管理局が管理する世界の一つ、ポルテ‥‥
そこはかつてガトランティスのゴーランド提督が破壊した恐竜惑星プレオの様に自然豊かな星で、数多くの幻獣生物が生息している世界だ。
かつてボラー連邦への武力制裁に失敗し、船体が傷ついたクロノが艦長を務めるクラウディアも応急修理と補給のため、この世界に立ち寄ったことがある。
そして、その世界には治安維持のための管理局員の他に、この世界に生息する幻獣生物や自然保護を任務とする自然保護官も駐在していた。
機動六課卒業後、自然保護官となった元機動六課、ライトニング分隊所属のエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエもこの世界に駐在していた。
実際、二人はクラウディアがこの地に来た時、クロノを表敬訪問している。
そしてこの日も普段の通り、キャロの使役竜であるフリードの背中に乗り、空から森林地帯の巡回をしていると、
「ん?なんだ?あれは?」
「どうしたの?エリオ君」
「あっ、あれ‥‥」
「えっ?」
エリオが空の一角を指さす。
キャロもつられて空を見ると、流れ星のようなモノが一つ降って来た。
「流れ星かな?」
「こんな昼間に?」
そう思っていると、それはポルテに近づき、やがて森林地帯へと落ちた。
宇宙からの飛来物が墜落した事により、周囲には轟音が鳴り響く‥‥
「い、隕石かな?」
「わ、わからない‥‥兎に角、本部に連絡をして、調べてみよう」
「う、うん」
キャロが本部へ森林地帯に隕石らしきものが墜落したことを伝え、エリオはフリードを現場に行くように指示する。
本部からは調査の許可がおりたが、慎重に行えという返答がきた。
やがて、エリオとキャロはその現場へと到着した。
ポルテに降って来た飛来物は木々をなぎ倒し、地面をえぐり、土煙を立ててその場に鎮座していた。
「こ、これはっ!?」
「宇宙船?」
宇宙からポルテに降って来た飛来物は隕石ではなく一隻の小型宇宙船だった。
宇宙船ならば、当然その中には乗員である宇宙人がいるかもしれない。
エリオとキャロは宇宙船の周りを回ってどこか乗り口がないかを調べた。
そして、ハッチらしきモノを見つけると、そこをこじ開けて、中へと入る。
小さな宇宙船だったので、そこまで大勢の宇宙人が乗っているとは思っていなかったが、宇宙船の中には誰も居ない。
警戒しながら、宇宙船のコックピットを目指していると、お目当てのコックピットへと辿り着いた。
そこには一人の宇宙人がコンソールに突っ伏す様な形で倒れていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
エリオとキャロは慌てて駈け寄る。
「「っ!?」」
二人はその宇宙人の姿を見て驚いた。
その宇宙人はアニメ・漫画に出てくるようなタコの様な姿をしている訳でもなく、SF映画に出てくるエイリアンやグレイの様な姿をして居る訳でもなく、ミッドや他の管理世界に住んでいる普通の人の姿をしているのだが、自分たちがこれまで見て来た人類と異なる最大の特徴が肌の色だった。
その宇宙人の肌は自分たちの肌の色とは異なり、水色の肌をしていた。
顔を見る限り、年配者だと言う事は何とか分かった。
「‥‥い、生きているの?その人?」
「ちょ、ちょっと待って‥‥」
キャロがこの宇宙人が生きているのかを訊ねると、エリオは宇宙人の生死を確認する為に恐る恐る首へ手を近づける。
例え、肌の色が自分たちと異なっても人の姿形をしているのであれば、首にも頸動脈があり、脈拍があると思ったからだ。
案の定、首には頸動脈があり、脈拍が確認された。
「生きている!!この人、生きているよ!!」
「っ!?本部、こちらキャロ・ル・ルシエ、保護官。墜落した宇宙船にて生存者を発見しました!!至急医療体制の要請をお願いします!!」
キャロが本部に生存者がいることを報告する。
本部は急いで、現場にドクターヘリを向かわせる返答をしてきた。
やがて、宇宙船の墜落現場にドクターヘリが到着すると、医務官らがその宇宙船の乗員をヘリに乗せて病院へと向かった。
エリオとキャロも第一発見者として同行した。
処置が終わり、病室へと運ばれた後、エリオは医師にあの宇宙船の乗員の症状を尋ねる。
「あの、先生‥あの人は‥‥?」
「酷く衰弱していましたが、特に大きな怪我はありませんでした。感染症についても確認はされませんでした。最もここの施設で診察できるレベルですが‥‥まぁ、皮膚の色を除けば、身体の組成が我々と同じでしたから、多分大丈夫だと思います。なお、リンカーコアの有無についても調べましたが、あの方からはリンカーコアの反応はありませんでした」
「そうですか‥詳しい事情を聴くことは出来ますか?」
「意識が戻れば可能だと思います。ただ、言語に関して通じるかは分かりませんけど‥‥」
「確かに‥‥」
肌が水色の人類なんてエリオとキャロはこれまで、見た事も聞いた事もなかった。
その訳は、エリオもキャロも六課卒業後、このポルテにいた為、ミッドであったベムラーゼの局員虐殺映像を見ていないので、肌の色が自分たちと異なる宇宙人の存在は知らなかったのだ。
管理局が大敗北したボラー連邦への武力制裁でも、ボラー星人も自分たちと同じ肌の色かSF映画に出てくるグロテスクな姿をした宇宙人だと未だにそう思っていた。
しかし、現に二人の目の前には肌の色が違う宇宙人がこうして存在して、生きている。
それから数日の間、その宇宙人は眠り続けていた。
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「うっ‥‥うーん‥‥」
重い瞼を開けるとそこは、白い天井が目に映る。
そして辺りからは薬の様な匂いがしている。
どうやら、ここは自分が脱出に使った救命艇でも天国でもボラー連邦に関係する施設でもない様だ。
救命艇の天井はこんな色をしていなかった。
それにボラー連邦に関係している施設であれば、自分は問答無用で殺されていた筈だ。
薬の匂いから察するに医療施設なのかもしれない。
ここが何処なのかわからないままでいると、白い服を着た女性が入って来た。
肌の色はボラー星人、ガルマン星人、バース星人とも違う色をしていた。
その女性は自分の姿を見て、一瞬目を見開いて驚いていた様な顔をしたが、すぐに平然とした様子に戻り、
「くぁwせdrftgyふじこlp」
何やら訳の分からない言葉で話しかけて来た。
生まれた星が異なるので言語も通じない様だ。
女性の方も言葉が通じないと分かると困った顔をする。
自分の服の襟には翻訳装置が内蔵されているので、自分が着ていた軍服があれば恐らくコミュニケーションは取れる筈だ。
幸い自分の上着は直ぐ傍にハンガーで掛けてある。
指で上着を指さすと白い服の女性は自分が何を求めているのかを理解した様子でハンガーから上着を取り、持って来た。
上着を羽織ると、襟に仕込まれた翻訳装置を作動させる。
「いや、すまない‥‥貴女の言葉が通じなくてね‥‥」
「‥‥」
翻訳装置を作動させたので、確かに言語は通じる筈なのだが、白い服の女性は目を見開いて固まっていた。
「ん?どうかしたのかね?」
「あっ、いえ‥なんでもありません。で、では、先生を呼んできますね」
白い服の女性は踵を返して部屋から出て行った。
「先生、あの方が目を覚ました」
「なにっ!?それは本当か!?」
「はい」
「よしっ、今行く。それと管理局にも連絡をいれてくれ」
「はい」
医師は往診に必要な道具を持ち、看護師には管理局へ連絡をいれて病院へ来てもらうように手配した。
先日、救助した宇宙人が目を覚ました。
その連絡は宇宙人が入院している病院から管理局の本部へと入る。
知らせを聞いた管理局はエリオとキャロ、そして二人の上官が病院へと向かった。
最初に医師の診断が行われ、体調に問題がないと判断され、いよいよ管理局での事情聴取が始まった。
「小官は時空管理局、ポルテ駐在、自然保護官のトルネオ・ラングレーです」
「同じく、エリオ・モンディアルです」
「キャロ・ル・ルシエです」
トルネオ、エリオ、キャロは自己紹介をする。
「‥‥私は‥‥元ボラー連邦、軍属技術技官、ポピェーダ・ミノフスキーだ」
宇宙人‥もとい、ミノフスキーは自己紹介の中で自分が所属する勢力の前に『元』をつけた。
それと同時に彼はエリオとキャロを見て、
(二人は随分と若いな‥‥この組織はこんな年端のいかぬ子供も徴用しているのか?)
と、時空管理局と言う組織の採用年齢に疑問を感じた。
故郷であったボラー連邦でさえ、子供を軍や軍属に入れることはなかった。
もっとも幼年学校はあったので、少年期から軍事訓練と軍事教育はしていたが実際の戦場に出すのは幼年学校か士官学校を卒業してからなので、ボラー連邦でさえ、ここまで若い子供を現場に出す事はなかった。
「「「ボラー連邦!!?」」」
ミノフスキーの放った『ボラー連邦』という部分にトルネオ、エリオ、キャロは反応する。
まぁ、管理局員ならば当然の反応であった。
「元‥‥がつく‥‥私はもうボラー連邦の人間ではない」
「‥‥それはどういう言う事ですか?」
エリオがミノフスキーに何故、ボラー連邦の人間では無いのかと問う。
「私は‥‥」
ミノフスキーは自分の身の上話を語り出した。
彼は元々ボラー星で生まれた生粋のボラー星人だった。
故郷であるボラー星は軍事国家な惑星だったので、羽振りがいい職業は軍人か軍属だった。
そして、彼は軍属の技師となった。
軍属技師となった彼は、ボラー本星にて、様々な軍事品の研究開発を行ってきた。
そして、ボラー連邦が技術惑星であるガルマン星を制圧した時、ミノフスキーはそのガルマン星へと赴き、現地にて自分と同じボラー連邦から出向した軍属技師や技術官、さらにガルマン本星の科学奴隷を統括する立場だった。
しかし、そのガルマン星に突如、謎の艦隊が襲来し、更にガルマン星のレジスタンスたちが一斉に蜂起し、ガルマン星のボラー総督府はあっという間に陥落した。
陥落後、総督を始めとする駐屯していた軍幹部は悉く処刑された。
自分は軍属と言う事で処刑は免れたが、ガルマン星からの追放を宣告された。
そして、自分と同じく軍属や軍人でも下級階級のため、処刑を免れた同胞と共に老朽船に押し込められて宇宙を放浪する羽目になった。
ガルマン星の守備に失敗した時点で、自分たちは故郷へ戻る事は出来なくなった。
故郷のボラー星の国家元首、ベムラーゼは機嫌によっては一度の失態でもそれは死を意味する事もある。
今回は折角、手に入れた領地を奪われる失態をしたのだ。
しかもガルマン星はボラー連邦の領地の中でも貴重な技術惑星だったので、ガルマン星の喪失はボラー連邦にとってかなりの痛手だったのだ。
軍属とは言え、戻っても敵前逃亡罪で処刑されることは目に見えていた。
ガルマン星を追放された漂流者たちは帰る星もなく、行くあてもなく宇宙を彷徨う事になった。
乗せられた船は旧式な輸送船で、食糧生産プラントも直ぐに壊れてしまうと、船内で物資を巡って争いが起こった。
同じ、同胞同士で物資を巡って殺し合いが始まったのだ。
ミノフスキーは身の危険を感じ、命からがら搭載されていた救命艇に乗り込み脱出した。
勿論、救命艇で脱出しからと言って、命の保証がある訳でもない。
無限に広がるこの宇宙をちっぽけな救命艇で漂流するのだから、生存の可能性は低い。
しかし、あのまま老朽船にいれば、同胞の手によって殺されるのも目に見えている。
故に彼は僅かな可能性に賭けたのだ。
そして救命艇は運よくプレオに流れ着いたと言う事だ。
「それで、貴方は今後、どうなさるおつもりですか?」
トルネオがミノフスキーに今後の身の振りを訊ねる。
彼の言う事が本当であるならば、ミノフスキーにはもう行く場所がもう無い。
ここまで来た宇宙船も着陸の際に壊れてしまった。
「出来るのであれば‥‥静かに暮らし、そこで研究を続けたいとは思っている‥‥」
「そうですか‥‥」
ミノフスキーは安定した生活を望んでいた。
しかし、彼がボラー連邦の人間だと言う事で当然、トルネオとエリオは警戒した。
(この人は、大勢の局員を殺したあのボラー連邦の人なんだ‥‥油断はできない‥‥)
(彼の話を裏付ける方法はない。故にこの老人の言う事全てが真実だとは限らない。もしかすると、ボラー連邦が送り込んできたスパイかもしれない‥‥)
トルネオとエリオはミノフスキーの言う事を全て鵜吞みにする訳ではないが、一方故郷から半ば追放され、行くあてもないという事実を知ったキャロは、
(この人も昔の私と同じ、故郷から捨てられた人なんだ‥‥)
と、フェイトに拾われる前の自分と境遇が似ている事から、疑う事よりもミノフスキーに同情と言うか共感めいたモノを抱いていた。
ミノフスキーの話が事実であれ、虚偽であれ、この件について報告しない訳にはいかず、トルネオは事情聴取を終えた後、本局へと報告した。
ポルテにボラー連邦の人間が不時着した‥‥
この報告を受けた本局は驚愕した。
まだ、ボラー連邦への武力制裁の失敗から管理局の艦は生産も人員も確保できていない。
そんな矢先にボラー連邦の人間が来たというのだからあわてるのも無理はない。
「ポルテにボラー連邦の人間が来たというのは本当か!?」
「は、はい!!間違いありません!!」
「くそっ、まだこちらの戦力が整っていないのに‥‥」
「いかがいたしますか?残存兵力を結集し、ポルテに向かわせますか!?」
局員が慌てふためく中、追加の報告が来た。
それによると、やって来たボラー連邦の人間は一人の老人だと言う。
そして、本人はボラー連邦から追放された軍属の技師と言う報告が入る。
「信じられるか!?」
「そうだ、そいつはボラー連邦のスパイに違いない!!」
本局でもトルネオやエリオが抱いた懸念を抱いていた。
ベムラーゼによる局員の公開処刑、鹵獲艦による本局近海における管理局艦の撃沈など、ボラー連邦はあまりにも管理局に対する武力行使に対して、トラウマレベルの事をした。
警戒されるのも当然だ。
「それで、本人はなんと言っている?」
「取り調べを行ったラングレー保護官の話では、『静かに暮らしたい』と言っていた様子です」
「『静かに暮らしたい』だと!?バカな!?」
「ボラー連邦の人間の癖に安定した生活を望む権利など、奴等にそんな権利がある筈が無い!!」
「殺してしまえ!!」
「そうだ!!連中も行ったのだから、公開処刑にするべきだ!!」
「しかし、それで、ボラー連邦が管理世界に侵攻して来たどうするのです?」
「むっ!?」
「ボラー連邦の人間をむやみに殺すよりはどこかへ行ってもらう方が良いのではないだろうか?」
「つまり、追放せよと?」
「左様」
「しかし、それでは遺族が納得しませんぞ!!」
ミノフスキーの処遇に対して本局の会議室は意見が飛び交う。
ボラー連邦もやったのだから、管理世界中に中継する公開処刑をするべきだ。
万が一、公開処刑の映像をボラー連邦が傍受して報復してくる可能性もあるので、管理世界から追放するべきだ。
などの意見が飛び交う。
そんな中、
「‥‥いっそ、その者を受けいれてはいかがでしょうか?」
ミノフスキーの身柄を管理局で引き取ってはどうか?という意見が出た。
「バカなっ!?」
「貴官は何を考えている!?」
「わざわざ敵のスパイかもしれない人物を管理局で保護するなど、正気の沙汰とは思えんぞ!!」
「そうだ!!」
「左様!!」
当然、ミノフスキーの受け入れについては反対意見が多数を占めた。
しかし、
「ですが、考えてもみて下さい。彼はボラー連邦の人間ではありますが、それと同時に軍属技師でした。彼ならば、ボラー連邦で使用している艦船のエンジン技術を知っている筈‥‥ボラー連邦が使用しているエンジンの性能はかの地球連邦の艦船と同等の技術なのは皆さんもご承知でしょう?‥‥座標が分からない地球連邦と交渉をするよりも早期に技術を手に入れられるのではないでしょうか?」
ミノフスキーの受け入れを提案した高官からの反論に、受け入れ反対を表明していた高官はピタッと反対意見を止める。
「どうでしょう?彼を亡命という形で受け入れ、見返りに彼の持つ知識と技術をこちらに提供してもらうというのは‥‥?」
「うっ、うーん‥‥」
「確かに魅力的ではあるが‥‥」
管理局でも、防衛軍やボラー連邦で使用している宇宙船のエンジンは欲しい。
座標が分からず、現在暗黒星団帝国に占領されている地球連邦と交渉するよりもボラー式ではあるが、同じ性能を持つエンジン技術を知るミノフスキーからその技術知識を引き出し、提供してもらった方が地球連邦と交渉するよりも遥かに早い。
しかも地球連邦・地球防衛軍は管理局に対して嫌悪感の様な物を抱いている。
それは管理局の方針や、管理局が通信ポッドに逆探知装置や無許可で地球連邦の領海に艦を派遣したせいなのだが、これらの行動から地球連邦と交渉をして、タキオン機関の技術を提供してもらえるだろうかという疑問もある。
だが、ミノフスキーの場合、彼に衣食住を提供すれば、タキオン機関と同等のエンジン技術を提供してもらえるかもしれない。
ミノフスキーがボラー連邦から放たれたスパイの可能性はあるが、それは彼を監視すれば問題はない。
管理局にはサーチャーと言う魔法もある。
検査をした医師の見立てではミノフスキーにはリンカーコアの存在が確認されていない。
非魔導師である彼にはサーチャーは探知できないので、監視は容易に可能だ。
管理局にはどうしても彼の知識と技術が必要なのだ。
それは、戦力が著しく低下している管理局にはどうしても早急に新型の艦船を揃える必要がある。
その為にはもはやなりふりはかまっている状況ではない。
毒蛇だろうと、自分たちにその牙が向けられなければ、飼いならす必要もある。
「や、やむを得まい‥‥」
「う、うむ‥‥」
反対から一転、管理局はミノフスキーの身柄を亡命と言う形で受け入れることにした。
そして、彼をプレオから本局へ連れてくる役目をはやてが仰せつかった。
本局 リンディ執務室
「それホンマですか!?リンディ提督!!」
はやてはリンディから呼び出され、その内容を聞いて驚いた。
「ええ、本当よ。はやてさん」
「ポルテにボラー連邦の人間が来て、亡命を希望しているみたいなの」
「それで管理局はどうするんですか?まさか、受け入れる気じゃあ‥‥」
「ええ‥‥管理局はその人物を亡命者として受け入れることが決まったわ」
「‥‥そんな!?なんで、よりにもよってボラー連邦の人間なんかを‥‥」
はやては管理局がボラー連邦に対する強い憎しみがある事は知っている。
自分自身もボラー連邦が管理局にした行為は許せない。
それにもかかわらず、その憎しみを抱く勢力の人間を亡命させるなんて、信じられなかった。
「はやてさん、私自身もボラー連邦に対する恨みはあるわ‥‥でも、今の管理局にはどうしてもその人物の亡命を断れない思惑があるの」
「思惑?どんな思惑ですか?」
「取り調べた保護官が言うにはその人物は元々ボラーで軍属技師を務めていたみたいで、宇宙船のエンジン技術や幅広い兵器の開発知識を有しているの‥‥それで、管理局は亡命を許可する代わりにその人物が持つ知識を管理局の為に活かすように交渉するつもりよ」
「‥‥まるで、スカリエッティの再来みたいですね」
はやては皮肉を込めて言う。
実際にスカリエッティは当時、管理局を影から支配していた最高評議会が生み出した人造人間‥‥
最高評議会は伝説の地とされるアルハザードの技術によって生み出したスカリエッティの頭脳を利用して、スカリエッティにさまざまな研究と開発を行わせた。
プロジェクトFATS、戦闘機人、ガジェットドローン、聖王のゆりかごの発掘と始動‥‥それらの技術を全て手に入れたら、管理局は強大な力を手に入れられると思っていた。
しかし、最高評議会の思惑と異なり、スカリエッティは十二人の戦闘機人らと共に管理局へ刃を突きつけて来た。
結果的に生みの親でもある最高評議会メンバーは全員殺され、管理局の信用もぐらついた。
今回のボラー連邦のミノフスキーの亡命を受け入れれば、いつまたJS事件と同じ様な事を起こされるかもしれない。
いや、管理局が防衛軍にしたように彼がミッドの座標を本国へ知らせ、ミッドに大挙してボラー連邦の艦隊が押し寄せてくるかもしれない。
そう言った不安や疑惑があった。
「ええ、私もそう思うわ‥‥でも、今の管理局にはなりふり構っている余裕はないの‥‥優れた技術を手に入れられるのであれば、毒蛇だろうと狂犬だろうと懐に入れる勇気と気概が必要なのよ」
「‥‥」
しかし、リンディの言っている事は現状の管理局に対して最もな事だった。
「それで、はやてさんにはその人をポルテへ迎えに行ってもらいたいの」
リンディは、はやてに今回呼び出した理由を彼女に話す。
「ええぇぇー!!私がですか!?」
ボラー連邦の人間を自分が迎えに行くことを言われ驚くはやて。
「な、なんで私なのでしょう?」
はやては自分が迎えに行く理由を訊ねる。
会議の中で、誰がポルテにそのボラー連邦の人間を迎えに行くのかも議題に上がった。
その中で、リンディとレティが、異世界の人物と話し慣れているクロノ、はやて両名の名前が上がった。
その理由は、異世界の人物と話し慣れている理由の他に、以前防衛軍に対して、上から目線で通信をしたギルフォードの様なやり方では亡命者から技術を手に入れることが難しくなる恐れがある。
ここは我慢して下手に出て、技術を提供してもらう必要がある。
それに若い女性からの接待を受ければ、向こうも気をよくするかもしれない。
リンディはそれらの理由をはやてに伝えた。
当然、迎えにはオブザーバーとして、クロノも参加するし、護衛としてシグナムたち、ヴォルケンリッターも参加する。
「わ、わかりました」
はやてはリンディの話を受け、ポルテにそのボラー連邦の人間を迎えに行く事になった。
本局内にあるとある喫茶店
はやてはリンディの執務室から本局内にある喫茶店へと入った。
「あっ、はやてちゃん」
そこで、はやてはなのはと出会った。
「なのはちゃんか‥‥」
「どうしたの?なんか、難しい顔をしているけど‥‥」
「あっ、うん‥‥実は‥‥」
はやてはなのはにこの後、ボラー連邦からの亡命者を迎えに行く事を教えた。
ボラー連邦からの亡命者‥‥それについては別に機密事項ではないので、教えても差し支えはないし、どの道亡命者から技術を提供してもらったら、その事実は遅かれ早かれ世間に知れ渡る。
「それ、本当なの!?はやてちゃん!?」
ボラー連邦からの亡命者を受け入れる。
その事実になのはは思わず声を上げる。
「さっき、リンディさんと話して私が迎えに行くから間違いないやろう」
「そんなっ!?だって、ボラー連邦は管理局にあんなひどい事をしたんだよ!?それなのに‥‥」
「それは私だってそう思うとる‥‥でも、リンディさんからも言われたんや‥‥今の管理局には、毒蛇だろうと狂犬だろうと懐に入れる勇気と気概が必要なんだと‥‥確かに戦力が低下している今の管理局に、ボラーの技術とは言え、防衛軍やボラーと同じ技術が手に入るかもしれへんのやから、管理局としてもその人をまさに国賓待遇で迎えたくもなるんや‥‥」
「‥‥」
なのは自身としては到底納得が出来ない。
ボラー連邦は自分の生徒や同僚を大勢殺した星間国家‥‥
その星の人が図々しくも故郷から追われたから、逃げ込んで来る。
自分たちは管理局の人をあんな残虐な方法で殺したくせに‥‥
本音を言うのであれば、助けたくなんてない。
でも、その人を助けなければ、管理局は今後も大きな犠牲を強いるかもしれない。
今後も大勢の生徒や同僚が死ぬかもしれない。
そのためには個人的感情は捨てなければならない。
「そう‥‥だよね‥‥」
なのはは目の前のあるティーカップに視線を落とす。
はやてにはなのはの気持ちがわかる。
自分だって、大勢の仲間を殺したボラー連邦は許せない。
でも、それは管理局に力が無かった事、
管理局がボラー連邦への対応を間違えたがために起こった悲劇だった。
しかし、ボラー連邦の技術を手に入れたら‥‥
管理局だってボラー連邦や防衛軍、ガトランティスの様に強力な力を手に入れたら、あんな負け方はしないだろうし、ボラー連邦が管理世界に攻め込んで来ても他の世界を守る事が出来る。
その為ならば、屈辱を敢えて受け入れる妥協も必要だったのだ。
それから数日後、はやては自身が艦長を務める艦、ヴォルフラムはポルテに向けて本局を出航していった。
ヴォルフラム ブリッジ
「それにしてもボラーの人間を亡命者として受け入れるとはな‥‥」
シグナムがブリッジにて呟く。
管理局員としてはやはり、今回のボラー連邦からの亡命者受け入れの話は納得できる様な話ではなかった。
「シグナムの言う通りだぜ、あれだけの事をしているのに亡命者を迎えに行けだなんて‥‥」
ヴィータも憤慨していた。
ボラーとの一件では、なのはは身体的、精神的ダメージを受け、自分もそんな弱ったなのはを近くから見ていた経緯を踏まえるとやはり、ボラー連邦は許せない。
「みんなの怒りは最もだが、今回の亡命者はあの武力制裁には無関係の人物なんだ‥‥ただ、ボラー連邦の人間だから全て悪だと決めつけるのは偏見だ」
憤慨しているシグナムやヴィータを諌めるようにクロノが言う。
「そ、そりゃ‥そうだけどよぉ‥‥」
ヴィータ自身、クロノの言葉に突き刺さるモノがある。
まだ夜天の書が闇の書の時代‥自分たちヴォルケンリッターは主を救うため、魔導生物の他に大勢の局員を襲ってきた。
その自分たちは、今、管理局にて局員として働いている。
そう言う意味では自分たちとボラー連邦は同じ穴の狢なのだ。
それにJS事件にて逮捕され、更生教育を受けたナンバーズの戦闘機人たちも同じだ。
ボラー連邦の人間だからと言って、自分たちはそこまで憤慨する資格は本来ないのだ。
自分たち、ヴォルケンリッターやナンバーズの様に、昨日の敵は今日の友という関係を築けるかもしれないのだ。
はやてが艦長を務めるヴォルフラムが本局を出航していくのを見た管理局の高官たちは今回のボラー連邦からの亡命者受け入れについて話していた。
「今回の一件‥現状の管理局では受けざるを得ないのですが、これで亡命者が耄碌したただの老いぼれであった場合、どうします?」
「無能な爺を置いておくほど、今の管理局には余裕はない」
「左様。もし、無能な老いぼれである時は‥‥突然の病死‥‥と言う事もありえるかもしれませんな」
「そうですな‥‥亡命者は年配の異星人‥‥ミッドの空気が合わないことも考えられますからね」
高官の口からは何やら物騒な発言も飛び出した。
彼らも当然、警戒はしているみたいだった。
しかし、はやてもなのはもリンディもクロノも‥‥管理局の殆どの者が気づいていなかった。
優れた技術を手に入れてもそれがイコール最強の力ではない。
優れた技術もそれを運用する人間の手によって技術を生かせずに宝の持ち腐れとなる事もあるのだ。
そして、使い方を間違えれば、それは破滅の道へ辿る危険も孕んでいることを‥‥
様々な思いを抱き、ヴォルフラムはポルテを目指して行った‥‥
ボラー連邦からの亡命者であるミノフスキーはその名前の通り、外見は機動戦士ガンダムTHE ORIGINに登場したトレノフ・Y・ミノフスキーの肌の色をボラー星人にした感じをイメージしてください。