星の海へ   作:ステルス兄貴

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平成最後の投稿‥なんとか間に合いました。


百十四話 正義とは?

 

 

 地球にて、カザン総司令がパルチザンの襲撃で斃れ、形勢は地球側へと傾きはじめたが、ハイペロン爆弾の占拠には未だ至らず、ヤマトを中心とする地球艦隊も敵本星の座標を掴めずにいた。

 

 地球と暗黒星団帝国との戦いはほんのわずかだが、まだ暗黒星団帝国が有利と言える状況だった。

 

 そんな中、ミッドでは“海”の方は、ボラー連邦からの亡命者であるミノフスキーの協力により、従来の艦とは違い、新たな宇宙船のエンジンの開発と艦の設計が進められ、“陸”では、新たな兵器の導入の動きがみられた。

 

 ミッド‥‥管理局でも、少しずつではあるが、再建と改革の動きがあった。

 

 その最中、クロノは以前、第二の地球にて保護されている義妹のフェイトから聞いた、テリオスのメインコンピューター内に残されていたダーティミッションの詳細について密かに調べており、本来管理局が定めた法律に違反した局員らをリストアップして、母でもあり、上官でもあるリンディの下へと報告へと向かった。

 

 クロノのリストの中にはまだ疑いのある者の他に明確に違反した者で証拠もそろっている事案も存在した。

 

 彼は管理局の再建に伴う中で、これを正式に公表し、早期粛正を考えていた。

 

 もちろん、クロノはリンディにこの報告書を見せた時、彼は彼女にこれを公表しようと言った。

 

 しかし、クロノからの報告書を見たリンディは、

 

「クロノ、残念だけど、これは公表できないわ」

 

と、リンディはクロノの報告書を公には出来ないと言う。

 

「なっ!?何故です!?母さ‥‥いえ、統括官!?」

 

 クロノは一瞬であるが、自分の耳を疑った。

 

 疑いがある者はこれから証拠固めをするが、明確な証拠がある事案もあるのだ。

 これは犯罪であることを立証している。

 

 それにもかかわらず、リンディはこれを公表しないと言う。

 

 何故、これを公表しないのか、リンディの考えをクロノは当然訊ねる。

 

「統括官、これは犯罪であることは明白なんです!!それを何故‥‥!?」

 

「わかっています」

 

「例え今回これを公表しなくとも、いつかまた誰かが調べ上げます。その時、今回公表しなかったこともバレるかもしれません!!そうなれば、また管理局のイメージダウンとなり、市民が暴徒となりうるかもしれないんですよ!?そうなる前に、公表し、厳正な処罰をするべきです!!」

 

 クロノは自分だってこうして調べ上げたのだ。

 

 今回この不正を公表しなくとも、いずれはまた誰かが自分の様に調べ上げるだろうと言う。

 

 その誰かとは今のところ、フェイトが一番の候補だ。

 

 何しろ、フェイト自身が自分にこうして、教えてきたのだから‥‥

 

 今は、第二の地球に居るが、いずれミッドに戻ってきた時、この不正が公になっていなければ、真面目で正義感が強いフェイトの事だ。

 

 不審に思い必ず、今の自分の様に調べ上げるに違いない。

 

 どの道、公になるのだから、フェイトが帰ってくる前でも何ら構わない。

 

 フェイトがこれを調べ上げる時間の短縮になるのだから、むしろ、プラスになる。

 

 だが、リンディは折角、クロノが調べ上げた局員らの不正事実を公表しない‥黙っていろと言う。

 

 これはあまりにもリンディらしくない言動であり、クロノが困惑するのも無理はなかった。

 

「理由を言ってください!!統括官!!」

 

 クロノはたとえ、自分の母親であろうともその返答次第では、くってかかる勢いだった。

 

「‥‥このリスト中にはあのボラー連邦への武力制裁で殉職した局員も居ます」

 

「はい。ですから、殉職者は被疑者死亡のまま送検するつもりです」

 

「そして、その遺族は周囲からのバッシングを受ける‥‥」

 

「‥‥」

 

 リンディはこれを公表したら、不正を行い、ボラー連邦への武力制裁で殉職者した局員の遺族がバッシングを受けることをクロノに指摘する。

 

「管理局はあのボラー連邦への武力制裁の失敗で、人材も艦も不足しています‥‥そんな中で、更に人材を不足させるほどの余裕は今の管理局にはありません」

 

「では、統括官は不正を‥犯罪を見過ごせと言うのですか!?被害者たちに泣き寝入りをしろと言うのですか!?」

 

 確かにリンディの言う通り、これを公表し、被疑者死亡のまま送検すれば、不正をして殉職者をした局員の遺族は周囲からバッシングを受けるだろう。

 

 だが、それでも被害者は、いくらかは報われるはずであるし、不正をした局員の自業自得だ。

 

 遺族だってそのふで得た甘い汁を吸っていたはずだからだ。

 

「今、局員を減らせば、犯罪が増え、より多くの犯罪被害者を生み出す結果になります。クロノ、ここは耐えて」

 

「統括官、その取り締まる側の局員が犯罪を起こしている本末転倒な状況なんですよ!?」

 

「わかってちょうだい、クロノ!!」

 

「‥‥」

 

「私が今の貴方の様に、一艦長の立場ならば、不正を公表しようとしたでしょう。でも、今の私の立場では、組織も守らなければならない立場なのよ‥‥」

 

 リンディ本人だって、今回の不正を公表したい。

 

 でも、今の自分の統括官と言う立場、そして、管理局が置かれた状況を見て、クロノが調べ上げた不正をおいそれと公表できない。

 

「組織を守る‥‥統括官の立場とお考えは理解できます‥‥しかし、犯罪や不正をした局員を守ることも統括官の仕事に含まれることなんですか?それが統括官の正義ですか?」

 

「‥‥」

 

 クロノだってリンディの葛藤は理解できる。

 

 しかし、このまま不正を闇に葬っては、彼女が守ろうとしている組織にはマイナスだと理解を求める。

 

だが、

 

「決定に変更はありません」

 

「なっ!?」

 

「クロノ・ハラオウン提督、今回の件について、口外は固く禁じます。これに違反した場合、何らかの処分が下る可能性があります‥‥話は以上です」

 

「くっ‥‥失礼‥しました‥‥」

 

 クロノとしては納得できなかった。

 

 不正をした局員が処分されず、不正を公表したら処分される。

 

 あまりにも理不尽だ。

 

「くそっ!!」

 

 クロノはリンディの部屋を出たら、通路の柱に拳を叩きつける。

 

 一方、リンディは、クロノが調べ上げた不正を『今は』公表するつもりはなかった。

 

 いずれ、ミノフスキーの手により、管理局は戦力を再建でき、人材も確保できる、その時に、この不正を公表し、取り締まるつもりであった。

 

 彼女がそれをクロノに語らなかったのは、盗聴を恐れての事だった。

 

 クロノだって自分の子供なのだから、きっと自分の気持ちを理解してくれると思っていた。

 

 クロノとリンディの親子の仲がギクシャクした中、なのはは、表面上は普段通りの様子で仕事をこなしていた。

 

 しかし、なのはと行動を共にしているヴィータが現在、シグナムと共にミノフスキーの護衛をしているので、なのはの傍に居なかった。

 

 はやてやヴィータは、なのはのメンタル面を心配したが、なのは自身、このままではダメだと自分に言い聞かせ、教導隊で将来のエースたる候補生たちに教鞭を振るっていた。

 

 しかし、実技に関してはどうも動きにキレがなかった。

 

 食事に関して、ボラー連邦への武力制裁前と同じく、なのはは、訓練生たちと共に摂っていた。

 

「あ、あの‥高町教官」

 

「ん?なに?」

 

「あの‥‥デマ‥なのかもしれませんが‥‥」

 

「ん?」

 

「‥‥その‥‥ボラー連邦からミッドへ亡命者が来たって本当ですか?」

 

「えっ?」

 

 ミノフスキーの存在については、現在はごく一部の局員にしか知らされていなかったが、ミノフスキー自身がちゃんと存在しているが故に彼の存在については、やはりどこからか洩れたのだろう。

 

「え、えっと‥‥」

 

 なのはもミノフスキーの件については知っているが、本局からは彼の件については未だに緘口令が敷かれているので、いくら教え子とはいえ、そう簡単に教えることはできない。

 

 ミノフスキーの護衛をしているヴィータも表向きは長期に任務と言う名目で、今は教導隊を離れている。

 

 その為、なのはは、今は一人なのだが、彼女のメンタル面を心配して、今は航海に出ていないはやてやシャマルが彼女の傍に居るし、スバルもなのはに頻繁にテレビ電話を入れている。

 

「えっと‥‥ごめん、私も知らないけど‥‥」

 

「そうですか‥‥」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あっ、いえ‥‥」

 

 訓練生たちの表情はなんか不安そうだ。

 

「なにか心配事があるの?」

 

「‥‥その‥仮にボラー連邦からミッドに亡命者が来ているとして、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

「えっ?どうして?」

 

「だって、そいつが亡命者を装ってのスパイかもしれないじゃないですか」

 

「そいつのせいで、ミッドの座標がボラー連邦に知られたら‥‥」

 

「俺たちも武力制裁に参加した先輩や教官たちみたいにボラーの奴らと戦わないといけないんですよね?」

 

 武力制裁に向かった教官や先輩の訓練生たちは誰一人として、帰ってこなかった。

 

 彼らがどんな最期を迎えたのか、詳しい情報は未だに一般市民や末端の局員には知られていない。

 

 ボラーが本格的にミッドへと攻め込んできたら、訓練生でもミッドを守るため、戦場へ立たなければならないかもしれない。

 

 公開処刑や武力制裁の結果を見ても、ボラー相手に戦って負けたり、捕虜になればどんな悲惨な目に遭うのか、それを想像しただけでも恐ろしい。

 

「だ、大丈夫じゃないかな?‥‥そもそも本当にボラー連邦からミッドに亡命した人が居るかさえ、分からないんだし‥‥」

 

 本当は知っているが、なのはは、ボラー連邦からの亡命者の存在自体をあやふやにして、訓練生たちの不安を取り除こうとした。

 

「は、はぁ~‥‥」

 

「そう‥でしょうか?」

 

「そうだよ‥‥それに仮に居たとしても、本局の人だってきっと、それを見越して見張っているんじゃないかな?」

 

「た、確かに‥‥」

 

「ボラー連邦は残念だけど、管理局よりも物凄い技術と軍事力を持った世界だけど、そのボラー連邦が未だにミッドに攻めてこないところを見ると、亡命者なんていないんじゃないかな?」

 

「そうですね」

 

 なのはの話を聞いて、ようやく訓練生たちも安堵した様子だった。

 

 しかし、なのは自身は訓練生たちからの話を聞いて、不安は拭えなかった。

 

 そこで、なのはは、件の亡命者であるミノフスキーの護衛をしているヴィータに連絡を取り、ミノフスキーの様子を聞いてみることにした。

 

「ん?どうした?なのは」

 

「ヴィータちゃん‥‥その‥‥実は、今日ね‥‥」

 

 なのはは、ヴィータに今日、訓練生たちが話していた内容を話す。

 

「はぁっ!?訓練生のひよっこたちにまで、爺さんの情報が洩れているのか!?」

 

「う、うん‥そうみたい‥‥」

 

「ったく、どこのどいつだ?口が軽いお喋りは‥‥」

 

 ヴィータはミノフスキーの情報がおぼろげながらも洩れていたことに忌々しそうに顔を歪める。

 

 少なくともミノフスキーの情報は自分やシグナムが流したモノではない。

 

「それで、あの爺さんが亡命者を装ったボラーのスパイじゃないかって話だが‥‥」

 

「う、うん‥‥」

 

 ヴィータは早速、なのはが聞いてきた疑問に答える。

 

「それはありえないな」

 

 ヴィータはミノフスキーがボラー連邦からの亡命者を装ってミッドへと送り込まれたスパイではないかと言う疑問をあっさりと否定する。

 

「ど、どうしてそう言い切れるの?」

 

「あの技術屋一筋の爺さんにスパイなんて器用な真似事なんざぁ無理だ。脳みそまで機械で出来ているんじゃないかと思うぐらいのレベル機械オタクなんだぜ」

 

 ヴィータは先日、ミノフスキーの技術屋としての本気をその身で味わったことから、どう見ても彼はスパイではなく技師であると言う。

 

 それもマリエルやシャーリー‥もしかしたら、あのスカリエッティ以上のマッドなのかもしれない‥‥とさえ、思った。

 

 シグナムもヴィータ同様、ミノフスキーの技術屋としての部分をその身で体験して、知恵熱を出し、はやてに決してミノフスキーに質問してはならないとさえ忠告をいれるぐらいだ。

 

「でも、それは私たちを騙す演技かもしれないじゃない。一流のスパイはなりきって諜報活動をするんでしょう?おじいさんの姿だって私たちを油断させる手段の一つかもしれないし‥‥」

 

 なのはは、まだミノフスキーと出会ったことがないため、ヴィータが何故、ミノフスキーの事を信じられるのか疑問だった。

 

 その中にはミノフスキーがボラー連邦所属だと言う偏見意識が含まれていた。

 

 もちろん、本局‥“海”でもミノフスキーが亡命を希望している時にも彼がボラー連邦から送り込まれたスパイではないかという疑いはあった。

 

 しかし、彼がボラー連邦で宇宙船‥特にエンジンの開発の技師であることを知り、警戒しながらも、現在の管理局の艦の性能の低下が否めない現状を打開するための苦肉の策として、彼に協力を仰いだのだ。

 

「なのは、お前さんがボラーに対する恨みが高いのは知っているが、いつまでもそれを引きづっていちゃあ、誰も信じられなくなるし、前に進めねぇぞ」

 

「‥‥」

 

「あたしが言うのも説得力はねぇが、フェイトやあたし、シグナム‥それにノーヴェたちもお前さんや、管理局と対立したが、今じゃそんな事があったのさえ忘れるぐらいの関係だろう?」

 

「‥‥」

 

「お前さんは昔、フェイトやあたしに必死になって、話をして分かり合おうとしたねぇか」

 

「‥‥」

 

 ヴィータは海鳴でなのはと出会ったばかりの頃を思い出す。

 

 あの頃のなのはは、今と違って自由闊達で、組織にも立場にも縛られず、魔法と言う力のすばらしさを信じて戦っていたように見える。

 

 管理局に入って、夢だった教導隊に入って、養女となるヴィヴィオを引き取り、生活は充実していた。

 

 第二の地球‥‥そして、ボラー連邦との邂逅がなければ‥‥

 

 フェイトとティアナが遭難し、ボラー連邦への武力制裁が失敗し、大勢の同僚や生徒が亡くなった。

 

 そして、ヴィヴィオまでもが教会の過激派に狙われ、行方不明になってしまう。

 

 幸い、ヴィヴィオはフェイトとティアナが居る第二の地球で無事が確認されたのだが、なのはのメンタル面は情緒不安定な状態が続いていた。

 

 そこへ、あのボラー連邦からの亡命者が来たことになのはは、不安、そして大勢の仲間を殺した勢力からの亡命者の存在が我慢できなかったのかもしれない。

 

 フェイトやヴィータ、ノーヴェたちの時は、自分の同僚や生徒が殺されるなんてことはなかった。

 

 だからこそ、彼女たちとは分かり合えたのかもしれない。

 

 でも、ボラー連邦とは‥‥

 

(はぁ~‥‥こんなことなら、なのはにも爺さんのことは黙っていた方がよかったな‥‥)

 

(はやての奴も余計なことをしてくれたもんだ‥‥)

 

(まさか、あの爺さんの情報が流れたのも、はやてとなのはが話しているのを誰かが聞き耳を立てていたんじゃねぇだろうな‥‥)

 

 ミノフスキーついては、はやてがなのはに洩らしてしまったのだが、本局はその件については、特に気にしていなかった。

 

 それは、はやてがミノフスキーを迎えに行ったこと、

 

 そして、なのはが、管理局を代表するエースであることが重視された。

 

 これが、非魔導師の局員であれば、何からの処分が下されていたかもしれない。

 

 訓練生たちがあやふやながらもミノフスキーの情報を持っていたのも、はやてがなのはに彼の事を教えたのが、本局の喫茶店だったことであり、二人の会話を誰かが聞き耳を立てていたからではないかと思うヴィータだった。

 

「あたしだって、ボラーがしたことは今でも許せないさ‥でも、皆が前を向いて進もうとしているんだ‥‥エースであり、教導官であるお前だって、今更立ち止まることは許されないはずだぞ」

 

 ヴィータの言う通り、なのはには今更立ち止まることなんて許されない。

 

 数多くの魔導師を失った管理局では一日でもはやく、その埋め合わせをしなくてはならない。

 

 教導官は、一日でも早く、まだ雛である訓練生たちを一人前の局員へ育て上げることが仕事だ。

 

 ヴィヴィオを海鳴の実家に預けた時、自分は生徒たちを見捨てられないからこそ、ミッドへと戻ったのではないのか?

 

 それなのに、今の自分は、まだ過去の事を気にして、引きづっている。

 

 これでは、訓練生たちを不安にしてしまい顔合わせ出来ない。

 

 JS事件の折、ヴィヴィオが攫われた時も彼女を守ってあげられなく、深い悲しみに落とされ、フェイトに泣きついた。

 

 それでも、結果的に自分はなんとか立ち直り、ヴィヴィオを助け出した。

 

 六課の時だって、十一歳の時、自分がガジェットに堕とされた経験から、ティアナたちに自分の様な経験をさせないため、訓練に臨んできた。

 

 ティアナと一度衝突したが、それでも自分の考えを伝えて彼女に理解してもらった。

 

 今の自分を過去の自分が見たら、きっと怒るだろう。

 

「そう‥だね‥‥ヴィータちゃんの言う通りだったよ‥‥ありがとね、ヴィータちゃん‥‥」

 

「お、おう‥お前が元気になってくれればそれでいい‥‥フェイトやティアナ、ヴィヴィオだって、第二の地球で頑張っているんだ」

 

「そうだね‥‥フェイトちゃんたちも頑張っているんだもんね‥‥」

 

 今回の件で、なのはもようやく立ち直れたのかもしれない。

 

 

 なのはがようやく立ち直れたその頃、なのはの養女であるヴィヴィオはフェイトと共に第二の地球にて、中嶋家で考え込んでいた。

 

 別室では紅葉が自身を含めたフェイトとヴィヴィオのデバイスを例のメンテナンス方法でメンテナンスをしており、ヴィヴィオは紅葉が淹れてくれたキャラメルミルクをちびちびと飲みながら、

 

「う~ん‥‥」

 

と、頭を抱え込んでいた。

 

 ヴィヴィオのもう一人の養母であるフェイトは当然、今のヴィヴィオの様子が変なことに気づいていた。

 

「ヴィヴィオ、どうしたの?」

 

「フェイトママ‥‥ねぇ、フェイトママ‥‥」

 

「ん?なに?ヴィヴィオ」

 

「正義ってどうおもう?」

 

「えっ?」

 

 ヴィヴィオの漠然とした質問にフェイトは目が点となる。

 

「えっと‥‥それってどういうことかな?」

 

 フェイトとしては、なるべくヴィヴィオの質問には答えたい。

 

 しかし、あまりにもヴィヴィオの質問が漠然しすぎて、答えるに答えられない。

 

 そもそも何故、ヴィヴィオは突然『正義』についての疑問を持ったのだろうか?

 

 フェイトはその経緯についてヴィヴィオに訊ねる。

 

「実はね今日、大佐が‥‥」

 

(大佐って、ヴィヴィオ‥まだあのオ○マと交流を持っていたんだ‥‥)

 

 フェイトはまだヴィヴィオがメイトリックと交流を持っていたことに驚いていた。

 

 ヴィヴィオがメイトリックと交流していたことに驚きはしたが、フェイトはヴィヴィオの話にちゃんと耳を傾けていた。

 

「そう‥あの大佐が‥‥」

 

 ヴィヴィオの話を聞いて、この第二の地球で起きている暗黒星団帝国とパルチザンとの戦いは苛烈さを増しているのだと判断した。

 

(ティアナ、大丈夫かな‥‥?)

 

 フェイトとしては、暗黒星団帝国と戦っているパルチザンに身を投じているティアナの身も案じた。

 

 後にティアナが戻ってきた時、彼女の姿を見たフェイトがびっくりするのは当然の結果であった。

 

「それで、大佐は『正義は一つじゃない』って、言ってた‥‥フェイトママは大佐の言っていた『正義』をどう思う?大佐は間違ったことを言っていると思う?」

 

「えッと‥‥そうだね‥‥」

 

 フェイトもヴィヴィオが悩んでいた中身を聞いて、考える。

 

 六課に居た頃ならば、管理局=正義でそれ以外は悪とまではいかないけど、この世の正義を管理局が一手に握っていると思っていた。

 

 でも、宇宙に出て、さまざまな出会いや体験をして、管理局がこの世の絶対的な正義とは言えないことを経験した。

 

 メイトリックの言う通り、『正義は一つではない』と言う言葉は確かに自分にも当てはまっていた。

 

 自分がなのはと初めて出会うきっかけとなった海鳴でのPT事件‥‥

 

 あの時、自分の行動は母であるプレシアの命令に従っていただけでが、当時の自分には彼女のしていることは正しい事だと思っていた。

 

 ジュエルシードを集めて母の下に持っていけば、いつかは自分を本当の娘だと認めてくれるはず。

 

 その期待を込めて、自分はプレシアのために行動した。

 

 しかし、自分の行動は管理局にとっては間違った行動だった。

 

 シグナムたちも自分の様に主であるはやてを思っての行動だった。

 

 自分やシグナムたちのように自分の心の中に信念を抱いて行動していた。

 

 それはメイトリックが言うように人の数だけ正義は存在していたのかもしれない。

 

 もしかしたら、あのスカリエッティにさえ、彼には彼なりの信念と正義が存在していたのかもしれない。

 

 とはいえ、フェイト個人としてはたとえ、スカリエッティの心の中に絶対的な信念と正義が存在していたとしてもそれは認めたくはなかった。

 

「‥‥そう‥だね‥‥大佐が言っていたことは間違いじゃないと思うよ」

 

 フェイトはこれまでの経験から、メイトリックが言っていた正義について間違いではないことをヴィヴィオに伝える。

 

「ヴィヴィオもまだ子供だけど、『これだけは負けない』 『これだけは絶対に譲れない』って言う固い信念を持って‥‥それはきっとヴィヴィオにとっての正義になると思うから‥‥」

 

「う、うん‥‥」

 

「ただし、他の人の迷惑になることはダメだよ」

 

 自分の中に信念と正義を持つことは大事であるが、スカリエッティの様に大勢の人に迷惑をかけるのは正義に反する行いだとヴィヴィオに諭した。

 

 メイトリックもフェイトもまだヴィヴィオが子供だから、自分たちが言っていることが難しいことでまだヴィヴィオには理解できないことかもしれないと思っていたが、ヴィヴィオはこうした同年代の子供が体験したことのない、様々な出会いを経験し、十分に精神は鍛えられていた。

 

 それは決してミッドだけに居ては出来ない体験と出会いであっただろう。

 今回の正義についてのメイトリックの言葉はヴィヴィオの未来に大きな糧となるに違いない。

 

 

 地球における暗黒星団帝国とパルチザンとの戦闘、ミッドにおける管理局での改革が進んで行く中、暗黒星団帝国の本星、デザリアム星を目指す地球艦隊は完全に手詰まりとなる。

 

 サーグラス大将との決戦以降、敵の接触が全くと言っていいほど途絶えたのだ。

 敵の目的は、ヤマトを中心とする艦隊の撃破の他に地球艦隊を本星から遠くへと引き離すことも含まれていた。

 

 元々暗黒星団帝国本星の情報がなく、これまで敵の罠を承知で挑んできたのだが、肝心の敵の姿は見えないのではどうしようもない。

 

 地球艦隊は敵本星の手掛かりもなく、連日コスモタイガーを偵察に向かわせながら白色銀河を航海していた。

 

 航海が長引く旅、乗員には不安が募っていく。

 

本当に敵の本星は見つかるのだろうか?

 

故郷は‥‥地球は大丈夫だろうか?

 

 敵の攻撃はないのは本来ならば、喜ばしい事なのだが、敵の情報を求めている今の地球艦隊にとってはこの平穏がある意味苦痛でもあった。

 

 古代兄弟、山南、良馬‥‥艦を統括する者たちも連日不安を抱えたが、それを表に出すことはなかった。

 

 非直の時間、良馬は展望室で一人、外に広がる白色銀河の光景を呆然としながら見ていた。

 

そこへ、

 

「リョーマ、大丈夫?」

 

 ユリーシャがやって来て、良馬の顔がすぐれないことを見抜き、心配そうに声をかけながら、良馬の隣に座る。

 

「あっ、ユリーシャか‥‥うん‥‥大丈夫‥‥とはちょっといいがたいかな‥‥」

 

 良馬はポロっとユリーシャに弱音を吐いた。

 

 ユリーシャが纏う独特の雰囲気の前に隠し事はなぜか出来ない。

 

 彼女はまるですべてを見透かすかのような目で見つめてくるのだから‥‥

 

「大丈夫‥‥きっと見つかるよ‥‥」

 

「えっ?」

 

「リョーマたちが目指している星‥‥」

 

 通常ならば、根拠のない気休めな言葉であるが、何故かユリーシャが言うと、妙な説得力がある。

 

「そうか‥‥どうしてだろうな‥‥君がそう言うと、なんかそんな気がしてきたよ」

 

 良馬がそう言うと、突然、ユリーシャが良馬の身体を倒すと、彼の頭を自らの膝の上に乗せた。

 

「ゆ、ユリーシャちゃん!?」

 

「リョーマ、最近寝てないでしょう?」

 

「えっ?」

 

「今はゆっくり休んで、リョーマ‥‥」

 

 ユリーシャはそう言って、良馬の髪を撫でる。

 

 彼女の言う通り、良馬は最近寝不足だった。

 

 そして、ユリーシャの声、髪を撫でる行為は心地よく、彼はあっという間に静かに寝息を立て始めた。

 

 膝の上で眠る良馬の姿を見て、ユリーシャは微笑む。

 

 傍から見れば、二人の姿はどう見てもカップルの様に見えた。

 

 そんな二人の姿を面白くなさそうに見ていたのは他らなぬギンガだった。

 

 彼女としては、ユリーシャに抗議したいところであるが、眠っている良馬を起こすのはしのびなく、ただ黙って堪えるしかなかった。

 

 しかし、彼女としては、ユリーシャのポジは羨ましく、彼を慰めるのは自分の役割りのはずだった。

 

 現にこの世界に来たばかり、悪夢に魘されていた彼を慰めたのは他ならぬ自分だった。

 

 ギンガとしても女としての面子がある。

 

 このまま黙ってユリーシャの好きにさせるわけにはいかなかった。

 

 しかし、それは自身と良馬との暗黙のルールを破る事を意味していた。

 

 ギンガ自身もそのルールを破る事に関しては、後ろめたい気持ちは当然あった。

 

 でも、婚約者としてはある意味不安を抱くこの状況‥‥

 

 今一度、彼の気持ち‥‥本心をこの耳で聞かなければ、どうしてもこの胸のモヤモヤは晴れなかった。

 

 

そして、この日の夜‥‥

 

まほろば の艦長室‥‥

 

 その部屋のベッドには互いの身体を求めあう獣が二匹いた。

 

 ギンガも良馬も公人である時は、上官と部下の関係‥‥

 

 この関係を壊す事無く、これまで任務をこなしてきた。

 

 しかし、二人は今日、その暗黙のルールを破った。

 

 ギンガはユリーシャに対する嫉妬と不安から、良馬は艦の長として、敵の本星が見つからない不安と焦りから周りを見る余裕がなくなりつつある中で、ギンガからのお誘いを受け、一時的でも今の状況を忘れたかった。

 

互いに暗黙のルールを破ることに対して、後ろめたさは当然あった。

 

 しかし、その理性を破るほど、追い詰められていたのかもしれない。

 

 

 だが、ユリーシャの言う通り、それからすぐに暗黒星団帝国本星の手掛かりをつかむチャンスが訪れることになる‥‥

 




2199でも加藤と原田は航海中のどこかで肉体関係を結んでいたことが最終回にてうかがえるので、良馬とギンガもこのような結果に‥‥


そして、ちょっと早いですが、ティアナのデバイスの設定画が出来たので、ここで紹介をします。

クロス・ミラージュ・改

忍と2200年代の地球の科学技術によって新たに生まれ変わったクロス・ミラージュの姿。

従来のガンモード、ダガーモードの他にサーベルモードが追加された。

サーベルモードでは刀剣部分の下部にフェイトのバルディッシュの様に魔力刃を発生させる。

更にガンモード、サーベルモードに至っては、AMA・AMFでの環境下でも機能を失わないように、それぞれコスモガン、重力サーベルの機能を有しており、半ば質量兵器と化している。


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