「「‥‥」」
フェイトとティアナは、今日買い出しの為、市街地を歩いていた。
その市街地の彼方此方には、ライフルを構えて立っている暗黒星団帝国の兵士の姿がチラホラ見えた。
報道規制が敷かれているため、今の地球がどんな状況になっているのか、詳しい事は分からないが、市民たちの噂話から今でもメトロポリス東京では、パルチザンが抵抗活動をして暗黒星団帝国軍に対し、パルチザン活動をしていると言う。
現に今自分たちがお世話になっている中嶋家の主である中嶋源三郎も家を空け、パルチザン活動に従事している。
勿論パルチザン活動の情報はテレビでは報道されない。
しかし、詳しい戦果は知らされていないが、そう言った活動をしている者も居ると言う事実はフェイトとティアナの耳にも入っていた。
(管理局がこの地球を管理しようとしても防衛軍の人はやっぱり地下に潜って徹底抗戦するだろうな‥‥)
パルチザンの活動を聞き、フェイトはその様に思った。
管理世界の中でも無理矢理に管理世界入りさせられた世界では今の地球同様、管理局に対する反管理局活動が続いており、管理局はそうした活動をしている者たちをテロリストと呼び殲滅対象にしている。
しかし、彼らは自分たちの世界を侵略者から解放するために戦っているのだ。
こうして管理局とは無縁の世界で過ごし、その世界が占領されてパルチザン活動をしている者たちの事を聞いて、今なお管理世界で管理局に対しテロ活動(レジスタンス活動)をしている者たちへの見方が何となく変わった気がするフェイトとティアナだった。
(私にも何か出来ることは無いのかしら‥‥)
ティアナは、やはりこの世界で‥‥占領されている今の地球で自分にも何か出来ることは無いのかと思っていた。
買い出しを終えて中嶋家へ戻っている最中‥‥
「アナタたち、ちょいといいかしらぁ?」
横断歩道で信号待ちをしていると、フェイトとティアナは、背後から呼び止められる妙なイントネーションの声を聞き振り向いた。
「「なっ!!!」」
振り返ったフェイトとティアナは声の主を見てギョッとした。
声の主は、身長二メートル前後の、巨漢の敵国軍兵士だった。
漂白されたような肌の色のスキンヘッドに眉がなく、目の周りが奇妙な隈取りがされている顔立ちで、地球で言うところのオネエ言葉で話しかけられたのだ。
そんな人物に声をかけられれば、ギャッとするのも無理はない。
(ええー!? この人ってもしかしてオ〇マ!?ヴィヴィオを連れてこなくて良かった‥‥)
こんな人物を見ればヴィヴィオが声を出して泣いてしまうのでないかと思ったフェイトは、今日、ヴィヴィオを連れてこなくて良かったと安堵した。
(暗黒星団帝国にもオカ〇がいるのぉ~!?)
ティアナは敵国にも地球やミッド同様この様な特殊な人種が居た事に意外性を感じていた。
「え、えっと‥‥な、なんでしょうか?」
何時までも驚いている訳にもいかないので、ティアナ巨漢の敵軍兵士に用向きを問うた。
しかし、その表情は硬く少し引き攣っている。
「やぁねえ。大丈夫よぉ、ただ道を訊ねたいだけ、だ・か・ら」
ウィンクしながら、自分は何もしないと言う暗黒星団帝国の兵士。
「は、はぁ~‥‥」
(嫌ぁぁぁぁー!こんな筋骨隆々な異星人のオカマなんて嫌ぁぁぁぁー!!)
フェイトはやはり生理的に受け付けなかったのか、顔を引き攣らせている。
「そ、そうですか‥‥それで、どちらへ?」
「食料品の買い出しに行きたいのだけれど、そう言った物が売っているお店はしらないかしら?」
ティアナは先程自分たちが買い物をしていたスーパーへの道順を教えた。
「どうもありがとー」
巨漢のオカ‥‥もとい、オネエ軍人はフェイトとティアナに礼を言い、のっしのっしと歩き去った‥‥しかも二人に投げキスを残して‥‥。
「な、何なの?あの人~(泣)」
「何か、どっと疲れが‥‥」
げんなりとした表情で二人は中嶋家へと戻って行った。
(それにしてもあの敵国の兵士もやっぱり食事は摂るんだ‥‥)
ティアナは振り返り先程のオネエ軍人が向かって行った方角をジッと見た。
その頃、星の海では‥‥
ヤマト まほろば 春藍 雪風・改 ハルバード ファルシオンは敵本星向けての長距離ワープを行っていた。
計算上では現在位置から一気に20万光年先にワープアウトする予定だった。
その目的地である手前の某宙域にて‥‥
ガリアデス 艦橋
「ミヨーズ司令、空間歪曲干渉装置設置完了いたしました!!」
「エネルギーパネル動作正常。干渉装置へのエネルギー注入、開始!!」
「ふん‥‥ご苦労。ヤマトは間違いなく、我々の本星を目指してくる‥‥銀河系のオリオン腕からのワープなら、この宙域を通る筈だ。間違いなく、この場所をな‥‥」
「エネルギー注入、60%を突破!!」
「さぁ、ワープして来い、ヤマト!!貴様らは目的地に辿り着くことは出来ん‥‥干渉波に巻き込まれ、貴様らがワープアウトしてくるのは、このミヨーズのあぎとの中なのだ!!」
「エネルギー注入、100%に到達!!」
「空間歪曲干渉装置起動!!干渉波を放出せよ!!」
ミヨーズの命令が下され、昆虫の様な形の衛星が起動し始めた。
やがて、ヤマト まほろば 春藍 雪風・改 ハルバード ファルシオンがワープアウトし、通常空間を確認した。
そして位置を確認すると、そこは目的地の20万光年先の位置では無かった。
現在地位は先ほどのワープ地点から17万光年の位置だった。
原因として最後のワープにて何らかのイレギュラーが発生したと思われた。
しかし、ワープ中にイレギュラー警告は無く、余りにも不可解な事態だった。
すると、各艦のレーダーが敵影と歪な空間歪曲反応を捉えた。
突然の原因不明のイレギュラーと敵の出現‥‥
これは果たして偶然だろうか?
否、敵は此方が自分達の本星に向かっている事を知っている。
ならば、その途中で待ち伏せをしているのは、敵として当然の事だ。
しかし、一つ腑に落ちない点は、ワープのイレギュラーでワープアウトした地点でこうして敵艦隊と遭遇するなんて余りにも出来過ぎている。
そう考えると、このイレギュラーも敵の何らかの罠の可能性が指摘された。
真田曰く、「空間を広範囲に歪曲しておけば、干渉効果でワープ航路を狂わす事は可能」だと言う。
最もそれだけの装置を作れる技術と設備が有ればの話だ。
残念ながら、今の地球、管理局はその様な技術はないが、何万年光年も先の星に重核子爆弾を送り込んでくることの出来る暗黒星団帝国ならば、それは可能かもしれない。
それはレーダーでとらえた歪んだ空間歪曲が何よりの証拠である。
敵艦隊の後方には干渉波を出している装置らしきモノの存在が確認された。
やがて、その干渉波はコスモレーダーにも影響を及ぼし、遠距離レーダーは使用不能。
使用できるのは近距離レーダーのみとなった。
敵がワープに干渉出来るのであれば、この宙域をワープで撤退するのは不可能。
よって、この危機を乗り切るには敵艦隊を殲滅ないし、干渉装置を破壊しなければならない。
しかし、敵はこちらを包み込む様な包囲陣をしいている。
速やかに敵を片付けなければ、集中砲火を浴びる危険がある。
だが、ここで一つの不安要素もある。
波動エンジン、ショックカノン、そして波動砲は微小ながら空間歪曲の原理を一部使用している。
計器上では今は何の影響も無いが、使用してみると何かしらの悪影響が出ているかもしれない。
しかし、何もしない訳には行かない。
ヤマト まほろば はコスモタイガー隊を出撃させ、敵艦隊を突破する作戦をとった。
先陣をきったコスモタイガー隊はそれぞれ左右に展開し、包囲しようとする艦艇に対し雷撃を加える。
そしてヤマトら六隻も砲雷撃を開始するが、ミサイルは敵に向かって行くが、ショックカノンは敵艦に命中する前に軌道がズレてしまう。
それに波動エンジンの出力は低下していき、まず最初にヤマトが波動砲の使用は不可能となった。
それでも攻撃と進撃を止める事は出来なかった。
その様子をガリアデスの艦橋で見ていたミヨーズの下には、戦況報告が次々と入る。
ガリアデス 艦橋
「敵、我が方の包囲網に接近!!」
「ふん‥‥覚悟を決めて突入を試みようと言う訳か‥‥全艦!!狙いを絞れ!!一気に蜂の巣にしてやるのだ!!」
敵艦隊はさらに包囲陣を狭めて来た。
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「敵艦隊更に接近!!」
「左舷Bブロック被弾!!」
「更に被弾箇所拡大!!」
「メデックは応急救護にかかれ!!」
「ダメージコントロール!!応急修理を急げ!!」
まほろば の左舷側からは敵の砲撃が苛烈を増す。
敵の砲撃は何故か曲がらずにまっすぐ此方へと飛んでくる。
これは、かつて敵はエネルギー源としてイスカンダリウム、ガミラシウムを採掘しようとしていた事から地球が使用しているエネルギーとは異なったエネルギーを使用している事が推察された。
弱っていくのは地球側艦艇のみ‥‥。
まぁ、自分たちの使っているエネルギーに干渉してしまえば、自分たちも兵器を使用できなくなる。それでは意味が無い。
弱っていく地球艦艇の内、ヤマト 雪風・改は特に状況が深刻だった。
春藍と無人戦艦は波動エンジンをそれぞれ二基搭載されており、地球防衛軍艦艇の中では随一の機関出力を誇る。
まほろば も ヤマトより多数の補助エンジンを搭載しているので、ヤマトより被害は低かった。
しかし、ヤマトはいくら機関を新型に換装してもメインエンジンを一基しか搭載されておらず、出力を春藍級並に上げるのは不可能であった。
雪風・改はいくら奇才大山 トチローが改良を加えたと言っても元が駆逐艦なので、出力低下は致し方が無い。
そんな中で敵を一気に殲滅する起死回生の手には波動砲は有効だが、今のヤマトは航行するだけでもやっとの状態。
波動砲を打つため、全エネルギーを停止し充填しなければならない。
だが、この干渉波の中、機関を停止させると、再び再始動できるかも怪しい。
そんな中、良馬は山南に通信をいれた。
宇宙戦艦 春藍 艦橋
「山南艦長、まほろばの月村艦長から通信です」
「繋いでくれ」
「了解」
春藍の艦橋に有るメインモニターには良馬の姿が映った。
「山南艦長、春藍の機関出力はやはり低下していますか?」
「若干だが、落ち始めてきている。ハルバードとファルシオンもだ‥‥」
「春藍及び無人艦に波動砲を撃つ余力はありますか?」
「うむ、多少出力は落ちているが、撃てない事はない」
「では、我々が拡散波動砲を撃ち、包囲網に穴を開けましょう。このままではジリ貧です」
「うむ、そうだな。通信長」
「はい」
「至急ヤマトに通信を繋いでくれ」
「りょ、了解」
「砲雷長!!拡散波動砲発射用意!!」
「拡散波動砲をですか!?」
「そうだ!!急げ!!」
「りょ、了解拡散波動砲発射準備!!‥‥波動砲のチャージを開始します!!」
山南の大声での命令を聞き、春藍の砲雷長は急ぎ、拡散波動砲の発射準備に取り掛かる。
「波動砲チャージャーに接続!!チャージを加速します!!」
そして山南は まほろば、ファルシオンと共に拡散波動砲による一斉射で敵包囲網に穴を開ける旨をヤマトへと伝えた。
宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋
春藍、まほろば、ファルシオンの波動砲の発射準備はヤマトでも探知する事が出来た。
「春藍、まほろば、ファルシオンの周辺に高エネルギー反応!!拡散波動砲のチャージを行っている物と思われます!!」
「拡散波動砲か‥‥!!」
「そうか‥‥何せ、春藍はれっきとしたアンドロメダ級の跡継ぎだからな‥‥」
「艦長、春藍の山南艦長から通信です!!」
「繋いでくれ」
「了解」
パネルには山南の姿が投影された。
「ヤマトの諸君!!我々が拡散波動砲で敵の包囲網に穴を開ける!!そこから一気に突破して干渉装置を破壊してくれ!!」
「山南艦長、波動砲のチャージは大丈夫ですか?」
「うむ、敵の干渉波で出力は落ちているが、春藍もファルシオンもエンジンが二基ある!!何とかなる筈だ!!まほろば も今はすべてのエネルギーを波動砲へ注いでいる!!」
「了解しました。全艦に伝達!!拡散波動砲チャージの間、春藍、まほろば は無防備になる。敵艦より春藍 と まほろば を守れ!!拡散波動砲の発射後、一気に敵を突破する!!」
守の命令を聞き、コスモタイガー隊は攻撃から艦隊の直掩へと回り、ヤマト 雪風・改、ハルバードは雷撃による弾幕を張った。
そして‥‥
「拡散波動砲発射準備完了!!」
チャージをしていた艦の拡散波動砲の発射準備が整い‥‥
「拡散波動砲発射!!」
春藍、まほろば、ファルシオンから拡散波動砲が放たれた。
暗黒星団帝国 包囲艦隊
「か、艦長!!こ、高エネルギー反応が‥‥うわぁぁぁぁー!!」
「な、何だとぉー!!」
「こ、この閃光は‥‥!?」
包囲艦隊の艦船の乗組員たちの目の前に眩い閃光が迫って来たと思うと、彼らが乗艦していた艦は次々と消滅していった。
拡散波動砲の一斉射撃で敵の包囲艦隊は壊滅的打撃を受けた。
包囲網を狭め、密集していたのが仇となったのだ。
ガリアデス 艦橋
「な、なんだ?‥‥なんなんだ?‥‥あの兵器は‥‥!!」
初めて拡散波動砲の威力を見たガリアデスや第二特務艦隊の将兵たちは驚愕と地球側の兵器に恐怖する。
「うろたえるな!!敵の兵器は驚愕に値するが、こちらにはまだ肝心の干渉装置が健在である!!恐れるな!!あの艦‥‥ヤマトと共にあの戦艦部隊も叩き潰せ!!」
拡散波動砲の威力を見てうろたえる部下にミヨーズは鼓舞し、士気の低下を防いだ。
宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋
「敵艦隊に混乱を確認!!」
「包囲網にも穴が開きました!!」
「出力全開!!一気に敵包囲網を突破する!!」
敵の包囲網に穴が開き動きにも混乱が確認されると、地球艦隊は一気に包囲網を突破し、干渉装置へと向かう。
ガリアデス 艦橋
「ミヨーズ司令!!敵が包囲網を突破!!干渉装置に接近しています!!」
「うぬぅぅぅ‥‥空母艦隊へ伝令!!迎撃機を展開し干渉装置を死守するのだ!!」
「了解!!」
ミヨーズの命令を受け、干渉装置手前に布陣していた空母部隊の空母からは、直ちに迎撃の為の戦闘機が発艦される。
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「干渉装置前方に敵空母艦隊発見。迎撃機を展開し始めています!!」
「機関長もう一度波動砲を使えるか?」
良馬が井上にもう一発波動砲が撃てるか訊ねる。
「もう一度ですか?‥‥撃てない事は無いが、撃った後、機関が止まるかもしれんぞ」
「構わない。敵空母を撃破した後、ヤマトが干渉装置を破壊してくれればエンジンの調子も元に戻るのだろう?」
「それはそうじゃが‥‥」
「だったら、迷っている暇は無い。今は敵が態勢を整える前に干渉装置を破壊する事が第一優先だ」
「分かった」
「通信長」
「はい」
「ヤマトに波動砲による敵空母部隊への攻撃の旨を伝えてくれ。それとハルバードにも波動砲の用意をして貰うように山南艦長に伝達!!」
「了解」
「砲雷長!!波動砲第二射準備!!次は空母のみを狙うから収束モードへ変更!!」
「りょ、了解、波動砲発射‥‥波動砲のチャージを開始します!!」
ギンガはヤマトに空母部隊を まほろば ハルバードの波動砲にて一掃する旨を伝えた。
「波動砲発射準備完了!!」
「波動砲発射!!」
まほろば、ハルバードから波動砲が放たれ、干渉装置の護衛をしていた敵空母部隊を一撃で葬り去った。
しかし、
「機関出力低下‥機関停止!!」
「推進力低下!!航行不能!!」
「‥‥後は任せましたよ‥‥古代さん」
干渉装置の影響下、拡散波動砲を二発撃った まほろば は機関停止の状態となった。
その為、まほろば のコスモタイガー隊は艦の護衛にまわり、守の計らいで雪風・改もその護衛についた。
暗黒星団帝国 空母部隊 空母
「回避をー!!」
「駄目です!!間に合いません!!」
「ぐわぁぁぁぁぁー!!」
邪魔者が片付いたことでヤマトは干渉装置へと辿り着くと、ミサイルと魚雷で干渉装置を破壊した。
干渉装置自体にバリアーや攻撃機能はついていない様でミサイルや魚雷が命中するといとも簡単に干渉装置を破壊する事が出来た。
ガリアデス 艦橋
「味方空母部隊全滅!!」
「干渉装置も全て破壊されました!!」
「ふん‥‥」
「どうされますか?ミヨーズ司令」
「‥‥全艦に伝令‥退却だ」
「は?」
「我々の任務はヤマトと地球艦隊が母星へと辿り着くのを阻止する事‥‥罠の一つが突破された今、ここで戦力をこれ以上減らすのは愚策‥‥必要のない事だ‥‥次のポイントへ向かい、更に戦力を整えて待ち受けるのだ」
「了解」
通信員は直ちに残存艦艇に撤退命令を伝達する。
そんな中、
「あの‥‥ミヨーズ司令」
「なんだ?」
「この先には我らの中間補給基地があります。敵艦隊包囲網の突破を基地にも打電しておくべきではないでしょうか?」
幕僚の一人がこの先にある味方の補給基地にヤマトら地球艦隊がこちらの策を突破した旨を伝えるべきでは?と進言する。
それは軍として、それは当然の行動である。
「中間基地か‥‥ふん‥‥司令官は確かグノンの奴だったな‥‥」
ミヨーズは暫し考えるが、
「‥‥連絡は不要だ。中間基地の事は放っておけ」
と、本来ならば伝えるべき伝達事項を味方に伝えなくても良いと言う。
ヤマトが中間基地で葬られれば所詮それまでの相手だったとでも言いたげな様子のミヨーズ。
「しかし、それでは‥‥」
暗黒星団帝国の軍人としては、万が一にも味方の補給基地が破壊されれば今後の地球占領維持に支障をきたすと思いミヨーズに意見するが、
「いいか‥‥よく聞け‥‥ヤマトは、『私の獲物』なのだ」
ミヨーズは殺気を含んだ視線で幕僚に言う。
すっかり狩人モードのミヨーズにはヤマトを撃滅する事しか頭にはないようで自分の艦隊以外の味方がどうなろうと知った事では無いと言いたげである。
「は、はい‥‥」
ミヨーズの殺気に当てられ、幕僚は怯えたように答えた。
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「空間歪曲干渉波、消失!!」
「機関再始動を開始しました!!」
「レーダー機能も復旧しました。敵の残存艦がワープにて撤退していきます」
「えらく引き際の良い敵じゃな‥‥」
敵のあっさりとした引き際に何か不気味さを感じる。
ここまで弱らせたのだから、刺し違えるつもりで攻撃を続行してくるものだと思っていた。
最もそれをやられればこちらも苦戦を強いられて艦の被害も馬鹿にならない。
「うん‥‥どうやら敵さんはあの干渉装置に頼った作戦を立てていたみたいだからな‥‥ここで撤退しなければ自軍の被害は更に拡大していただろう」
敵のあっさりとした撤退にあの干渉装置の破壊が大きく関わっていたのだろうと推察する良馬。
「作戦の内容と言い、戦況の把握と言い指揮官はかなり優秀な人物の様ですね」
新見が敵の指揮官をプロファイリングする。
「ああ‥‥どうやら、その様だ‥‥」
地球艦隊側でもミヨーズの指揮官としての能力の高さに今後の航海に大きな影響となる人物だと予想された。
敵の策略を突破した地球艦隊は、エンジン等に影響は無いが干渉波の残留波が残っているため、その残留波の届かない宙域まで巡航し、そこからワープをする予定をとり、今は普通に航行している中‥‥
宇宙戦艦ヤマト 展望室
古代はヤマトの展望室から徐々に離れていく銀河系星雲をジッと眺めていた。
そこに兄の守がやって来た。
「兄さん‥‥」
「ついに来たな‥‥銀河系の外まで‥‥」
「ええ‥‥」
「地球の事を考えていたのか?」
「うん‥‥もう既に銀河系から十数万光年も離れてしまったんだ‥‥もしここから地球は見えたとしても、それは十数万年前の地球‥‥そう思うと、地球からずっと離れてしまったように思って‥‥」
「わかるよ、その気持ちは‥‥イスカンダルに居た間、俺も良くその事を考えていた‥‥自分は今、他の地球人たちとは違う時間を生きているのかもしれないってな‥‥だが、地球には今、間違いなく我々と同じ『今』を生きて、戦い、屈辱を堪え忍んでいる人たちがいるんだ‥‥」
「‥‥」
「あの銀河系の輝きの、たった一粒の中だが、そこにはヤマトに全てを託してくれた人たちが待っている‥‥雪君だってきっとそうだ‥‥我々は決して孤独じゃない。待っている人たちのためにも、頑張ろうじゃないか」
「はい‥‥」
古代兄弟が銀河系星雲を見ながら地球の事を想っていると、
突然展望室のドアが開き、
「トチローさん‥‥」
トチローが展望室に飛び込んできた。
「おい、兄弟水入らずのとこすまんが、ちょっと匿ってくれ」
何やらトチローは慌てている様子。
「どうしたんだ?」
守は何故トチローが慌てているのかその理由を訊ねる。
「しぃっ!!」
トチローは展望室に備え付けのテーブルの下に隠れる。
すると、今度は展望室に佐渡が入って来た。
「お~い、大山君を見なかったかね?」
佐渡は古代兄弟にトチローの行方を訊ねる。
「敵包囲網の突破祝いに一杯やろうとおもったんじゃが‥‥」
佐渡は手に持った酒瓶を古代兄弟に見せる。
「いえ‥‥その‥見ていませんが‥‥」
古代はトチローの事を庇う。
「そうか‥‥機関室の方かのう‥‥」
佐渡はトチローが居そうな機関室へと降りて行った。
展望室から佐渡が退出すると、トチローが出て来た。
「‥‥まいったよ。酒は好きだが、ああも毎日飲まされると、どうもな‥‥」
「ハハ、じゃあ、くれぐれも体を壊さないように気を付けて下さい。入院した途端、一気にアルコール漬けにされちゃいますよ」
古代が冗談交じりに言う。
「ううう‥‥くわばら、くわばら‥‥」
「「ははは‥‥」」
トチローの様子に古代兄弟は、苦笑した。
宇宙戦艦 まほろば 展望室
ヤマトの展望室で古代兄弟が銀河系星雲を眺め地球に想いを馳せている頃、まほろば の展望室でも良馬が銀河系星雲をジッと見ていた。
そこへ、
「艦‥‥良馬さん‥‥」
ギンガが展望室へと来て、良馬に声をかけた。
「ギンガ‥‥」
声をかけられて良馬は振り向く。
「どうしたんですか?一人で‥‥」
「いや、随分と遠くに来たと思ってね‥‥銀河系から既に十数万光年‥‥地球人類が今まで来たことのない宇宙だ‥‥」
再び眼前に広がる星の海へと視線を戻す良馬。
「そうですね‥‥」
ギンガも良馬の隣に立つ。
当然管理局の次元航行艦もこの宙域まで来た記録は無い。
「「‥‥」」
「やっぱり心配ですか?‥‥忍さんたちの事‥‥」
「ああ‥‥でも、それはギンガも同じだろう?」
良馬としてはやはり、地球に残してきた忍たちの事が気がかりだ。
重核子爆弾はいつ爆発してもおかしくない状況‥‥。
こうしている間にも爆発しているかもしれない。
いくら忍が夜の一族とはいえ、ハイペロン爆弾の前には恐らく無力だろう。
ガミラスの遊星爆弾の時と同じように‥‥
地球の現状が一切分からない今、地球に残してきた家族や親しい者たちの安否が気がかりになるのは当然だ。
ましてギンガの方は、家族や親しい者たちが多い。
更にはミッドからの大事なお客さんも居る。
彼女らの身に何かあれば管理局が後からブーブー文句を言ってきそうだ。
「はい‥‥でも、私は信じています。きっと皆無事だって‥‥そして、皆を助けるため、私たちは必ず勝ちます!!そして皆の待つ地球へ帰るって‥‥」
しかし、ギンガは今での地球は無事で、必ず救ってみせると信じている。
「ギンガ…そうだな‥‥」
ギンガの言葉を聞き、良馬はフッと笑みを零した。
煌めく星々を見ながら二人っきりの状態‥‥
無意識的に二人の手は触れ合う‥‥
「あっ‥‥」
「わ、悪い‥‥」
触れ合った瞬間、良馬は慌ててギンガから手を離した。
「いえ‥‥その‥‥嫌ではありませんでしたから‥‥」
そう言ってギンガは良馬の手を握り直す。
「ギンガ‥‥」
「良馬さん‥‥」
二人の唇が近づく‥‥。
そんな中、
ジィー‥‥
二人は自分達を見つめる視線に気づき、バッと近づく唇を離し、その視線を送る人物の方へ顔を向ける。
そしてそこに居たのは‥‥
「二人とも何をしていたの?」
右手で髪を弄りながら、ジト目で良馬とギンガを見るユリーシャの姿があった。
「ゆ、ユリーシャ!?」
「二人とも何をしていたの?」
「あ、あの‥‥」
突然のユリーシャの出現にパ二くるギンガ。
「ほ、星を見ていたらギンガの眼にゴミが入っちゃったみたいで見ていたんだよ」
「そ、そうなのよ!!」
「ふーん‥‥」
咄嗟に着いた良い訳であるが、ユリーシャは半信半疑の様子で相変わらずジト目で見たいたのだが、
「それじゃあ、私も一緒に見る」
ユリーシャはニンマリと笑みを浮かべ、良馬に抱き付く。
(うぅ~やっぱりユリーシャちゃんはお邪魔虫です‥‥)
良馬に抱き付いているユリーシャをギンガは羨ましそうに見ていた。
その頃、地球では‥‥
フェイトとティアナが現在お世話になっている中嶋家。
そこには一家の大黒柱である源三郎が不在のまま、夕食の時間を迎えている。
テレビではコメディー番組が流れ、スピーカーから笑い声が聞こえるが、正直言って食卓の空気は重い。
桜花は何とか、この場を盛り上げようとしているが、彼女自身が重いオーラを纏っている為、スベリまくっている。
やはり、パルチザンに身を置く父の事を案じているのだ。
「‥‥」
そんな中、ティアナは人知れず、何かを決意した表情をしていた。
「フェイトさん」
夕食、入浴が終わり、後は就寝するだけと言う時、フェイトとティアナは自分たちに用意された部屋で、ティアナはフェイトに声をかける。
既にヴィヴィオはフェイトのベッドで夢の中に居る。
「何?ティアナ」
「‥‥私、パルチザンに参加しようと思います」
「っ!?」
ティアナからの突然の爆弾発言にフェイトは一瞬思考が停止する。
「り、理由を聞いても良いかな?ティアナ」
何時までも絶句している訳にもいかず、再起動を果たしたフェイトはティアナが何故パルチザン活動に参加しようとしているのか理由を訊ねる。
本来管理局員であるティアナがこの世界の地球のゴタゴタに首を突っ込む必要は無い。
この世界の戦闘は管理局の非殺傷、相手を気絶させて捕えるなんて生易しいものではない。
相手を殺すか殺されるか‥殺傷設定のみの戦闘だ。
それにティアナが管理局だと言う事は防衛軍側にも知られている。
そんなティアナがパルチザン活動に参加などすれば、スパイ容疑をかけられてしまうのではないだろうか?
正直、防衛軍の管理局に対する印象は最悪とは言わないまでもあまり良いモノとは言えない。
それは防衛軍が手に入れた管理局の資料と“海”の一部の高官が行った逆探知を仕掛けた事による行動が防衛軍側に不信感を与えていた。
そんな中、管理局員であるティアナがパルチザン活動に参加すれば占領下の混乱に乗じて防衛軍の機密情報を盗むのではないかと思われても不思議では無い。
ティアナがパルチザンに入りたいと言ってもすんなりと入れるものだろうか?
それは兎も角、ティアナは何故そんな危険なリスクを背負ってまでパルチザンに参加すると言うのだろうか?
「ギンガさんの気持ちが何となく分かった気がしてきたからです」
「ギンガの気持ち?」
「はい」
ティアナはこの世界に来てミッドで起きたJS事件とはその規模が比べられない程の大きな戦争に巻き込まれたこの地球に来て、どんな苦境に立たされても決して諦めないこの地球の人たちを見てきて、何もしないままでただ見ている傍観者から抜け出たかった。
「ランスターの弾丸の本質は『弾は敵を貫くものじゃなく、誰かを守るもの』なんです‥‥管理世界だとか管理外世界だとかは関係ないんです。今、私の目の前で苦しんでいる人たちが大勢居る‥‥全てを救う事は出来なくても、せめて目の前に居る人たちだけでも救いたい‥‥それが、私がパルチザンに参加しようと思った理由です」
「ティアナ‥‥」
「それにこのままなにもしなければ、私たちの身体はアイツ等に乗っ取られるかもしれません‥‥勿論、フェイトさん、ヴィヴィオの身体も‥‥」
「‥‥」
「私はただ、黙ってそれを待つなんて事はできません!!」
宇宙ではヤマトが頑張っているのだが、それでも地球では戦っている人が居る。
ならば、自分も大切な人の為に戦う‥‥
これ以上、何もせずにただ黙って見ている事は出来なかった。
真面目なティアナらしいと言えば、ティアナらしい言動であった。
「でも、フェイトさんまでも付き合う必要はありませんし、もし、フェイトさんの身に何かあれば、ヴィヴィオが悲しみますし、私の身に何かあれば、管理局が地球連邦に対し何かいちゃもんをつけてくるでしょうから、その時には証人になって欲しいんです‥‥全ては私、ティアナ・ランスター個人の意思であり、地球連邦、地球防衛軍は全く関係ない事を‥‥」
「‥‥」
「面倒事を押し付ける様な役をとらせてしまって申し訳ありません」
「ううん‥‥今は上官、部下なんて関係ない‥‥ティアナがそこまで言うなら私は止めないし、管理局が地球側に文句を言わせない様に全力を尽くすよ‥‥でもね、ティアナ」
「なんでしょう?」
「必ず生きて戻って来て‥‥それだけは約束してね」
「確約はできませんが、私だってそう簡単に死ぬつもりはありませんよ」
ティアナは、フッと笑みを零した。
その後、ティアナは加奈江にパルチザンとのコンタクトを頼んだ。
加奈江の旦那の源三郎がパルチザンメンバーに入っている事は薄々フェイトたちも気がついていた。
そして、そのパルチザンに所属している源三郎が時々家族に手紙を送っている事も‥‥
その事からティアナは加奈江を介して源三郎に自らもパルチザンへの参加を申し込んだ。
ティアナのパルチザン参加については、パルチザン内部でやはり賛否が問われた。
民間からのパルチザン兵は時空管理局の存在は知らないが、防衛軍軍人の一部には管理局の事を知っている軍人も居り、防衛軍側はやはり、ティアナがこの混乱に乗じて防衛軍の機密情報を入手しようと企んでいるのではないか?
または、彼女がパルチザンに参加し、万が一にも死亡した場合、管理局がその責任を地球連邦側に求め、管理局の支配下である管理世界入りを言って来るのではないか?
等、意見が奔走した。
しかし、後者についてはティアナ・ランスター自身の意志の為、管理局に横槍は入れさせないと明記されており、彼女の上官であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンも全力で地球連邦を弁護すると明記されていた。
それに今の防衛軍にとって老若男女、軍、民を問わず、地球の為に戦ってくれる人材は一人でも欲しい所だ。
そして最終的にパルチザン司令官の藤堂と彼女を連れて来た源三郎がティアナのパルチザン参加に賛成したため、パルチザンに参加している防衛軍軍人たちは渋々と言った様子でティアナをパルチザンに迎え入れた。
だが、藤堂も何の警戒も無く迎え入れたわけでは無く、ティアナの所属部隊を古野間と北野の部隊に入れ、彼らにティアナの監視を密かに命じた。
最もそれは杞憂に終わるだろうと藤堂も源三郎もそう思っていたが、一応警戒している軍人もいるので、恰好だけはつけさせたのだ。
勿論パルチザンに参加したティアナ本人もその事には勘付いていた。
そこで信用は結果で導き出す。
その意欲でティアナは本来自分とは縁も所縁も無いこの第二の97管理外世界の解放戦線へと身を委ねて行ったのだ。
その頃、地球に住む吸血害虫によって着々と被害が出ているデザリアム、地球占領軍。
「こ、これが‥本日の報告書‥‥です‥‥」
アルフォンに報告書を手渡す兵士の顔は明らかにやつれており、顔も所々腫れている。
報告書に目を通すと、文章の中に誤字脱字が目立つ。
睡眠不足の中、書き上げたものだとアルフォンは判断して、報告書の誤字脱字に関しては目を瞑り、司令部にあげる前に清書する必要があると思った。
その報告書の中で気になる文章があった。
「ん?この未確認生物の記述‥‥これはなんだ?」
「はい‥パルチザンと交戦した兵士の話では、地球人類とは別に、未知の生物がパルチザンに加わっていたそうです」
「未知の生物?」
「はい‥‥体格は地球人よりも大きく、二足歩行を行い、肌の色は茶色と灰色の二種類が確認されております。容姿はこの星の哺乳類生物の犬の様な、クマの様な‥‥兎に角、形容しがたい容姿をしております」
「それは本当に生物なのか?地球軍の新兵器では無いのか?」
「ライフメータにて確認した所、生体反応があったので、生物と断定されました」
「地球軍の生物兵器と言う事か‥‥」
「‥かもしれません。銃器で武装し、我が軍と交戦していましたので‥‥」
「それで、仕留めることはできたのか?」
「それが、頭部にレーザーを打ち込んでも死なずに、平然としていた様です」
「バカなっ!?」
「事実です‥‥それにライフメータでさらに詳しく解析した所、生体反応の他に我々と同じく、機械反応も確認されました」
「‥‥となると、その生物兵器は我々と同じく、生物と機械の融合生物と言う事か?」
「恐らくは‥‥もしかしたら、あの生物は地球軍の生物兵器ではなく、我々と同じく、別の星の生物なのかもしれません。それにその生物は言語を話しておりました」
「ふむ‥それで、なんと言っていた?」
「それが『ふもふも』 『ふもっふる』と解析不明な言語を話していたのですが、地球人にはそれが通じている様でした」
「地球はその生物が住む星と同盟を結んでいたと言う事か?」
「地球人と共に我々と交戦し、更に地球人と意思疎通をしていた事からその可能性もあります」
「‥‥」
アルフォンはしばし考え込んだ後、
「分かった‥その生物の対処に関しては司令部で検討してもらおう‥‥下がっていいぞ」
「はい」
兵士を下がらせたアルフォンはこの未知の生物に関して司令部に報告すべきかどうか考えた。
圧倒的優位な立場で地球を占領している筈なのに、この星に住む吸血害虫に未知の生物兵器の存在が不安を駆り立てる。
ハイペロン爆弾を地球へ打ち込む前に、この地に住む吸血害虫を先に始末する手を講じるべきであった。
それに頭部にレーザーを受けても死なない自分たちと同じ機械融合した生物の存在‥‥しかもそれは地球軍の生物兵器ではなく、第三者の星の住人の可能性も出てきた。
もし、あの生物が地球と同盟を組んだ別の星の生物だとしたら、我が軍は地球とその星と二正面作戦をとらなければならない。
前線の兵士たちから、これらの報告を受けてもう少し、地球に関して情報を収集しておくべきだったと‥今回の地球占領作戦はしばし早急だったと思うアルフォンだった。
ティアナがパルチザン行動に参加しました。
もし、この活動中、彼女が左頬に一生残る傷をおったら、彼女の髪の色、長さ、そして傷から、松本作品に登場する有名な女海賊そのものになってしまうかもしれませんね。