星の海へ   作:ステルス兄貴

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百三話 ゴルバ再臨

 

狩人たるミヨーズを撃破した地球艦隊は暗黒星雲の中を航行していた。

 

この暗黒星雲は地球から観測されていない星雲であり、この先に一体何があるのかは当然、地球人であるヤマト、まほろば、春藍の乗員たちは知らない。

 

しかし、地球を救うためにはこの未知なる宙域を進み、敵の母星まで行き、地球に打ち込まれたハイペロン爆弾の起爆装置を破壊しなければ、地球を救えない。

 

ここは敵の制宙権で当然、敵の艦隊が潜んでいるかもしれない。

 

さらに、宇宙気象の危険もある。

 

だが、地球艦隊はそれでも暗黒星雲中心点に向かって突き進んでいく。

 

 

宇宙戦艦ヤマト 展望室

 

ヤマトの展望室には酒瓶を持った佐渡と窓の外を見ているアナライザーの姿があった。

 

「アタリハモウ、真っ暗デスネ‥‥星モ、何モカモ全然見エマセン」

 

機械の目を持つアナライザーのセンサー眼をもってしても周辺の状況が分からない。

 

「セッカク星デモ見ナガラオ酒ヲ楽シモウト思ッタノニ‥‥」

 

相変わらずロボットとは思えない思考回路をしている。

 

「なぁに、花が見えなきゃ月が、月が見えなきゃ星が、星が見えなきゃ雲でも見る‥‥昔から酒はそうして飲むもんじゃ。星が見えなくなったんなら、その分、地球からは見れん暗黒物質とやらを拝んでやろうじゃないか。‥‥それが風流ってもんじゃぞい」

 

例え、窓の外が真っ暗な暗黒物質で包まれていてもどんな環境もプラス思考で見て酒を飲む佐渡。

 

「サスガハ大先生デス!!」

 

アナライザーはそんな佐渡を褒める。

 

「それにしても外はえらく荒れておるな‥‥嵐か‥‥何かの前触れでなければよいが‥‥」

 

佐渡は窓の外に広がる漆黒の宇宙を見ながら何か胸騒ぎを感じた。

 

 

宇宙戦艦まほろば 艦橋

 

「しかし、凄い密度のガスだな‥‥星雲の中心を越えたんだから、もうちょっとマシになるかと思ったんですけどね‥‥」

 

操舵桿を握りながら永倉が窓との外を見ながら呟く。

 

「位置的ニハ、モウ後、数光年デ星雲ヲ抜出セル筈デス」

 

まほろば の艦橋にはバトライザーも上って航海の補佐をして貰っている。

 

「恐ラク、コノ宙域ハ、局地的ニ、ガスノ濃イ宙域ナノデショウ」

 

「艦長、レーダーがもう限界です。ノイズと断続的なホワイトアウトで役に立ちません」

 

レーダー担当の新見が既に、まほろば のレーダーが役に立たない事を報告する。

 

CICからも同様の報告が上がっている。

 

このレーダー不調の原因はガス状物質が濃密になり過ぎて、液体に近い密度になった影響である。

 

恐らくヤマトや春藍のレーダーも、まほろば と同じ様に使い物にならなくなっている筈だ。

 

しかし、通常宇宙空間にこれだけの濃密な物質が存在するなんて考えられない。

 

このガス状物質は収縮していって、やがて一つの巨星でも生み出そうとしているのだろうか?

 

それとも現時点において地球では存在が確認されていない全くの異常物質なのだろうか?

 

この暗黒星雲が地球から観測されていない為、あまりにも情報が不足していた。

 

乗員たちの疑惑や疑問を乗せたまま地球艦隊は進んで行く。

 

だが時折、小惑星や岩塊が飛んできたりもする。

 

衝突すれば損傷は免れない。

 

周囲が暗黒物質で包まれているからといって何もないわけではない。

 

「これからは有視界航法をとるより仕方がないか‥‥通信長、左舷及び右舷パネルを作動させろ」

 

「了解」

 

少しでも有視界の範囲を広げる為、良馬は艦橋にあるパネル全てを作動させ、見張りをしやすくする。

 

なお、この時、ヤマトでも同じように艦橋のパネル全てを起動させたのだが、古代はつい、癖でサーシアの事を雪と呼んでしまった。

 

雪に間違えられたサーシアは「違うわ‥‥」と頬を膨らませて、古代に抗議した。

 

古代も今、ヤマトのレーダー席に座っているのが雪ではなく、サーシアであることを思い出すと訂正した。

 

その直後、ヤマトに敵のショックカノンが命中した。

 

「ヤマト被弾!!」

 

「敵の砲撃か!?」

 

被害はマスト、上甲板にレベル1の装甲剥離の被害を受けたが、航行に支障はない。

 

地球艦隊のレーダーは使用不可能なので、どこに敵が潜んでいるのかは分からない。

 

しかし、敵はヤマトに対して攻撃を仕掛けてきた。

 

と言う事は、敵にはこちらの姿が見えている可能性がある。

 

暗黒星団帝国と名乗るだけあって、この濃密な暗黒物質だらけの空間でも相手のレーダーはきちんと機能しているのだろう。

 

反対に地球艦隊のレーダーは使用不能‥‥

 

出鱈目に攻撃しても敵に命中する保証はなく、逆に一方的な消耗戦を強いられる事になる。

 

「艦長、火器管制システムにも影響が出ています!!レーダーが完全に利かない今、火器の使用はほぼ不可能です!!やみくもに撃っても消耗戦になるだけです」

 

「分かっている」

 

良馬はジッとパネルを睨む様に見続けると、右舷パネルに敵艦隊の姿がおぼろげに見えてきた。

 

「推定距離右舷前方一万宇宙キロ、各砲塔戦闘配置、通信長、各艦にも情報を伝達」

 

「りょ、了解」

 

ギンガは良馬が目視した情報をヤマトと春藍へと送る。

 

だが、周辺の暗黒物質の濃度は更に増し敵の姿が見えなくなってきた。

 

地球艦隊は左舷側にある暗黒ガス雲の中に一時退避しつつ、敵艦隊をそこで待ち伏せすることにした。

 

地球艦隊が暗黒ガス雲の中に入ると、敵艦隊も見失ったのか敵艦からの攻撃が止んだ。

 

暗黒星団帝国のレーダーは地球艦隊のレーダーよりも優れてはいるが、やはり宇宙の自然の前には限界があるのだろう。

 

地球艦隊は暗黒ガス雲の中でジッと息を殺して敵が来るのを待った。

 

「二十秒経過、敵艦隊との推定距離、八千宇宙キロ」

 

新見が敵の進撃速度、最後に確認された距離から敵艦隊の予想位置を計算する。

 

「三十秒経過‥‥」

 

「右四十度転進、雲海より出る。主砲発射準備」

 

「右四十度転進、ヨーソロー」

 

地球艦隊は雲海から出ると、敵艦隊は地球艦隊に横腹を晒していた。

 

眼前に自分たちへ横腹を晒している敵艦隊の姿を見ると、ヤマトから攻撃命令が下る。

 

「主砲斉射!!撃て!!」

 

「了解、主砲発射!!」

 

地球艦隊からは何発ものショックカノンが敵艦隊へと向かって放たれる。

 

さらに追加でミサイルも発射された。

 

雲海からいきなり出てきた地球艦隊の攻撃を受け、敵艦隊は爆発、炎上し始める。

 

中には被弾してコントロールが利かなくなり、味方の艦と衝突する艦もいた。

 

しかし、敵艦隊も一方的にやられるわけでは無く、艦首を地球艦隊へと向け、反撃して来る。

 

「コースターン、右80度」

 

「いや、このまま撃て!!」

 

「主砲発射!!」

 

まほろば の下部に逃れようとした敵艦隊の上部で、反転しかけた まほろば は敵に対して逆さまの状態で攻撃した。

 

敵艦隊は次々と被弾し、爆発していく。

 

敵艦隊の一番後方に居た旗艦らしき戦艦は味方が次々とられていき、敗色が濃厚となると、即座に転舵すると、撤退行動に入った。

 

「奴さん、どこへ逃げるつもりなんでしょう?」

 

「もしかしたら、行先に出口があるのかもしれない」

 

「追尾しますか?」

 

「うん‥‥今はこの暗黒星雲を抜けなければ‥‥」

 

地球艦隊は敗走する敵戦艦を追いかけようとする。

 

すると、後ろから敵の別動隊が迫って来た。

 

暗黒ガス雲の暗闇を利用して背後から迫って来た。

 

「全艦に告ぐ、奴等を追え!!絶対に逃がすな!!追撃するのだ!!駆逐艦隊は両翼へ展開!!‥‥くれぐれも、予定航路を外れるな!!」

 

「敵は速度を上げて、左右に展開しました」

 

「このまま包囲するつもりなのでしょうか?」

 

「だが、最初の一撃以外攻撃を仕掛けてこないのは妙だ」

 

(こちらの反撃を恐れている‥‥?いや、そんな筈が無い‥‥数の上では彼方が上なのだから‥‥それにこの宙域は連中のホームグラウンド‥‥まさか、この先で何か罠でも張っているのか?)

 

良馬は後ろから迫って来る艦隊に違和感を覚える。

 

「地球艦隊め‥‥なりふり構わず逃げているな。レーダーが利かないとは言え、臆病な連中だ」

 

地球艦隊の背後から迫る艦隊の旗艦では、艦長が一発も反撃せず、逃げ回っている地球艦隊の姿を見て嘲笑っている。

 

「艦長、あと200で予定地点に到達します」

 

「ふん‥‥では、この辺で良いだろう。全艦、戦闘態勢!!両翼の艦隊、全砲門を開け!!我々が追い込んだその先に何が待ち受けているのか、それを知った時の奴等の顔が目に思い浮かぶわ‥‥グロータス准将に繋げ、敵を罠に追い込むのに成功したとな」

 

「ハッ!!」

 

 

「グロータス司令、暗黒星雲内にて行動中の第三艦隊より通信です」

 

「読め‥‥」

 

「ハッ、『敵を罠に追い込むのに成功。間もなく、そちらへ向かう。我が艦隊は当初の予定通り、後方にて網を張る』‥以上です」

 

「フフフフ‥‥とうとう来よったか‥‥さあ来い!!今度はこの私自らが貴様らを地獄へと叩き落してやろう」

 

グロータスは不敵な笑みを浮かべて地球艦隊が来るのを待った。

 

後方から敵艦隊の追撃を受け、逃走する地球艦隊。

 

「乱流が少しおさまりました!!レーダー機能、一部回復!!」

 

「後方の敵艦隊の様子は!?」

 

「包囲網は解いていませんが、進撃速度を落としています」

 

(やはり、妙だ‥‥ここに来て進撃速度を落とす?何故‥‥)

 

(暗黒ガス雲が薄れてきたからか?しかし、敵はいまだに包囲網を解いていない‥‥だとすると‥‥ま、まさかっ!?)

 

良馬は敵の奇妙な行動にある可能性を見出した。

 

「ああ!!‥‥な、なんだ!?あれは!?」

 

操舵桿を握っていた永倉が声をあげる。

 

地球艦隊の眼前には、忘れもしない‥‥イスカンダルで戦ったあの蛸壺‥‥もとい、ゴルバがいた。

 

「あ、あれは‥‥ゴルバ!!」

 

「ま、間違いない‥‥ゴルバだ!!」

 

イスカンダルでデスラー率いるガミラス艦隊と共闘し、苦戦しながらもようやく倒したあのゴルバが居たのだ‥‥しかも一基だけではない‥‥

 

(やはり、罠だったか‥‥)

 

敵艦隊の奇妙な動き‥‥それは、地球艦隊をこのゴルバの包囲網の中に誘い込むためのモノだった。

 

ゴルバは左右にそれぞれ三基、前方に一基の計、七基‥‥

 

「ゴルバが‥‥あの厄介な要塞が七つも‥‥」

 

ヤマト、まほろば、春藍の乗員たちは大きな衝撃と驚愕、そして絶望感のようなものを抱く。

 

先程まで自分たちが航行してきた宙域には敵艦隊が逃走防止の為に包囲網を強いている。

 

地球艦隊は完全にグロータスの罠に落ちてしまった。

 

そのゴルバの一基の司令塔では、

 

「ふははははっ!!驚いたか!?このグロータスが指揮する戦力をもってすれば、貴様らなど、虫けら同然だと言う事をな!!しかし、貴様らには礼を言うぞ!!中間基地を破壊されたのは痛いが、なによりも邪魔なミヨーズめを始末してくれたのだからな!!」

 

やはり、グロータスはミヨーズの事を自分の出世街道の障害物であると認識しており、虎視眈々とミヨーズの排除を狙っていた様だ。

 

そして、今回の地球占領作戦においてはそのチャンスがようやく巡って来た。

 

まさに千載一遇の好機だった。

 

グロータスにとっては、ヤマトら地球艦隊は、自分に幸運をもたらす毒蛇にでも見えたのだろう。

 

だが、いつまでも自分たちの庭先に毒蛇を放置するわけにいかない。

 

ミヨーズの失点を重ねる結果となったヤマトを中心とする地球艦隊を撃破すれば、自分の地位と権力は今よりも更に上がる。

 

自分には暗黒星団帝国が誇るゴルバが七基もある。

 

地球艦隊ごとき、簡単に撃破できるという自信が彼にはあった。

 

「ここが貴様たちの墓場だ。これ以上貴様らを我が母星へ近づける訳にはいかん!!さあ、深淵へと続く暗黒星雲の渦の中に巻き込まれ永遠にさまよい続けるがいい!!全要塞、攻撃準備!!彼奴らを原始の塵へと還すのだ!!」

 

 

「どうします!?相手があのゴルバでは分が悪すぎるどころか、全く歯がたちませんよ!!ここは何とかこの宙域から脱出しなければ‥‥」

 

フェリシアが七基ものゴルバを相手になんて戦いを挑んだところで勝利するのは難しい‥‥と言うか事実上不可能に近いので、この場は戦闘ではなく退避するしかないと言う。

 

「でも逃げるってどこに?この乱流の中じゃ、ワープ何てできこっないぞ!!後ろも敵艦隊が包囲網を敷いているんだ」

 

艦橋内に絶望、焦りが漂う空気の中、

 

「確かにこの包囲網を突破するのは至難の業だ‥‥しかし、逆に考えて見ると、これほどの敵が待ち受けていると言う事はやはり、この星雲の先には何かあるということだ‥‥」

 

「ですが、艦長」

 

「我々は地球を救うためにヤマトと共に旅立ったんだ‥‥そして、地球では今も我々よりも苦しんでいる人々が戦い、我々の帰りを待っている人がいるんだ‥‥」

 

良馬は沖田艦長と同じくまだ絶望はしていない。

 

ガミラスとの戦いの時も、ガトランティスとの戦いの時だって大きな絶望感を味わった。

 

それでも、希望を捨ててはならない。

 

「その通りだ」

 

「山南艦長」

 

「確かに戦力は歴然としている‥‥だが、『窮鼠猫を嚙む』の言葉通り、決死の思いで立ち向かえば、開けない道はない‥‥その事は沖田艦長と共に戦い、その意思を継いだ君たちが一番よくわかっている筈だ‥‥一度は諦めたこの命‥‥私は賭けても良い。逃げる為でなく、道を切り開らく為ならばな‥‥」

 

眼前にゴルバが七基も存在し、絶望しかかったが、ヤマト、まほろば、春藍の乗員は地球に居る大事な人々のため、勝ち目が薄いながらもゴルバとの戦いへと挑む。

確立は決して0%ではない。

 

それに一度はゴルバを倒し、ガミラス、ガトランティスとも戦い生き残ってきたのだ。

 

ここで負ける訳にはいかなかった。

 

「目標、敵ゴルバ型要塞、各砲戦闘用意!!」

 

地球艦隊は果敢にもゴルバ型の要塞群へと接近する。

 

ただ、ゴルバはイスカンダルの際に見せたあの強力な主砲‥α砲を撃ってくる気配はなかった。

 

また、退路を塞いでいる敵艦隊も進撃して来る様子はなく、ずっと包囲体勢をしているままだった。

 

「妙ですね‥‥ゴルバがあの強力な主砲を撃ってくる気配がありませんね」

 

ゴルバはその装甲は勿論の事、あのα砲の威力はイスカンダルで見た限り、かなりの威力がある。

 

いうなれば、α砲はゴルバの切り札と言ってもいい。

 

そのα砲をゴルバ群は地球艦隊に向けて撃ってくる気配がない。

 

その訳はこのゴルバ群の配置に関係していた。

 

「おそらく同士討ちを避けるためだろう‥‥こちらを包囲している以上、あの強力な主砲を撃てば、我々を撃破する事は可能だが、その主砲は反対側に展開する味方のゴルバにも命中してしまう可能性があるからな‥‥」

 

いかに強力な防御力を誇るゴルバでも波動砲やデスラー砲とは異なる強力なエネルギー砲であるα砲の破壊力の前には無力なのかもしれない。

 

「では、あの主砲を連中は使用できないって事ですか?」

 

あの強力なα砲が使用不能となれば、地球艦隊にも勝機は見える。

 

「いや、安全なのは我々がゴルバの包囲陣が形作る『円』と同じ平面上にいる場合のみだ‥‥こちらが上下のいずれに大きく移動すれば、敵は同士討ちの心配なくあの強力な主砲を撃てる‥‥それに同士討ちが起こるのは円の内側に向けて発砲した場合のみだ。円の外に向かって撃てば、仲間を撃つ心配もない‥‥我々が円の外‥‥つまり、ゴルバの包囲陣から外へ脱出しようとすれば、間違いなくあの主砲の集中砲火を浴びる事になる」

 

「なんてこった‥‥この包囲陣から出るとそれがそのまま死に直結するって事か‥‥」

 

「では、敵は主砲で一気に殺さず、じわじわといたぶってやろうと言う事ですか?」

 

「そうだろうな」

 

「なんて奴等だ‥‥」

 

主砲が飛んでこないとはいえ、じわじわとなぶり殺しにしてくるゴルバに対して、不快感を覚える。

 

後方の敵艦隊もゴルバの集中攻撃による同士討ちを防ぐために包囲陣を敷いたままで進撃してくる気配がないのだ。

 

「各要塞、攻撃準備完了」

 

「よしっ、攻撃開始!!」

 

七基のゴルバ群からは攻撃が開始される。

 

地球艦隊は応戦するが、ゴルバの強力な装甲の前には無力でかすり傷一つ与えられない。

 

「くっ、やはり、ショックカノンが通用しない‥‥」

 

敵の装甲で無効化されるショックカノンを見てフェリシアは悔しそうに顔を歪める。

 

ゴルバ自体の装甲の他にプレアデス級の戦艦でも使用されている強力なエネルギー偏向バリアーがどうにも厄介だ。

 

「フフフフ‥‥圧倒的じゃないか我が軍は」

 

グロータスは口元に笑みを浮かべ、戦況は自軍が有利な展開となっている事にご満悦の様子。

 

「ゴルバがエネルギー偏向バリアーを搭載しているのは予め予想がついていたが‥‥何しろ、波動砲やデスラー砲が通用しない相手だからな‥‥」

 

「では、実弾でしかダメージを与えられないって事ですか!?ミサイルや魚雷、主砲の実弾だって限りがあります」

 

「‥‥」

 

プレアデス級の様に確かに実弾攻撃ならばゴルバにもダメージを与えられるかもしれない。

 

だが、地球艦隊が保有するミサイル、魚雷、主砲の実弾で七基のゴルバを倒せるか正直分からない。

 

でも、やらなければならない。

 

地球艦隊はミサイル、魚雷、実弾による砲撃を行う。

 

やはり、暗黒星団帝国の兵器はエネルギー弾には強いが実弾には弱かった。

 

ゴルバにもかすり傷程度の損害が出始めた。

 

「ぬぬぬ‥‥ミサイル攻撃と言い、この砲撃といい、実弾等と言う下等な攻撃を行いよって‥‥」

 

予想外な地球艦隊の行動とかすり傷程度とはいえ、ゴルバに損害を与えた事でグロータスは不機嫌そうに眼下の地球艦隊を睨みつける。

 

しかし、かすり傷はかすり傷‥‥ゴルバ自体の撃破までには至っていない。

 

このまま消耗戦に持ち込まれれば、いずれミサイル、魚雷、実弾が尽きてしまう。

 

 

宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋

 

「第三艦橋被弾!!」

 

「左舷ミサイル発射口被弾!!」

 

「右舷魚雷発射口被弾!!」

 

「艦載機発進口被弾!!」

 

ゴルバの攻撃を受け、艦橋には各被弾箇所の被害が上がってくる。

 

いよいよ敗色濃厚となってきている感じだ。

 

「くっ、このままじゃ消耗戦になっちまう‥‥どうする古代?」

 

「あとは‥‥覚悟を決めて接近し、ゼロ距離射撃を試みるぐらいしかないか‥‥しかし、このまま座して死を待つよりは‥‥」

 

「待て、古代。特攻を選ぶのは俺たちの新兵器をつかってみてからにしてくれ‥‥」

 

消耗戦となり、実弾が尽きる前にゼロ距離射撃を敢行すればあるいは‥‥と思ったが、ゴルバに接近すれば、それだけ被害も大きくなる。

 

撃沈される確率もグーンと上がる。

 

しかし、まだ手はあるとトチローが止める。

 

「新兵器?」

 

「ああ‥‥波動カートリッジ弾だ」

 

「波動‥‥カートリッジ弾?」

 

聞いた事の無い砲弾の名前がトチローの口から出た。

 

「うむ、主砲の実弾オプションのカートリッジ内に波動砲と同じタキオン波動収束エネルギーを仕込んでみたんだ。だが、波動砲の100分の1以下のエネルギーしか仕込まれていないから、本当に通用するかどうかはわからんがな‥‥ともかく、テストも無しのぶっつけ本番だ。一か八かの博打だが、やってみて損は無い筈だ」

 

「おい、博打とは何だ、博打とは!!俺の辞書に『偶然』って文字なんかねぇぞ。だいたい、お前だって自信満々だっただろうが」

 

波動カートリッジ弾の開発にあたっては、真田はもとより、トチローも関係していた。

 

この二人の合作ならば余程の事がない限り、失敗はありえない。

 

「勝機は‥‥勝機はあるのか?」

 

守が真田に波動カートリッジ弾を使用しての勝機があるのかを問う。

 

「ああ、イスカンダル戦でのデータから、ゴルバを始めとする敵艦はエネルギー弾攻撃に脆いと言う事は判断できる。あの強力なエネルギー偏向バリアーはその弱点の裏返しというわけだ‥‥」

 

「そういえばそうですね‥‥」

 

相原が思い出したかのように納得する。

 

「だが、偏向バリアーを突き抜けられるのは実弾しかない‥‥ならば、実弾に波動エネルギーを込めてしまえば良いと言う訳だ」

 

「なるほど、トロイの木馬みたいなものか‥‥」

 

「よろしい、ならば、急ぎ波動カートリッジ弾の用意だ」

 

守が波動カートリッジ弾の準備を命令する。

 

「では、自分は第一主砲室へ行きます」

 

「うむ、頼むぞ」

 

「了解」

 

南部は精密射撃をするため、第一艦橋から第一主砲室へと降りた。

 

「アナライザー、お前も波動カートリッジ弾の用意を手伝ってくれ」

 

「リョウカイデス」

 

アナライザーも波動カートリッジ弾装填の手伝いに向かった。

 

 

波動カートリッジ弾の使用についてヤマトから春藍、まほろば へ伝達された。

 

シリウスにて補修と補給、レーダーの改修を行った際、まほろば と 春藍にも同じく波動カートリッジ弾は積み込まれていた。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

 

「なるほど、わかりました。直ちに準備します」

 

「砲雷長、聞いた通りだ。急ぎ波動カートリッジ弾の準備だ」

 

「はい!!」

 

アナライザー同様、まほろば ではバトライザーも波動カートリッジ弾の準備を手伝い、主砲へヤマトから受け取った波動カートリッジ弾の装填作業が始まる。

 

波動カートリッジ弾を準備している間にもゴルバからの攻撃を容赦なく受け、まほろばでも各部に被害が及んでいる。

 

応急修理班やメディックが艦内を駆け回り、被弾部の修理、負傷者の搬送や手当てに奔走している。

 

医務室も負傷で溢れかえっており、リニスが手早く治療していくが室内に充満するうめき声や絶叫、悲痛な声は増すばかりだ。

 

「バカスカ撃ってくる敵ね‥‥ちょっとは手加減や一服したらいいのに‥‥」

 

落ち着いている様子にリニスであるが、彼女自身も万が一のことは覚悟していた。

 

艦首の弾薬庫では砲術員の他にバトライザー、手空き者総動員で波動カートリッジ弾の準備が行われていたが、被弾するたびに艦全体が大きく揺れて作業はなかなかはかどらない。

 

「波動カートリッジ弾の装填はまだか!?」

 

「あと三分です」

 

あと三分で波動カートリッジ弾の装填作業が終わる報告がきたがその三分が物凄く長い時間に感じられた。

 

「敵、小型の攻撃艇を射出しました」

 

ゴルバであるからには当然、テンタクルスも装備されていると予想はしていたが、まさかここでテンタクルスを出してくるとは間が悪い。

 

「くそっ、こんな時に‥‥」

 

「艦首ミサイルで応戦せよ!!」

 

「了解、艦首ミサイル発射!!」

 

艦首ミサイルでテンタクルスを迎撃するも、何艇かはそのミサイル攻撃をかいくぐって接近して来る。

 

「敵小型艇の何艇かはミサイル攻撃をかいくぐった模様」

 

「波動爆雷で防衛網を張れ」

 

次に波動爆雷でテンタクルスの接近を防ぐまほろば。

 

艦首部のVLAから放たれた波動爆雷はテンタクルスの針路を遮るように発射され、テンタクルスは次々と波動爆雷に体当たりするかの様な形で迎撃される。

 

辺りはテンタクルスと波動爆雷による爆煙で包まれた。

 

その時、ようやく波動カートリッジ弾の準備が整った。

 

「波動カートリッジ弾、発射準備完了!!」

 

「目標、敵ゴルバ型浮遊要塞!!」

 

「発射!!」

 

ヤマト、まほろば、春藍の主砲からは次々と波動カートリッジ弾が発射された。

 

やはり、暗黒星団帝国の偏向バリアーは実弾に関しては無力で波動カートリッジ弾は偏向バリアーを通過してグロータスが座上するゴルバへと命中する。

 

すると、ゴルバのあちこちで爆発が起き始める。

 

「敵の砲弾が動力炉を貫通!!誘爆が広がっています!!」

 

「何故‥‥何故だ‥‥どうしてこのゴルバが地球の戦艦ごときに‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁぁ‥‥ぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

グロータスの絶叫と共にゴルバは誘爆を繰り返して爆発、その衝撃波を受け、周囲のゴルバも次々と誘爆していく。

 

「急速反転、離脱」

 

爆発に次ぐ爆発、白色の閃光が渦巻く中を地球艦隊は全速でこの宙域から離脱していく。

 

ゴルバがやられた以上、この宙域から出てもα砲の脅威もなくなり、後方の包囲艦隊もゴルバがやられたのを確認すると、地球艦隊を攻撃することなく、撤退していく。

 

 

宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋

 

 

もうだめかと思っていた中、波動カートリッジ弾の一斉射撃でゴルバ全てを倒したことで、主砲制御室からは歓声が沸き起こる。

 

「やった」

 

「やったぞ!!」

 

南部以下砲術員が手放しで喜んでいる。

 

おそらく、まほろば、春藍でも同様の事が起きているだろう。

 

しかし、第一艦橋では歓喜の声は上がらず、先程の光景に対して腑に落ちないと言うか、唖然としていた。

 

「たった一つを破壊しただけで、これほどの大爆発と誘爆が‥‥」

 

「おかしいですな‥‥衝撃波を受けて誘爆したにしろ、こちらは無傷で、あの強固なゴルバ型要塞の方は爆発するとは‥‥いくらなんでもおかしすぎます」

 

これほどの戦果はこれまでの戦いでは見られない現象だった。

 

「もしかすると、暗黒星雲の深部領域に入っているせいで、物質の反応が変わってしまっているのかもしれないな」

 

「反応が?」

 

真田がゴルバの誘爆についてこの暗黒星雲に関係があるのかもしれないと言う。

 

「たとえば『反物質』だ。憶えているか?」

 

「反物質‥‥確かテレサが使っていたものでしたね‥‥」

 

「そうだ。我々の世界を構成する常物質とその対極に位置する反物質が接触すると『対消滅』と言う現象が起き、莫大なエネルギーを放出する‥‥そして、この場合、波動エネルギーが常物質で、暗黒星雲やゴルバ型要塞を構成する物質が反物質だとしよう‥‥」

 

「なるほど、それで、あんな大爆発が‥‥」

 

「だとすれば、敵のバリアーさえクリアすれば波動砲は敵に効果的どころか、無敵って事じゃないですか」

 

「だが、この仮説が当たっているとすれば、波動砲は今後よく考えてから、使用しなければならない。暗黒星雲を突き抜けた後も波動エネルギーは、同じ様な強力な作用を顕すかもしれない。対消滅とまではいかずとも、それに近い融合反応‥‥仮に『波動融合反応』とでも呼ぼう。それほどの反応を引き起こすとなると、どうなってしまうのか予測がつかない。下手をすると波動砲を使用した我々までもが、巻き込まれてしまうかもしれない」

 

「なるほど‥‥わかりました‥‥」

 

今回はゴルバのみが誘爆したが、今後の波動砲の使用に関しては慎重にならなければ、次は自分たちがゴルバの様に誘爆に巻き込まれる可能性があると真田は示唆した。

 

敵の追撃もなく、グロータスのゴルバの包囲網を突破した地球艦隊は負傷者の集計と手当て、艦の修理、乗員の休息に入った。

 

そんな中、古代はヤマトの展望室で窓の外をジッと見て、婚約者である雪の事を思っていた。

 

そこへ、

 

「おじさま‥‥」

 

サーシャが展望室へと来て、古代に声をかける。

 

「‥‥ああ、サーシャか‥‥すまなかった‥‥君と雪を間違えてしまったりして‥‥」

 

古代はサーシアに雪と間違えた事を謝る。

 

古代としてはつい、いつもの癖だったのだろう。

 

サーシャが座っているレーダー員の席は普段は雪が座っていたし、サーシャの容姿も長い金髪に母親であるスターシャに似ている容姿だからだ。

 

そもそも雪自身がスターシャの妹である故・サーシャに似ており、姉であるスターシャも間違えたほどである。

 

「あたしのほうこそごめんなさい‥‥間違えられたぐらいで怒ったりして‥‥」

 

一方、サーシャも間違えられただけで怒るなんて大人げないと思い古代に謝った。

 

「ほんとうは、おじさまを元気づけてあげなくちゃいけないのに」

 

「人間って不思議なもんだな。いなくなって初めてその人の値打ちがわかるなんて‥‥」

 

「どうしているかしら、雪さんは‥‥あたしも会いたかったのに」

 

「あの時の状況じゃ、とても生きているとは思えない。でも、おれは信じている‥‥」

 

「‥‥」

 

通常ならば、あの時‥‥連絡船でのターミナルにて雪が敵弾に倒れた時、周囲には沢山の敵兵が居た。

 

雪は敵兵の手によって殺されたと思う。

 

それでも古代は敵兵が雪を殺さずに捕虜にした可能性もあると思っていた。

 

その場合、雪が生きている可能性はある。

 

「雪は生きている‥‥きっと生きている‥‥」

 

「ええ、きっとそうよ‥‥」

 

サーシャも古代の言うとおり、雪の生存を信じた。

 

ただ、この時のサーシャは神妙な面持ちだった。

 

この時、サーシャは自分でも知らない内に古代の事を叔父ではなく、一人の異性としての感情が芽生えていたのかもしれない。

 

一方、彼女の双子の妹であるユリーシャは天真爛漫な性格なため、彼女が良馬に対する思いが異性に対するモノなのかは分からない。

 

だが、恋人であるギンガにとっては気が気でない。

 

良馬は地球では有名な財閥の人間‥‥

 

ユリーシャはイスカンダル王家の人間‥‥

 

自分は中嶋家の養子‥‥

 

ユリーシャと自分‥どちらの家柄が良馬と釣り合うのかは、はっきりと分かる。

 

それに自分は良馬の家族‥忍に紹介してもらったが、自分と良馬は古代や雪と違って、まだ正式に婚約をしたわけでは無い。

 

ユリーシャが密航をしていなければ、こんなモヤモヤを抱くことは無かっただろう。

 

サーシャ、そしてギンガのモヤモヤとした思いはまだ続く事になるだろう。

 

 

ミヨーズ、グロータスを破り、着実に暗黒星団帝国の本星へと近づいている地球艦隊。

 

その頃、占領下にある地球では、占領軍とパルチザンの戦いは続いていた。

 

しかし、未だにハイペロン爆弾の占領には至っていない。

 

「うわぁ、例の未確認生物だ!!」

 

「撃て!!撃て!!何としてでも仕留めるのだ!!」

 

占領軍の兵士たちはボ○太くんの姿を見て、半狂乱になりつつボ○太くんへレーザー銃を撃つ。

 

ボ○太くんは占領軍の兵士たちにとってトラウマの様なモノが植え付けられているのかもしれない。

 

「もふる!!」

 

「ふもっ!!」

 

「グアッ‥‥」

 

「ぐふっ‥‥」

 

占領軍の兵士たちは次々とボ○太くんたちに斃されて行く。

 

「ふもふもふもっふる (大丈夫ですか?隊長)」

 

ソリッ○・ス○ーク仕様のボ○太くんに量産型ボ○太くんが駈け寄る。

 

「ふも‥‥ふもふもふもふも‥‥ふもっふる、ふもふもふも (ふっ‥‥いいかげん隊長ってのはやめてくれよ‥‥今じゃお前の方が隊長だろう?)」

 

ソリッ○・ス○ーク仕様のボ○太くんには古野間が入って、近づいてきた量産型ボ○太くんには北野が入っていた。

 

「ふもふも、ふもっふる、ふもふも。ふもふもっふるふもふも‥‥ (まったく、お前さんの指揮は完璧だ。さすがヤマトに乗っていただけのことはあるぜ‥‥)」

 

「‥‥」

 

量産型ボ○太くんの他にもう一体、オレンジ色のボ○太くんもおり、古野間と北野のやり取りを見ていた。

 

オレンジ色のボ○太くんの中にはティアナが入っていた。

 

「ふもふもふもふっる、ふもふもふもふも‥‥(前にも言ったが、俺は考えるよりは身体を動かす方が得意でね‥‥)」

 

(確かに、北野さんの指揮は凄い‥‥それにこの戦闘スーツも‥‥)

 

六課時代、センターガードを務めていたティアナから見ても北野の指揮は凄かった。

 

彼からも学ぶ点はいくつもある。

 

そして、外見は遊園地にいそうな着ぐるみっぽいこの戦闘スーツの性能にも驚かされた。

 

空を飛べないと言う弱点はあるが、それを差し引いても防御力は高いし、武器もそれなりの威力がある。

 

(管理局が知ったら、“陸”が欲しがりそうだけど、本局は絶対に認めないわね‥‥)

 

そう思っていると、レーダーに反応がある。

 

(これはっ!?)

 

「ふもふも、ふもっふるふもふも!!ふもふもふもっふるふもふも!!(隊長、レーダーに反応です!!エネルギーから敵の戦車です!!)」

 

ティアナは北野と古野間に敵の戦車部隊が近づいていることを報告する。

 

「ふもふもふもふっる (一旦この場から退却しましょう)」

 

ボ○太くん部隊はすぐにその場から撤退する。

 

(古代さん‥‥島先輩‥‥僕たちはこの地球で頑張っています‥‥先輩たちも頑張って下さい‥‥)

 

撤退する中、北野は空を見上げ、遥か彼方の星の海で戦っている先輩たちの事を思った。

 

占領軍の戦車部隊が現場に着いた時、戦闘は既に終わっており、地面には仲間の兵士の死体が転がっているだけだった。

 

 

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