。そして兵藤家と式森家、相反する力の源である二つの血の入手が目的。今頃、大量に手に入れていると思いますよ」

 

「―――まさか、最初から私たちを誘き寄せる為にこんなことを!」

 

「いや、後者は優先度が低い。しかし、魔人の力は興味があるのでね。今回の実験のついでに兵藤家と式森家の血を手に入れてみようという話も出たまでですよ。端的に言えばDという男は俺たちにとって興味の宝箱のような存在だった」

 

誠の拳を反らし、その返しに振り上げた穂先を躱した誠の怒濤の連続パンチを、回転させる槍の柄で防ぐ青年。

 

「彼の腕を幸運にも手に入れた俺たちは今回の実験に乗り出したんですよ。D.D.を創ったので、次はもう一度グレートレッドを呼び、捕まえてみようと」

 

「させるかそんなこと!」

 

何が何でも止めなければならないし、D.D.をこれ以上利用させないため、目の前の敵を倒し八坂姫を救わなければならない。拳を突き出し殴る最中に青年の隙を探し、作って生まれた隙を突いて渾身の一撃を青年の腹部に突き刺した。

 

「ぐっ・・・!!」

 

「あ、おとうさんをイジメるな!」

 

D.D.が一香から離れ誠に飛び掛かった。魔法使い風の青年と魔法・魔術を撃ち合いながら別の術式の魔方陣を展開して、D.D.を幾重の六芒星の結界の中に閉じ込めた。

 

「あう!? うううーッ! 出られないー!!!」

 

「まだ子供なら、その結界から抜け出せないでしょう! ドラゴン専用の封印結界だから脱出はなおさら不可能よ!」

 

「ならば、この槍で解放しよう。ゲオルク!」

 

ゲオルクと呼ばれたのは魔法使いの青年で、槍使いの青年と誠を霧を包み込むとD.D.の目の前で生じた霧から鋭い槍が一香の結界を斬り、D.D.を解放した。

 

「交代だD.D.。あの男と戦ってくれ」

 

「おとうさんを守る!」

 

槍使いと入れ替わり紋様状の黒い翼を広げるD.D.を焦りながら説得する誠。

 

「違う、その男じゃなくて俺がお前のお父さんだ一誠!」

 

「僕はD.D.だよ! おじさんのことなんて知らない!」

 

「し、知らないおじさん・・・・・!」

 

ズゥゥゥゥゥン・・・・・!

 

凄い落ち込みようで四つん這いになってショックを受ける誠。そんな反応をされてさすがに申し訳なくなったのか、トコトコと近づき―――。

 

「えい」

 

「あっ―――!?」

 

別にそうではなく、落ち込んでいる隙を突いて魔人化の姿のままで触れたらどうなるか知っている風に誠の体に触れ、体力を全部奪って見せた。

 

「おとうさん、勝ったよー!」

 

「よくやったD.D.。偉いぞ」

 

「誠ー!? あなた、メンタルが弱すぎるにも大概にしてちょうだいよ!!!」

 

オオオオォォォォォォォンッ!

 

九尾も操り一香に襲わせるゲオルク。身内と救助対象が襲ってくる戦い辛いこの上ない一香は敵と戦いを繰り広げた中、白髪の優男が話しかけた。

 

「そろそろ援軍が来る。撤退をしよう曹操、ゲオルク。用意したアンチモンスターが破竹の勢いで悉く撃破されて、ここ二条城に迫ってきている報告が」

 

「そうか。全盛期、黄金時代から随分と衰退する一方だった天皇家の力はまだ衰えていなかったか。次は当主と戦ってみたいものだね」

 

「個人的には同じ魔法使いとしていい勉強になるばかりで有意義な時間だった。元式森家の当主だった最高の魔法使い、魔女の式森一香と手合わせできただけでもとても貴重だからな。本部に戻ったら吟味しよう」

 

「うー、僕は閉じ込められるばかりだった・・・・・」

 

曹操と呼ばれた槍使いの青年は肩で息をする一香に向かって言った。

 

「兵藤一香。あなたがいる限りこの京都で実験をしようならばすぐに俺たちを見つけ、今回のように短期決戦を仕掛けてくることが分かった。俺たちも少数精鋭な上に大規模な活動も出来ないのでね。兵藤家と式森家を同時に相手しようなど傲慢な考えはない。今回は俺たちのことを知ってもらうあいさつ代わりと八坂姫をお返ししよう」

 

「それだけで見逃してもらえると思っているの? その子供もこっちに渡してもらうわよ」

 

「残念だがそれはできない相談だ。今はまだ成長段階であるが、まだまだ俺たちに協力してもらいたいのでね」

 

霧が発生し出し、曹操一行等を包み込み覆い隠す。

 

「それとアザゼル総督によろしく言ってくれ。D.D.にご飯を食べさせてくれて感謝する、とね」

 

「なっ―――!」

 

九尾を解放し、一香と誠を残して疑似京都から完全にいなくなった曹操たち。その後、遅れて二条城に到着した源氏と和真たちからここで何があったのか一香に問いかけたら。

 

「和真、あなたたち遅すぎるわよ! 何ちんたら来てるの!」

 

「・・・見つけ次第、私たちを召喚する手筈だったでしょう姉上」

 

「そうしたかったけれど、相手が相手で数が多すぎると逆に邪魔だったのよ。息子の分身体みたいな子供がいた上に、禁忌の力を使って見せたから誠もあんな無様になっちゃったもの。喚べれるわけでしょうが」

 

ひどい・・・と一人では起き上がれない未だ倒れたまま涙を流す誠を見て、Dの分身体がいたと話に源氏と和真は驚愕で瞠目した。

 

「孫の・・・分身体、だと・・・・・」

 

「信じられない、既にあの子は死んでいるのにどうや(ゲシッ!)ぐっ!?」

 

「その辺について、アザゼルも交えて話すわ。今はこっちが優先でしょ」

 

九尾の狐を指しつつDを死人扱いした弟に蹴りながら言う一香。天皇家の二人の当主も八坂姫を見てすぐ行動を開始した。

 

 

 

そして―――。

 

 

 

「それじゃあアザゼル・・・・・色々と教えてくれるわよねぇ? 息子の分身体D.D.のことで隠している事、洗いざらい吐いてもらうわ」

 

私はものすごーく不機嫌で怒っています。逃げたらぜーったいゆるしません。と笑っているのに笑っていない一香に問い詰められ、初めて招かれた兵藤家の奥ノ間で可哀想なぐらい怯えるアザゼルは弁解をするのに必死で、同じ空間に居座っている兵藤家と式森家の者たちにも知っていることを全部教えた。逆に教えてほしいことを教えてもらったので、二人はD.D.の存在を見解できた。

 

「今だ死体すら見つからなかった理由は、肉体が爆発でバラバラに吹き飛んだからか。となると他の体の一部がまだ海にあるのか・・・・・?」

 

「もう沈んで魚に食べられていると思うけれど、ドラゴンの肉を食べて魚に影響が出るの?」

 

「そんな実験をしたことが無いから何も言えない。もしも仮に影響出るなら、その魚が変異して人間を襲うまでの凶暴化になる可能性がある。昔からドラゴンの血や肉は人間に恩恵や呪いを与えるぐらい強い影響力があるからな。もうその腕だけしかないと願うばかりだ」

 

敵の中に『真龍』と『龍神』の力を持つ成長段階の子供がいる事実にアザゼルたちは曹操と名乗る人間を筆頭の集団―――『英雄派』に強い危険視をした。当然その話はグレモリー眷属とシトリー眷属、冥界や天界、その他諸々の人物たちにも伝わり警戒心を抱かせた。

 

「どうする源氏殿。Dの状態はまだ断定できないが、まだ行方不明にしておくか? それとももう死亡扱いにするか? これ以上、あいつの遺体を探すにも探しようが無いぞ。現に一部がテロリスト集団の手に渡って悪用されちまったんだからな」

 

「・・・・・」

 

瞑目して沈黙を貫いていた源氏は訊いた。

 

「二度目は無いと思うか」

 

「神でもわからないことだが、毒を受けてしまった上にあの爆発の規模。今回ばかりは・・・・・な」

 

「・・・・・そうか」

 

数日後・・・・・日本全土に一人のトレーナーの葬儀が行われたニュースが報じられた。

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