星の海へ   作:ステルス兄貴

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百話 狩人ミヨーズの最後

 

 

 グロータスが仕掛けた機雷原を突破した地球艦隊は、暗黒銀河を今の所、敵の襲撃も無く、航行している。

 

「第四変更点を突破。暗黒星雲中央への針路変更を完了しました」

 

「微粒子密度+200.まだレーダー捜索可能な範囲です。危険度は高いですが、十分ワープが可能な状態かと思われます」

 

 そして、今回の艦隊旗艦たるヤマトからワープの指示が来た。

 

「機関長、ワープ準備だ」

 

 良馬は機関長の井上にワープ準備をさせた。

 

「了解。波動エンジン内、圧力上昇。ワープ可能領域へ移行」

 

「ワープ」

 

「ワープ」

 

 各艦のワープ準備が整うと、地球艦隊はワープした。

 

 すると、ワープ中に異常な振動が艦全体を襲った。

 

「ど、どうした?」

 

「イレギュラーです!!何か、巨大な障害物が航路の右舷前方に存在しています!!」

 

「なにっ!?」

 

「その障害物の影響でワープ航路が歪曲しています!!これ以上のワープは危険です!!強制ワープアウトします!!」

 

「分かった!!総員に告ぐ、これより本艦は強制ワープアウトを行う!!全員、衝撃に備えろ!!」

 

 良馬が乗員に注意を喚起し、まほろば は強制ワープアウトを行った。

 

「通常空間を確認‥強制ワープアウト、成功」

 

「味方艦も無事にワープアウトが出来た様です」

 

 まほろば の周囲にはヤマト、春藍、雪風・改、ハルバード、ファルシオンのワープアウト反応があった。

 

「でも、おかしいですよ‥‥計器では障害物も何も映っていなかったんですけど‥‥」

 

 永倉は航海計器を見ながら、障害物の見落としがないかチェックする。

 

「レーダーにも反応がありませんし、故障もしていません」

 

 新見もレーダーには異常が無いと報告する。

 

「反応が無い‥‥どういう事だ‥‥?」

 

「わ、分かりません。イレギュラーが出たのは、確かなんですが‥‥ん?‥‥か、艦長あれを見て下さい!!」

 

 永倉がふと窓の外にある何かを見つけ、良馬に報告する。

 

「な、何だ?アレは‥‥!?」

 

「真っ黒だ‥‥まるで何もない空間みたいで不気味だ‥‥」

 

 フェリシアも眼前に広がる真っ黒で不気味な空間に対し、震えながら言う。

 

「もしかして、暗黒星雲の出口まで来てしまったのでしょうか?」

 

 ギンガが現在位置の予測を立てる。

 

しかし、

 

「いや、それならいつもと同じように星が見えている筈じゃ。しかし、あれは一体‥‥高密度の暗黒ガスが充満して居るならレーダーに映るはずじゃし‥‥」

 

 井上がギンガの予測を否定するも、あの眼前に広がる暗黒空間の正体を掴み兼ねている。

 

 一方のヤマトでもあの不気味な暗黒空間の正体が何なのか、議論が交わされており、真田があの暗黒空間の正体を見破った。

 

 それによるとあの不気味な暗黒空間は超巨大なブラックホールだと言う。

 

 20世紀の頃から、銀河の中心には、太陽の何百万、何千万と言う質量を持つ超巨大ブラックホールは存在すると言われてきた。

 

 太陽系が存在する銀河系からでもそれは確認されている。

 

 『射手座Aウエスト』と呼ばれる天体がそのブラックホールであった。

 

 ブラックホールの存在に関しては、迂闊であった。

 

 主構成が暗黒星雲とは言え、この星雲のサイズは銀河系とほぼ同じ大きさ‥‥

 

 その為、この暗黒銀河の中心部にも同じ様な超巨大なブラックホールがあったとしても何らおかしくはなかった。

 

 しかし、ここで一つ疑問があった。

 

 もし、ブラックホールならば、その巨大な質量によって引き起こされる潮汐力が重力場感知装置に反応した筈であった。

 

 だが、地球艦隊の艦で重力場感知装置に反応を捉えた艦はいない。

 

 これにはちゃんと理由があった。

 

 潮汐力と言うのは、距離の三乗に反比例する形で強さが変化する。

 

 例えば、太陽質量ほどのブラックホールが持つ潮汐力は、10億G以上もの強烈なものなのだが、直径が数光年を超える超巨大なブラックホールの場合、潮汐力は感じる事はおろか、景気でも計れない程度まで小さくなる。

 

 それ故、この不気味な暗黒空間は、何も無い訳でなく、光すら脱出出来ないブラックホールの境界面‥‥『シュバルツシルトの壁』であった。

 

 だとすると、かなり厄介な存在であった。

 

 潮汐力を感じないとは言え、ブラックホールである事に変わりない。

 

 万が一、シュバルツシルト境界の内側に入り込んだから、脱出は絶対に不可能となる。

 

 地球艦隊の面々がシュバルツシルトの壁を唖然とした表情で見ている頃、地球艦隊の針路前方の宙域では、ミヨーズ率いる艦隊が先回りをし、待ち受けていた。

 

 

ガリアデス 艦橋

 

「ふん‥‥来たか‥‥」

 

 パネルに映る地球艦隊‥ヤマトの姿を見てミヨーズはどこか嬉しそうであった。

 

「ミヨーズ司令、グロータス閣下より通信です」

 

 そこにグロータスから通信が入る。

 

「繋げ」

 

 通信回路を開くと、パネルの表示が地球艦隊からグロータスへと変わる。

 

「準備は整っているかね?ミヨーズ君」

 

「はっ、滞りなく‥‥それにしても准将閣下には全く感服いたしますな‥このような作戦を思いつかれるとは‥‥」

 

 ミヨーズは今回の作戦の立案をしたグロータスを褒め称える。

 

「なぁに、簡単な事だ。機雷原を突破したルートから、彼奴等が星雲中心付近を通過しようとしているのは分かっている‥‥そして、この宙域を通る限り、巨大ブラックホールの影響を受けてワープアウトをするのは必然‥‥あとは貴君の艦隊が自慢の空間歪曲干渉装置で連中を暗黒の中に追い込めばよい‥‥」

 

「はっ、承知いたしております」

 

「では、聖総統閣下共々、勝利の報告を待っているぞ」

 

 誘い役は自分(グロータス)で仕留め役はミヨーズ。

 

 その役割を伝え、グロータスは通信をきった。

 

「ふん、全く感服するよ」

 

 通信をきった後、ミヨーズは呆れる様に呟く。

 

「上手く、ヤマトを封じ込めればよいが、我々の艦隊までもがブラックホールに引きずり込まれる危険性もある‥‥その点を語らんとはな‥‥」

 

 ブラックホールの周辺で作戦行動を行う以上、ミヨーズの艦隊もブラックホールに引きずり込まれる危険性は当然ある。

 

 しかし、グロータスは敢えてその危険性を伝えていない。

 

 だが、ミヨーズとて一流の軍人‥ちゃんとブラックホール周辺の艦隊行動についてはその危険性も理解している。

 

「ここが‥‥正念場か‥‥」

 

 ミヨーズは自分に言い聞かせるように呟く。

 

 ヤマト追撃の為、展開していた艦隊も初戦で前衛艦隊を壊滅させられ、増援の為地球占領軍の艦艇を地球圏からかなり引き連れて来たが、その艦船も度重なる戦闘で、次々と失われて行った。

 

 連絡をしなかったとは言え、中間補給基地までも失った。

 

 中間基地を破壊された為、地球に駐屯している占領軍には援軍も真面に送れない状況となっている。

 

 しかも現在、占領軍は地球にて、パルチザの戦闘の他にもその土地の独特の風土病に害虫・害獣に悩まされている。

 

 更に詳しい情報が無いながらも地球においてパルチザンに味方する謎の生物の存在の情報も入っている。

 

 地球を占領していながらも占領軍は実際の所、彼らは厳しい状況下に居た。

 

 ハイペロン爆弾で地球人類を一掃してしまいたい所だが、それでは自分たちの国家元首である聖総統への反逆行為になってしまう。

 

 その為、地球の占領軍は厳しい状況の中、戦闘と占領維持を続けなけれなならなかった。

 

 そして、それはミヨーズも同じで、地球艦隊をこれ以上本星に近づけさせない為、ミヨーズとしてもこれ以上の失敗は正直に言って許されない状況だった。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

 

「今、一瞬ですがレーダーに反応がありました」

 

「やはり来たか‥‥敵は恐らく我々をブラックホールへ放り込むつもりだ」

 

「艦長、敵のエネルギーパターンは、先日空間歪曲干渉装置で罠を張った艦隊と一致します!!」

 

「新たな罠で雪辱戦と来たか‥‥でも、ブラックホールを罠に使うなんて‥‥下手をしたら、自分たちもブラックホールに引きずり込まれる危険性もあると言うのに‥‥」

 

「それほど、敵も必死と言う事なのでしょうか?」

 

「だろうな‥‥総員、戦闘配置!!」

 

 艦内に警戒音が鳴り、乗員は駆け足で戦闘配置についていく。

 

「航海長、操艦にはくれぐれも注意してくれ!!ブラックホールに追い込まれたら、一巻の終わりだぞ!!」

 

「任せて下さい!!」

 

 ミヨーズ艦隊の位置から敵は地球艦隊をブラックホールへと追い落とす作戦の様だ。

 

「暗黒ガスの影響で近距離レーダーに支障が出てきます」

 

「コスモタイガー隊はレーダー衛星を射出しつつ哨戒と敵艦隊への攻撃をしてくれ」

 

「了解」

 

 地球艦隊が敵を求めていると、

 

「ん?航海長!!航路がブラックホール方向に向かっているぞ!!」

 

 ヤマト、まほろば、春藍の有人艦の針路が何故かブラックホールの方向へと向いていた。

 

 有人艦からの無線誘導で航行しているハルバード、ファルシオン、雪風・改も当然、同じ航路を辿っている。

 

 良馬は急いで、永倉に原因を訊ねる。

 

「わ、わかりません。まっすぐに艦を操艦しているはずなんですが‥‥」

 

「センサーが空間歪曲干渉波を感知しています。もしかしたら、敵が航路に干渉しているのかもしれません」

 

 新見が、航路が滅茶苦茶になっている原因を示唆する。

 

「そんな事って可能なんですか!?」

 

 ギンガが新見に干渉波で艦の航路を滅茶苦茶にすることが可能なのかを問う。

 

「考えられなくはないわ‥‥周囲の空間を強力に歪曲すれば、艦のコンピューターを錯乱させることも出来るかもしれない‥‥」

 

「くっ‥‥」

 

「ですが、コントロールはなんとか取り戻せそうです。威力を上げた分、長時間の使用は出来ないみたいです」

 

 ガトランティスの火炎直撃砲同様、やはり、人の手で作り出した物ゆえ、どんなに優れた兵器にも弱点はあった。

 

「艦長、この危機を脱するにはそこを突くしかありません」

 

「分かった。通信長」

 

「はい」

 

「ヤマト、春藍にも伝達してくれ」

 

「了解」

 

 ギンガがヤマトの守、春藍の山南に通信を入れると、ヤマトから通信が入る。

 

「月村、航路についてはこちらも確認した。敵の干渉波がいつまた再開されるか分からないいじょう、航路のチェックは入念に行え」

 

「はい。航海長、シュバルツシルトの境界面を越えたら、それで終わりだ。なんとしてでも敵艦隊へ接近し、干渉装置を破壊するんだ」

 

「こちら、コスモタイガー隊‥‥こちらは干渉波の影響は少ないみたいです」

 

 坂井からの報告では艦船よりも艦載機は敵の干渉波の影響は少ないらしい。

 

 まぁ、コスモタイガーはその構造上、高性能なセンサーを搭載していないので、干渉波の影響が少ないのだろう。

 

 しかし、当然敵も艦載機が干渉波の影響が少ない事は知っている筈‥‥

 

 恐らく、コスモタイガー隊を迎え撃つ戦闘機‥それを運用する空母が居てもおかしくはない。

 

「敵も艦載機が干渉波の影響を受けることが少ない事は自覚している筈だ。となると敵は戦闘機を搭載した空母を連れている。油断するな」

 

「了解」

 

 コスモタイガー隊は哨戒飛行をしているとアステロイド帯に敵の戦艦部隊、空母を連れた機動部隊を見つけた。

 

 空母を守るかのように戦艦部隊が二個小隊‥‥

 

 更に地球艦隊を攻撃する為、空母からは戦闘爆撃機が発艦している。

 

「こちら、コスモタイガー隊、敵艦隊を発見!!」

 

 敵艦隊発見の情報と位置は直ぐに地球艦隊へと報告される。

 

 そしてコスモタイガー隊は敵の戦闘爆撃機とのドックファイトへと突入する。

 

 

宇宙戦艦ヤマト 艦橋

 

「艦長、ここならば、まだブラックホールの影響は少ないので、波動砲を撃っても差し支えがありません。敵艦隊との交戦時間を短縮する為に春藍 と まほろば に拡散波動砲の発射を打電してはどうでしょう?」

 

 真田が今の位置から波動砲を撃っても問題はないので、反包囲される前に敵艦隊を一掃する為、春藍 と まほろば に対して拡散波動砲の発射を具申する。

 

「うむ‥‥通信長、春藍 と まほろば に拡散波動砲の準備を要請してくれ」

 

「了解」

 

 ヤマト通信長の相原は春藍 と まほろば に拡散波動砲の発射を要請した。

 

 ヤマトからの要請を受け、春藍 と まほろば はアステロイド前に展開する二つの戦艦部隊に向けて拡散波動砲の発射準備を行う。

 

 二艦が波動砲の発射準備を行っている間、ヤマト、雪風・改、ハルバード、ファルシオンがまほろば、春藍の護衛を行う。

 

 やがて、拡散波動砲の発射が整うと二艦は波動を放つ。

 

 味方の戦艦部隊を撃破された空母は、急ぎ後退して、後衛のミヨーズ艦隊本隊と合流を図る。

 

 しかし、艦首を反転させたところに横腹からヤマト、ハルバード、ファルシオンからの長距離砲撃が空母の艦体を貫く。

 

 敵空母はミヨーズと合流する前に撃沈された。

 

 前衛の戦艦部隊、機動部隊を撃破されたミヨーズは干渉装置を背景に決戦に臨む。

 

 

ガリアデス 艦橋

 

「司令、敵がこちらに向かってきます!!」

 

「いよいよ決着をつける時が来たな‥‥ヤマト‥‥全艦砲雷撃戦用意!!総力戦だ!!」

 

「は、はい」

 

 地球艦隊と総力戦となったミヨーズ。

 

 ミヨーズ艦隊と地球艦隊との間にいくつものビームとミサイルが飛び交う。

 

 しかし、地球艦隊の戦艦は思いのほか装甲が厚くなかなか致命傷を与えられない。

 

そんな中、

 

「し、司令!!」

 

「なんだ?」

 

「敵の艦載機が干渉装置に向かっています!!」

 

「なにっ!?」

 

「このままでは干渉装置が‥‥」

 

「むぅ‥‥駆逐艦を数隻向かわせて干渉装置の護衛をさせろ!!なんとしてでも干渉装置を死守するのだ」

 

「は、はい」

 

 ミヨーズは戦力を割いて駆逐艦を干渉装置の護衛に回す。

 

「隊長、敵の駆逐艦が‥‥」

 

「構うな!!まずは邪魔なこのガラクタを壊す事を優先しろ!!」

 

 コスモタイガー隊は敵の駆逐艦を無視して干渉装置を目指す。

 

「山本、こいつらは俺たちが引き受ける。その隙に干渉装置を破壊してくれ」

 

「おう、坂井、頼んだぞ」

 

「任せとけ」

 

 コスモタイガー隊はヤマトのコスモタイガー隊は干渉装置の破壊へと向かい、まほろばのコスモタイガー隊は駆逐艦の相手をした。

 

 後方から敵の追撃の危険が減ったヤマトのコスモタイガー隊は干渉装置を破壊した。

 

「ミヨーズ司令‥‥干渉装置がまたもや破壊されました!!このままでは‥‥」

 

 干渉装置が破壊された事で、地球艦隊は干渉波の影響から解放された。

 

 干渉装置の破壊はミヨーズ艦隊の士気を下げ、逆に地球艦隊の士気を上げる。

 

「うろたえるな!!‥‥准将が援軍を持って控えているはずだ!!早急に連絡をとれ!!」

 

 ミヨーズはこの後方にいるであろうグロータスの艦隊へ援軍要請をする。

 

 グロータスの艦隊が来れば数の力で押し切って地球艦隊をブラックホールへと追い込めると思っていた。

 

しかし‥‥

 

「そ、それが‥‥さっきから打電しているのですが、いっこうに返答がありません‥‥」

 

 通信員がグロータスの艦隊に援軍要請をしているのだが、グロータスの艦隊から援軍が来る気配がない。

 

 それどころか通信にも一切答えない。

 

「なにっ!?」

 

 グロータスの艦隊からの返答もなく、また援軍が来る気配もないこの現状にミヨーズは何かを察した。

 

「‥‥いたしかたない。ならば、砲雷撃戦で迎え撃つのみ!!もはや後退はできん!!全力で突撃するのだ!!」

 

「は、はい」

 

(ふん‥‥まさか、このミヨーズが捨て駒にされようとはな‥‥)

 

(これも‥‥我々の敗北も計算の内と言う訳か?グロータス准将‥‥)

 

(あなたの地位を脅かしかねない芽を今のうちに摘んでおこうと‥‥)

 

 ミヨーズはグロータスが援軍を派遣しない事、

 

 彼がこの宙域を戦場に指定した事、

 

 それらの要素から自分たちはグロータスから捨て駒にされた事を悟った。

 

 その原因が、これまでの作戦の失敗‥‥

 

 そして、グロータス自身がミヨーズの存在を恐れていた事だった。

 

 彼はグロータスよりも年齢的に若いながらも准将である自分より一個下の階級である大佐の地位に居る。

 

 このままではいつ、ミヨーズに階級で追いつかれ、追い越されるのかグロータス本人にとっては戦々恐々だった。

 

 だからこそ、グロータスはこの機会を利用してヤマトもミヨーズも始末するつもりだった。

 

 ミヨーズがヤマトを始末しても彼のこれまでの作戦失敗を問題にして、彼を閑職に回すもよし、

 

 ヤマトがミヨーズを片付けてもミヨーズとて、一門の武人‥‥ヤマトにもそれなりのダメージを与える筈‥‥

 

 弱ったヤマトを自分が持つ全戦力を投入して仕留めれば、それこそ自分の手柄となり、自分はより高い地位に就ける。

 

 グロータスの野心の為に自分は利用され、挙句の果てに捨て駒にされた‥‥

 

 しかし、例え、この後、これまでの作戦の失敗の責任を問われても今の自分としては強敵たるヤマトを仕留めることが出来ればそれで満足だった。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「艦長、見てください!!あの戦艦!!」

 

「あれはっ!?」

 

 ミヨーズ艦隊の旗艦、ガリアデスはかつて、イスカンダルにて戦った暗黒星団帝国の戦艦、プレアデスと同型艦だった。

 

「イスカンダルで戦ったあの大型戦艦か‥‥対処はイスカンダルの時と同じだ!!恐らくあの戦艦は姉妹艦‥強力な偏向型バリアを張っている筈だ!!ショックカノンではなく、実弾攻撃に入れ!!」

 

「了解!!」

 

 主砲には実弾が装填され、ミサイル発射管、魚雷発射管にはそれぞれ実弾が込められる。

 

 地球艦隊はそれぞれ三隻ずつに分かれ、ミヨーズ艦隊を左右から包囲する様な形で攻撃する。

 

 右舷側を春藍、ハルバード、ファルシオンの比較的に推進力が高い艦隊。

 

 これならば、少々ブラックホールの引力の影響を受けても脱出する事が出来るし、装甲が厚い。

 

 いざとなれば無人艦のハルバードとファルシオンを犠牲にしてでもブラックホールの影響圏から脱出すればよい。

 

 そして、左舷側をヤマト、まほろば、雪風・改が務める。

 

 ミヨーズ艦隊の後方では、ヤマトのコスモタイガー隊が干渉装置を破壊し、まほろばのコスモタイガー隊が相手にしていた駆逐艦へと迫って来る。

 

 エース、準エースらが操縦する多数のコスモタイガー隊の前では、数隻の駆逐艦が敵う筈もなく、瞬く間に撃沈され、ミヨーズ艦隊の背後から襲い掛かる。

 

 主砲の実弾、ミサイル、魚雷が被弾するたびにガリアデスの船体が激しく揺れる。

 

「くっ‥やはり、この艦の偏向バリアでは実弾は防ぎきれんか‥‥」

 

 ミヨーズは悔しそうに顔を歪める。

 

 そもそもデザリアムは科学技術が発達し過ぎて、生命の種としての機能が大きく劣化した為、今回の地球占領作戦を実行したのだが、それは兵器に関しても同様で実弾を使用した兵器などもう何百年前にデザリアムから姿を消した。

 

 故に今のデザリアム軍の艦には実弾に対しての防御が想定されていない。

 

 発達しすぎたが為に起きた致命的な欠陥であった。

 

 左右、そして後方から包囲される様な形で地球艦隊の猛攻を受けるミヨーズ艦隊の艦船は一隻、また一隻と数を減らしていく。

 

 残ったガリアデスに地球艦隊の砲火が集中する。

 

 艦自体、爆発はしていないがガリアデスの船体からはおびただしい量の煙がでて、あちこちで火花が散っており、いつ爆発してもおかしくはない状態だった。

 

 既に戦闘能力はもう無いと判断した地球艦隊は、止めは刺さずに、この場からの脱出へと専念した。

 

「ミヨーズ司令!!もう艦がもちません!!」

 

「ヤマト‥‥すばらしい‥‥実にすばらしい艦だ‥‥狩人たるわたしをその牙で屠るには、実にふさわしい獲物‥‥いや、もはや獲物ではなく、あちらの方が狩人か‥‥」

 

「ミヨーズ司令!!」

 

「‥‥爆発にはまだ間はあろう。お前たちは脱出しろ」

 

 ミヨーズはガリアデス乗員に対して退官命令を出す。

 

 しかし、その中にミヨーズ自身は含まれていなかった。

 

「しかし、それでは‥‥司令はどうされるんですか!?」

 

 幕僚はミヨーズに退艦しないのかを訊ねる。

 

「聞こえなかったのか!?‥‥行けっ!!」

 

「は、はい‥‥」

 

 幕僚は瞬時に察した。

 

 彼に何を言っても彼はガリアデスを退艦することが無いと‥‥

 

 彼を退艦させることが出来るのはミヨーズ自身か自分たちの国家元首である聖総統ぐらいだと‥‥

 

 いや、聖総統の命令でも彼はガリアデスから退艦するのか微妙だ。

 

「しかし、ヤマトよ‥‥このミヨーズに狩られた方が貴様らにとっては幸運だったかもしれんぞ‥‥」

 

 誰も居なくなったガリアデスの艦橋にて、この宙域から去って行く地球艦隊‥‥ヤマトの後姿を見ながらミヨーズは呟く。

 

「我々を斃して進むその先に、何が待ちうけているのか‥‥その目で。しかとみとどけるがいい‥‥」

 

 この先の宙域にはグロータスの部隊がいる。

 

 あの部隊に果たして勝てるだろか?

 

 そんな思いがミヨーズにはあった。

 

 そして、ガリアデスから遠ざかって行く脱出艇の姿へと目をやる。

 

「やっと脱出しおったか‥‥ふん‥‥まったく最後の最後まで、使えん部下たちだったな‥‥」

 

 ミヨーズはフッと笑みをこぼし、部下たちに毒づくが、自分がこの地位につけたのは、自分の能力の他にその使えん部下たちの功績があったのも確かだった。

 

 例え使えん部下たちであっても自分にとっては大事な部下たちだった。

 

 そんな部下たちの行く末を案じるミヨーズ。

 

 しかし、この敗戦の責任は司令官たる自分一人で負わなければならない。

 

 その為、大勢の部下たちを犬死させるわけにはいかなかった。

 

 部下たちの事を思っていると、辺りが眩い光に包まれるとガリアデスは大爆発を起こした。

 

 狩人であるミヨーズ‥そして、この戦いで戦死した者たちを乗せて‥‥

 

 

宇宙戦艦ヤマト 艦橋

 

「敵戦艦の爆発を確認」

 

「終わったか‥‥強力な相手だった‥‥」

 

「地球付近から、ずっと俺たちをつけ狙っていた訳だからな‥‥まったくその執念には感服するよ」

 

「しかし、ヒヤヒヤしましたよ。いつブラックホールの境界を越えてもおかしくないような状況でしたからね‥‥」

 

「うむ‥‥まったく危険な状況だった。もし、暗黒ガスがもっと薄ければ遠くからあらかじめブラックホールの存在を観測できたはずだがな‥‥」

 

「まったくです。ともかく、早くこの宙域から脱出したいですよ。ワープは使えそうにないですから、地道に進むしかないですが‥‥」

 

「それにしても、敵がこれだけヤマトを確執に狙うには、何か意味があるのかもしれない‥‥我々の存在自体が、それだけ敵にとっての危機をはらんでいるのかもしれないな‥‥」

 

「ガミラスの時の様にか?」

 

「わからん‥‥今は‥な‥‥」

 

「その答えはあの先にある。この暗黒星雲を越えた向こうに‥‥さあ、進もう」

 

「了解」

 

 地球艦隊はミヨーズ艦隊との戦場宙域を後にする。

 

 ヤマトにとってそれは七色星団にて、ドメル機動艦隊と戦った時の様だった‥‥

 

 

その頃、地球艦隊が目指しているデザリアム星では‥‥

 

 デザリアム星のとある研究施設区画‥‥

 

 そこには数多くの試験管の様な形状のポッドがいくつも並んでおり、その中には若いデザリアム星人の男女が中に入っていた。

 

 その光景はミッドにあったスカリエッティのアジトの再現そのものであり、ポッドの中に居る人物が地球人の様な姿をした人類か、デザリアム星人かの違いだけであった。

 

ただし、正確にはポッドの中に入っているデザリアム星人はこの星の住人ではなく、デザリアム星人の髪の毛や血液から採取されたクローン体であった。

 

 これら大量のデザリアム星人のクローン体はすべて管理局の拘置所からミヨーズの手によって、デザリアムへ亡命?したスカリエッティの手によって生み出されていた。

 

「スカリエッティ博士」

 

「ん?おお、これは、これは聖総統閣下」

 

 聖総統はスカリエッティがいる研究区画へと連絡をいれてきた。

 

「スカリエッティ博士、貴殿のおかげで我が帝国は種としての存命に新たな光を見出せることになりそうだ。貴殿の研究成果には感謝するよ」

 

「ありがとうございます。私自身もこのような技術をこうして目で見て出会えたことはまさに僥倖です。あのままつまらない管理局の拘置所で一生を終えるのかと思っていましたが、聖総統閣下には感謝してもしきれません」

 

「うむ、お互い持ちつ持たれつと言う訳だ。これからも我が帝国の為に頼むぞ」

 

「はい」

 

 スカリエッティは聖総統に一礼してする。

 

 彼のその態度に満足したのか聖総統は通信をきる。

 

 聖総統との通信が完全にきれたことを確認したスカリエッティは、

 

「やれやれ、相変わらず宮仕えとは疲れるモノだ」

 

 普段のふてぶてしい態度に戻る。

 

「お疲れ様です。ドクター」

 

 そんなスカリエッティに紅茶が入ったカップを差し出す女性が居た。

 

「ん?ああ、ありがとう。ロベル」

 

「いえ、私はドクターの秘書として生まれましたので、これぐらいは当然です」

 

 スカリエッティが言ったロベルと言う人物‥‥

 

 彼女はスカリエッティがデザリアムに来てから最初に生み出したクローン人間であった。

 

 いくらスカリエッティがすぐれた科学者であっても一人で星一つの全人口のクローンを用意しろと言われてもそれは無理である。

 

 それに本当にクローン人間として、人としての生活などに支障がないのかを立証する必要があった。

 

 故に彼はまず、自らの秘書兼助手のクローン人間を生み出すことにした。

 

 ミッドではウーノやクアットロがその役割をしていたのだが、ここには彼女たちは居ない。

 

 それどころか、彼女たちが既に死んでいる事さえ、スカリエッティは知らなかった。

 

 ロベルのDNAデータに関してはスカリエッティ自らのDNA及び聖総統の秘書であるサーダのDNAを元にしていた。

 

 スカリエッティはこのデザリアムに来た当初は、ミッドやどの管理世界よりもすぐれた科学力に子供の様にはしゃいだのだが、次第にデザリアムでの生活に慣れてくると彼は、外宇宙にはミッドや管理世界よりも優れた科学力がある星があるのだから、このデザリアムよりもさらにすぐれた科学力を持つ星があるのではないかと思い始めていた。

 

 管理局の最高評議会から生み出され、十年と言う長い歳月をかけてその呪縛から逃れようとJS事件を起こした様に彼はいずれ機会を見てデザリアムを出奔し、まだ見ぬ星の海へと自由気ままに流れようかと思っていた。

 

 無限の欲望(アンリミテッドデザイア)‥‥彼に与えられたコードネームの通り、人の欲望でもあり、この無限に広がる宇宙の様に、彼が求めるゴールは存在しないのかもしれない。

 

 それでも彼は辿り着かないゴールを目指す事を止めないだろう。

 

 もしかしたら、それが彼の存在意義なのかもしれない。

 

 

「うむ、お互い持ちつ持たれつと言う訳だ。これからも我が帝国の為に頼むぞ」

 

「はい」

 

一方、スカリエッティと通信のやりとりをした聖総統はと言うと‥‥

 

「聖総統閣下」

 

「ん?なんだ?サーダ」

 

 聖総統の秘書官であるサーダが聖総統に声をかける。

 

「あの男をそれほどまで信じてもよろしいのでしょうか?」

 

 かつて、ガトランティスの総参謀長であったサーベラがデスラーを信用していなかったようにサーダもスカリエッティに関しては警戒をしていた。

 

 やはり、よそ者と言うのはどの星でも厄介者扱いされる様だ。

 

「‥‥」

 

「時空管理局とか言う組織の資料からは、あの男は元々その組織のトップが生み出したクローン人間‥‥それが自らを生み出した組織に対して反逆を仕掛けたと言うではありませんか‥‥そのような男が我が帝国に従順にしたがっているとは思えません」

 

「分かっておる」

 

「それならば何ゆえに‥‥」

 

「確かにスカリエッティは今後、我が帝国に対して反逆の刃を向けるやもしれん‥‥だが、今の帝国には奴の技術が必要なのだ‥‥現に第一次クローン生産は完了しつつある。奴のクローン研究技術を手に入れればあとはどうにでもなる」

 

「しかし、あの男が生み出したクローン体に聖総統閣下御自らの移植は危険ではありませんか?どんな仕掛けが施されているか分かりません」

 

「だからこそ、地球占領作戦も同時に行ったのだ。地球という田舎惑星ながら素晴らしい環境で育った若き肉体‥‥それは私や一部の選ばれた者にのみ与え、残りは奴のクローン体へと移植し、安全性を確認すればよかろう。罠が仕込まれていたのであれば、それを口実に奴を始末するだけの事だ。そして成功すれば、地球人の肉体、そして我々の子孫の肉体その二つが同時に手に入り、我が帝国の盤石な体制が整うのだからな」

 

「は、はぁ‥‥」

 

「それで、肝心の地球占領作戦についてはどうなっておる」

 

「は、はい。それが現地のカザン総司令の報告ではかなり難儀な状況の様です」

 

「なに?」

 

「地球人は予想外の抵抗をしているみたいで、更には第三者の介入の可能性もあるとのことです」

 

「第三者の介入だと?」

 

「はい。地球人の抵抗組織の中に明らかに地球の生命体では無い生物が地球人と共に我が軍と交戦状態との事です。今の所、捕獲には至っておらず、詳しい情報はえられていないのですが、報告ではどうもその生命体も我々と同じく半機械生命体との報告も来ています」

 

「‥‥」

 

「それにヤマトを追撃していたミヨーズ大佐の艦隊は既に全滅をしたようで、ミヨーズ大佐も戦死したとの報告が先程入りました」

 

「なに!?ミヨーズが!?」

 

「はい‥‥聖総統‥戦況は我々に不利な状況になりつつあります。中間基地も既に破壊され、地球への援軍や補給にも支障が出るのも時間の問題かもしれません。それに現地の風土病や害虫・害獣の被害も多発しているようです」

 

「しかし、折角見つけた素晴らしい肉体がある星をこのままみすみす諦める訳にはいかん‥‥カザンには現有戦力にて現状を死守せよと伝えよ」

 

「はい」

 

「それと破壊された中間基地についても別の宙域に展開している同型の基地を直ちに配置変更し、変更が済み次第、地球へ援軍と補給を行え‥‥後は‥‥」

 

「我が帝国に迫りつつある地球の戦艦‥‥」

 

「そうだ‥‥なんとしてでも奴等を捕獲ないし撃破しなければならん」

 

「すでにその点につきましてはグロータス准将に討伐の命令は出しております」

 

「そうか‥‥グロータスの部隊であるならば、奴等とて無事ではすまんだろう」

 

 聖総統はグロータスの部隊に大きな期待を寄せていた。

 

 そして、地球艦隊が進むその先にはまさにそのグロータス准将の部隊が待ち構えていた。

 

 果たして彼らは地球を救う事が出来るのであろうか?

 

 

 地球とデザリアム帝国がお互いに激しい戦闘を繰り広げている中、ボラー連邦との会戦により、現有戦力を大幅に失った管理局でもある邂逅がなされようとしていた。

 

 この邂逅が後に管理局に希望の光を与えるだけでなく、管理局を更に増長させる結果となってしまう事をこの時はまだ地球も‥そしてフェイトたちも知る由もなかった。

 




今回登場したスカリエッティの新たな秘書兼助手のロベルですが、その名前の通り、外見イメージですが、アーケードゲーム・スーパードラゴンボールヒーローズ、ユニバースミッション第三弾に登場した魔神・ドミグラの秘書、ロベルです。
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