荘厳な装飾で彩られた古城は見る影もないほどに甚大な損傷を被っている。
足元を見れば、石造りの壁の瓦礫の下には年若い男女が埋まり絶命していた。
その中で重く冷たく支配する空間があった。この世のものとは思えぬ光景が傍観者数百名の眼前で繰り広がれる。
「無駄だ小僧・・。俺様の目はお前の心を手に取る様に読める。お前の魔力は既に尽きかけ、俺様の膨大な魔力は未だ余力を残している。お前が今考えている事は無謀というものだ。呼べばその時点で死ぬだろう。」
「喧しいぜハゲ。確かに分の悪い賭けには違いないが、この絶望的な状況を考えれば僅かな勝算に賭けるのは当然の手だ。・・・これは闇のゲーム。どちらかが死なない限り終わることはない。この賭けに勝てばお前が死に、負ければ俺が死ぬだけだ。結局その2択しかないのさ。」
古城と崖をつなげる石橋の上で血を流した精悍な少年と悪魔の化身の様な男が対立する。
魔法使いならば必須の杖はもはや意味を成さず、両者の手中にはない。代わりに魔力の光を発しているのは両者が持つ黄金のアイテム。少年の首にかかるペンダント、男の右目に収まった義眼がそれだ。
「まさに神のみぞ知るってのはこのことだっ・・!!」
「な、・・やめろ!今そんなことをしたら!!?」
「神よ!!降臨せよ!!」
力尽き横たわるハリーポッターの絶叫に脇目も振らず、少年は右手を天高く翳し曇天の空を指し叫ぶ。
「オシリスの天空竜!!!!」
7年前、誰がこの未来を予測できていただろうか。
人生には無数の選択があり、それには成功した道もあれば失敗の道もあるだろう。でもどちらが成功なんて誰にもわからない。それでもなお、前に進むには選ばなくてはいけない。勇気を振り絞らなければいけない。
これは少年少女たちが選択してきた軌跡を描いた物語。
◆
魔法界では様々な伝説、伝承が数多く存在する。例えば、死の秘宝やホグワーツの創始者の1人グリフィンドールが創りし剣、スリザリンの継承者だけが操れる蛇語など、一般的には噂話でしか囁かれないが、事実それらは存在し魔法省の上層部や死喰い人の中ではそれらを保有している者もいる。
しかし中にはあまりに強大な闇の力を持ちながらも、あの偉大な魔法使いダンブルドアでさえ見たことがない古の秘宝が存在した。
その秘宝は錬金術の源流とされる古代エジプトで生み出された物だ。しかしその事を知る者も、どういう用途に使う物であるか知る者もいない。墓守の一族と言われる数千年続くエジプトの少数部族が代々隠匿してきたからだった。
彼らはただ待ち続ける。来たるべき時を。
秘宝の継承者が現れることを。
少年は軽い足取りで歩き慣れたトッテナムコートロード駅を通り抜ける。今年で11歳になる薄めの茶髪の少年、「ペップ」こと「ジョゼップ・ゲイム」の習慣はロンドン中心部に構える世界の博物館大英博物館の鑑賞だ。
いつもと同じく博物館には世界中から集まった観光客で賑わっていた。その混雑の中をこれまた慣れたようにスイスイとくぐり抜いていく。そのフットワークは中々のもので、父親から習わされていたフットボールの練習の成果でもある。
「ヤァ、ペップ!今日は少し遅いじゃないか?せっかくビッグイベントの日だっていうのに。」
「せっかくの休日だってのに、担任が意味不明なくらい宿題出してきてさ~。さっきまで母さんに拘束されてたんだよ!!」
ゲート前にいた守衛の男が気さくにペップに声を掛ける。すると少年は如何にもプンプンと怒った口調で言葉を返しながら、1ペニーをゲート両端においてある募金箱の一つ入れた。
大英博物館は入場料が無料であるためプリマリースクール(小学校)に通うペップが毎週通うことができるのだが、マナーとしてこれ見よがしにおいてある募金箱に日本円なら1円に該当する1ペニーをペップはいつも入れている。
ペップはゲートをくぐると足早に歩を進め、お目当てのフロアへ一直線に向かう。いつもなら決まったコースを順々に回っていくにだが、今日は守衛が言っていたようにビッグイベントが開かれているため他の展示物には目もくれないでいた。
大英博物館で特に目玉となるのは古代エジプト展(作者主観)であろうか。世界の略奪館と言われる程のこの博物館は大昔商人が手に入れた文化財が寄付、または商人から買い取った物が多くを占め、そして古代エジプト品の多さは世界一と言ってもいいだろう。十数年前まではツタンカーメンの仮面があったらしい。
それはさておき、この週末から前々から大々的に宣伝されていた古代エジプトの新たに見つかった物品が展示されるイベントが開催されている。もう出尽くしたと思われていた古代エジプト品がこの目で見れるとあって少年のテンションは家でも学校でもハイになり過ぎて周りからドン引かれていた。
「おぉ・・・」
人を掻き分け、お目当ての展示場に足を踏み入れた。見た瞬間にテンションがブチギレるだろうな、という自身の予想に反してペップは目の前の輝く黄金の品々に感嘆の息を漏らした。
スッゲェ・・・・こんな綺麗なものがあるのかぁ・・・。
口を半開きに呆けたペップは数分間身動きしなかったが、周りの人たちにも似たような者がいたのかペップの様子は奇行という程には目立たない。
パチクリと我に返ったペップは品の一つ一つを目をひん剥いてじっくり覗き込む。ガラスケースに鼻がつくほどに近づけ、興奮して荒い鼻息がケースを曇らせる。それはさすがに迷惑行為だったのか警備員に半歩下がるように促されてしまった。
ペップ1人だけ時間軸が違うかのように一つの動作が遅く、一つの品を見るだけで15分くらいかかっていた。そしてその中で今彼が見だしてすでに30分は経過している品があった。その品は他の黄金に比べても一層に輝くホルスの目の模様が一部ある箱に入ったバラバラのパズルであった。
パズルであるなら完成形ではない今の状態にそれほど魅力があるとは思えないのだが、ペップは目を離せないのであった。
「・・・今までに誰1人として完成したことのないパズルか!なにこのワクワク感!それでもって完成した人には願いが一つ叶うって・・ロマンしかないじゃん!!」
ペップが博物館の歴史物に魅かれるのはひとえに言ってロマンを感じるからだろう。大体の人が感じる感情だがこの少年はそれが一層強く感受性が高い。
「すいません!!これ!組み立てるのに挑戦してもいいですか!?」
ペップはビシッと手を挙げ元気よく展示解説員に物申す。唐突の許可の要請に虚をつかれた解説員の男性であったが、「ごめんね坊や?触ることはできないんだよ?」と優しい口調でやんわりと断れた。当然である。超重要文化財であるここの展示物に触れることができるわけがない。子供らしい意見に解説員含め周りの大人は微笑ましく笑い声をあげた。
そんなこんなありながらもペップはエジプト展を大いに楽しんだ。
その傍らでこのイベントの主催者かつエジプト文化庁の職員であるオリエンタルな外見の女性がペップを見つめていた。すると帰り際にその視線に気がついたペップは彼女に声をかける。
「おねーさん、俺になんか用?お茶するなら俺ミルクティーしか飲めないよ?」
「クス・・・いえ・・違うんです。貴方のような少年があんなに展示物に釘付けになっているもので嬉しくなりまして。」
品が良さそうに口に手を当てニコリと微笑む彼女に、(はぇ~・・・美っ人・・・。)とペップはドキリとする。
「お、俺さ!毎週ここ来てるんだ!だ、だからこの展示も開催中は毎週来ると思う!」
「そうですか。エジプトの文化庁の者として貴方ような良い子が興味を持ってくれることは大変嬉しく思います。」
「特にあのパズルがすごく気になるんだ!誰も完成したことのないなんてさ!」
「そうですね・・。あれは3000年も前の物なのに今だに未完成なのですから、もし完成したら願いが叶うというのも本当かもしれないですね。貴方ならどんな願いを叶えてもらいますか?」
女性の質問にペップはスイッチが入ったかのように真剣に悩み出す。
「う~ん・・・。やりたいことはいっぱいあるんだよなぁ~。冒険とか探検とか・・あ、一緒か!漠然というならロマンがあることとかな!?」
「ロマンですか?例えば見たことない生き物見つけたり、・・・・例えば魔法を使ったり?」
「そうそう!魔法は・・どうだろ?できたらそれが一番おもしろそうだよね!中世では魔女狩りがあったくらいだし、本当にあったら使いたいな!はっはっは!」
この後ひとしきりペップが女性にエジプトについて質問を数回して別れることとなった。別れ際ブンブンと手を振るペップでわかるように、彼は女性の話に大満足したようだった。
「イシズさんていうんだなぁ~。明日もいるかなぁ~。でも忙しいよな、偉い人みたいだったし。」
にこやかなペップに対して、職員用の部屋に入ったイシズという名の女性の顔は先程とは打って変わり、陰りのある表情へと変化していたのであった。
週末明けの月曜日、ペップは学校なんて洒落せぇ!!といった態度で授業を受けていた。日曜の昨日も博物館に行ったのだが、イシズには会わずじまいで少し不満げな休日になってしまった。毎週末にだけ通うことを許されているペップだったが、今日帰りに行ってやろうかと画策していた。
しかしペップが住むリトル・ウィンジングはロンドン近郊とは言ってもサブウェイの交通費は小学生の身分上すこぶる痛いし、足りないからだ!
そして今いる学校もリトル・ウィンジングにあるしで、ヌォ~っと頭を抱える。
(土曜日まで待てねぇーーー!!)
頭に昨日まで数時間は見たあのパズルのことが離れない。今までそんなことなんてなかったのに、まるで中毒者のようにそれを求めてしまっている自分がいることにペップは感じていた。
(コカインとかってこういう気分なんかな?)
危ない発想になりかけている少年の図。
物思いに耽っていると、ムチムチの少年がペップに話しかけていた。
「おい、ペップ!フットボールしようぜ!今日こそ負かしてやる!」
「ダドリー・・今気分じゃないんだけども。」
ダドリーという名の少年は脇にボールを抱えてペップを誘う。彼の後ろには何人か控えている。
「俺の言うことに逆らうのか!?」
「なんだよ!なんで俺がお前の言うこと聞かんといかんのすかね!?全くわがままボーイだなお前は!家庭環境知れるぞ!」
「うっせえ!いっつも勝ち逃げするお前が悪いんだぞ!チームもやめちまうしよ!」
父親から習わされていたフットボールだったが、ペップはかなり上手い部類だった。なんだったらロンドンのビッグチームから勧誘がきたほどにだ。
「コーチからはランパードにだってなれるって言われてたのによ!俺が勝ったらチームに戻れよ!
「だからやんねぇって!!というか別にチームメイトでもないのになんでお前がそんなしつこいんだよ!?」
「だって俺お前のファンなんだよ!」
「ダドリー!」
まさかダドリーにキュンとしてしまった。ダドリーのくせに。
ちなみに余談だが、このペップというのもフットボールからくる愛称だ。俺の父親は熱心なフットボールサポーターで近所でも有名だ。若い頃はフーリガンにも参加して結構やばかったらしい。
そんな父さんは古くからのチェルシーFCのサポーターだ。このチームはロンドンの東部に位置したクラブでロンドン南東に位置するサリー州に住むペップたちにとって一番近いビッグクラブで、この学校でも比較的数は多い。もっとも一番近いのはフラムFCだったりするので、フラムサポは弱小クラブということでチェルシーサポから小馬鹿にされがちだ。ランパードというのはチェルシーのレジェンドのミッドフィルダーである。
でもなぜ愛称がペップなのか?それは父さんがチェルシー以外で唯一大絶賛していた元バルセロナの選手、ジョゼップ・グアルディオラからつけた名前だからだ。彼の愛称はペップ。だから俺もペップ。安直だなぁ・・。んでもってそのグアルディオラなんだが、選手としても一流なんだけど、監督として世界ナンバーワンの監督だったりするわけで。世界一有名な監督なだけに、ここフットボールの国ではめっちゃ知られてるから周りもペップ呼びが一瞬で定着した。
さらに余談だが、そのペップ監督は今マンチェスターシティっていう監督をしててキチガイじみてるくらい強かったりする。なので父さんはチェルシーを応援するかシティを応援するかの狭間で苦しんでいる。ちなみに俺はリヴァプールが今のトレンドである。クロップ監督が好きなんだな!熱いし、ロマンがあるし!
とまぁ、フットボール自体は好きなんだけど、今は別のことに興味が向いちゃってんだよな。
「くそっ!今日は嫌に頑固だな。しょうがねえ、お前ら行くぞ!あ!あとハリー、お前球拾いしろよ!」
ダドリーは同居人である使いパシリのハリーを顎で呼び出す。その光景はいつも通りであるため、ペップもハリーをいいように使うダドリーを今更咎めたりはしなかった。
ペップは帰路の途中、どう平日に博物館に行くか考えながら歩いていた。目下の悩みはやはり交通費と帰宅時間にある。交通費は毎週末どうしても行きたいと泣きじゃくり、流した涙と汗の結果週2の回数分の費用は手中に収めた。しかしもらった回数分以上は使うことはできない。すでに月末で今月分はもう無い。そして放課後に行ってしまうと余裕で帰宅時間が20時を回る。そんなことをしてしまうと母からどんな制裁を受けるかわからない。コレクションの博物館のピンバッチがいくつ燃やされるかなんて考えたくも無い。
考えていたら家に近い集合住宅地まで着いてしまっていた。しょうがない、行くなら明日からだなととりあえず今日は諦めた。
ペップは俯ていた顔を上げて前を向いて歩いているといくつものカバンを持たされていたハリーが千鳥足で歩いていた。絶対ダドリーのだろう。そんなハリーに彼は声をかけた。
「おい、ハリー。カバン寄越して!何個か持つよ。」
「え、ペップ?だ、大丈夫だよ!悪いよ!」
「フラフラして何言ってんだ。ヒョロイんだから無理すんな。」
「あ、ありがとう・・。ペップは優しいね。」
「ん?そうか。ハリーの方が優しいと思うけどな。俺ならこのカバン川に投げつけてるぜ?もちろん工場の隣のドブにな!あ!今からやるか?」
「ええ!?そんなことしたらどんな目に合うか!・・・・面白いけどね。ふふ。」
ペップとハリーは特別仲が言い訳では無いが、気は割りかし合う方だ。どちらも悪意というのを持たない性格な分、自然に会話ができる。
「ところでさ!ハリーはあのエジプト展見たか!?」
「ああ、今すごいCMしてるやつ?ううん。そういうとこは連れて行ってもらわないと行けないんだ。ペップは当然見たんでしょ?」
「ああ!すごかったぜ!・・・で、ハリー?お金もってね?」
「え?なに急に?」
「いや実はどうしても明日にもう一回行きたいんだよ!でも金が無いんすよ!もちろんハリーも一緒に行ければ最高なんだけど!」
「・・・ごめん。僕、お小遣いとかもらって無いんだ。」
「・・・世知がれえな。」
子供はなんて無力なんだ。今まさにそれを味わったペップであった。一瞬逡巡した後、「あっ!」と閃いたのように彼は両手を後頭部で組んだ。
ペップとハリーは小走りでダドリーたちが遊んでいる公園に向かった。
「ダドリー!」
ペップは学校でのダドリーの勝負を受けてやることにした。そのペップの言葉にダドリーはニタリと口角を上げた。
「お前の勝利報酬が俺のチーム復帰だったな!だったら俺も報酬をもらうかんな!」
「で?なんだよ?」
「金だ!金をよこせ!!」
ドン、と堂々と金銭要求だった。
「お、お前まぁまぁ下衆なこと今言ってんぞ!?」
「ウルセェ!つっても小銭程度だよ!金もってんだろう、お坊ちゃんよぉ?」
「・・いいぜ。ゼッテェ負かしてやる!オラァ!」
負けず嫌いの2人のモチベはヒートアップした。
勝負方法はバレーコート半分くらいの広さに四方形のラインを引いて、その中で自分の反対側のラインまで相手を抜いて到達したら勝ちだ。
ペップは股抜き5回、アンクルブレイク3回かましてダドリーの財布全額をかっさらった。ハリー曰く、今までの人生で一番エゲツないものを見たと語った。
そして翌日、母親に拝み倒してなんとか放課後の博物館行きを勝ち取ったペップ。最後のハリーにもあの感動を味わせてあげたいということが決め手であった。持ち札があれば友達を出汁することも厭わない性格でもある。本心でもあるんだけどね。
「で、ダドリー。お前も来るんかい。」
「元々俺の金で行くつもりだったんだろうが!!それにハリーが行くなら当然俺にも行く権利あるだろ!」
メンバーはペップ・ハリー・ダドリー・ダドリーの母ぺチュニアの4人だ。ホントは保護者無しがいいんだが、流石に11歳を夜更けの時間出歩かせられない。過保護のぺチュニアが着いてくるのが妥当だろう。
「ダドリーちゃん?ママから離れてはダメよ?」
「・・ププ!ダドリーちゃん!」
「むぐぐ・・・!!」
流石に同級生の前でちゃん付けされ恥ずかしがるダドリー。最初はペチュニアの過保護っぷりに笑い声を零すペップだったが、博物館に着くにつれ公開処刑されているダドリーに同情してきた。
「ハリー。いつも家でもあんな感じなんか?」
「そうだよ。おじさんも加わるから今の2倍だよ。」
「・・まぁ家ではほぼ家族のハリーに見られるぐらいだからいいけど、友達の前であれはキツイな・・。でもそれを毎日見せられるハリーも地獄だな。」
ぺチュニアの猫なで声に少々辟易してきたペップであった。
4人が博物館に着くと、博物館の周辺は混沌としていた。
署内の人員を全部引っ張ってきたんじゃないか、と思えるほどの警察官やパトカーが博物館の前に集結していた。
「ど、どうしたんだ?」
ペップは困惑して周りをキョロキョロと見渡す。その中で警官から聴取を受けている顔馴染みの守衛に話しかけた。ペップに気がついた守衛は自分の知っている限りのことを話してくれた。
「「「パズルが盗まれたぁ!!!???」」」
この騒動はどうやらエジプト展の物品の盗難で起こったことらしい。だが同時にこの警官の数に3人は納得した。
国の重要文化財が盗まれたのだ。しかも他国の。かなりの大問題だ。
しかし不思議なのは、博物館の営業中に盗まれたのだと言う。これに関して全くおかしな事だ。あれだけ混雑していた展示場で日中盗むなんて不可能に近い。いや、絶対無理だ。困惑しているのは3人だけではなく、警察も同様だった。
ペップは脱力した。あれだけ自分が魅かれた物が盗まれたのだ。絵に描いたような落ち込み具合を見せていた。
「元気出してよペップ。すぐに見つかるさ。」
ハリーは慰めるものの、これが焼け石に水な事は重々承知していた。この日の学校で散々熱く語っていたペップが脳裏に残っていたから。ペップの好きなものに対する執着は皆が知るところである。
この騒ぎで博物館は閉鎖されており、ペップたちはトンボ帰りすることになった。しかしその前にペップはイシズを探し回った。自分以上に彼女が傷付いてしまっているのではないかと思ってのことだ。
数分走ったところでイシズを見つけた。
「イシズさん!!」
「・・ペップくん?」
2人は10分かそこら話し、その様子をハリーとダドリーは見つめていた。2人にはイシズと話すペップの様子に目を丸くする。ペップは少し照れながらしどろもどろしながら彼女を励ましていた様子に。
「おい、ハリー。ペップのあんな感じ見たことあるか?」
「ううん。ないよ・・。」
2人の中ではペップは年相応に好きな事にはしゃぐ同級生ではあったが、男気があって堂々とした態度のリーダータイプだ。ああいう風な感じはイメージはない。
「からかうネタができたな。仕返ししてやる。」
「絶対しばかれるよ?」
イシズはペップの手を取り、優しく微笑んだ。
「ありがとう。優しいのね。」
「そ、そんな事ないよ!」
ハリーにも同じことを言われたが、イシズに言われるとなんだか全身がむずかゆい。
「ただ、私はそれほど心配してはいないの。」
「え?」
「一つだけ言えることは、あのパズルは選ばれし者の前だけに現れる。覚えておいてね。」
「そ、それってどういう意味・・・?」
イシズはそれ以上は何も語らず、博物館の中に戻っていった。
そしてペップたちは帰宅するのであった。
ペップはイシズの言葉を何度も頭の中でリピートして家の玄関まで到着した。すると母親が玄関まで出迎えにきてくれた。
「残念だったわね。あんな事件が起きて。」
「うん・・。」
「暗い気分の時に悪いけど、あんた。なんか忘れてることないかい?」
「え?」とそれが何かわからないペップだったが、母の口にした「テ」の一文字でそれが何か察した。
先週のテスト用紙だった。成績に大きく反映されるテストは全て母親に提出するゲイム家のシステムを即座に思い出した。マズイ、とペップは冷や汗をかく。
テストの点数なんてエジプト展のことで頭がいっぱいで5枚中2枚二桁があればいい方のクソみたいな点数だ。一歩後ずさったが、出さないは出さないで悪魔の制裁だ。その選択肢は流石にない。
「あ~~~、引き出しに入れっぱなしだったわ~~。取りに行ってきますよっと!!」
少し震え声で二階の自室に上がっていくペップを見て、母はハァ、と溜息を吐く。どうせ悪い点なのだろうというのは当たりはつけていたからだ。そもそもいい点を取れば、真っ先にドヤ顔で見せてきて小遣いの交渉してくるのが常だから。
自室に入ったペップは一旦間を置こう!タイムアウト取ろうと、椅子に座った。
「・・・来月小遣いないかも。絶望だぁ~~。」
そう言いながらテストの入ったデスクのテーブル裏の引き出しを開ける。
右上に3と書かれた用紙に辟易しながら乱雑に5枚同時に引き抜く。・・・しかし上に物が乗っているのか、引っ張り出せない。この物なかなか重量あるなと思うが、そんなもの入れたっけ?と思い返す。引き出しを全開に開けるかと、気が進まない自身の腕を無理くり引き抜く。
すると、決して家にないはずだが、めちゃくちゃ見覚えのある物が引き出しに入っていた。
ペップはそっと引き出しを元に収める。
「いやいや・・・・。なわけない。疲れてんな。」
眉間を揉みほぐし、もう一度引き出しを開けてみる。
中に入っていたのは、光り輝く純金のパズルであった。
「・・・・。」
「なんで?」
少年の魔法界を揺るがす事件の始まりだった。
オリジナル多め。勢いで全部書いたんで肩痛い。
ジョゼップ・ゲイム Josep Game
イングランド人
マグル
151cm
左利き
ドリブラー
遊戯要素を名前に入れたかったので、ゲームを安直にぶち込んだ。今後サッカーすることはあまりないが、代わりにクディッチで活躍する予定。
割と友達にはカッコつけがち。
割とハンサムで英国人っぽい顔。