星の海へ   作:ステルス兄貴

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九十六話 レジスタンス活動

 

 

 微弱ながらもSOSを送っていたギンガが まほろば 宛てに送られてきた通信を受信した。

 

「艦長!!ヤマトです!!ヤマトから通信が入りました!!」

 

「ヤマトから!?内容は?」

 

「『我、大至急で救援へ向かう』‥以上です」

 

「そうか、ヤマトが‥‥よし、こちらも反撃に出るぞ!!通信長、春藍の山南艦長に連絡。ヤマトの攻撃に呼応して反撃に打って出る!!敵を挟み撃ちにする!!」

 

「了解」

 

 救援が来たと言う事で艦橋内の空気も変わりつつあった。

 春藍にも有線で連絡を取り、タイミングを見計らって攻勢に転じる事となった。

 

 敵はアステロイドに隠れている まほろば 春藍よりも堂々と自分たちの前に出現したヤマトへと標的を変え、向かって行く。

 元々ヤマト拿捕ないし撃破の命令は自分たちの国家元首からの命令だ。

 その第一優先目標が現れたのだ。

 地球の大型戦艦など、もうどうでもよかった。

 そのヤマトはコスモタイガー隊を発進させ、戦闘態勢をとる。

 ただ最初の内、暗黒星団帝国の将兵たちは まほろば を ヤマトと誤認していた。

 その為、彼らは執拗に まほろば と 春藍 を捜索していた。

 しかし、自分たちに接近して来る艦の通信を傍受した結果、接近中の艦がヤマトだと知ると、ピラニアの様にヤマトへと向かって行った。

 

「こちらもコスモタイガー隊を発進させる。またせたな、空戦隊長」

 

「全くですよ。でも、これで憂さを晴らせます!!」

 

「徹底的に暴れてやれ‥コスモタイガー隊発進」

 

「了解。コスモタイガー隊発進!!」

 

 待機命令を受けていた まほろば のコスモタイガー隊は、「待っていました」と言わんばかりに次々と発艦していく。

 敵はヤマトへと向かって行ったため、こちらに背中を見せている。

 奇襲するには持って来いのポジションだった。

 

 ヤマトはコスモタイガー隊と雪風・改を前衛に敵へと挑んだ。

 ヤマトの姿を視認した敵はヤマトにミサイルと砲撃を行って来る。

 その敵部隊に対し、ヤマトのコスモタイガー隊は猛禽の群れの如く、襲い掛かった。

 敵部隊は駆逐艦、巡洋艦を前衛に繰り出し、戦艦、空母を後衛に着かせる基本的な陣形でヤマトへと迫る。

 対艦ミサイル兵装のヤマト所属のコスモタイガー隊の雷撃を受け、駆逐艦、巡洋艦は容易く撃沈できるが、戦艦はそう簡単には行かない。

 防御も攻撃力もレベルが違う。

 そんな中、敵部隊の背後から まほろば 所属のコスモタイガー隊と まほろば 春藍 ハルバード ファルシオン の大戦艦部隊が砲雷撃を見舞う。

 数は勝っているが、敵部隊は防衛軍に挟撃される形となった。

 挟撃された事により、敵部隊は混乱し、敵艦を撃破しようとする艦と何とかこの挟撃状態から逃れようとする艦に別れ、攻撃するあまり、味方を間違えて撃つ艦、逃げようとして味方と接触する艦、そして逃げようとして、味方の砲撃によって撃沈ないしダメージを受ける艦が多発した。

 数で勝って居た筈の敵艦隊は徐々にその数を確実に減らされて行く。

 やがて、数での不利を悟ったのか、敵は撃破から逃亡の動きへと変更し、この宙域からの離脱を図るが、時すでに遅し。

 数を減らされた敵艦はヤマトらの砲雷撃、コスモタイガー隊の雷撃を受け続け、やがて全滅した。

 

 

宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋

 

「敵艦隊、全滅を確認」

 

 太田がこの周囲に敵の脅威が完全に取り払われた事を確認した。

 

「なんとか終わったな…古代」

 

「ああ‥‥」

 

 敵艦隊の全滅を確認し、ようやく一息ついた古代。

 やがて、ヤマトは まほろば と 春藍に接舷し、有線通信にて交信を行った。

 

                      春藍  ハルバード

                雪風・改  ヤマト 

                      まほろば ファルシオン

 

位置は大体こんな感じ。

 

 

 有線ケーブルが接続されると、早速山南と良馬は、ヤマトの乗員たちに礼を述べた。

 そして、古代の兄、守も当然春藍に乗艦しており、守もヤマトの皆に礼を述べた時、澪(サーシア)が思わず、

 

「お父様!!」

 

と、言ってしまった。

 

「お父様?」

 

「澪が守さんに向かって『お父様』?」

 

「どういう事だ?」

 

 流石に聞き違いと言うレベルではなくなり、

 

「こうなっては仕方がないな‥‥」

 

 真田が澪の正体を第一艦橋のメンバーに話した。

 

「澪は俺の姪じゃない。古代守とスターシアの間に生まれた娘、サーシアだ」

 

「で、でも‥‥あの時見た彼女は赤ん坊でしたよ‥‥それがどうしてこんなに大きく‥‥」

 

 南部が当然の疑問を口にする。

 また、南部の他に相原や太田も同じ疑問を抱いている様子だ。

 

しかし、

 

「今はそんな事を説明している場合じゃない。兎に角、彼女はサーシアなんだ」

 

「はぁ‥‥」

 

 真田が強引に澪=サーシアと言う形でこの話を終えた。

 当初は腑に落ちない様子の相原と太田であったが、真田の姪と言う澪は全くと言って良い程、真田と似ていない事から、澪=サーシアと言う事実を受け入れた。

 

「それと、貴女も居るのでしょう?ユリーシャ」

 

 サーシアが まほろば に密航しているユリーシャに声をかけると、

 

「ユリーシャ、バレている様だし、出てあげなさい」

 

 良馬が艦橋にいたユリーシャに通信に出てあげる様に言うと、

 

「お、おひさしぶりです。お姉様‥‥」

 

 ユリーシャが気まずそうにモニターに現れた。

 

「月村さん。本当に彼女が‥‥」

 

 モニターに現れたユリーシャに、彼女が本当にユリーシャなのか、訊ねる太田。

 

「ええ、正真正銘、彼女はサーシアの双子の妹、ユリーシャだ」

 

「彼女もついこの前までは赤ん坊だったのに‥‥」

 

 サーシア同様、ついこの前まで赤ん坊だったユリーシャが僅かな間にここまで成長している事実に驚きが隠せない様子の南部たちだった。

 

「いや、しかし、今回の航海は参りましたよ。航海に出てすぐにユリーシャが密航していたり、時空管理局との艦と遭遇したり、連続ワープ明けにいきなりあの時の敵と遭遇するのだから‥‥ほら、前にペテルギウスとイスカンダルに攻めて来たあの時の艦隊ですよ‥‥何とか善戦したつもりなんですが、この宙域まで追い詰められてしまって‥‥」

 

 良馬は今回の航海の出来事をかいつまんでヤマトの乗員たちに話す。

 

「そこに君たちが来てくれた訳だ。しかし、君たちは何故ここまで航海を?ヤマトのシリウスまでの航海は予定に入って居なかった筈だが‥‥?」

 

 山南はヤマトがシリウスまで来た理由を訊ねた。

 

「まだ何もご存じないんでしたね‥‥」

 

 山南と良馬達が現在の地球の状況を知らない事を知ると、真田は今の地球が置かれている状況を話した。

 

「「‥‥」」

 

 真田の話を聞いた山南と良馬は、当初信じられなかった。

 

「地球が‥‥占領‥‥」

 

 あの地球が‥‥

 ガミラスにも白色彗星帝国にも膝を屈せず、占領された事も無い筈のあの地球が先程交戦した暗黒星団帝国の占領を受けたと言うのだ。

 

「信じたくないだろうが、変えようのない事実ってやつさ。だが、俺たちはそれを変えにゃならん。重核子爆弾の起爆装置を破壊し、暗黒星団帝国を倒してな」

 

「そうか‥‥」

 

「それでは我々が地球に帰還してもその重核子爆弾が存在する以上、帰還の意味が無いと言う事になるな‥‥その敵の本星とやらの位置は確認できているのかね?」

 

 山南がヤマトに暗黒星団帝国の本星について訊ねると、

 

「爆弾の太陽系ルートから、逆算し、おおよその方角は判明しているのですが、本星の正確な位置までは‥‥かつてイスカンダルを見つけた時の様に、何とか進みながら探索するしかありません‥‥」

 

 真田が、今後の航路について説明する。

 

「‥‥どう思うね?月村君」

 

「ええ、もしかすると‥‥」

 

「何かあったんですか?」

 

 良馬には何か思い当たる事が有る様で、古代がその件について訊ねる。

 

「我々が暗黒星団帝国の艦隊に遭遇した時、偶然にも我々は敵の丁度正面から、敵のワープアウトを観測できたんですよ」

 

「そうか‥‥空間歪曲のエコーか‥‥よし、こっちにそのデータを転送してくれ」

 

「わかりました。通信長」

 

「はい」

 

「例の観測データをヤマトへ転送してくれ」

 

「了解」

 

 ギンガは早速ヤマトへ観測データを転送する。

 

「空間歪曲のエコー‥‥一体どういうモノなんですか?」

 

 島が真田に『空間歪曲のエコー』とはどういうモノなのか質問する。

 

「大きな質量を持つ物体‥‥たとえば、戦艦などがワープアウトをする際、その進行ベクトル前方に、波紋状の空間歪曲のエコーを放出するんだ。微弱な空間歪曲波だから、前方からしか観測できないのだがな‥‥」

 

「そして、そのエコー形状はワープ距離によって左右されるって訳だ」

 

 トチローが補足説明をつけ足す。

 

「それじゃあ、そのエコーを逆算すれば‥‥」

 

「ああ、方向だけでなく、距離も分かると言う訳さ」

 

「ただし、敵が我々の様に連続ワープを行っていなければの話だがな‥‥」

 

「出たぞ‥‥銀河系外周からおよそ20万光年の先だ‥‥」

 

 運良く敵は連続ワープにて、この宙域に来たわけでは無い様で、敵がワープして来た方向と距離は割り出せた。

 

「20万光年‥‥そこには何か星系があるんですか?」

 

「いや、何も無い‥‥だが、その更に20万光年ほど向こうには巨大な暗黒星雲があるな‥‥もしかすると、敵は40万光年先にある暗黒星雲の向こうから来たのかもしれん」

 

 トチローは敵が来た本当の距離を推測する。

 

「そうすると、この20万光年先の地点には敵の補給基地‥‥または宇宙要塞の様な施設があるのかもしれませんね」

 

 良馬は今回敵が来た地点には地球攻略の要所である補給施設があるのではないかと推測する。

 敵が地球よりも優れた科学技術を持っていようと、流石に40万光年以上先の星を攻略するのに無補給と言う訳にはいかないだろう。

 イスカンダルに現れた艦隊でさえ、背後にはあの大型の宇宙要塞(ゴルバ)が控えていたのだから。

 

「まぁ、とりあえず敵が来た方向と距離は分かったのですから、そこまで行ってみるしかないですね」

 

 太田がとりあえず、今の目標はその逆算した方向の20万光年先であり、そこへ行ってみなければ敵に関する情報は無いと言う。

 

「ちょっと待てよ、そこにはもしかしたら、敵の要塞が有るかもしれないんだろう?そんな所をヤマト一艦でくぐり抜けられるのか?」

 

と、この先の航海に対し、不安が過ぎる。

 

「うむ、その点については提案がある。針路の事は兎も角、我々も君たちと共に敵本星までの旅に同行しようと思う」

 

 山南は、春藍はヤマトと行動を共にすると言う。

 

「もちろん、まほろば も同行します」

 

 良馬も山南の意見に同意し、まほろば も ヤマトと共に敵本星までの航海に同行すると言う。

 

「本当ですか!!」

 

「ええ、幸い、艦の損傷はそう重くは無いですから‥‥」

 

 良馬が まほろば の状態を説明し、今回の航海に支障が無い事を伝える。

 

「こちらも同じだ。無人艦のコントロール機能も問題ない」

 

 山南も春藍、ハルバードとファルシオンの航行、戦闘には支障はないという。

 

「では、ヤマトを含め、艦隊指揮は山南艦長が‥‥」

 

 古代が今回の航海の指揮は山南が取るべきだと言うが、

 

「いや、指揮は君たちが‥‥ヤマトが執るべきだと思う」

 

と、指揮権をヤマトに譲った。

 

「しかし‥‥」

 

「暗黒星団帝国との戦闘経験に関してはイスカンダルで既に同じ敵を撃破している君達に一日の長があるのだ‥‥地球防衛軍が崩壊している今、私の肩書きなどには意味が無い‥‥」

 

 暗黒星団帝国との戦闘経験、イスカンダルへの二度の大航海、テレザートへの航海‥長距離航海の経験が豊富なヤマトがこの艦隊の旗艦として選ばれた。

 

「わかりました」

 

 今回の指揮権(旗艦)を決め、ヤマトから修理用の資材、雪風・改から工作機器を幾つか廻して貰い、最終調整に入る まほろば、春藍、ハルバード、ファルシオン。

当然今回の調整では、ヤマトが装備した新型の通信機も装備した。

 その最中、山南は守にヤマトの艦長に就任し、ヤマトの皆を導くように言った。

 守はその言葉を受け止め、ヤマト艦長の件を了承した。

 こうして古代守は宇宙戦艦ヤマトの二代目の艦長に就任した。

 

 やがて、守はヤマトへと移乗し、艦長着任の挨拶を行った。

 

「俺が艦長の古代守だ。俺は敵を撃ち破るために艦長に就任した。故に、お前たちを特別扱いはしない」

 

 ヤマトの艦長席に立った守は、開口一番に宣して皆を見渡す。

 

「我々の前途には幾多の困難が待ち受けているのは確実だが、それを理由に出撃をためらった者はいないはずだ。地球人類を救う。この一点を現実のものにするために全てを賭けて任務に当たれ。俺が言うべき事はそれだけだ!」

 

 第一艦橋員に答礼し、守は着席した。

 

「発進準備完了しています。艦長」

 

「ヤマト、発進!」

 

「了解、全速前進!」

 

 ヤマトを含む艦隊は雪風・改を先頭に右舷側に春藍、中央にヤマト、左舷側に、まほろば 後方にハルバードとファルシオンの位置で発進した。

 第一次目標は銀河系外周20万光年の位置‥‥。

 そこに何が有るのか?

 それは、ヤマト まほろば 春藍の乗組員たちには分からない。

 しかし、彼らは行かなければならない‥‥。

 地球を救うために‥‥。

 

 

その頃、地球では‥‥

 

 

 地球を占領した暗黒星団帝国軍の占領政策は、潜伏した防衛軍残党への捜索・掃討はともかく、一般市民に対しては、市民側の予想よりは緩く、市民生活自体は制限付きながら再開されていた。

 無論、これには暗黒星団帝国の計算の上だ。

 潜伏した地球防衛軍残党は、ゲリラ戦を行うに際し、市民を巻き込むような事はできまいと考えてのことだ。

 当然ながら、ゲリラに協力した容疑がある市民は拘束、抵抗すれば殺傷するという布告が太陽系方面軍総司令官・カザンの名で出されていたのだ。

 

そんな中――。

 

「失礼します」

 

 定例報告のため、報告書が纏められたファイルを持った兵士がアルフォンの下を訪れた。

 報告を受けたアルフォンは、退出しようとした部下を制した。

 

「ああ、待ちたまえ」

 

「何でしょう?」

 

「少し気になったのだが、この数日、兵士たちが妙に疲れているように見えるのだが、何かあったのか?」

 

 地球人の抵抗‥パルチザン行動も計算に入れており、昼夜二体制をとっていたのだが、疲労は何故か兵士全体に蔓延しているように見えた。

 アルフォンの問いに、その兵士は思い当たる節があるのか、少し首を傾げながら答える。

 

「実は今朝、数人に確認したのですが、この地に住む吸血害虫に悩まされている、との事でして、少尉殿に申し上げるべきか考えあぐねておりました」

 

「考えあぐねた事は必ず話してくれたまえ。それで?」

 

 促したアルフォンに、兵士は自分たちを悩ませる害虫被害の概要を話す。

 曰く、耳障りなか細い音が一晩中響いたり、朝起きたら瞼が腫れ上がり、しかもとても痒い。

 曰く、小さな羽がついた虫が止まって、しばらくしたら赤く腫れ、しかもとても痒い。

 身体の九割を機械化しているデザリアム星人であったが、その吸血害虫はどう言う訳か、機械の部分ではなく、まだ人としての機能が残っている頭部のみに襲い掛かって来る。

 

「ふむ、わかった。眠れないというのは確かに痛いな」

 

 アルフォンの脳裏に、つい先日、負傷して倒れていた所を自邸に連れ帰った地球防衛軍の女性軍人が思い浮かんだ。

 彼女なら、これらの吸血虫の撃退・駆除方法も知っているだろうと思った。

 

「対処については私の方で調べよう、明日まで時間をくれないかね」

 

「わかりました、私も調べてみます」

 

 部下を下がらせたアルフォンはしばし考え込んだ。

 

「ミクロの敵‥‥か。地球人は駆逐できずにいるのか?あるいは駆逐せずに共存しているとでも言うのか?」

 

 アルフォンはこの地に住む吸血害虫に関してこの時点では軽視していた。

 

 

翌日‥‥

 

「――どうなさったのですか?アルフォン少尉」

 

 朝、アルフォンと顔を合わせた森 雪は、彼の顔の惨状に思わず上擦った声を上げた。

 アルフォンの両の瞼は赤く腫れ上がり、元々切れ長である彼の目は、ほぼ一本の横線に近くなっていた。

 

「私も吸血害虫‥この星ではヤブ蚊と言うのだったな‥‥その虫に刺されたようだ。痒い上に視野が狭くてどうにもならない‥‥どうして、ヤブ蚊と言う虫は人を見て血を吸うのかね?」

 

 アルフォンは雪にヤブ蚊の習性について訊ねる。

 

「‥‥」

 

 雪は正直、返答に困った。

 敵軍の士官とはいえ気の毒といえば気の毒だし、今の彼の顔に笑いたい気もしたからだ。

 何とか笑いの衝動を抑え込んで答える。

 

「あ、あの‥‥ヤブ蚊は、身体の発熱量や排出される二酸化炭素を感知して人に近づくと言われています。地球人でも、刺されやすい人と刺され難い人がいるといいます」

 

「些か納得いかないところもあるが、長年この虫と付き合ってきた君たちが言うならその通りなんだろうな‥‥そもそも君たち、地球人は何故、そのヤブ蚊を撲滅しようとは思わなかったのかね?」

 

「この地域に棲息する蚊は単に痒いだけですし、過去幾度も撲滅を試みて失敗しましたので、ほどほどに駆除しながら共存する事にしたんです‥‥」

 

 数多くの生物がガミラスの遊星爆弾によって絶滅させられたこの地球であるが、どう言う訳か、ヤブ蚊やハエ、ダニ、ノミ、そして台所などに良く現れる黒い虫‥‥通称Gは人類よりもしぶとく、ガミラスの絶滅戦争を生き抜いていた。

 

「‥共存‥か‥‥」

 

 この日、アルフォンは雪から痒みに効くと薦められたム〇軟膏を貰ったのだが、塗布する時、誤って眼に入れてしまったため、遅刻の憂き目を見ることになった。

 そして、彼らのいる建物の床下では、尻にカプセル状の物体をつけた“黒光りする憎いヤツら”‥‥Gが不気味に蠢動していた。

 

 

「何だと!?」

 

 第一報を聞いた藤堂平九郎以下の潜伏した地球防衛軍首脳陣は一様に絶句した。

 狙撃で斃した敵兵の死体を軍医が解剖したところ、予想外の事実が判明したからだ。

 彼らが何故この様な事をしたのかと言と、海鳴市に潜伏しているメンバーから、

 

「敵軍兵士と接触した市民から、兵士の身体から、極僅かながら不自然なノイズが聞こえた、との情報提供があった」

 

 との情報が寄せられたのが一昨日。

 そこで、昨夜警戒中の敵兵を狙撃し、斃した後、その遺体を回収して解剖してみたところ、骨格や臓器が人工物で、筋肉や関節に相当する部位は明らかな機械構造。生身といえるのは首から上と生殖器くらいだというのだ。

 

「まさか、サイボーグとはな‥‥」

 

「地球製の義肢と比べ、明らかに数世代は進んでいる精巧かつ強固な構造だとのことです」

 

 唸る幕僚に、事務の一切を取り仕切っている源三郎が言う。

 

「これ程の技術を持っている以上、奴らの文明水準は地球より数世代は進んでいるはずだ。それにも関わらず侵略してきたということは、ガミラスや白色彗星帝国とは異なる目的を持っているということなのか‥‥?」

 

 参謀長の西郷が敵の目的を推量しようとすると、

 

「もしかして敵の目的は地球人の肉体に自分たちの脳髄を移植する、という事は考えられないでしょうか?重核子爆弾は我々人間の脳細胞だけを破壊するのならば、辻褄が合うと思うんですが‥‥」

 

「っ!!!?」

 

 北野が敵の地球侵攻の目的を彼なりの推測で述べた。

 

「まさか‥‥」

 

 北野の推測を聞き、辺りはザワつく。

 

「いや、君が言う通りなのかも知れんぞ」

 

 その中で藤堂は北野の推測が強ち外れでは無いのではないかと思う。

 

「確かに、ハイペロン爆弾の特徴からすれば辻褄が合う。でなければガミラスの様に地球へ対して核ミサイルを撃ち込めばいい事なんだからな。そうしなかったと言う事は、敵にはこうして態々占領する意味が何かしらある訳だ」

 

 西郷が補足する。

 地球占領以降、敵兵による女子供に対する性的暴行事例が全く発生していないのは敵軍の軍律が物凄く厳しいモノだと思っていたが、いくら軍律が厳しくてもそう言う行いをする輩が必ず居る筈だ。

 にも関わらず、性的暴行事例が一件も無いのは、敵兵たちがそう言う事をやりたくてもやれない身体だったと言う訳だ。

 

「となれば、敵本星の起爆装置を解除するか破壊しない限りはダメか」

 

 ヤマトは恐らく敵の本星に向かっている。

 その証拠に、敵の占領軍司令部の動きも慌ただしく、軌道上の艦隊も当初より減っている。

 ヤマは敵の本星へと向かい、恐らく敵は引き連れて来た艦隊の何割かをヤマト追跡の為に本国へ向かわせたのだろう。

 

「敵の目的がそうだとすれば、我々はそれを妨害するまでだ。あの爆弾の無力化と並行して、な」

 

「そうですね」

 

 古野間は相槌を打ち、その場にいるパルチザンメンバーを見回して付け加えた。

 

「お前たちも、思いついた事は抱え込まずにどんどん発言しろ。一見バカバカしい発想や時代遅れな手法が戦局を変えた事例は幾らでもあるんだからな。それと同時に、指揮官は、誰の提言であれ平等に耳を傾けるようにな。軍民、階級問わずだ!!」

 

『はい!!』

 

 ヤマトの第一次イスカンダル航海で、ヤマトを窮地に追い込んだ多数のデスラー機雷を排除したのは人力による移動で、これにはデスラー総統も閉口したのか感心したのか、祝電を送ってきたし、テレザートへの航海中、空洞惑星でやはりデスラーに追い詰められたヤマトが窮地を脱したのも、当時、新人乗組員だった新米の何気ない一言を真田が聞き流さなかったからだ。

 今はまさに地球の一大事だ。

 若者は、一見バカバカしいと思えるような事をも抱え込まずに口に出す勇気を持ち、それを掬い上げる度量を上官が持たなければ、この難局は乗り切れない。

 藤堂 はそれが言いたかったのだ。

 

 

その翌日‥‥

 

「おはようございます」

 

「おはよう‥‥何があったのかね?」

 

 アルフォンは出仕してきた部下を見るや声を潜めた。

 

「‥‥今度はナンキンムシにやられました。あまりの痒みでろくに眠れませんでした」

 

「ナンキンムシ?」

 

 そう言う兵士の右の瞼が真っ赤に腫れ上がっていた。

 兵士は軍服のポケットから、小さな袋を取り出した。

 アルフォンが手に取って見ると、数㍉くらいの赤茶けた虫が死んでいた。

 

「これが“ナンキンムシ”かね?」

 

「はい。正式名称は“トコジラミ”といいますが、この土地では古くから“ナンキンムシ”と呼んでいるようです」

 

「その虫の出所は?」

 

「地球人がガミラスとの戦争中に築いた地下都市で棲息していたのが地上に出てきたようです」

 

「そうか。地下都市は極めて大規模で複雑だと聞くが‥‥」

 

「これから調査が始まるんでしょうけど、果たして完全なる駆除が行われるのかは不明です」

 

「カザン総司令はヤマトとパルチザンの件で悩まされているからな‥‥」

 

「はい」

 

 占領軍総司令官たるカザンは、ヤマトを危険視し、最優先で接収又は完全な破壊を命じ、徹底的な捜索を命じていたが、それを知っているらしい軍首脳は悉く戦死するか地下に潜伏してしまい、その間隙をついてヤマトは脱出していった。

 雪と一緒に行動していた者たちがヤマトの乗組員たちかも知れない。

 地球を脱した連絡艇を追跡した艦からは生命反応がないと報告してきたため、発進直後の事故で全員死亡したと判断し、撃破要請を却下したと仄聞したが、考えてみれば、薬剤投与で一時的に仮死状態にすることは十分可能である。

 ましてや、ガミラス、ガトランティスを退け、イスカンダルでは、デーダー提督率いる艦隊やメルダース長官のゴルバを討ち取った艦の乗組員たちならば、その位の悪知恵は持っていよう。

 

「地球は、本国が考えている以上に厄介な相手になるな」

 

「そうですね」

 

 アルフォンの脳裏には、自分たちに臆することなく真っ直ぐな視線を向けてきた森 雪の顔が浮かんでいた――。

 

 同じ頃、雪も古代たちヤマトの皆がそう簡単に死ぬような者たちでは無いと信じ、彼らは生きていると思っていた。

 太陽が沈み、夜のメガロポリス東京の夜景をベランダにて見ながら雪は、今も生死不明の婚約者(古代)の事を想っていると、ビルの間からチカチカと明かりが点滅しているのを見つけた。

 

「あれは‥‥」

 

「そこに居ると、虫に刺されるぞ‥‥さぁ、中に入りたまえ」

 

 アルフォンが雪に声をかけて来た。

 

「そうね‥‥」

 

 雪は先程見つけた明かりに気づかないフリをして中へと入った。

 

「‥‥」

 

 部屋に入った雪をアルフォンはジッと見つめる。

 

「あの‥‥何か?」

 

 雪は表情には出さないが、内心、今の発光信号を見ている所をみつかったのではないか?と、少し慌てていた。

 

「ああ‥‥コレを持ってきた‥君の服だ。少々擦り切れていた所は修正しておいた」

 

「ありがとうございます。ずっと寝間着のままでは落ち着かない所もありまして‥‥」

 

 雪は少し肩をすくめる。

 

「私はその服の方が好きだがね‥‥まっ、干渉はすまい。だが、銃は返すわけにはいかない」

 

「ええ、当然の判断です」

 

「今日はもう遅い‥‥休みたまえ」

 

 雪に寝る様に言うと、アルフォンは雪の部屋から出ていった。

 アルフォンが部屋から退出すると、雪は先程見た明かりについて思考を巡らせる。

 

(あれは、間違いなく発光信号だったわ‥‥防衛軍のパターンだと‥‥だめね、文章にならないわ。それじゃあ空間騎兵隊のパターン?‥‥これもだめね‥‥)

 

 雪は脳内で先程見た発光信号と様々な部署での発光信号パターンと比べたが、どれも文章にはならない。

 

「‥‥」

 

 文章にならないように暗号として送ってきているのだろうか?

 

(暗号‥‥そうよ、今の防衛軍の信号パターンじゃないんだわ)

 

 現在使用している防衛軍の信号パターンは恐らく暗黒星団帝国側に既に解読されて居る筈。

 そんな信号を暗号化とているとは言え、無暗に打つ程、防衛軍はバカでは無い。

 それならば、連中が知らない信号パターン。

 相原が英雄の丘で防衛軍ではなくガミラスの信号波長パターンでイカルスと連絡を取ったように、防衛軍も今使用している信号パターンとは違うパターンで信号を送って居る筈。

 しかし、新しい暗号を組めば、その暗号を知らない軍人は応答する事が出来ない。

 ならば、使用されているのは、今は廃止された古い信号‥‥。

 そう思った雪はガミラス戦役前の国連宇宙軍時代の信号パターンに置き換えてみた。

 

すると、

 

(キ‥‥タ‥‥レ‥‥コ‥‥コ‥‥デ‥‥マ‥‥ツ‥‥)

 

(『来たれ、ここで待つ』‥‥)

 

 と言う文章になった。

 

 

 雪の部屋から退出したアルフォンは、所要の為、ここを留守にする事になり、警備の兵に留守を任せ、出掛けて行った。

 その頃、雪は寝間着から先程返却された防衛軍の制服に着替えた。

 

「流石にコレは見つからなかったみたいね‥‥ブローチ型の分析端末は‥‥えっと‥‥この館は内務長官の官邸だから、何処かに見取り図のデータベースがあるはず‥‥あった、これだわ‥‥アルフォン少尉が戻って来るまで約90分‥‥ここからあのビルまで急いでも30分‥‥向こうで誰かと会い、話をするにしても長くて10分‥‥往復の事を考えると、20分以内にこの建物を出ないと‥‥」

 

 雪は常々アルフォンの行動時間とパターンを観察しており、今日の様に夜、所要に出掛ける時は大体90分程で帰って来る。

 アルフォンが戻ってくるまでにあの発光信号を灯していた場所まで行き、再びここへ戻らなければならない。

 勿論館内にいる警備兵、都市を巡回している敵兵に見つからない様にしながらだ。

 一分一秒も無駄に出来ない為、雪は即座に行動に移った。

 まず、扉に耳をつけ、周囲に警備兵が居ないかを確かめ、部屋をそっと出る。

 通路を歩いていると、前方から警備兵の足音が聞こえて来たので、即座に手近にあった部屋へと入る。

 幸い部屋の中に敵兵は居なかった。

 

「ここは‥‥内務長官の寝室かしら‥‥?」

 

 雪は寝室に隣接する書斎に入った。

 

「書斎‥‥人がいた形跡があるわ‥‥今はアルフォン少尉が執務室として使っているのかしら?」

 

 雪は執務デスクに近寄り、

 

「ここが内務長官の部屋だとすると、護身用の銃があってもおかしくわないわね‥‥」

 

 しかし、執務デスクの引き出しに銃は無かった。

 

「やっぱり没収されていたみたいね」

 

 武器が手に入らなかったと言う事で落胆した雪であったが、引き出しの中に走り書きをした様なメモが見つかった。

 その紙には数字が書かれており、それは何かのパスワードの様でもあった。

 念の為、雪はそのメモをポケットに入れ、再び部屋の外の安全を確認し、部屋の外へ出た。

 通路を歩いている中、アルフォンが使用している寝室前まで来た雪は、ここに自分が使っていた銃が無いか確かめようとしたが、部屋はロックがかかっていた。

 

(もしかしたら、さっきのメモ‥‥)

 

 雪は先ほどのメモの番号を部屋の前の番号キィーに打ち込むと、部屋のロックは解除された。

 アルフォンの部屋にあるテーブルには一本のワインが置かれていた。

 

「年代物のワイン‥‥いくら占領軍とはいえ、この戦火の中でもこれだけのモノを確保するには大変な筈‥‥この館の地下にワインセラーでもあるのかしら?でも、データベースにはそんな見取り図は載っていなかったけど‥‥」

 

 ワインに疑問を感じた雪であったが、それよりも本命の武器を探したが、アルフォンの部屋にも銃は置いて居なかった。

 武器は手に入らなかったが、何時までもここで時間を潰すわけにはいかないので、雪は出入り口のある一階まで降りた。

 すると、食堂で警備兵たちが食後の談話をしていた。

 

「ここでの警備任務は楽な仕事だよな、街の方はパルチザンとの戦いでかなり厳しみたいだがな」

 

「パルチザンなんか、さっさと叩き潰せねぇのか?」

 

「そうもいかんらしい、何せ地の利は奴等にあるからな‥‥この前も夜中に街中を巡回していた奴が行方不明になったんだと‥‥」

 

「それに地球人じゃない、謎の生物がパルチザンと一緒に抵抗しているって話もきいたぞ。言語も『ふもふも』とか言っている奴で、結構デカいらしいぜ」

 

「何か怖ぇな‥‥それにしても、地球に居るこのヤブ蚊とか言う虫は何とかならんのか?痒くて仕方がねぇ‥‥」

 

「俺もだ‥‥夜中に寝ていると耳元であのブゥ~ンって羽音を聴いているだけで、イライラする」

 

 警備兵たちは刺された顔の部分を掻きながらヤブ蚊に対する愚痴を言う。

 その時、腕の時計がアラーム音を鳴らす。

 

「時間だ。持ち場に戻るぞ」

 

 警備兵たちはワラワラと食堂から出ていく。

 

そんな中、

 

 一人の警備兵が食堂のテーブルにハンドガンタイプのコスモガンを一丁置き忘れて食堂を出ていった。

 雪は警備兵たちが食堂を出ていったのを確認すると、テーブルからその銃を取り、厨房へ行き、そのまま地下の食糧倉庫へと降りて行く。

 そして地下の食糧倉庫にて、秘密のワインセラーを見つけた。

 内務長官が秘密に作ったのだろうか?

 そしてワインセラーにて気温維持の為の大きな通風孔を見つけ、雪はその通風孔の蓋を開けて、中へと入る。

 通風孔の出入り口のエアコンルームにはメンテナンス業者用の為の出入り口が有り、そこは外へと通じていた。

 しかし、その出入り口には鍵付きの鉄格子があった。

 

「あともうちょっとなのに‥‥」

 

 銃で鍵を撃てば鍵は壊れて外へと出られるのだが、ここで撃てば銃声が聴こえてバレてしまう。

 やむを得ず雪はサイレンサー代わりになるモノを探しに来た道をもう一度戻った。

 そして、警備兵の目を掻い潜り仮眠室から枕を一つ調達し、再び戻ろうとした。

 その時、食堂に警備兵が一人戻って来て慌てて雪は階段の影に身を隠した。

 

「あれ?何処かに置き忘れたのかな?」

 

 その警備兵は首を振りながら何か探し物をしている様子だった。

 

(早く何処かに行って‥‥)

 

 警備兵が食堂に居る限り、ワインセラーには行けない。

 

「どうした?」

 

 心配に思ったのか、別の警備兵が声をかける。

 

「あ、いや、何でもない」

 

 慌てて答える警備兵。

 

「そうか」

 

 声をかけた警備兵は何事も無かったかのようにそのまま巡回に出ていった。

 

「‥‥やばいな‥‥銃を無くしたなんてわかったら、始末書モノだぞ‥‥」

 

 食堂に自分の銃が無いとわかると、その警備兵は食堂を出ていった。

 

「この銃、あの警備兵のモノだったのね‥‥それにしても、敵の軍隊にも始末書なんてあるのね‥‥住んでいる星が違っても軍の規律は何処も似た様なものなのかしら?」

 

 敵兵に対し、少し親近感が湧いた雪であった。

 

 仮眠室から調達した枕をサイレンサー代わりにして鉄格子の鍵を撃ちぬいた雪は外へと出た。

 そして、発光信号を灯していた場所へと赴くと、そこには白い花が咲いていた。

 

「‥‥あなたたち‥‥踏みにじられても頑張って生きているのね‥‥」

 

 つい最近戦火の有った場所にも関わらず、懸命に花を咲かせている草木に声をかけ、自分も負けていられないと言い聞かせた雪は、発光信号を灯していたであろう破壊されたビルの中へと入った。

 そのビルの一室には、外の様子を双眼鏡で探っている人物が居た。

 雪はその人物に銃口を向け、

 

「動かないで‥‥今、私の銃が貴方の頭部を狙っているわ」

 

 そう言うと、その人物は両手を上げる。

 

「答えて‥‥光で信号を送ってきたのは貴方なの?」

 

「そ、その声は!?」

 

 両手を上げていた人物は手を降ろし、振り返る。

 

「北野君!!」

 

 発光信号を灯していたのは元ヤマト乗組員の北野だった。

 

「雪さん!!無事だったんですね!!」

 

 意外な再会を果たした雪と北野は手短に情報交換を行った。

 

「そうですか‥‥それで雪さんはあの館に‥‥我々の下にはあの館に防衛軍関係者が軟禁されているとしか情報が入って来なかったので、信号はイチかバチかの賭けだったんですよ‥‥しかし、良かったです。雪さんが無事で」

 

「北野君もちょっと見ないうちにたくましくなったわね」

 

「あっ、いや‥その‥‥ありがとうございます」

 

 雪に褒められ嬉しい様子の北野だった。

 

 続いて雪はヤマトと古代に関する情報を北野に訊ねた。

 

「残念ですが、詳しい事は‥‥僕たちが掴んだ情報はヤマトがイカルスの偽装基地から飛び立ち、太陽系外へと向かったと言う事だけなんです。誰が乗り組んでいるのかまでは‥‥」

 

 北野は悔しそうに言う。

 

「そう‥‥」

 

「で、でも大丈夫ですよ。古代さんたちは殺しても死なないような人たちですから。さあ、元気を出して下さい、クヨクヨしているなんて雪さんらしくありませんよ」

 

「ありがとう‥北野君‥‥そうだ、コレを持って行って」

 

 雪は北野にブローチ型の端末を渡す。

 

「コレは?」

 

「前に真田さんに造ってもらったの‥‥緊急用の通信端末よ。地球の何処にも使っていない周波数だから盗聴されにくいわ。でも、長時間回線をひらいていると、逆探知されるかもしれないから。情報は収束通信で送るわね」

 

「送るって‥‥雪さんはまさか、あそこに戻るつもりですか?」

 

 北野としてはこのまま雪をパルチザン本部まで案内する予定だったが、雪は再びあの館に戻り、敵から情報収集し、パルチザンに送ると言う。

 危険な任務であるが、敵の情報が入れば、レジスタンス活動も速やかに行くと言う事で、北野は渋々であるが、雪を見送る事にした。

 

「通信は毎晩23時丁度、3秒間だけ回線を開きます」

 

「いいわ‥‥23時丁度ね‥‥収束通信の解凍パスワードは‥‥『エイユウノオカ』でどう?」

 

「了解です」

 

「それじゃあもう戻るわね‥‥それと皆には私の事を内緒にしておいて‥‥皆に心配をかけたくないの。それと先輩としての命令よ。良いわね、絶対に死なないで!!何が有っても生きるのよ!!」

 

 時間がおしているので、雪は急いで来た道を引き返して行った。

 

「雪さん‥‥」

 

 北野は去ってゆく雪に敬礼し彼女を見送った。

 

 その後、雪は銃を通風孔に隠し、部屋へと戻った。

 そして予定通りの時間にアルフォンが館に戻ると、

 

「ん?‥これは‥‥」

 

 彼は雪の部屋の前で白い花の花びらが落ちているのを見つけ、その花びらを拾い、花びらと雪の居る部屋のドアを交互に見ていた。

 




デザリアム兵士に襲い掛かる地球の害虫たち‥‥

地球独自の洗礼なのか?

それとも誰かの意図的なモノなのか?

そして、一部の兵士に目撃されている地球人と共に自分たちへ抵抗する謎の大型生物‥‥

デザリアム軍兵士はまさかの苦労を強いられることに‥‥
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