異世界に来た吹雪   作:Jasper Finley

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異世界に来た吹雪 その2

「あああああああ!」

 

 顔に火が付いた状態で砂浜を転がる吹雪。その吹雪を楽しそうに眺める男。吹雪の傍であたふたしている工廠妖精。

 その状態で数分経った頃、男が訝し気な表情で呟いた。

 

「……こいつ、ずっと燃えてるが死ぬどころか声が枯れたりする気配もねぇな」

『あ、そうか! 吹雪、起きて、アナタにそんな炎効かないでしょ!』

 

 その台詞を聞いた吹雪はぴたりと止まり、首を振る。すると、吹雪の顔の周りに纏わりついていた炎は鎮火した。

 

「あ、あれ……なんで?」

『何でも何も、金属にちょっと火がついたくらいじゃなんともないでしょ? アナタがあまりにも慌てるもんだから私まで慌てちゃったよ』

「そ、それもそうですね。何で私、こんなことでこんなに慌ててたんでしょう……」

 

 がっくしと肩を落とす吹雪。何なら艦娘には銃撃を受けても多少の衝撃だけで済む防御性能があるのだ。ただの炎では制服さえ燃やすことは叶わないだろう。

 

「効いてねーのに数分騒ぐのはすげーわ。俺もびっくりだぜ? ≪馬鹿にしてんのかァ(火よ)≫!?」

「き、効きませんよ! 炎が一直線に向かってくるのはちょっと怖いですけど!」

 

 男が腕を一振りすると、またもや炎が飛び出す。その炎は今度は吹雪の体に纏わりつくが、慌てずに鎮火する吹雪。

 

「あまり()()に対して武装を使うのはよくないんですけどっ、正当防衛です! 撃てーっ!」

 

 そのまま連装砲を男に構え、号令を下す吹雪。しかし、帰ってきたレスポンスは武装に宿る妖精達の『?』だけであった。

 それも当然であり、前世の経験を元に勝手に装填しておいてくれる妖精はもうおらず、今吹雪についている妖精は新兵(練度1)なのだ。当然の反応である。

 そして、連装砲を前面に構える吹雪と、何かが飛んでくると予測し顔を腕でかばった男が数秒フリーズした。……工廠妖精には両者の頭上に浮かぶハテナマークが見えていた。

 

「あァ……? 何だ? 何もねぇのか? ならこっちから行くぜ、≪オラ(火よ)≫≪オラ(火よ)≫≪オラァ(火よ)≫!」

「ひいぃ、そっか! ごめんね妖精さん、砲撃戦用意!」

 

 男が動き出すと共に吹雪は踵を返して走り始める。男の放った火は三発とも外れ、吹雪の号令を聞いた妖精は弾の装填を始める。

 

「今度は鬼ごっこかァ!? 何だァ、さっきから意味わかんねぇ行動取りやがって! めんどくさくなって――」

 

 そう叫ぶ男が走り出そうとした瞬間、吹雪が男と向き直る。

 

「目標、目の前の男性! 撃てー!」

「――ぶッ!?」

 

 吹雪が放った弾は、一発が顔に直撃し、もう一発は外れて砂浜に小さい穴を穿った。

 そして、走り出そうと加速したタイミングで顔に弾が直撃した男は、後方に一回転して着地した。しかし勢いは殺しきれず砂浜に二本の線が引かれ、纏ったボロ布は千切れて地面に落ちていた。

 皮鎧と動きやすそうなズボン、背中にはクロスボウが入ったホルダーを背負っている。それ以外には短剣をしまうのであろうホルダーが太ももについている。

 

「わっ、すごいファンタジーっぽい恰好だ!」

『……アナタ、前世の記憶とやらは持ってるくせに、何でさっきの炎であんなにパニックになってたの?』

「わ、私に聞かれてもわからないですよ! よく考えたら向かってくる炎より迫りくる爆撃のほうが怖いですし!」

『陸上で轟沈したとか言ってたし、何か誕生処理に不具合でも生じたのかな?』

「………………お前の記憶がどうとかどうでもいいけどよ、何だァ、その武器は……?」

「ひぃっ、気絶すらしないんですか!? 普通顔面に食らったら気絶しますよ!?」

「念のための防御魔法だったがよ、張っておいて正解だったぜこりゃあ……いいぜ、お前炎も効かなさそうだし、ちょっと本気出してやるよ!」

『……あれ? 気絶するって知ってるってことは前世で人撃ったことあるのか?』

「止むを得ず一回だけです! 妖精さん、装填は済んでる!?」

 

 吹雪の脳裏に肯定の返事が届く。男は二度もくらうまいとジグザグに走り寄ろうとしているが、吹雪は前世で培った経験がある。

 

「えっと……左砲塔、目標、男の足元! 撃てー!」

「うおっと!」

「続けて右砲塔、男に向かって撃て!」

「ぐあっ!」

 

 足止めをして射撃、深海棲艦相手にはあまり使えるものではないが、演習等で駆逐艦相手によく使う手であり、もちろんそれは人間に対しても有効な戦術である。地面が砂であることも幸いし、視界を奪うことに関してはことやりやすい。

 持ってるのが単装砲じゃなくてよかったと安心する吹雪。しかし、男はまたも防御に成功したようですぐに起き上がってくる。

 

「面倒くせぇなその武器はよぉ……着弾したら爆発するのがクソ面倒くせぇ……」

「こ、降参してくれたら撃ちませんよ!」

「降参? 随分甘っちょろいこと言うじゃねぇか……≪雷よ!≫」

 

 男はこちらに手を向け、電撃を放ってきた。吹雪に直撃する。

 

「う……ちょっとぴりっとしたけど、問題はない! 相手は足を止めてる、撃てーっ!」

「チッ、≪防御≫!」

 

 撃った砲弾は男の前に現れた見えない壁で防がれる。

 

「よし、久しぶりだからちっと構築に時間かかったが……行け! ≪燃え尽きろ≫!」

 

 男の手からは今までのとは違う、でかい炎の玉のようなものが放たれた。陸上機動に慣れていない吹雪は、それをそのまま受ける以外の選択肢はない。

 火球はそのまま吹雪に直撃し、大爆発を起こした。

 

「きゃああああああ!」

「……流石に今のを直撃たァ、生きちゃいねぇだろ……成体のドラゴンにも深手を負わせた一撃だしな」

 

 そのまま吹雪は海へと吹き飛ばされ、大きな水しぶきを上げた。

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