星の海へ   作:ステルス兄貴

114 / 294
二重銀河の崩壊へと入りました。

原作ではサーグラスはグロータスと同じく『准将』という階級でしたが、総司令官という役所にも関わらず、准将ではあまりにも不釣り合いなので、階級を上げて大将に設定しました。


百五話 手掛かりを求めて‥‥

 

 

無限に広がる大宇宙‥‥

 

この無数の星々のきらめきの中に様々な生命の営みがある‥‥

 

そして、生命の息吹は時に宇宙の平和を乱すことがある‥‥

 

地球に突如、襲来した暗黒星団帝国の大艦隊‥‥

 

その猛攻に地球防衛軍は脆くも崩壊してしまう。

 

一夜にして占領され、ハイペロン爆弾により、全地球人類を人質に取られてしまった地球を救うためヤマトは再び宇宙の深淵へと旅立った。

 

その途中、シリウス恒星系にて、試験航海中の最新鋭艦、春藍とその護衛をしていた、まほろば、ハルバード、ファルシオンの危機を救い、彼らと共に航海をすることになった。

 

一方、占領されてしまった地球も死んでしまったわけではない。

 

多く者のたちがパルチザンとして立ち上がり、明日への希望とつなげる戦いをしていた。

 

宙を‥‥ヤマトが旅立っていった黒雲を眺めながら‥‥

 

 

そして今、地球から400万光年の彼方、ヤマトを中心とする地球艦隊は暗黒星雲の裏に隠された白色銀河へと進みつつあった‥‥

 

敵、暗黒星団帝国の母星を見つけるために‥‥

 

 

 

白色銀河 某宙域 暗黒星団帝国本星 デザリアム星 聖総統執務室

 

 ヤマトを中心とした地球艦隊の白色銀河到達はすでに暗黒星団帝国の知るところとなっていた。

 

 聖総統の側近であるサーダはその件を国家元首である聖総統に報告するため、彼の執務室に赴いた。

 

「聖総統閣下‥‥例の地球艦隊が、暗黒星雲との境界面を越え、我々の白色銀河へと侵入してきております‥‥」

 

「わかっておる‥‥グロータスめ、しくじりおったな‥‥何のためにゴルバを七基も与えたと思っておるのだ‥‥まったく使えぬ奴め‥‥」

 

 地球艦隊と戦い、戦死したグロータスに一切の悲しみを抱かぬ聖総統。

 

 彼にしてみればグロータスの戦死よりもゴルバ七基の損失の方が痛かったのかもしれない。

 

「敵はもう40万光年の距離を無事にくぐりぬけてきております‥‥このままでは、この帝星まで彼奴らが辿りつかないとも限りません‥‥」

 

 サーダはあの暗黒星雲の境界面‥‥グロータス率いるゴルバの包囲網を破り、ミヨーズの追撃をも破った地球艦隊がこのデザリアム星に来るのは時間の問題ではないかと危惧する。

 

しかし、

 

「フフ‥‥彼奴らはまだ我々の位置も、そして我々の正体もつかんではおらん‥‥安心せよ、サーダ」

 

 聖総統はまったく動じておらず、むしろ余裕さえ醸し出している。

 ズォーダー、デスラーの様に国家元首たる者は常に余裕がある態度を示さなければ務まらない。

 

「はっ‥‥そうですが‥‥」

 

 しかし、サーダはやはり、気がかりで不安な様子。

 

 まぁ、彼女の不安もわかる。

 

 ミヨーズ、中間基地、グロータスのゴルバ‥‥どれも強力な艦隊、優秀な人材を投入しても地球艦隊はそれらを破り、あの暗黒星雲の境界面さえも突破してこの白色銀河に到達したのだ。

 

 当初ではミヨーズの艦隊で全ての方がつくと思っていたのに、地球艦隊はその予想を大きく上回る結果をだしている。

 

 それも自分たちにとって最悪な結果で‥‥

 

 すると、彼女の不安げな心情を読み取ったのか、

 

「そこまで心配ならば、お前がじきじきに相手をしてみるかね?」

 

 聖総統はサーダに地球艦隊の相手をしてみるかと問う。

 

「はっ‥‥ご許可を頂ければ、今すぐにでも‥‥」

 

 すると、サーダは地球艦隊の相手をするつもりでいた。

 

だが、

 

「幸い、私の指揮下にあるサーグラス大将は、あのグロータスと旧友の仲‥‥敵討ちということであれば、これまでになく発奮して戦いましょう‥‥」

 

 サーダは自らが相手をするのではなく、部下に任せるつもりであった。

 

 彼女は軍人ではなく、デザリアムの聖総統府の一官僚‥‥実際に戦場に赴くことはないが、戦略・作戦を練り、それを配下の軍人に伝達することはできる。

 

 彗星帝国のサーベラーとほぼ同じ立ち位置だった。

 

「フッ‥‥やはりお前は直接動かずに、裏で手を引くのみというわけか‥‥」

 

 それを知っている聖総統はニヤッと口元を緩める。

 

「フフ‥‥私のやり方は、聖総統もご存知のはず‥‥」

 

「よかろう‥‥行け‥‥サーグラスを彼奴らへ差し向けよ。さて、『魔女』とまで呼ばれたお前の指揮、久々に見せてもらおうではないか‥‥」

 

「はっ‥‥」

 

 聖総統はまるでゲームか映画の観戦でもするかのようにサーダに地球艦隊の相手をすることの許可を出した。

 

「‥‥」

 

 その聖総統とサーダのやりとりを人知れずに聞き耳を立てていた者がいた‥‥

 

 

デザリアム星の一角に設けられたスカリエッティの研究区画‥‥

 

 そこでは、スカリエッティが普段と変わりなく、自分のやりたい研究と同時に亡命先である暗黒星団帝国からのオーダーをつつがなくこなしていたが、彼自身、ここ最近暗黒星団帝国の内部‥‥特に軍部の連中が妙に落ち着かない様子に気づいていた。

 

 でも、亡命者である自分が聖総統や軍部の連中に訊ねても素直に教えてもらえるはずがない。

 

 それに、積極的に聞くほど、興味がある話題でもない。

 

 そこへ、秘書兼助手のロベルがいずこから戻ってきた。

 

「ドクター‥‥」

 

「やあ、ロベル。どこへ行っていたんだい?」

 

「最近、軍部の方々の落ち着きがない様子でしたので、それを探っていました」

 

「ほぉ~‥‥それで何かわかったかい?」

 

 ロベルもスカリエッティ同様、ここ最近の軍部様子が気になっていた様だ。

 彼女はその原因を突き止めるため、密かにあちこちで情報を収集していた。

 

「はい。判明しました」

 

 先程、聖総統の執務室の近くで、聖総統とサーダの会話を聞いていたのはロベルだった。

 

 ロベルはスカリエッティに聖総統の執務室での会話の内容を伝える。

 

「どうも、地球の艦隊がこのデザリアム星を目指しているようです‥‥ミヨーズ大佐、グロータス准将もその地球艦隊との戦いで戦死なされたとか‥‥」

 

「へぇ~‥‥彼がね‥‥」

 

 自分をこのデザリアム星へと連れてきたミヨーズが死んだことを今、初めて知ったスカリエッティだが、別に彼の死を悲しむことも悼むこともなかった。

 元々彼は、亡命の水先案内人であり、そこまでミヨーズに対して、興味があるわけではなかったからだ。

 

「しかし、地球か‥‥」

 

 スカリエッティも地球に関してはある程度知っていた。

 

 自分が確立した理論、『プロジェクトfate』‥‥それの完成品であるフェイトを生み出したプレシア・テスタロッサ‥‥彼女が伝説の地、アルハザードを目指すため、ジュエルシードを手に入れようとして失敗し、かの地にばらまいてしまった‥‥それが第九十七管理外世界‥地球‥‥

 

 また、自分を負かした機動六課‥その部隊長である八神はやての出身地である世界‥‥

 

 当時はまだ管理局から必要な情報が引き出せたので、気まぐれに地球に関する情報を取り寄せてみたが、文明のレベルに関しては管理外世界というだけあって、魔法文明は存在せず、クローン研究も自分から見たら穴だらけ、おまえに宇宙開発技術は管理局の足元にも及ばない辺境世界。

 

 なぜ、そのような低俗な世界から、高町なのはや八神はやてのような逸材が出てきたのか不思議に思ったぐらいで、何の興味も魅力も感じない世界だった。

 

 それが今、この星に近づいているというのだからそれも疑問だ。

 

 自分が知らぬ間に管理局があの世界を管理外世界から管理世界に編入したのだろうか?

 

 それにしても、かの地の艦隊がこの星に来る意味が分からない。

 

「ロベル、なぜ地球の艦隊がこの星を目指しているのか‥‥その理由もわかっているのかい?」

 

「はい、ドクター。現在、地球はこの暗黒星団帝国の占領下に置かれており、おそらくかの艦隊は祖国開放のため、この星を目指しているのではないでしょうか?」

 

「ん?祖国が占領されたのであれば、現地の占領軍を破ればそれで済む話でないのかね?」

 

「暗黒星団帝国は地球にハイペロン爆弾を打ち込みました」

 

「ハイペロン爆弾?」

 

 流石のスカリエッティも質量兵器であるハイペロン爆弾についての知識は持ち合わせていなかった。

 

「はい、ハイペロン爆弾というのは‥‥」

 

 ロベルは自分が持っているサーダの知識からハイペロン爆弾の仕組みをスカリエッティに教えた。

 

「なるほど、そのような質量兵器があるとはねぇ~‥‥やはり、この世はまだまだ未知の知識と技術に満ち溢れているな‥‥」

 

(その様な爆弾があったのであれば、聖王のゆりかごなど必要もなかったな‥‥)

 

 研究者であるスカリエッティには軍略・戦術といった類はやはり、苦手だった。

 

 配下のナンバーズの中にそういった軍略面でたけた者がいれば、あるいはあの事件は異なった結果となったのかもしれないが、そもそも彼の手元の駒はあまりにも少なすぎたのが敗因の一つである。

 

 いくら、強力な聖王のゆりかご、聖王のクローンが居ても、少ない兵隊だけでは多勢に無勢である。

 

 しかし、スカリエッティにはまだ疑問が残っていた。

 

 自分の知る地球の文明レベルでは到底、宇宙へ乗り出すことはできない。

 

 仮に管理局が、かの地を管理世界において技術を提供したとしても、管理局がここは動き出すべきなのではないだろうか?

 

 それとも地球が暗黒星団帝国の占領下におかれ、あっさりと見捨てたのだろうか?

 

「ロベル、私も地球の事は少なからず知ってはいるのだが、地球の文明レベルではここまでくるのは無理なのではないかね?」

 

「?」

 

 スカリエッティの問いにロベルは思わず首を傾げる。

 

 それはまるで、「何を言っているんだ?」と体言しているかのようだ。

 

「ドクター、地球は既に優れた宇宙戦艦を多数保有していますよ」

 

「えっ?」

 

(‥‥うーん‥やはり、管理局はかの世界を管理世界においたのか‥‥)

 

 ロベルの説明を聞いて、スカリエッティは、管理局は地球を管理世界においたが、暗黒星団帝国が地球に攻め、その世界を占領してしまったので、あっさりと切り捨てたので、地球人は管理局を頼らず、自らの手でこの星を目指しているのだろうと思った。

 

(これで、地球人自身が、かの地を開放したら、管理局の面目は丸つぶれだな)

 

 折角管理世界においたのに、暗黒星団帝国に占領され、あっさりと見捨てた後で現地人が開放したら、管理局のメンツは丸つぶれで信用を失うだろうと思ったスカリエッティ。

 

「一応、これまで暗黒星団帝国が集めた地球に関する映像資料は存在しますが、ご覧になりますか?」

 

「ああ、頼むよ」

 

 スカリエッティは今更、あの辺境の田舎世界を見てもつまらないと思いつつ、管理局の管理という名の支配を受けて、どれだけあの田舎世界が変わったのか暇つぶし程度には見てみようと思い、ロベルに映像の再生を頼んだ。

 

 すると、映像に映っていたのは、自分が知る地球とは全く異なる映像だった。

 

 ガミラス、ガトランティス、二度の外宇宙からの侵略者たちと戦う地球軍の艦艇はどれも管理局で使用している艦影とは全然違う。

 

 それに管理局が忌み嫌う質量兵器もバンバン使用している。

 

 極めつきはあの波動砲とよばれる兵器‥‥

 

 管理局のアルカンシェルよりも威力のある兵器‥‥

 

 あんなものを管理局が認めるわけがないし、保有するわけがない。

 

(ど、どういうことだ!?地球は管理局を受け入れたわけではないのか!?)

 

 あまりにも自分の予想と異なる映像を見てスカリエッティは、彼にして珍しく困惑する。

 

「ドクター?どうしました?」

 

「あっ、いや‥なんでもない‥‥」

 

(なるほど、これほどの技術と兵器を有しているのであれば、あの辺境の田舎世界から、ここへ向かって来るというのも納得できる‥‥私の知る地球とは異なる技術を持つ地球か‥‥はたしてどんな世界なのか興味が沸いたよ‥‥)

 

 もし、彼らが無事にこのデザリアム星に来た場合、ここを捨てて彼らの故郷である地球へでも行こうかと思い始めた。

 

 

一方、そのデザリアム星を目指している地球艦隊は、白色銀河を航行していた。

 

 まほろば では、暗黒星雲突破、白色銀河到達記念で食堂では、あんことクリームを使った白色銀河クリームあんみつ、白色銀河パフェなるモノがデザートのメニューに期間限定で発売された。

 

 ヤマトでも同様の企画が行われているという。

 

 暗黒星雲突破では、ユリーシャには世話になったし、彼女からはお礼をすることになったので、良馬はユリーシャを連れて食堂へとやって来た。

 

 ユリーシャはイスカンダル人と地球人のハーフであるが、やはり、女の子であるということで、甘い物は大好きな娘だった。

 

 注文した白色銀河クリームあんみつ、白色銀河パフェを満面の笑みを浮かべて食べていた。

 

 その様子を面白くない様子で見ていたのはギンガだった。

 

 ただ、不機嫌そうであるが食欲だけは通常運転であり、彼女の前には特盛の料理がデェェェェンと存在していた。

 

「どうしたの?ギンガ、なんか不機嫌そうだけど?」

 

 ギンガの隣にはフェリシアが座っており、ギンガの顔を覗き込むように訊ねる。

 

「な、なんでもありません!!」

 

 ギンガは不機嫌さを隠すかのように黙々と食事をする手を動かす。

 

 だが、視線は時折、良馬とユリーシャの方へと向いている。

 

 フェリシアもその視線には気づいており、ニマッとした笑みを浮かべると、ギンガの耳元に口を寄せて、

 

「もしかして、気になるの?艦長とユリーシャちゃんの事‥‥」

 

「なっ!?」

 

 フェリシアの指摘を受け、ギンガは食事の手をピタッと止める。

 

 心なしか顔もほんのりと赤い。

 

「その反応‥図星かな?」

 

「うぅ‥‥」

 

「まぁ、ギンガが気になるのもわかるよ。艦長の実家は金持ちだし、あのルックスだしね」

 

 実際、良馬とギンガが恋仲であると事は一部の人間しか知られていない。

 

「それにユリーシャちゃんって確かイスカンダルの王族だよね‥‥意外とお似合いのカップルかも‥‥」

 

「‥‥」

 

 フェリシアのキャハハ、ウフフな会話はギンガの耳に入ってこない。

 

 実際、フェリシアが言っていたことはギンガも一度は抱いた。

 

 ギンガが沈黙していると、

 

「あっ、艦長がユリーシャちゃんに『あーん』やっている」

 

「っ!?」

 

 フェリシアのその言葉は耳に入ったのか、ギンガがハッと顔をあげると、彼女の言う通り、良馬がユリーシャにパフェを食べさせている。

 

「‥‥」

 

 その姿を見てますます不安になるギンガだった。

 

 しかし、古代がサーシャを自分の姪として見ていないように良馬自身はユリーシャの事を異性としては意識しておらず、あの外見ながらも実年齢の方を強く意識しているため、どちらかというと妹の様に見ていた。

 

 ユリーシャの方も良馬の事を異性として意識しているのか、それとも良馬とくっついて慌てふためく周囲を見て面白がっているのかその真意は不明である。

 

 

 ユリーシャはその見た目に反して実年齢がまだ一歳と少しなので、まだ一人部屋ではない。

 

 実際に月村家で暮らしていた時もノエルが彼女の面倒を見て、夜は共に同じ部屋で過ごしていた。

 

 そして、それは密航した まほろば でも同じで主にリニスが夜、部屋を共にしていた。

 

「ん?‥‥」

 

 そして、この日もユリーシャはリニスと同じ部屋で寝ていたが、深夜のある時間帯にムクッとユリーシャが起きだした。

 

「どうしました?ユリーシャさん」

 

「おトイレ‥‥」

 

「一人で大丈夫ですか?」

 

「大丈夫」

 

 瞼をこすりながら、起きた理由をリニスに話すユリーシャ。

 

 そして、彼女はヨロヨロとふらつく足取りで部屋を出ていく。

 

 リニスはそんなユリーシャの後姿を見送り、再びベッドに沈み目を閉じた。

 

 一方、ユリーシャは部屋を出ると先程までのふらつく足取りではなく、しっかりとした足取りとなり、リニスと自分の部屋の扉を見て、ニマッと笑みを浮かべていずこかへと向かって行った。

 

 

 起床時間になり、リニスが目を覚ますとユリーシャのベッドに彼女の姿はなかった。

 

「あれ?ユリーシャさん?‥‥どこに行ったんでしょう‥‥?」

 

 リニスは空のベッドを見て、つぶやく。

 

 同じ頃、良馬も目を覚ました時、自分の部屋のベッドの中にユリーシャが居た。

 

「な、なんで‥‥ユリーシャがここに‥‥?」

 

 良馬としてはなぜ、ユリーシャが自分の部屋のベッドに中にいるのかわからなかった。

 

 でも、現状はかなりまずい。

 

 こんなところを別の乗員に見られたら問題になる。

 

 良馬が固まっていると、

 

「良馬さん」

 

 部屋の外からギンガの声がした。

 

「ぎ、ギンガっ!?」

 

 ギンガの声を聞いて慌てて良馬はベッドから飛び起きると、扉を開けて、部屋の外に出ると、扉を閉める。

 

 部屋の中のユリーシャの姿を見せないために‥‥

 

「ど、どうした?ギンガ」

 

「リニスさんがさっき、ユリーシャちゃんが居ないって探しているんです‥‥まさかとは思いますが、ユリーシャちゃん‥‥部屋にいませんよね?」

 

 ギンガは以前、ユリーシャが密航して良馬の部屋で見つかった経緯から今回もユリーシャは良馬の部屋にいるのではないかと思い、こうして良馬に訊ねに来たのだ。

 

「あ、ああ‥ここには来ていないなぁ‥‥トイレとかじゃないか?それか食堂とか?」

 

「食堂はついさっき行きましたが、いませんでした。あと、ユリーシャちゃんが行きそうなのは良馬さんの部屋だったので‥‥」

 

「そ、そうか‥でも、ユリーシャはここにはいないから」

 

「‥‥それなら、部屋の中を見せてもらってもいいですか?」

 

「えっ!?」

 

 ギンガの発言にドキッとする良馬。

 

 このままギンガを部屋に入れたから、ユリーシャが見つかってしまう。

 

 それだけは何としてでも防がなければ‥‥

 

「あ、あとでな、もう着替えるから、それじゃあ‥‥」

 

「あっ、ちょっと‥‥」

 

 良馬は後ろ手で部屋の扉を開けると、そのまま部屋の中へと入る。

 

(別にお互いに見慣れあっている体なのに‥‥)

 

 ギンガは今更、見られてもおかしくはないはずなのにと、良馬の態度に疑問を感じつつも、彼が部屋の中に入ってしまったことで、部屋の中に入ることが不可能となったので、ギンガは別の場所へユリーシャを探しに行った。

 

 ギンガが部屋の前からいなくなるのを確認した良馬はリニスを呼んだ。

 

 リニスは、まほろば の医務長であるが、同時に良馬の使い魔でもあるので、彼女は信用がおける存在なので、呼んでも問題はなかった。

 

 艦長室に来たリニスはベッドで眠っているユリーシャを見て、「はぁ~」とため息を一つついて、

 

「艦長、ユリーシャさんがなぜここに?」

 

 良馬になぜ、ユリーシャが自分の部屋ではなく、良馬の部屋にいるのかを訊ねる。

 

「俺にもわからない‥‥起床時間になって目が覚めるとここでユリーシャが寝ていたんだ」

 

「わかりました。事情はともかく、このままではまずいですからね。彼女は連れていきます」

 

 リニスは寝ているユリーシャを抱えて部屋に運んだ。

 

「やれやれ‥‥」

 

 なんとか問題にならずに済んで、一息つく良馬だった。

 

 

 ユリーシャの寝起きドッキリというトラブルがあったが、地球艦隊は順調に白色銀河を航行している。

 

 敵の襲撃もなく、順調なのだが、しかし敵の襲撃がないことがかえって地球艦隊の乗組員にある不安を抱かせた。

 

 

宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋

 

「どうです?真田さん」

 

「うーん‥‥ダメだな‥‥敵の足取りは、これ以上つかめそうにない‥‥この白色銀河のどこかだということは確実なんだが‥‥」

 

 敵の襲撃が白色銀河到に入ってから全くなく、また敵影も確認できないことで、暗黒星団帝国の本星の場所の手掛かりが全くつかめないのだ。

 

「真田技師長。敵の母星なんですが‥‥我々が越えてきたあの暗黒星雲の中という可能性はないんですか?」

 

 山崎が真田に敵の本星はこの白色銀河ではなく、あの暗黒星雲の方だったのでないかと訊ねる。

 

 確かに敵の出現規模からいうとこの白色銀河よりも暗黒星雲の方が多かった。

 

 敵はあのゴルバを七基も繰り出してきたのだから‥‥

 

「それは私も考えました‥‥」

 

 真田も当然、その可能性を考慮していた。

 

「ですが、それだと敵が暗黒星雲の境界面で、ゴルバまで持ち出して妨害してきた意味がない‥‥」

 

 暗黒星雲と白色銀河の境界面にゴルバを七基も配置していたことからあの境界面は敵の防衛線であり、暗黒星雲の反対側‥‥つまり、この白色銀河へ地球艦隊を通さないためにゴルバを配備したとなれば、やはりこの白色銀河の方に敵の母星がある可能性が高い。

 

「敵は我々が暗黒星雲を越え、この白色銀河に到来するのを何としてでも防ぎたかった‥‥そう考えるのは妥当です」

 

「なるほど‥‥」

 

 真田の説明を聞いて山崎は納得する。

 

「では、この‥‥我々の銀河系に匹敵する大きさの銀河をなんとか捜索しなければいけないわけですか‥‥」

 

 敵の足取りがつかめないのであれば、地道に探すしかない。

 

 しかし、自分たちが住んでいる太陽系がある銀河と同じ規模の大きさの銀河系から一つの星をみつけるのはかなり難しい。

 

 自分たちは敵の母星がどんな姿の星なのかさえ掴んでいないのだから‥‥

 

「捜索するにしたって、この広さじゃなぁ‥‥」

 

 ガトランティスの主力艦隊との決戦の折、土星圏に侵入した敵の空母部隊への奇襲作戦の時よりも捜索範囲が広すぎる。

 

 敵の母星を見つけるまで一体どれくらいの時間がかかるのかわからない。

 

 だが、天は地球艦隊に味方した。

 

「レーダーに反応あり!!十一時の方向、上下角プラス八度!!」

 

 白色銀河に入り、ようやく敵が現れた。

 

「待ち構えていたような現れ方ですね‥‥」

 

 ここ数日、めっきり姿を見せなかった敵がこのタイミングで現れたことから単なる遭遇戦には見えなかった。

 

「本当にこの白色銀河が敵の本拠地だとすれば、この宙域‥‥暗黒銀河との境界面は、敵の第一次防衛線に相当するだろうからな‥‥よし、全艦に警報!!‥‥総員、戦闘配置だ!!」

 

 守は全艦に戦闘準備を命じる。

 

「了解!!全艦に警報!!総員、戦闘配置!!」

 

 ヤマト、まほろば、春藍の三艦の艦内に警報が鳴り響く。

 

「真田さん!!この機会に!!」

 

「わかっている‥‥この機会に、敵の航路のデータを是が非でも手に入れなければならない‥‥戦闘班は、うまく敵を撤退させるように交戦してくれ‥‥とどめは刺すな!!」

 

 真田は敵の撤退方向を知るため、撃沈ではなくわざと逃がす様に攻撃してくれと頼む。

 

「むずかしい注文ですが‥‥了解、何とかやってみます!!」

 

 撃沈、大破、航行不能ではなく、航行可能で逃がすという難しい注文ながらもやらなければ、敵の本拠地をつかめない。

 

 南部はショックカノンの威力を通常より下げて攻撃するようにした。

 

 それは、まほろば、春藍にも伝えられ、春藍はコントロールで無人艦のショックカノンの出力を下げた。

 

 暗黒星団帝国の艦艇は実弾攻撃には弱いので、ミサイル、魚雷の類の攻撃はしないようにも厳命した。

 

 

 こっちは手加減なのだが、向こうはおかまいなしに攻撃できるハンデがあったが、敵艦すべてを返す必要もないこともまた確かである。

 

 よって、前衛と中堅の艦艇は撃破しても構わないという判断をした。

 

 前衛は駆逐艦が三隻、中堅は駆逐艦が五隻、後衛が巡洋艦一、護衛艦八隻の艦隊であり、出力を落としているとはいえ、集中砲火を受けると駆逐艦レベルでは脆くも撃破されてしまう。

 

 この戦闘で前衛、中堅の駆逐艦は撃破され、後衛の部隊でも護衛艦三隻が沈められた。

 そして、この戦闘報告はある男の下に届けられていた。

 

 

白色銀河 某宙域

 

「地球艦隊、防衛網第一陣を撃破!!第一陣の残存艦、戦闘宙域外にいるものも含め、残りわずかです!!」

 

 オペレーターからの報告を聞いていたのは暗黒星団帝国・総司令官のサーグラス大将であった。

 

「そろそろいいだろう‥‥第一陣の残存艦に撤退命令をだすのだ!!そう、例の場所へ撤退するようにとな‥‥」

 

 サーグラスは残りわずかとなった第一陣の艦艇に撤退命令を下す。

 

「撤退命令、伝達完了‥‥」

 

「ですが、サーグラス様、よろしいのですか?敵を罠に誘い込むというのは理解できます‥‥しかし、この場所は‥‥」

 

 オペレーターが撤退命令を伝達している中、彼の副官が大丈夫なのかと訊ねる。

 

「黙るのだ!!‥‥これはサーダ様からのご命令なのだ‥‥私としても、一刻も早くグロータスの仇をとってやりたい‥‥だが、サーダ様の命令は聖総統閣下からのご意思にも等しい‥‥無視するわけにはいかないのだ‥‥」

 

 サーグラス本人にしても今回の作戦はあまり気が乗らない様子だが、国家元首に近い存在からの命令では、軍人として逆らうわけにはいかず、渋々従ったという様子だった。

 

 ましてや親友の仇を討ちたいという私情を挟むなどもってのほかだった。

 

 今は地球艦隊が自分たちの母星への到着をなんとしてでも防ぐことが優先される。

 

 

 サーグラスの撤退命令を受け、残存艦はワープにて指示された宙域へと撤退していく。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「空間歪曲反応を感知‥‥敵がワープにて撤退を始めたもよう」

 

「よし、空間スキャナーを起動し、敵の撤退先を突き止めろ‥‥副長、通信長、記録を頼む」

 

「「了解」」

 

「敵、ワープにより消失」

 

「空間歪曲の偏差値を記録‥‥これで、敵の航路ベクトルを割り出せるはずです」

 

 ヤマトと春藍でも同じ作業が行われているだろうから、多少の誤差は出ても大きな誤差は出ないはずだ。

 

 敵が現れてうまく撤退に追い込み、航路データを確保できた。

 

 今のところ順調なのだが、良馬としては腑に落ちない部分もあった。

 

(‥‥防衛網にしてはあまりにも戦力が脆すぎるというか、あっさりしすぎている‥‥反対の暗黒星雲側ではゴルバを七基も配置していたのに、その反対側はあれだけの数の艦隊‥‥)

 

(第一次防衛線とはいえ、その戦力があまりにも少なすぎる‥‥)

 

(先程の艦隊は駆逐艦八、護衛艦八、巡洋艦一のまるでパトロール艦隊規模でしかない)

 

(土星圏での戦いでは地球艦隊もそこまで多くの戦力を配置はしなかったが、前衛のヒペリオン艦隊でさえ、戦艦を置いていたのに‥‥)

 

(思い過ごしならいいんだが‥‥)

 

 妙な違和感を覚えながらも、折角手に入れた航路データなので、分析作業が行われた。

 

 今の地球艦隊には藁をも掴む思いだったからだ‥‥

 

 やがて、三艦が採取したデータがまとめ上げられ、報告会が行われた。

 

「まずはこれを見てくれ」

 

 モニターにはこの白色銀河の一角が表示される。

 

「敵の撤退方向‥‥そして距離から、敵が逃げた先はこの宙域だということになる」

 

 次にモニターの一角には敵の撤退方向の光点が表紙される。

 

「円の半径は誤差を含めても約50光年だ」

 

「結構絞ることが出来たな」

 

 この広い白色銀河の中からわずか50光年という範囲に絞ることが出来たことに感心する守。

 

「そうなんだが‥‥」

 

 真田が言葉を濁らせる。

 

「ん?何か問題でもあったんですか?」

 

 良馬が言葉を濁らせた真田の態度を見て、何か問題があったのかと訊ねる。

 

「うむ‥‥まず考えねばならんことは、その宙域に存在する恒星のことなんだが‥‥地球を占領している敵の兵士たちは、地球の大気・重力・温度など、地球の環境に完全に適応している」

 

 真田の言う通り、暗黒星団帝国‥‥デザリアム星人の外見は地球人と比べると肌の色を含め、全く異なる容姿をしているが、地球の環境には適応している。

 

 ただ、地球の医薬品に関しては不適合な部分があるが、それでもおおむね地球人と変わらない。

 

「敵の母星も、地球と太陽と同じタイプの恒星を巡る惑星の可能性が大だということだ」

 

「なるほど‥‥確かにそうですね」

 

 ガミラス、イスカンダルもサンザー(太陽)を回っている二連星の惑星だった。

 

 一方。ガトランティスは遊牧民の様な移動民族であり、あの要塞都市ガトランティスは科学文明で徹底的な居住環境が整えられていた。

 

 もしかしたら、創世記のガトランティス‥‥宇宙を旅する前はガトランティス民族も地球と同じような星に住んでいたのだろう。

 

 それが、環境の変化などでその星に住めなくなり、宇宙を放浪する遊牧民の様な民族に変わったのかもしれない。

 

「敵が地球を植民地・奴隷化目的で占領したというのなら、なおさらだな」

 

「同じタイプの恒星‥‥」

 

「うむ、かつてのガミラスもそうだったからな」

 

「じゃあ。この円の中から、地球と同じような恒星を見つけ出せばいいってことですか?」

 

「それがまったくないんだ‥‥」

 

 真田が事前に調べた結果、この円の中には地球と同じような恒星が存在していなかった。

 

「まったく?‥‥全然なかったんですか?」

 

「ああ‥‥多くの人員を使って何度も検証したが、見つけられなかった。この円の宙域には褐色矮星と中性子星ばかりで、生命体が存在できそうな星はありそうになかったんだ」

 

「褐色矮星‥ですか‥‥」

 

「うむ。元々、我々の太陽やサンザーのような黄色系列星は、星の種類の中ではかなりまれな部類に入る」

 

 真田の言うとおり、人類が存在するような星は奇跡的な偶然が重なりあって存在している。

 

 管理局が躍起になって他の管理世界になりそうな世界を探しているのもそういった魔法文明を持つ人類があまりにも少ないからだ。

 

 それ以外にも幻獣生物が存在している世界、地下資源が豊富でもその現地で採掘できる環境‥人類が降り立っても問題ない世界でなければならないという色々と条件があるためだ。

 

 そう言った点では地球連邦は通常人類が生存できないような環境で場所は限られるも宇宙服などで活動できるあたり、宇宙開拓技術にかんしては管理局よりも地球連邦の方が上なのかもしれない。

 

「統計では、宇宙にある星の半数以上が小さな褐色矮星だと言われているぐらいだ‥‥この宙域に、黄色星が完全にないというのは変だが‥‥まぁ、ありえないことではない」

 

「ですが、真田さん。この宙域に生命の誕生できる環境がないということは‥‥」

 

「罠の可能性があるということだ」

 

 良馬は自分が感じた違和感と真田の説明を聞いてやはり、敵はわざと自分たちに間違った航路データをとらせたのではないかと思ったが、まだこれが完全に罠である可能性がないわけではない。

 

「敵の本星でなくとも、この宙域にもしかしたら、ゴルバや以前、戦った宇宙要塞があるのかもしれません」

 

 良馬は敵の本星ではなくとも、ゴルバや以前撃破したあの中間補給基地の様な宇宙要塞施設がこの宙域に存在している可能性を示唆する。

 

「確かにその可能性も捨てきれないな‥‥どうしますか?艦長」

 

 真田は良馬が立てた仮説を否定せず、敵の本星でなく宇宙要塞の施設があることを含めて、守に指示を仰ぐ。

 

「どちらにせよ、敵母星の位置を知らぬ我々にはほかに進む道がない‥‥時間が切迫している今、危険を承知でも進まなければならん‥‥」

 

 このままあてもなく白色銀河をさまようわけにもいかない。

 

 守はたとえ、罠であっても今はこのデータを頼りに進まなければ、打開策がない。

 

 守は‥‥ヤマトはたとえ罠でもこのデータ通り、この褐色矮星へ向かうことにした。

 

 罠であってもそこに敵がいるのであれば、そこで新たなデータをとることができるかもしれない。

 

 守はその可能性に賭けた。

 

「そうか‥‥では再び、敵の罠の中へ、あえて飛び込まねばならんわけだな‥‥」

 

 方針が決まり、この後すぐにヤマトは敵の罠の中に飛び込むことになる。

 

「はい‥‥危険が待ち受けているのは確実です」

 

「山南艦長、月村艦長。問題の宙域にはヤマト単艦で進入し、春藍 と まほろば はここで待機しておいてもらう方がいいと思うのですが‥‥」

 

 古代は問題の罠が潜んでいる宙域にはまず、ヤマトが先行していき、その他の艦はこの宙域で待機するほうがいいのではないかと提案する。

 

「いや、我々も共に行こう」

 

「ここまで来て、置いてきぼりは酷いよ」

 

 山南も良馬もヤマトと共に罠が潜んでいる褐色矮星の宙域へと行くと言う。

 

「えっ?」

 

「考えてもみたまえ。この白色銀河は完全に敵の勢力圏内なのだ‥‥たかがこれだけの艦隊を分散して温存したところで、その結果はしれている」

 

「山南艦長の言うとりだ。これから行く先に罠があるのであれば、一致団結して危険に立ち向かう方を選ぶべきだ」

 

「山南艦長‥月村艦長‥‥」

 

 山南も良馬も罠だと知りながらもあえてヤマトと共に褐色矮星の宙域へと進むことを選んだ。

 

「‥‥了解しました。よし、航海長、問題の渦状腕間隙に針路を定めろ。ワープ予定航路を各艦に転送」

 

「了解。針路、十時方向の渦状腕間隙に固定」

 

 島が褐色矮星の宙域へワープ航路をセットする。

 

「航路、転送完了!!」

 

「これより、本艦隊は敵の領域、褐色矮星へと向かう」

 

 地球艦隊は敵本星を求め、あえて敵の罠があるとされる褐色矮星宙域へと向かった。

 

 敵本星の位置を掴む手掛かりを求めて‥‥

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。