星の海へ   作:ステルス兄貴

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百七話 プラント破壊・救出

 

 

 暗黒星団帝国、地球占領軍はメガロポリス東京にて神出鬼没で活動をしているパルチザンに手を焼いていた。

 

 また、彼らが使用しているボ○太くん型戦闘スーツを未知の生物兵器の類と勘違いしているのだが、こちらもパルチザン同様、手こずっており、占領軍の兵士にはある意味でトラウマを植え付けられていた。

 

 カザンは地球占領軍の総司令としてこれらの不穏分子の一掃をするために、新兵器の開発を推し進めていた。

 

 開発場所は関東の某所にあるガミラスの遊星爆弾によって作られた巨大なクレーター部分にある採掘プラントを改装したところにあり、そこではブラック企業顔負けの労働環境で捕虜となった技師たちが強制労働をさせられていた。

 

 強制労働をさせられて技師の中には忍の姿もあり、彼女は製造プラントの中でも最重要機密にあたいする新型兵器‥‥虫のような外見の四脚歩行戦車の開発をさせられていた。

 

 ただ、この製造プラントの存在は、パルチザンはもとより、味方の占領軍の内部でも一部の者しか知らないほどのトップシークレットだった。

 

 しかし、この製造プラントの存在はパルチザンに知られることになり、パルチザンは新兵器及び施設の破壊、そして強制労働をさせられている捕虜の開放のため、動き出した。

 

 まず、内部に潜入し、敵の新型戦車の破壊と捕虜の開放では、古野間、北野、ティアナらの少数精鋭のチームが行い、数少ないボ○太くん型戦闘スーツは退路を確保する別動隊に優先的に分配された。

 

 潜入チームは下水道から内部へ潜入を試みた。

 

 戦闘スーツなしでの潜入‥しかも下水道から‥‥

 

 マンホールを開けた時、ティアナは思わずその臭いに顔をしかめた。

 

 しかし、『臭いから嫌です』とは言ってはられない。

 

 北野を先頭に潜入チームは進んで行く。

 

 そして、無事に製造プラントへの潜入に成功した。

 

 秘密厳守のため、この製造プラントに割り当てられた警備兵の数が圧倒的に少なく、下水道まで警備の手が回っていなかった。

 

 また、パルチザンにこの製造プラントが見つかるわけがないと高を括っていたのか罠の類も無かった。

 

「こちらスペード1、プラント内部の侵入に成功。予定通りだ」

 

 北野が別のチームに現状を伝える。

 

「ハート1、了解」

 

「宗像、退路の確保は重要だ。救出した捕虜を運び出さなきゃいけないしな‥‥いいか、外の確保はまかせたぞ!!」

 

「了解」

 

「ここまでは順調ですね」

 

「問題はここからだな‥‥」

 

 北野は携帯端末を稼働させ、この製造プラントの地図を表示する。

 

「新型戦車の開発工場と捕虜収容施設はここ‥‥でも、建物の左側‥‥戦車開発区画は捕虜監視システムと連動して、自動で動く銃座が多数設置されている」

 

「さすがに警備兵と銃座の目をかいくぐって戦車を破壊するのは無理がありますね‥‥」

 

「だろうな‥‥警備の兵士が少ない分、監視システムの銃座は連中にとって重要な兵力だろうからな‥‥」

 

「ええ‥‥そのため、我々はまず東側の最深部にあるコンピューター室にあるコンピューターを破壊し、捕虜監視システムを停止させてから、開発区画へと向かいます」

 

「なるほど‥‥まずはコンピューター室の破壊と銃座の停止ですね」

 

「それでは、行きますよ!!」

 

「はい!!」

 

「おう!!」

 

 三人はまず、東側にあるコンピューター室へと向かった。

 

 まだ、敵にこちらが侵入したことを悟られるのはまずいので、手榴弾やバズーカなど、大きな音がする武器は極力使用せずにコスモガンや体術、ナイフなどの刃物で敵兵を斃し、進んで行くことにした。

 

 通路の床にはセンサーで反応する格納式の銃座もあるので、通路に入る際は紫外線ゴーグルでまずはセンサーがないかをチェックして慎重に進んで行く。

 

 コンピューター室を目指している中、武器集積区画にて警備の兵士に見つかり、銃撃戦となる。

 

 見つかってしまってはもう隠れることも逃げることもできないので、古野間や北野はランチャーやマシンガンで敵兵を斃していく。

 

 ティアナはコスモガンによる精密射撃で確実に敵兵を斃していった。

 

 敵に見つかったことで製造プラントには警報が鳴り響く。

 

「な、何事だ!?」

 

 アルフォンと雪をエスコートしていたムノーにもその警報は知れ渡る。

 

「南ブロックに侵入者あり!!繰り返す!!南ブロックに侵入者あり!!全警備兵はただちに警戒態勢に移れ!!」

 

「なっ!?侵入者だと!?」

 

 館内放送を聞いて、慌てふためくムノー。

 

 一方、アルフォンは慌てる様子もなく、落ち着いている。

 

「侵入者‥‥そうか‥‥ここにももうパルチザンが来たのか‥‥」

 

「あ、アルフォン少尉‥ど、どうすれば‥‥」

 

 ムノーはアルフォンに指示を仰ぐ。

 

「ここのプラントの警備責任者は君だろう?全力で彼らを排除し、新型戦車とこのプラントを死守せよ‥‥万が一、戦車かこのプラントが彼らの手によって破壊されれば‥‥どうなるかはわかるだろう?」

 

 アルフォンは落ち着いた口調‥そして冷めた目でムノーにどうするべきかを伝える。

 

「は、はい‥‥」

 

 自分たちの最高司令官であるカザンが推し進めていたこの計画とプラント‥‥

 

 それが万が一にもパルチザンの手によって破壊されれば、警備責任者である自分は文字通り、無能者の烙印を押されて処刑される。

 

 ムノーの顔は青ざめ、体はガタガタと小刻みに震える。

 

「アルフォン少尉!!パルチザンの襲撃です!!」

 

 そこへ、警備兵の一人が報告に現れる。

 

「ああ‥‥この警報と放送を聞けばわかる」

 

「いつ、どこから襲撃してくるかわかりません。避難してください!!」

 

 兵士はアルフォンにこのプラントからの避難を促す。

 

「‥‥わかった‥‥君は来たまえ!!」

 

「はっ!!」

 

 アルフォンは報告に来た兵士に道案内役を頼む。

 

「それではな‥ムノー‥‥健闘を祈るよ」

 

「は、はい‥‥」

 

 震えているムノーを横目にアルフォンは去っていった。

 

 一方、武器集積所を占拠した北野たちは‥‥

 

「こちらスペード1。第一関門突破。A地点の占拠に成功」

 

「クラブ2、了解」

 

「まだ、コンピューター室にたどり着く前に気づかれてしまいましたね‥‥まぁ、これだけドンパチやれば無理もありませんけど‥‥」

 

 出来ればコンピューター室の破壊までは敵に見つかりたくはなかったが、少数とはいえ、敵兵がうろついている施設に潜入するからにはいつ、敵に見つかってもおかしくはなかった。

 

「まだまだだ‥‥ここがドンパチ、賑やかになるのはな‥‥」

 

 古野間はニッと笑みを浮かべながらティアナに言う。

 

「さっ、先を急ぎましょう!!」

 

 三人はもう敵に見つかることを気にせずに進む。

 

 通路からは武装した警備兵が来ると彼らに向かってロケットランチャーをぶっぱなし、手榴弾を遠慮なしに投げつける。

 

「こちらスペード1。B地点の占拠に成功」

 

「クラブ4、了解」

 

「いよいよこの奥が、コンピューター室がある区画ですね‥‥?」

 

「ええ、間違いない」

 

 北野が携帯端末で間違いがないかを確認し、三人はいよいよ、コンピューター室へと向かう。

 

「ここだな‥‥」

 

 コンピューター室には警備兵の姿はなかった。

 

 人員不足なのか?

 

 それとも自動銃座に頼り切っているのか?

 

 とにかく、目的の一つであるコンピューターの破壊に障害となるモノが居ないのは幸いだ。

 

「こちらスペード1.ターゲット1に到着!!これよりターゲットを破壊する!!」

 

「クラブ1、了解」

 

「ハート1、了解」

 

 三人はコンピューター室に時限爆弾をセットする。

 

「隊長、こっちのセットは終わったぜ」

 

「こっちもです!!」

 

「では、この部屋から出ましょう!!」

 

 三人はコンピューター室から出て十分に安全が確保される距離まで離れると、設置した時限爆弾の起爆スイッチを押す。

 

 轟音と地震のような振動がプラントに響き渡る。

 

 確認のため、三人がコンピューター室へと戻ると、そこにあったコンピューターは見るも無残に破壊されており、復元はもはや不可能なレベルだった。

 

「スペード1、ターゲット1の完全破壊完了」

 

 コンピューター室のコンピューターが破壊されたことにより、監視システムは停止。

通路の彼方此方にある自動銃座もその機能を停止した。

 

「あとは工場の方ですね‥‥急いで戻りましょう!!」

 

「そうですね」

 

「ああ」

 

 三人は急いで元来た道を引き返す。

 

「動力が落とされたか‥‥あるいは制御コンピューターが破壊されたか‥‥」

 

「‥‥」

 

 一方、プラントからの避難途中だったアルフォンは、通路の照明が消えたのを見て、パルチザンたちが動力部かコンピューター室を破壊したのだと推察した。

 

 雪はただじっと何も言わずにアルフォンに付き従った。

 

「少尉、この先はもう無理です。一番から四番まで、隔壁が全て閉じられました。‥‥東側の非常口からご避難ください!!」

 

 コンピューター室が破壊され、防壁が下ろされた。

 

 しかし、逃走防止のため、手動での開閉は不可能で、再び開けるにしてもコンピューター室は破壊されたので、隔壁を破るには爆弾かロケットランチャーによる武器での破壊しかなかった。

 

 だが、アルフォンも案内役の兵士も分厚い隔壁を破壊できるほどの武器は持ち合わせていなかった。

 

 当然、雪は丸腰なので問題外である。

 

 遠回りだが、今は一刻も早くこのプラントから避難するのが最優先なので、アルフォンと雪は非常口を目指した。

 

 一方、このプラントの警備責任者のムノーは通路を走っていた。

 

(くそっ、占領軍の仕事の中でも一番楽で出世しやすい部署だと思ったのに‥‥なんで‥なんで!?こんなことに‥‥!?くそっ!!)

 

 彼は何度も頭の中で自問自答をしていた。

 

 占領軍の数ある部署の中でもプラントの警備責任者という仕事はただ、労働力となる地球人をいたぶっているだけで、楽で、しかも昇進しやすい部署だと思っていた。

 

 事実、昨日まではそうだったし、このプラントの製造プランは総司令であるカザン肝いりの計画で進められた。

 

 製造された新型戦車を献上するだけで、自分の株は上がり、出世も約束されたはずだった。

 それが今では、パルチザンがここへ襲撃しに来て、自分は窮地に立たされている。

 

 ようやく出世のチャンスを掴んだのだ。

 

 こんなところで邪魔されてはたまらない。

 

(おれの、野蛮人め!!)

 

(しかし、まだだ‥‥まだ、負けたわけでない‥‥俺にはまだ、切り札が残されているんだ!!)

 

 ムノーは急ぎ、新型戦車が置かれている区画へと向かった。

 

 まさか、そこへ北野たち、パルチザンが向かっているとは知らずに‥‥

 

「さて、こっちが例の新型戦車と捕虜の収容施設がある区画です‥‥制御コンピューターは破壊しましたが、外部バッテリーでまだ、生きている銃座があるかもしれません‥‥気を付けて進みましょう」

 

 新型戦車と捕虜がいる区画なので、監視用の銃座もコンピューターからの電源だけでなく、外部バッテリーを積み込んだタイプのモノが存在している可能性があるので、注意して進まなければならなかった。

 

 案の定、扉をあけると、床から格納式の銃座が姿を現した。

 

「「「っ!?」」」

 

 三人は急いで物陰に隠れる。

 

 銃座は一歩遅れて三人を銃撃して来る。

 

「このっ!!」

 

 ティアナはショルダーバッグから手榴弾を取り出して、銃座に向かって投げる。

 

 ほんの少しの間をおいて、通路からは轟音が響き、爆煙が立ち込める。

 

 チラッと通路の様子を見ると、銃座は物言わぬ残骸となり果てていた。

 

 銃座を突破して先へと進んで行くと、コンベアやクレーンといった工業設備が目立ってきて、ここが製造プラントなのだと実感させられてくる。

 

 警備兵を次々斃し、進んで行く三人。

 

「この先にあるんだな‥‥例の新型戦車が‥‥」

 

「あともう少しですね‥‥」

 

 間もなく、新型戦車が置かれている区画へはこの先の階段を降りるだけとなった時、上の通路には雪とアルフォンの姿があった。

 

「あれは‥‥!!」

 

 雪は下の階にいる北野たちの姿に気づく。

 

「北野く‥‥んっ‥‥」

 

 雪が北野に声をかけようとしたら、アルフォンは手で雪の口を塞ぐ。

 

「そうか‥‥あの時の彼らか‥‥」

 

 アルフォンも北野たちの存在に気づいたが、今は雪が居るので、アルフォンは高所から北野たちを狙撃できる絶好のチャンスでありながらも、彼らを攻撃することなく、北野たちがその場から去るのをただジッと待った。

 

 やがて、彼らはアルフォンと雪の存在に気づくことなく、その場を後にした‥‥

 

 そして、北野たちは地下の特別区画‥‥新型戦車が置かれて区画へとたどり着いた。

 

「ここが新型戦車の開発区画‥‥」

 

「あとで、ここにも時限爆弾を設置して生産器具を破壊しましょう。新型戦車も破壊しないといけないし‥‥でも、まずは囚われている人たちの救出が優先です」

 

 北野はここも破壊するがまずは、捕虜の救出を優先した。

 

「ん?あれは‥‥?」

 

 すると古野間がこの区画におかれている虫型ロボットのようなモノの存在に気づく。

 

「おそらく、例の新型戦車でしょうね‥‥」

 

「意外と小さいですね‥‥本当にあれが戦車なんですか?私はもっと大きなモノだとばかり思っていました‥‥」

 

 占領軍の主力兵器の一つである三脚戦車を見た経験から、強力な戦車=でかい戦車というイメージがあったティアナとしては新型戦車がこんなにも小型な形状だったことに意外性を感じていた。

 

「いや、この方が良いんだよ。嬢ちゃん‥‥俺たちパルチザンは、地の利を利用して迷路のような街中や工業地帯で戦う‥‥大きすぎて身動きが取れず、足元をすくわれるかもしれない大型の戦車より、自由に狭いところへはいっていける小型の戦車のほうがいい‥‥」

 

「なるほど‥‥」

 

「ここまで小型化されるとなると、パルチザン本部にだってもぐりこめることができるだろうな‥‥」

 

「なんかゾッとしますね‥‥」

 

 パルチザン本部に突然、目の前の虫のような戦車が襲って来たら一体何人の仲間が犠牲になるのか分からない。

 

 当然、管理局では思いつかない兵器であるが、かつてスカリエッティが制作したガジェット・ドローンを大型化して有人機に改造したような印象を受ける。

 

「どうする隊長?先にあれだけでもぶち壊すか?」

 

 古野間は捕虜収容区画へ行く前にあの新型戦車だけでも破壊してから行くかと訊ねる。

 

 このままここに放置しておいて、捕虜収容区画へと行き、後ろから追撃されては折角助けた人たちに大勢の犠牲者を出す可能性がある。

 

「そうですね。このままここに置いておくと敵の手に渡るかもしれませんし‥‥」

 

 北野は古野間の意見を採用し、捕虜収容区画へ行く前にせめて新型戦車だけは爆破しておこうとした。

 

しかし‥‥

 

ウィンンン‥‥

 

 起動音と共に新型戦車は動き出した。

 

「動き出した‥‥もう、起動可能状態まで出来上がっていたんだ‥‥!!」

 

 まさか新型戦車が既に起動可能状態になっていたことに驚愕する北野たち。

 

 しかし、彼らはまだ知らなかった。

 

 既に新型戦車は目の前のこれを含めて二台が起動可能状態であることを‥‥

 

「ちっ、とんだおまけがついていやがったな‥‥」

 

「でも、ここで放置するわけにはいかないでしょう」

 

 この先にある捕虜収容区画へコイツを連れて行くわけにはいかない。

 

 それに今後の活動のためにもコイツはここで何としてでも破壊しなければならない。

 

「ハハハハハ‥‥来たな!?虫けらどもが!!我らの新型戦車の威力、とくとその身で味わうがいい!!」

 

 新型戦車に乗っていたのはムノーだった。

 

 彼はさも自分たちデザリアム星人がこの新型戦車を作ったかのような口ぶりであるが、デザリアム星人が行ったのはコンセプトのみで、それを実現させたのは忍たち月村グループの技師たちであった。

 

 新型戦車は後部の左右に装備しているビーム砲を乱射しながら接近してくる。

 

三人は散会し、柱などの物陰に隠れる。

 

「くそっ!!なんて速さだ‥‥!!」

 

 古野間は新型戦車の俊敏さに思わず舌を巻く。

 

「まるでクモみたいですね‥‥」

 

 その戦車の形状からティアナは見たままの感想を述べる。

 

 新型戦車はブーストで高くジャンプするとなんと、壁にへばりついたりと本当に戦車ではなく、虫型ロボットなのではないかという性能を見せつける。

 

「ガハハハ‥‥どこに隠れようと、こいつからは逃れられんぞ!!」

 

「くっ‥‥」

 

「こいつが量産された暁にはきさまらパルチザンなど一ひねりにしてやるわ!!」

 

 パルチザンに侵入され、一時は今の地位からの失墜どころか、処刑まで考えたムノーであったが、この新型戦車を自らが操縦して、改めて威力を確認すると、パルチザンに侵入された失態などすぐに取り返せると確信した。

 

 そして、この新型戦車を量産し、司令部へと献上すれば、自分はあのアルフォンよりも上の地位と権力を得られると思っていた。

 

(いつまでもペコペコと頭を下げている俺じゃない‥‥こいつらを始末して、この新型戦車を量産し、俺はさらなる高みを目指す!!)

 

「景気よくばかすか撃っちゃって‥‥このっ!!」

 

 隙を見てティアナが新型戦車にコスモガンを討つが、小型でも戦車‥‥コスモガン程度ではダメージを与えることが出来ない。

 

「隊長、古野間さん、あいつに何か弱点みたいなのはないんですか?」

 

 インカムでティアナは北野と古野間にあの戦車の弱点に思い当たることがないかと訊ねる。

 

「通常の戦車だったら、履帯を壊すかジェネレータあたりをたたけば、何とかなるんだがな‥‥」

 

「それってどこにあるんですか!?」

 

「車体の下かとかだろうが、あいつは通常の戦車と異なる形状だらなぁ‥‥もしかしたら、あの邪魔なレーザー砲の後ろあたりにあるかもしれない」

 

「車体の下かレーザー砲の後ろ‥‥」

 

(クロス・ミラージュ‥‥)

 

(なんでしょう?)

 

(この状況下でも魔法は使えるかしら?)

 

 この地球はミッドとことなり、AMFが空気の中に当たり前の様に存在する。

 

AMFの厄介さは起動六課時代に訓練や実戦で嫌というほど体験している。

 

 それでも、今回はなんとかこの場を切り抜けなければならない。

 

(あまり長時間は使用不可能で、使用後はしばしの休息が必要となりますが、できないことはありません)

 

(それならなんとかアイツの隙を作ることができれば‥‥)

 

 ティアナはこのAMFが広がる状況下で、魔法を使いあの新型戦車を倒す方法を模索するが、まずは‥‥

 

「‥‥北野さん、古野間さん」

 

「ん?なんだ?」

 

「お二人は中嶋さんか藤堂さんに私が異星人で、その星の治安維持組織に属していることを知っているんですよね?」

 

 ティアナは北野と古野間に自分が管理局の人間であることを知っているのかを問う。

 

「え、ええ‥‥」

 

「ああ‥‥藤堂長官から聞いている‥‥」

 

「‥‥もう一つ、私が魔導師であることもですか?」

 

「「‥‥」」

 

 魔法の存在も管理局の艦がこの世界に漂流したことから一部の人間に知れ渡っており、防衛軍の長である藤堂も当然、知っていた。

 

「ああ‥知っている」

 

 そしてティアナが魔導師であることは藤堂から北野、古野間から伝えられていた。

 

 しかし、それは北野、古野間が十分に信用できるからこそだった。

 

 二人が口の軽い男たちならば、藤堂は決してティアナが魔導師であることを伝えなかっただろう。

 

「‥‥それなら、これから見ることを誰にも言わないでもらえますか?」

 

「それはどういう‥‥」

 

「私が魔法を使い、あいつの注意を引きます。その隙にアイツの弱点を攻撃してください」

 

「‥‥わかった」

 

「古野間さん?」

 

「今は、あの化け物をぶち壊すことが優先だ‥‥嬢ちゃんがどんな力を持っていようとな‥‥」

 

「‥‥そうですね‥‥ランスターさん、お願いします」

 

「‥‥はい」

 

 ティアナは目を閉じ、意識を集中する。

 

 元々、ティアナは魔力が多い魔導師ではない。

 

 このAMFがある環境下ではクロス・ミラージュの言うとおり、長時間は無理だ。

 

だからこそ、この一回にすべてを賭けなければならない。

 

「さあ、もう観念して出てこい!!せめてもの情けだ‥‥苦しまずに一発で眉間をぶち抜いてやる」

 

 ムノーは戦車のコックピットからセンサーと目視で北野たちを探す。

 

 すると、柱の陰からティアナが飛び出してきた。

 

「そこだ!!」

 

 ムノーはティアナに向けてレーザー砲を浴びせる。

 

 初弾は外れるが、何十発も連発していれば、被弾率も上がり、ティアナの身体にレーザー砲が命中し、風穴があき、ティアナは倒れる。

 

(まずは一匹を仕留めた!!)

 

 ムノーはこれで確実にティアナを仕留めたと思った‥‥

 

しかし‥‥

 

 床に倒れると同時にティアナの身体はまるで空気に溶けるかのように消えた。

 

「なにっ!?」

 

 突然消えたティアナに驚くムノー。

 

 先程、柱の陰から出てきたのはティアナの幻影だった。

 

フェイク・シルエット‥‥単体あるいは複数の幻影を発生させる高位幻術魔法で、肉眼や簡易センサー類では見抜けない精度を誇るが、幻影に攻撃が直撃すると消えてしまう。

 

 数少ないティアナの主要魔法であり、これまでの人生の中で様々な応用の効く性質とティアナ自身の機転によってたびたび仲間やティアナ本人の窮地を救ってきた。

 

 今回もティアナはフェイク・シルエットにて、自らの幻影を囮にして、ムノーの注意を引きつけた。

 

 初めて、魔法というものを目の当たりにした北野、古野間、そしてムノーは驚いたが、古野間はティアナが作り出したチャンスを無駄にはしなかった。

 

 彼はロケットランチャーを肩に担ぎ、物陰から飛び出し、新型戦車に向かってロケット弾を放つ。

 

 新型戦車は古野間に向けて背を向けていたのだ。

 

「くたばれぇ!!」

 

 後部にロケット弾が命中した新型戦車は、レーザー砲は吹き飛び、足が折れ、崩れるように床に倒れ沈黙した。

 

「ざまぁみろ‥‥」

 

 完全に沈黙した戦車を確認し、北野はティアナの下へと駈け寄る。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい‥‥でも、思ったよりも力を使い果たしたみたいで‥‥しばらく動けそうにありません‥‥隊長たちは先に行ってください‥‥」

 

 フェイク・シルエットを一度使っただけで、魔力の消費がかなり多いことで、ティアナには起き上がり、一緒についていく体力も残されていなかった。

 

 でも、ここで動けないティアナを放っておくわけにもいかないので、北野は彼女に肩を貸した。

 

「それにしても恐ろしい戦車でしたね‥‥あれが量産されていたと思うと、背筋が凍る思いです‥‥」

 

 北野に肩をかりながら、破壊された新型戦車を見てつぶやくティアナ。

 

「おそらくあの戦車自体がまだ完全品というわけではなかったのでしょう‥‥」

 

「では、あれは試作機ってことですか?」

 

「多分‥‥」

 

 北野はあの新型戦車はまだ試作機であると判断したが、実際はアレで完成品だった。

 

おそらく忍たち新型戦車の開発に携わった技師たちのほんのささやかな抵抗だったのだろう。

 

 強力であり、完ぺきであるが、唯一無二の無敵の戦車‥‥というわけではなかったのだろう。

 

「‥‥こちらスペード1、ターゲット2の破壊に成功‥‥これより捕虜の救助を開始する‥‥」

 

 北野は別動隊に新型戦車の破壊を伝え、この製造プラントに収容されている地球人の救助を行う旨を伝える。

 

「クラブ1、了解。隊長‥‥こちらも施設内の占拠が完了しました。‥‥もう大丈夫ですよ」

 

「こちらハート1。工場外部の占拠も完了です。輸送車両もすべて確保できました‥‥ただ、要人と思われる高速エアーカーが一台、逃走しました‥‥今からではとても捕捉できません」

 

「要人用?‥‥わかりました。ともかく、各班ともに最後まで気を抜かないようにおねがいします」

 

 北野は要人用のエアーカーと聞いて、この製造プラントの所長が逃げたのだと思った。

 

「了解」

 

「それじゃあ、我々もここに捕まっている人たちの救助をしましょう。あまり時間をかけていると敵が戻ってくるかもしれませんし‥‥」

 

 北野は急いで収容されている人たちの救助を行うため、地下の捕虜収容所角へと向かう。

 

 この時、新型戦車の一番近くにいた古野間は戦車の搭乗員の生死を確認しに行く。

 

 すると、破壊された戦車のコックピットには瀕死のムノーが居た。

 

「うぅ‥‥あ‥‥アル‥フォン‥‥少尉‥‥わ、私は‥‥」

 

 瀕死の重傷を負い、意識が朦朧とする中、コックピットの前に立つ古野間をアルフォンと見間違えたのか手を伸ばしてくるムノーであったが、やがて力尽き、ガクッと体を倒すと、彼は二度と起き上がることはなかった。

 

「‥‥ここも‥‥ここもお前の仕業か!?‥‥アルフォン!!‥‥出てこい‥‥出てこい!!どこにいやがる!!アルフォォォォォンっ!!!」

 

 古野間はアルフォンの名を聞いて、周囲を見渡しアルフォンの名を叫ぶ。

 

 しかし、アルフォンが古野間の前に姿を現すことはなかった。

 

 一足先に捕虜収容区画へとたどり着いた北野はティアナを一度、床におろし、次々と電子ロックを解除して捕まっていた人たちを解放する。

 

 そして、解放した人たちに避難経路を説明する。

 

そんな中、

 

「あれ?もしかして、ティアナちゃん?」

 

「えっ?」

 

「やっぱり、ティアナちゃんじゃない!!どうしてこんなところに!?」

 

 

「忍さん!!それにノエルさんも!!」

 

 解放された人たちの中にティアナは忍とノエルの姿を見つけた。

 

「忍さんとノエルさんもここに収容されていたんですね!?」

 

「ええ‥‥それよりもどうしてティアナちゃんがここに‥‥?」

 

「えっと‥‥私もパルチザンに参加していて‥‥」

 

 ティアナは忍とノエルに自らがパルチザンに参加している事を話した。

 

「そう‥‥でも、ティアナちゃんはもともと地球とは関係ないのになんでこんな危ないことを‥‥」

 

「それでも、地球が大変なのにただジッと何もしないことはできなかったんです」

 

 その後、体にまだ力が出ないティアナはノエルがお姫様抱っこをして外まで連れ出した。

 

 ティアナは大勢の人に抱っこされている姿を見られ終始顔を赤くして恥ずかしがっていた。

 

 収容されていた人たちの救助が行われている中、砂漠を高速で走る一台のエアーカー‥‥。

 

 そのエアーカーにはアルフォンと雪の姿があった。

 

「製造プラントは全滅‥‥捕まっていた人たちも全員解放されたでしょうね‥‥」

 

「‥‥」

 

 雪はあの様子では新型戦車の製造プラントは完全に破壊され、捕まっていた人たちもパルチザンの手によって解放されただろうと推測する。

 

 その証拠に製造プラントの彼方此方では爆発や煙が立ち上がっている。

 

 雪の推測通りなのかアルフォンは無言のままだ。

 

「‥‥なぜ‥なぜ、あなたは、あそこで働かせている人たちを私に見せたんです?」

 

 雪はアルフォンに今日、あの製造プラントの視察に自分を同行させた真意を訊ねる。

 

「‥‥わからないんだ‥‥どうしてなのか‥‥僕にもね‥‥」

 

 アルフォン自身も今日の視察でなぜ、雪を連れていき、そこで働かされている人たちの姿を見せたのか?

 

 自分でもその行動を理解できなかった。

 

「あの状態では新型戦車もすぐには製造を再開することはできまい‥‥完成している試作機が一台、司令部に残っているが、一台だけでなんとかなるものではない‥‥」

 

 確かに新型戦車の威力は凄かった。

 

 しかし、たった一台で戦況を覆せるほどのものではない。

 

「‥‥」

 

「これで‥‥これでよかったのかもしれない‥‥」

 

「えっ?今、何か言われました?」

 

「いや、なんでもない‥‥帰ろう」

 

 アルフォンは新型戦車の製造プラントが破壊され、今後新型戦車の製造が難しくなったと言うのに、それを悲観する様子もなく、むしろ新型戦車が製造されなかったことを喜んでいるみたいにも見えた。

 

 しかし、そのつぶやきはあまりにも小さな声であったため、雪には聞こえなかった。

 

 暗黒星団帝国に属しながらもアルフォンには何か心境の変化が生まれているかのようでもあった。

 

 いや、もしかしたら雪を助け出した時から、彼には何か思う所があったのかもしれない。

 

 今回、北野が得た情報は雪からもたらされたものではなく、別の情報源からだった。

 

 その情報源はもしかしたら‥‥

 

 

 

 

ヤマト地下改修ドック 現:パルチザン司令部

 

 

「まったく、ずいぶんと酷使してくれちゃって‥‥」

 

 忍はボロボロになったボ○太くん型戦闘スーツを見てあきれるように言う。

 

「も、申し訳ありません‥‥パルチザンの活動でこの戦闘スーツは意外にも高性能だったので、あちこちの戦線に引っ張りだこになって‥‥」

 

 北野は忍に折角の戦闘スーツをこんなにもボロボロにしてしまったことを謝罪する。

 

「まぁ、作った側の人間としてはうれしい悲鳴よ‥‥今後はちゃんとメンテナンスできるように係の人にも指導していくから、貴方たちにはもっと頑張ってもらうわよ」

 

「はい!!」

 

 解放されていた人たちの中に忍たち月村グループの技師たちが居たことで、ボ○太くん型戦闘スーツのメンテナンスも行われ、さらに新型戦車の製造が事実上不可能となったことから、パルチザンの士気は高まった。

 

 

 

 

地球防衛軍司令部 現:暗黒星団帝国地球占領軍司令部 カザン執務室

 

 

「なんだと!?例の新型戦車製造プラントが破壊されただと!?」

 

「は、はい‥‥」

 

 新型戦車製造プラント破壊の知らせは占領軍総司令であるカザンの下にも届いた。

 

「たしか今日はアルフォンが視察へと赴いていたはずだ‥‥アルフォンはどうした!?」

 

「間一髪のところ、無事に避難されたようです」

 

「なにっ!?避難だと!?」

 

「は、はい‥‥」

 

「プラントがパルチザンどもの攻撃を受けている中、破壊工作の阻止をせずに避難だと!?‥‥それは立派な敵前逃亡でないか!!」

 

「は、はぁ‥‥」

 

「後日、アルフォンを呼べ!!」

 

「は、はい」

 

「それで、今後の新型戦車の生産の目途はどうなった!?」

 

「製造にかかわっていた地球人技師たちも解放されたみたいで、目下新型戦車の製造の目途は立っていません‥‥」

 

「くぅ~‥‥忌々しいパルチザンめ‥‥!!」

 

 新型戦車の製造プラントが破壊され、さらに今後の製造の目途もつかないことから反対に占領軍の士気は更に下がることになった。

 

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