ハイスクールD×D忌避されし存在   作:ダーク・シリウス

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捜索! でもあっさり解決しました!

コカビエルを探し求め、町中で捜索するD。教会の刺客も来るかもしれない警戒をしつつ自然体で二十分も歩き回った。コカビエルおろか、はぐれ神父、教会の者は中々見つからずどちらも白昼堂々と町中にいるわけないか、昨日今日、明日の話ではなかったのかもしれない。

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、憐れな私達にお慈悲をぉぉぉぉ!」

 

「ううう、どうしてこうなったのですか・・・・・」

 

 

・・・・・どうやら今日のようだった。そして簡単に見つかった。路頭で祈りを捧げる白ローブの少女の三人。目立つ、凄く目立ってる。

 

何やら相当困っている様だ。通り過ぎる人々も奇異な視線を向けていた。

 

「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ? ああ、パンひとつさえ買えない私達!」

 

「ふん。もとはと言えば、お前が詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」

 

緑色のメッシュを入れた青髪の少女が指差す方に聖人らしきものが描かれた下手な絵画があった。

 

「何を言うの! この絵には聖なるお方が描かれているのよ! 展示会の関係者もそんなことを言っていたわ!」

 

「じゃあ、誰かわかるのか? 私には誰一人脳裏に浮かばない」

 

確かにそれっぽい外国風の人が貧相な服装をして、頭の上に輪っかがあるだけだ。背景では赤子の天使がラッパを持って宙を舞っている。

 

「・・・・・たぶん、ペトロ・・・・・さま?」

 

「ふざけるな。聖ペトロがこんなわけないだろう」

 

「いいえ、こんなのよ! 私にはわかるもん!」

 

「ああ、どうしてこんなのが私のパートナーなんだ・・・・・。主よ、これも試練ですか?」

 

「ちょっと、頭を抱えないでよ。貴方って、沈むときはとことん沈むわよね」

 

「うるさい! これだからプロテスタントは異教徒だというんだ! 我々カトリックと価値観が違う! 聖人をもっと敬え!」

 

「何よ! 古臭いしきたりに縛られてるカトリックの方がおかしいのよ!」

 

「なんだと、異教徒!」

 

「何よ、異教徒!」

 

「二人とも路頭で言い争いは止めなさいっ!!!」

 

「「す、すみません!!」」

 

激しく関わりたくない類いなのだが、あそこまで所属してる教会の名を叫ばれては無視できない。深い溜め息を吐きたい思いで教会の者達に接触した。

 

 

「すみません。本当にありがとうございます。本当に助かりました」

 

「本当ね! 救いの手を指し伸ばす人がいるなんてこれも主のお導きに決まってるわ! 極東も捨てたもんじゃないわね!」

 

「あんな絵画を購入しなければ、こんなことにならなかったんだがな。今回の戦いになんの役に立つのやらまったく」

 

近場のレストランに行かないか、と万札の扇子を見せびらかしながら誘いに空腹に勝てず一時の誘惑に負けてついてきた三人。食べる食べる。三人で六人前を食べたのは本当に圧巻であった。

 

「しかし、私たちに手を指し伸ばした相手が四年前に聖剣使いを二度も倒した堕天使側の者だとはな。私たちに何か用か?」

 

「・・・・・コカビエル」

 

「堕天使側の人が堕天使の幹部を探してるの?」

 

首肯するDは、そっちは? と尋ねた。

 

「私たちはコカビエルに奪われた聖剣を取り戻しにこの地まで来ました。最悪、聖剣を破壊して帰還します」

 

「ちょっとルーラー。私たちの任務を明かしちゃダメじゃないの?」

 

「黙ってください。そもそもあんな任務にも関係無いものを勝手に購入して何とも思っていないのですか?堕天使と戦う前に飢え死にするのが信徒の本懐だと胸を張れるのですかイリナ」

 

長い金髪にアメジストの瞳の少女、ルーラーに叱責を受けたイリナ、栗毛のツインテールの少女がぐうの音も出ず沈黙。

 

「そして彼は堕天使側の赤龍帝。聖剣を奪ったコカビエルを探しているなら聖剣に関して私達に任せる共同戦線を築いた方が任務遂行も早く達成できるでしょう」

 

「理由は異なっているが目的の人物は同じ、か。悪魔に力を借りてはならないが堕天使、それもドラゴンの力は借りるなとも言われてない。ルーラー、彼にも協力してもらうということでいいんだね」

 

「これも主の導きですゼノヴィア。赤龍帝、よろしいですね?」

 

異論はないと首肯する。聖剣をどうこうしろとも命令されていないので、教会に一存するつもりのDはこうして協会と協力することにした。

 

「それでは、今日はこの辺で。あ、私達と合流したい時は近くの公園で毎朝9時までに来てください。食事は本当に感謝します」

 

「ありがとう赤龍帝」

 

「またご馳走してね。明日でもいいから」

 

高い金額を払うことになったが、あの三人に対する貸しを作ったと思って支払うD。もし任務に失敗したら身体を張って散々食べて奢らせた代金分、楽しませてもらおうとも考えたとかなかったとか・・・・・。

 

 

 

 

翌朝。

 

近場の公園に行くと白いローブを着た三人の女性が佇んでいた。

 

「来てくださったのですね。ありがとうございます」

 

「早速だがこれを着てもらう」

 

三人が着てる白いローブをゼノヴィアがDへ突き出す。受け取って不思議そうに小首を傾げるDをイリナが説明する口調で語った。

 

「実はこれまでも何度もこの極東の島国に私達以外の教会の戦士達が送り込まれてたの。だけど悉く返り討ちに遭い葬られたわ」

 

「それが今回私達の番かもしれないと言うことで、協力者の君にも教会の戦士に装ってもらおうということさ」

 

また教会の戦士に襲い掛かってくる可能性が高く、それがコカビエルなのかは定かではない。他の協力者であれば即座に拘束して居場所を吐かせればいいだけだ。白いローブを身に包んだら、六対十二枚の金色の翼と天使の輪っかを展開するD。

 

「天使・・・・・!」

 

「記録書で見たのと一致するわっ」

 

「金色の翼、熾天使(セラフ)・・・・・?」

 

魔法で翼と輪っかを隠して聖なる巨大な力だけを放つようにすれば、向こうから強力な追っ手を差し向けて来たと思わせることが出来る。そう考えてDは三人に行動を促す目で見つめた。跪いて祈りを捧げていないで動けと。

 

 

ぞくっ。 

 

 

瞬間、全身を寒気が襲った。―――殺気だ。近くからこちらに向けて飛ばされているようだ。

 

「上です!」

 

全員が上空を見上げた時、長剣を構えた白髪少年神父が降ってきた。

 

「神父の一団にご加護あれってね!」

 

ギィィィィン!

 

隠していた翼で受け止めて押し返し、神父少年を見てすぐDが「あっ」と漏らし、フードを外して素顔を見せた。

 

「・・・・・フリード?」

 

「うんげっ!? まさかのあん時のお兄さんかよ! こりゃあやべぇ、やばいっしょっ!」

 

お互い認知してる相手と久し振りの再会に片や不思議と片や会いたくなかった反応を晒す。だが、攻撃をして来たのならば―――。

 

「・・・・・仏の顔は三度まで」

 

「ちょ、待っ―――!」

 

Dを見て逃げ腰になったフリードという少年神父を逃がさんと、一瞬で距離を縮めて地面から浮く勢いでフリードは上空へ殴り飛ばされ、空中で虚空から放たれた鎖に縛られて捕らわれた。

 

「ぐへっ!」

 

「・・・・・捕まえた」

 

「強い、あっという間に」

 

「ドラゴンは数多の力を引き寄せると聞いたが、本当のようだ。ルーラーの選択は間違っていなかったか」

 

「自分でも信じられませんが、これで残りは二つです。フリードからコカビエルの居場所を吐いてもらいましょう」

 

ルーナーの言葉はDも同じ気持ちなので、フリードを尋問する。―――否。

 

「・・・・・」

 

フリードの頭を掴み魔法を駆使する。これまでのフリードの記憶を覗き込もうとするDだったが、条件反射的にその場からルーラー達を翼で包み込みながら離れた直後。上空から光が飛んできて地面に突き刺さった。砂や土煙が漂う前方から強い気配が感じるようになり、風魔法で煙を薙ぎ払えばそこに―――。

 

「ようやく手応えのあるやつが来たかと思って来てみればお前だったか」

 

長い黒髪に鋭い目付き、装飾が凝った黒い装束で身に纏う男が十枚の漆黒の翼を生やしながら拘束を外されたフリードの傍に立っていた。

 

「・・・・・アザゼル」

 

「ちっ、こいつを動かすとは本気で俺の邪魔をするつもりだな。計画も猶予もないということか」

 

「・・・・・聖剣」

 

「何故奪ったと言いたいそうだな。単純だ、奪えばミカエルが取り戻しに闘えると思ったからだ。だが、来たのは奴ではなくそこにいる教会の犬どもだった」

 

「・・・・・退屈?」

 

「そうさっ! 俺は常に退屈で仕方がないのさ! アザゼルもシェムハザも戦争は二度としないと言い出し、何の役に立つかわからない神器(セイクリッドギア)の研究に没頭し出した! 俺は闘いたい、戦争がしたい! 世界の覇権を巡ったあの頃の三大勢力戦争のような闘いを!」

 

聖剣を奪いコカビエルの気持ちを理解できた。

 

「・・・・・提案」

 

「提案だと? 言っとくが俺は聖剣を使い戦争を起こすつもりだ。グレモリー家の縄張りの学園でことを起こす。俺と交渉するならば無駄だぞ」

 

「・・・・・違う」

 

「なに?」

 

「・・・・・ヴァーリ、強くなるため戦いを司る邪龍クロウ・クルワッハと修行」

 

「あの邪龍とか」

 

「・・・・・世界中の強者と闘ってる」

 

「ふん、そこに俺も加われと?」

 

「・・・・・いつか終わる戦争より、ずっと闘える。神とも闘える」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・コカビエル、強くなれる」

 

と、提案を提示してみたら考え込んで秤をかけた様子を伺わせた。必ず失敗する今と、必ず自分が楽しめそうな未来、どちらかを選んだ末に問いかけたコカビエル。

 

「アザゼルの奴にはなんと言うつもりだ」

 

「・・・・・クロウ・クルワッハ達と一緒にいることにした。奪っただけの聖剣は返して万事解決」

 

「・・・・・くくくっ、警戒させるほどうまい話だな。本当に交渉ではなく提案で俺をどうにかしようとしている。だが、お前はそれを現実にすることができる」

 

聖剣を手放していないフリードの手から取り上げ、D達の前に投げ捨てたコカビエル。

 

「いいだろう。お前の口車に乗せてやる。何より長く闘えることができるならそっちの方が楽しめそうだからな。アザゼルどもがあんなでは俺も好きにさせてもらおう」

 

「・・・・・今喚ぶ」

 

魔方陣で誰かに連絡。すぐに繋がったのかDは口を開いて話し出してから少し経ち、黒い魔方陣がこの場に一人の女性を召喚した。金と黒色が入り乱れた長髪、金と黒のオッドアイで黒いコートを着込んだ人ではない強い気配を滲み出していた。

 

「こいつかD?」

 

「・・・・・ん」

 

「わかった。闘いがしたいならいいところだったぞ。中国の妖怪達のところに行くところだったからな」

 

「・・・・・元気?」

 

「相変わらずだよ。私とヴァーリもな。では、また近い内に会おうD」

 

「・・・・・ついでにフリードも連れて」

 

「あららん? 俺っちもですってよコカビエルの旦那」

 

「嫌なら教会の連中に捕まればいい」

 

「そんなありえないっしょっ! はいはい、喜んで俺様もついていきやすぜ姐御! イェーイ殺し合いはばんざーい!」

 

フリードまで連れてくことになってもクロウ・クルワッハはヴァーリのもとへドラゴンの翼を生やして飛んで戻っていった。彼女を追いかけるコカビエルもフリードを掴んで飛んで行った。

 

「えっと、いいのですか? コカビエルの処罰とかは」

 

「・・・・・大丈夫」

 

「そ、そう・・・・・ていうか、あっさり任務が達成して拍子抜けよ」

 

「私も肩透かす思いだ。あのコカビエルと闘わずにして聖剣を破壊せずに取り戻せたのだからね」

 

何とも言えないルーラー達だが、Dの耳元にコカビエルからの通信式の魔方陣が浮かんだ。

 

「・・・・・コカビエル、バルパー・ガリレイ達のことは任す」

 

「まだ仲間がいたのか。しかもあのバルパー・ガリレイ・・・・・」

 

「でも、まだ終わりって訳じゃないってことね。今度は私たちの手で終わらせましょう!」

 

「他力本願は申し訳なかったところでした。D、案内をお願いします。まだ奪われた聖剣がありますので」

 

まだあったのかと、説明不足に対する不審を視線で送られたルーラーはDの気持ちを察して素直に謝罪したところで残りの聖剣を取り戻しに向かう。コカビエルからの情報を元に辿り着いた先は無人で人が寄り付かない場所にあった廃墟。中に入り警戒して進むと神父の格好をした初老の男がいた。

 

「ほう、コカビエルから潜り抜けて聖剣を取り戻しに来たか」

 

「バルパー・ガリレイだな」

 

「いかにも」

 

「貴方の野望もここまでよ!」

 

「覚悟してください」

 

剣を構えるイリナとゼノヴィア―――二人の剣は聖なる力の気配を発している。ルーラーは銀の剣を持つが聖剣の類ではないことを知り、Dも金色の意匠が凝った青い鞘に収まっている一本の剣を魔方陣から取り出した。初老の男性がDのそれを見て目を見開く。

 

「私が知らない聖剣か? 名前を聞いてもいいかね。実に興味がある」

 

鞘から抜き取ると窺える剣身は青く金の装飾が凝っている。

 

「・・・・・エクスカリバー」

 

「「「え?」」」

 

「・・・・・天界は新たなエクスカリバーを創ったということか。ならばその剣から放つ輝きも納得いく」

 

新たなエクスカリバーを創った情報が教会に伝えられてないなら納得いく。そう予想しただろうバルパー・ガリレイの考えをイリナ達は疑惑した。そんなことが本当なのかと。

 

「D、他に敵は?」

 

「・・・・・いない」

 

「そうとも。私は一人だが時機にコカビエルやフリードがここへ戻ってくるだろう」

 

「「「「・・・・・」」」」」

 

既に見放されていることを知らないでいる憐れな相手に神妙そうな顔を浮かべ、四人で一斉にバルパー・ガリレイの身柄を捕らえた。

 

「何故だ!? コカビエル、フリード! まさかこの者達に破れたというのかっ!?」

 

何時まで経っても現れない味方に動揺を晒すバルパー。何も言わない方が幸せかもしれないと黙々と残りの聖剣を奪還、ボディチェックをしたら何かの結晶が出て来た。

 

「バルパー・ガリレイ。これはなんだ?」

 

「・・・・・聖なる因子だ」

 

「因子?」

 

更に因子という結晶のことを聞き出せば、聖剣を扱えるに必要な聖剣適性の因子の数値があると研究した末に判明。聖なる因子がある者達から因子だけを取り除き、人工的に聖剣を扱うことが出来る聖剣使いを作るのがバルパー・ガリレイの目的だった。

 

 

 

 

「・・・・・そう、一応教会側の問題は解決したということなのね。彼女達がこれをあの子に渡してほしいと伝言を貴方に託して」

 

オカルト研究部にいるリアス・グレモリーのもとへ訪れ因子の結晶をDは渡しながら、スケッチブックで事の経緯を説明したのである。

 

「コカビエルの件については本当に大丈夫なのね?」

 

その問いに無言で頷くD。

 

「わかったわ。もとは堕天使と教会の問題で貴方も無関係の立場じゃなかった。学園の被害も出さずコカビエル達の計画も未遂で解決してくれたなら文句も言えないわ。貴方の働きを報いる為にこれは必ず祐斗に渡します」

 

彼女の口にした言葉に満足し、足先を後ろに向けて部室を後にしようとした。

 

「・・・・・ねぇ」

 

「・・・・・?」

 

「貴方、歳はいくつ?」

 

スケッチブックで二十歳と書いた。

 

「・・・・・そう、因みに両親は?」

 

いない、と書いて今度こそ部室を後にするDの背中を見送ったリアスに朱乃の口が開く。

 

「どうしてあんな質問を?」

 

「一応何となくよ。彼の左眼を見ていると、何だか既視感を覚えるのよ」

 

「どこかで彼と会ったことが?」

 

「そう思って年齢と両親のことを尋ねたけれど、彼のことも調査したことも含めて謎に包まれてるわ。唯一、堕天使側の人間なのはわかってる。赤龍帝なのは最近の新事実ね」

 

Dの目を脳裏に過らせる。あの生気の光がないハイライトな瞳が―――たった一度だけ幼少の頃に見たことがある親しい男の子の瞳を彷彿させるのだ。

 

(どことなくあの子と彼の目が似ている。だから年齢が一致していたらもしかして、と思ってた。でも彼はあの子じゃなかった)

 

いえ、それ以前にあの子は―――と過った思考を消して渡された因子の結晶を手の中に収め立ち上がった。

 

「祐斗を探すわ朱乃」

 

「はい、部長」

 

 

 

 

「・・・・・アザゼル」

 

『コカビエルの件はご苦労だった。ヴァーリとクロウ・クルワッハと一緒ならあいつも退屈な日々は送らないだろう』

 

「・・・・・」

 

『だが、それとは別件でお前さんにまた頼みたいことが出来た。―――ここ数年、裏で暗躍していた連中が本格的に動き出すそうだ』

 

「・・・・・そう」

 

『ああ、お前さんの力も数年前の様に振るってもらうことが増えるだろう。そん時は頼んだぜ』

 

「・・・・・わかった」

 

『それとな。そっちの学園は授業参観日が近い内にやるんだろ? 大方リアス・グレモリーの親が来るだろうしいい機会だから天使の長殿も呼んで連中のこと教えてやるつもりだ』

 

「・・・・・会談」

 

『そういうことだ。お前さんも出席してもらうぜ。ヴァーリの奴も呼ぶ。上手く奴が潜り込めた(・・・・・)演出をしてもらう為にな』

 

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

 

ある日の休日。何時ものように少女達が寮長室に入り浸ってDは真剣衰弱を参加していた。神経を研ぎ澄ませてテーブルに伏せられた52枚のカードの内の同じ数字カードを2枚記憶して選び出すゲーム。当然ながらDがやると大体勝ってしまう。今もハートのKの片方を選びもう片方のKを選ぼうと前上の手前にあるカードを捲ろうと伸ばした手が不意に硬直した。

 

「~♪」

 

気付かない振りをして自身のたわわかな胸でDが捲ろうとしたカードを隠すように乗せたのだ。あそこにスペードのKがあることは覚えてれば皆知っている。涼子もだ。彼女は胸の下にあるカードが何なのか分かって妨害していることが明白だ。仕方なく別のKを選ぼうとしたDの視界に、不自然にある1枚のカードを引き寄せてるアイと目が合う。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

すすす、と自身の下へ引き寄せ前上の様に胸で隠す彼女に、それはいただけないとDの眦が裂いた。二人分のDが分裂、それぞれ胸でカードを隠す二人の背後に移動し、肩を掴むと指圧した。

 

「んぁっ!?」

 

「あ、ちょっ、そこ・・・・・」

 

グイグイと豊かな胸で張っていた肩の筋肉をほぐしつつ気持ちよくマッサージを施す。分身体のマッサージが気持ちよすぎるあまりに表情筋が緩めてしてはいけない表情を浮かべながら床に寝そべられ、背中のマッサージもされると「き、気持ちい・・・・・も、もっとぉ~」と喘ぎに似た声を漏らす。その間に隠されたKのカードを選び取り、次のカードに手を伸ばした。

 

「うーん、肩が軽くなった気がするねアイちゃん」

 

「はい、Dさんのマッサージは本当にそう感じます」

 

「お姉ちゃん、ほんと気持ちよさそうだったしね」

 

「女の子が人前でしちゃいけない蕩けた顔をするほどにね」

 

「Dさん、次は私もお願いしていいですか?チアリーディング部活でもう少し軽い動きがしたいので」

 

「私もいいですか?」

 

頼まれたのでこの際全員もマッサージを施せば皆気持ちよさそうに頬を緩めたのだった。

 

「・・・・・お腹のマッサージをしてもらえば体重が減ったりしないかな?」

 

「「「―――っ!?」」」

 

「・・・・・胸が重み」

 

「ですよねー」

 

一瞬、その手があって本当になるのかと期待したがDの指摘であっけなく否定され、胸がそうさせているのだという事実を再認識されたのであった少女達。

 

「Dさんは、ムネが大きい女の子が好きですか?」

 

「・・・・・?」

 

何だそれ? と首を捻るDの様子に少女達は顔を見合わせる。もしや、自分達を異性として見られていないのでは? という共感を覚えた。

 

「あの、私達を女の子として見てますよね?」

 

「・・・・・?」

 

不思議そうにアイの言葉を聞いてから肯定と頷く。心なしか安堵で胸を撫で下ろす気分になりながらも逆に自身の胸を持ち上げて首を傾げた涼子。

 

「うーん、こんなに胸の大きな女子達に囲まれて嬉しくない男子はいない筈はないんだけど・・・・・」

 

「私達の胸、そんなに興味ないですか?」

 

「・・・・・」

 

スケッチブックで返す。体の一部を見てどうして興味が沸くのかすら理解できない、と。

 

「・・・・・えっと、私達の顏を見てどう思います?」

 

「・・・・・可愛い」

 

「ふふ、Dさんに褒められちゃった。じゃあ、好きな女の子の特徴とかあります?」

 

「・・・・・」

 

首を横に振る。そんなものは無いと否定して示した。逆にスケッチブックでこう書いたD。

お前達は好きな男の特徴は何だと。

 

「え、えっと・・・・・」

 

「はい、私はDさんがいいですよ? 同級生や先輩後輩(こどもっぽいの)には興味ないけどDさんはオトナですから」

 

「私はまだ解りません・・・・・」

 

「私もです」

 

「以下同文」

 

「誰かと付き合うこと自体考えてませんでしたから、これといった特徴はないです」

 

更に問うた。嫌いな方は?

 

「「「「「「兵藤家」」」」」」

 

異口同音、全員口を揃えて女の天敵として周知されてる者達で告げた。

 

「Dさんが警備員兼女子寮の寮長になってくれたおかげで、学園は平和そのものです」

 

「昔は最悪だったらしいですよ。相手が相手だし逆らえば、国家反逆罪だ! って脅されて白昼堂々女子にセクハラしたり強姦とか毎日してたって」

 

「それで一時期この学園にいる兵藤家が嫌だからって虐められていた男子や殆どの女生徒達が別の学校に転校しちゃって閑古鳥が鳴くほどクラスが学級崩壊どころか消滅したって」

 

救いようがない兵藤家に目を細めるD。

 

「その辺りだったかな。別の高校と合併して新しい学園に変えたのは。それから合併した学園に通っていた生徒の人達が思っていた以上に強くて、兵藤家の男子達に負けなくなったから少しだけ平和になって―――」

 

「Dさんがまだ17歳という年齢でこの学園の警備員兼女子寮の寮長としているようになってから兵藤家の被害者の数は激減したんだよね」

 

その頃は今よりまだ酷かったけど、と付け加える榊田巫。Dも三年前の当時を脳裏に過らせた。合併した学園の生徒もこの学園で通うことになっても、傍若無人や天上天下唯我独尊の立ち振る舞いを止めなかった。相手が武家だろうと大企業の子息子女だろうと、日本を統治する者こそが日本で一番偉いのだと自負していたまだその時期―――Dが、強姦されている最中の一人の女子を助ける為に顔面の原型を崩し、股間を潰し丸裸にした兵藤の者達を学園に吊るしたことから始まった。

 

「・・・・・あの時は本当に騒ぎになってましたね」

 

「一体誰の仕業だったんだろう。またあの時の犯人が捕まっていないんでしょ」

 

「相当、兵藤家に恨みが無いとできない所業だったわ」

 

―――誰にも悟られずそうした本人がここにいることを、一部を除いて教師も生徒も誰も気づかれていないようにしている。流石にアレはやり過ぎたと反省し穏便に処刑している。

 

「Dさん、これからも守ってくれますか?」

 

「・・・・・」

 

頷いて首肯するDはアイの頭を優しく撫でる。それが少しこそばゆくて薄っすらと笑みを浮かべた。

 

「お姉ちゃん、何だか幸せそうだねぇ」

 

「うん、もし兄がいたらこんな感じなのかなぁーって温かくて優しい撫で方だったから」

 

「お兄ちゃんか・・・・・Dさん。これからはお兄ちゃんって試しに呼んでみていいですか」

 

「莉緒!?」

 

「・・・・・?」

 

心底、不思議そうな顔をする。興味本位で言いたいのだろうか。別に構わないと首肯して受け入れるとアイちゃんが、それなら・・・・・と呟いた。

 

「私も、お兄さんと呼ばせてもらいますね」

 

「はいはいっ。なら、私は兄貴と呼んでみたーい」

 

「お兄様と呼んでも?」

 

「何このくだり?」

 

「何ででしょうねぇ・・・・・」

 

黒子までもノってきたので巫、優姫が神妙そうに少女達の頭を撫でるDを見つめた。それからほのぼのとした時間を過ごし、テレビの電源をつけていいかと問われ、リモコンで電源を付けると映り出す画面の映像―――。

 

「あ、夏に行われる兵藤家主催のイベントの内容が発表されてる」

 

優姫がそう吐露したようにテレビの向こうでは記者会見が始まっていて、発表しているのが厳つい顔つきに黒髪をオールバックにした中年の男性だった。大会の内容は二つ行われる。一つ目は1週間のバトルロイヤル生活。冥界の技術で作られた疑似空間の中で本選まで参加者四名まで減らす。

 

 

「一週間もバトルロイヤルって、お腹すいたらどうするんだろう?」

 

「無人島だから少なくとも食べられるものがあるんじゃないかな」

 

「なかったらどうするのかな」

 

「食料の持ち込みとかアリだとか」

 

「結構な量になるんじゃない?それが本当に認められるなら他の参加者達からも狙われそう」

 

「厳しい勝負になるのは間違いないかも」

 

 

『なお、一週間のバトルロイヤルに食料の持ち込みは禁ずる。一週間の断食に堪えぬ者は不要だ。気力と体力、そして精神力が試される本選出場を懸けた予選。それを乗り越えられた者こそが本選に出場するに相応しい選手である』

 

 

「うわぁ、きっつっ」

 

「一日二日ならまだ何とか我慢できるけれど三日以上はとても・・・・・」

 

「Dさん。この大会に参加しますか?」

 

「・・・・・腕試し」

 

「腕試し以前に餓えてしまいませんか」

 

「・・・・・無理だったら棄権する」

 

「あまり無理しないでくださいよ」

 

「応援します」

 

公表された大会の公式内容を見聞してもDは参加する意を揺るがなかった。餓えなんて・・・・・飢え以上に酷い体験と経験をした己にとってまだ生温い・・・・・。飢えたことがない人間が堪えられるはずがないからすぐにリタイアするだろう、と考えてるDの髪を莉緒が触り出した。

 

「やっぱり、凄いサラサラ感だ」

 

「え、ほんと?」

 

「うん。これなら・・・・・」

 

徐にDの髪を弄り髪型を変えた。

 

「はい、お姉ちゃんと同じにしてみたよ」

 

アイちゃんのように揉み上げの部分を編んだ髪は男が似合うとは限らない。単に人の髪で弄って玩具にする感覚でしてみただけ。長い髪ならこんな風にもできる、と莉緒は姉と同じ髪型にしてみたのだ。

 

「私もやってみたいな」

 

「楽しそう」

 

「長い髪の男の人って滅多にいないからね」

 

Dを取り囲む少女達。否、たわたわな巨丘が複数。巨乳好きの男達ならば理想郷はここにあった! と感激の涙を流すだろう。

 

「ねぇ、Dさん。大きなおっぱいに囲まれてどうですか?」

 

「・・・・・?」

 

だが、目の前に立つ前上澪の質問に小首を傾げるDだったので疑惑を抱いてしまう。

 

「この人、性欲とかないの・・・・・?」

 

「胸を凝視されても不思議とDさんなら平然といられる自信がありますね」

 

「そういう目で見ないでいると分かってしまってますからねぇ。羞恥心は捨てきれないけど」

 

「でも、それはそれでちょっと・・・・・とは思いません?」

 

女としての魅力が通用していない、通じていないのではないかと不安になる。

 

「ちょっと試してみようかな」

 

黒子の発言に誰もが不思議そうに反応した矢先、服をめくって上半身を下着姿になってDに胸を挟むように押し付ける彼女にぎょっと目を張る。

 

「ちょ、何しているんですか!?」

 

「直で触れさせたら違う反応をするのかどうかを知りたくて」

 

Dの反応は変わらず無反応。上目遣いで見上げてくるDの顏は無表情のまま、一切の感情が浮かんでいないことに黒子はつまらなそうに眉根を寄せた。

 

「下着も脱いで―――」

 

「「「それ以上はダメッ!」」」

 

「―――左様、そのぐらいのことでDは動揺もせん」

 

不意に第三者の聞き覚えのない声が聞こえて制止するアイちゃん達。

 

「だ、誰? どこに・・・・・?」

 

「ここじゃ」

 

Dの影から飛び出す小さな影。金色の毛で覆われた四肢の身体、九つの尾を揺らす狐がDの頭の上に乗っかって少女達の前に現れた。

 

「き、狐・・・・・?」

 

「ただの狐ではない。妾は九桜と申す」

 

「しゃ、喋ってる・・・・・まさか、妖怪?」

 

「言い得て妙じゃの。妾はその昔白面金毛九尾の狐と呼ばれ、安倍晴明と関する玉藻前とも呼ばれた、今では独立具現型神器(セイクリッド・ギア)となった存在じゃ」

 

少女達は告げる狐の正体に愕然とする。

 

「九尾の狐、安倍晴明って歴史的にも有名な名前じゃん!」

 

神器(セイクリッド・ギア)だなんて、教科書に載っているだけのありふれた話だけの物かと思ってた」

 

神器(セイクリッド・ギア)は確と存在している。教科書に載っているならばお主等自身にも宿っていることぐらいは認知しているであろう」

 

「で、でも発現するにはとても困難だって」

 

「その通りじゃ。じゃが、あえて発現させない方が幸せでもあるかもしれぬ。殺し合いをしなくてはならない命と隣り合わせの危険性ある世界に入りたくないじゃろう?」

 

九桜の重みある言葉に息を呑む彼女達。神器(セイクリッド・ギア)を一度発現させると国に申請しなくてはならないし、政府から保護対象とされると神器(セイクリッド・ギア)の造詣が深いとする堕天使側の所有する施設に通わなければならないのだ。それも教科書に載っていたので彼女達はDの立場を察した。

 

「Dさんは、じゃあ・・・・・」

 

「こやつだけではない。先日『黒狗』というBARで知り合ったDの友人達も同じ立場じゃ」

 

「あの二人も神器(セイクリッド・ギア)が?」

 

「不思議ではなかろう? Dは一般人ではない存在じゃ。Dの友人もまた普通ではない」

 

「その理屈だと私達も普通ではない?」

 

「摩訶不思議な力を発現も具現化しとらん者達じゃが、体験したことが無い経験はあるであろう」

 

それは、と口籠る少女達。全員、兵藤家に強姦をされかけたところDに救われた。こうして一緒にいるのも身の安全を守ってもらっているためでもあるのだが、九桜の意味深な言葉に身に覚えのある少女達は何も言えなくなった。

 

「九桜さん、ちゃん?」

 

「好きに呼ぶがいい」

 

「なら、九桜さん。聞きたい事があります。Dさんに心が壊れるほど何が遭ったのか」

 

「答える義務はない」

 

アイを真っ直ぐ見つめる九桜。

 

「それを教えてどうなる。Dを憐れむか? 同情するか? ―――どちらも今のDに意味のないことじゃ。いや、心が壊れてるDにそれは侮辱に値するな」

 

「侮辱って、何で・・・・・」

 

「たかが無理矢理に身体を貪られるだけより、過去にDが凄惨な体験をしたあの頃の方が酷かったからじゃ。それがDの心が壊れた原因でありトラウマ。安易な気持ちで相手の過去を知ろうとする輩に教えるつもりは毛頭もない。Dの友人達にすら教えてもいない事実じゃからな」

 

それとも何か? と彼女達に問うた。

 

「お主等はDの全てを受け入れる覚悟があると申すか」

 

『・・・・・』

 

「あると言うなら一つだけDのことを教えよう。Dは―――兵藤家の人間じゃ」

 

「えっ!?」

 

「Dさんが、あの兵藤家の・・・・・!?」

 

「元、が付くがな。故に今のDは兵藤家に対して無関心と無気力でいる。さて、Dが元とはいえ兵藤家の人間だと知ってお主等の態度がどう変わるか、観察させてもらうぞ乳臭い童どもよ」

 

それは彼女達に対する試験のようなものだった。これで忌避するようなら二度と関わらせはしない。鳶雄達と住む生活も環境も違う彼女達が今後Dとどう接するか九桜は見極めるつもりだ。

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