ハリーポッターとエジプトの王   作:もりも

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ファンビーおもろかったわね。繋ぎ回だったけど。




二階の自室でペップが1人パズルに没頭していることで、ゲイム家では土曜の夜にヒストリー番組が始まるとリビングのソファーを中心に騒がしくなるのが恒例なのだが、ここ数週間全く音沙汰がなく落ち着いたサタデーナイトが続いた。

隣家の主人が心配で尋ねてくるほどの違和感にペップの両親は頭を悩ましていた。

 

「いつもは呆れるほどに喧しいのに・・急にどうしたのかしら?学校から帰ってもずっと部屋に篭ってるのよ・・。」

 

「僕としてはフットボール中継を大画面で観れるのは嬉しいけどね。」

 

「ちょっと!!真剣に考えてよ!!あなたは心配じゃ無いの!?」

 

「まぁまぁ落ち着けよ。あの子も思春期に入ってるんだ。色んなことに興味を持つこともあるだろ?」

 

ペップがいつも占領するソファーの左端に持たれかかって父は母を宥める。

 

「小さい頃はあれだけフットボールに夢中だったけど、これだろ?」

 

父はリビングに所狭しと置いてあるペップのコレクションを指差した。

 

「あの子は興味があることに凄く素直なんだ。その時その時好きなことをさせてあげよう。」

 

昔フーリガンに参加していたとは思えないほどに温和な口調で様子を見ようと父は促した。

父の言葉に口を少しとんがらせながらも渋々納得した母。彼女はなんだかんだでペップに対し少し過保護なところがあるから日頃口うるさくなるのだろう。

 

 

 

 

引き出しからパズルが出てきてから、俺は気がついた時には一心不乱にパズルを組み立てていた。といっても摩訶不思議な形状すぎて全くピースがハマらないけど、それでも手が止まることがなかった。

パズルを見つけた時は「なんであるの?」とか「俺が窃盗犯扱いされるんじゃ・・」とか頭に浮かんできたが、一瞬で沈んでいった。

博物館で言われたイシズさんの言葉・・

 

『パズルは選ばれし者の前だけに現れる。』

 

つまり俺は選ばれし者だってことなのか?本当にそうか分からないけど、それが俺に火をつけたのは確かだ。

不思議なこと、自分の想像を超える何かこそ俺が求め続けたことだったからだ。

 

 

 

 

 

 

・・・・そして俺はそのことしか頭が無いかのように他のことに興味を失ってしまった。

この二週間他人と何か喋った記憶が無いほどだ。

それはそうと、ハリーとダドリー一家が夜逃げをしたらしい。別に借金とかしてもいないらしく不思議ではあったけど、その不思議は俺の興味を引くことはない。

あの2人はそこそこ話す間だったし、ダドリーに関してはフットボールのことで意識していたところもある。

・・でも正直どうでもいいとさえ感じている。自分でも少し驚くほどドライだ、とも。

 

パズルは半分ほどしか未だできていないが、飽きは一切感じない。なんでだろうか?・・表現は難しいけど、なぜか誰かと話しているかのように感じるからだと思う。その不思議な感覚がますます俺を惹きつける理由なのかもしれない。

とうとう学校まで休むようになってしまった。でもそんなことは問題でさえ思わなくなった。

流石に母さんが部屋に入ってきて怒鳴ってきたので、俺は逃げるようにパズルを持って外へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法界では今年にかの有名なハリー・ポッターがホグワーツに入学すると大きな話題となっていた。

ハリー・ジェイムズ・ポッターと言えば、魔法界を暗黒のドン底まで堕としこんだ例のあの人を倒したことで知らぬ者はいない伝説的でさえある少年だ。彼のおかげでそれまで続いた闇の時代が過ぎ去り、人々に彼が英雄視するのは必然であった。

それほどまでに例のあの人、ヴォルデモートが畏怖されていた存在であったかがわかるというもの。

そしてヴォルデモートの影響力は未だ健在で、ハリーが赤ん坊の時に死亡したのでかれこれ11年が過ぎようとしているが裏では未だに彼の忠臣が息を潜めていると聞く。

 

そしてその中の1人、バーテミウス・クラウチ・ジュニアはマグルの世界に身を隠しなんとか生き延びていた。

魔法界の名家聖28一族「クラウチ」の出身であり、ヴォルデモートに忠誠を誓った彼は闇祓いのリストの最上位に挙がるであろう人物だ。

舌を蛇のように過敏に動かす癖を持つ彼の身なりは浮浪者そのもので、重たく沈んだ瞳はその姿から違和感を感じさせなかった。しかし彼も意味もなく流浪の生活をしているわけではない。彼には目的があった。

それは主の完全なる復活。

そのためにひたすらある物を探すため足を動かす。それが彼の仕事だ。ただクィレルとは違い主とは遠く、なおかつ真偽も不確かなこの仕事に大きなイラつきを感じていた。

彼の仕事は遥か昔、魔法使いという概念すらなかった古代に存在した秘宝を探し出すこと。

その秘宝は願いを叶える、と眉唾なものではあったが、そんなものにも縋らなくてはならないほどあの人の復活は困難であったからだ。分霊箱に魂を分けているからこそ完全に死ぬことはないが・・。

あらゆる可能性を探るために何人かがそれぞれの担当をしており、クラウチJrがこれの担当になった。

彼はあらゆる手を使い、かつてはエジプトまで赴きその存在の調査を行なったが箸にも棒にもかからず半ば途方に暮れていたが、ふと母国にて興味深い催しが行われると聞き及んだ。

すかさず目当ての大英博物館へ足を運んだが、その物品が紛失した後だった。

しかしその事件の詳細を関係者から聞き出すと、彼はその紛失した品こそが自分が求めていた物であることを確信した。

その品の説明文の文言が願いが叶うということではないか。今まで数年に渡って箸にも棒にもかからなかったことを思えば確信するまでにこの文言を盲信するのも無理はないかもしれない。

彼は徹底的に探った。

するとサリー州のある街にあの博物館によく出入りしていた少年が人が変わったかのように何かに夢中になっていたという情報が入る。博物館の守衛の口からふと零れ出た一言だった。

闇の魔術の類には人の心を支配する性質がある。普通なら日常レベルの微々たる変化だがクラウチJrは見逃さなかった。

闇眩ましを用いて直ちにリトル・ウィンジングへと足を踏み入れた。

そしてそこから大した時間は経過していない。都合よくペップが公園でパズルを弄っていたからだ。

彼の舌はゆっくりと下唇を舐める。

 

 

 

 

 

 

ペップは体力が限界を超えない限り、空腹だろうと寝不足だろうとパズルを触ることをやめない状態が続いている。母からの視線から逃れるため公園の物陰でこっそりとしていた彼はここ数日そういう状態だ。

未だ未完成ながら半分以上を組み立て順調に進んでいたが、どうも今日は落ち着かないでいた。口で形容することは彼ではできない何かを彼は感じていたからだ。彼は自身に近づく正面からくる足音に目を向け、見窄らしい男を視界に捉える。

 

(なんだ?このおっさん?)

 

明らかに不審者・・・クラウチJrの姿にペップは自然と警戒すると同時に手に持つパズルを自分の背中に隠した。

パズルを隠されたクラウチJrは眉を顰め、高ぶる興奮を抑えながらペップに問いかけた。

 

「小僧、今手に持っている物を見せてみろ。少し見せるだけでいい。」

 

「・・・・」

 

ペップは答えない。おそらくこの男がこのパズルがどういう物か知っていることをその猟奇的な眼光から図りとったからだろう。本来ここにあるはずもない物を持っているのだ。隠す行為は自然から出た行動だった。

クラウチJrは数秒ペップの言葉を待ったが、返答がないことに手を震わせ言葉では表さなくともイラつきが体に表れる。

 

「もう一度、・・・いいか?もう一度言う。そのパズルを俺に見せろ!」

 

今にも鬱憤が爆発しそうな男に子供のペップは流石に怯んだ。しかし今や自分の欲求の大部分を占めるこのパズルを手放すわけもなく、明らかな拒絶の意思をクラウチJrに向けた。

そのペップの態度に抑えていたクラウチJrは右手で腰に差した杖を掴み、ペップへ差しむけた。

 

「ガキが、大人しく従えばいいものを!!・・クルーシオ!!」

 

「ぅあ”あ”あ”ぁ”ぃあ”あ”!!!!!????」

 

魔法界の人間であれば、聞くだけで血が引き慄くであろうその魔法をクラウチJrは躊躇もなく言い放った。

ペップは彼の意思に関係なく全身を駆け巡るあまりの激痛に捩れのたうち回る。

男は口角を歪に持ち上げた。この呪文は彼が最も好んできた磔の呪文だ。使えばそれだけでアズカバンに収監される許されざる呪文の一つ。

30秒ほどが経過したところでクラウチJrは呪文を一時的に休止させる。

 

「・・・それを大人しく手放す気にはなった、か?いや答えることもできるわけもない。大人でさえ発狂する呪文だ。」

 

クラウチJrは地に伏せたペップを仰向けに転がし腹の前に握りしめるパズルに手をかける。

しかしその握る手が離れることがない。グググ、とクラウチJrが引っ張れば、ペップの体ごと付いてくるほどペップはパズルを握りこんでいた。

 

「・・ぐ・・っ。な、んだ・・お前ぇ。」

 

「バ、バカな・・!?この呪文を受けてまともに意識があるだとっ・・!!??」

 

大人であろうと発狂するこの呪文を受けてもなお、意識を保つペップにクラウチJrに戦慄した。

そしてゾクリと悪寒を感じたクラウチJrの視線は自然と目的のパズルに移る。高度の魔法使いである彼だからこそ微弱なソレを感じ取ったからだ。

 

「なんだ・・・これから発する魔力と邪の鳴動は・・・。」

 

杖しかり魔具には魔力や意思のような何かが内包していることがある。ならば幻の秘宝とされるパズル・・・千年パズルならば一体どれほどの力があるだろうか。

 

(驚くべきは・・・この魔力の流れ。この小僧に秘宝の魔力がなだれ込んでいる!磔の呪文がイマイチ効果が薄かったのは、秘宝の魔力が小僧を守っていると言うことだったか!?)

 

前述の通り、魔具には意思がある。術者が杖を選ぶのではなく、杖が術者を選ぶという認識は魔法界にとって聞き馴染みのないことではない。グリフィンドールの剣などはその最たる例であろう。

未完成でありながらパズルから発する魔力はペップの体を覆うように纏わせている。つまりこの時点でクラウチJrの脳裏にはペップこそがパズルに選ばれし者であると過ぎっていた。

だが、選ばれた者が別にいるとしても他の者が扱えないという訳でもない。術者がそれらを屈服させてしまえば所有権は移ることもあるからだ。

そういった意味では彼の「主人」は最も支配的な人物だ。

 

そしてこの状況にクラウチJrは確信した。

俄かに信じ難かったこの秘宝が齎す力が本物であることを。

 

「・・・物が自らの意思で主人を守るなど多少の驚きだが、果たしてどれほどの防御力があると言うのか。」

 

唇を舐めながら猟奇的な眼差しをペップに向け、クラウチJrは最悪の呪文を唱える。

 

「アバダ・ケダ・・!!」

 

数ある呪文の中でも唯一直接的に死を与えるものを男はペップの眉間に目掛けて杖を振り下ろした。

だが、杖の切っ先はペップに向くことはなく、なぜか杖は彼の右側に設置された公園の遊具の手前に突き刺さった。

勿論彼自身がそうしたのではない。クラウチJrは殺人の快楽と目的の達成感の二つを邪魔されたことに憤怒の顔を表しているのだから。

 

クラウチJrの背後には1人の女性が純白の杖を彼に差し向けていた。

 

「離れなさい。・・然もなくば次は延髄に叩き込みます。」

 

凛とした声色にクラウチJrはこの女が自分側の人間ではないことを感じ取る。

 

「・・ハッ!・・・俺はお前をどこの誰だか知らないが、お前は俺のことを知らない訳ではあるまい。この俺を相手にすることは深い闇を相手取ることになるぞ!」

 

「私にとってあなた方の闇さえ淡さを感じます。退きなさい。そのパズルはあなた程度で御しできる代物ではありません。」

 

自分を死喰い人と知りつつも、言葉に淀みもなく撤退を促す彼女に杖を手放したクラウチJrは流石に分が悪いと両手を上へ掲げた。

 

「お行きなさい。本来私はあなた方死喰い人・・いえ魔法界の人間に手出しする気はありません。」

 

「・・・一つ聞きたい。お前はパズル・・いや、七つの千年アイテムを守る墓守の一族だな?」

 

クラウチJrは後ろの彼女を一瞥もせずに彼女の正体を言い当てる。

 

「何度もエジプトへ足を運んだ貴方には答える必要がないようですが。」

 

「・・・今になって疑問に感じたことがある。この数年、七つもあるそのアイテムを俺は探し続け、何人もの政府の要人に尋問を繰り返してもそれの所在にはありつけなかった。だが、なぜ今になって博物館に展示するなどその存在を表舞台にさらけ出したのだ!?」

 

「答える義務はありません。」

 

「この魔具は自らの意思を持ち、明らかに使用者を選別する類の物だ。そう簡単に適合者が現れるなどない。・・・だとすればあまりにタイミングが良すぎる。」

 

クラウチJrはこれまでの過程を頭で整理していく程、今の状況が作為的な筋書きに思え始めた。

 

「初めからこの・・マグルのガキにこのパズルを渡すかのように。」

 

「・・・。」

 

「まぁ・・・今回は退くとしよう。これ以上深堀していけば殺されかねん。だが、一つ忠告しておこう。俺たちは蛇がごとく執念深い・・・・精々そのガキを匿う様励むがいい。」

 

どこへ逃げようとパズルを手に入れてやると言い残し、死喰い人クラウチJrは闇晦ましでこの場所から去っていった。

 

女は一息を吹き、意識が未だに朦朧としていたペップを跪いて顔を覗き込んだ。すると杖を一振りして彼の肩をポンと叩く。

 

「・・・っあ!?さ、さっきの奴は!?」

 

ガバッと起き上がったペップは先ほどの苦しみが嘘の様に忙しなく周りを見渡す。

 

「去りました。・・・また、会いましたね。少年。」

 

「あんたは、イシズさん・・。なんでここに・・・ていうかさっきまでのはなんだったんだ?」

 

ペップの問いにイシズはゆるりと立ち上がり、杖をクラウチJrが置いていった杖に向けて「コンフリンゴ」と呟く。

すると地に落ちている杖が突如爆破され、地面ごと跡形も無くなってしまった。

 

「へっ!?」

 

これにペップは最近では失っていた表情を大いに歪ませ驚愕した。何が起こっているのか分からない、そんな風に大口を開けている。

 

「これは魔法です。・・・そして先ほどの男と私は魔法使いに該当します。急にこんな突飛な話をされても困るでしょうが・・」

 

「貴方は千年パズルに選ばれし者。そして3000年前の古代エジプトの王の生まれ変わりなのです。」

 

魔法の衝撃にイシズの言葉も頭に入ってこないペップ。これまでマグルとして育ってきた彼にとってこの非常識な光景を理解することは土台無理な話である。

しかし千年パズルを手にした時点から彼の生きる道が180度一変することはすでに決定事項だった。

これから彼を待ち受けるのは、魔法界を揺るがす闇と何千年にも渡る戦いなのだから。

 

「しかし貴方にはまだその器たるには力はありません。今はその身を隠し、来たる時まで力をつけるのです。」

 

「貴方にはホグワーツ魔法魔術学校へ入学してもらいます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

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