星の海へ   作:ステルス兄貴

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百十一話 サーグラスからの挑戦

 

 

 褐色矮星の宙域にて、無人高速駆逐艦、褐色矮星の爆破、そしてヤマト艦内に侵入した変装ロボ‥‥暗黒星団帝国、聖総統付側近のサーダが繰り出した三本の罠を何とか突破したヤマト。

 

「そういえば、月村さん。あの変装ロボがトチローさんに化けた時、どうして見破ることが出来たんですか?」

 

 艦内を捜索した坂本が良馬にあの騒動の中、変装ロボがトチローに変装した時、その場には本物のトチローも居た。

 古代と坂本はどちらが本物のトチローなのか、判別がつかなかったとき、良馬は真っ先に偽物を見抜いた。

 最悪、どちらが本物のトチローか分からなかったら、両方のトチローを撃たなければならなかった。

 コスモガンは最低出力だったので、撃たれても失神するだけで命に別状はないが、後々トチローから愚痴られそうだった。

 良馬は偽物を見抜いた訳を坂本に後で話すと言っていた。

 よって、坂本は良馬に訊ねてきたのだ。

 

「あぁ~‥‥サーシアちゃんやユリーシャちゃんほどじゃないけど、家の家系のご先祖で変わった力を持った人がいてね、俺はその力を受け継いでいるんだよ」

 

「不思議な力‥‥ですか?」

 

「ああ‥‥法術っていう力だ」

 

「法術‥‥それってどんな力なんですか?」

 

「術者によってはその力は色々異なるけど、基本的なことは気を読み取ることが出来る」

 

「気?」

 

「ああ‥‥モノには生命の脈‥‥気が存在する‥‥古代中国ではその気を使って、武術や医術に用いていたし、平安時代には地脈の流れを汲んで、魔物の侵入を防ぐ力、風水をつかさどる陰陽師とかが居た」

 

「じゃあ、月村艦長はその陰陽師なんですか?」

 

「まぁ、そんなところ‥‥それで、地球人のトチローさんと敵の変装ロボ‥‥人とロボットなのだから、気の流れは当然違う‥‥だから、見抜くことが出来たんだよ」

 

「な、なるほど‥‥」

 

 良馬の説明を聞いて、一応、納得した坂本だった。

 ただ、シャンブローの時、良馬は当然、あの大和ホテルに居たバーガーたちガミラス人の気を読んでいた。

 しかし、ネレディアに化けていたレーレライの変装はまさに完ぺきに近かった。

 地球人とガミラス人、当然住んでいる星の環境が異なるため、気の流れは異なっていた。

 油断かまたは慢心したのか、ネレディアの記憶全てを読み切れず、そこをバーガーに見抜かれたが、レーレライは気の流れさえガミラス人と同調していた。

 レーレライはジレル人なので、変装を解いた時、気の流れは地球人ともガミラス人とも異なっていた。

 レーレライが最初からジレル人の気の流れであれば、良馬は今回の件同様、ネレディアが偽物だと見抜いていたことだろう。

 

 その後、良馬、守、山南の三人で今後の航海計画を練り、地球艦隊は敵本星の手掛かりを求めて白色銀河を航行する。

 やがて、地球艦隊は白色銀河の渦状腕内に入る。

 敵のワープアウト地点まであり、2万宇宙キロと言う位置だ。

 侵入者という予想外のトラブルがあったが、何とかたどり着いた地球艦隊。

 しかし、ここは目的地ではなく、その目的地を知る手掛かりがあるかもしれない場所だ。

 この宙域の近くに目的地である敵本星があれば儲けものだ。

 だが、前回の様に敵はあれだけの罠を執拗に仕掛けてきたのだから、ここにも敵や敵の罠が待ち構えている可能性は十分にある。

 周辺もこれまでの黒色銀河や褐色矮星の宙域と比べ、星も多くなってきた。

 しかし、目当てのG2型スペクトルの恒星はこの周囲には存在していない。

 この宙域には矮星がいくつか存在しているのと、サイズが大きなM型スペクトルの星‥‥赤色巨星がいくつか存在しているだけだった。

 また、アステロイド帯が網目の様に広がっており、濃密な暗黒ガスもある。

 アステロイドが網目の様に広がっているとなると航行できる宙域に制限がかけられる。

 それに暗黒ガスがあると言うことは、レーダーに映らない部分も存在すると言うことになる。

 敵が待ち伏せるには絶好のポジションだ。

 さらに波動融合反応の件もある。

 下手に波動砲を撃てば周囲のガスが過剰反応を起こして大爆発をおこす危険性もある。

 まるでガスが満たされた密閉空間の様だ。

 技術班はこのガスの成分を調べ、波動砲を撃っても波動融合反応が起きるガスか?それとも起きないガスなのか、分析に取り掛かる。

 結果が出るまで波動砲の使用は禁止となった。

 できれば、敵とは遭遇したくはないところだが、地球艦隊が進んでいる前方にはサーグラス率いる艦隊が布陣していた。

 

「地球艦隊を捕捉。航路誤差、0.02!!‥‥予測通りです!!」

 

「来たか‥‥よし、連中に電文を打て!!」

 

 サーグラスは敵にわざわざ自分たちの存在を教えるような行為を取る。

 

「は?」

 

 サーグラスの命令を聞いたオペレーターは一瞬唖然とする。

 敵はまだ自分たちの存在に気づいていないのに、何故、わざわざ自分たちの存在を教えるのだろうかと‥‥

 

「聞こえなかったのか!?連中に通信を送るのだ!!」

 

「し、しかし、それでは敵に我々の存在を教えてしまうことになりますが‥‥」

 

 オペレーターは自分が抱いた疑問をサーグラスに訊ねる。

 

「我々が待ち構えていることぐらい、奴らはもう推測している筈だ。‥‥先の宙域での戦いで、連中の力がどれほどのものなのか知ることが出来た‥‥そして、分かったのだ。本物の強敵であることがな‥‥私は最初こう信じていた。グロータスはめったなことでやられる奴ではない‥‥きっと、敵の汚い策略に落ちて敗北したのだとな‥‥」

 

「‥‥」

 

 サーグラスはそういうが実際はグロータスの方が地球艦隊を策で嵌めようとしていた。

 

「だが、違った‥‥連中は実に強い‥‥!!もとより、私はグロータスやサーダ様のような策略家ではない。私は武人‥‥!!彼奴等は、それ相応の礼儀を見せて戦うべき相手だと判断する!!」

 

「は、はい‥‥」

 

 オペレーターは絶対的に有利な条件にもかかわらず、自分から敵に自らの存在を教えるサーグラスの行為に納得できなくとも、上官である彼の命令には従わなければならない。

 その為、地球艦隊に通信を送った。

 サーグラスの通信は地球艦隊ですぐに受信できた。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「艦長、敵からの入電です!!」

 

 サーグラスの通信は、まほろば でも受信され、ギンガが良馬に報告する。

 

「敵から‥‥?内容は?」

 

「はい‥‥『貴艦等ノ進撃ヲワレハ、賞賛ス。シカシナガラ、貴艦等ハ我等ガ同胞ノ仇。ソシテ我ニ課セラレシ任務ハ貴艦等ノ撃滅ナリ‥‥』 『コレヨリ、我ガ艦隊ハ、貴艦等ニ宣戦ヲ布告スル。 暗黒星団帝国総司令 サーグラス大将』‥‥以上です」

 

 ギンガがサーグラスからの電文を読み上げる。

 

「わざわざ自分たちの存在を教え、決戦前に宣戦布告を入れてくるとは、随分と律儀な人だ‥‥」

 

「しかし、『同胞の仇』って部分はなんか納得いきませんよ‥‥それを言うなら、こっちだって同じなんですから」

 

「戦争ではそういった負の連鎖が続くからね‥‥通信長」

 

「はい」

 

「ヤマトと春藍に通信を繋いでくれ‥‥向こうにもこれと同じ内容の通信が届いている筈だから」

 

「了解」

 

 ギンガは早速、ヤマトと春藍との通信回線を開く。

 

「山南艦長、古代艦長、そちらでも敵の通信は受信したと思います」

 

「ああ‥ついさっき来た」

 

「こちらもだ‥‥」

 

「敵の通信をどう思いますか?わざわざ自分たちの存在をこちらに教える行為‥‥」

 

「罠の可能性も否定できないな」

 

「うむ、通信を逆探知して、敵の位置も判明している‥‥」

 

 サーグラスの艦隊は地球艦隊の正面にあるアステロイド帯の反対側に布陣している。

艦数は確認できるだけで25隻いる。

 探知した艦以外にも伏兵か援軍が潜んでいる可能性は十分にある。

 

「わざわざ優位な状況を捨ててまで、こちらに自分たちの存在を教える行為‥‥古代艦長の言うように何か罠が仕掛けられているか‥‥それとも、新兵器を導入している可能性もありますね」

 

「敵もいよいよ数に物を言わせた総力戦に持ち込む可能性もあるな」

 

 良馬の脳裏にかつて古代たちヤマトの乗員から聞いたガミラスの勇将、ドメル将軍との七色星団での決戦‥‥そして、自らも参戦した土星圏であったガトランティス太陽系侵攻艦隊との戦いが過ぎる。

 今の状況がこれらの戦いと酷似していた。

 もっとも総力戦で来るのであれば、25隻なんて少数で来るとは思えない。

 敵はこの白色銀河全域を支配下においている大帝国‥‥。

 そんな大帝国が僅か25隻だけの艦隊で総力戦を挑むとは考えにくい。

 あの艦隊も暗黒星団帝国全軍の規模からいえばほんの一部なのだろう。

 だが、今の地球艦隊と比べると十分な数である。

 例え、サーグラスからの決闘を無視しても数で勝っているので、あっという間に包囲されてしまう。

 

「避けては通れない道だろう‥‥」

 

 守が一言そうつぶやくと、良馬も山南もフッと笑みをこぼす。

 

「死力を尽くすまで‥ですね」

 

「戦うからには勝たねばならぬな」

 

 三人の決定は決まった。

 

「全艦に警報発令!!総員、戦闘態勢を取れ!!」

 

 ヤマト、まほろば、春藍に警報が鳴り響く。

 しかし、まだ周囲に充満するガスの分析が終わっていない。

 波動砲が使用できないのは痛いが、避けては通れぬ道‥‥

 こちらの敗北は地球人類の未来にも影響する。

 決して負けられない戦いだ。

 

「敵、レーダー妨害を開始しました!!遠距離レーダーホワイトアウト!!近距離レーダーに切り替えます!!」

 

 自分たちの存在とスタート位置は教えたが、サービスはここまで‥‥

 あとは戦術と戦略で挑むしかなかった。

 

「艦長、敵の反応をロストする前にいくつかのエネルギーパターンを照合できました!!」

 

「流石だ‥‥それで、敵の規模は?」

 

「はい、戦艦‥駆逐艦‥空母‥‥狙撃戦艦もいます」

 

「どんな戦略にも対応できるって訳か‥‥最初の一手を読み間違えると、手痛い目に合うな‥‥」

 

 艦隊はヤマトを中心にウィング体系をとり、両翼にはハルバードとファルシオンで固める。

 

「レーダーに艦載機の反応を確認!!エネルギーパターンから爆撃機の編隊です!!」

 

「爆撃機はこちらで対処する。コスモタイガー隊は敵の索敵をしてくれ!!特に狙撃戦艦には注意を!!」

 

「了解」

 

 地球艦隊は主砲を含む全火器で爆撃機へ砲撃する。

 更にアステロイド帯の手前には駆逐戦隊が布陣して、爆撃機と連携して攻撃してくる。

 地球艦隊が爆撃機と駆逐艦を相手にしていると、アステロイド帯の中から、大口径の ショックカノンが、まほろば の艦種左舷側に命中する。

 

「ぐっ‥‥」

 

「きゃあ!!」

 

「うぉっ!!」

 

「被害報告!!」

 

「左舷、艦首魚雷室被弾!!」

 

「メディックと応急修理要員は現場へ急げ!!」

 

「アステロイド帯の中に狙撃戦艦を確認!!」

 

「こいつらは囮か!!」

 

 敵はまず、爆撃機と駆逐艦で地球艦隊を足止めし、アステロイド帯の中から狙撃戦艦で攻撃してくる手を行う。

 

「コスモタイガー隊に狙撃戦艦の位置を打電!!狙撃戦艦の対処を!!」

 

「は、はい」

 

「アステロイド帯の中にいるのであれば、身動きもそう簡単にはできないだろう‥‥こちらは一刻も早く、爆撃機と駆逐艦を始末するぞ!!」

 狙撃戦艦の対処をコスモタイガー隊に任せ、艦隊は爆撃機と駆逐艦の殲滅に取りかかる。

 この駆逐艦隊は動きからして先日、褐色矮星で遭遇した無人高速駆逐艦ではなく、有人の駆逐艦隊のようだった。

 

「あの厄介な駆逐艦じゃなきゃ、十分に対処できる‥‥」

 

 砲雷撃の集中砲火で敵の駆逐艦戦隊を撃滅し、前衛を突破する地球艦隊。

 前衛の駆逐戦隊壊滅はサーグラスの下にも報告が入る。

 

「前衛の駆逐戦隊壊滅‥‥敵は前衛を突破した模様!!」

 

「ここまでは読み通り‥‥連中があれしきの攻撃で沈むのであれば、拍子抜けもいいところだ‥‥よし、α砲搭載艦を展開せよ!!各艦、予定の位置につき、攻撃準備!!‥‥さて、どうする?次の相手はあのゴルバの主砲と同じ、α砲を搭載した艦だぞ‥‥!!フフフフ‥‥」

 

 前衛の駆逐戦隊と爆撃機をかたづけた地球艦隊は進撃を続け、狙撃戦艦の対処に向かったコスモタイガー隊も強化対艦ミサイルで狙撃戦艦を攻撃し、大破あるいは撃沈する。

 地球艦隊は続いて中堅へと挑む。

 

「レーダーに高エネルギー反応!!エネルギー兵器のチャージ反応だと思われます!!」

 

「反応の数値はだ上がり続けています!!‥‥これは、波動砲まではいかないにしても、かなりのエネルギー反応ですよ!!」

 

「‥‥おそらく、そのエネルギー反応を持つ艦は敵の切り札だろう‥‥やはり、敵は新兵器をこの戦いで導入してきたか‥‥」

 

「どうしますか?艦長、進撃速度を落としますか?」

 

「ああ‥‥それと敵もレーダーを使用してこちらに狙いを定めているのであれば、こちらも敵のレーダーを妨害するまでだ‥‥タキオン阻害チャフを散布!!コスモタイガー隊にも散布してもらえ!!」

 

 地球艦隊は敵の新兵器の射程距離がどれほどのものか分からないため、進撃速度を落とすと同時に、チャフが詰まったカプセルを射出する。

 射出されたカプセルはやがて割れて、タキオン阻害チャフが広範囲に散布される。

 コスモタイガー隊からも同じくタキオン阻害チャフが散布される。

 

 

暗黒星団帝国 α砲搭載艦 艦橋

 

「か、艦長!!」

 

「どうした?」

 

「敵がレーダー妨害を開始した模様で、狙いがつきません!!」

 

「なにっ!?くっ‥‥ちょこざいな‥‥構わん!!そのまま撃て!!」

 

「し、しかし‥‥」

 

「敵はどうせ、正面からくる!!それにα砲搭載艦は本艦を含め、五隻いるのだ!!どれか一つぐらいは当たるはずだ!!」

 

「は、はい‥‥」

 

「α砲、発射!!」

 

 四隻のα砲搭載艦からα砲が発射される。

 しかし、地球艦隊は進撃速度を落としていたため、α砲の射程外に居た。

 

「な、なんだ!?あれは‥‥」

 

「あれは‥‥ゴルバのα砲じゃないか‥‥」

 

「でも、ゴルバの姿なんてありませよ!!」

 

「‥‥敵はα砲を搭載した砲艦を作り出したのかもしれない」

 

 α砲は波動砲より幾分、威力は落ちるが、この宙域に充満しているガスに引火する様子はない。

 反対に地球艦隊はまだガスの分析が終わっていないので、波動砲は使用不可の状態。

 ここからショックカノンを撃ってもα砲搭載艦には届かない。

 敵のアウトレンジ戦法にもはや打ち手なしかと思われた。

 

更に、

 

「レーダーに小型艦載機の反応あり!!」

 

「識別は?」

 

「それが‥‥高機動型だということはわかるんですが‥‥データベースにはない機体です」

 

「新型機か!?くそっ、こんな時に‥‥」

 

 地球艦隊の後方から敵の新型機の反応があった。

 α砲搭載艦の他に厄介な敵が出現したと誰もが思った。

 

(‥‥コスモタイガーならば、機体も小さいし、高速推進ポットで加速し、一気に敵の懐へ飛び込めるか‥‥)

 

(しかし、後方の新型機の存在も気になる‥‥)

 

 危険な賭けかもしれないが、良馬はα砲搭載艦の対処をコスモタイガー隊に任せようかと思ったが、地球艦隊の後方にいる新型機の存在も気になる。

 

「後方の艦載機の様子は?」

 

「それが、依然艦隊の周囲に展開しています。ただ接近して来る気配はありません」

 

「接近してくる気配がない?」

 

「どういう事だ?」

 

「っ!?それは偵察機だ!!こっちの正確な位置を艦隊に伝えているんだ!!」

 

 敵は暗黒ガスにより、レーダーが使えなくなる事態に備え、偵察機を用意していた。

 ならば、こちらがいくらチャフをばらまいても情報を筒抜けになってしまう。

 

(コスモタイガー隊を呼び戻すか!いや、今は呼び戻す時間も惜しい‥‥ならば俺自身が出るか‥‥)

 

 良馬が自らコスモゼロで、敵の偵察機を対処しようかと思っていると、

 

「ヤマトから入電、敵の偵察機はこちらで対処するとのことです!!」

 

 ヤマトのカタパルトには古代が乗ったコスモゼロが設置され、ヤマトを発進。

 敵の偵察機へと向かって行く。

 偵察機は高機動であるが、武装は施されていない。

 高速推進ポットを点火して、速度を上げたコスモゼロにたちまち捕捉され、撃墜された。

 

「敵は偵察機からの情報でこちらの位置を掴んでいる。針路変更」

 

 ヤマトから針路を変更する旨の通信が入り、地球艦隊は一時、進撃方向を変える。

 

「コスモタイガー隊に通達、敵α砲搭載艦の所在位置の確認と共に同艦の撃破を下令」

 

 地球艦隊が囮となり、α砲搭載艦の位置をコスモタイガー隊に教えるとともにコスモタイガー隊にはα砲搭載艦の撃沈を命じた。

 偵察機からの情報を得たα砲搭載艦は艦首を地球艦隊が居る方向へと向け、艦を前進させ、α砲を打ち込むが、偵察機の存在から既に自分たちの位置がバレていると読んだ 地球艦隊は針路を変更しており、またもや、α砲は不発に終わる。

 そして、α砲を発射したことで、逆にコスモタイガー隊に自分たちの居場所を教えてやる結果となってしまった。

 

「いたぞ!!例の新型艦だ!!全機、高速推進ポット点火!!強化ミサイルハッチも開口!!」

 

 α砲搭載艦に向けてヤマト、まほろば のコスモタイガー隊が猛禽のごとく襲い掛かる。

 

「艦長!!敵の艦載機がこちらに向かってきます!!」

 

 α砲搭載艦の方も近距離レーダーでコスモタイガー隊の存在に気づくが既に時遅し‥‥

 

「か、回避!!全艦、散会しろ!!」

 

 α砲搭載艦はその名の通り、主な武装がα砲ぐらいで、対空兵装は搭載していない。

 その為、対艦載機戦は不利だった。

 α砲を撃った直後に、散会しろと言われ、α砲搭載艦群は動きに混乱が生じる。

 そんな中、ヤマトとまほろばのコスモタイガー隊が放った強化ミサイルがα砲搭載艦に命中する。

 α砲搭載艦は防御の面も急ごしらえの試作艦故、護衛艦や駆逐艦並みの強度しかなかった。

 

「さ、サーグラス司令‥α砲搭載艦、ダルー、ルパルカ共に轟沈しました!!」

 

「α砲搭載艦、残り二隻です!!」

 

「むむむ‥‥やるな‥‥こうなれば最後の駒を投入だ!!見ておれ‥‥!!」

 

 切り札の一つ、α砲搭載艦が壊滅するのも時間の問題だと判断したサーグラスはもう一つの戦力の投入を決め、準備に入る。

 α砲搭載艦のダルーとルパルカを撃沈したコスモタイガー隊はそのまま回頭し、艦隊と合流を図ろうとする残りのα砲搭載艦へと迫る。

 

「し、司令、α砲搭載艦、ドリーネ、ムールーグ轟沈!!」

 

「α砲搭載艦全滅です!!」

 

「ぬぅぅ~‥‥新型爆撃機隊の発艦はまだか!?」

 

「まもなく、準備が整います!!」

 

 サーグラス艦隊が艦載機の発艦準備を整える中、艦隊に合流を図ったα砲搭載艦を追撃し、撃破したコスモタイガー隊は敵艦隊の反応をとらえた。

 

「これはっ!?‥‥急いで、ヤマトと艦隊に知らせなくては‥‥」

 

 コスモタイガー隊から敵本隊らしき艦隊の反応をとらえたと報告が入る。

 

 直ちに報告のあった艦隊の分析が行われ、

 

「むっ‥‥!!いました!!敵艦隊の中に空母の反応です!!」

 

 前衛の爆撃機、そして偵察機がいたのだから、当然それを運用する空母が居る筈だった。

 そして、案の定、空母が敵艦隊の中に居た。

 

「どこだ?」

 

「宙域の中央に、アステロイドと暗黒ガスに囲まれた空洞があります!!その中心部にいます!!」

 

「アステロイド・ボイドの中か‥‥おそらくそれが敵の本隊だ‥‥宙域の中央なら、戦況の把握もしやすい‥‥その空洞から各艦に指令を送っていたのだろう‥‥」

 

「しかし、どうやって進入しますか?空洞の周囲は完全にアステロイドに囲まれて今います」

 

 アステロイドの中を航行できないわけではない。

 しかし、速度を落として進撃するので、敵の格好の標的となってしまう。

 

「艦長、暗黒ガスの分析が終わったとヤマトの真田技師長から通信です。この宙域の暗黒ガスはただのガスなので、波動を発射しても波動融合反応は起こらないとのことです」

 

「でも、波動砲が撃てても敵に届くか、どうか‥‥」

 

 波動砲が使用可能となっても現在位置からでは波動砲を撃っても敵艦隊までは届かない。

 

「敵を撃破できなくても、敵を守っているアステロイドを吹き飛ばせるだけでもいい‥‥障害物がなくなれば、速度を落とす必要もないからな」

 

「なるほど、アステロイドの壁に風穴をあけてやれば航行は十分可能ですね!!砲雷長!!」

 

「了解、波動砲発射準備!!」

 

 地球艦隊はアステロイドへと波動砲を打ち込んで、進入路をつくり、敵艦隊へと接近する。

 すると、敵の空母からまた爆撃機が発艦してきた。

 その爆撃機が搭載していた爆弾はこれまでの爆撃機が搭載していたモノよりもはるかに破壊力がある爆弾だった。

 最初に波動防壁の出力が30%もダウンし、波状攻撃をくらうとあっという間に防壁が消失、装甲板へと命中すると、装甲板が削り取られた。

 このままダメージを受け続けると内部まで深刻なダメージを受ける。

 敵の爆撃機を迎撃しつつ、大本の空母を撃沈しなければ被害が増す。

 空母の周りには護衛の巡洋艦、護衛艦、狙撃戦艦が展開していたが、地球艦隊は爆撃機の迎撃と空母の撃破を優先させる。

 コスモタイガー隊と雪風・改が爆撃機の迎撃を行い、ヤマト以下の戦艦部隊が空母へと砲雷撃をくわえる。

 狙撃戦艦からの攻撃を受けても、ひるむことなく、迎撃することなく、空母の身を狙ってくる地球艦隊の姿に狂気を感じる。

 そして、地球艦隊は空母を撃破する。

 

「司令‥‥空母、ドムドーラ‥‥撃沈されました‥‥」

 

「艦隊も既に総崩れとなっております」

 

 サーグラスの下に空母の撃沈と艦隊の意思統率が乱れている報告が入る。

 

「あれだけの艦隊が‥‥まさか‥‥総崩れだと‥‥!!」

 

 自信をもって挑んだ地球艦隊との戦い‥‥

 それが蓋を開けてみれば、艦隊は壊滅し、試作艦とはいえ、α砲搭載艦は全滅した。

サーグラスは現状がとても信じられなかった。

 

「‥‥いかがいたしましょう?」

 

 オペレーターがサーグラスにどうするかを訊ねる。

 撤退か、それとも徹底抗戦か?

 

「グロータスの仇を取ってやるつもりだったが‥‥逆に更に数多くの同胞を散らせるのみに終わったか‥‥」

 

 戦いには犠牲はつきものであるが、サーグラス自身、友軍にここまでの犠牲者を出すとは思ってもみなかった。

 

「‥‥このまま生き恥をさらしていても仕方あるまい‥‥特攻だ!!刺し違えても、彼奴等に一矢報いるのだ!!」

 

 サーグラスは徹底抗戦‥‥しかも特攻を命じた。

 かつて、ガトランティスの残党軍が土星圏で行ったように、混乱する指揮系統をまとめるには、旗艦みずからが、今、何をすべきかを各艦に示すため、行動を起こそうとした。

 

その時、

 

「待ちなさい、サーグラス」

 

 サーグラス乗艦の戦艦に一本の通信が入る。

 

「さ、サーダ様‥‥!!」

 

 それはデザリアム星から今回の戦いをモニタリングしていたサーダだった。

 

「くっ‥‥お借りしたα砲搭載艦をもってしても、彼奴等を沈められぬ、このサーグラスの不甲斐なさ、お笑いください‥‥!!」

 

 サーグラスは自嘲するように無理矢理笑みを浮かべ、サーダに今回の敗戦における失態を責めてくれと言う。

 三流司令官ならば、言い訳するか部下に責任を押し付けようなところをサーグラスはすんなりと自分の力量不足だったと認めた。

 

「かくなるうえば‥‥この命をもってして、此度の敗戦の責任を‥‥」

 

「私は『待ちなさい』と言ったのですよ、サーグラス。死ぬことは、私が許しません。グロータス亡き今、貴方は私が持つ最も優秀な人材‥‥まだ貴方には働いてもらわねば困ります‥‥」

 

「では、生き恥をさらして‥‥なお生きよと‥‥」

 

「α砲でもなお、仕留めることが出来なかったと、言いましたね‥‥?しかし、我々は次世代の超破壊兵器、β砲を‥‥いえ、『無限β砲』を順調に開発しています‥‥どう?その兵器で、連中を粉微塵にふきとばしたくはない?」

 

「‥‥」

 

 サーダはサーグラスとの戦いを本星からモニタリングして、サーグラスの敗戦を予期して、この通信を送った。

 武人気質のサーグラスならば、自分の命を懸けてでも敵に一矢報いる行動をとるだろうと予見していた。

 案の定、通信を送ってみれば、サーグラスは特攻する気だった。

 もし、通信を送らなければ、彼は特攻を実施していただろう。

 サーダの提案‥‥新たな次世代兵器をもって、地球艦隊との再戦を提案すると、サーグラスは迷っている様子だった。

 そこで、サーダはダメ押しの一言を言う。

 

「本星へ帰ってくるのです。サーグラス。幸い連中は、まだ我々の本星の位置を掴んではいません。彼奴等の位置は、本星から充分に離れました。とりあえず、暫くは連中を放置させ、無駄に本星の捜索をさせ、消耗させるのです。その間に我々は新兵器の開発と完成に着手し、完成のあかつきに貴方が再びグロータスをはじめとする同胞の仇を討てばいいのです」

 

「了解‥‥いたしました‥‥」

 

 サーダのこの一言を聞いてサーグラスは特攻を思いとどまる。 

 

「では、待っていますよ‥‥本星で‥‥」

 

「サーグラス様‥‥無念のほど、痛いほどよくわかります‥‥」

 

「‥‥」

 

「‥‥ご命令を‥サーグラス様」

 

「帰るしかあるまい‥‥本星へ‥‥全艦、転進だ‥‥」

 

「はっ‥‥全艦、転進!!本星へ向け撤退せよ!!」

 

 オペレーターは残存艦に撤退命令を送る。

 サーグラスは無念な様子であるが、オペレーターは生きて祖国へ帰れることから、少し嬉しげな様子にも見えた。

 

「もう、航路を見せつける必要はあるまい‥‥『航跡』を消すのを忘れるな」

 

「はっ!!」

 

(‥‥もはや仇討ちだけではない。‥‥私自身のために‥‥この屈辱をはらすためにも‥‥)

 

(次こそは必ず‥‥貴様らを討つ!!)

 

 武人として生き恥をさらすことになった今回の戦い‥‥

 サーグラスのプライドは著しく傷つけられた。

 撤退準備が進められていく中で、次の再戦の時、サーグラスは必ず地球艦隊を撃滅すると心の中の闘志を燃やした。

 

 

「ん?なんだ?これはっ!?」

 

「どうした?」

 

「宙域のはずれで、何か爆発反応みたいなものがありました」

 

「こちらでも同じような現状を観測しました‥‥これは‥空間振動波です」

 

「今の反応と同時に。ワープ反応も検出しました!!敵の残存艦がワープで撤退したものと思われます!!」

 

「航路分析は?」

 

 敵が撤退したのであれば、また航跡を辿って敵の本星の手掛かりをつかもうとしたのだが‥‥

 

「それが、さっきの空間振動波が、ワープエコーをめちゃくちゃにして、敵の航跡を辿ることができません!!」

 

「ワープの航跡を完全に消し去ったわけか‥‥敵は最初からワープ航路を消去する方法を知っていたのか‥‥くそっ‥‥」

 

「じゃあ、今まで航跡を残していたのはわざと‥‥?」

 

「だろうな‥‥我々を罠のある宙域やこの戦場に誘い込むため‥‥航跡を残すこと自体が罠だったと言うわけだ」

 

「敵が今回、航跡を残さなかったと言うことは、もしかして俺たちを誘い込む必要がなくなったから‥‥ということでしょうか?」

 

「もし、そうだとすると、我々は敵本星とは見当違いな場所へ誘い出されたことになるのう‥‥」

 

「この先‥‥いったいどうなるんだ‥‥?」

 

 地球艦隊は地図もなしに未開の地に放り出された遭難者となってしまった。

 艦内には今後の航海に対して不安な空気が流れた。

 

 一方、超距離ワープにて、無事にデザリアム星へ帰還したサーグラスは今回の敗戦による、自らの力量不足による自己嫌悪で不機嫌な様子だった。

 それは艦を降りた後も変わらない。

 

「おやおや、まるでレジアス中将みたいな顔をして‥‥」

 

 そんなサーグラスの様子を物陰からスカリエッティは見ており、サーグラスの雰囲気が、かつて自分が切り捨てたスポンサーの一人を同じであることに薄ら笑いを浮かべた。

 スカリエッティは兵器開発には着手していないが、聖総統からの特権である程度の軍事施設への行き来が可能となっていた。

 敗軍の将であるサーグラスを嘲笑ったのち、彼はこの星の軍事技術を確認するかの様に新造艦ドックへと赴き、建造中の新型戦艦を見る。

 

 彼の眼前には次世代兵器、『無限β砲』を搭載する予定の大型艦が鎮座している。

 

「これほどの技術がある世界では管理局が、歯が立たないのは当然だな‥‥今後、星の海は荒れるだろうな‥‥その時、君たちは生き残れるのかな‥‥?」

 

 造化艦技術、武器の性能、それらすべてをとっても暗黒星団帝国の技術はこれまで自分が見てきた管理世界の技術水準を大きく上回っている。

 

 スカリエッティの脳裏にはかつて自分たちを負かした魔導師の姿‥‥

 フェイト、はやて、なのはたち、機動六課の魔導師たちの姿がよみがえった。

 

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