星の海へ   作:ステルス兄貴

10 / 294
宇宙戦艦ヤマト2199では沖田艦長が指揮をしていた艦はキリシマでしたが、此処ではゲーム版の えいゆう を採用しました。


二話 冥王星海戦 開戦

 

冥王星は太陽系外縁天体内のサブグループの代表例とされる、準惑星に区分される天体である。西暦2006年までは太陽系第九惑星とされていた。

 

星の表面は異常に不均一で表面のうちカロンに向いた側はメタンの氷が多く、反対側は窒素と一酸化炭素の氷が多い。

 

軌道は、太陽系の惑星と比較するとかなり異常である。惑星は黄道面と呼ばれる仮想の平面にかなり近い面を公転しており、軌道の形は真円に近い。対照的に、冥王星の軌道は黄道面から大きく傾いており離心率が大きい。

 

そのため、冥王星の軌道の一部は海王星よりも太陽の近くに入り込んでいる。

 

 

 

 

 

太陽系 準惑星 冥王星 近海宙域

 

 

かつて、人類が未知の大陸と香辛料を求めて大海原へ旅立った大航海時代‥‥

そして石油と植民地を求めて覇権を争ったように星の海でもそれは同じだった。

星の海を渡る船も平和の使者、宇宙旅行を楽しむ観光客ではなく、太陽系の星の海を渡る船も武装した宇宙船だった。

 

西暦2199年八月‥‥二十一世紀の初頭に太陽系の惑星基準からはずされたこの星から数十万キロ離れた星の海を航行する多数の飛行物体があった。

 

地球防衛軍宇宙艦隊が旗艦らしき大型の飛行物体を先頭に単縦陣で航行している。

 

そして、その周りには小型の艦艇が同じく単縦陣で航行していた。

 

 

更にその先を飛行していた小型艦では‥‥

 

 

ねぇ、兄ちゃん、

 

あの中のどこに、

 

お父さんと、

 

お母さんの、

 

星があるの?

 

 

 

 

宇宙突撃駆逐艦、雪風の艦橋で、艦長の古代守は星の海を見ながらそう呟いた。

 

「なんですか?今の?」

 

守の呟きを聞いた雪風の副長の石津 英二が守に訊ねる。

 

「ああ、弟がね、まだ小さかった頃、俺に言った言葉なんだ」

 

石津の問いに答える守。

 

「ご両親は確か、遊星爆弾で‥‥」

 

「うん‥‥銀河の星はこれまで産まれて生きた人の数と同じだけあるって言うけど、沢山あるよな‥‥」

 

「どこにあるんですかね?艦長のご両親の星‥‥」

 

「‥ああ‥‥君の奥さんの星もな‥‥」

 

守と石津は眼前に広がる星の海を見ながら互いにそう、呟いた。

 

 

その頃、宇宙巡洋艦 三笠 の厨房では、

 

「もうすぐ戦いが始まるぞ!!敵が来る前に飯を運べ!!モタモタするな!!敵は待ってはくれぬぞ!!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

銀髪で前髪以外は先端に黒いメッシュが入り、緑色の瞳を持ち、白いコック服に身を包み、頭には同じく白いコック帽を被った女性が手を動かしながら他の厨房スタッフに指示をしている。

彼女の名前は、ディアーチェ・K(コンドウ)・クローディア。

この三笠の主計科長兼厨房長で、彼女の作る食事は美味いと他艦からも評価を受けている程の腕の持ち主だ。

その彼女達、厨房スタッフは戦闘前に配る食事、戦闘配食である握り飯を大急ぎで作り、弁当箱へ箱詰めし、各部署へ運んでいる真っ最中だった。

運ばれてきた戦闘配食を各部署の将兵達は皆、うまそうに食べていた。

もしかしたらこれが最後の食事になるのかもしれないという思いから、皆、米粒一つも残さず食べていた。

 

「ほれ、皆の者、戦闘配食だ。中身は我が握った特製おにぎりだぞ」

 

艦橋へは厨房長であるディアーチェ本人が届け、その一つを艦長である良馬へと手渡した。

 

「すまんな、厨房長」

 

良馬はディアーチェから渡された弁当箱の箱をあけ、手にはめていた白手袋を脱ぎ、中の握り飯を食べ始める。

 

「艦長、いよいよか‥‥」

 

ディアーチェは眼前に広がる星の海を見ながら間もなく決戦が近いことを悟る。

 

「ああ‥‥もうすぐだ‥‥」

 

「艦長、戦勝後の赤飯を炊ける様、厨房スタッフ一同、祈っておるぞ」

 

ディアーチェはそう言い残し、艦橋から去っていった。

 

「戦勝後の赤飯かぁ‥‥楽しみですね、艦長。厨房長の作る飯は美味いですから。こうなったら絶対に生き残って食いたいですね」

 

そう言うのは三笠の操舵席で艦を操艦する永倉 新一航海長だった。

彼はすでに戦闘配食を食べ終えた様で、操艦作業を行っている。

 

「そうだな、必ず勝って、そして生き残って厨房長の赤飯をたらふく食うぞ!!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

艦橋に笑い声が満ちた。

それはこれから戦を挑む空気でなく、とても和気藹々とした空気だった。

 

 

太陽系 準惑星 冥王星 宙域 (防衛軍作戦宙域内)

 

 

地球防衛軍日本艦隊 旗艦 戦艦 えいゆう 艦橋内部

 

「沖田提督、当艦を含め、艦隊は全艦、冥王星作戦内宙域に入りました」

 

「うむ」

 

「レーダーに反応!!目標接近!!」

 

「右舷四時の方向より敵艦接近!!距離10万宇宙キロ、速度、27宇宙ノット!!」

 

オペレーターの報告を聞き、えいゆう の艦橋に緊張が走る。

 

「電波菅制解除、艦種識別確認!!急げ!!」

 

間髪いれずに、艦長席に座っている えいゆう 艦長の山南 修が命令を下す。

その隣には、白ひげを生やした貫禄ある初老の軍人、地球防衛軍日本連合宇宙艦隊司令長官、沖田十三が仁王立ちしていた。

 

(出てきたな‥‥悪魔〈ガミラス〉め!!)

 

「敵戦力判明!!ガイデロール級宇宙戦艦一、メルトリア級宇宙巡洋戦艦七、ケルカピア級宇宙高速巡洋艦八、デストリア級宇宙重巡洋艦・クリピテラ級宇宙駆逐艦合わせて五十七隻を確認!!更に後続の未確認艦も見込みあり!!」

 

(相手はこちらの三倍以上か‥‥)

 

艦種識別確認をしたオペレーターの報告から予想以上に多い敵艦隊の出現に先程と比べ物にならない緊張が走った。

パネル画面には両生類または魚類を思わせる様な生物的フォルムで艦首の両舷には黄緑色に光る目のようなくぼみを持つ独特な艦影に濃緑色の塗装を施された艦船の群れが地球艦隊では考えられない程の高機動な動きを見せながら、地球艦隊に近づいてきた。

その動きは宇宙船ながらまるで星の海を泳ぐ宇宙生物のようにも見える。

そしてその数は地球艦隊を圧倒していた。

艦隊戦を知っている人間ならば撤退を指示する程の戦力差があった。

これが地球を滅亡へと追い遣らんとするガミラス宇宙艦隊だった。

だが、そんな緊張を押しのけるように、沖田は低く、重みのある声で命令を下す。

 

「総員戦闘用意!!全艦第一種戦闘配置。変針面舵三十、全艦砲雷撃戦用意!!これより『回天・メ号作戦』を開始する!!」

 

沖田は進撃を止めなかった。

そして沖田の命令は各艦に伝達され、次々と艦隊旗艦である宇宙戦艦 えいゆう の後に続いていく。

沖田本人としては同航戦ではなく正面戦でやりたかった。

と言うのも地球艦隊の一番攻撃力が高い武器は艦首に装備されている固定式陽電子衝撃砲である。

これまでの地球とガミラスとの戦いで使用され、ガミラスもそれを使用させないようにこうして同航戦を挑んできたのだ。

仮に此処で沖田が右舷九十度の反転を命じた場合、ガミラス艦隊を正面に捉えることができるかもしれない。

しかし、転舵中の大きな隙を見逃すガミラスではない。

沖田はその事を知っているからこそ、敢えて分が悪い同航戦を挑むしか選択肢がなかったのだ。

 

「おもか~じ」

 

操舵手は復唱しながら舵を右へ傾けた。

 

 

巡洋艦 三笠 艦橋

 

「ヒュ~相変わらずの高機動ですな~敵さんは‥‥さながら夜の湘南の町を走り回る暴走族の様だ」

 

 

喩えは悪いが、航海長の永倉が敵の艦隊運動を見て、呟く。

 

「確かに、あの動き‥‥今の地球艦隊では到底できない動きだ。」

 

良馬の方も、敵の動きを見て、地球艦隊とガミラスとの科学技術の差を改めて思い知る。

 

「お?艦長、旗艦、えいゆう より発光信号です。“全艦戦闘配置、コレヨリ作戦ヲ実行セントス。面舵三十、我ニ続ケ”」

 

「よし、返信の発光信号を旗艦に送れ。総員、戦闘配置。面舵三十変針、えいゆう に続け!!」

 

永倉からの報告を受け、良馬は命令を下した。

 

「了解!!」

 

永倉が舵を右へときると、三笠の船体がゆっくりと右側へと傾き始めた。

良馬は会戦が始まる前に艦橋にいる乗組員を見回す。

皆、覚悟が出来ている‥そんな真剣な表情で良馬の事を見ている。

 

「さぁ、地球人の意地と誇りを敵(ガミラス)に見せつけてやろう!!」

 

良馬は軍帽を被り直し、艦橋に居る皆を鼓舞する。

 

「「「「おう!!」」」」

 

気合の入った声が艦橋に響いた。

 

(とはいえ、戦力差は戦艦などの大型艦で8:1、巡洋艦や駆逐艦などの中小型で約3:1、完全に劣勢だ。 しかもこれで最後の地球防衛軍連合宇宙艦隊‥‥本来なら戦力保管である予備部隊程度、残しておいたほうがいいのだが、そこまでの余裕は地球にはないか‥‥)

 

(それに陽電子砲が使えない同航戦‥‥この時点で勝利は望み薄だな‥‥)

 

元々勝ち目の薄い戦であったが、目の前のガミラス艦隊の数を見せつけられ、良馬は戦力と戦術でのアドバンテージが既にガミラス側にあることからやるせない気持ちになる。

 

 

駆逐艦 冬月 艦橋

 

「すごい数の艦船だ」

 

冬月航海長の沖田 一が敵の艦船の数に声をあげる。

 

「宇宙船乗りとして‥‥いや、軍人として、一度でいいからあれだけの艦隊を率いてみたいものだな」

 

敵艦隊を見て、冬月艦長の高町 恭介は武者震いをしつつ、不敵な笑みを浮かべ、敵を見ていた。

 

「艦長、えいゆう より発光信号です。“全艦戦闘配置、コレヨリ作戦ヲ実行セントス。面舵三十、我ニ続ケ”」

 

「うむ、航海長、面舵三十、旗艦に続け!!」

 

「了解、面舵三十!!」

 

冬月も他艦同様、艦隊旗艦 えいゆう の後に続いた。

恭介は艦長席に座り、やや不安そうな顔でキャノピー越しに味方艦隊を見回す。

 

(えいゆう から送られた情報では、敵はこちらの三倍以上の戦力‥‥開戦当時は此方側が数では勝っていたが、度重なる地球側の敗戦と遊星爆弾で人員も戦力も落ちていき、その間に敵は次々と本国から艦隊と物資を冥王星へと派遣してきた。それに敵の動きからして、緊急発進(スクランブル)にしてはあまりにも数が多い、おそらく待ち伏せでもしていたのだろう‥‥そんな連中にこの戦力差で勝てるだろうか?)

 

元々の造艦技術にも差があるのに、今回は数の方でもガミラスが上、

誰もが一抹の不安を抱かずにはいられなかった。

 

 

戦艦 えいゆう 艦橋

 

「提督、敵艦より入電“地球艦隊二告グ、無駄ナ抵抗ハヤメ、タダチニ降伏セヨ”‥‥返信はどうしましか?」

 

「“バカめ!!”と言ってやれ」

 

「は?」

 

「“バカめ!!”だ!!」

 

「は、はい!!此方、地球司令船、返信“バカめ!!”‥終わり、どうぞ‥‥」

 

 

えいゆう の通信士がガミラス艦隊の旗艦に返信を送ると、

 

 

ビュー

 

 

ビュー

 

 

ギュー

 

 

と言うノイズが通信スピーカーから聞こえてきた。

 

「うわ―――っ おこった おこった」

 

通信士は通信文を受け取ったガミラス人の怒った顔を想像し、そして苦笑した。

双方の通信のやり取りは地球艦隊の他の艦艇にも傍受されていた。

 

 

宇宙巡洋艦 三笠 艦橋

 

「戦う前に態々降伏を勧めるなんて、紳士的なのか、それとも余裕ぶっているのか?いや、単に我々を見下しバカにしているのかな?」

 

ガミラス側の通信内容が『降伏セヨ』と言う内容に良馬は、ガミラスの心情を考える。

 

「それで、沖田提督は何と返信した?」

 

「はい。えっと‥‥“バカめ!!”‥‥です」

 

「そうか、“バカめ!!”か‥‥実に沖田提督らしいな」

 

良馬はやや愉快げに笑い、艦橋の乗員達も少し笑顔になる。

だが、その直後、

 

「敵艦、発砲!!」

 

敵からいきなり走ってきた赤色の閃光によってすぐに消えた。

敵の旗艦、ガイデロール級宇宙戦艦の主砲が えいゆう に向けて火を噴いたのだ。

幸い敵の砲撃は えいゆう の上甲板ギリギリの所を掠めていったが、旗艦の発砲に続き、ガミラスの後続艦も次々に発砲してきた。 

 

「巡洋艦、夕凪 被弾し大破!!航行不能に陥った模様!!続いて、巡洋艦、鞍馬 被弾し爆沈!!」

 

えいゆう のすぐ後ろを航行していた宇宙巡洋艦、夕凪と同じく宇宙巡洋艦の鞍馬が敵弾の餌食となり戦線離脱、その後大爆発を起こして撃沈された。

たった一回の一斉射で巡洋艦を二隻も失った事実により、まだ若いクルーたちの顔のに焦りの色が見え始める。 

 

「艦長、反撃は!?」

 

「まだだ!!えいゆう(旗艦)から発砲許可は出ていない。それにまだ敵との間に距離がありすぎる!!回避行動をとりつつ敵艦に砲の照準を合わせ続けろ!!砲撃命令があるまで待機だ!!航海長!!頼むぞ!!」

 

「任せてください!!」

 

敵の絶え間ない砲撃に少し怯える乗組員に対し、喝を入れ、航海長へ信頼を寄せる良馬。

永倉も良馬の信頼に応えんと、見事な操艦技術で敵弾をかわしていく。

 

(くそっ、まだか!?)

 

とは言え、こうも激しい敵弾の雨の中、いつ敵のクリンヒット、ラッキーパンチがあるかわからない。

しかし、こちらの有効射程に入るまで主砲を撃っても意味がない。

良馬は焦る気持ちで艦隊旗艦の えいゆう を睨む。

 

えいゆう の艦橋では、砲雷長がスコープ状の空間観測儀を覗き込む。

モニターには砲塔の狙いを示す色が表示されているが、右上には『圏外』の文字が表記されている。

 地球艦隊は敵を有効射程圏内におさめる為、ガミラスは必中距離へ敵を捕捉する為、両艦隊は距離を縮める。

ただ、ガミラスは地球艦隊への発砲は止めずに距離を縮めてくる。

こちらは攻撃が出来ないが、敵からの攻撃を喰らうアウトレンジ攻撃下にある事は軍人としては屈辱的である。

それはほんの数分‥いや、数秒と言う短い時間でも、とてつもなく長く感じる。

えいゆう の砲雷長の指はトリガーにかかっているが、掌はぐっしょりと汗で湿っていた。

やがて、モニターの『圏内』の文字が消え『捕捉』の文字表記に変わる。

砲雷長は今すぐにでもトリガーを弾きたい衝動を抑えて、

 

「敵艦、射程内に入った!!照準よし!!」

 

と叫ぶ。

 

「全艦、全砲門開けっ!!撃てぇ!!」

 

沖田は全艦に一斉射撃を命じた。

 

 

 

「えいゆう より通達!!砲撃命令です!!」

 

「よし、主砲、撃ち方始め!!」

 

えいゆう の発砲を皮切りに地球艦隊の艦船の主砲が火を噴いた。

幾つものエメラルドグリーンの光線がまっすぐガミラス艦へ向かった。

先程の撃たれっぱなしとは真逆の光景が広がった。

 

 

地球 地下都市 地球防衛軍司令部

 

冥王星海戦が始まったことは地球側でも傍受していた。

司令部の大画面には、三角形や矢印で地球艦隊とガミラス軍の行動が表記されており、連邦政府高官や防衛軍司令部の幕僚は固唾を飲んで、冥王星の光景を見ていた。

 

「あれが最後の地球艦隊だ。あの艦隊が敗れればもう、地球を守る力は残されていない」

 

防衛軍司令長官、藤堂 平九郎は手を組み、地球側の勝利を祈った。

 

「大丈夫。沖田提督は歴戦の勇士だ。必ず勝ってくれるよ」

 

「そうだとも藤堂君。沖田君を信じよう」

 

司令部の幕僚たちが地球側の勝利を何処か確信している様子で藤堂を宥めるが、

藤堂本人としては、根拠のない勝利だと言いたかったが、

幕僚たちの心使いに水を差したくはないし、少しでもポシティブな考えをしていないと、絶望の前に精神がおかしくなりそうなこの状況。

藤堂も他の幕僚同様に沖田の勝利を信じるしかなかった。

 

「すまない、沖田君‥‥」

 

画面を見ながら藤堂はポツリと呟いた。

 

 

場面は再び冥王星宙域の戦場へと戻る。

 

 

地球艦隊が放ったエメラルドグリーンの光弾、全弾が寸分たがわずガミラス艦へと命中した。

何しろ、相手の数のほうが多く、しかも密集している‥つまり射撃の的が多い。

むしろ外す方がおかしい。

しかし‥‥

 

カンッ

 

コンッ

 

キンッ

 

宇宙空間なので当然音はしないが、擬音語にするならまさにこんな表現で出来る具合に地球艦隊が放った光弾は全てガミラス艦の分厚い装甲に反射され、宇宙空間に虚しく拡散し消えた。

地球艦隊が撃った光弾を受けたガミラス艦は無傷だった。しかも装甲板には凹みや歪みすら見当たらない始末である。

 

「くそっ、やっぱりこうなったか‥‥」

 

あまりにも散々な結果に落胆し、良馬の口からつい本音が漏れる。

艦橋要員も良馬同様苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

苦戦はこれまでの戦いから予想されていた事だが、此処まで一方的とは認めたくなかった。

 

(考えてみれば、向こうは宇宙の遥かかなたからやってこられるほどの推進力を持ったエンジンを搭載した宇宙戦艦だ。それに比べ、こっちは本来の制宙権であった冥王星に来るまでに十日~二週間を費やすほどの性能のエンジンを搭載した宇宙船‥‥こんな鈍足じゃあヤツらの船速についていけない。いや、そもそも比べるのが間違いだろうな)

 

良馬がガミラス艦と地球の宇宙船の性能について思考している間にも、お返しとばかりに撃ってくるガミラス艦の猛攻に味方は徐々に撃ち減らされていく。

 

 

巡洋艦 焔 主砲制御室

 

ガミラス軍の攻撃を受けた巡洋艦 焔 は、大破し、既に航行不能となっていた。

その焔の主砲制御室では、

 

「おい!!坊主!!しっかりしろ!!死ぬな!!」

 

血まみれの少年兵を抱え起こしている古参のベテラン砲術兵が必死に声をかけている。

 

「うぅ‥お母さん‥‥お父さん‥‥」

 

少年兵は地球にいる両親のことを思い、小さくそして苦しそうな声で、呟く。

そしてその言葉を最後にそのまま息を引き取った。

 

「くそっ、何故だ!?何故!?こんな子供が死ななきゃならない!?畜生ぉ!!ガミラスめぇ!!」

 

彼が死んだ少年兵の体を抱きしめ叫んだその瞬間、辺りが一際カッと光ったと思ったら‥‥

 

ドゴオォッ

 

焔は大爆発を起こして宇宙の塵と化した。

 

宇宙巡洋艦、焔の他にも宇宙駆逐艦 秋月が被弾して航行不能になり、

 

「か、回避!!」

 

「ダメです!!間に合いません!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

秋月の後ろを航行していた味方の宇宙巡洋艦 阿武隈と衝突して二隻は爆沈した。

 

「秋月、阿武隈、撃沈!!」

 

「艦と艦の間隔を開け!!」

 

僚艦が次々と沈んでいく中、ついに旗艦である えいゆう にも敵の光弾が命中し、各部に被害が出始めた。

 

幸い、えいゆう は宇宙戦艦だったため、装甲が駆逐艦や巡洋艦と違い厚く、ガミラス軍とは言え、敵巡洋艦の砲撃を数発くらっても爆沈することはなかった。

 

 

戦艦 えいゆう 艦橋

 

「艦尾損傷!!」

 

「シアンガス発生!!」

 

「レーザー砲の動力部に異常発生!!主砲が撃てません!!」

 

「なにっ!?」

 

主砲が発砲不能。

この報告に艦長である山南が声をあげる。

 

「技術班!!急ぎ!!主砲の応急修理を行え!!」

 

「りょ、了解!!」

 

戦場の中、主砲が使えなくなるなど射的上の的同様の事態である。

何としても主砲の動力を復旧させなければならなかった。

山南は急ぎ、動力室へ応急修理部隊を向かわせた。

えいゆう の艦尾では、破口から空気が外へと漏れ出した。

 

「まもなく気密隔壁を閉鎖する。乗員は直ちに他のブロックへ避難せよ!!」

 

艦内放送が流され、乗員達は次々に避難していくが、破口からの空気の流失は物凄い吸引力で、逃げ遅れた乗員が必死に辺りの出っ張りをつかみながら避難しようとしていたが、

 

「待ってくれぇ!!」

 

無情にも隔壁は閉じられた。

 

えいゆう の機関室では、外の戦闘の状況を把握することが出来ない状態だったが、機関士達は自分達の職務を必死に果たしていた。

 

「推力低下が止まらないよ。このままじゃ、エンジンが‥‥」

 

そうぼやいたのは、藪 助治 機関兵曹長

機関士としては一流のベテラン機関士だった。

 

「ぼやくためじゃなく、どうするべきかのために頭を使え!!」

 

そんな藪に喝を入れたのが、彼の上官でもあり、この艦の機関長でもある徳川 彦左衛門 機関大尉だった。

 

「大丈夫だ!!この艦はあの沖田 十三の乗艦だ。沈まんよ‥‥そしてわしらが沈めさせるものか!!」

 

徳川は自信満々に言うと機器を操作し、推力の回復へと務めた。

その間にも事態は地球側に不利な戦況が続いた。

 

「駆逐艦、太刀風 被弾し大破!!“さらば”を打電し続けています!!」

 

「巡洋艦、八雲より入電!!“ワレ操舵不能”」

 

「巡洋艦、叢雲は轟沈!!本艦の針路に入ります!!」

 

「回避行動!!」

 

オペレーターの報告を聞き、山南が えいゆう の航海長に回避行動を命令し、えいゆう は急ぎ針路を変更する。

眼前には爆発を繰り返しながら航行不能に陥り、漂流する味方の宇宙巡洋艦、叢雲の姿が映った。

艦の傍には叢雲の乗員の死体が大勢漂っていた。

えいゆう の艦橋員はおもわず目を背けたが、沖田だけはグッと握り拳を作り、眼前の光景を堪える様に見ていた。

 

(奴らにはこの艦では勝てない‥‥)

 

地球とガミラスの科学技術の差を痛感していると、

 

「戦闘宙域の傍を超高速で通過する物体があります」

 

「流星か?」

 

「いえ、エネルギー反応から見て宇宙船です!!識別不明!?ガミラスの物ではありません!!」

 

沖田が外を見ると流れ星の如く、一筋の光体が戦場を去っていった。

 

「外宇宙航行速度を出している。内宇宙で無謀な事を‥‥」

 

「不明船よりエネルギーの流出を確認!!損傷しているものと思われます」

 

「エンジンの暴走か、ガミラスの流れ弾にでも当たったのか‥‥だが、あの速度だと後数分で火星軌道に行ってしまうぞ‥‥」

 

この謎の宇宙船の出現は地球でも捉えていた。

 

 

地球 地下都市 地球防衛軍 司令部

 

「不明船は火星へ向け、自由落下中です!!」

 

「予想不時着地点は?」

 

「火星の極冠部です」

 

「誰か観測員はいるか?」

 

「士官学校を卒業したばかりの新人が二名います」

 

「誰だ?」

 

「古代 進と島 大介の二名です」

 

「使えそうか?彼らは“例の計画”のため、特殊訓練を受けていますから、多分‥‥」

 

「よし、すぐに連絡を入れ、不明船の調査にあたらせろ」

 

「了解」

 

やがて不明船は火星へと墜落した。

 

 

火星は太陽系の太陽に近い方から四番目の惑星である。地球型惑星に分類され、地球の外側の軌道を公転している。

かつては地球化改造(テラフィーミング)により、赤い大地には緑が広がり、地球と同じように青い海が広がり、地球から沢山の人々が移民し、地球と同じ星となった。

しかし、第二次内惑星戦争によって海は干上がり、沢山の命が失われ、生き残った人たちも地球へ強制退去となった。

人は居なくなったが、完全に住めなくなったわけではなく、現在も極冠付近に小さな観測所があった。

 

 

火星 極冠付近 観測所

 

「此処(火星)に赴任して、こうして毎日赤い大地ばかり見ていると、此処が何処だか、分からなくならないか?古代」

 

宇宙食を食べながら火星の赤い大地を見ていた島 大介が相棒の古代 進に話しかける。

 

「‥‥飛びたい」

 

「え?」

 

島に話しかけられた古代は心此処にあらずといった感じで茫然としながら火星の赤い大地を見ていた。

 

「じれてくるんだ‥‥兄さんたちが冥王星で必死に戦っているのに、俺はただこうして毎日、赤い大地を見ているだけ‥‥時折、自分に耐えられなくなる」

 

「古代‥‥」

 

この古代 進は今、冥王星で戦っている駆逐艦 雪風 の艦長、古代守の弟だった。

古代と島が赤い大地を見ていると、

 

ドゴォォン!!

 

轟音と共に地面が揺れた。

 

「うぉっ」

 

「うわっ」

 

突然の揺れに二人はバランスを崩し、床に倒れた。

 

「な、なんだ?今のは?」

 

「地震か?」

 

二人が床から起き上がると、

 

「地球司令部より指令。不時着した不明船の正体を確認せよ」

 

地球司令部の命令を聞いた二人は、

 

「今のだぜ、きっと」

 

「冥王星の近くで今、戦闘中なんだ。どっちかの艦が墜ちたんじゃないか?」

 

「それにしちゃ、冥王星から距離がありすぎるぜ」

 

二人は宇宙服のヘルメットを被り、観測所に配備されていた100式探査機で不明船が不時着した地点まで飛んだ。

不明船が着陸した地点上空まで行くと、一隻の宇宙船が煙を吐いていた。

 

「おっ!?島、アレだ。地球の物でもガミラスの物でもないぞ」

 

いち早く不明船の船影を見た古代はその形が見慣れた地球の物でもガミラスの物でもないことに気が付く。

地面へと着陸した古代と島は早速、不明船の調査を開始した。

しかし、宇宙船は墜落のショックで船首部は原型を留めておらず、例えこの宇宙船に乗員がいたとしても生存者は居ないのではないかと思った。

 

「デザインもエンジンも見たことがない形だ」

 

改めて近くで墜落した宇宙船を見ると地球ともガミラスとも違うその船型をまじまじと見る古代。

 

「一体何処から来たんだ?」

 

この宇宙船の母星が気になる様子の島。

そして更に付近の調査を進めると、不明船の傍に救命ポッドのような物があった。

救命ポッドの方も調査するとそこには一人の女性が倒れていた。

女性は長い金髪の美しい人で手には何かを掴んでいた。

 

 

「古代、その人‥生きているのか?」

 

島が怪訝な表情で古代に訊ねると、古代は生死を確かめる為、その女性を抱き上げる。

 

「いや、ダメだ‥‥死んでいる‥‥」

 

しかし、既に女性は息絶えていた。

古代が抱き上げると、女性が手に持っていた何かが地面に落ちた。

 

「なんだ?通信カプセルか?」

 

島が地面に落ちた通信カプセルらしき物体を回収する。

この出来事がその後の地球の未来に大きく影響する出来事だと言う事を古代も島もこの時には知る由もなかった。

その後、二人は通信カプセルを始めとして、宇宙船の残骸など資料として役立ちそうな物を回収して観測所へと戻った。

その際、宇宙船に搭乗していたと思われる女性の遺体は丁重に火星の地へと埋葬した。

本来ならば、彼女の体も重要なサンプルの一つでもあった。

遺体の保存ならば観測所の食糧庫ならば一定温度が保たれているので、保存も出来た。

何しろ、地球人が接触したガミラス以外の第三者宇宙人なのだから‥‥。

そして尚且つ、地球人類は未だにガミラス人の姿を見た事が無い。

そのため、第三者的な宇宙人の死体というのは、地球の研究者にとっては、是が非でも欲しいサンプルだろう。

しかし、古代と島はそれだからこそ、彼女の遺体を埋葬したのだ。

サンプルとして回収されれば、彼女の体は研究者たちが検視の後、解剖するだろう。そして、貴重なサンプルとしてホルマリン漬け‥‥美しい女性の身体を死体とは言え、そんな辱めを受けさせないための処置だった。

この不明船を調査したのは自分達二人なのだから、お互いに秘密にしておけば、詮索される事はないだろう。

古代と島の行動は軍人としては、間違った行動かもしれないが、人としては間違った行動ではなかったかもしれない‥‥。

 




三笠副長の三木幹夫はPS版宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士 に登場したので、その容姿と同じ

航海長の永倉新一の容姿は薄桜鬼の登場キャラ 永倉新八

主計科長のディアーチェ・K(コンドウ)・クローディアはなのはinnocentの漫画版に登場した大人版ディアーチェ をイメージしてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。