星の海へ   作:ステルス兄貴

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百十五話 隠された星

 

管理局がこれまでひた隠しにした不正を密かに暴いたクロノだったが、彼はそれを母親でもあり、上官でもあるリンディに報告し、これを公表して不正にかかわった局員を処罰しようと言うが、リンディは今の管理局の現状を鑑みて今回、クロノが調べ上げた不正を公表しないことを告げる。

 

クロノが調べ上げた不正にはあのボラー連邦への武力制裁にて、殉職した局員も含まれていた。

 

リンディは管理局の現状の他に遺族たちに対するバッシングを危惧した。

 

クロノ自身も遺族たちがバッシングされるのは確かに心苦しいと思いつつも、やはり不正は不正‥‥見過ごすわけにはいかない。

 

それに管理局のイメージダウンをこれ以上回避するのであれば、不正は公表し関わった者を処罰し、早期粛正をしなければ、それこそ管理局のイメージダウンを招きかねない。

 

管理局は自分たちの不正を見過ごすのか!?

 

局員は法律を守らなくてもいいと言う法律でもあるのか!?

 

身内贔屓だ!!

 

などとマスコミや市民から管理局がバッシングされかねない。

 

そうなればまたボラー連邦への武力制裁失敗時みたいな大規模な暴動やデモが起きかねない。

 

組織を守るためと言うのであれば、なおの事、この不正は公表しなければならない。

 

新しい組織に生まれ変わる前に膿は出し切ってしまわねば、たとえ新しい組織へと生まれ変わっても、たちまち組織は腐敗してしまう。

 

リンディの決断に納得できないクロノは当然、抗議したが彼女の決断が変わることはなかった。

 

憤慨したクロノはその日の内に休暇届けを人事課に出すと、なのはとはやての故郷である地球へと向かった。

 

 

「えっ?クロノが休暇届けを!?」

 

「はい。ハラオウン提督でしたら、さきほど、人事課に休暇届を提出し、第97管理外世界へと向かいました」

 

クロノが休暇届けを出したことはすぐにリンディの方でも確認できた。

 

「‥‥そう、分かったわ‥ありがとう」

 

クロノが休暇届けを出して、地球へ向かったことにリンディは特に何も言わなかった。

 

リンディとしてもクロノと少し距離を開ける必要があると思ったし、彼自身にも休息の時間が必要だと思っていた。

 

彼が向かった先の地球にはクロノの妻であるエイミィが居る。

 

彼女がクロノの疲れを癒してくれるだろうとリンディはそう思っていた。

 

管理局が第97管理外世界と定めているこの地球にはハラオウン家のセカンドハウスがあり、そこではフェイトの使い魔であるアルフの他に元局員であり自分の妻であるエイミィと子供たちが住んでいた。

 

「ただいま‥‥」

 

「えっ?クロノ君!?仕事はどうしたの!?」

 

「えっ?お父さん?」

 

「ほんとだ!!お父さんだ!!」

 

突然連絡もなしに帰ってきた旦那の姿に驚くエイミィ。

 

一方、子供たちの方は普段から家にはおらず、なかなか会えない父親の姿を見て、喜んでクロノに抱き着いてくる。

 

そんな子供たちの姿を見てクロノは思わず微笑む。

 

「休みを取ってきたんだ」

 

「じゃあ、しばらくはお家に居るの?」

 

「ああ、お家に居るぞ!!」

 

「やった!!」

 

「わーい!!」

 

子供たちは父親がしばらくの間、家に居ることに喜んでいる。

 

クロノは手に持っていたカバンとミッドで買った土産を子供たちに手渡すと、子供たちはそれを持って家の奥へと走っていく‥‥

 

「‥‥ミッドで‥‥管理局で、なにかあったの?」

 

玄関先で二人っきりになったクロノとエイミィ。

 

突然、連絡もなしに帰ってきてしばらくの間、家に居るという夫に対して、ミッドで‥‥管理局で何かあったのだと思ったエイミィは不安な様子でクロノに何があったのかを訊ねる。

 

「‥‥いや‥たまには、家族でゆっくりと過ごしたいと思ってな‥‥ここ最近ずっと仕事ばかりでこっちの家には戻れていなかったし‥‥」

 

「ええっ!?仕事の方は本当に大丈夫なの!?」

 

「ああ‥‥大丈夫だ‥‥問題ない」

 

ボラー連邦への武力制裁後からクロノはまともに休む時間もなく、家族と過ごす時間も取れなかった。

 

クロノとしてもしばらくの間、管理局から離れ、家族との時間をとり、管理局の事も、仕事のことも忘れたかった‥‥

 

ミッドで夫に何かあったのだと思ったエイミィであったが、こうして久しぶりに家族一緒に過ごせることで、彼には深く訊ねることはなかった。

 

そして、クロノも『元』局員となったエイミィに詳しい事情は説明しなかった。

 

今回、クロノが暴いた不正事実であるが、これを知るきっかけとなったフェイトとの交信の席にはやても居たが、彼女は彼女で新造艦の艦長となったばかりの身で、すっかり忘れていた。

 

クロノがリンディの他にはやてに伝えていなかったのは、クロノもはやての現状を理解した上で、伝えなかった。

 

機動六課をはじめとして様々な部署を歩いたはやてであったが、当然、次元航行艦の艦長なんて役職は初めてであった。

 

慣れない職務になったばかりの彼女に余計なことを背負わせたくはなかったのだ。

 

 

「ねぇ、クロノ君」

 

「ん?なんだ?」

 

夕食後のひと時、子供たちとアルフはすでにベッドに入り夢の中に居る頃、リビングにてエイミィがクロノに話しかける。

 

「フェイトちゃんたちの様子はどう?元気にしている?」

 

エイミィは義妹であるフェイトたちの様子を訊ねる。

 

「ん?あ、ああ‥‥元気だよ‥‥つい、この間も交信したばかりだ」

 

エイミィはフェイトたちが居る地球が暗黒星団帝国に占領され、交信不能となっていることを知らない。

 

妻に余計な心配をさせないようにとそのことを黙っていた。

 

そして、心苦しいながらも彼は妻に嘘をついた。

 

「そう?なら、よかったけど‥‥それで、フェイトちゃんたちはいつぐらいにミッドへ帰ってこれそうなの?」

 

「まだ向こうとの折り合いがつかなくてな‥‥明確な日時は未だに不明だ」

 

「そう‥なんだ‥‥」

 

エイミィは、まだフェイトたちの事以外にも何かを言いたげな顔をしていた。

 

「ん?なんだ?まだ何か言いたそうな顔だけど?」

 

「えっ?ううん、なんでもないよ」

 

エイミィとしてはミッドで‥仕事で夫に何かあったのかを聞きたかったのだが、今の自分は局員ではなく、局員の妻である。

 

彼女も元は局員だったので、情報や機密の重要性は知っている。

 

例え、ミッド‥管理局で何かあったのだとしても夫であるクロノが言わないのであれば、知ることはできない。

 

それは義母であるリンディに聞いても同じだろう。

 

「‥‥ね、ねぇクロノ君」

 

エイミィはもうクロノに聞くことはやめて代わりにもう一つの頼みをすることにした。

 

「ん?なんだ?」

 

「疲れている?」

 

「まぁ、色々あったからな‥‥」

 

「でも、しばらくの間は休むんでしょう?」

 

「ああ、そのつもりだが‥‥」

 

「‥‥だったら‥ねぇ‥‥久しぶりに‥‥」

 

「‥‥」

 

エイミィはクロノの寝間着の袖の部分を摘まむ。

 

彼女の目は、久しぶりにクロノと交わりたいという憂いを含む目をしていた。

 

「あ、ああ‥‥そうだな‥‥」

 

クロノとしても心身ともに疲れてはいたが、管理局でのことを少しでも忘れたいと言う思いがあったので、エイミィからのお誘いに乗った。

 

明かりが消えたハラオウン夫妻の寝室にて、クロノとエイミィ‥‥二人の影が一つへと重なった‥‥

 

クロノは仕事も管理局も、今は忘れて、管理局の提督ではなく、一人の男として、愛妻の身体を堪能することにした‥‥

 

 

クロノが家族の下へと出向き、仕事を忘れている頃、遠く星の海では敵本星の手掛かりを失い、広大な白色銀河の海を敵の本星を求めて航行している地球艦隊の姿があった。

 

そんな中、艦長と通信長と言う上官と部下の立場での公人の際は、男女の仲にならないと暗黙のルールを設けた良馬とギンガであったが、長い航海での不安から二人は誓いを破ってしまい、互いに公人ではなく、一人の男女となった。

 

「‥‥」

 

「ぎ、ギンガ‥‥そ、その‥‥ごめん‥‥」

 

そして、事が終わり、互いに身体を求めあっていた時と異なり、理性を取り戻し、冷静になると互いに暗黙のルールを破ってしまったことに罪悪感を互いに抱く。

 

ギンガはシーツを一糸まとわぬ身体の上に纏い、良馬に背を向けている。

 

良馬も気まずさから、ギンガを直視できずに視線を逸らしている。

 

そして、まず良馬の方が先にギンガに謝る。

 

ギンガからのお誘いからだったとは言え、理性がぶっ飛び、記憶が曖昧で行為中は彼女を乱暴に扱ってしまったかもしれない。

 

それにいくらギンガから誘ってきたとはいえ、強引に断れば済むだけの話だった。

 

最終的に自らの性欲に負けて、ギンガを抱いてしまった。

 

それほど、自分が彼女に飢えていたのかと思うと自己嫌悪さえ抱く。

 

「い、いえ‥‥その‥‥そもそも最初に誘ったのは私の方ですし‥‥」

 

ギンガはゆっくりと振り返り、彼女も良馬に謝る。

 

「ぎ、ギンガ‥‥その‥‥今夜の事は、一時の迷いと言うことで‥‥」

 

「そ、そうですね‥忘れてしまいましょう‥‥お互いに‥‥」

 

「「‥‥」」

 

気まずい空気が流れはしたが、二人は互いに今夜の事は忘れることにした‥‥

 

 

そして、今日も今日とて、地球艦隊は暗黒星団帝国の本星を求めて白色銀河を航行していた。

 

相変わらず敵からの襲撃もない平穏な航海であった。

 

しかし、コスモタイガー隊の索敵活動により、半径約120光年の星図を組み立てることが出来た。

 

これも敵が襲撃して来ず、じっくりと測量する余裕があってのことだった。

 

星図をみると、この周辺は渦状腕内部なのに星が少ない宙域だった。

 

黄色主系列星もほとんどない。

 

この星の少なさも気になるが、もう一つ別の気になる点があった。

 

重力場レンズ効果にて確認できたこの宙域には密集した白色矮星が多数存在していた。

 

白色矮星はなんらかの理由で縮んでしまった巨星の成れの果てで、小さな超重力星である。

 

ヤマトがテレザート星へ向けての航海で、プロキオン星系の外れにもソーサナーと言う白色矮星があった。

 

彗星帝国のナスカはここをヤマトの墓場にしようと潜宙艦隊で襲い掛かるも逆に返り討ちに遭い、ヤマトを仕留めようとした罠に自分がかかり、命を落とした。

 

だが、問題なのは白色矮星ではなく、その横にあるモノだった。

 

そこにあったのは以前、倒した中間補給基地と同型の補給基地だった。

 

もし、明るい恒星の近くなら、星の光に紛れて分からなかったが、暗い白色矮星の近くに居たため、こうして発見することが出来た。

 

無くなった敵本星への手掛かりがつかめるチャンスがやってきた。

 

しかも艦隊ではワープに逃げられてしまうが、あの移動型の基地ならば、敵本星への航路図や位置情報も保有している可能性はかなり高く、動きもそこまで早くはないはずだ。

 

地球艦隊は確認のため、基地があるとされる宙域へと向かった。

 

仮に同型の補給基地でももしかしたら、廃棄された基地の可能性もあった。

 

しかし、向かってみると熱源やエネルギー反応があったので、あの基地は間違いなく稼働していた。

 

外見を確認してみるとやはり、以前戦った中間補給基地と同型の基地だった。

 

そして、あの基地の用途と前回の経験から、あのタイプの基地が敵の補給移動基地であることは間違いなく、その基地がここにあると言うことは、地球艦隊は敵の本星からだいぶ離れたところに居ると言う証明となる。

 

だからこそ、敵の本星の手掛かりとなる情報をこのチャンスに掴まなければならない。

 

基地周辺はアステロイドやガス帯などの障害物が少なく、このまま接近してはこちらも見つかってしまう。

 

以前戦ったことからあの基地自体にはかなりの数の艦艇が収容されていることが分かっている。

 

奇襲をかける前にドック内の艦隊が出てくると厄介だ。

 

相手のレーダーに探知されないように地球艦隊はスロットルを最低限に絞り、ゆっくりと、慎重に基地へと接近する。

 

だが、敵もバカではなく、接近してくる地球艦隊に気づいた。

 

基地では警報が鳴り響き、ドック内の艦船はスクランブル発進の準備が行われる。

そして、準備が出来た艦から次々と基地を発進していく。

 

地球艦隊はコスモタイガーを展開していなかったので、前回の様な奇襲攻撃はもうできない。

 

すでに二十数隻の敵艦が基地を発進し、地球艦隊へと向かっている。

 

数においては不利‥‥

 

一時撤退するか?

 

それとも迎え撃つか?

 

守は後者を選択し、各艦へ戦闘態勢を命じる。

 

ただし、敵艦船の撃破を優先とし、基地本体には手を付けないように厳命する。

 

やっと見つけた敵本星の手掛かりとなりうる情報源をみすみす自らの手で破壊しては元も子もなくなる。

 

しかし、基地自体にも当然防御手段である武装が施されている。

 

基地への不用意な接近は怪我の元になる。

 

敵は左舷に狙撃戦艦と例のα砲搭載艦、右舷に狙撃戦艦と空母、正面に主力戦艦と駆逐艦を展開している。

 

敵は空母とα砲搭載艦を敢えて別々に展開させて勝率を上げよとしていた。

 

地球艦隊からはコスモタイガーを全機出し空母と艦載機、α砲搭載艦の対処にあたらせる。

 

α砲搭載艦に向かったコスモタイガー隊はタキオン阻害チャフを散布し、α砲搭載艦のレーダーをかく乱させる。

 

レーダーを頼ってα砲を撃つα砲搭載艦にとって目を奪われては切り札でもあるα砲を撃てない。

 

その隙にコスモタイガー隊は敵の懐へと入り込み、α砲搭載艦を撃破する。

 

続いてα砲搭載艦の護衛として随伴していた狙撃戦艦へと攻撃目標を移す。

 

空母へと向かったコスモタイガー隊はまず、敵艦載機や狙撃戦艦よりも敵の空母を狙う。

 

敵艦載機の包囲網を突破し、空母へと突っ走る。

 

「ぐわっ!!」

 

「五番機被弾!!墜落します!!」

 

「くっ‥‥かまうな!!全機空母に向け突撃!!」

 

「うわっ!!」

 

「九番機も被弾!!」

 

「怯むな!!続け!!」

 

「敵空母を射程内に捕捉!!」

 

「くらえ!!」

 

狙撃戦艦からの攻撃でコスモタイガー隊に被害が出ても‥‥味方の機が撃ち落されてもコスモタイガー隊は躊躇することなく、止まることなく、敵の空母へと接近し、強化対艦ミサイルを空母の甲板へと打ち込む。

 

強化対艦ミサイルを受けた空母はたちまち火に包まれ爆散する。

 

そして、地球艦隊本隊は正面の敵艦隊を波動砲で一気に殲滅する。

 

拡散モードにしてはその流れ弾が基地へ命中する恐れがあるので、ヤマトと同じ収束モードにて行う。

 

敵をとり逃さぬよう各艦は時間差をつけて波動砲を撃つ。

 

「は、波動砲‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ-!!」

 

「ま、まさかぁぁぁぁぁー!!」

 

「ば、バカなぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「な、なんだとぉぉぉぉぉぉー!!」

 

正面の敵艦隊を波動砲で一掃した地球艦隊。

 

味方の艦隊を撃破された基地では、

 

「だ、第一陣、壊滅」

 

「敵の被害は微少!!」

 

「ぬぅぅ~‥‥第二陣展開!!急げ!!」

 

「しかし、艦隊を出してもまたすぐにあの戦略砲でやられてしまうのではありませんか?」

 

「あれほどの威力を持つ戦略砲だ‥‥エネルギーの消費も激しい筈‥‥そう短時間で連射は出来ん!!相手の懐に飛び込んでしまえば、数に勝る我が軍に勝機はある!!基地からも大型ミサイルを発射準備!!」

 

「はっ!!」

 

基地からは第二陣の艦隊が出撃する。

 

しかし、その陣容は、先程波動砲で撃破した艦隊の様に戦艦と駆逐艦を中心とした艦隊で、空母や狙撃戦艦、α砲搭載艦などの特殊艦艇は居なかった。

 

「敵第二波、基地より出撃を開始!!」

 

敵の第二陣は地球艦隊でもすぐに確認できた。

 

「くそっ、一体何隻いるんだ!?」

 

永倉が再び出現した敵艦隊に対して思わず愚痴る。

 

あの規模の基地なのだから、それなりの数の艦船がいると予想はしていたが、まさか波動砲発射後の隙をついて出すとは‥‥

 

「艦長、波動砲発射後なので、エネルギーの回復まで少し時間がかかります!!」

 

「機関をフル稼働してもエネルギーの充填には最低五分はかかるぞ、艦長」

 

フェリシアと井上は、波動砲発射後なので、エネルギー回復するには時間がかかることを伝える。

 

「実弾だ!!ミサイルと魚雷、そして波動カートリッジ弾を使って敵の第二陣を攻撃する!!砲雷長!!」

 

「了解、波動カートリッジ弾連続装填!!」

 

ショックカノンは波動砲発射後のためにすぐには使えない。

 

波動砲の第二斉射も敵は与える隙はないだろう。

 

ならば、実弾で対抗するまでだ。

 

ゴルバ戦での経験から、波動カートリッジ弾も敵には有効な手段であるはずだ。

 

ヤマトや春藍でも実弾による攻撃を敵の第二陣へと叩き込む。

 

元々実弾に弱い暗黒星団帝国の艦艇‥‥しかもカートリッジの中に波動融合エネルギーが仕込まれていることで、波動砲よりは威力が下がるが、強力な兵器であることには変わらなかった。

 

「っ!?敵基地から大型ミサイルの発射を確認!!」

 

「くそっ、やっぱり撃ってきたか‥‥」

 

基地自体にも何らかの武装が施されており、黙って友軍艦隊が撃沈されていくのを見ているわけがない。

 

攻撃能力を有しているのであれば、基地自体も当然地球艦隊を攻撃してくる。

 

「ミサイルについては無視しろ!!多少の被害はやむを得ない!!敵艦隊の殲滅を優先する!!」

 

攻撃中は波動防壁を展開する事は出来ない。

 

良馬は船体にミサイルからのダメージを受けても敵艦隊の殲滅を優先にした。

 

基地からのミサイルを受けつつも、地球艦隊は敵艦隊の殲滅を優先とし、敵艦船を次々と撃沈していく。

 

懐に入られて混戦となる前に遠距離からの砲撃戦で、一隻でも多くの敵艦を沈めたい。

 

コスモタイガー隊も生き残った敵の空母艦載機部隊と激しいドックファイトを繰り広げ、敵機を撃ち落していく。

 

やがて、敵艦隊、敵艦載機をすべて退けた。

 

残るは基地本体だけとなる。

 

「我が基地の艦隊‥‥す、全て沈黙!!」

 

「うぅ~‥‥」

 

数では勝っていた筈の自軍の艦隊が全滅したことに信じられない基地司令官。

 

「ミサイルを撃ちまくれ!!敵を近づけるな!!」

 

基地司令官は、ミサイルを連射して、地球艦隊へ波動砲を撃たせる余裕を与えないようにする。

 

しかし、まさか地球艦隊がこの基地を破壊することを目的としていないことを基地要員は知る由もない。

 

基地自体はまだミサイル攻撃を継続してくる。

 

さて、問題はここからだ。

 

波動砲で攻撃すれば、当然基地そのものを破壊してしまう。

 

そうなればようやく見つけた敵本星の手掛かりも消えてしまう。

 

だが、このまま基地を放置してもミサイル攻撃でやられてしまうし、折角見つけた手掛かりをみすみす手放すわけにはいかない。

 

なんとかして基地の機能だけを停止しなければならない。

 

ヤマトは通常の波動カートリッジ弾の波動エネルギーを抑えた特殊弾頭で基地を攻撃する。

 

動力炉をさけ、誘爆しないように機能だけを停止させるように撃つ‥‥

 

これはオリンピック級の射撃技術を持つ南部でなければできない凄腕だ。

 

ヤマトから放たれた特殊弾を受け、敵基地は連鎖爆発を起こす。

 

失敗かと思われたが、動力炉への誘爆までとはいかず、半壊程度で爆発は収まった。

 

地球艦隊乗員全員は爆発が収まりホッとしたが、一番安心したのはおそらく南部本人だろう。

 

基地の機能が停止し、あとは航路情報を得るだけだとなり、戦闘班と技術班が敵基地へと乗り込む。

 

「これで、敵さんの星の情報がつかめればいいんですけどね‥‥」

 

「そうありたいもんじゃな」

 

「‥‥」

 

半壊した敵基地へと上陸していく戦闘班と技術班を見ながら永倉と井上が何か成果があることに期待する。

 

コスモタイガー隊や雪風・改も敵基地上陸の護衛にあたり、まほろば、ヤマト、春藍、ハルバード、ファルシオンは周辺の警戒を行う。

 

そして、技術班は敵の航路データを無事に入手し、その解析へと移る。

 

解析の結果、敵本星の座標を示すデータは残念ながら見つからなかった。

 

おそらく基地が攻撃される前、乗員が情報の漏洩を防ぐために消去したのか、基地自体のコンピューターにはインプットされていなかったのかもしれない。

 

ただし、代わりとなるデータとしてこの白色銀河の宇宙航路図を見つけた。

 

その宇宙海図をみると、この白色銀河には大きな異常が検知された。

 

そもそもこれまで地球艦隊が航行してきた宙域はどこも異常な宙域だった。

 

褐色矮星ばかりの宙域‥‥

 

濃密な暗黒ガス帯‥‥

 

恒星を持たずに漂流している惑星‥‥

 

そして、密集している白色矮星‥‥

恒星のスペクトル分布も異常で、太陽の様な黄色主系列星は限りなく少なく、寿命を終えた矮星や巨星が多く分布していた。

 

サルガッソーとは異なる宇宙の墓場の様な星系だ。

 

これは太陽系をはじめとする地球がこれまで進出してきた宇宙の常識からは考えられない様な、異常な宙域だった。

 

もちろん、宇宙のすべての謎が解明されていないのだから、こんな宙域があっても不思議ではない。

 

そして、解析をしていた真田が恒星分布に異常のある範囲を割り出した宙域を表示すると、それはまるで白色銀河に発疹が出来たような感じで、所々に表示されていた。

 

その中の一点は最初に地球艦隊が誘い込まれた例の褐色矮星帯の宙域だった。

 

恒星分布が偏っている宙域を円で囲むと、そこがほぼ中心位置になる。

 

しかし、あの宙域には褐色矮星以外の反応はなく、とても敵本星があるようには見えなかった。

 

当然、真田もこれに疑問を感じ、過去の記録をさかのぼって調べたが、あそこには敵本星どころか敵の基地さえ確認できなかった。

 

だが、あの宙域が円の中心と言うことはあの宙域には何かがある可能性も出てきた。

 

しかし、真田の疑問はまだあった。

 

それは、なぜあの褐色矮星を中心とする円の中だけ、恒星のスペクトル分布に異常があるかだ。

 

そこへ、トチローがある仮説をたてる。

 

それは、暗黒星団帝国が資源採掘をおこない、自然のサイクルが狂ってしまったのではないかと言うのだ。

 

確かに連中は、ガミラス、イスカンダルでも資源採掘を行い、更にオリオン座ペテルギウスのα星でも強引にエネルギーを採掘しようとしていた。

 

あのまま採掘されていればハイパーノヴァが発生するところだった。

 

あの時はヤマト、まほろば が介入し、更には徳川の機転でハイパーノヴァを未然に防ぐことが出来た。

 

しかし、この白色銀河は暗黒星団帝国の領海内‥‥

 

邪魔をする者はいない。

 

であれば、連中は惑星を丸ごと潰せば、それこそ、大量の地下資源を手に入れられる。

 

それが恒星のエネルギー源であるならなおさらである。

 

現にイスカンダルがアスタルにぶつかりそうな時も、サンザーに落ちそうになっても暗黒星団帝国は静観していた。

 

トチローの仮説を聞いた真田はある学者が唱えた理論を思い出した。

 

それはダイソン球殻と言うものであった。

 

ダイソン球殻‥‥それは、20世紀のある学者が唱えた理論で、恒星から出るエネルギーを余す事無く利用するには、恒星を丸ごと包み隠す建造物を作ればいい‥‥

太陽系で分かりやすく例えると、地球そのものをすっぽりと覆うほどの巨大な球を作るということだ。

 

そして、その星に住む人類は球殻の内部を地表として住む‥‥

 

超大型の宇宙コロニーの様なものだ。

 

表面積は地球地表の数億倍‥‥

 

それだけ大きなモノであるなら、どれだけの人口でも養える‥‥

 

そして、エネルギーは太陽がある限り無限に供給することが出来る。

 

まさに理想的な環境である。

 

しかし、現時点の地球の科学力でもそれを実現するのは不可能だ。

 

地球をすっぽりと覆うほどの資源の確保さえ難しい。

 

ただ、この理論が出された時、このような意見も出た‥‥

 

 

いずれ宇宙から、まったく目には見えない『赤外線のみを放射する天体』が見つかった場合、それは高度に発達した文明かもしれない‥‥

 

なぜなら、その天体はまさしくダイソン球殻である可能性が高いからだ‥‥

 

と言う意見だ。

 

しかし、それに関しても無理があるという意見も出た。

 

実際に宇宙には赤外線しか出さない星もあるのではないかと言う意見だ。

 

褐色矮星がそれに当てはまる。

 

だが、20世紀当時には褐色矮星の存在など、確認されず逆に今の地球では赤外線を放射する星=褐色矮星と言う思い込みがある。

 

あの褐色矮星がひしめく宙域にて、確かに褐色矮星は存在し、爆発した星も褐色矮星だった。

 

だが、他の星に関しては、赤外線反応だけで褐色矮星だと判断していた。

 

あの宙域にはそれ以外の反応もなかったことから、あの宙域の星すべてが褐色矮星だと思い込んでいた。

 

何しろ、太陽と同じG2型スペクトルの恒星はおろか、赤外線放出する星以外のどんな恒星も存在していなかった。

 

暗黒星団帝国が周辺の星々の資源を採掘しつくし、自分たちの星を覆い隠すダイソン球殻に等しいものを作りあげたモノだとすれば‥‥

 

あの褐色矮星が存在する宙域に敵の本星があった可能性が高い‥‥

 

地球のパルチザンが、本部をヤマトの地下改修ドックに作ったように敵も地球艦隊が一度探して、去った場所には再び戻ってくることはないと判断し、自分たちの星の近くへと誘い出したのだ。

 

しかも星の姿は、ダイソン球殻で覆っているので、一見すると褐色矮星でまさか、ここが目指している星だとは気づかないだろうという計算を含めて‥‥

 

まさしく灯台下暗しだった‥‥

 

 

その頃、地球艦隊が目指している暗黒星団帝国本星、デザリアム星では‥‥

 

聖総統の下に側近がやってきて、地球艦隊の動向を報告する。

 

「ご報告いたします。地球艦隊は第八補給基地を破壊後、針路を変え、連続ワープに入ったもようです」

 

「何‥‥?」

 

「‥‥して、その予想目的地点は?」

 

聖総統は地球艦隊が向かった先を訊ねる。

 

「はっ‥‥それが‥‥座標ゼロ地点‥‥すなわちこの暗黒星団帝国本星、デザリアムかと‥‥」

 

「な、なんだと‥‥!!」

 

サーダは思わず声が裏返るほど驚く。

 

「ふっ‥‥ははははははははっ!!よし、下がってよいぞ」

 

一方、聖総統の方はなんだか楽しそうだ。

 

「はっ‥‥」

 

「せ、聖総統!!これは‥‥」

 

何故、地球艦隊がこのデザリアム星の位置を突き止めることが出来たのか信じられないサーダ。

 

あれだけ用意周到に罠を巡らせ、地球艦隊をこのデザリアム星から引き離したにもかかわらず、奴らは見事自分たちの星の座標を突き止めたのだからサーダが驚愕するのも無理はなかった。

 

「まぁ、そううろたえるな。どうやってかは知らぬが、奴らは我らがデザリアム星の位置を見事に突き止めたのだ‥‥こうなれば、それ相応の出迎えをしてやろうではないか‥‥」

 

「しかし‥‥」

 

「このような時のために準備を整えていたのであろう‥‥?」

 

「そ、それはそうですが‥‥」

 

「さあ、彼奴等がこの星にたどり着いた時の目を見張るさまを楽しもうではないか。ふははははは‥‥」

 

聖総統には何やら、絶対の自信がある様子だった。

 

 

聖総統の執務室にて、このようなことがあった中、スカリエッティのラボ区画では、

 

「ドクター‥‥」

 

「ん?どうしたんだい?ロベル」

 

「どうも例の地球艦隊ですが、この星の座標を突き止めた様子で、まもなくここへ来るかと‥‥」

 

聖総統の執務室でのやり取りは例のごとくロベルに探知されており、彼女は地球艦隊がこのデザリアム星に接近していることをスカリエッティに伝える。

 

「ほぉ~‥‥では、総統府の連中もさぞや驚き慌てふためいていたのではないかね?」

 

「はい、サーダ様は大変驚愕しておられていました。しかし、聖総統閣下は、特に驚愕する様子もなく、むしろ楽しんでいるかの様子でした」

 

「まぁ、この星の外見を見れば、彼が余裕な訳も分かる‥‥それにどうやら、例の新造艦も完成したみたいだしね」

 

「‥‥」

 

スカリエッティには何故、聖総統が余裕なのか分かる要素があった。

 

「ただ‥‥」

 

「ただ?」

 

「うむ、ただ、これまでの地球艦隊の活躍から、彼らを甘く見ない方が良いかもしれないねぇ~」

 

ただ、スカリエッティは聖総統とは異なりあまり楽観視はしていなかった。

 

「ん?何故ですか?ドクター‥‥戦力、そして科学力でも彼らより、こちらの方が上だと思われますが‥‥」

 

サーダのDNA情報が入っていることから、暗黒星団帝国が地球艦隊に負けるとは思っていない様子のロベル。

 

「まぁ、人生経験ってやつだよ」

 

「?」

 

スカリエッティの言葉にロベルは首を傾げる。

 

彼は現状をミッドに居た頃の自分と今の暗黒星団帝国の状況を重ねて見ていた。

 

管理局との決戦時、無数のガジェット、ナンバーズ、ルーテシア、そして聖王のゆりかごに聖王のクローン(ヴィヴィオ)‥‥

 

これらの要素から自分は決して敗北することはないと思っていた。

 

現に公開陳述会にて、地上本部、機動六課の隊舎を壊滅させ、決戦時の初戦では、地上の切り札とされるアインヘリヤル砲台をすべて潰した。

 

負ける要素を見つける方が難しいとさえ思った。

 

Fの遺作であるフェイトも追い詰め、あの管理局のエースである高町なのはも聖王のクローン(ヴィヴィオ)が追い詰めた。

 

しかし、ほんのわずかな奇跡が小さな綻びとなり、自分は管理局に‥‥機動六課に敗北した。

 

勝負は完全に終わるまで気を抜いてはならない。

 

窮鼠猫を嚙むという言葉通り、下手に追い詰めるだけ追い詰めるだけではなく、一気に決めなければならなかった。

 

故に彼は聖総統のように楽観視はしていなかった。

 

もっとも、敗北したからこそ、今の自分は管理世界に居ただけではお目にかかれない様々な技術を見ることが出来た。

 

それについては感謝している。

 

でも、正直に言って、このデザリアム星に自分の骨を埋めるつもりはない。

 

「‥‥ロベル」

 

「はい、ドクター」

 

「万が一のことを考えて、例の準備をしてくれたまえ」

 

「はっ、承知しました」

 

スカリエッティは状況を見て、いつでもこの星から出ていけるように準備を始めた。

 

 

その頃、連続ワープにて、最初に誘い込まれた褐色矮星の宙域へと戻ってきた地球艦隊。

 

今度は、念入りに周辺の惑星探査を行う。

 

すると、

 

「‥‥ありました!!可視光系反応ゼロ、赤外線反応のみ微弱‥‥球の半径はちょうど1.8天文単位です‥‥」

 

褐色矮星ばかりの宙域にうまく偽装されている個所を見つけた。

 

「まさしく、真田先輩の言う通りだったな、流石だ‥‥パネルに投影してくれ」

 

「了解」

 

まほろば の艦橋にあるメインパネルには星らしき姿は表示されない。

 

「ん?副長、何も表示されていませんよ」

 

パネルを見たギンガは新見に何も映っていない件について訊ねる。

 

「可視光がゼロだからね。ちょっとまって、今赤外線フィルターをかけて見やすくするから‥‥」

 

新見は星の姿を見えるように画像処理をする。

 

すると、赤い姿の星が表示される。

 

「これは‥‥ガス‥‥ですか?」

 

「そう‥‥みたいね‥‥」

 

これについて、真田は、

 

理屈はダイソン球殻と同じだが建造物ではなく、高濃度の暗黒ガスで星系をまるごと包み込んでいるのではないかと言う。

 

確かに人工の建造物では擬態にはならない。

 

もし、人工の建造物なら最初にこの宙域に誘い込まれた時に発見できたはずだ。

 

反対に暗黒ガスならば、十分な擬態となる。

 

もともとこの宙域には暗黒ガスも存在していたし、暗黒ガスの中にまさか星系が隠されているとは夢にも思わない。

 

恒星からのエネルギーは全て暗黒ガスに蓄えられ、敵はそのエネルギーを使用しているのだと考えられる。

 

実に効率的だ。

 

しかし、敵も人類型の宇宙生命体であるいじょう、敵はガスの中に住んでいるわけではなない。

 

このガス球体の中に恒星系と敵の本星がある。

 

地球艦隊は警戒しつつガス球体の中へと入っていく‥‥

 

その中に恒星の反応があった。

 

それは自分たちが住んでいる太陽系と同じ、G型スペックの恒星系だった。

 

ガス球体の中に敵は潜んでおらず、地球艦隊は無事にガス球体の外へと出る。

 

そして、惑星の反応を見つけた。

 

パネルに投影すると、その惑星の姿は‥‥

 

「えっ?」

 

「ま、まさか‥‥」

 

「そ、そんな‥‥」

 

「バカな‥‥」

 

パネルに投影された星の姿を見て、まほろば の乗員は全員目を見開く。

 

いや、まほろば だけではない。

 

おそらくヤマト、春藍の乗員全員が驚いているに違いない。

 

「あの星は‥‥」

 

「ち、地球だ‥‥」

 

パネルに投影されていた惑星の姿は自分たちの故郷、地球と瓜二つの姿をしていた‥‥

 

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