星の海へ   作:ステルス兄貴

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百二話 交渉・不審

 ポルテに降り立ったボラー連邦からの亡命希望者、ミノフスキーを迎えにポルテへと出発したヴォルフラムは宇宙気象やボラー連邦などからの襲撃などのトラブルもなく、無事にポルテへと到着した。

 

「これが、はやてさんの艦‥‥」

 

「大きい‥‥」

 

 初めてヴォルフラムを見たエリオとキャロはその大きさ、艦影に唖然とする。

 今まで自分たちが見て来たL級やXV級と全く異なるフォルムをしている艦は、今は失われつつある管理局の威厳を取り戻そうとする不屈の信念を宿しているかのように見える。

 やがて、タラップが降ろされると、はやてたちが降りて来た。

 

「はやてさん!!シグナムさん!!」

 

「ヴィータさんにクロノ提督もお久しぶりです!!」

 

ヴォルフラムから降りて来たはやてたちをエリオとキャロの二人は出迎える。

 

「エリオ、キャロ、元気にしとったか?」

 

「「はい!!」」

 

 顔見知りの二人に出迎えてもらい、はやては笑みを浮かべて二人に手を振る。

 

「それで、さっそくなんやけど、そのボラー連邦から来たっちゅう人の所へ案内してもらえへんかな?」

 

「はい、どうぞ」

 

 エリオは、はやてたちを用意していたワゴン車へと案内する。

 そして、はやてたち一行は艦船ドックからミノフスキーが居る病院へと向かう。

 その道中にて、

 

「そういえば、はやてさん」

 

 キャロがはやてに話しかける。

 

「ん?なんや?キャロ」

 

「フェイトさんとティアナさんは元気にしていますか?」

 

「そうですね、僕たちあれからミッドに居なかったので、今、どうしているか気になったんです」

 

 キャロとエリオははやてに第二の地球に滞在中のフェイトたちのことを聞いていた。

 

「あぁ‥‥うん‥‥元気にしとったよ‥‥」

 

 はやては、今第二の地球が暗黒星団帝国に占領されていることを二人に伏せた。

 第二の地球が暗黒星団帝国に占領されてからは当然、定期通信も行われておらず、第二の地球の詳しい状況がつかめていない状況となっている。

 はやては、二人には無用の心配をかけまいとして、誤魔化した。

 その様子をクロノたちは何とも言えない表情で見ていた。

 当然、彼らも第二の地球の現状を知っている。

 しかし、はやてが何故、敢えて二人に誤魔化す様なことを言ったのか、その気持ちも理解出来た。

 実際、養女のヴィヴィオが第二の地球にいることで、なのはは、ヴィヴィオの事が心配なのか、夜はあまり眠れていない様子で、仕事でもケアレスミスが目立っている。

 ミッドの高町家、八神家はボラー連邦への武力制裁失敗の折、遺族や暴徒の手によって壊されてしまったので、なのはは、現在教導隊の宿舎にて寝泊まりをしている。

 なのはのメンタル面を心配したヴィータは寮にて、なのはと同室で寝起きしているし、シャマルも定期的になのはの下を訪れて、カウンセリングをしている。

 

「そうですか、良かったです」

 

「私たち、仕事の都合でどうしてもミッドへはそう簡単に行けないので、フェイトさんたちの事が心配だったので‥‥」

 

 純粋にフェイトたちのことを心配している二人の言葉がはやてたちの胸に突き刺さる。

 一刻も早く、この事態を変える為、地球防衛軍には頑張ってもらいたい。

 それと同時に管理局も今回の亡命者の一件で新たな改革をしなければならないと思うはやてたちだった。

 

 やがて、ワゴン車はミノフスキーが入院している病院へと辿り着いた。

 ミノフスキーが居る病室へは看護師が案内した。

 看護師が病室の扉をコン、コン、とノックすると、

 

「はい」

 

 中から老人の男性の声で返答があった。

 

「ミスター、ミノフスキー。ミスターに面会人が来ています」

 

「‥‥どうぞ」

 

「失礼します」

 

 入室の許可がおりたので、はやてたちはミノフスキーが居る病室へと入る。

 はやてたちが病室へと入ると、ベッドには人の姿をしているが、肌の色が自分たちと異なる色‥‥水色の肌をした、白髪の老人の姿がそこにあった。

 身に纏っている服は忘れもしない‥‥あのボラー連邦の国家元首たるベムラーゼや局員を処刑していた銃殺隊の兵士が着ていた軍服と同じ様なデザインの服だった。

 そして、備え付けのテーブルには沢山の紙があり、そこには訳の分からない数字らしき記号や文字の羅列が描かれている。

 ミノフスキーはペンを置き、紙の束を整え、はやてたちへと視線を向ける。

 軍人ではなく、軍属技師と聞いていたが、その眼光が鋭い。

 かつての地上本部、本部長のレジアス中将とは一風異なる凄みがある。

 それは地球における、長年その道一筋でその道を究めて来た職人の様なモノを感じる‥‥局員で言うのであれば、三提督のキール元帥の様だ。

 

「は、はじめまして‥私は時空管理局、次元航行艦ヴォルフラム艦長をつとめております、八神はやてです」

 

「同じく、時空管理局、次元航行艦クラウディア艦長のクロノ・ハラオウンです」

 

「ミッドチルダ首都航空隊所属の八神シグナム」

 

「航空・教導隊所属、八神ヴィータです」

 

 はやてたちはミノフスキーに自己紹介をする。

 

「元ボラー連邦、ガルマン星統括技術官、ポピェーダ・ミノフスキー」

 

 ミノフスキーもはやてたちに自己紹介をする。

 ただ、この時ミノフスキーは、はやてたちの役職を聞いて、

 

(艦長と言う割には、あまりにも若いな‥しかも女性‥‥それに教導隊と言う部隊に居る子なんて、エリオ君やキャロ嬢ちゃんよりも子供じゃないか‥‥)

 

 艦長と言う役職のわりにあまりにも若く、しかも女性と言う事に驚き、さらには事情を知らないとはいえ、ヴィータの存在にはさらに驚かされた。

 恐らくヴィータ本人が聞いたら、「あたしは子供じゃねぇ!!」と、大激怒するだろう。

 

「ミノフスキー技術官の現状はこちらでも把握しております」

 

 はやてが早速、ミノフスキーとの交渉に入る。

 

「すでに母国への帰国も困難となり、技術官自身、平穏な生活及び技術開発の研究の続行を望むというのであれば、私たち時空管理局が技術官の身の安全と衣食住を提供する用意があります‥‥私たち時空管理局は技術官を亡命者として受け入れる用意があります」

 

 はやては回りくどいことはせずに直球でミノフスキーに亡命者として受け入れる体制があると伝える。

 

「‥‥亡命者として私を受け入れるのは結構ですが、何か条件があるのではないですかな?」

 

 ミノフスキーは自分を亡命者として受け入れる代わりに管理局は自分に対して何らかの見返りを求めているのではないかと思った。

 

「それともう一つ聞きたい事があるのですが‥‥」

 

「なんでしょう?」

 

 ミノフスキーは局員であるはやてたちに聞きたい事があった。

 

「トルネオ保護官、エリオ君、キャロ嬢ちゃんと初めて出会い、自己紹介をした時、私は元がつくとは言え、ボラー連邦の人間であったことに驚いている様子だった‥‥しかし、私はこれまで、時空管理局と言う組織も知らなければ、ミッドチルダと言う星も知らなかった‥‥しかし、時空管理局に所属する君たちは我々ボラー連邦の事を知っているようだったが‥‥それはどうしてかな?」

 

 ミノフスキーは時空管理局、ミッドチルダと言う組織も惑星の名前も知らなかった。

 実際彼は、時空管理局がボラー連邦に対して武力制裁を行った時、まだガルマン星に居り、ガルマン星の総督府や駐屯軍に対して時空管理局の情報は知らされていなかった。

 その為、ミノフスキーが時空管理局、ミッドチルダを知らないのも無理なかった。

 

「それは‥‥」

 

 はやては言葉に詰まった。

 ボラー連邦への武力制裁に関しては元はと言えば、管理局が行った蛮行が引き金である。

 管理局が抱くボラー連邦への憎しみは半ば、八つ当たりに近い感情である。

 しかし、管理局に反ボラー連邦感情があると知ったら、ミノフスキーは管理局への亡命に関して消極的になるかもしれない。

 だが、ミノフスキーを受け入れてもいつかは反ボラー連邦感情をミノフスキーは感じ取るかもしれない。

 はやてがどうしたものかと考え込んでいると、

 

「それについては私からお話しましょう」

 

「えっ!?クロノ君!?」

 

 はやてがどうしたものかと言葉を詰まらせていると、オブザーバーとして同行したクロノが管理局とボラー連邦との因縁を語ろうとした。

 

「はやて、どの道、ミノフスキー技術官を連れて行くには遅かれ早かれ、話さなければならない。ならば、この場で包み隠さずに話してしまった方が良い‥‥本局の連中が話したら、きっと事実を捻じ曲げて話すだろうから」

 

 クロノの言う通り、本局の高官が管理局とボラー連邦との因縁を語ったら必ず、事実を捻じ曲げて‥‥ボラー連邦が悪で管理局が正義、武力制裁についても管理局が被害者の様に語るだろう。

 

「‥‥せやな」

 

 はやてもその部分を理解して、クロノに管理局とボラー連邦との因縁を話してもらった。

 

「‥‥そうですか‥そのような事が‥‥」

 

 クロノはミノフスキーに事実を話した。

 勿論、引き金が管理局である事を包み隠さずに‥‥

 

「管理局の中やミッドには当然、反ボラー連邦の感情がありますが、我々は全力で貴方を守ります。そして、我々の宇宙船開発に協力してもらえませんか?」

 

 クロノはミノフスキーの身の安全の保障の代わりに宇宙船開発への協力を求めた。

 

「‥‥」

 

「貴方は平穏な生活と共に研究開発を続けたいという願望があった筈‥‥ならば、開発の場所をボラー連邦から管理局へ移すという形で‥‥可能な限り、貴方が必要なモノは揃えます」

 

「少し考えさせてもらえませんかな?」

 

 いきなりの交渉で『はい、よろしくお願いします』などと即答してもらえるとは思ってもいなかったので、ミノフスキーの返答は想定内である。

 

「分かりました。ただ、こちらとしてもあまり時間がありませんので、その点をどうか、ご理解下さい」

 

「ええ‥‥」

 

 この日はとりあえず、自己紹介とこちらの要求を伝える形で面会は終わった。

 

「にしても、あの爺さん、本当に防衛軍やボラーの奴等が使っていたエンジンを造れるのか?」

 

 病院の通路を歩きながらヴィータがぼやく。

 管理局がミノフスキーを亡命者として受け入れ、保護した後で、「実は何も作れません」とかだったら、ただの老害でしかない。

 管理局としても何の利用価値がないので、保護をするのもバカらしい。

 

しかし、

 

「いや、詳しいことはまだ不明だが、僕はあのミノフスキー技術官は本物だと思う」

 

クロノはミノフスキーが本物の天才技術官であると判断した。

 

「その根拠は?」

 

「彼の目だ」

 

「目?」

 

「ああ‥‥スカリエッティは、どうかは分からないが、自分がこれだけは誰にも負けないと思ったモノや事に打ち込んでいる時‥その時の顔は普段よりも真剣な顔つきになる‥‥ヴィータ‥なのはが生徒のカリキュラムを組んでいる時の顔は普段と比べるとどうだ?」

 

「た、たしか普段の顔つきとは違うな‥‥」

 

「それと同じだ。あの時、僕たちが病室に入った時、彼は物凄く真剣な顔で何かを書いていた。僕らにはあの紙に書いてある内容は到底理解出来ないが、彼はどんな状況でも自らの研究を続けている気概が見られた・・・・まさに生涯現役を貫いている証拠だ」

 

「そんな人材だからこそ、今の管理局には必要なんやな」

 

「そうだ‥‥ただ一つ気がかりがあるとすれば、管理局がミノフスキー技術官の技術と知識を得た後、彼を処分するのではないかと言うことだ」

 

「処分って‥‥」

 

「それはどう言うことですか?」

 

 『処分』と言う物騒な言葉に対して、エリオとキャロはそれがどう言う意味なのかをクロノに訊ねる。

 

「ミノフスキー技術官は言わずと知れたボラー連邦の人間だ。ミノフスキー技術官から技術を取り入れたら用済みとして、病死や事故死として処理するかもしれないと言う事だ。君たちは知らないかもしれないが、スカリエッティの脱獄後、相次いで、留置場に収監されていたナンバーズが全員病死した‥‥だが、例え別々の留置場に収監されていたとは言え、同じ日にナンバーズの全員が病死なんてあまりにも出来過ぎている‥‥僕は管理局が彼女たちの脱走を防ぐために秘密裏に殺したんじゃないかと思っている」

 

「「‥‥」」

 

 クロノの話を聞いて、エリオもキャロもスカリエッティが脱獄していることを始めて知ったが、彼と共に収監されたナンバーズが死んでいることも始めて聞き、その死因に管理局が関係しているかもしれない疑惑に対して顔を固くした。

 しかし、彼の言う通り、同じ日にナンバーズの四人が揃って病死だなんてあまりにも不自然すぎる。

 はやて自身も収監されていたナンバーズの死にはクロノ同様、疑問を感じていた。

 もしかしたら、本当にクロノの言う通り、彼女たちの死には何らかの陰謀が絡んでいるのかもしれない。

 

「まぁ、今はミノフスキー技術官を説得して、亡命と技術の提供をしてもらうことが最優先だ」

 

 クロノはまずは、ミノフスキーが管理局に亡命してくれる事、彼の持っている技術と知識を管理局に提供してもらうことが最初の問題で、彼の身の安全はその次となる。

 その後、一週間、クロノやはやては、ほぼ毎日ミノフスキーの下を訪れ、交渉と説得を繰り返した。

 その過程で、ヴィータがミノフスキーに対して、「本当にお前、知識あるのか?」と問うと、彼の技術家魂に火をつけたようで、宇宙船から持ってきた機械とスクリーンを使い、ボラー連邦で使用していたエンジンの歴史と原理などを説明し始めた。

 畑が違うクロノやはやてたちにはミノフスキーが言っていることの半分も理解できずに首をかしげることしかできず、ヴィータに至っては知恵熱を出して倒れる始末だった。

 ただ、こうした経緯やはやて、クロノの説得と交渉の結果、ミノフスキーは管理局への亡命および管理局への技術提供を了承してくれた。

 クロノ、はやてはミノフスキーのこの判断を大いに喜んだ。

 実際にミノフスキー自身も今の自分の現状は理解していた。

 故郷にも帰れず、この星を出るにしてもここまで来た宇宙船は壊れている。

 平穏な生活や研究開発を続けるには管理局からの援助を受けなければならない。

 しかし、その管理局は自分が知らぬ間に故郷のボラー連邦と戦端を開いており、ボラー連邦に大敗北した。

 ミッドでは自分に対して反ボラー感情が集中するのではないか?

 そうなければ研究どころではない。

 だが、彼らは全力で自分の身柄の安全は保障するという。

 故にここは彼らを信じるしかなかった。

 彼らも自分の持つ知識は欲しがっているみたいだ。

 そして、何より、ミノフスキーが一番関心を抱いたのは、はやてやクロノから聞いた管理世界と呼ばれる星には魔法と呼ばれるオカルトめいた力が存在するのだという。

 魔法と科学の融合‥‥それこそが、自分が生涯探し求めていた究極の研究なのではないかとさえ、彼はそう思っていた。

 しかし、この亡命‥管理局への技術提供が後々にミノフスキー自身、そして管理局の運命に大きく左右する出来事になるとはこの時は、この場にいた誰もが予想していなかった。

 クロノの場合、ナンバーズの死因に疑問を持ったものの、彼は管理局の裏の本質というものをまだ理解出来ていなかったため、予想できなかったのだ。

 それ以前に彼には管理局の正義を信じていた点も関係していた。

 それは、当然はやてたちにも同じ事が言えた。

 

 

 はやてたちがミノフスキーの亡命交渉のため、ポルテへと赴いている頃、ミッドではある事件が起きていた。

 

 

「見えた!!あと少しでミッドに到着するぞ!!」

 

「ヤツはどうした!?」

 

 宇宙空間にて間もなくミッドチルダにつこうとする管理局の大型輸送船のブリッジで乗員たちは慌てふためいている様子だった。

 そして船長は艦底部に状況を訊ねる。

 

「ヤツは今、隔壁の向こうの倉庫に閉じ込めている!!」

 

 ブリッジには空間ウィンドウが投影され艦底部に居る局員から状況が伝えられるが、背後の様子を見る限り、長くは持ちそうにない。

 分厚い鋼鉄で出来た隔壁の周りには鉄パイプやコンテナでバリケードが設置されているが、何者かが隔壁の向こう側で体当たりをしている様子でドシン、ドシン、と大きな音が鳴り響き、今にも隔壁がこじ開けられそうになっている。

 

「向こう側の様子は!?ヤツを倒しに行った武装局員はどうなった!?」

 

「わからん!!恐らく生きている者はいないだろう!!それよりもミッドとの連絡は!?」

 

「今やっている!!“空”にも援軍要請をしている!!それまでなんとか持ちこたえろ!!」

 

 船長がそう言った瞬間、一際大きな音がして隔壁が破られる。

 

「‥‥無理だな‥‥時間切れだ‥‥」

 

「ぐあぁっ!!」

 

「ぎゃぁぁぁー!!」

 

「た、助けてくれー!!」

 

 艦底部からの連絡はその言葉とそこに居た局員の悲鳴と共に途切れた。

 

 

 ミッドでは普段と変わらない夜が訪れていた。

 市街地では仕事帰りに一杯ひっかけて帰るサラリーマンやOL。

 恋愛に現を抜かす若い男女。

 仲間と共に夜の街に繰り出している若者たち。

 いつもと変わらない夜の風景は突如空の彼方から響いてきた轟音と共に崩された。

 

「お、おい、何だよ!?アレ!?」

 

「大型の次元航行船だ!!」

 

「なんでこんな市街地の傍をあんな低空で飛んでいるんだよ!?」

 

 夜空の雲の切れ間から管理局の大型輸送船が降下してきた。

 ただ、通常の航路から外れ、しかも市街地に此処まで近く降下して来るのは珍しい。

 どうみてもあの大型輸送船の中で何かあったに違いない。

 轟音に驚いた人々は空を見上げ、大型輸送船を指さしながら『何があった!?』『墜落するんじゃない!?』と騒いでいる。

 幸いにも大型輸送船は市街地に墜落することなく、港湾区画まで飛んでいくと近くの海に着水した。

 しかし、着水した大型輸送船は停止することなく港湾区画の岸壁に衝突して漸く停止した。

 

 大型輸送船の衝突現場では消防隊が消火作業を行っている。

 だが、大型輸送船が要請した"空"からの援軍は未だに到着していない。

 新暦71年十月に起きた第八空港の火災事故でも“空”の到着は遅く、“陸”の消防隊が先に到着する事態となっていた。

 しかし、空港の火災を鎮火し、事故の収拾を行ったのは“空”の魔導師と言う事になっており、当時、“陸”の総本山である地上本部責任者のレジアス中将は翌日の朝刊とニュースを見て憤慨した。

 今回も“空”はまるで“陸”が行っている作業が終わる頃にやってきて彼らの手柄を根こそぎ横からかっさらう様な動きが見て取れた。

 しかし、管理局としては何もいない訳にはいかず、事故の収拾に務めた。

 

「ホースをこっちに回せ!!」

 

「燃料に引火するぞ!!消火を急げ!!」

 

「どこの輸送船だ!?」

 

「管理局でチャーターしたモノです!!船名は‥‥」

 

「なんで岸壁なんかに衝突した!?管理局でチャーターって“海”の輸送船だろう!?なんで空港や本局の港じゃなくて、ミッドの港湾地区なんかに!?」

 

「わかりません!!」

 

 通常の次元航行船ならば、専用の空港か本局の港に停泊する筈である。

 それがこの輸送船は本来止まる筈のないミッドの港湾区画にまるで墜落するかのように着水し、そのままの速度で岸壁にぶつかったと目撃者が多数いた。

 消防隊が消火作業を進めていると輸送船の甲板に人らしき影が見えた。

 

「隊長!!アレを!!」

 

「むっ!?乗員か!?」

 

 甲板に現れたのはこの輸送船の乗組員だった。

 ただ、その乗組員は怪我をしている様子で、

 

「た、助け‥‥」

 

 岸壁の消防隊に助けを求めてきた。

 

しかし‥‥

 

 

グシャ

 

 

 助けを求めていた輸送船の乗員を6、7メートルはあろう巨大な生物が前足で踏みつぶした。

 巨大生物の身体は赤く筋肉質な身体つき、そして頭部には鋭い二本の角に黄色い長い髪、口には鋭い牙の様な歯が並んでいる。

 その姿は第97管理外世界『地球』における日本の伝承や昔話でよく知られる鬼の様な外見をしていた。

 

「ば、ばばば‥‥化け物だァァァ!!」

 

 鬼に似た巨大生物を見た消防隊は恐れおののき逃げ出す。

 すると、巨大生物は輸送船から飛び降りると巨大生物は近くの消防隊に襲いかかる。

 そこへ、管理局の公用車が巨大生物へと体当たりをする。

 

「グォォォォォー!!」

 

 巨大生物は悲鳴をあげて港湾区画の倉庫へと吹き飛ばされる。

 

「ちょっ、スバル!!いくらなんでも飛ばし過ぎだろうがぁ!!安全運転を心がけろよぁ!!大体、お前免許取りたてだろう!?」

 

「そんなこと言ったって『事態は逼迫している!!』って本部が急かすんだもん!!」

 

 言い合いをしながら先程巨大生物に体当たりをした管理局の公用車から出てきたのは特別救助隊に所属するスバルとノーヴェだった。

 そんな二人の様子を唖然としながら見ている消防隊。

 

「あ、あの‥‥」

 

 消防隊の一人の隊員が二人に声をかける。

 

「あっ、失礼しました。特別救助隊所属のスバル・ナカジマです」

 

「同じく、ノーヴェ・ナカジマです。現状の説明をいいですか?」

 

 スバルとノーヴェは消防隊の隊員に身分証明書を提示して事情を訊ねる。

 この港湾地区はスバルとノーヴェの父、ゲンヤが隊長を務める陸士108部隊の管轄地域だった。

 そのゲンヤから特別救助隊に応援の出動要請が入り、スバルとノーヴェのコンビが現場に一番近い位置に居た事からこうして現場に一番乗りで到着したのだ。

 

「あ、ああ‥‥」

 

 消防隊員はこれまでの情報をかいつまんで二人に伝えた。

 そして、最後に輸送船の中から未知の巨大生物が出てきた事を話した時、

 

「グォォォォォー!!」

 

 倉庫から例の巨大生物が起き上がる。

 車の体当たりをモロに喰らいながらも傷一つ負った様子がない。

 巨大生物は物凄い跳躍力で再び輸送船の中へと入って行く。

 

「あっ、逃げた!!」

 

「逃がすかよ!!行くぞ、スバル!!」

 

「う、うん!!」

 

 スバルはウィング・ロードを岸壁から輸送船へとつなぎ、

 ノーヴェはエア・ライナーを岸壁と輸送船に繋いで、二人は輸送船へと乗り込んでいく。

 輸送船の船内に入ると、船内の電気は消え、非常灯だけが灯る薄暗い空間となっていた。

 二人はバリアジャケットを纏うと警戒しながら慎重に船内を進んで行く。

 

「うっ、これは‥‥」

 

「ひでぇな‥‥」

 

 薄暗い船内は物凄い死臭に包まれており、思わず吐き気を覚える。

 通路にはミイラ化した輸送船の乗組員の死体が彼方此方に転がっている。

 

「ひどい‥‥」

 

(うぅ~‥‥また私は救えなかった‥‥)

 

 休暇を満喫した後でスバルは再び救助隊なのに人を救う事が出来ない事実に胸を痛める。

 

「だから、空港じゃなくて港に墜落して岸壁にぶつかったのか‥‥」

 

 この輸送船が何故、本来の停泊地である次元航行船の空港ではなく、港湾区画に堕ちたのか納得がいった二人。

 船を制御する人間がもう居なかったからだ。

 市街地に墜落しなかったのが本当に不幸中の幸いだ。

 それに本局の方では入港手続きやらなんやらで待たされるかもしれない。

 あんな化け物が船内に居るのであれば、入港手続きなんて待ってはいられないし、本局も本局で船内にあんな化け物がいるのであれば、恐らく入港を拒否するに決まっている。

 だからこそ、この船の乗員は本局ではなく、ミッド本土へ船を向かわせたのだろう。

 もしかしたら、海に着水した時にはまだ生きていたのかもしれない。

 ノーヴェは恐る恐る乗組員の死体を覗き込む様にして観察する。

 

「ノーヴェ、どうかしたの?」

 

「‥‥この死体、妙じゃないか?」

 

「えっ?」

 

「この死体‥死んで間も無い筈なのに完全にミイラ化している‥‥いくらなんでもこんな短時間に死体がミイラ化するか?」

 

「そう言われてみれば‥‥」

 

 スバルもノーヴェと同じように恐る恐る死体を覗き込む様に死体を観察する。

 この輸送船の乗員が生きていたのは先程の消防隊員の証言から取れている。

 その他にもこの輸送船がミッドの管制塔と交信していた事も同じく消防隊員からの証言であるので、この輸送船の乗員たちは輸送船が墜落する直前まで生きていた筈である。

 それがこの短時間でミイラ化するのはあまりにも不自然だ。

 

「それに、この死体‥まだ暖かい‥‥」

 

 ノーヴェはミイラ化した死体の頬を触ると、この死体がまだ暖かい事が判明し、ますます疑問が深まる。

 ミイラ化した死体が暖かい筈が無いからである。

 しかし、いくら死体を観察しても分かる訳がなく、あの巨大生物をこのまま野放しにしておくわけにはいかない。

 死因は後で検視官の人に頼めばいいだろう。

 今、自分たちの役目はあの巨大生物を捕獲するか殺処分するのが優先である。

 やがて、二人は中間層にある貨物倉庫に着くとその中へと入る。

 すると倉庫の中には沢山の財宝が積まれていた。

 

「な、なんだ‥これは‥‥?」

 

「希少金属を使った美術品‥‥みたいだけど‥‥それにしても凄い量‥‥どこから運んできたのかな?」

 

「この船一体何を運んでいたんだ?」

 

 管理局の輸送船にしてはこの倉庫一杯に積み込まれていた財宝はあまりにも不釣り合いな量だった。

 管理局の“海”の任務の一つに数多く存在するロストギアの回収があるが、この倉庫にある美術品や財宝はどうみてもロストギアとは言い難く、海賊のお宝、美術館の宝物品と言った方がしっくりくる。

 そもそも、ボラー連邦への武力制裁失敗以降、新たな管理世界への探索は自粛されている。

 しかし、全ての局員が活動を自粛している訳でない。

 自粛している期間だからこそ、他の局員を出し抜いて、新たな管理世界を発見し、ロストギアを回収して来て本局へ納品すれば、昇給、昇格出来る。

 この船の乗員もそうした密売みたいなやり方で手柄を狙った局員なのだろう。

 二人が倉庫にある沢山の美術品・財宝に唖然としていると天井からあの巨大生物が両手の鋭い爪を突き立て降りてくる。

 

「「っ!?」」

 

 二人は咄嗟に避けるが、巨大生物の体重で倉庫の床が抜けてノーヴェはそのまま巨大生物共々下層へと落ちていく。

 

「ノーヴェ!!」

 

「大丈夫だ!!スバル!!それよりもスバルはこの船を港から遠ざけろ!!このままだとアイツがまた港に逃げ込む!!船を港から遠ざければ、コイツの逃げ場を制限できる!!」

 

「わ、分かった」

 

 ノーヴェはエア・ライナーを展開して下層へ滑り落ちながらスバルに輸送船を港から離す様に伝える。

 スバルはノーヴェの事が心配になったがまたあの巨大生物が港に逃げ込んだから厄介だと思い、ノーヴェの指示通り、この輸送船を港から遠ざける為にブリッジへと向かった。

 

 そしてノーヴェは輸送船の下層へと落ちていったが、そこは機関部だった。

 

「ここは機関室か‥‥?っ!?」

 

 そこには半透明になった輸送船の乗員が居て何事もなかったかのように機関を操作しようとしている。

 

「ど、どう言う事だ‥‥これはっ?」

 

 ノーヴェが機関室に居る乗員に恐る恐る手を触れること半透明になった乗員はノーヴェの手をすり抜けてしまう。

 それと同じように半透明になった乗員の手は機関室にある機械をすり抜けている。

 魂だけの存在となった彼らには物体を掴むことが出来ないみたいだ。

 それでも彼らは生前と同じ行動を繰り返している。

 そして、ノーヴェの眼前にはあの巨大生物が唸り声を上げながら立っていた。

 

「ナックルバンカー!!」

 

 ノーヴェはジェット・エッジで巨大生物の懐へと入り、そのボディに硬質フィールドを纏う拳の打撃魔法であるナックルバンカーを叩き込む。

 しかし、巨大生物はノーヴェの拳が届く前に霧のようにフッと消える。

 

「えっ?」

 

 慌てたノーヴェの背後に巨大生物は現れ、お返しとばかりにその爪の突きをノーヴェに向ける。

 

「くっ‥‥」

 

 ノーヴェは咄嗟に背後に飛び退き、突きを躱す。

 

(こいつ‥‥)

 

 ノーヴェはあの巨大生物は消えた理由が分からなかった。

 巨大生物はノーヴェの拳を飛び上がって避けた訳でもなく、転移魔法を使用した訳もなく、幻術のように消えたのだ。

 しかし、魔法を使用した痕跡は全くなく、この巨大生物からは魔力も感じられない。

 故にこの巨大生物がティアナのフェイクシルエットの様な幻影ではない。

 再び巨大生物と対峙するノーヴェ。

 

すると、

 

「なぜダ‥‥ナぜジャマをスる‥‥?」

 

 巨大生物が片言ながらも人語を喋り始めた。

 

「喋った!?」

 

 ノーヴェが突然人語を喋った巨大生物に驚く。

 そんなノーヴェを尻目に巨大生物は語り続ける。

 

「‥‥ワレハ‥‥ただ帰りたいダケダ‥‥」

 

「帰りたい?どういう事だ?」

 

 この巨大生物は何処かの世界で密猟にでもあったのだろうか?

 しかし、この巨大生物の目的が自分の居た世界に戻る事であれば、この巨大生物が輸送船の周りから離れなかった事、そして一度港に降りたにも関わらず再び輸送船に戻った事、殺した輸送船の乗員の魂を使役して作業をさせていた事にも合点がいく。

 

「ワレハ帰るのだ!!ジャマはさせぬ!!」

 

「っ!?」

 

 意思疎通ができるのであれば、ノーヴェとしてはこの巨大生物を元の世界へ連れて帰りたいが、自分の故郷である世界へ戻る事の執念が物凄いのか、こちらの話は通じない様だ。

 巨大生物はその巨体に似合わないスピードでノーヴェに迫ると左の前手でノーヴェを鷲掴みにする。

 

「ぐっ‥‥」

 

 そして髪の毛が伸びノーヴェを絡めとる。

 すると、ノーヴェは物凄い脱力感に襲われる。

 あの巨大生物の髪の毛がノーヴェの魔力、体力を奪っているのだ。

 輸送船の乗員は恐らくこれでミイラ化されたのだろう。

 

「ジャマをスルな‥‥ワレハ帰るのだ‥‥」

 

「く、くそっ‥ち、力が‥‥入らない‥‥」

 

 ノーヴェは意識を失いかけた時、ある光景がフラッシュバックする。

 それは何処かの世界の神殿なのか、石造りの建物で周りにはその世界の民族衣装を纏った大勢の人々が居た。

 服装や周辺の建物とかを見ると、文明レベルはミッドより低そうだった。

 そして神殿の祭壇には金色の神像が安置されており、人々はその神像を崇拝していた。

 そんな中、管理局の制服を着た局員とバリアジャケットを纏った武装局員がやって来た。

 制服の局員がまず、その神殿の神官らしき人物と話をし、祭壇に祭られている神像を渡す様に言っている。

 しかし、神官は管理局に神像への譲渡を断る。

 すると、武装局員達は神官を殺し、神像を奪い、近くの集落を襲い始めた。

 襲われた集落では、財宝や金目の物の略奪、女子供への性的暴行に虐殺など、本来管理局が法律で禁じられている犯罪行為を平然と行っている。

 

(な、なんだ‥これは‥?なんで‥‥こんなひでぇ事を‥‥)

 

 ノーヴェは目の前の光景が信じられなかった。

 管理局の人間が平然と自分たちが定めた法律を破り、悪逆非道な事を平然と行い、更には、「我々、管理局に背いた当然の報いだ!!」  なんて言っているのだ‥‥

 そして巨大生物の声が耳に響く。

 巨大生物は何度も「帰りたい」と叫ぶ。

 しかし、その光景も突如、巨大生物の悲鳴の様な声で途切れた。

 

「ギャァァァァ―!!」

 

 ノーヴェが目を開けると、左腕にスバルのリボルバーシュートを喰らった巨大生物が悲鳴を上げている。

 

「ノーヴェ!!今だ!!」

 

「お、おう!!」

 

 ノーヴェはなけなしの魔力を拳に集中して、

 

「ディバインバスター!!」

 

 巨大生物のボディにディバインバスターを叩き込む。

 魔力を吸っている時は実体化するのか先程は躱された攻撃も今度は通った。

 

「グォォォォォー!!」

 

 ノーヴェのディバインバスターを喰らった巨大生物は雲散霧散するかのように消えてしまい、巨大生物が居た場所にはノーヴェがあの巨大生物に取り込まれそうになった時に見たあの金色の神像が床に落ちていた。

 

「これがあの化け物の正体?」

 

 スバルが恐る恐る神像を手に取る。

 

「これ、何処かの世界の盗品だ‥‥」

 

「盗品?その根拠は?」

 

「‥‥さっき、あの化け物に取り込まれそうになった時に見たんだ‥‥あの化け物は‥ただ自分の生まれ故郷に帰りたがっているだけだった‥‥」

 

「‥‥」

 

 ノーヴェの話を聞きながら響は神妙な顔で金色の神像を見つめ、ノーヴェは管理局の存在に疑問を感じ始めた。

 

 巨大生物を倒したので、スバルは輸送船の針路を港へと戻した。

 

「お前そういえば、よく運転出来たな」

 

 ノーヴェは今更ながら、スバルに次元航行船の操船が出来た事に気づく。

 

「ルキノさんから聞いていたからね」

 

「ふ~ん」

 

 スバルが操船できる理由を聞いて納得したノーヴェだった。

 

 港では既に他の特別救助隊や108部隊の捜査官らが待機していた。

 輸送船を港に着岸させ、捜査官らが輸送船に乗り込もうとした時、

 

「ごくろうさまです。あとは我々、首都航空隊が引き継ぎますので」

 

 と、ノーヴェとスバルが例の化け物を倒した後で、“空”の部隊がやって来た。

 

「何言ってんだ!?今更、のこのこと来やがって、なんで、地上を走る車より、空を飛べるお前らの方が遅いんだよ!!」

 

 この“空”の局員の言動に納得いかなかったのが、ノーヴェだった。

 化け物に殺されそうになり、更にその原因が“海”の連中の非道な行いかもしれないという光景を化け物の記憶から読み取った。

 その調査を余所の部隊なんかに任せてはおけない。

 もしかしたら、あの光景は真実であるのかもしれない。

 だが、“空”の連中に任せたら、その事実を握りつぶされる可能性がある。

 調査をするのであれば、自分やスバルが所属する部隊かゲンヤの部隊でなければ信用がおけない。

 しかし、ノーヴェの進言は通る事なく、“空”の局員らは強引に“陸”の捜査官や救助隊、消防隊を下げて、自分たちだけで調査作業を始めた。

 

「くそっ!!」

 

 隊舎に戻る中、ノーヴェは車の中で怒りを爆発させた。

 彼女が叩いた部分は凹んでいる。

 

「‥‥」

 

 スバルはただハンドルを握り、前を向いているが、ノーヴェの悔しさは理解出来た。

 

 翌日の新聞やニュースでもあの輸送船墜落事件については“空”が全て解決した事になっていた。

 ただし、船の中に積まれていたあの大量の美術品については報道されることはなかったし、墜落原因についても現在調査中と真相を闇の中にしようとする気概が見えた。

 

「なぁ、スバル」

 

「なに?」

 

「これなんだと思う?」

 

 ノーヴェはスバルにジュースの空き缶程の大きさの金属質のモノを見せる。

 

「そ、それはっ!?」

 

 スバルは目を見開く。

 ノーヴェの手の中にはあの巨大生物の正体である神像があった。

 

「ノーヴェ、持ってきちゃったの!?」

 

「ああ‥‥コイツは元の世界にただ、還りたかっただけなんだ‥‥あのままだと、管理局の倉庫か何処かのコレクターに横流しされちまうだろう?だから、私はいつかコイツを元の世界に還す」

 

 ノーヴェはあの巨大生物が自分に見せた光景は決して幻でもなければ、出鱈目な光景でもないという確信を得た。

 そして、いつかこの神像を自分の手で元の世界へ還す決意もしていた。

 ノーヴェの手の中にある神像はその日を待つかのように、彼女の手の中で静かに鎮座していた。

 




今回の事件で登場した鬼の様な姿の巨大生物の外見は、遊戯王の『酒吞童子』をイメージしてください。
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