ドールズフロントライン ー疾走する本能ー   作:パNティー

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頑張って第二話を書きました。今回は主人公の一人目の登場です。

では、どうぞ!


Eー1戦役

私がまだ、造られて(うまれて)間もないころ。16Labで訓練を受けていた時の話。

 

当時の私はまだ未熟で先に生まれた姉達に比べたら訓練で良い成果を得られなかった。その日も一人で模擬訓練場に残って練習していた。だけど、来る日も来る日も練習しても一向に上達することはなかった。

 

疲れ果てた私は模擬訓練場の隅で眠っていた。その時だった、彼に会ったのはーーー。

 

一定の感覚で聞こえる乾いた音。最初は寝惚けて分からなかったが、だんだんとそれが銃の発砲音だと気づいた時には飛び起きていた。

 

「ッ……!?」

 

まさか16Labが攻撃を受けているのではないか?そう思った私は自分の名前の銃を持って構えた。しかし、目の前に広がるのは真っ白な模擬訓練場の壁だった。しかも、銃声も一つで争っている雰囲気では無く。ただ一人、的に向かって拳銃を撃ち続けている青年がいた。自分の足元を見ると、男性用の16Labの制服が落ちていた。きっと彼が私に冷えないようにと掛けてくれたのだろう。

 

一通り終えたらしい青年は、模擬訓練場の隅に置いてあった汗拭きタオルを取りに行く。

 

「あ、あの……」

 

声をかけると青年は私が起きた事にいま気づいたらしく振り返った。私が見た青年の顔は銃を持つにはまだ若過ぎると思った。しかし、童顔の顔に似合わずその瞳は深い黒色。癖っ毛がある黒い髪が目元に影を作り更に童顔の顔に老いを感じさせる。失礼かもしれないが、幸せが逃げてるような顔だった。

 

「これ、ありがとうございます……」

 

「………」

 

私が御礼を言うと、青年はつかつかと私の方に歩いてきて手に持っていた制服を素早く奪って行った。

 

「え、あ、あの……」

 

青年の行動に唖然とする私を置き去りに青年はまた模擬訓練を再開する。だが、先程と違った訓練の内容に私は更に驚いた。

 

(あれは、戦術人形用の!?)

 

青年は拳銃ーグロック18ーを片手に今度は的ではなくちゃんとした戦術人形が訓練相手にやる自律人形だ。もちろん戦術人形並みに戦闘能力や演算機能が備わっている訳でわないが、人間が生身で敵う相手ではない。

 

無茶苦茶な訓練方法に私は止めようと動いたが、その前に彼は始めてしまった。ボコボコにされる未来を私は予感し、彼に合戦しようと武器のセーフティーを解除した。

 

がーーー

 

次の瞬間、私は予想以上の事が起きて演算が追いつかなかった。

 

「シッ……!」

 

彼は鋭い掛け声と踏み込みと共に武器を持ってない方の腕で人形の顔を殴る。人形は人間の構造と似通っている部分が多いので頭にダメージが入れば当然に機能が停止する。しかし、人間の柔らかい拳だと人形の硬い金属骨格には鈍く響くだけで致命打とは言えない。現に人形はカウンターの攻撃を彼の顔目掛けて見舞う。

 

「危なーーー」

 

い、と私が言い終わる前には彼は次の行動に移っていた。身を捻り攻撃をすれすれで避けるとお返しとばかりに顔に向かって弾丸を浴びせる。撃たれた反動で人形が仰け反ると足を払い人形を倒す。そして倒れた人形の顔に向かって拳銃を突きつけた。

 

「………」

 

彼は最初から表情を一切変えず、無感動のままトドメの引き金を引いた。まるで一つの仕事を終わらせたかのように。

 

私が有り得ない現実に目を丸くして驚いていると、彼はその場に座り込み蹲ってしまった。彼の震えている身体に私は不思議に思って近づくとーーー

 

「痛ぇ……」

 

殴った拳を彼は苦悶の表情で摩る。人間の彼が人形の硬い骨格を殴れば無事では済まなかったらしい。良く見ると手の至るところに絆創膏が貼ってあった。

 

「す、直ぐに手当てします!」

 

私は彼の手を取り応急処置をしようとするが、彼は私の手を振り払う。

 

「必要ない……」

 

少し潤んだ瞳で彼は私を振り払い自分の私物を纏めて模擬訓練場から出ようとする。私は彼を引き止めるために彼の手を掴む。

 

「あ、あの……ちゃんと手を治さないと……傷口からばい菌が入ります……」

 

滲み出る赤色の手を掴み私はおどおどしく言う。初めてペルシカさん以外の『人』と話すので、緊張して言葉が詰まってしまう。俯いていた私を見て彼は鬱陶しく思ったのか再度手を振り払う。

 

「お前は俺に関係ない、だから俺に構うな」

 

彼は不貞腐れた様な顔つきで私から去ろうとする。しかし、最後に見た今にも泣きそうな私の顔に彼は胸がチクリとしたのだろう。去ろうとした足が急に重く感じ、扉の前で止まる。はあとため息を吐くと私の前まで彼は戻ってきた。

 

「ん……」

 

「………?」

 

彼が差し出した腕の意味が分からず私は首を傾げる。それに苛立ち彼はチッと舌打ちをするのを心の中で堪えた。

 

「お前のやりたい様にしろ」

 

突き放す様に彼は私に言ったが、私は目を輝かせて彼の手を取る。もし私に尻尾が付いていたらきっと喜びでブンブンと振っていただろう。

 

「頑張らせて貰います!」

 

「そう言うのはいいから早くしろ」

 

「はい!」

 

「だから……はあ、もうどうだっていいや」

 

彼は諦めてなされるがままになる。私と彼は部屋の隅に移動すると私のポーチから包帯と傷薬を取り出し彼の手を応急処置をする。その間に私は彼の事が気になったので話を振る事にした。

 

「あの、質問をしてもよろしいですか?」

 

「質問の内容によるな」

 

素っ気ない返答でも了承は貰えた。それに私は少し驚きながらも彼が苛立つ前に質問を開始した。

 

「どうして、貴方は16Lab(ここ)にいるんですか?」

 

「……さあな、気づいたらここにいた」

 

「なんで人形相手に訓練をしていたのですか?16Labの人なら別にしなくてもいいんじゃないですか?」

 

「……日課みたいなもんだ。ペルシカに言われてそうしてる」

 

まったくもって可笑しな訓練だがペルシカから言われたのであれば仕方がないだろう。もしかしたら彼は、16Labにはいるが実は研究者ではないのではないだろうか?

 

「あの、私M4A1と言います。よければですが……お願いがあります」

 

「厄介なお願いごとはやらないが、まあ聞いてやる」

 

「私を……強くして下さい!」

 

私がそう言った瞬間、彼はすぐ顰め面になった。そして嘲笑うかのように彼は鼻で笑った。

 

「残念だが、それは無理だな」

 

「ど、どうしてですか!?」

 

「理由なんて簡単だ。戦術人形は人間より強い」

 

先程は人間が人形に勝てたが、それは人形側が戦術人形ではなかったからだ。演算能力、出力どれをとっても差がある。

 

「お前より弱い俺が一体全体なにを教えられる?俺よりも適任の(人形)はここには沢山いるぞ」

 

「そ、そうなんですけど……」

 

たしかに彼の言葉は的を得ている。人間が人形に勝てる訳がないし、教えを請うなら姉達がいる。だが、何故か彼が私を強くさせてくれると信じてやまない自分が心の中に居る。だが、彼は不貞腐れた表情で断った。これ以上はいくら願ってもきっと彼は首を縦には振るわないだろう---。

 

そう思った私は俯いていると、

 

「……まあ、見てるだけなら自由だ」

 

「え……?」

 

彼が唐突に発した言葉に、私は俯いていた顔を上げる。彼は「よっこいっしょ……」と立ち上がるとそのまま部屋の出口へと向かう。彼の言葉の意味を理解出来ないでいる私は彼を追おうと立ち上がると、彼は出口の手前で止まり顔をこちらへ向けた。

 

「早朝と、夕方にはここで訓練してる。教えれることはまあ無い気がするが、見たければ好きにしろ」

 

「え、それってーーー」

 

私が言い終わる前に、彼は模擬訓練場を出て行ってしまった。そして、無機質な部屋に私だけ取り残されてしまう。

 

「……」

 

取り残された私は篭った熱を排熱させるのに精一杯だった。初めての『人』と話すのが緊張してしまったせいなのか、それとも、

 

(この胸の……締め付けは一体なんでしょう?)

 

終わりが見えない胸の鼓動となお昇り続ける熱。それが一体なんなのかを私は知らない。彼が最後に見せた表情。笑った時に暗かった目元に照明灯の光りが入り彼の青年らしい笑顔に産まれたこの熱。姉達に聞いたら答えてくれるだろうかーーー。

 

「あ、……名前を聞くのを忘れてました」

 

私は唐突に思い出し、一気に熱は冷めて行くこの感覚にまた私は不思議に思ってしまうのだった。

 

 

ーーーーーー

 

 

グリフィンSO9区ーー

 

舗装されていない道を護送車が走る。揺れる車内で俺は目を瞑り車が拠点に着くのを待つ。既に拠点にはG&Kの戦術人形が複数部隊そこに待機している。

 

2030年の北蘭島事件により、崩壊液(コーラップス)が漏出し人間が住める地域は激減した。しかも崩壊液の被曝し変異した生命体、『E•L•I•D』により人々は眠れない夜を強いられた。

 

その後、各国はこの事件をきっかけにいがみ合いそして、爆発させた。2045年、歴史の中で稀に見る凄惨さを残した第三次世界大戦。それにより人口は半分以下まで減少し、少なかった居住区は更に減った。

 

停戦後、人々はいがみ続けたが国家は治安を維持する程の力は残っていなかった。そこで国家の代わりに国の治安を守るのがPMC--民間軍事会社--と呼ばれる者たちだった。更に、民間軍事会社の中でも大手の企業G&Kーー通称『グリフィン』、正式名称は『GRIFON & KRYUGER』ーーにより、都市運営は行われていた。

 

今回は新任の俺が人手不足からの急遽な任務により現場へと急行されている。こんなご時世ではあるから仕方ないが、着任の時に挨拶を交わしたあの元気(うるさい)な後方幕僚はひどく心配していたな。

 

そんなことを思いながらあと少しで目的地に到着する時、

 

---Prrrrrrrr♫

 

懐にある携帯端末が鳴り出す。俺は懐から携帯---ガラパゴス携帯型と言うらしい---を取り出すと真ん中から上半分になっている液晶の部分を持ち上げる。今の時代にこんな骨董品を使っているのは世の中で俺ぐらいだろうかと、内心で苦笑いしながら電話を掛けてきた名前を見る。そこには先程まで噂をしていた後方幕僚だった。

 

「俺だ」

 

『あ、指揮官様!』

 

通話開始ボタンを押してスピーカーに耳を当てたると案の定に元気(うるさい)声が響いてくる。俺はそれにうんざりしながらも会話を続ける。

 

「……どうした?」

 

『あの、非常に申し訳ないと思っているのですが……。本当に今回の作戦を受けてよろしかったのでしょうか?』

 

「なんだ、そんな事を言うためにわざわざ俺に電話をしたのか?言っただろう、俺は既に16Labで作戦指揮のノウハウは学んでいる。今回の作戦に支障は出ない」

 

『ですが、着任したその日にブリーフィングを開かずにやるのは---』

 

苛立ち舌打ちしそうになるのを心の中で抑え込む。別段、今回の任務は難しくない。この後方幕僚はただ俺の能力を知らないだけだ。だから、この初任務はうってつけであった---

 

「今回の任務はスケアクロウの捕獲および捕虜になっている人形の確保。これぐらいの任務なら別に即席の部隊でもできる」

 

会話をしていたから気づかなかったが、どうやら護送車が目的地まで着いたようだ。俺は自分の武器が入っている銀のアタッシュケースを持つと護送車の扉を開ける。扉の隙間から入り込む光は、暗い車内を明るく照らす。

 

「いいか、カリン。この任務で俺の能力を見せてやる」

 

少しだけ口角を持ち上げると、俺はゆっくり護送車から降りる。乾いた空気に混じって感じる硝煙の臭いを鼻で感じながら、目の前に整列している人形達を一瞥する。俺は通話終了ボタンを押すと人形達に言い聞かせるように言う。

 

「俺が君達の臨時指揮官の、エド・ソーンだ」

 

 




今回は主人公の名前程度の紹介でしたが、次回からはより深く紹介していきます。

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