ハリーポッターとエジプトの王   作:もりも

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この投稿前から原作全部買って読みながら書いていってます。(先が長いなぁ)




学内にある競技場の中は普段のホグワーツからはかけ離れた雰囲気を発していた。

その狂ったような叫声も含んだ大歓声は今試合をしている自寮のクディッチチームに向けてあげられている。

この試合はグリフィンドールとスリザリンの対戦だ。そしてそのスリザリンの寮生であるペップは肩肘つきながら少し退屈そうな態度で観戦している。

 

「・・なんちゅうクソゲーだよ。クディッチ。」

 

ペップはクディッチのめちゃくちゃなルールに辟易して、熱狂する皆の中で項垂れていた。

クディッチの肝は何と言ってもシーカーだ。フットボールであればストライカーで、ラクビーではスクラムハーフであるように試合を決定づけるポジションだ。しかしシーカーのクディッチにおける影響力はそれらの比ではない。

シーカーが黄金の球スニッチを捕まえると点が加点された状態で試合終了となる。ここまではいい。問題はその点が150点というぶっ壊れた得点だ。

他の得点方法がチェイサーのゴール10点だと考えればシーカーさえ良ければ、もうそれでいいやん?となるからだ。

 

「あら?そうかしら?私は面白いと思うけど!」

 

隣で熱狂するハーマイオニーがペップに振り向いてそう言う。

 

「クディッチは長いと数日間もかかるって聞いたわ。そうなると差もその分広がったりするからいい塩梅じゃない?」

 

「まぁ〜クリケットも俺は怠く感じちゃうからなぁ。」

 

「シーカーの重要性の比重が高すぎるのがあるからシーカー潰しなんて戦略のあるくらいだし、そう考えたら奥が深いかもね。」

 

「んで、そのシーカーにハリーが選ばれてるんだからすげーな。」

 

ペップはいつもダドリーに虐められていた幼馴染のハリーがそんな花形ポジションで代表選手として戦っている姿に目を丸くする。

クディッチにはイマイチそそられないペップもハリーが試合に出ているということでスリザリンの席側ではなくグリフィンドールのハーマイオニーやネビルらの近くにいる。ちなみにロンは少し離れた所でシェーマスとディーンと観戦していた。

今ではスリザリンよりグリフィンドールの方が友達が増えていっているペップ。ネビルは同じ授業になった時、溢れたもの同士でペアを組んだ時にミスをよくする彼をフォローしてなんとか課題を成功させて仲良くなった。初めはスリザリンだっただけで怯えていたネビルだったが、今ではペップの姿を見かけると積極的に話しかけてくるほどだ。そしてディーンに関しては同じフットボール好きで話しが一番合う友人だろう。ディーンはロンドンの四大クラブ「ウエスト・ハムU」のサポーターで本人も結構うまかったりする。昼休憩はよく二人でネビルも合わせて遊んだりするもんだ。

 

 

「ねぇ・・何かおかしいわ。」

 

ハーマイオニーが先程の熱狂からうって変わってしかめっ面をこちらに向けてきた。

 

「何が?」

 

「見てわからない?ハリーの挙動が不自然におかしいのよ!」

 

「え?俺も箒乗るとあんなもんだぞ?」

 

「それはあなたがど下手くそだからよ!!」

 

ハーマイオニーの言葉にショックで落ち込むペップをよそにハリーが右往左往に動き出す箒に振り回されている姿を見て彼女とロン、ハグリッドは騒ぎだす。

 

「さっきフリントがぶつかってきた時に何かしたのかな!?」

 

「いや、箒に悪さすることは強力な闇の魔術をかけん限り無理だ。生徒のひよっこにできるとは思えんが。」

 

ハリーの超人的な箒扱いでなんとかコントロールできてはいるが、この状態がいつまでも続くわけではない。ロンたちはどうする?どうする?とあたふたしているだけであったが、ハーマイオニーだけは周囲を見渡して何か探している様子だ。

 

「思っていた通りだわ。スネイプを見て!」

 

双眼鏡をロンに渡して、ハーマイオニーはスネイプが呪いの呪文をかけていると話しだした。

 

「まさか!」

 

彼女の発言にペップは異を唱える。

 

「スネイプがそんなことするかぁ?」

 

「その通りだ。なんでスネイプ先生がそんなことせにゃならん!」

 

便乗してハグリッドもそう言うが、双眼鏡を覗けば確かにスネイプが何か呟いてる姿があった。

 

「まじか・・。」

 

魔法薬の授業では存外気に入られているペップのスネイプのイメージは皆に比べると10倍は良いことを考えると、にわかに信じがたい光景だったが、真逆の印象のロンたちは瞬時にスネイプを犯人へと決めつけた。

 

 

その後、ハーマイオニーがスネイプのマントに火をつけて無事ハリーが復活して試合はグリフィンドールの勝利が決定づけられた。

そしてその夜、敗北のショックを隠せないでいるスリザリン生が地下の寮へ戻ってきたその中でマルフォイ達は特に苛立ちを露わにしていた。その原因は当然同じ1年生がシーカーを務め、試合を決定づけたことへの苛立ちが大半だった。

 

「くそ!忌々しいポッターめ!とことん僕らを腹立たせるのが上手いらしい!!」

 

マルフォイは肩に掛けてあったチームタオルをソファーへ叩きつける。彼の言葉にクラッブ・ゴイル・ノットが頷いた。そして後から入ってきたザビニが口を挟んでくる。

 

「俺はポッターよりもゲイムの方がムカついたけど?」

 

「ゲイム?」

 

「ああ。ずっとグリフィンドールの席にいたぜ?あいつ。」

 

「・・穢れた血の模範的なやつだな。裏切り者だ!!」

 

クディッチには興味なさそうにして、まさか敵チームと仲良くしているペップに皆が憤慨する。

 

「あいつ、またボコボコにしてやろうぜ。寮内なら誰もチクる奴なんていやしないぜ?」とゴイル。

 

「まぁ、確かにこの寮にあいつを庇う奴はいないし、仮にあいつが教師になんて言っても父上に言えばさして問題もないけど。それはこの前もうやったしな。」

 

「その時はドラコの方がボコボコだったけどな。」

 

「うるさいぞ!ザビニ!」

 

「怪我なんてしても魔法使えばすぐ治る。やるならもっと精神的に痛めつけないと。」とノットが提案する。

それを聞いてニヤリとマルフォイは口角を上げた。

 

マルフォイ達が何がいいか考えようとしたその時、談話室にペップが入ってきた。ペップはこちらを向いた5人にを不審に思いながらも自室に入っていく。

丁度就寝時間が近くなっていたのでマルフォイはその話を翌日に持ち越した。

 

 

ところ変わってハリー達は勝利の宴の後、いつもの3人でこっそり話し合っていた。

 

「それで・・ハグリッドが言ってたそのニコラス・フラメルって人が関係あるの?」

 

試合中の犯人がスネイプだと話していた折に、うっかりハグリッドが出したその名前にハーマイオニーとロンは今回の秘密の鍵を担っているのだと考えていた。

3人(ネビルも)が入った4階のあの部屋。大きな三頭犬が守っている何かを守っていた。そしてトロールが現れたその日スネイプがあの部屋へ向かっていた目的の鍵だ。

 

「ええ。きっとそこに手がかりがあるわ。でも、聞いたこともない名前だから調べないといけないけどね。それとなんだけど・・・。」

 

「何?」

 

「スネイプが犯人の可能性が高い以上、ペップに探りを入れてみて欲しいのよ。」

 

「ペップに?じゃあこのことを話すの?」

 

「僕は反対したんだぜ?そんなこと話せばあいつがスネイプ本人にこの事バラすんじゃないかって!」

 

「ほら!彼、スネイプとはスリザリン生の中でも気に入られてるでしょ?」

 

ハーマイオニーはペップに密偵としてこの事件に参加して欲しいようだ。確かに普段魔法薬学では積極的に質問してスネイプに一目置かれているペップ。ならばペップに協力してもらえればこんな都合のいいことはないだろう。

 

「ペップは信頼できるしいいと思うよ。ただ、これを話すんならもう一度あの部屋にペップを連れて行かないと!放っておいたら一人で入っていきそうだし!」

 

 

 

翌日、ことの顛末を聞いたペップはそんな事件が知らない所で起こっていたのか、とハリーが隠していたことに少しムッとしていた。

 

「じゃあ前に中庭でコソコソと話していたのはその事だったんだな。」

 

「うん。ペップにはスネイプが何を狙っているのか、何を目的なのか探りを入れて欲しいんだ。」

 

「・・そういうのあんま得意じゃないんだけどなぁ。」

 

ホグワーツの塔でこっそりと集まった四人。

 

「そこは頑張ってもらうしかないけど・・。」

 

「でも、ま!面白そうではあるな!!」

 

「面白い、で済まされても困るんだけど!」

 

ちょっと楽しみだしてきたペップに釘を刺すハーマイオニーだが、こんなテンションになってきた彼何を言っても無駄なのを知っているハリー。

 

「今日確か午後の最後に魔法薬あるよな。その後スネイプの部屋に尋ねてみっか!!じゃ放課後またここで会おうぜ!」

 

「あ!勝手にあの部屋行ったらダメだよ!行くときは僕たちに言ってからだから!」

 

「分かってるって!!」

 

意気揚々と階段を降りていくペップに残った3人は不安を胸に抱いた。

 

 

 

ペップは放課後魔法薬学の準備室に押しかけた。扉を開けたスネイプはいつもの不機嫌そうな顔からさらに皺を深めたが、あまり抵抗なくペップを部屋に迎える。

 

「何の用だゲイム。生徒でここを尋ねてくる者は珍しいが・・。」

 

「まぁまぁまぁ!寮監の先生には色々聞いてみたい事あるっすよ!」

 

おおよその生徒は名前すら分からなそうな薬品・材料を置く棚がズラリと囲む中、スネイプは椅子をペップに渡す。意外と友好的な様子でいつも彼がハリーに向ける拒絶感はない。

 

「殊勝な心掛けだ。他の者にも見習わせたいものだ。」

 

「スネイプ先生は怖いからね。そのとっつきにくい感じなくせばいいんじゃない?」

 

「・・お前はもう少し言葉に気をつける方がよいな。言葉はその人物の品性をかたどるものだ。」

 

恐らくこんなフランクに会話できるには生徒の中ではペップだけだろう。こんな調子で軽いジャブを打ちつつ本命の話を引き出そうと目論む。だが・・・

 

「・・・そうではない。それをする場合は先に二角獣の角の粉末を入れるのだ。」

 

「なっるほど!原理はよくワカンねぇけど!」

 

「他の者とは比較的マシではあるが、どうも得手不得手の差が激しいようだな。この科目は僅かなことでも全て意味がある。基礎がなっていないと応用は不可能だ。」

 

部屋に入ってから1時間経つが、こんな調子で普通に授業を受けているみたいになってしまっている。

 

(ってチゲーって!?ここに来た意味全くねえじゃん!どう話持っていったらいいんだ?)

 

どう切り出そうか、ウンウン頭を捻っているのをみて真面目に魔法学に取り組んでいるとスネイプは内心ペップに感心している。

スネイプからしてペップは礼儀の無さと自分には無い向こう見ずな性格が目につくものの、他の生徒のように友達同士ですぐに解決しようとはせず、出来るだけ自分で解決しようとする姿勢は大したものだと思っている。彼自身もそうであったが、辛いことや困難なことがあっても決して口にすることはない。ペップが今の寮生活などでいい思いをしていないのは彼は知っていた。

そういうところに親近感を感じているのだろうか。彼自身もこうやって長々と生徒と話していることに若干の驚きを感じている。

 

「しかし良いのかね?授業も大切だが、君には早く解決しないといけないことがあるだろう?」

 

「?」

 

「我輩も寮監であるからして当然。聞いておるぞ。パズルのことを。」

 

「あ、それのことか!」

 

「・・まさかとは思うが。本気でそのことを忘れているのではあるまいな。」

 

「え・・いやいやいや!忘れてるわけないじゃないですかぁ〜〜!」

(ヤベェ素で忘れてたわ・・。ホグワーツが面白すぎて)

 

未だ寝室の棚に入ったパズル。最近はその姿も見てない。ジロリとスネイプに睨まれるが、いかにも図星を突かれたかのように下手なごまかしをする。

 

「ここに来たのはそのパズルを狙う連中から避けるためであろう。最優先すべきなのはそれの筈だ。」

 

「いやぁ・・あれ全然完成する気配がなくって。ちょっとお手上げ。」と苦笑い。

 

「選ばれし者と聞いていたが?」

 

「本当に必要になった時にって言われたんですけど、それがいつなのかわかんないというか。完成すると願いが叶うらしいですけど。」

 

「ならば、今君に願いが無いということかね?」

 

「ん〜・・・自分昔から知らない事とか楽しいことに素直っていうか、目移りしやすいんですよ。昔は飛行機とか乗り物で、ちょっと前はフットボール。今は魔法とホグワーツで正直大満足しちゃってて。」

 

「なるほど。確かにその節操のない性分は魔法薬学に向いていると言えるかもしれんな。」

 

呆れたような口調でボヤくスネイプ。

 

「・・先生は何かお願いしたいことある?」

 

これだ、と思いついたペップはスネイプに質問を返した。願いはつまり目的。ごく自然に探りが入れれた。

 

「・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・ぅ。」

 

「・・・興味があるのかね?君は、私のそれに。」

 

「い、いや・・まぁ、なんとなく聞いただけですけど・・。」

 

「なんとなく、と言うならば、我輩はそれに答えなくても文句はあるまいな?」

 

「そ、そっすね・・ハハ。」

 

彼の性分からしてその秘めた思いがあったとしても他人に吐露するほど人に信を置いてはいない。当然この質問にスネイプは答えず語気を強めて答えようとはしなかった。

そしてペップはすぐに彼から情報を引き出すことを諦めた。だがそれはスネイプからの威圧感で萎縮したわけではない。その質問を聞いたスネイプの顔が一瞬どこか寂しく心の残滓を引っ掻くような表情に見えてしまったからだ。

 

一瞬浮かんだスネイプの脳裏には・・・一人の女性がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分次回ぐらいからカードバトル始まります。(コゴエ)
前振りが長くてごめんなさい。 
感想もらえれば元気出るんでください。

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