地球にて新型戦車の製造プラントを破壊し、暗黒星団帝国に囚われの身となっていた忍たちを解放したパルチザンは着々と地球解放へ近づいていた。
その頃、星の海では、ヤマトを中心とした地球艦隊は暗黒星団帝国の本星の手掛かりを求めて褐色矮星の宙域へとやってきた。
しかし、地球艦隊の動きは逐次、暗黒星団帝国本星、デザリアム星の国家元首、聖総統に知られていた。
「フフフフ‥‥ついにやってきおったな‥‥我らが懐の内まで‥‥」
モニターに映し出されている地球艦隊の姿を見て、不敵な笑みを浮かべる聖総統。
「‥‥はい」
その傍では側近であるサーダの姿もあった。
「フフ、ご覧になって、聖総統閣下‥あの下品な艦影を‥‥まるで無知の象徴ではありませんか」
サーダはモニターに映し出されている地球艦隊の艦影を下品、無知の象徴と言う。
しかし、地球人とデザリアム星人では当然、住んでいる星、周辺の宇宙環境、技術力、艦船の設計思想が異なるので、サーダが地球艦隊を見て、下品と言うように、もしかしたらデザリアム星人が傑作だと自信満々で作り上げた暗黒星団帝国の艦船も地球人から見たら、『ダサい』と評価するかもしれない。
「フッ‥‥それで、サーダよ。手筈は整っておるのだろうな?」
聖総統はサーダが立案した作戦は準備が出来ているのかと問う。
「はい‥‥抜かり無く」
サーダは既に作戦の準備は出来ていると答える。
「まずはよく敵を知るのが先決。追撃艦隊のミヨーズめも、グロータス准将もそれで失敗いたしました。地球艦隊の実力とやら、聖総統閣下の御前で暴いてごらんに入れますわ‥‥」
サーダは地球艦隊の実力‥つまり、情報不足により、ミヨーズもグロータスも敗北したと言うが、グロータの場合、慢心とサーダの言う通り、地球艦隊に波動カートリッジ弾と言う新兵器が搭載されていたことを知らなかった為に敗北したのだが、ミヨーズの場合、中間補給基地の時と同じく、地球艦隊の情報を友軍に知らせなかった経緯があるので、一概に情報不足で敗北したとは言いにくい。
しかし、ミヨーズが情報を送らなかったせいもあり、サーダはそれを知る由もなかった。
「では、お手並みを拝見しようとするか」
「はっ‥‥フフ、あなたたちが誘い込まれたこの宙域が、いったいどんな場所なのか、知れば驚くでしょうね‥‥」
聖総統は観戦するかのようにモニターを見つめ、サーダは自分の立てた作戦にかなりの自信がある様子で、モニターを見ていた。
サーダが何やら罠を仕掛けたであろう褐色矮星の宙域を航行する地球艦隊。
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「スクリーン、全てグリーン。左舷前方にクラス3の褐色矮星を確認。4光年以内の距離に、あと三つほどの恒星を確認できますが、ほぼ赤外線反応のみ。全部同じタイプの褐色矮星ですね‥‥」
「レーダーに敵影なし」
「敵がいないのか?」
敵本星の手掛かりがあると思われるこの褐色矮星宙域‥‥
しかし、周りには褐色矮星のみで敵の姿はどこにもない。
罠にしても待ち伏せぐらいは覚悟していたのだが、小型艦船どころか偵察機も見つからない。
「暗黒ガスが所々に点在しているようですから、そこに逃げ込んだ可能性もあります」
暗黒ガスの中まではレーダーには映らないので、敵はもしかしたらその暗黒ガスの中に逃げ込んだか、ガスの中で待ち伏せている可能性もある。
新見がその点を指摘する。
「罠にしてはあまりにも不気味と言うか、静かすぎますね‥‥」
「まったく、不気味な場所ですよ。すぐ近くに恒星があるのに、眩しいどころか、ただ薄暗いだけですしね」
ギンガや永倉の言う通り、この宙域はあまりにも不気味だ。
暗黒星雲ほど暗くはないが、恒星があるのに輝きが一切ない。
まるで、死んだ恒星のような宙域だ。
「まぁ、それは仕方ないだろう。もともと褐色矮星というのは恒星になりきれなかった星だと言われている。すなわち恒星と惑星の中間の存在とも言える。褐色矮星は核融合反応がおきるほど、高い熱を発生することが出来ない‥そのほとんどが光をあまり発せず、自重による収縮時に赤外線を放出する程度なんだ‥‥」
良馬が自分の持っている知識から褐色矮星の部分を説明する。
彼の言う通り、褐色矮星は太陽のような恒星、そして地球のような惑星の中間の惑星と考えてもらえれば分かりやすい。
通常の恒星の主成分は水素であり、その質量がある限界を超えると、自重により恒星内部で核融合反応が起こる。
これにより恒星は光と熱を発することになるのだ。
対して褐色矮星の場合、恒星の主成分は通常の恒星同様、水素であるが、質量不足により核融合反応が起こらない特徴を持っている。
「光を発しない恒星か‥‥」
「とにかく、このまま先を進んでみよう。敵がいないとはいえ、ここにむけて撤退したと言うからには何かあるはずだ」
罠にしろ、まずは敵の姿を確認しなければ、敵本星の情報なんて得られない。
良馬はこのまま進むように伝える。
「そうですね。周囲には暗黒ガスがありますからね。副長が言った通り、ガスの中に敵さんが潜んでいる可能性は十分にありますからね」
永倉は引き続き艦を前進させた。
敵の待ち伏せが十分考えられるとのことで偵察もかねてコスモタイガーの発艦要請がヤマトから来たので、まほろば はコスモタイガーを飛ばす。
同じくヤマトからもコスモタイガー隊が発艦するのが確認できた。
周囲を偵察しながら搭載されているレーダー衛星を設置していると、そのレーダー衛星の一つが敵影をキャッチした。
「レーダー衛星が敵影をキャッチ!!エネルギー反応多数!!‥‥艦隊の周辺に点在しています!!」
「パネルに投影」
「了解」
パネルには地球艦隊を取り囲むような配置で敵の姿が投影されていた。
「やはり、罠だったか‥‥」
とはいえ、この宙域に敵が罠を仕掛けている可能性は十分にあったので、そこまで驚愕するほどのものではなかった。
まほろば、ヤマトのコスモタイガー隊は後方から接近する敵を‥‥
無人艦のハルバードとファルシオンは前方から接近する敵を‥‥
まほろば、春藍は左舷側の敵を‥‥
ヤマト、雪風・改は右舷側の敵を受け持った。
敵の艦種はエネルギー反応からみて、駆逐艦なのだが、その速力はあまりにも異常だった。
「は、速い‥‥なんなんだ?この敵は!?」
敵の速度に狙いが定まりにくいことにフェリシアは思わず舌を巻く。
「高速駆逐艦か‥‥射程は短いようだが、その分、スピードと攻撃力は通常の駆逐艦よりもあるようだ‥‥敵は一撃離脱戦法でじわじわとこちらにダメージを与えるつもりの様だ‥‥」
「でも、あの速度は異常ですよ!?あんな無茶な操艦をすれば、乗員だって酔って戦闘なんてできるわけが‥‥いや、それ以上に重力加速の影響で体がつぶれてしまいます!!」
「‥‥おそらく敵はあのテンタクルスのような無人の駆逐艦なのだろう‥‥無人ゆえに重力加速度を無視して無茶な動きが出来ると言うわけだ‥‥」
同じ無人艦でもやはり、暗黒星団帝国の方が技術は上の様だ。
地球にも同じ無人の駆逐艦が建造されているがあそこまで無茶な動きは出来ない。
「そんな厄介な敵相手にどうすれば‥‥」
「いや、コンピューター制御の無人艦だからこその弱点もある。あの艦はどうやら決まったパターンで動いているようだ‥‥副長、あの艦の動きをすべてトレースしてくれ」
「はい」
ガトランティスの火炎直撃砲の砲撃パターンを解析した新見ならば敵の動きもトレースできるだろう。
「砲雷長、副長が敵の動きをトレースするまで、盲撃ちでいい。時間を稼げ」
「は、はい」
盲撃ちとはいえ、重武装の宇宙戦艦なので、何発かはラッキーパンチにより、敵艦に命中するモノもあった。
一撃離脱を戦法とする高速駆逐艦故、装甲はかなり薄く、一発くらっただけで爆沈するほどの防御力であったが、やはり速力が早いので、そう簡単には当たらない。
そんな中、褐色矮星の一つにある変化が起きた。
突然、光を発しないはずの褐色矮星が光りだしたのだ。
「褐色矮星が光っている‥‥」
「矮星二強烈ナ熱核反応ヲ確認!!」
新見が敵艦の動きをトレース作業中なので、バトライザーがレーダー業務を行っていた。
バトライザーは褐色矮星の変化を報告する。
「熱核反応‥‥まさかっ!?」
質量不足のため、核融合反応が起きないはずの褐色矮星で熱核反応が検知された。
これはあきらかに人為的に起こされたモノだ。
「褐色矮星ガ爆発シマシタ!!衝撃波ガコチラニ向カッテキマス!!」
無茶な核融合反応をしたせいで、褐色矮星がそれに耐えきれずに崩壊・爆発した。
爆発の影響で衝撃波が生まれ、その衝撃波が地球艦隊めがけて押し寄せてくる。
「どのぐらいで来る?」
「衝撃波到達マデ後、30秒デス」
「隔壁閉鎖!!総員、対ショック準備!!急げ!!コスモタイガー隊にも注意喚起を入れろ!!」
良馬は乗員とコスモタイガー隊に衝撃波による影響の備えを命じる。
「了解」
今から30秒でコスモタイガー隊を呼び戻し、着艦させるのは無理だった。
「衝撃波だって!?くそっ!!」
褐色矮星の爆発と衝撃波についてはギンガとヤマト通信長の相原が急いでコスモタイガー隊に伝達した。
今からではヤマト、まほろば への着艦は不可能だ。
山本と坂井は急いで味方機に指示を出した。
「全機、エンジン停止!!生命維持装置以外をすべてロックしろ!!」
「急げ!!凍結モードにして、衝撃波をやり過ごすんだ!!それが一番ダメージを少なくする方法だ!!」
衝撃波が迫る中、新見がようやく敵艦の動きをトレースできた。
コスモタイガー隊を守るためにも衝撃波が来る前に一隻でも多くの敵艦を沈める必要があった。
トレース情報を他艦にも伝達され、敵の撃沈率が上がった。
やがて、衝撃波がやってきた。
激しい振動が起こるも艦自体には大したダメージはなかった。
「ど、どうやら持ちこたえたみたいですね‥‥」
「小さな褐色矮星だったから助かったな‥‥ただこの距離だ‥‥もっと大きな恒星が爆発していたら、一瞬で蒸発していたところだ‥‥」
「艦長、コスモタイガー隊との連絡が途絶えました!!」
「なんだって!?‥‥そうか、今の衝撃波で‥‥」
「コスモタイガーの装甲では‥‥今頃‥‥」
最悪の結果が脳裏を過ぎるが、
「諦めるな!!そう簡単に死ぬようなみんなじゃない!!引き続きコスモタイガー隊に呼びかけろ!!」
「は、はい」
ギンガは必死にコスモタイガー隊に通信を送り続けた。
「敵の高速駆逐艦も今の衝撃波でほとんど大破したみたいです」
艦載機並みに装甲が薄い高速駆逐艦が今の衝撃波を耐えきれる筈もなく、コスモタイガー隊同様、大きなダメージを受けていた。
雪風・改はヤマトが盾になってくれたおかげでほぼ無傷だった。
「しかし、なんでいきなり爆発したんでしょう?」
フェリシアが突然の褐色矮星爆発の原因を訊ねる。
「褐色矮星は、自力で核融合反応を起こすことは不可能だ‥‥考えたくないが、敵が人口的に爆発させたという線が濃厚だろう‥‥」
褐色矮星の爆発は敵の仕業だと言う良馬。
「敵の仕業…ですか?」
「ああ‥‥向こうが使用している艦船はすべて無人‥‥人的被害はないからな‥‥高速駆逐艦で我々を釘付けにしてその間に褐色矮星を爆発させて、その衝撃波で仕留めるつもりなのだろう‥‥」
「じゃあ、敵は我々を沈めるためだけに星一つを犠牲にしたんですか!?」
「おそらくな‥‥あの程度の褐色矮星なら、爆発の影響も1千天文単位以上の距離までは広がらないだろう‥‥他の宙域に敵が控えていてもそこまで衝撃波は届かない。展開している無人艦さえ被害を除けば、この宙域に居る我々だけにダメージを与えることが出来る絶好の罠だ‥‥」
「なんて奴らだ‥‥」
例え生命が存在しない星でもそれを捨て石の様に扱う暗黒星団帝国のやり方には胸糞悪い思いが込みあげてくる。
「ガス帯付近に、空間歪曲反応を感知!!敵がワープアウトしてきます!!」
「なにっ!?」
「弱ったこちらにとどめを刺す気か‥‥」
「そうはいくか‥‥貴様らに捨て石にされた星の恨み、思い知れ!!」
敵は追加の無人高速駆逐艦を送り込んできたが、すでにその動きはトレースされているので、会敵当初よりはスムーズに戦いを進めることが出来た。
多少手こずりはしたものの、地球艦隊は無人高速駆逐艦隊を何とか撃破することに成功した。
無人高速駆逐艦隊全滅は戦闘を観測をしていたサーグラスも知ることとなった。
「無人高速駆逐艦隊、全て消滅!!」
「ぬぅ~‥‥」
オペレーターからの報告に苦虫を嚙み潰したように顔を歪め、唸るサーグラス。
「本星より通信!!‥‥サーダ様からです!!」
そこへ、通信員がサーダから通信が来たことを報告する。
「繋げ‥‥」
通信回路を開くとモニターにサーダの姿が映しだされる。
「サーダ様、無人艦隊は全滅‥‥地球艦隊はうまく切り抜けたようでございますが‥‥」
「フフ‥‥それはわかっています。無人艦をコントロールしていたのも私‥‥戦況は全てモニターしています」
「はっ、出過ぎた発言、お許しください」
「いいえ、よいわ。一刻も早くグロータス准将の仇を討ちたいと言うあなたの気持ち、わからないでもないのよ。ただ連中の力がどれほどのものか、まずはそれを確かめることが肝要‥‥よくぞ我慢してくれましたね、サーグラス。次はあなたの率いる艦隊の力、思う存分に見せてくれてもいいわ」
「それでは‥‥」
「連中を誘い出し、あなたの用意した部隊で迎え撃ちなさい。ただし、いいこと‥‥?連中をなるべく本星から遠ざける位置に誘い込むのよ。彼らはまだ我々の本星がどこにあるのか暗中模索している様子‥‥危険を承知でも、かならず誘いには乗ってくるわ‥‥」
「心得ました!!我が艦隊の威力、彼奴等にしらしめてやりましょうぞ!!」
ようやく親友の仇討ちの機会が訪れたことからサーグラスの機嫌も士気も高かった。
「フフ‥‥では、吉報を待っているわ‥‥」
「‥‥フハハハハハ!!ついに、ついにグロータスの仇を討てる時がきたか‥‥待っておれ!!」
サーダとの通信が切れると、サーグラスは高笑いをして親友であるグロータスの仇討ちの機会が来たことに喜ぶ。
無人高速駆逐艦隊をかたづけた後、地球艦隊ではコスモタイガー隊の捜索が行われていた。
「救命ビーコンを感知!!コスモタイガー隊の反応です!!」
「見つかったか!!」
「はい。無事な様子ですが、流されていますね‥‥ここから10宇宙キロほど後方の位置です」
「生き残ってくれただけでもうれしいよ‥‥救命艇を手配、迎えにだしてくれ」
「了解」
まほろば、ヤマト、春藍から救命艇が発進し、コスモタイガー隊を迎えに行く。
その間、
「応急修理要班は艦の損傷チェックを頼む。被害状況を割り出し、すぐ修理にかかってくれ」
良馬はコスモタイガー隊が戻ってくる合間に艦の修理を指示する。
そんな中、
「空間歪曲反応をキャッチ!!敵です!!」
「なにっ!?」
艦隊の右舷側に空間歪曲反応と共に敵の反応が出た。
しかし、敵艦は地球艦隊に攻撃することなく、再びワープしてこの宙域から撤退した。
「敵反応消失‥‥再びワープしたもようです‥‥」
「一体何しに来たんだ?」
「あいつら、わざとワープ経路を残していきやがった‥‥誘い込んでいるわけか‥‥」
敵は地球艦隊にわざとワープの航跡を辿らせるために一時的に地球艦隊の前に現れてそしてワープで撤退していった。
「追いかけたとしてもまた敵が次の罠をしかけて待ち構えているでしょうね‥‥」
「でも、行くしかない‥‥地球を救うため‥‥連中の本星の位置を掴むためには‥‥」
「‥‥」
良馬の言葉に皆はうなずく。
「まぁ、敵としても罠を張るために自分たちも知らない場所は選ばないだろう‥‥どれだけ引きずり回されても、そこは敵の版図の中のはず‥‥その中には必ず敵の本星を掴むための手掛かりはあるはずだ‥‥」
(そうとも、どれだけ罠を張り巡らされようとも、それを食い破り、絶対に連中の本星をみつけてやる!!)
地球人よりも高度の技術力を持つデザリアム星人も人間なのだから必ずどこかに隙は生じるはずだ。
例え、次の宙域に罠が張り巡らされようとも地球を救うため、必ず敵本星の位置を掴んでやると地球艦隊乗員の心は固まっていた。
その頃、地球艦隊が目的地とする暗黒星団帝国本星デザリアム星では‥‥
「フフ‥‥ご覧になって聖総統閣下?連中は誘いに乗って、出発していきますわ‥‥」
「うむ‥‥データも多量に得ることが出来たし、まぁ、よしというところか‥‥」
聖総統は無人高速駆逐艦の一個艦隊が全滅させられたが、その損害よりも得るものがあったので、一応、満足していた。
「波動砲とやらの威力を見られなかったのは残念だがな‥‥」
相手が高速で動きまわる駆逐艦なので、地球艦隊は今回の戦いでは波動砲を使用せず、また貴重な波動カートリッジ弾も使用しなかった。
そういった点では、今回のデータ収集の作戦は不完全なのではないだろうか?
「問題は、あの融合反応‥‥ゴルバとの一件を見る限り、敵のタキオン波動兵器は我々の兵器に使用している動力炉との間に大きな反応を起こしてしまうようです‥‥やはり、連中は本星に近づけるべきではない敵かと‥‥」
サーダは地球艦隊の波動砲、波動カートリッジ弾のタキオンエネルギーと自軍で使用しているエネルギーの融合反応を危惧していた。
地球艦隊と対峙する時、自分たちは体に爆薬を括りつけて戦っているようなものだ。
「ふふふ‥‥ここまで近づけておいて、よく言うわ。だが、この件については緊急に対策を立てねばならんぞ、サーダ」
「‥‥おまかせを‥‥ですが、それも杞憂かもしれませんわ、聖総統閣下。例のモノもあることですし‥‥」
サーダには無人高速駆逐艦隊、褐色矮星の爆破以外にもまだ地球艦隊に対する策があるかの様に含みを抱かせる感じで言う。
「あの駆逐艦隊も、褐色矮星の爆発さえも、全ては囮か‥‥まったく恐ろしい女だよ、お前は‥‥」
「‥‥うまくいけば、サーグラス大将も地球艦隊と相見えることはないかもしれませんわね‥‥」
今回の地球占領作戦、地球艦隊の追撃で暗黒星団帝国はあまりにも多くの人材と艦船を失い過ぎた。
これ以上の喪失は帝国の軍事バランスを大きく欠如する恐れもある。
特にサーグラスは暗黒星団帝国の総司令官なのだ。
地球艦隊との戦いで彼を失えば、それこそ軍は大きなダメージを受け、士気も低下するかもしれない。
そのため、サーダはサーグラスが地球艦隊と戦わなくても済むもう一つの策をすでにあの褐色矮星の戦いで仕込んでいた。
ヤマトの第三砲塔の陰には一つのカプセルのようなものが転がっていた‥‥
しかし、ヤマトの乗員でそれに気づいている者はいなかった‥‥
「地球艦隊よ‥‥貴様らが血眼になって探している我が本星が、この銀河のどこに位置しているのか‥‥知れば驚愕するぞ‥‥それを知る日は永遠にこないだろうがな‥‥ふはははは‥‥!!」
聖総統はモニターに映る地球艦隊の姿を見ては口元を大きく歪め、高笑いをしていた。
ここで視点は星の海‥‥褐色矮星のある宙域からミッドへと移る。
ボラー連邦からミッドへと亡命したミノフスキーは、管理局の庇護のもと、ミッドの語学とミッド‥管理局が従来使用している魔動力炉の知識を学んでいた。
近い将来、自分が持っているボラー連邦で使用している宇宙船のエンジンとこの魔動力炉を融合させた宇宙船のエンジンを作るために‥‥
管理局はどうも魔力にこだわるところがあるので、すべてボラー連邦と同じ‥‥は煙たがるような気概が見受けられる。
それらを解決するにはまず、管理局‥管理世界の技術を知らなければ作れない。
管理局の技術官の中にはボラー連邦の人間に自分たちの技術を提示して大丈夫かと言う不安視をする者も居た。
その一方で、敵とは言え、高性能の技術を学べるかもしれないと言う未知の技術に興味を持つ者も居た。
マリエルやシャーリーもそう言った技術者の一人だった。
また、ルキノの方は将来、新たなエンジンを搭載した艦を見ることやそれを操艦することを楽しみにしていた。
ミノフスキーの存在はまだミッドをはじめとする管理世界の一般人には知られてはいないが、本局の一部の人間にはその存在は知られており、管理局上層部は厳重な緘口令を敷いていた。
しかし、あそこまで管理局の艦隊をボコボコにしたボラー連邦の人間と言うことで、管理局の中にはボラー連邦の人間に対する恨みがある者も当然居る。
そういった者たちがミノフスキーを私刑または暗殺する恐れもある。
だが、今の管理局はミノフスキー自身の身柄はどうでもいいが、彼が持っている知識を失うわけにはいかない。
彼の私物から宇宙船のエンジンの設計図だけを奪えばいいかと思ったが、事態はそう簡単なことではなく、管理局の内部にはボラー連邦の言語を訳せる人物が居ない。
知識もなしに複雑なエンジンの設計図を見ただけで、それを具現化できる技師も居なかった。
そのため、ミノフスキーの護衛にはシグナムとヴィータがついていた。
ヴィータは以前、警護課に所属していた経緯があり、その過程で三提督の紅一点、ミゼットと知り合いになったのだ。
機動六課設立の際、三提督が秘密裏で協力したのも、ヴィータがミゼットと知り合いだったことが少なからず関係していた。
当初、なのはと同じ教導隊であるヴィータがボラー連邦の人間であるミノフスキーの警護にまわることに対して、なのはは不満を口にしていた。
「なんで、ヴィータちゃんがあんなひどいことをする星の人を守らなきゃいけないの!?」
「なのは、あたしだって、ボラーがしたことは許せねぇよ。でも、今の管理局にはあのじーさんの協力がどうしても必要なんだ。それにあのじーさんはベムラーゼじゃない‥‥確かに同じ世界に所属していたけど、じーさん自身、故郷に帰れば問答無用で殺されちまうんだ‥‥ベムラーゼの手によってな‥‥」
「‥‥」
「ボラーに恨みを抱くなとは言わねぇ‥‥でも、恨みを持つにしてもそれはベムラーゼや一部の軍人だけにしろ‥‥少なくともあのじーさんは、局員の処刑や武力制裁に関しては全く関係ないんだ‥‥ただボラー連邦の人間だからって理由で恨んでいたら、それこそテロリストと変わらねぇぞ」
ヴィータ自身、ボラー連邦のやり方には腸が煮えくり返る思いだが、そもそもの元凶は管理局があちらに手を出したことがきっかけだし、ボラー連邦全ての人間が局員の処刑、武力制裁に関係したわけではない事を理解している。
だからこそ、処刑にも武力制裁にも関係していないミノフスキーの事を第三者の様に見ることができるのだ。
それに護衛として関わってみてミノフスキーは決してベムラーゼの様な残忍なボラー星人ではなかった。
ちょっと変わり者なところがあるが、休憩中などはヴィータに自分の故郷や幼少期の頃を話すことがある。
住んでいる星の政府や環境でボラー連邦があの様な国家にならなければならない経緯もミノフスキーの話からヴィータは知った。
もっともシグナムからは『懐柔されるなよ』と注意を受けたが、互いに理解しあい、寄り添わなければ、信頼なんて生まれない。
ミノフスキー自身、ヴィータの事を異性として見る様なロリコンではなく、どちらかというと、孫に話しかける様な感じだった。
その様子からミノフスキーがミッドに亡命してから一番心を許せるのは今の所、ヴィータの様にも見える。
ヴィータはその容姿と身長から、やはり高齢者には好かれる様だ。
実際にミゼットや海鳴にいた頃には地元のゲートボールクラブの老人たちには孫の様に可愛がられていた。
「わ、私は‥そ、そんなつもりじゃ‥‥」
ヴィータの指摘になのはは、顔色を青くして動揺している。
自分がスカリエッティやこれまで過去に取り締まってきた犯罪者と同じ思想を持っているのかと思うと、自分の存在を否定された様な気持ちになったのだ。
「‥‥」
(こりゃ、まずいな‥‥フェイトやヴィヴィオがいない事で、なのはの奴、精神的にかなりまいっていやがる‥‥)
なのはの言動からヴィータはなのはのメンタル面を危惧する。
なのは自身、幼少の頃、父である士郎がボディーガードの仕事中にテロに巻き込まれ、大怪我を負い、長期の入院生活を余儀亡くされた時、高町家は離散の危機に直面するほど、家族の心がバラバラになった時がある。
幸いあの時は、離散前に士郎が無事に退院して何とか事無きを得たが、親友のフェイト、そして養女のヴィヴィオの不在がじわじわとなのはの精神を傷つけている。
そこへ追い打ちをかけるようにボラー連邦への武力制裁とその失敗、さらには親友と養女が滞在する世界が、暗黒星団帝国なるボラー連邦やガトランティスのような凶暴な星間国家に占領されてしまい、現状が確認できないときた。
なのはが精神的にまいるのも無理はなかった。
(フェイト‥‥ヴィヴィオ‥‥早く帰ってきてくれ‥‥それかせめて無事な姿を見せてくれ‥‥)
なのはのメンタルが擦り切れる前にフェイトとヴィヴィオが帰ってきてくれることを祈った。
いや、ミッドへの帰還が無理ならば、せめて顔を見せて、なのはと話すことだけでもいい‥‥
今のなのはを元気づけることが出来るのは自分ではなく、フェイトとヴィヴィオしか居ないのかもしれない‥‥
そう思うヴィータであった。
そのヴィヴィオはと言うと‥‥
先日、暗黒星団帝国・地球占領軍はシミュレーションゲーム、BRAVE DUELの停止を行おうとしたが、憲兵大佐のメイトリックが占領軍総司令官のカザンとO・HA・NA・SHI‥‥もとい、お話をして、取り下げることが出来た。
ヴィヴィオはまさか、ミッドにいるもう一人の養母のメンタルが参っていることを知る由もなく、占領下でありながらも変わらぬ日々を過ごしていた。
そして、今日もヴィヴィオはBRAVE DUELをプレイしにHOBBY SHOP Testarossaへと来た。
「待っていたわよぉ~ヴィヴィオちゃ~ん」
「あっ、大佐!!」
HOBBY SHOP Testarossaにて、ヴィヴィオを待っていたのは暗黒星団帝国・地球占領軍・憲兵大佐のメイトリックだった。
ヴィヴィオは敵の士官にもかかわらず、メイトリックと親しい様子で彼に近づき声をかけている。
彼の階級が大佐と言うことでヴィヴィオは親しみを込めて彼の事を大佐と呼んでいる。
メイトリックを初めて見た時はその強烈なキャラで言葉をなくし、唖然としていたが、今ではこうしてBRAVE DUELの思い、プレイ仲間としてこうして一緒に遊んでいる。
周囲の人間‥初めてこの店に来店した客はハラハラしているが、この店の店員や常連客は二人の様子を温かい目で見ている。
敵の士官なのにあんなにも親しくしていると、「売国奴」と言われそうだが、メイトリック自身、BRAVE DUELの運営中止の中止をカザンに進言したことや横暴な態度を取っていないこと、ヴィヴィオがまだ幼い子供だからこそ、そう言った暴言が来ないのだ。
一方、メイトリックの方も、こうして現地の子供(と思い込んでいる)と戯れていると、メイトリック自身、裏切り者と疑われそうだが、彼の所属が軍の機密に関わるような部署ではなく、憲兵と言うことと相手がやはり、幼い子供だと言うことで警戒度が薄かった。
まぁ、それ以外にも彼のキャラが強烈だから、なるべく関わりたくないと言うのもあるのかもしれない。
また、彼がこうして地球占領作戦に従事することになったのも憲兵と言う役職以外にもやはり、彼のキャラが濃く、強烈なので聖総統も厄介払いを含めて、彼を地球占領作戦に従事させたのかもしれない。
「‥‥」
フェイトの場合、もうこの光景を何度も見ている筈なのだが、彼女は複雑そうな顔をしている。
なのはやフェイトは、ヴィヴィオには魔導師、非魔導師と分け隔てなく交友を深めてもらいたいと考えている。
それは、ヴィヴィオ本人はもとより、自分(フェイト)やエリオ、スバルやナカジマ家の姉妹たち、特殊な生まれをした者ばかりが周囲に大勢いるからだ。
しかし、いくら分け隔てなく交友を広めてほしいと思いながらも地球を占領している敵軍の士官‥‥しかも、オ○マと親しくなっている‥‥
養母としては複雑になるのも当然だ。
(‥‥なのは‥‥私はどうすればいいのかな?)
(ヴィヴィオがいろんな人と親しくなるのは嬉しいはずなのに、なんか素直に喜べない‥‥)
フェイトの悩みもある意味深刻だった。
「負けないんだからねぇ~ヴィヴィオちゃん~」
「私だって、負けないよ!!大佐!!」
フェイトの心配を余所にヴィヴィオとメイトリックは二人でブレイブシュミレーターへと向かって行った。
『歳をとったな大佐、てめえは老いぼれだ!』
『ぬぉっ!!』
『気分いいぜ、これから死ぬ気分はどうだ、大佐ぁ!てめぇはもう終わりだ!』
『ふざけやがってぇ!!へぇい!!はぁっ!!ほぉぁ!!』
『野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!』
モニターにはスキルカードで大人姿(聖王モード)となったヴィヴィオと白人男性で、身長は190cm、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンで筋骨隆々の男が肉弾戦をしている。
互いにアバターなので、傷つくことも出血することもなく、殴り合っている。
『……ちくしょおぉぉっ!ボールを吹っ飛ばしてやるぅぅ!』
『フンッ!!』
『ウウウウウォォ‥‥オォォゥ‥‥アァァ‥‥』
メイトリックの渾身の一撃がヴィヴィオの鳩尾にヒットし、ヴィヴィオのHPが0となり、ゲームは終わった。
「うぅ~くやしいぃ~‥‥大佐!!もう一回!!もう一回やろう!!」
ブレイブシュミレーターから出てきたヴィヴィオはゲームながら悔しそうにしており、メイトリックもう一回対戦しようと誘う。
「いいわよぉ~でも、その後はまた一緒にチーム戦で通信対戦をしましょう~」
「うん、いいよ」
ヴィヴィオとメイトリックは再びブレイブシュミレーターへと入ると、また肉弾戦を繰り広げ、その後は、チームを組んで通信対戦をした。
スレンダーで、金髪巨乳の美女と筋肉モリモリマッチョマンの筋骨隆々の男のコンビが対戦相手を拳で倒していく光景はなんともシュールであった。
クローンながらもミッド出身のヴィヴィオとデザリアム星人のメイトリックがゲームの中とはいえ、協力し合っている姿勢は、本来理想な形の筈なのに、フェイトはどうしても素直に喜べず複雑な表情で見ていた。
(こんな光景を見せたら、なのはが卒倒しちゃうよ‥‥)
ヴィヴィオがオネェ口調のオ○マと一緒にコンビを組んで戦っているなんて光景は、もう一人の養母にはかなりショックキングな光景だろうと思い、フェイトは‥‥
(なのはには黙っていよう‥‥)
なのはには見せることもせず、黙っていることにした。
それと同時にヴィヴィオの将来にも若干の不安を感じたのだった。
なのはも自分の信念を簡単に曲げたり変えたりしない性格の持ち主でそれはある意味、誇り高いようにも見えますが、一方で改革を受け入れない古い人間の様にも見えてしまうんですよね。