『!!?』
肉体と光が結界の中で一つにする最中に一本の槍が光速で飛んできて貫いた。結界は崩壊し、光は消失、コースに落ちた肉体の胸部は大きく穴が出来て大量の血が芝を赤く染めた。
「トレーナーァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
「いやぁあああああああああああああああああああ!!!」
ウマ娘達が悲鳴を上げて肉体に駆け寄る。アザゼルたちはコースに刺さる神聖なオーラを放つ槍の下に現れる、不自然に発生した濃霧から現れる3人を激しく睨んだ。
「てめぇら!!!」
「彼の復活は兵藤家と式森家だけが困るわけじゃない。我々のような者達にとっても、彼が甦ると困るので処理させてもらった。相手がドラゴンであろうと魂の状態ならば、この槍で殺せる」
英雄派―――曹操が掴み持った聖槍の柄を肩にトントンと叩きながら語る。
「よくも息子を・・・・・一誠を、私の目の前で殺したわね・・・・・っ」
「彼はすでに亡き者ですよ兵藤一香。死人を殺したところで、っと」
高密度の魔力で具現化された光の槍の投擲に反応する曹操は、光の槍を消し去った黒い異形と化したD.D.に守られた。
「・・・・・あれが、Dの分身体か!」
「初めて見るけれど本当に本物にそっくりね。しかもあの闇の力まで引き継いでしまうなんて!」
「戦い辛いのです・・・・・」
「確かに・・・・・」
「だが、やるっきゃないだろ! あいつはDじゃねぇんだからよ!」
刃狗チームが怒りを露にしながらも冷静に英雄派を見据える。対して曹操達は霧に包まれかけていた。
「申し訳ないがこちらはやることは済んだ。幾瀬鳶雄達と戦ってもこれ以上の利はないだろうジーク?」
「ああ、その通りだ。転生悪魔として復活する可能性も考慮して、オリジナルの死体もすでに回収済みだ。これでD.D.をさらに成長させることが出来るだろうね」
ウマ娘達が囲んでいた肉体がいつの間にか消失していて、曹操たちもアジトに転移して戻るだけ―――の筈だった。赤い魔法陣がひとつ浮かび上がり、そこから金色の十二枚の翼が刃みたいに硬質化した状態でジークフリートに伸びた。
「なっ!?」
「これは・・・・・!」
曹操が槍を激しく回して弾き、いなし、躱し、防ぐも、12と言う数の物量に押し負ける。槍の隙間を縫うようにすり抜け曹操の身体を深々と貫き、片目を奪った。
「お父さん!!? よくもお父さんを!!」
「待てD.D.!」
ジークフリートの制止を無視し怒りで飛び出すD.D.の目の前で浮かぶ翼の中心から眩い閃光が迸り、聖槍によって消滅させられたと思われた人型の光が、何事もなかった如くその場に立っていて―――ぎょろりと凶暴な双眸が開眼して、開きだした口から咆哮が放たれた。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!!!
「うわぁっ!?」
遠くの木々が揺れるほどの衝撃波が伴った咆哮で、ゲオルクの霧とD.D.が吹き飛ばされた。その後に別の赤い魔法陣が浮かび上がるとそこから確保したはずのDの肉体が出てきた。その肉体がD.D.のように黒い異形と化して曹操達を睨んだ異常に曹操とジークフリートは異様な物を見る目をする。
「―――魂だけの状態で、己が肉体を!? 魂が無い肉体が闇の力を解放するだと! なんだ、この異常な現象は!?」
闇が光に衝きだした手の中で黒いオーラを集束した。光も同じように闇へ突き出した手に白いオーラを集束。二つのオーラが一つに混じり、一つの輝きに放つそれを豆粒まで圧縮したのを見て背筋がゾッとするアザゼルは嫌な予感しかしなかった。
「っっっ!? ラヴィニア、一香ァ!!! 全力全開で学園の外にまで破壊の余波を漏らさない防御結界を張れ!! あいつは、意図的に禁忌の力を解放するつもりだ!! 東京が滅びかねないぞ!!」
「わ、わかった!?」
「わかったのです!」
アザゼルからの疾呼に二人は瞬時に全力の結界とぶ厚い氷のドームを張り、ウマ娘達を守るために一香は全員を一ヵ所に転移魔方陣で集め、さらに結界を張った。
「ゲオルク!」
あれは危険すぎると曹操たちも警戒している。撤退するつもりでこの場にいない霧を操る者の名を告げた曹操の目の前に豆粒の光が突如現れた。
「≪シね≫」
「「「―――!!!」」」
次の瞬間。日本の海域で発生した巨大な光の柱と酷似した光柱がトレセン学園内で発生した。Dが数年かけて創った特殊な道具が消失する威力のエネルギーと衝撃が一塊になっているアザゼルたちの結界にも巻き込む。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・・!!!
「「「きゃああああああああああああああああ!?」」」
「くうううううううううう!!?」
「っ・・・・・!!!」
「ぐっ・・・!! これが、禁忌の力っ・・・・・! あいつらが昔から忌避するのも無理がねぇ破壊力だ・・・・・!」
「まったく、遅れて合流した矢先にとんでもない経験と体験を巻き込まれることになろうとはね」
「こいつは、神に匹敵する力じゃねぇかい」
いつの間にかメフィスト・フェレスと闘戦勝仏までがいて、アザゼルと一香とラヴィニアは驚く暇もなく一緒に結界の維持を専念する。しかし五人の魔法と仙術でも結界全体に罅が入った。
ビシビシビシッ!!!
「これ以上は防ぎきれないのです・・・・・!」
「皆を安全な場所に転移させたいけれどっ、学園の外を守る結界に全魔力を使い切る勢いでその余裕がないわ・・・・・!」
「私と闘戦勝仏殿も手が足りないね」
「とんでもねぇ力だよぃ」
「クソッタレー!!!」
荒れ狂うように迸りながら相反する莫大なエネルギーの奔流の渦中に閉じ込められるアザゼル達。とうとう結界の全体に罅が広がり、もう間もなく結界が破砕してアザゼル達も莫大なエネルギーの奔流に呑み込まれる―――全員死を覚悟、迫りくる死の恐怖から目を硬く閉じた。
カッ!!!
「―――まーったく、何がどうなってんだよ」
「御覧の通りかと」
「いやいや、何でこうなるんだって言いたいのさ」
「一先ず場の収拾が優先ですご主人様」
突如、男女の声が聞こえた。何故か凄く聞き覚えがある似た声音であって、アザゼル達を消し去らんとしていたエネルギーの奔流が急に納まり出した。唖然とする一同の目の前に―――真紅の長髪の男性とメイド服を着た銀髪の女性が結界の外に佇んでいたのだった。同時に実寸大のトレーニングコースが一瞬の眩い閃光の後に、壊れる前の状態に巻き戻しされたかのように元に戻ったのであった。
「これでよしと」
軽くそう言う男の手の中にはバスケットボールほどの大きさの光る玉が持っていた。それが相反する気と魔力の力なのだと察したアザゼルの目の前で、地面に横たわる真紅の男の身体に押し付けた。
「お、おいっ!?」
「大丈夫大丈夫、放った力の一部を戻しているだけだ。じゃなきゃ、こいつは死ぬぞ」
「いや、それも心配しているがお前は、お前達は一体何なんだ!? ―――何でDとリーラが二人もいる!?」
激しく動揺するアザゼルの心情は一香達も同様で、瓜二つな二人に全員は自分の目を疑った。対して真紅と銀髪の男女は表情を変えず、男が口元に人差し指を立てた。
「俺のことは内緒にしてくれアザゼルのおじさん、メフィストさんにお猿のお爺ちゃん」
「・・・・・お前、まさかっ」
「おっと、それ以上言うなよ。リゼヴィムが動いてしまうからな」
「っ・・・・・」
アザゼル達の中で一部の者だけが知るその名に、誰も追求できなかった。理解できないものが殆どで当人達の会話の成り行きを見守るしかなかった。
「ん、ちゃんと伝わっているようだなその反応を見る限りは。だけど問題があるようだな」
地面や空中に数多の魔方陣から転移した兵藤家と式森家、死神達が現れた。
「・・・・・テロリストのD.D.か」
「ディーツー? 誰のことだか勘違いしているぞお爺ちゃん」
「・・・・・」
「しかもおかしなことに死神と現れるなんてどういう状況なのかわからねー。アザゼルのおじさん、簡潔に教えてくれ」
「お前の側にいるD・・・兵藤一誠が相反する力を海上で解き放つことがあって、また死んだと思っていたんだが実は生きていたことに気付いた兵藤家と式森家が、兵藤一誠をコキュートスに封印しようと躍起になってんだよ」
マジか、と目を見開く男と厳しく目を細めるメイドは兵藤家と式森家+αにDが危ういことを察したのは言うまでもない。
「うーん、そういうことか。虫の知らせというか、妙に胸騒ぎしたから顔を出したらこれか」
「連れて帰りますか。この子にとってこの世界で暮らすにはとても厳しい状況になっているようですし」
メイドの発言にハッと我に返る夏梅達。
「ちょっと、それはダメよ! 英雄派にDを渡さないわ! というかリーラさんってメイドは私達というよりDのご主人様じゃなかったの? 味方じゃなかったの?」
グリフォンを真の姿に変えながら臨戦態勢の構えを取る夏梅の発言から、謎の男女は夏梅達にとって違った反応を示す。
「・・・・・ええ? まさか俺、英雄派の構成員と思われてる?」
「おそらくですが、この子とあなたと勘違いしてしまうほど瓜二つな存在が英雄派にいると思われます」
「あー、D.D.って名前の奴がそれか」
ポンと手を叩いて納得する様にアザゼルは腑に落ちた。
「夏梅、あいつらの邪魔だけはするな」
「総督!?」
「アザゼルさん、友達を英雄派に引き渡せって言うなら納得できませんよ」
「私もトビーに同感なのですよ」
鳶雄、ラヴィニアがアザゼルの真意を理解できないまま反して男女に攻撃する姿勢を解かないまま、兵藤家と式森家、死神達にも警戒する。
「・・・・・テロリストの手に渡さん」
「我々の血の力を奪われては本末転倒だ。コキュートスに封印しない限り日本は常に核爆発を抱える危険性を孕むようなものだ」
片や友人、片や国のため・・・・・男は未だに動かない男に目を配り、次にアザゼルへ目を向けた。
「こいつ、結構苦労人になってないか?」
「そりゃあな。兵藤家の汚点と黒歴史の尻拭いしてたほどだからな。お前達は知らないだろうが、この学校で兵藤家のクソガキ共が四年以上も傍若無人、傲慢、学校の内外で女相手に強姦と好き放題やりたい放題してた事をずーっと気付かずにいたから、この学校の警備員として働いていた兵藤一誠が実の祖父と叔父に向かって無能って言うほどだぞ」
「「・・・・・」」
メイドだけでなく男までもが源氏と和真に対して厳しい目つきを向けた時、死神達が襲い掛かってきた。
「お爺ちゃん達、それはないだろって・・・・・もう話す暇もなくなってきたか」
「どうやらそのようですね」
襲ってくる死神を横凪ぎに空気を引っ掻くように振るって一拍後、死神達の身体が切り刻まれて消滅を確認する暇もなく、蒼夜の空から白い閃光が男に強襲した。既に気付いていたかのようにひょいっと軽く躱して白い光に向かって薄く口端を吊り上げた。
「ヴァーリ!」
「アザゼル、状況はいまいち把握できていないが、倒しても構わない相手かな?」
青い翼を伸ばす白い龍を模した全身型鎧を身に包むヴァーリ、遅れてクロウ・クルワッハにオーフィスまで現れた後。光が幾何学的な円陣を描き、魔法陣からリアスとソーナ、それぞれ二人の眷族達もが現れた。
「―――なに、この状況ッ? Dが生きて・・・・・?」
「はは、懐かしい顔ぶれが揃ったな」
「ええ、まだ若い頃の皆様ですね。そして成長途中の未熟者のままだった頃でもあります」
メイドがそう言いながらDを抱き上げ夏梅の下へと運んだ。
「この子のことをよろしくお願いします」
「え、えっと・・・・・わかりました。うわ、重っ」
「―――んん」
大の大人を支えきれず地面にDを落としかけた夏梅の腕の中に納まった拍子にDが声を漏らした。男女にはしっかり聞こえてDの顔を覗き込むと、閉じていた瞼が濡れ羽色と金色のオッドアイを開いた。
「・・・・・」
「よぉ、寝坊助。ようやく起きたか」
「・・・・・デジャブ」
「そりゃこっちの台詞と気持ちだわな」
「お久し振りでございます」
「・・・・・なんで?」
「お前のことが急に心配になって来たんだ。もう帰るがな」
そう言って男が魔方陣で召喚した大剣を空に向かって鋭く切ると、真っ二つに裂けた空間にどこか別の部屋の中の光景をD達に窺わせた。そこからひょこっと現れた濡れ羽色の長髪と同じ色の瞳の幼女とオーフィスの目が合って、アザゼル達もそれにはギョッと目を見開いた。
「・・・・・次、必ず会いに行く」
「ああ、いつまでも待っている。あいつ等も首を長くして待っているぞ。その切っ掛けをお前の中に仕込んだから後はお前次第だ一誠」
Dの頭を優しく撫でる男に、どんな心情を抱いているか分からないがDの目尻から一筋の雫を流すので夏梅は目を丸くした。メイドがDの額にキスを落とすと男に腰を抱かれたまま宙へ浮かび上がった。
「今後のこの世界が見物だよアザゼルのおじさん」
「他人事のように言ってくれる。そっちだって似たようなもんだったろうが」
「おや、そうでもないが? とある婚期を逃した堕天使がようやく落ち着いたばかりなんだが」
「なん・・・・・だと・・・・・!?」
アザゼルの返答に満足したか不敵の笑みを浮かべた男は、真紅と銀色の光に包まれメイドと一緒に夜天へと衝く光となって空間の裂け目に飛び込んでアザゼル達一同の目の前から消え去った。空間の裂け目も自然と修復し、完全にこの世界と二人が飛び込んでいった何処かの場所との繋がりが完全に閉じた。
「・・・・・アザゼル、説明してくれるわよね」
少しして、状況の把握の為にアザゼルを追求するリアス達だがアザゼルは拒絶した。
「悪いが大らかに公表できない案件だ。Dが生きていたことに関してなら事情を説明できるが、あの二人に関する情報は俺が死んでも絶対に言うつもりはない。情報が漏れることを阻止するためだ」
「アザゼル、また会える可能性はあるかな?」
「向こうからやってくる可能性はあるはずだヴァーリ」
「そうか。また彼等が来たらすぐに呼んでくれ」
ヴァーリ、クロウ・クルワッハ、オーフィスがどこかへと行ってしまってもアザゼルへの追及の嵐は止まらない。
「だぁー! 喧しいぞお前ら!? Dの奴は生きているんだからそれでいいだろ!? 俺はこれからあそこに突っ立ってる日本のトップ二人を説得しなくちゃならないんだから黙ってろ! わかったな!?」
「・・・・・堕天使の長が我々に説得などできるものか」
「言ってくれるじゃねぇかガキが。こっちはお前が絶対に頭が上がらず、Dの事を話せば喜んで協力してくれる神々と接点ある事を忘れてねぇだろうなぁー?」
「・・・・・」
「この国の神に逆らうことは絶対に許されない兵藤家のお堅い当主様は、神に逆らえるか楽しく見物にさせてもらうからな?」
「式森家に関しては私に任せてくれたまえ総督殿。なーに、他の魔法協会、組織、他にも様々な魔法使い達に協力してもらうだけさ。君の姉、一香君も息子のためならば喜んで式森家の内側から大暴れしてくれる。そうだろう?」
「ええ、ええ、まったくその通りよ。私の可愛い息子にコキュートスに封印しようなんていい度胸しているじゃな愚弟・・・・・。だったら私があんたをコキュートスに封印してあげましょうか、今すぐにでも」
「・・・・・」
天皇家と言えど人類のみ発揮する権威と権力は、それ以外の超常の存在相手には無力に下がる。よって兵藤家と式森家の天皇家の当主達は、そういった存在の相手から非難の嵐と逆らえない相手からの絶対的な圧力に、兵藤家は神々にリークされていた黒歴史と揉み消されていた犯罪の数々の件を持ち出され・・・・・屈する他なかった事体になるのはもう少し後になる。