異世界に来た吹雪   作:Jasper Finley

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プロローグ・陸上での轟沈

 吹雪は砂浜に寝そべっていた。

 

「いや~、大規模な作戦も終了したし、一日くらいこうやって寝そべっていても怒られないよね!」

 

 無論、司令官に見つかったら怒られるだろう。いくら大規模な作戦が終わり、後処理のために数日スケジュールが空いているとはいえ、未だちょくちょく近海で深海棲艦は出現するのだ。もし吹雪が直接砲撃されたら、いくら何でも危険である。

 それに、くつろぐなら鎮守府特設25mプール併設のデッキチェア広場にしなさいと広報すら出されている。まあ、あの周囲が高い建物に囲まれた、プールサイドにデッキチェアが等間隔に置かれているだけの場所は何か違うのも事実ではあるが。

 

「えーと、哨戒には睦月型のみんなが2部隊に分かれて行ってるんだったっけ。じゃー安心だね、うんうん!」

 

 重ねてフラグを立てる吹雪。丁度台詞を言い終わった頃だろうか、警戒サイレンと共に、秘書官である加古の声が屋外スピーカーから聞こえてくる。

 

『きんきゅーけーほー、きんきゅーけーほー。照会に出ていた睦月から、フラグシップのタ級がひとり鎮守府に向かってる……ん、どしたの古鷹? え、観測機? あ、ほんとだ……と、とりあえず迎撃用意! 手の空いてる人は出撃出撃!』

 

 そんな適当な放送を聞き、吹雪はがばりと起き上がる。少し遠くに観測機。この分では吹雪の姿は丸見えであろう。

 

「え……ちょ、ちょっと、嘘でしょ!? しゅ、出撃準備をしに行かないと!」

 

 飛び起きて反転。数歩歩いたところで元いた場所にタ級のものであろう弾が着弾した。

 爆炎と共に吹き上がる砂、吹き飛ぶ吹雪。こんなことのために吹雪という名前を貰ったわけではないが、吹き飛ばされる感覚は久しぶりであった。

 

「ちょっと、待って! 陸の上で轟沈するなんて嫌なんだから!」

 

 べしゃりと砂の上に墜落するが、即座に起き上がった吹雪が駆けだそうとする。

 その瞬間、意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

「――――――――ハッ!」

 

 がばりと飛び起きる。手には12.7cm連装砲A型、魚雷発射管は三連装。……なんで私はこんな古い装備を身に着けているんだろうか?

 艤装も全てある。場所は砂浜、海に向かって寝転がっていたようだ。夢だろうか? 確かに私は砂浜で寝転がっていたが、艤装はつけていなかった筈……そこまで考えて、タ級の砲撃をもろに食らったことを思い出す。慌てて損傷を確認するが、どうやら無傷のようだ。

 

「……あれ?」

 

 何か、違和感がある。自分の体を見下ろした時に、何か、こう、この新品同様の白と青のセーラー服に違和感を感じた。なんだろう、確か()()私の制服はもっと違う色――――

 

「あ、あれ、おかしいな、もしかして、改装がなかったことに……? よくよく考えたら、最初の装備ってこんな感じ……えっ」

『よう吹雪!』

「ひゃっ! 誰!?」

 

 突然声をかけられた吹雪は挙動不審に周囲を見回す。

 

『足元だよ、足元。何で装備確認時に気付かなかったんだ?』

「えっと……工廠妖精さん?」

『そうだが、生憎まだ工廠どころか鎮守府が存在しない。お前と私がこの世界に生まれたってことは、この世界に深海棲艦が生まれたってことだ。辛いねぇ、戦う運命にある存在ってのは』

「ちょ、ちょっと待ってくださいね。この世界って言いました?」

『言ったが、何かおかしいか? 私らは深海棲艦に対するカウンターの存在だろ。何を不思議がる?』

「鎮守府が存在しない? おかしくないですか? だって、私の後ろには鎮守府が……」

 

 後ろを向いた吹雪の目には、青々と草の茂る草原が広がっていた。

 

「えっ」

『お前は何を言ってんだ? 大丈夫か? 誕生の際に頭でも打ったか? 見てやろうか? ドッグはないけど、簡単な修理ならできるぜ?』

「い、いや、大丈夫です……大丈夫じゃないけど……」

 

 ぽふん、と草原を見てしりもちをついた吹雪。結局、私は陸上で轟沈したんだ……という事実を受け入れるのに三日かかった。

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