星の海へ   作:ステルス兄貴

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百六話 兵器製造プラント

 

 敵本星の根拠地の手掛かりを求めて褐色矮星宙域へと向かった地球艦隊。

 

 その頃、地球の彼方此方では、相変わらず占領軍とパルチザンとの間で戦闘が行われていた。

 

 しかし、その他の一般市民に関しては、生活の一部に何かしらの制限はあるものの占領前と同じような生活を送っていた。

 

「ティアナ‥‥大丈夫かな‥‥?」

 

 フェイトはパルチザンに参加したティアナの身を案じていた。

 テレビや新聞、雑誌では当然、パルチザンの活動は報道されない。

 

ティアナは生きているのか?

 

けがを負っているか?

 

それとも戦死してしまったのか?

 

食事はちゃんと摂っているのか?

 

 ティアナに関する情報は源三郎から中嶋家へとたまにくる暗号文の手紙によってパルチザンの活動を知ることが出来、ティアナの現状もそれでなんとか知ることが出来ているのだが、その手紙もそう頻繁に来るものではない。

 フェイトがティアナの身を案じるのも無理はなかった。

 

「フェイトママ、元気ないけど大丈夫?」

 

 ヴィヴィオは心配そうに訊ねる。

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 ヴィヴィオの前ではフェイトも空元気ながらも気丈にふるまう。

 

 占領されている現状で自分が不安になれば、ヴィヴィオも不安にさせてしまう。

 

 フェイトはヴィヴィオを守る意味でも平然を装うしかなかった。

 

(やれやれ‥‥)

 

 そんなフェイトを見た紅葉は桜花やヴィヴィオを連れ、気分転換にBRAVE DUELをしないかとフェイトを誘った。

 

 フェイトもヴィヴィオの気分転換になるのであればということで紅葉たちと共にHOBBY SHOP Testarossaへと向かった。

 

 占領下ながらもHOBBY SHOP Testarossaは営業をしていた。

 

 ただ、プラモデルの中で地球防衛軍の宇宙艦艇のプラモデルだけは、占領軍の検閲に引っ掛かり店頭にはおいていない。

 

 フェイトたちはBRAVE DUELをするためにゲームコーナーへと行くと‥‥

 

「やったわ!!ついにレベルがAクラスになったわよぉ~!!」

 

 と、BRAVE DUELのアバターデータを見て歓喜のオネエ口調を出し喜んでいる占領軍の男の姿がそこにあった。

 

 それはいつぞや、ティアナと共に町へ買い物に行った時に出会ったあの身長二メートル前後の、巨漢の兵士だった。

 

「「「‥‥」」」

 

 今回、初めてオネエ口調で喋る大男‥‥しかも地球人ではなく、デザリアム星人を見て桜花、紅葉、ヴィヴィオの三人は唖然としている。

 

(他の星でもオ○マっているんだ‥‥)

 

 紅葉はオネエ口調の兵士を見て、意外にもそう考えることが出来る余裕があった。

 

(やっぱ、強烈なインパクトを与えるわね‥‥あの人は‥‥)

 

 フェイトは二回目の出会いであるが、相変わらずあの容姿、体系、そして口調は大きな衝撃を与える。

 

 しかも意外なことが、彼は先程の言葉からBRAVE DUELをプレイしていたみたいだ。

 

 ただアバターカードに表示されているのは漂白されたような肌の色のスキンヘッドに眉がなく、目の周りが奇妙な隈取りがされているような、デザリアム星人の顔立ちではなく、地球人と同じような容姿の男が描かれていた。

 

 それでも、見た目は白人風の男性で、身長は190cm、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンのへんた‥‥もとい、筋骨隆々な男性の姿が描かれていた。

 

 デザリアム星人の容姿では、コンピューターが認識しなかったのだろうか?

 

 それでも、あのオネエ口調の男本人が喜んでいるのだから別に問題はないだろう。

 

 喜んでいるオネエ口調の兵士を横目に自分たちもBRAVE DUELをプレイしようとしたら、店に武装した兵士たちが入ってきた。

 

 オネエ口調の兵士と違い、彼らがBRAVE DUELをプレイまたは買い物に来たという感じには見えなかった。

 

「ここの責任者は誰だ!?」

 

 一人の兵士が店の責任者‥つまり、店長のセフィリアを出せという。

 

「なんでしょうか?」

 

 武装した兵士の前にもかかわらず、セフィリアはビクつく様子もなく、兵士の前に出る。

 

「お前だな!?‥‥地球占領軍の総司令部からの命令を伝える!!本日をもってBRAVE DUELなるゲームは即刻運営を中止せよ!!この命令に従えぬ者はパルチザンとみなし、それ相応の刑罰は覚悟してもらうぞ!!」

 

 占領軍の総司令部はBRAVE DUELをパルチザンの戦闘訓練と判断してその運営を中止するように通達を出してきた。

 

「そんな横暴な命令には従えません!!貴方たちが来てから地球は‥‥パルチザンでない人々は常に緊張と不安で精神的に疲れているんです!!その緊張と不安を解消するためにも、BRAVE DUELは数少ない娯楽なんです!!それさえも取り上げようというのですか!?貴方たちは!?」

 

 セフィリアはBRAVE DUELの運営を中止に関しては拒否すると兵士に言う。

 

「貴様!!先程言ったはずだぞ!!命令を拒否する者はパルチザンと認め、それ相応の刑罰に処するとな!!」

 

 兵士はセフィリアに銃をつきつけ、大声をあげて、彼女を脅す。

 

「これが最後通告だ!!直ちにBRAVE DUELの運営を中止しろ!!」

 

「出来ません!!」

 

「そうか、あくまでも命令に従わないというのだな?ならば、かまわん!!こいつを連行しろ!!ついでに店にいる者も全員だ!!抵抗する者はパルチザンとみなし射殺しても構わん!!」

 

 兵士がセフィリアや店にいる者全員を連行しようとした時、

 

「ちょっと待ちなさい、貴方たち」

 

 そこに待ったをかける人物がいた。

 

「なに!?っ!?」

 

 兵士は待ったをかけられたことで不機嫌そうな顔をするが、すぐにその人物の顔を見て顔面蒼白となる。

 

「め、メイトリック憲兵大佐!!」

 

 兵士たちは慌てて敬礼する。

 

 兵士たちに待ったをかけたのはあの巨漢のオネエ口調のデザリアム星人だった。

 

((大佐!?))

 

 フェイトと紅葉はあのオネエ口調のデザリアム星人‥いや、彼の階級を聞いて驚いた。

 

(大佐って確か、管理局で言うと一佐よねっ!?)

 

(このオ○マが大佐!?しかも憲兵!?)

 

 フェイトと紅葉が驚いている間にもオネエ口調の士官、メイトリックと兵士との間のやりとりは続いていた。

 

「大佐‥ですが、BRAVE DUELは‥‥」

 

「わかっているわ。でも、実際にBRAVE DUELをやってみてわかったの‥‥これは決してパルチザンを育成するような敵性内容じゃないって‥‥貴方たちもやってみなさいな、私たちの星にはない素晴らしいゲームだったわよぉ~」

 

「い、いえ‥‥」

 

「我々は‥‥」

 

「遠慮します‥‥」

 

 同じ星の人間でもあのオネエ口調の大佐はちょっと取っつきにくいようだ。

 

「そう?でも、そこの責任者の女の人が言うように、私たちは占領下でこの星の人たちに様々な制限を行っているわ。その中でさらに娯楽を奪っては、彼らの不満を高めて、余計にパルチザンを生み出す結果になっちゃうわよぉ~」

 

「は、はぁ~‥‥」

 

「いい、銃や暴力ばかりで脅すだけがやり方じゃないわよ」

 

「で、ですが‥‥」

 

「BRAVE DUELの件については、私からカザン総司令に直訴するわ。貴方たちはもう戻りなさい」

 

「は、はい」

 

「わ、わかりました‥‥」

 

「では‥‥」

 

 メイトリックは兵士たちを帰らせた。

 

「騒がせちゃってごめんなさいねぇ~」

 

「い、いえ‥その‥‥あ、ありがとうございました」

 

 セフィリアはメイトリックに礼を言う。

 

 なんだかんだで、メイトリックのおかげでBRAVE DUELは運営を中止しなくてもよさそうだからだ。

 

 それに自分を含め、来店しているお客たちも収容施設送りにならずに済みそうだった。

 

「気にしなくてもいいわ。私もBRAVE DUELが中止になっちゃうのは悲しいから‥また、来るわね。それじゃあ‥‥」

 

 メイトリックはこの後、占領軍総司令のカザンにBRAVE DUELの事を報告しに行くため、セフィリアにウィンクして店を後にした。

 

(敵の中にも話せば分かってくれる人?もいるんだ‥‥)

 

(オネエ口調だけど、あの大佐は、いい人?だったんだ‥‥)

 

 フェイトと紅葉は去っていくメイトリックの後姿を見て、占領軍の中にも話の分かる者もいるということが分かった。

 

 一応、メイトリックのおかげなのか、フェイトたちは連行されることもなく、BRAVE DUELもプレイすることが出来た。

 

 その後、メイトリックはカザンをどう説き伏せたのかは分からないが、BRAVE DUELの中止命令は撤回された。

 

 メイトリックの様に占領下でも民衆に飴を与える者もいれば、鞭ばかり与える者もいた。

 

 防衛軍とデザリアム軍‥両軍のコスモガンにおいて、デザリアム軍のコスモガンは雨などの水に弱いという弱点が露見してから防衛軍と同時性能のコスモガンが地球の生産施設で生産され、それが占領軍の兵士に分配されるようになった。

 

 しかし、そうした生産施設はパルチザンの攻撃目標となっていた。

 

 だが、生産施設は多数あり、一時に何か所も襲撃できない。

 

 また、占領軍も生産施設がパルチザンの攻撃目標であることをこれまでの襲撃で学び、そうした施設の警備も強化していた。

 

 更に、他の生産施設が襲撃を受け、使い物にならなくなったため、無事な生産施設には襲撃された施設のノルマが追加され、施設に収容された技師や作業員の負担も増えていった。

 

「こら!!休まず働け!!」

 

「ぐっ‥‥」

 

 とある生産施設では太った体型の占領軍の兵士が強制作業をさせられている作業員たちに鞭を振るう。

 

「先週よりも生産率が落ちているぞ!!貴様ら!!なに怠けている!?働け!!この劣等民族の野蛮人が!!」

 

「うっ‥‥」

 

 鞭を振っている見張りの占領軍兵士は作業員が怠けているというが、決して彼らは怠けているわけではない。

 

 パルチザンの破壊工作により、他の生産施設が襲撃され、その施設の生産分のノルマが勝手に追加されているだけなのだ。

 

「まぁ、貴様らも皮肉だな‥‥お前たちが作った武器で、お前たちの仲間が死んでいくのだからなぁ‥‥ハハハハハ‥‥」

 

 ニヤリと下品な笑みを浮かべパルチザンを‥地球人を殺すための武器を地球人である自分たちが作っていることを、皮肉を交えて言う。

 彼が悦に浸って笑いをしている中、

 

「ムノー曹長殿」

 

「なんだ?」

 

 ムノーと呼ばれた下士官に声をかける兵士がいた。

 

「占領軍総司令本部より、通達です」

 

 兵士は電文が書かれた紙をムノーへと渡す。

 ムノーはその電文の内容に目を通す。

 

「ふむ‥‥こ、これは‥‥うーん‥‥面倒なことになった‥‥」

 

「何かあったのですか?」

 

「明日、総司令部から情報将校がこの生産施設へ視察に来られる‥‥例の新兵器の一号機が量産されたと総司令部に通達したからな。それを見に来るらしい」

 

「はぁ‥‥」

 

「とりあえず、その日は生産ラインを止め、あの奴隷どもは地下の収容施設に閉じ込めておけ」

 

「はっ!!」

 

「いいか、決してこの施設の労働環境を本部の視察官に知られてはならぬぞ」

 

「承知しております」

 

 占領軍は地球占領にあたっていくつかの規律を設けていた。

 

 たとえ、自分たちの文明に劣る星であっても軍は規律がなければ、ただの賊に成り下がる。

 

 その中で、占領時での捕虜の扱いについても記載されており、一日八時間の労働、十分な食事と休息などの事項が盛り込まれていたが、どうもムノーの話から、この生産施設はその規約を待っていない気概が見られる。

 

 他にも無抵抗な現地住民に対する項目もあるのだが、女子供に対する性的暴行については記載されていなかった。

 

 記載されていなくても彼らの身体の事情からその心配はなかった。

 

 最も彼らの本国ではスカリエッティのおかげかクローンの生成も順調に進んでおり、一般市民に関しては次々とクローン体であるが、半機械の身体から生身の身体への転換が始まっていた。

 

 しかし、前線の将兵たちは変わらぬ体で戦っていた。

 

 ムノーはコスモガンの生産ラインの現場から地下の特別生産ライン区画まで降りる。

 

 その特別区画では対パルチザン用の新型兵器が作られていた。

 

そして‥‥

 

「おい、女!!」

 

「‥‥」

 

「おい、返事ぐらいせんか!!」

 

「‥チィッ‥‥なに?一々、大声を上げなくても聞こえるわよ」

 

「‥‥」

 

 特別生産区画には海鳴の月村家の屋敷でその身柄を拘束された忍の姿があった。

 

 もちろん、彼女の傍らにはノエルの姿もあった。

 

 忍は技術者としてこの生産施設へと送られ、そこで新型兵器の開発に従事させられていたのだった。

 

「貴様が考案したあの新型兵器‥栄えある第一号機であるが、その性能はどうなのだ?ちゃんと機能するのだろうな!?」

 

「だったら、自分の目で確かめたらいいじゃない‥‥ノエル」

 

「‥はい」

 

 ノエルは無表情で作られたばかりの新兵器のコックピットへと搭乗し、搭載されている武器の試射とその新型兵器の性能を披露する。

 

「ほぉ~素晴らしい‥‥実に素晴らしい性能ではないか!!これが量産された暁には目障りなパルチザンや未確認生物など、一気に一掃してやるわ!!そして、この生産施設の指揮官である私の地位はもっと上がる!!感謝するぞ、女‥ハハハハハ‥‥」

 

「「‥‥」」

 

 忍は悔しそうに顔を歪めるが、ノエルは相変わらず無表情のまま‥‥しかし、人の心を持ち合わせない自動人形であるノエルも人の心で言い表すのであるならば、忍同様、腸が煮えくり返っている事だろう。

 

 技師として作るからには完ぺきなモノを作らなければならない。

 

 だが、自分がこうして作り上げた兵器が同じ地球人を殺す‥‥

 

 夜の一族とはいえ、自分も地球人なのだ。

 

 その地球人が地球のために戦っている人たちに向けて間接的とはいえ、自分は銃口を向けなければならない。

 

 これほど悔しいことがあるだろうか?

 

 いや、忍だけではない。

 

 あちこちの武器生産施設で強制労働させられている技師・作業員全員が思っている事だろう。

 

 その頃、パルチザン司令部では、様々な情報源から各地の武器生産施設の情報が収集されていた。

 

 その中で、ある武器の生産施設では、これまでにない新型兵器の開発が進められているという情報がもたらされた。

 

 しかもその生産施設で働かされている作業員はブラック企業顔負けの労働環境で強制労働を強いられていると言う。

 

 新型兵器の開発なんて、聞き捨てには出来ない。

 

 それに、ブラック企業顔負けの労働環境だなんてそれも許しがたい事実である。

 

 食事や休息だってまともに与えられているのか?

 

 更には事故による怪我や過労による病気だって、ちゃんと治療されているのかさえ怪しい。

 一刻も早く、彼らの救助と新型兵器の破壊が急務となった。

 

 ただ、一つここでパルチザンにも問題が起きた。

 

 ここまでパルチザンの活躍を引っ張ってきたポ○太くん型戦闘スーツに不具合が生じるスーツが出始めた。

 

 このスーツも機械の塊であり、定期的なメンテナンスが必要なのだが、この戦闘スーツ‥開発にあの真田や大山が絡んでいるためか、かなり専門の知識が必要なのだが、パルチザンのメンバーの中でこの戦闘スーツのメンテナンスを完璧にこなすことが出来る技師が不足していた。

 

 ポ○太くん型戦闘スーツはパルチザンの主力なのだが、いかんせんその出動回数も多ければ、占領軍兵士の恐怖の対象になっているので、被弾率も高い。

 

 幸い防御力が高いので、中に乗っている人間が死傷することはないのだが、被弾したまま、十分なメンテナンスが行われなければ、強力な戦闘スーツでも機能障害を起こす。

 

 パルチザンは24時間、交代で占領軍と戦っているので、戦闘スーツのメンテナンスが追い付いていないのも現状である。

 

「どうだ?様子は?」

 

「うーん‥‥ダメです‥‥整備に必要な物資が不足していています。こいつを動かすには別のスーツから部品を取り出さないと‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

「せめて、この戦闘スーツの開発に携わった人がいたら、心強いんですけどね‥‥」

 

 今では、大破した戦闘スーツの部品を流用してスーツの修理をなんとかしているが、それでも人員と物資が足りない。

 

 この戦闘スーツの開発者である真田と大山は宇宙の彼方‥‥

 

 忍も今は捕らわれの身となっている。

 

 その他にもこの戦闘スーツの開発に関係した月村グループの技師たちも忍と同じ収容施設に収容されている。

 

 まだ、本格的に正式採用するまえの試作戦闘スーツだったと言うことがツケで回ってきた。

 

「たったこれだけのスーツで大丈夫でしょうか?」

 

 ティアナが不安そうに北野に訊ねる。

 稼働できるスーツは決して多いとは言えない。

 

「ん?」

 

「だって、次の襲撃目標には敵の新型兵器があるんですよね?それにそこで強制労働をさせられている人たちの救助もありますし‥‥」

 

「‥‥」

 

 確かにティアナの言う通り、敵の新型兵器というものがどんな兵器なのかまだ詳しい情報がない。

 

 しかし、強制労働をさせられている捕虜の数は500名と判明している。

 

 その大勢の人々を守りながら、ここまで連れてこなければならない。

 

 途中で敵の襲撃は当然あるものだと考えなければならない。

 

 外部の陽動、退路の確保、施設内の制圧に捕虜の救助‥‥

 

 一つの任務の中でやらなければならない事が多い。

 

 だが、この作戦を中止するわけにはいかない。

 

「‥‥それでも、やらなければならない‥‥たとえ、戦闘スーツ全てをなくすことになっても‥‥」

 

「‥‥」

 

「大丈夫、なんとか味方の被害を最小限で抑える作戦を立案してみるさ‥‥みんなの意見も聞きたい‥‥ブリーフィングをしたいから集まってくれ」

 

 北野は作戦に参加する皆を集め、地図をテーブルの上に広げると、さっそく作戦立案のための会議を行った。

 

 翌日になり、パルチザンのもとに敵が開発している新型兵器は戦車であることが判明した。

 

 開発の趣旨はやはり、あの戦闘スーツに対抗できるための戦車がコンセプトらしい。

 

それを聞き、何としてでもその新型戦車は破壊しなければならない。

 

 この強力な戦闘スーツを上回る戦車なんて作られたら、それこそ今後の活動に大きな支障と犠牲者を出すことになるからだ。

 

 パルチザンたちはありったけの装備を持ち、新型戦車製造工場へと向かった。

 

 同じ頃、占領軍士官が使用している官舎では‥‥

 

 忍同様、暗黒星団帝国の囚われの身となっている雪が窓の外を呆然と見ていた。

 

(こうしている間にも地球の人の命が奪われているのね‥‥)

 

 世界各地にて、パルチザンと占領軍との間で戦闘が起きている。

 

 戦闘が起これば当然、死傷者は出ている。

 

 アルフォンに目をつけられていることで、味方に情報を送りにくくなっている雪は無力感を覚える。

 

 しかし、自分にはまだやらなければならないことがある。

 

 それはあの地球に打ち込まれたハイペロン爆弾についての情報を手に入れることだ。

 

 占領軍の様子を見る限り、パルチザンは未だにハイペロン爆弾の占領には至っていないみたいだ。

 

 アルフォンは階級が少尉という下級士官であるが、情報部に所属しているということで、様々な情報を知っている筈だ。

 

 その中には当然あのハイペロン爆弾の情報を持っている。

 

 自分がアルフォンの下を去るのはハイペロン爆弾の情報を得てからだ。

 

 雪はそう心の中で決心していた。

 

 そんな時、部屋の扉が空き、アルフォンが入ってきた。

 

「どうだね、体調の方は?」

 

 アルフォンは雪の体調の具合を訊ねる。

 

「元気ですわ‥‥」

 

 負傷した怪我はすっかり癒えたので、体調に関しては問題なかった。

 

 しかし、精神面ではこうして敵の手に捕まっていることで、やや疲れている。

 

「ふっ‥そうは思えないがね‥‥今日も顔色が良くないよ‥‥」

 

 アルフォンはそうした雪のメンタル面も見抜いていた。

 

「‥‥心配なのかね?パルチザンにいる仲間たちのことが‥‥?‥‥それとも、君が考えているのは飛び立って行ったあの艦のことかな‥‥?」

 

「‥‥」

 

 確かにアルフォンの言う通り、パルチザンにいる北野たち、仲間の事も心配だし、宇宙のはるか彼方へと旅立ったヤマトの事も気になる。

 

「‥‥まぁ、いい。来たまえ。今日は君を外へ連れて行ってあげよう‥‥」

 

「外へ?」

 

 アルフォンは雪に意外な事を言い出す。

 

 捕虜の身である自分を外へ連れ出すというのだ。

 

 もしかしたら、怪我が治ったので、収容施設にでも移送するのだろうか?

 

 そんな思いが雪の脳裏をよぎっても不思議ではなかった。

 

 だが、アルフォンの目的は雪の思惑とは異なっていた。

 

「ああ、僕は今日、ある場所を視察せねばならん‥‥そこに同行してもらいたい」

 

 アルフォンは雪を収容施設へ移送するのではなく、公務である場所の視察をするので、その視察に雪も連れていくのだと言う。

 

「‥‥私が逃げるかも、とはお考えにならないのですか?」

 

「‥‥」

 

 もちろんその可能性はアルフォンだって抱いている。

 しかし、彼には雪は絶対に脱走することはないと確信していた。

 

「お答えにならないんですね‥‥」

 

「もし、逃げる気があるのなら、君ならこの建物からでもうまく逃げ出すことが出来るだろう‥‥違うかね?」

 

「‥‥」

 

 アルフォンは雪が度々、この建物から出てパルチザンに情報を送り、戻っていたことを密かに知っていた。

 

 先程、自分が言ったように雪はなんどもこの建物から出ている。

 

 逃げようと思ったらそのまま逃げることが出来る。

 

 にもかかわらず、彼女は再びこの建物に戻ってきている。

 

 ならば、雪には自分の下から離れない目的があるのだとアルフォンはそう読んでいた。

 

 しかし、アルフォンはそれを雪に訊ねないし、総司令部にも雪の件について報告を入れていない。

 

 遠回しに雪に対して、『自分は知っているんだぞ』と心理的に訊ねるだけだ。

 

 雪自身もアルフォンが、自分が行っていた諜報活動を既に知っている事を掴んでいた。

 

 だからこそ、最近はその活動を休止していたのだ。

 

 互いに互いの事を知っていながら問い詰めることもしない。

 

 まるで仮面夫婦の様だ。

 

「フッ‥‥ほら、君だって同じだよ。僕の質問には答えてくれない‥‥それに、今日はどちらにしても同じだよ‥‥これから僕たちが向かう場所は広大な砂漠の中央にあるのだからね‥‥」

 

「砂漠?」

 

 そして、アルフォンは雪をエアーカーに乗せて視察場所へと赴いた。

 

 関東第二クレーター砂漠。

 

 そこは2198年にガミラスの遊星爆弾が直撃したことによってできた巨大なクレーターでその直径は約四十六キロにも及ぶ。

 

 コスモクリーナーのおかげで放射能はないが、そのクレーターには何故か草木が今でも生えていない砂漠化した土地になっていた。

 

 やがて、肉眼でも今回の視察先の施設が見えてきた。

 

「これは‥‥?」

 

「製造プラントだ‥‥ここではあるモノを作っている‥‥」

 

「あるもの‥‥?」

 

「見ればわかる‥‥」

 

 やがて、アルフォンと雪を乗せたエアーカーは生産施設の前に到着した。

 

「これは、これは、アルフォン少尉。お待ちしておりました」

 

 施設の出入り口で二人を出迎えたのは愛想笑いを浮かべた男だった。

 

「出迎えごくろう‥ムノー曹長」

 

「いえいえ、わざわざお越しいただいて光栄でございます」

 

「うむ‥それで、例の新兵器の第一号機が完成したと聞いた‥‥カザン総司令もあの新兵器には大いに期待している。それはつまり、君の手腕に期待しているということだ」

 

「はっ、粉骨砕身、帝国のため、かならずや、あの新兵器の量産を整えてみせます!!」

 

 ムノーは自分が頑張っているかのように言うが、実際に働いているのはこの施設に収容され、強制労働をさせられている地球人である。

 

「おや?そちらの地球人は誰ですかな?新しい囚人ですか?」

 

「いや、私の同行人だ‥‥彼女の事は構わず、さっそく見せてくれないか?」

 

「はっ、ではこちらに‥‥」

 

 ムノーはアルフォンと雪を新兵器が置かれている部屋へと案内する。

 地下の大きな実験場には新型の兵器‥‥対パルチザン用の新型戦車が置かれていた。

 

「あれは‥‥歩行戦車‥‥!!」

 

 新型戦車は暗黒星団帝国の三脚戦車同様、キャタピラーやタイヤの類ではなく、ロボットの様な脚を持つ戦車でその見かけは虫のようにも見える。

 

 大きさは対パルチザン用と言うことで、パトロール戦車よりも小さい。

 

 戦車と言うよりも戦闘アーマーと言った方が正しいかもしれない。

 

「ここは‥‥兵器工場なのね!!」

 

「そうだ‥‥」

 

「あなたたちは今のまでは飽き足らず、また新しい兵器を‥‥」

 

「誤解のないように言っておくが、この工場の運営に関しては僕も本意ではない‥‥この計画を推し進めているのは、占領軍総司令官であるカザン総司令だ。僕は現場を任されていたにすぎない」

 

 アルフォンは自己弁護するかのように新型戦車の開発プロジェクトに関しては深くかかわっていないと言う。

 

 確かに地球製のコスモガンの製造案に関してはアルフォンの提案であったが、新型戦車に関して、彼は提案していない。

 

 カザンは神出鬼没なパルチザンと兵士たちが恐れている未確認生物に手を焼き、新型戦車の開発を推し進めたのだった。

 

「手をかしているなら、同じことです」

 

 雪はアルフォンの自己弁護を蹴って、たとえどんな理由があるにせよ、こうして現場を任されているのであるならば、十分関係者であると言う。

 

「‥‥」

 

 アルフォンだって、雪に言われなくとも自覚しているのか、それ以上は何も言わない。

 

「新型戦車の試作機は既に完成している。威力も証明済みだ。あそこにおかれているのは量産機の第一号機だ‥‥」

 

「‥‥」

 

「だが、私が見せたいのは戦車ではない‥‥ここの施設には、この戦車や武器を作るための労働者たちがいる‥‥今日は視察のため、製造ラインを停止しているので、今は最下層の地下収容施設にいる」

 

「地下‥‥収容施設?」

 

「見たまえ‥‥彼らだ」

 

 モニターに表示された地下収容施設の防犯映像には雑居房に押し込められた大勢の地球人技師、労働者の姿が映し出されていた。

 

「っ!?あれはっ!?」

 

「そう‥‥彼らはすべて奴隷となった地球人たちだ‥‥すなわち、この戦車もここで作られている武器もすべて君と同じ、捕虜になった地球人が作っているのだよ‥‥」

 

「‥‥」

 

 雪はこの新型戦車がまた大勢の地球人の命を奪うのかと思うと悔しくてたまらなかった。

 

 しかもこの戦車を作っているのが暗黒星団帝国の技師ではなく、自分と同じ地球人であるということが許せなかった。

 

 だが、まだ目的が果たせていない以上、雪はグッと耐えるしかなかった。

 

 その頃、この兵器製造工場の近くでは、既にパルチザンたちが集結していた。

 

「まさか、こんな砂漠のど真ん中に兵器工場を作っているとはな‥‥」

 

 古野間が双眼鏡で目標のプラントを確認しながら呟く。

 

 出来ればガセネタであってもらいたかったが、現実は非情で、実際に彼らの目の前には兵器工場が存在していた。

 

「元防衛軍の採掘プラントを改装して使っているようです‥‥情報ではあの施設には捕虜になった人のうち、500人の人が働かされているそうです」

 

「周りの警備状況はどうですか?」

 

 ティアナが工場周辺の警備状況を訊ねる。

 

「まずまずってところだね。戦力は予想していたものとそう変わらないみたいだ‥‥あとはうまく潜入できるかと、退路を確実に確保することにこの作戦の成否がかかっている」

 

「今回は戦闘スーツが不足していますからね‥‥」

 

 戦闘スーツ以外はこれまで敵の装備品や武器の生産施設を襲撃し、それを奪ったりして、それなりの数を揃えてきたが、それでも不安はある。

 

「なあに、あのスーツがなくても、これまでの実戦がいい訓練になっただろう?最初は素人だったお前さんを含めて、みんなもう一人前の空間騎兵だ。なにより、優秀な指揮官がいるしな、そうだろう?北野隊長」

 

「よしてくださいよ。からかうのは‥実戦じゃ、古野間さんにはとうてい敵いません」

 

「北野さん」

 

「なんです?」

 

「新型兵器って聞きましたけど、具体的にあの工場では何を生産しているんですか?」

 

 ティアナが今回の目的の一つである破壊すべき敵の新型兵器について北野に訊ねる。

 

「うん‥あそこでは、我々パルチザンを討伐するための新型戦車の開発をしているとの情報を掴んだ‥‥これまでにない強力な戦車をね‥‥」

 

「新型‥‥戦車‥‥」

 

 ティアナはこれまでの戦闘で敵の三脚戦車やパトロール戦車を見てきた。

 

 当然、搭載されている武器の威力も‥‥

 

 いずれの戦車も空を飛べない人間で相手をするには骨が折れる、手を焼くどころか、対応を間違えたら、死ぬレベルの強力な陸上兵器‥‥

 

 もちろん、管理局では採用されていない兵器だ。

 

 その強力な陸上兵器の新型があの工場で生産されている。

 

 なんとしてでもあの工場は破壊し、生産された戦車も鹵獲‥または破壊しなければならない。

 

 戦車と聞いてティアナの脳裏にあの時‥ハイペロン爆弾を占拠しようとして攻め込んだが、逆に返り討ちにあった仲間の姿が過ぎる。

 

 彼らにとどめを刺したのも敵の戦車部隊だったからだ。

 

 しかし、ティアナは恐怖に呑まれまいと頭を振り、深呼吸をして事前に決められて作戦内容を思い浮かべ、あの時の光景を忘れるようにした。

 

「俺たちパルチザンを倒すための戦車を同じ地球人が作らされているわけか‥‥胸糞悪くなるぜ‥‥」

 

「私もです‥‥それにこの環境下ではあそこに捕まっている人たちは逃げ出そうとしてもこの砂漠では生きて都市部までたどり着けないでしょうし‥‥」

 

「でも、周囲から隔離されているおかげで、警備が比較的に薄いですからね‥‥敵はこっちの情報網をなめているのか、我々がここを嗅ぎつけたことに気付いていません」

 

 地球の彼方此方に存在する生産施設の中でもあの工場はトップシークレットレベルに値する工場のためか、味方でもあの工場の存在を知っている者はごくわずかなのだろう。

 

 それに周囲が砂漠というこの環境は自然とあの工場を陸の孤島にしていた。

 

 そのため、情報が漏れにくいのだが、警備する人間も限られてしまう諸刃の剣となっていた。

 

 そして、今回は運悪く、工場の存在をパルチザンに掴まれてしまった。

 

「そういえば、この情報はどこから?‥‥あの娘か?」

 

 古野間は北野にあの工場の情報は雪からもたらされたものなのかを問うと、

 

「いえ、別の情報源からです」

 

 今回の情報は雪からではないと答える。

 

「あの人‥‥『白い花』は、あの一件以来ずっと沈黙しています。無事だといいんですが‥‥」

 

「ああ、俺がくたばる前にもう一目会いたいところだしな‥‥」

 

「?」

 

 北野と古野間の会話から、二人はこれまで自分たちに情報を与えていた『白い花』の正体を知っている様子で、会話の内容から『白い花』の人は女性だと推察された。

 

 しかし、『白い花』が誰なのか皆目見当がつかないティアナは首を傾げた。

 

「くたばるなんて、縁起の悪いこと言いっこなしですよ。さっ、行きましょう!!」

 

「‥‥そうだな」

 

「はい!!」

 

 北野、古野間、ティアナの三人は新型戦車及び施設の破壊、そしてその施設に囚われている人たちの救助のため、敵、生産施設へと向かった。

 

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