星の海へ   作:ステルス兄貴

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百四話 二重銀河へ‥‥

 

 ポルテにて、ボラー連邦からの亡命希望者、ミノフスキーの亡命が決まり、はやては本局へその旨を伝える。

 

「それで、亡命希望者はミッドへの亡命を受け入れたのね?」

 

 通信画面の向こうにはリンディがおり、はやてに今回の任務の成果を訊ねる。

 

「はい‥亡命希望者であるポピェーダ・ミノフスキー技術官はミッドへの亡命を受け入れてくれました」

 

「それで、その技術官のレベルはどのくらいなの?」

 

「事情を聴いてみたところ、ボラー連邦に居た頃、彼は母国が使用している宇宙戦艦のエンジン設計を担当していたみたいで、その設計図の一部を見せてもらいました。そのことから彼はエンジニアとしては一流の技術者です。彼の技術があれば、管理局でもボラー連邦や地球防衛軍と同等の宇宙戦艦が作れると思います」

 

 クロノはリンディにミノフスキーの技術を用いれば管理局でもボラー連邦、防衛軍と同等のエンジン性能を持った宇宙戦艦が建造可能だと判断し、その旨を伝える。

 

「そう‥帰りも気を付けてね」

 

「はい。それではミッドで会いましょう」

 

 リンディに一通り報告した後、通信をきった。

 はやて、クロノからの報告を聞いたリンディとしては様々な思惑が渦巻いた。

 

(これで、管理局の艦は従来よりも性能が上がる‥‥でも、それがかえって管理局を間違った方向へと導いてしまうんじゃないかしら‥‥?)

 

 リンディはボラー連邦、防衛軍と同等の性能をもつ宇宙戦艦が今後、建造されれば管理局の次元航行艦の遭難や外宇宙からの外敵の襲撃からミッド、各管理世界を防衛できる。

 ただ、その一方で、管理局は再び管理世界への拡大・拡張に意欲を燃やすのではないかという危惧を抱いていた。

J S事件~ボラー連邦への武力制裁の失敗まで管理局は管理世界になりうる世界への探査を大規模に行った。

 その結果、多くの管理世界を得る結果となったが、人類が居ない原住生物だけの世界や資源が豊富な資源世界であるならば、問題はないが、人類が居住している世界について、近年の管理局のやり方は少々強引なやり方で管理世界にしている。

 防衛軍が見ればそれは明らかな侵略行為だった。

 しかし、管理局はあくまでも侵略ではなく、『管理』という言葉で片付けている。

 ボラー連邦への武力制裁の失敗でそれらの活動は自粛されているが、それでも管理局内では他の同僚を出し抜いてでも出世しようとする局員が多く、今でも密かに活動をしている者が居る。

 それらの局員の成果は決して表では管理局の法律に触れている件があるのではないかと思っている。

 しかし、明確な証拠もなく、成果は成果なので、管理局の上層部はたいして気にしていない。

 もし、今後管理局がボラー連邦、防衛軍と同等の力を手に入れれば、管理局は再びボラー連邦へ武力制裁を行うかもしれない。

 防衛軍へ戦争を仕掛けるかもしれない。

 『管理』という名の侵略行為を再開するかもしれない。

 そうした懸念がリンディの中にはあった。

 果たしてリンディが抱く懸念をどれだけの管理局員が同じく抱いているだろうか?

確かにミッド、そして管理世界を守る力は必要だ。

 しかし、大きすぎる力は争いを呼ぶ。

 管理局が今よりも大きな力を持ち、暴走しかけた時、自分にそれを止めることが出来るだろうか?

 いや、止めなければ管理局は今度こそ終わるかもしれない。

 だが、現状の管理局ではそれを口にすることはできない。

 ボラー連邦への武力制裁失敗で現在の管理局はミッドと一部の管理世界の防衛でやっとの戦力しかないのだ。

 強力な宇宙戦艦の建造は管理局の急務なのだ。

 リンディには管理局の未来を信じるしか今はできなかった。

 

 亡命条件を承諾し、健康診断の結果、特に問題ないと診断されたミノフスキーはいよいよ、亡命先であるミッドへと旅立つ日が来た。

 一応、彼が老朽船から脱出し、ここポルテまで乗ってきた救命艇も壊れていたが、技術研究のため、ヴォルフラムへと積み込まれた。

 エリオとキャロもはやてたちと共にミッドへと行きたがっている様子だった。

 ミッドへと行けば、久しぶりにフェイトと会話できるのだが、自分たちにも仕事がある。

 「フェイトたちと会いたいから」という理由だけでいきなり仕事を休むわけにはいかない。

 はやてやクロノに頼めば、それぐらい融通してくれそうだが、真面目な二人はそのような私情を挟むことはしなかったし、仮にミッドへ行けてもフェイトたちと会話をすることはできない。

 はやてとしてはエリオとキャロの真面目な性格は幸いした。

 

 ヴォルフラムはミノフスキーを乗せて、ポルテを後にして、ミッドを目指した。

 ミッドを目指している間、ミノフスキーはミッドにおける言語の勉強をしていた。

 会話については翻訳装置があるので、問題なく会話、コミュニケーションをとることが可能であるが、読み書きについては文字を学ばなければ互いにコミュニケーションをとることが出来ない。

 それにミッドには彼が興味を抱いている魔法というオカルトめいた謎の力がある。

 ボラー連邦、そしてその勢力下に居た時には魔法などという未知の力は本の中の想像の産物だと思っていた。

 しかし、今から行くミッドにはその想像の産物だと思っていた未知の力がある。

 それら未知の力を知るためにも現地の言葉と文字は理解しなければならない。

 その思いがミノフスキーを動かしていた。

 老年ながらミノフスキーはまだまだ物覚えはよく、St.(ザンクト)ヒルデ魔法学院の初等部一年生で学ぶ国語から始めたが、読み書きは既にできるレベルになった。

 一応、護衛としてはやてに同行したシグナムやヴィータであったが、その日のほとんどを用意された部屋から出てくることなく、本やパソコンの画面ばかり見ているミノフスキーに警戒をするほどのレベルではなく、部屋の前で立ち番をしたり、遠巻きから見ている程度だった。

 それに相手は丸腰の老人‥‥そんな老人に対してデバイスを向けて攻撃なんて騎士として恥じる行為だ。

 むしろ、シグナムとヴィータの役割は、はやてたちヴォルフラム乗員の護衛と言うよりも、ヴォルフラムの乗員がミノフスキーに対して私刑に走らないようにするため、どちらかと言うと、ミノフスキーの護衛とヴォルフラムの乗員の監視役と言った方が正しかった。

 確かにボラー星人に対して、管理局員である自分たちは、恨みはある。

 しかし今、目の前にいる老人は、今後の管理局にとってどうしても必要な人材‥‥

 ここで私刑に走って万が一、殺したりしたら、それこそ身の破滅だ。

 普段、同じ局員の不正に対して甘い管理局であるが、今回の件については徹底的に調査を入れられ、処罰の対象になるかもしれない。

 幸いはやての普段からの乗員に対する教育もあるのか、ボラー星人であるミノフスキーに対して、個人的怒りや恨みで私刑に走るような乗員はいなかった。

 今まで確認されたどの管理世界には見ない水色の肌‥‥自分たちと異なる肌の色をしたボラー星人に対して、どうやって接すればいいのか戸惑っている感じだった。

 

「どうだい?お客さんの様子は‥‥?」

 

 士官専用ラウンジでクロノは、はやてにミノフスキーの様子を訊ねた。

 

「あの爺さんなら、部屋にこもって勉強漬けの日々を送っとるで‥‥あの年なのに勤勉やな」

 

「そうか‥‥乗員の様子は?」

 

「事前にお客さんの事情を話したうえで、絶対に乱暴狼藉の類はご法度にしとったからな、今のところ問題はあらへん‥‥むしろ、戸惑っている感じやな」

 

「そうか‥‥」

 

 はやての話を聞く限り、ミノフスキー自身、そしてヴォルフラムの乗員にも問題はない様子で一安心のクロノだった。

 まぁ、艦長としてはやてもクロノ同様、ホッとしている様子だ。

 そして、ヴォルフラムはトラブルもなく無事に本局へとたどり着いた。

 桟橋にはリンディをはじめとする管理局の高官らがヴォルフラムの到着を待っていた。

 管理局が情報統制を行ったため、新聞記者やテレビカメラなどのマスコミの姿は一切なかった。

 まだ反ボラー感情がある中で、ボラーからの亡命者を受け入れたなんて知られるとまた市民感情で管理局が叩かれる。

 管理局はそれを恐れたのだ。

 ミノフスキーの技術提供を伝えるのは、管理局が新たに戦力を整えた時だ。

 ボラー連邦の人間さえも管理局に膝をおり、管理局に技術提供をした‥‥そんなシナリオでも用意しているのだろう。

 やがて、桟橋にヴォルフラムが到着し、タラップが接舷されると、はやて、クロノと共にミノフスキーが下りてきた。

 タラップを降りるミノフスキーは無表情ながらも緊張しているように見えた。

 国賓級のもてなし‥‥と言う訳ではないが、それなりの待遇ともてなしを管理局は用意していた。

 

「ようこそ、ミッドチルダへ‥‥ミノフスキー技術官」

 

「お世話になります」

 

 管理局の高官の一人がミノフスキーと握手を交わす。

 高官は人の良さそうな笑みを浮かべているが、その内心では‥‥

 

(水色の肌とは、まるでエイリアンだな‥‥しかもリンカーコアのないこんな爺に頼ならければならないのは癪であるが、せいぜい利用するだけ利用してやるだけだ)

 

(用が済んだら、使い古したぼろ雑巾の様に捨ててやる。まぁ、管理局へ貢献したのであれば、名誉の病死をくれてやろう‥野蛮人が‥‥)

 

 高官は内心でミノフスキーを見下し、用が済んだらさっさと切り捨てる気満々だった。

 リンディが抱いた危惧が現実に起こるのもそう遠くないかもしれない。

 

「では、さっそく、用意した官舎へとご案内いたします。こちらへ‥‥」

 

 従卒の若い局員がミノフスキーのために用意した官舎へ彼を案内する。

 ミノフスキーは若い局員の案内のもと、用意された官舎へと向かった。

 

「‥‥」

 

 案内されていくミノフスキーの後姿をその高官はジッと見ていた。

 桟橋での賑わいも時間が経つにつれて、薄らいでいく。

 

「‥‥」

 

 先程、ミノフスキーと握手をした高官は通路のある一角にて、その高官は先程ミノフスキーと握手した右手をジッと見ていたが、やがておもむろに手に身に着けていた白手袋を脱ぎ、その手袋をゴミ箱に捨てた。

 

「ふん、手が腐るところだったわ‥‥」

 

 ゴミ箱に捨てられた白手袋にむかってそう吐き捨てた高官は人知れずにその場から去っていった。

 

なにやら暗雲が漂う中、ミノフスキーのミッドでの亡命生活が始まった‥‥

 

 

管理局がミノフスキーを受け入れた頃、暗黒星団帝国に占領されている地球では‥‥

 

 

 地球に打ち込まれたハイペロン爆弾の占拠、地球連邦大統領ら連邦政府の高官らの奪還には至っていないが、着々と戦果は上がっていた。

 占領軍総司令官であるカザンがミヨーズに艦隊を預けて太陽系を脱したヤマトを追尾させるために占領軍の宇宙艦艇の護衛はめっきり少なくなっている。

 戦力と人員の低下、占領軍の兵士たちが未知の星外生物だと思い込んでいるボ○太くん型戦闘スーツ。

 昼夜を問わず、神出鬼没で自分たちを襲撃してくるパルチザン軍のゲリラ戦法。

 夜間、睡眠中に襲い掛かってくるやぶ蚊と呼ばれるこの星に住み着いている吸血害虫。

 やぶ蚊の他にもマダニ、ノミ、南京虫と呼ばれるトコジラミなどの吸血害虫やネズミによる施設の配線の断線などの被害も出ている。

 さらにその吸血害虫や害獣からもたらされるマラリア、サルモネラ菌、インフルエンザなどのこの星独特の風土病による病魔が占領軍の兵士の士気を著しく下げていた。

 地球連邦大統領、政府高官を人質に取り、ハイペロン爆弾という最大の切り札があるにもかかわらず、地球占領時には高かった占領軍の士気はダダ下がりで、本音を言うのであれば、地球からは撤退したい、ないし、宇宙から指揮、占領活動をしたいであった。

 占領軍の士気の低下の反面、防衛軍長官である藤堂をはじめとするパルチザン軍の士気は高かった。

 なお、余談であるが、このパルチザン軍のメンバーは防衛軍の様々な部署の職員、空間騎兵隊、民間からの勇士参加者が集まっている。

 ティアナも勇士参加者の一人なのだが、パルチザン軍の中で女性はティアナ一人というわけではない。

 防衛軍の職員の中には当然、女性職員もおり、その中にはパルチザン軍に参加している女性職員も居る。

 彼女らの主な任務は司令部にて、通信、情報処理の他に一般人に紛れての情報収集や諜報活動を行っており、ティアナのように前線勤務は少ない。

 ティアナの場合、彼女が地球人ではなく、管理局員だから前線勤務というわけではない。

 パルチザン軍参加時、最低限の訓練の後、ティアナは安全な後方勤務にしようかと思ったのだ。

 いくら本人が管理局からの文句は言わせないと言っても、管理局側が絶対にいちゃもんをつけてこない保証はない。

 防衛軍としても管理局とのいざこざは極力避けたかった。

 それでも、ティアナは最前線勤務を望んだ。

 そこで、ティアナの監視という名目もあるが、パルチザン軍の中でも屈指の実力がある古野間の隊にティアナを入れたのだ。

 その読みは当たり、古野間も北野も戦いながらティアナを守り、一方、ティアナ自身も古野間、北野からこの世界における戦闘、戦術、ゲリラ戦法、武器の使用方法を学び、経験して成長していった。

 

 そして、この日も市街地の外れの工業地帯における夜間のゲリラ戦にて勝利したパルチザン軍。

 敵は地球の工業施設を利用して武器の生産をし始めた。

 しかも自軍が使用しているレーザー銃が水に弱いという弱点をすぐに見抜き、地球製のコスモガンを使用することに決めたのだ。

 これもあの時‥パルチザンを罠にはめた時の戦場に居たアルフォンが自軍のコスモガンと比べ、地球製のコスモガンの優位性を上層部に報告し、それを作るために地球にある生産施設の利用を提案したのだ。

 敵にどんな理由があるにせよ、これ以上、敵の戦力を上げるわけにはいかない。

 そのため、最近は兵器生産施設の攻撃が主な活動となっていた。

 戦闘に参加し、指揮を執っていた北野、古野間、ティアナのチームがヤマトの改修ドックに設けられたパルチザン軍司令部へと戻ってきた。

 戦闘で使用したボ○太くん型戦闘スーツをハンガーに戻した時、

 

「古野間さん!!北野さん!!大変です!!」

 

 若い兵士が血相を変えて古野間たちに走ってきた。

 

「どうした?そんなに慌てて」

 

「じ、実は‥‥」

 

 若い兵士は急いでいた理由を古野間たちに話した。

 

「なんだって!?」

 

「バカなことを‥‥」

 

「そんな無茶な‥‥」

 

 若い兵士から事情を聞いた古野間たちは絶句した。

 兵士の話では、若い青年士官の一部がハイペロン爆弾占領のため、勝手に向かってしまったとのことだ。

 しかもボ○太くん型戦闘スーツを身に着けずに‥‥

 ここ最近のパルチザン軍の勝利、敵の士気の低下が知らず知らずのうちにパルチザン軍の中に慢心を生み出してしまったのだ。

 

「いくら、なんでもあの爆弾の占領にそれ相応の準備も作戦もなしで行うにはあまりにも無謀です。戦力ではまだ相手の方が上なのに‥‥」

 

 ティアナから見てもまだ、あの爆弾の占領には敵の戦力が多すぎるため、時期ではないと思っていた。

 夜の闇があるからと言っても夜陰だけであの爆弾を占拠するのはあまりにも無謀だ。

 

「くそっ、急いでその馬鹿どもを連れ帰るぞ」

 

「「はい!!」」

 

 古野間は貴重な戦力をここで無駄死にさせる訳にはいかないので、急いで止めに向かうことにした。

 だがそれは間に合えばの話であるが‥‥

 

その頃、青年士官たちは既に地球へ打ち込まれたハイペロン爆弾のすぐそばまで来ていた。

 

 地球‥メガロポリス郊外の未開発エリアには地球に打ち込まれたハイペロン爆弾がそそり立っている。

 そのハイペロン爆弾の周囲には武装した多数の兵士たちが警備をしている。

 それに何の用途で設けられたのかは不明だが、爆弾本体の外部に設けられたバルコニーの様な部分にも見張りらしき兵士の姿も確認されている。

 そのことから、恐らく爆弾の内部にも兵士が警備していることが予測される。

 また、歩兵の他にも巨大な三脚戦車も配置されている。

 市街地では建造物があるため、三脚戦車は戦闘には不向きということで見晴らしのいい未開発エリアに設置されたハイペロン爆弾の防衛に回され、市街地ではパトロール戦車が歩兵と共に巡回している。

 ハイペロン爆弾の周りはまさにアリ一匹ハイペロン爆弾には近づけない厳戒態勢が続いていた。

 厳戒態勢が続くハイペロン爆弾の近くの草むらにはパルチザンが身を潜めていた。

 人一人がやっと通り抜けることが出来る細い穴を地下から掘り進め警戒の目をかいくぐったのだ。

 敵は地下から近づいてくる事を予見していなかったのか、それとも地下から近づかれてもそれを撃退することが出来る自信があったのかはわからない。

 しかし、敵の目がこうして地下に向いていなかったことが幸いして、彼らがここまで接近することができたのだ。

 敵兵の目が自分たちに向いていないことを確認すると、今回の無茶ぶりな作戦を立てた指揮官らしき青年士官はトランシーバーにて別動隊に連絡を取る。

 

「こちらA隊、準備は整った」

 

「こちらB隊、突入準備完了」

 

「よし、これより敵三脚戦車へ攻撃を開始する。その機に乗じて一気にハイペロン爆弾に接近し、起爆装置を解体する」

 

「了解」

 

 別動隊に連絡を終え、自分自身の覚悟を確認するかのように大きく深呼吸した後、

 

「攻撃開始!!」

 

 攻撃命令を下した。

 占領軍の兵士たちがいつもの様にハイペロン爆弾の警備をしていると、一基の三脚戦車の脚とコックピットの付け根の部分に突如、ロケットランチャーのロケット弾が命中した。

 ロケット弾が命中した三脚戦車は大爆発を起こし、轟音を立てて地面に倒れる。

 

「敵襲だ!!」

 

「照明弾を上げろ!!」

 

「サーチライトを照らせ!!」

 

 突然、三脚戦車が攻撃され、警備していた兵士たちは右往左往しながら混乱する。

 その様子を草むらから見ていたパルチザンたちは草むらから飛び出し、攻撃を開始する。

 

「突撃!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

 草むらから飛び出したパルチザンたちは一気にハイペロン爆弾の出入口へ向かって走っていく。

 警備兵たちも唖然と見ている筈もなく、応戦する。

 パルチザンたちは手に持ったレーザー自動突撃銃、コスモガンを敵の警備兵に向けて乱射し、警備兵が固まっている所には手榴弾を投擲する。

 パルチザンの攻撃を受け、警備兵たちはバタバタと斃れ、パルチザンたちは敵兵の屍を越えてハイペロン爆弾へ接近する。

 警備兵、パルチザン、両軍のコスモガンの閃光、照明弾、サーチライトがハイペロン爆弾の全体像を不気味に照らす。

 パルチザンの方も被害を出しながらも着実にハイペロン爆弾に近づいている。

 この調子ならば、ハイペロン爆弾の内部へ侵入できる。

 突撃したパルチザンたちはそう思っていた。

 しかし、この時を待ち受けていたかのように、突然、付近の遮蔽物を跳ねのけて、数台のパトロール戦車がハイペロン爆弾の出入口を塞ぐように布陣する。

 さらに現れたのはこれだけでなく、周囲からも多数のパトロール戦車が現れる。

 パトロール戦車はパルチザンたちの前に現れると同時に攻撃を開始する。

 

「しまった!?攻撃中止!!撤退!!撤退だ!!」

 

 敵が混乱を収めはじめ、しかも小回りが利くパトロール戦車が多数出現したことで形成は一気に警備兵側に傾いた。

 これ以上の戦闘は部隊の全滅を招くと判断した部隊長の青年士官は撤退を命令する。

 だが、時すでに遅く、パトロール戦車の攻撃を受け、パルチザンの兵士たちはバタバタと斃れていく。

 ほんの数分間の戦闘でハイペロン爆弾の占領を狙ったパルチザンの部隊はあっけなく全滅してしまった。

 戦闘が終わった後もまだパルチザンが潜んでいないか照明弾とサーチライトの明かりが周囲を照らす。

 やがて、一台のパトロール戦車のコックピットから指揮官らしき人物が姿を見せる。

 その指揮官はほかならぬアルフォンだった。

 アルフォンは冷めた目で地面に転がっているパルチザンたちの死体を見まわして、

 

「愚かなことを‥‥」

 

 一言つぶやき、警備兵たちに引き続き、警戒態勢を命令し、官舎へと戻っていった。

 

 

「くそっ」

 

「間に合わなかったか‥‥」

 

「‥‥」

 

 古野間たちが、ハイペロン爆弾が撃ち込まれた未開発エリアの近くに来た時にはすでに戦闘は終わっていた。

 北野は地面に転がる味方の死体を見て拳をギュッと握り、悔しそうに下唇を嚙む。

 彼としては味方を救えなかったこと、味方が慢心し、このような勝手な行動をとらせてしまったことに責任を感じていた。

 

自分がもっと厳しく厳命していれば‥‥

 

自分がもっと早く彼らのもとに駆けつけていれば‥‥

 

 そんな思いが北野の脳裏を駆け巡る。

 苦悩している北野の肩に古野間がポンと手を置く。

 

「思い詰めているみたいだが、これはあんたの責任じゃない」

 

「古野間さん‥‥」

 

「俺の方からも、常日頃からもっと部下たちに厳しくいっていれば連中がこんなバカなことをすることもなかった‥‥今回の件については俺にも責任がある」

 

「‥‥」

 

「今回の件を受けて、こんなバカなことをする連中もいなくなるだろう」

 

 古野間の言う通り、今回の青年士官らの独断専行は今後のパルチザンたちに一つの教訓を与えた。

 

「連中の死を少しでも悲しむというのであれば、絶対にあの爆弾を占拠して、地球を取り戻すぞ‥‥」

 

「は、はい」

 

 いつまでも戦場の近くで悲しみと後悔にくれているわけにはいかず、さっさと撤収しなければ、自分たちも敵に見つかる危険がある。

 古野間たちは急いで現場から撤収した。

 司令部では古野間たちからの報告を受け、重苦しい空気となったが、古野間の言う通り、今回の件を受け、今後は独断専行を控えるよう厳命がパルチザン全体に下された。

 

 

 その頃、グロータスのゴルバ包囲網から脱した地球艦隊は暗黒星雲の彼方への航路に関するデータが集まるのを待つ一方で、ゴルバとの戦闘によって負った損傷個所の修理が行われていた。

 修理が終わったころ、航路データの集計が終わり、ヤマト、まほろば、春藍の三艦ではモニター越しで艦長会議が行われた。

 

「観測とデータの集計結果、航路の内部には海流ともいうべき宇宙気流が流れ、また航路の幅も一定していない」

 

 守の補佐として真田が司会役でこれまで集計した航路データを表示して説明する。

 

「観測時には敵の存在は認められませんでした」

 

「しかし、敵がこちらの銀河系に来ていることから、敵もこの回廊を通行している筈だ。連中ができるのだから、こちらも通行できる筈だ。いくら激しいといっても、気流自体はそれほどのことはないだろう?」

 

 山南がこの航路は敵も使用しているのだから、地球艦隊も通行できるはずだと言う。

 

「問題は気流ではなく、敵の存在ですね」

 

 確かに山南の言う通り、暗黒星団帝国の艦と今の地球艦隊ではエンジンの性能に関してそこまで大きな差はない。

 ならば、敵が航行しているこの回廊は地球艦隊でも通れる。

 だが、ここでも敵の待ち伏せが考えられる。

 

「ああ、さきほどの暗黒星雲での戦闘から敵のレーダーの方がこちらのレーダーよりも性能は上だ」

 

「しかし、ここを通らなければ地球を救うことはできない」

 

「今更、危険だから戻るなんて選択肢はありませんよ」

 

 レーダーが利きにくい暗黒星雲、そしてゴルバ‥ここまでの航海で安全なんてなかった。

 今更危険だからという程度の理由は全く意味をなさない。

 良馬が敵の待ち伏せを恐れ、引き返すなんてことは出来ないという。

 

「真田、航行が可能なのはあとどれくらいだ?」

 

 気流があるとはいえ、比較的に緩やかな流れの時に通過したい。

 緩やかな時ならば、操艦も比較的に楽で、その時万が一、敵の待ち伏せを受けても逃げ切れることが出来る。

 

「観測の結果、航行が可能なのはあと二十時間ぐらいですね」

 

「では、すぐに突入しましょう。気流の流れが緩やかな時にこの厄介な回廊を通過しないと‥‥」

 

「そうだな。これより、回廊へ突入する」

 

 結論はすぐに出て、地球艦隊は回廊内を進んでいく。

 エンジン音が高くなり、暗黒の宇宙空間を突っ切って、地球艦隊は渦巻く入り口の中へ突入していく。

 暗黒星雲の回廊内に入ると青黒い闇が立ち込め視界はいよいと利かなくなる。

 暗黒ガス雲が液体に近い密度になった時と異なるが視界が利かないのは共通している。

 それと同時に気流が地球艦隊に襲い掛かる。

 緩やかとはいえ、それなりに揺れる。

 しかも気流の流れに流されて隕石や岩塊が地球艦隊に降り注ぐ。

 やがて、それらの岩塊が船体にぶつかり鈍い音を奏でる。

 

「航海長大丈夫か?」

 

「小さい奴ならともかく、大きいのが来たらやばいですね」

 

 操舵桿を握る永倉がそういった時、まほろば の艦橋に中くらいの岩塊がぶつかり大きな振動が まほろば を襲う。

 

「わっ‥くっ‥‥機関長!!エネルギー増幅!!」

 

「了解、エネルギー増幅!!」

 

 井上が機関室に指示を出すが、機関室からは機関部員からの悲痛な声が返ってきた。

 

「伝導管が破損!!これ以上増幅できません!!」

 

「修理を急げ!!」

 

「は、はい!!」

 

 永倉が慌てて操舵桿を倒して岩塊との衝突を避ける。

 視界が利かないので、至近距離に岩塊が近づかないとわからないので始末が悪い。

 当然、この暗黒星雲内ではレーダーも利かない。

 

「くそっ、このままじゃあ敵じゃなくて岩にやられちまう」

 

 敵じゃなくて岩塊と衝突して沈むなんてあまりにも無様な最期であり、そんな結末は認めたくない。

 

「航海長なんとかならないの?」

 

 フェリシアが永倉に訊ねるが、

 

「レーダーも利かない視界も利かない、お手上げだ」

 

 永倉自身、長い宇宙生活でこんな特殊空間で艦を操艦させるなんて経験はない。

 

「くそっ、あともう少しで暗黒星雲を抜け出せそうなのに‥‥」

 

「うーん‥‥星雲の銀河系方面のみにだけ乱流が多いというのも変だな‥‥星雲の向こうになにか巨大な重力源でもあるのかもしれない‥‥」

 

 艦長会議の時に見たデータ、そしてこの気流の流れを見て良馬はこの暗黒星雲の環境に不自然さを感じる。

 

「通信長、メインモニターをつけてください。このままじゃあ、マジで岩塊に衝突してお陀仏になりかねないっす」

 

「は、はい。メインモニターを起動します」

 

 永倉に頼まれ、ギンガは艦橋のメインモニターをつける。

 しかし、画面は真っ暗で何も見えない。

 

「これじゃあ何も映っていないのと同じじゃん!!」

 

 真っ暗な画面を見てフェリシアは意味がないとぼやく。

 そこへ、ユリーシャが艦橋に上がってきた。

 

「ユリーシャ‥‥どうしてここに?ちゃんと部屋にいないとダメじゃないか」

 

 良馬はユリーシャに部屋に戻るように言う。

 今は暗黒星雲の回廊を航行中で岩塊も飛んできて艦自体が揺れている危ない状態だ。

そんな中をユリーシャは部屋から艦橋へ上ってきたのだ。

 

「リョーマが困っていると思って‥‥私と姉さんならなんとかなる‥‥」

 

「えっ?」

 

 ユリーシャは一度目を閉じ、再び目を開けるとジッと真っ暗な画面のモニターをジッと見る。

 

「左前に‥‥大きな岩‥‥一時の方向‥‥上下角マイナス三度‥‥」

 

「えっ?ユリーシャは何を言って‥‥」

 

「航海長、彼女の言う通りに操艦してみてくれ」

 

「は、はい。上方へ推力修正‥‥面舵三十度」

 

 永倉はどうせ見えないので、かまわないと思いユリーシャが言った大きな岩が来そうなコースから艦を遠ざける。

 その直後、巨大な岩塊がまほろばの脇を過ぎていく。

 もう少し、舵を切るのが遅かったら、あの岩塊と衝突していたところだった。

 

「‥‥」

 

 巨大な岩塊を見て、唖然とする永倉。

 

「どうしてユリーシャには分かったの?」

 

 フェリシアがユリーシャに訊ねると、

 

「イスカンダル人は不思議な力を持っている。それはきっとサーシャとユリーシャにも受け継がれているんだろう」

 

 良馬は以前、守や真田からイスカンダル人の特徴から成長速度以外にもイスカンダル人は超能力の様な力を秘めている事を聞いていた。

 まさかこうして実際にそれを目の当たりにするとは思ってもみなかったが‥‥

 

「フッ‥‥( •̀∀•́ ) ✧ドヤ」

 

「なっ!?」

 

 ユリーシャはギンガに顔を向け、ドヤ顔を見せる。

 

「むぅ~‥‥それぐらい私だって‥‥」

 

 ギンガはユリーシャに負けたくない一心で、これまでの人生で使うのを拒んできた戦闘機人モードとなる。

 ただ、これまでの人生の中であれだけ忌み嫌ってきた力をまさかこんなくだらないことで使っていいのかと問う理性的なもう一人の自分がギンガに問いかける。

 ギンガ本人が戦闘機人の力を使うのは確かにこれまでの自分の人生を否定する感じであるが、ユリーシャに負けたくないという所は本人だし、今は まほろば が大変な時なのだ。

 自分にはその大変な時に役立てる力がある。

 まほろばには大勢の仲間がいる。

 桜花の誘拐の時と同じく大切な人たちのために役立てるならば、きっと死んだ母だって許してくれるはずだと自分に言い聞かせ、正当化する自分もいた。

 戦闘機人モードを発動させた彼女の目は普段のエメラルドグリーンから金色へと変わる。

 その後、ユリーシャとギンガはまるで競い合うかのようにモニターを見て岩塊を見つけあう。

 

『‥‥』

 

 なんだか大人げないような気もするが、ギンガとユリーシャのおかげで操艦しやすくなったのは事実である。

 

(((通信長も超能力を使えたんだ‥‥)))

 

 ギンガの事情を知らない一部の艦橋クルーはユリーシャとタメを張っているギンガに唖然としていた。

 

(あっ、そういえば通信長は別の星の人だから、イスカンダル人と同じく何らかの能力を持っていても不思議じゃないか‥‥)

 

 永倉、井上はギンガが地球人でないことを知っているので、ギンガがユリーシャと同じく地球人にはない何らかの不思議な能力を持っていても不思議ではないかと納得していた。

 岩塊を見つけた反応と数ではギンガが勝った。

 やはり、これまでの人生の経験がモノを言ったのかもしれない。

 

「フッ‥‥( •̀∀•́ ) ✧ドヤ」

 

「むぅ~‥‥」

 

 今度はギンガがユリーシャにドヤ顔を向けると、負けて悔しかったのかユリーシャは頬を大きく膨らませて悔しがっていた。

 

 ユリーシャとギンガがモニターを見ながら岩塊を見つけあっている頃、ヤマトでもサーシャが同様の能力を使いヤマトを導いていた。

 サーシャ、ユリーシャ、ギンガの情報はすぐに春藍にも伝えられ、地球艦隊は単縦陣にてこの回廊の突破を試みた。

 やがて、前方に小さな明かりのような光が見えた。

 

「明かりが‥‥」

 

「もしかしたらあそこが出口かもしれない」

 

 明かりに近づくにつれ、周囲も暗黒の黒からだんだんと白くなってくるそれはまるで夜明け前の空のようだ。

 やがて光源を突破すると、

 

「やった!!暗黒星雲を突破したぞ!!」

 

 幸いなことに暗黒星雲の出口付近には敵の待ち伏せは無かった。

 たまたまいなかったのか、地球艦隊がここを突破するのは不可能だと思っていたのかは不明だが、ようやく地球艦隊は難所であった暗黒星雲を突破した。

 暗黒星雲を突破した先には背景の黒い暗黒星雲とは真逆な白色銀河があった。

 同じ白でも白色彗星の白とは異なる印象を受ける。

 白と黒がおりなす光景はこの世のものとは思えない美しく壮大で神々しい光景だ。

まさに宇宙の神秘である。

 

「白と黒‥‥光と闇‥‥まさか、二重銀河が存在するなんて‥‥」

 

「この白色銀河のどこかに敵の本星が‥‥」

 

「通信長とユリーシャのおかげで助かったよ」

 

 良馬がギンガとユリーシャに礼を言うと、

 

「じゃあ、何かお礼‥‥」

 

 ユリーシャは甘えるように良馬に抱き着く。

 

「ちょっ、ユリーシャ!?」

 

「艦長、いいんじゃないですか?」

 

「そうですよ。ユリーシャちゃんはまだ子供なんですから」

 

「ただ艦内でふしだら事は控えてください。艦長」

 

「しないよ!!だいたいユリーシャはまだ一歳ちょっとの子供だよ!!」

 

 永倉やフェリシアはからかうように言いい、新見は不純なことはするなと釘をさす。

 礼をするのはとにかく、ユリーシャと関係を持つつもりはない良馬は慌てて否定する。

 だが、一番納得できないのはギンガだった。

 彼女の場合、ユリーシャと異なり、まほろば の乗員なので、彼女が艦のためにその能力を役立てるのは当然のことなのだから‥‥

 

「‥‥( •̀∀•́ ) ✧ドヤ」

 

「むぅ~‥‥」

 

 勝負に勝って戦術で負けた‥‥そんな気持ちのギンガだった。

 

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