星の海へ   作:ステルス兄貴

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宇宙戦艦ヤマトⅲの銀河系勢力図にて、バース星はボラー連邦領から孤立した点な印象を受けたので、バース星の現状は作中の様な感じになりました。

ベムラーゼ首相はバース星艦隊壊滅の知らせを聞いて態々バース星へと赴むき、ヤマトと囚人たちの反乱により、バース星を消滅させましたが、ベムラーゼ首相は大きく銀河系の東部を迂回したのか、それともワープでバース星の近くに来たのか?謎でした。

ボラー連邦領から起動要塞ゼスパーゼを太陽系の太陽の近くまでワープで持ってくるぐらいですから、ボラー連邦のワープ機関の技術が凄いのか?

それとも製作側はそんな細かいことは気にしなかっただけなのか?

それも気になりました。



百十六話 バース星

 

 地球艦隊がようやく苦労して敵の本拠地、デザリアム星の位置を突き止めた頃、銀河系中心部、核恒星系では、それまで銀河系の北部を中心に版図を拡大してきたボラー連邦であったが、ガルマン星にて突如、反乱と共に外宇宙から謎の艦隊が来襲し、瞬く間にガルマン星を占領してしまった。

 

 その後、ガルマン星はガルマン・ガミラスと名を変え、こともあろうに自分たちボラー連邦に対して宣戦布告をしてきた。

 

 しかもガルマン星周辺のボラー連邦の勢力下の星を次々と攻略し、ボラー連邦の支配権から解放した後、自分たちの勢力下に組み込んでいった。

 

 ボラー連邦国家元首のベムラーゼ首相は以前、自分の勢力下に入り込んできた時空管理局に対して一度は武力制裁を行おうとしたが、いつでも潰せるような弱体組織よりも技術力の高いガルマン星の奪還を最優先とし、管理局よりもガルマン・ガミラスの攻略へと踏み切った。

 

 ベムラーゼのこの決断が管理局の寿命を延ばすこととなった。

 

 例え、ガルマン星と周辺の星々の戦力を得たとはいえ、数においてはまだ自分たちが勝っている。

 

 当初は、短期間でガルマン星を奪還できると思っていたボラー連邦だったが、技術惑星でもあるガルマン・ガミラスの艦隊の前にボラー連邦の制裁艦隊はことごとく敗北した。

 

 戦術においてもガルマン・ガミラスの方が何枚も上手だったのだ。 

 

 そして、現在の勢力図は銀河系の中心部はボラー連邦、ガルマン・ガミラスの二大勢力の構図となった。

 

 そんな数多くのボラー連邦領の中で、取り残される星があった‥‥

 

 ボラー連邦領の一つ、バース星‥‥地球から1500光年、ボラー連邦から35000光年に位置する近隣恒星系バジウド星系第四惑星である。

 

 そこは一年中深い雪で覆われた星で、最高気温は5度と気候は冷涼で、針葉樹林に覆われているなど、大気や鉱物組成、植物の分布状態などは地球のアラスカやカナダと酷似している気候の星だった。

 

 そして、バース星の気候は、奇しくもボラー連邦の本星とも似ている気候の星だった。

 

 このバース星は約十年前までは独立した惑星国家であったが、絶えず周辺の惑星国家から侵略の憂き目にあってきた。

 

 そんな中、ボラー連邦の遠征艦隊が救援に赴き、このバース星を保護国(同盟惑星)として、駐屯艦隊や宇宙艦艇を含む大量の軍事物資をバース星へと持ち込んだ。

 

 バース星の軍人たちもボラー連邦に所属する軍人として組み込まれた。

 

 保護国‥‥なんて聞こえはいいが、見方によってはボラー連邦からの侵略にも見える。

 

 それは管理局の管理世界と同じだ。

 

 そして、ボラー連邦はこの地に大規模な収容所を建設した。

 

 この収容所にはボラー連邦の星系において政治犯と宗教思想犯を主に収容して、強制労働をさせていた。

 

 政治犯は、ボラー連邦領内でベムラーゼの政治運営に異議を唱えたり、ベムラーゼが不機嫌な時にたまたま運悪く、その逆鱗に触れてしまった哀れな者もいれば、視界に入っただけと言う理由だけで役職を解かれ、犯罪者扱いになってしまった者も居た。

 

 宗教犯に至っては、ボラー連邦、ガルマン・ガミラスに問わずに活動しているシャルバート教と言われる信者たちだった。

 

 なお、このシャルバート教に関してはガルマン・ガミラスでも摘発の対象となっている。

 

 そんなバース星にて、このバース星を統治するボローズ総督はあることに頭を抱えていた。

 

 ガルマン・ガミラスが銀河系の中心部を占領し、その後もガルマン・ガミラスは版図を拡大し、銀河系の東部へと進出しており、バース星はボラー連邦の版図の中で、取り残された点となった。

 

 これまではガルマン・ガミラスの勢力など存在せず、銀河系内にあるボラー連邦本星とバース星を我が物顔で、航行できたが、ガルマン・ガミラスが銀河系中心部を占領下においたため、これまで自由に航行していた航路が通行不能となった。

 

 ワープで回避しようにもバース星からボラー連邦領まではかなりの距離がある。

 当然、ガルマン・ガミラスの警戒網はあるだろう。

 

 宇宙は広大なため、見つからない可能性もあるが、あまりにもリスクが高い。

 

 本国もガルマン・ガミラスとの国境際の警備やら、攻防などで、貴重な戦力を遠くのバース星まで送る余裕はないようで、バース星駐屯軍は現有の戦力でバース星の占領を維持するしかなかった。

 

 もちろん、バース星でも独自に宇宙戦闘艦の建造、乗員の訓練などを行っていた。

 

そんな中、ミッドでは‥‥

 

「ええっ!!クロノ君が休暇!?」

 

 はやてはクロノが休暇で自分たちの故郷である地球へ有給休暇で現在管理局に居ないことに意外性を感じるとともに驚いた。

 

「でも、クロノ君はなんで突然休暇何て‥‥」

 

 はやてはクロノが急に有給休暇をとった理由が分からず首を傾げる。

 

「噂ではどうもハラオウン統括官となんか激しく角を突き合わせたみたいですよ」

 

 副官であるグリフィスが何故、クロノが有給休暇を取ったのか?

 

 それについて思い当たる出来事をはやてに伝える。

 

「えっ?クロノ君がリンディ提督と‥‥うーん‥あの親子仲がええ、クロノ君とリンディ提督が‥‥」

 

(い、いったいクロノ君とリンディ提督の間に何があったんやろう‥‥?)

 

 はやてとしてもクロノがリンディと親子喧嘩したというのもやはり、意外性を感じていた。

 

 それほど、クロノとリンディの親子仲は良かったのである。

 

「それよりも艦長、これが今度の航海計画書です」

 

 グリフィスは、はやてに航海計画の計画書を手渡す。

 

 ボラー連邦、ガトランティスのせいで、管理局は活動場所を大幅に削られている。

 

 現在も何とか管理世界の行き来が出来るレベルであり、“海”の本来の目的、ロストロギアの捜索と管理世界になりうる世界の探索は未だに再開の目途が立っていない。

 

 そんな中、はやてが艦長を務めるヴォルフラムは乗組員の熟練訓練に出ようとしていた。

 

 航海する宙域も安全が確保されていることが確認されている。

 

 管理局としても、ボラー連邦の武力制裁の失敗、フェイトと言うエースが不在な中、現在の管理局艦では最新鋭のヴォルフラムと八神はやてと言うエースを失うわけにもいかず、またこのままミッドで何もせず腐らせるわけにもいかず、こうして安全が確保された宙域にて訓練を行ってもらうつもりだった。

 

 ミノフスキーが現在開発を進めている新型宇宙船エンジンを搭載する新型艦に対応できるような乗員を育てなければならない。

 

 今回の航海には訓練校・士官学校の卒業生も乗艦する予定となっている。

 

 ただし、ヴィータとシグナムはミノフスキーの護衛があり、今回の航海に参加させる訳にはいかなかった。

 

 そもそもミノフスキーの護衛が無くとも、六課を卒業した後、ヴィータはなのはと同じ教導隊、シグナムは“空”の本土防衛隊に所属している。

 

 そして、ヴォルフラムの訓練場所は宇宙‥‥

 

 ヴィータもシグナムも畑違いで、参加しても何かの役に立つわけではない。

 一般市民が知ったら、

 

税金の無駄遣いだ!!

 

 とか言われてしまう。

 

 ただ、シャマルに関しては医務官なので、ヴォルフラムに戻ってもらった。

 

 なのはもあれから、次第に立ち直っているので、もう大丈夫だろう。

 

 いざとなれば、スバルたちナカジマ姉妹もミッドに居るし、ナカジマ家がなのはに下宿先を提供しても良いと言っていた。

 

 なのはの方も本当に我慢できない時はお世話になるとゲンヤに打診していた。

 

 なのはのメンタル面の事を気にしつつも、はやては、航海計画の書類に目を通して、

 

「ほな、それじゃあ、この計画書に沿って準備をすすめようか?」

 

「了解です」

 

 はやては次の航海の準備を進めた‥‥

 

 それから数日後、はやてが艦長を務めるヴォルフラムは訓練のため、星の海へと出港していった。

 

 

 訓練自体は平穏そのもので、つつがなく訓練日程をこなしていった。

 

 それは、事前に何度も、念入りに訓練宙域に関しては安全確認をしていたおかげだった。

 

 だが、宇宙の自然は人の予測を大きく裏切ることがある。

 

ビィー!!ビィー!!ビィー!!

 

 突如、ヴォルフラムのブリジットに警報が鳴り響く。

 

「どないしたんや!?」

 

 はやてが慌ててオペレーターに訊ねる。

 

「本艦の至近距離にホワイトホールが突如、出現しました!!」

 

「重力レベル上昇中!!」

 

「ホワイトホールから流星群がこちらに向かってきます!!」

 

 突如出現したホワイトホールとそれに伴う流星群がヴォルフラムに襲い掛かる。

 

「うわっ!!」

 

「きゃぁぁぁー!!」

 

 流星群の隕石がヴォルフラムにあたり、すさまじい衝撃がヴォルフラムの船体に襲い掛かる。

 

「くっ‥‥被害報告!!」

 

 はやてが自艦の被害状況を訊ねる。

 

「シールド機能に問題が生じ、シールド展開不能!!」

 

「流星群、第二陣、接近中!!」

 

「機関は無事か!?」

 

「無事です!!艦長!!」

 

「それなら、強制転移や!!すぐにこの空間から脱出するで!!」

 

 はやてはこの窮地を脱するためにこの場からの強制転移を命ずる。

 

「し、しかし、これでは転移先の座標の設定が出来ません!!」

 

 こんな短時間では転移先の安全の確認が出来ない。

 

 もし、転移先の空間にブラックホールがあれば、吸い込まれてしまうし、アステロイド帯や惑星があったら、星に衝突する可能性もある。

 

「かまへん!!今はここから離脱するのを優先するんや!!」

 

 しかし、はやてはイチかバチかの賭けに出る。

 

「は、はい!!」

 

 ヴォルフラムは現状の打破を優先として、座標を設定せずに転移した。

 

 強制転移したヴォルフラムはどこかの宙域に無事に転移した。

 

 周辺にはブラックホールやホワイトホール、宇宙気流、衝突の危険があるアステロイドや惑星などはない、通常の宇宙空間だった。

 

 はやては賭けになんとか勝った。

 

「つ、通常空間を確認‥‥強制転移‥成功‥‥」

 

 オペレーターはヴォルフラムが居る空間が通常の宇宙空間であることを確認し、強制転移が無事に成功したのだと判断した。

 

「現在位置と艦の状態の確認を急いでや!!」

 

「りょ、了解」

 

 はやてはヴォルフラムの現在位置と損傷個所がないかの確認を急がせる。

 

 ここは訓練航海にない空間なので、ここが一体何処なのかを急いで確認する必要があった。

 

 それに艦のどこかが壊れていれば、損傷個所も急ぎ、修理しなければならない。

 

 ヴォルフラムの乗員が急ぎ、現在位置と艦の状態を確認していると、

 

「か、艦長!!」

 

「どうしたんや?」

 

「本艦の後方に艦影を多数感知!!」

 

「なんやて!?」

 

 ヴォルフラムの背後から艦隊が近づいてきた。

 

「確認急いでや!?」

 

「は、はい」

 

 はやては、オペレーターにどこの勢力の艦隊なのかの確認を急がせる。

 

 少なくとも、管理局‥味方ではないことは確かだ。

 

(これがガトランティスやボラー連邦やったら、マジでヤバいで‥‥)

 

 ここでもし、ガトランティスやボラー連邦の艦隊と出くわしたら、あっという間に撃沈される可能性が高い。

 

 なにしろ、今のヴォルフラムはシールドが張れない状態だったからだ。

 

 迎撃するにしても数が違い過ぎる‥‥

 

 逃げるにしても今の管理局の魔導力炉の性能では、とてもじゃないがガトランティスやボラー連邦の宇宙戦艦を振り切ることは無理だ。

 

 急いでこの場から転移したくともエネルギーの充填がまだ終わっていないので、転移も出来ない。

 

「っ!?か、艦長!!」

 

 艦隊の戦力を確認していたオペレーターは、悲鳴の様な声をあげる。

 

「どないした!?」

 

「接近中の艦隊は‥‥ぼ、ボラー連邦の艦隊です!!」

 

「な、なんやて!?」

 

『っ!?』

 

 オペレーターの報告を聞き、はやては勿論の事、ブリッジに居た全員の顔がこわばる。

 

「間違いないんか!?」

 

「ま、間違いありません。エネルギー反応がボラー連邦の艦と該当します!!」

 

「モニターに表示!!」

 

「は、はい。モニターに表示します」

 

 オペレーターはコンソールを操作して、ブリッジのモニターに接近中の艦隊の姿を表示する。

 

 そこには確かに丸々とずんぐりとし、一見、武装艦には見えない艦影の艦が映し出されていた。

 

 その姿は本局の管理局員ならば見間違えるはずもない‥‥間違いなく接近中の艦隊はボラー連邦の宇宙戦闘艦群だった。

 

「あっ‥‥あっ‥‥」

 

「こ、殺される‥‥」

 

「もうだめだ‥‥」

 

「お、おしまいだ‥‥」

 

 ヴォルフラムのブリッジには絶望した空気が流れる。

 

 自分たちはここで撃沈されてしまうのか?

 

 それとも、捕虜となり、火あぶりの刑か?はたまた銃殺刑か?

 

 いずれにせよ、自分たちは殺される‥‥

 

 そんな絶望した空気と雰囲気がひしひしと伝わってくる。

 

 それは、艦長であるはやても例外ではなく、絶望すると同時に何とかこの場から逃げる方法を模索していた。

 

 勿論、ブリッジ以外でもヴォルフラムの艦内は絶望感が支配していた。

 

そんな中、

 

「か、艦長‥ボラー艦より通信です‥‥!!」

 

(‥‥降伏勧告をしてきたか‥‥)

 

 はやてはこの通信はボラー連邦の艦が自分たちに降伏勧告をしてきたのかと思った。

 

(このまま、無視して逃げるのは無理や‥‥ここは少しでも生き残る方法をとらなアカン‥‥)

 

 ヴォルフラムの艦長として、自分を含めた乗員全員の命を救うため、はやては思考を巡らせ、

 

「‥‥通信回線を開いてや」

 

「えっ?」

 

「艦長!?」

 

 はやての指示を聞いて、ブリッジの乗員はギョッとする。

 

 あの粗暴で野蛮なボラー連邦の連中と話をするつもりか?

 

 話をして、通じる相手だと思っているのか?

 

 どうせ、殺されるなら、無駄な抵抗だとしてもこの場から逃げられるだけ逃げるか、それとも一隻でもいいから一矢報いるべきではないかと思う者も居た。

 

「相手がコンタクトを取ろうとしておるんや‥‥このまま無視しても逃げ切れないし、攻撃したところで、あの数では相手にならへん‥‥それなら、まずは話し合いをしてもええんとちゃうか?」

 

「し、しかし、艦長。相手はあのボラー連邦ですよ!?」

 

 グリフィスは、あのボラー連邦の連中と話し合い何て無理ではないかと思いはやてに声をかける。

 

「例え、ボラー連邦の連中でも、向こうはいきなり攻撃せんと、コンタクトを取ろうとしているんや‥‥話し合いで、解決できるならそれに越したことはないやろう?」

 

「で、ですが‥‥」

 

「私は艦長として、皆の安全を守る義務があるんや」

 

「わ、分かりました‥‥」

 

 はやての言葉を聞いて、グリフィスもブリッジの乗員も納得したみたいで、通信員はボラー連邦の艦との通信回線を開く。

 

「ぼ、ボラー艦との通信回線、開きました‥‥」

 

 ボラー連邦の艦と通信回線が開き、はやてはガチガチに緊張しつつもなんとか平然を保っているように振舞う。

 

 ヴォルフラムの乗員全員が、はやてとボラー連邦のやり取りをハラハラしながら見守っている。

 

 やがて、ヴォルフラムのモニターにボラー連邦側の相手の姿が映った。

 

 しかし、はやてはモニターに映った人物を見て、違和感を覚える。

 

(あれ?確かボラー連邦の人の肌の色は‥‥)

 

「私は、ボラー連邦領、バース星艦隊、ラジェンドラ号艦長のラムである」

 

 モニターに映し出されたラムと言う人物は自分たちと同じ人型の姿の異星人で、欧米人風な彫りの深い顔立ち、緑色の肌に茶色いパーマの髪の毛、そして108部隊の部隊長であり、ギンガとスバルの父親であるゲンヤ・ナカジマと同じように、いかにも叩き上げの軍人と言う雰囲気を纏う人物だった。

 

 だが、ボラー星人はあのベムラーゼの様に人型の異星人ではあるが、肌の色は水色の肌をしている筈で、モニターに映っているラムと言う人物は水色ではなく、緑色の肌をしている。

 

 しかし、率いている艦隊はどうみてもボラー連邦の宇宙戦闘艦であり、ラム自身もボラー連邦の名前を出している。

 

(ボラー連邦領?‥‥ちゅうことはボラー連邦も管理局同様、宇宙にいくつもの属国を持っとるわけか‥‥)

 

 ラムの言うボラー連邦領と言う言葉から、ボラー連邦も自分たち管理局同様、宇宙に出て他の有人惑星を植民地(管理世界)にしているのだと判断した。

 

 そりゃあ、あれだけの強力な宇宙艦艇を有しているのならば、そうした行動に出るのも不思議ではなかった。

 

「じ、時空管理局所属次元航行艦、ヴォルフラム艦長の八神はやてです」

 

 誤魔化してもよかったのかもしれないが、あとでバレた際、印象が悪くなると思ったはやては、誤魔化す事無く、自らが時空管理局に所属していることをラムに伝える。

 

 はやての姿を見たラムは、

 

(時空管理局‥‥以前、ボラー連邦本星に攻め込んだという組織か‥‥それにしても艦長と言う割には若いな‥‥)

 

 ボラー連邦領のバース星にも時空管理局の情報は回っていた。

 

 そして、一艦の長として、はやてに対して若いという印象を受けた。

 

「ヤガミ艦長‥貴官の艦は我がバース星の領海を侵犯している。直ちに退避してもらいたい。こちらの指示に従わぬ時は、貴艦を撃沈する」

 

 ラムは、はやてたちヴォルフラムに領海侵犯をしているので、退避するように警告する。

 

「わ、分かっております。ラム艦長‥ただ、転移するにしてもエネルギーの充填をする必要があるので、ほんの少しで、ええので、待っていただけるでしょうか?」

 

「よろしい‥では、三十分の猶予を与える」

 

「はっ、ありがとうございます、ラム艦長」

 

(た、助かったわ~‥‥よかったでぇ、話が分かる人で‥‥)

 

 はやてはラムに転移の準備が出来たら、さっさとこの宙域から退避するという旨を伝えると、ラムも話を分かってくれたようで、退避する時間の猶予を与えてくれた。

 

 はやてとラム‥二人のやり取りをハラハラした様子で見ていた乗員たちもラムの話を聞いてひとまずはホッと胸を撫で下ろした。

 

 ラジェンドラ号を中心とするバース星艦隊は、ヴォルフラムを後方から警戒する様な陣形でヴォルフラムの動向を窺っている。

 

「か、艦長、空間転移の準備が整いました」

 

 ヴォルフラムはラムが猶予した時間内に転移に必要なエネルギーを充填する事が出来た。

 

「わかった。ほな、転移して、ここから急いでおさらばや」

 

「了解」

 

 やがて、ヴォルフラムは転移の準備が整い、バース星の領海から退避した。

 

 

ラジェンドラ号 艦橋

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ラジェンドラ号からもヴォルフラムが転移した姿を確認した後、警戒態勢を解除した。

 

「‥‥しかし、よろしかったのですか?ラム艦長」

 

 副官がラムに声をかける。

 

「ん?」

 

「あの時空管理局と言う組織は、以前ボラー連邦本星へ侵入した侵略者です。その時空管理局の艦をみすみす見逃したとボローズ総督が知ったら、艦長の立場が‥‥」

 

「かまわぬ」

 

「えっ?」

 

「我々バースの軍人は軍律を守ってこその軍人だ!!領海侵犯をした者にはまずは、退避するように警告する‥‥いきなり攻撃するようでは、争いの芽となる。話し合いで解決できるのであればそれに越したことはない。争いが起きなければ、大事な部下と艦を守ることが出来る‥‥今のバースには兵一人、艦一隻でも無駄にするわけにはいかんのだ」

 

 故郷であるバースは確かにボラー連邦からの保護と言う名目でボラー連邦に組み込まれた。

 

 しかし、自分はバースの軍人であり、ラムはボラー連邦よりも故国バース星への忠誠(愛着)心が強かった。

 

 もし、ヴォルフラムを見つけたのが、ラム艦長の様にバース星人の艦隊ではなく、ボラー連邦の人間が乗った艦隊だったら、ヴォルフラムは今頃宇宙の塵になっていただろう。

 

「艦長‥‥そうですね」

 

 副官は改めてラムの軍人としての在り方に尊敬をもった

 

 

 バース星の領海から無事に転移したヴォルフラムは管理局の管理している領海へと戻った。

 

「通常空間を確認、転移成功‥‥」

 

「本艦の現在位置は‥‥」

 

 オペレーターからヴォルフラムの現在位置の報告を聞き、ブリッジには先程の絶望した空気から安堵した空気へと変わる。

 

「ひやひやしましたね、艦長」

 

 グリフィスがはやてに声をかける。

 

「はぁ~‥‥いやぁ~全くや‥‥生きた心地がせぇへんかったわ‥‥」

 

 はやては袖で額に浮かんだ汗を拭う。

 

(こんな感じをクロノ君や向こうの地球の軍人さんたちは経験してきたんやな‥‥)

 

 ボラー連邦への武力制裁に参加したクロノ。

 

 そしてガミラス、ガトランティスと戦った地球防衛軍の軍人たちはこれ以上の緊張‥‥命を懸けた戦場を体験してきたのかと改めて自覚するはやてだった。

 

(例え新造艦が出来ても無敵と言うわけやないやろうからな、今後も宇宙へ出ればこうした経験は続くんやろうなぁ‥‥)

 

 ミノフスキーが作った艦も宇宙最強・無敵の艦‥‥と言うわけではないだろう。

 

 これまで管理局の次元航行艦がそう思っていた中、いざ宇宙に出てみれば、これまで遭遇した星間国家の宇宙戦闘艦と比べると一番最弱な艦だったと判明したのだ。

 

 だからこそ、ミノフスキーの艦も同じことが言えるのだ。

 

(本局に今回の事を報告すれば、また荒れるかもしれへんなぁ‥‥)

 

 はやては今回の出来事‥‥ボラー連邦に領土が存在した事を報告すれば本局の連中が騒ぎ立てるのは容易に想像できる。

 

 しかし、報告をしなければならない重要な案件だ。

 

(はぁ~‥‥気が重い‥‥)

 

(私もクロノ君みたいに有給をとろうかな‥‥)

 

 本局に帰り、報告書を提出したら、自分もクロノ同様、有給休暇をとろうかと考えるはやて。

 

しかし‥‥

 

(無理やろうな‥‥)

 

 重要な案件を報告してそのままとんずらして知らん顔では他の局員にも迷惑をかける可能性が高い。

 

 はやては一嵐が吹くだろうと予測しつつもヴォルフラムの艦長室で、今回の一件の報告書をしたため始めた。

 

 

 はやての予想通り、彼女からの報告を受けた本局は驚愕した。

 

「あれだけの戦力と技術力を持つ、星間国家だ‥‥植民地を有しているのも不思議ではないか‥‥」

 

「なにを悠長なことを言っている!?」

 

「その通りだ!!一刻も早く、新造艦を建造しなければ、いつボラーの連中がミッドを始めとする管理世界に侵攻してくるか分からんのだぞ!?」

 

「あの老いぼれは一体何をしているんだ!?管理世界に危機が迫っているというのに!?」

 

怒りの矛先は未だに新型エンジンを製造できていないミノフスキーへと向けられる。

 

「だいたい、あの老いぼれはちゃんと仕事をしているのか!?」

 

「彼の護衛にあたっている八神シグナム二尉と八神ヴィータ三尉からの報告では机にかじりっぱなしだそうです」

 

「それにしたって遅いぞ!!」

 

「何分、彼一人で行っていますからなぁ~」

 

「やはり、本局の技術官を助手として派遣すべきではありませんか?」

 

「う~む‥しかし‥‥」

 

 ミノフスキーの存在をあまり知られたくはない本局であるが、一人では時間がかかる。

 

 それならば、本局の技術官を助手として派遣すればいいという提案が今になって出てきた。

 

「それに技術を継承するのは我々管理局なのですから、今のうちに派遣してもよろしいのでは?」

 

「うーん‥‥よかろう。本局の技術官の派遣を許可しよう」

 

こうしてミノフスキーの下に助手として本局の技術官が派遣されることとなった。

 

「ええっ!!」

 

「私たちが‥ですか?」

 

 人事課のレティの下に呼びだされたマリエルとシャリオは今回の辞令を聞いて驚いた。

 

「貴女たちも風の噂で聞いていると思うけど、現在、本局ではボラー連邦からの亡命者であるミノフスキー博士に新型の宇宙戦闘艦のエンジンの設計と船体の設計を依頼しています」

 

「あの噂は本当だったんですね‥‥」

 

「まさか、ボラー連邦の人が管理局に居たなんて‥‥」

 

「でも、信用できるんですか?その人‥‥」

 

 シャリオがミノフスキーは本当に信頼がおける人物なのかと問う。

 

「彼の護衛にあたっている八神ヴィータ三尉からの報告では、彼は本物の技術者だそうよ」

 

「「‥‥」」

 

 本物の技術者と言われてもやはり、ボラー連邦の人間‥‥不安になるのは当然だった。

 

「でも、何故、急に本局の技術官を助手として派遣することになったんですか?」

 

 マリエルは自分たちがミノフスキーの助手に選ばれた経緯をレティに訊ねる。

 

「八神はやて艦長が先日、訓練航海でボラー連邦の勢力下に誤って転移したみたいなの」

 

「ボラー連邦の勢力下に!?」

 

「それで、はやてさんは無事だったんですか!?」

 

「ええ、報告では話の通じる相手だったみたいで、その場は何とか転移して退避に成功したみたいよ」

 

「そうですか‥‥」

 

「良かった‥‥」

 

「ただ、その件でボラー連邦も私たち管理局のようにいくつかの世界を管理においていることが判明したの‥‥」

 

「まぁ、あれだけの技術と戦力を持った世界ですからね‥‥」

 

「当然でしょうね」

 

「その件を本局は危惧して、一刻も早く次元航行艦の戦力を整備することが急務になったの‥‥でも、現状はミノフスキー博士一人で行っているわ」

 

「一人で‥‥」

 

「そう‥ミノフスキー博士が一流の技術者でも人一人では、限りがあるわ。そこで、今回、博士の下に助手を派遣することが決まったのよ」

 

「「‥‥」」

 

 ボラー連邦の人間の下で助手として働くというのは正直不安がある。

 

 しかし、技術者としては、ボラー連邦の技術力には興味がある。

 

 それに彼の下には彼の護衛としてシグナムとヴィータが居る。

 

 六課でもそれぞれの分隊の副隊長‥管理局でもエース級の局員がいるのであれば、滅多なことは起きないだろう。

 

「わかりました。その辞令、謹んでお受けいたします」

 

「ま、マリエルさん!?」

 

 ボラー連邦の人間の下で働くことを了承したマリエルに驚くシャリオ。

 

「い、いいんですか!?相手はあのボラー連邦の人ですよ!?」

 

「そうね、確かに不安はあるけど、あのボラー連邦の技術がどんなモノなのか‥‥技術者としては興味があるじゃない?」

 

「ま、まぁ、それはそうですけど‥‥」

 

 シャリオとしてもマリエル同様、ボラー連邦の技術には興味がある。

 

「わ、わかりました。私もその辞令、お受けいたします」

 

 シャリオも最終的に自らの知的好奇心に負けて、今回の話を受けることにした。

 

 

 マリエルとシャリオがミノフスキーの助手として派遣されることが決定した頃、

 

 未だに暗黒星団帝国の占領下におかれている地球では‥‥

 

「うーん‥‥」

 

 フェイトが中嶋家で用意してもらった部屋で唸っていた。

 

 彼女の視線の先にはベッドの上に広げられた防衛軍からもらった制服が広げられている。

 

 まほろば に救助されてから、この地球に戻るまでお世話になった制服で、フェイトとティアナはそのまま貰っていた。

 

 なお、ティアナはパルチザンに参加している間、この制服を着用し、戦っている。

 この制服は、ボディースーツっぽいデザインであるが、丈夫でヘルメットとこの気密手袋とブーツを着用すれば、ある程度宇宙空間でも活動できる優れものだ。

 

 フェイトはこの素材を基に新たなバリアジャケットのデザインを考案していた。

 

 特に真・ソニックフォームはフェイトの得意とする速さを活かすために布の部分を大幅に削っているが、肌の露出部分が多いため、防御力が低下している。

 

 それをカバーするのにこの防衛軍の制服は肌の露出も少なく丈夫‥腕や足の部分をカバー出来ているので、うってつけだ。

 

 そこへ、ヴィヴィオがやってきた。

 

「フェイトママ、どうしたの?怖い顔をして‥‥」

 

「あっ、ヴィヴィオ‥ちょっとバリアジャケットのデザインで悩んでいるのよ」

 

「デザイン?」

 

「そう‥‥バリアジャケットはその名前の通り、魔導師の防御力を上げるいわば鎧みたいなものなの‥‥ヴィヴィオもセットアップした時に服装が変わるでしょう?」

 

「うん」

 

「ママはデザインの他にもう少し機能を上げたいデザインにしたくてね‥‥」

 

「そんなことできるの?」

 

「出来なくはないんだろうけど、フェイトママとしてはこの制服の素材を組み込めないかな?と思って‥‥」

 

 そう言ってフェイトはヴィヴィオに防衛軍の制服を見せる。

 

「その服どうしたの?」

 

「これは、まほろば で貰ったんだよ。とっても丈夫で、着やすいんだよ」

 

「へぇ~‥‥」

 

「ヴィヴィオも着てみる?」

 

「えっ?いいの?」

 

「うん、いいよ」

 

 フェイトはヴィヴィオに防衛軍の制服の着心地を体感してもらう。

 

 一度、デバイスを起動させて、大人モードになってもらったのち、ヴィヴィオに防衛軍の制服を着せる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「どう?ヴィヴィオ」

 

「フェイトママの言う通り、本当にいい着心地だね」

 

「でしょう?‥‥デザインは変更できても、この素材の着心地や機能までは再現できないからね‥‥その辺をなんとか出来ないか、迷っているんだよ」

 

「うーん‥‥そうだ!!」

 

「ん?どうしたの?ヴィヴィオ」

 

「忍さんに頼めばなんとかならないかな?」

 

「えっ?忍?」

 

「うん。ヴィヴィオのデバイスを作ってくれたのも忍さんだし、忍さんなら、なんとか出来るんじゃないかな?」

 

「あっ、そっか!!‥‥あっ、でも、肝心のその忍がどこにいるのか分かっていないんだよね」

 

「あっ‥‥」

 

 バリアジャケットのデザイン変更に関して、要である忍の行方が分からない。

 

「うーん‥‥どこにいるんだろう‥‥」

 

(大丈夫かな?忍‥‥)

 

 海鳴‥‥いや、世界でも有数のトップレベルの月村グループの総裁である忍は、暗黒星団帝国の地球襲来の時、あの規模の屋敷の所有者だ。

 

 地球側の要人の一人として、暗黒星団帝国に捕まっているかもしれない。

 

 忍が捕まっているとして、どこに捕まっているのか?

 

 無事なのか?

 

 それは、フェイトには分からない。

 

 パルチザンとして戦っているティアナならば、忍の情報を何か知っているかもしれない。

 

 しかし、そのティアナとも連絡がつけようがない。

 

 今は、忍、ティアナの無事を祈ることしかできなかった。

 

 そして、もし、忍が無事に戻ってくれば、彼女にバリアジャケットの素材の変更を頼もうと決めたフェイトだった。

 

 フェイトもまさか、この時、忍がティアナたちパルチザンに助けられて、共に戦っていることを知る由もなかった。

 

「うーん‥‥それなら、ヴィヴィオもバリアジャケットのデザインを変えてもらおうかな‥‥?」

 

「えっ?」

 

 ヴィヴィオもバリアジャケットのデザインと素材を変更してもらおうと言う。

 

「どうしたの?ヴィヴィオも突然そんなことを言って‥‥」

 

「ヴィヴィオの場合、大人モードだとあの格好でしょう?」

 

「うん、そうだね」

 

「あの格好だと、なのはママもきっと驚いちゃうと思って‥‥」

 

「うーん‥‥確かに‥‥」

 

 ヴィヴィオの大人モードの時のバリアジャケットのデザインはJS事件において、聖王のゆりかご内で、なのはと対峙した聖王モードの時と同じデザインのバリアジャケットのデザインだった。

 

 ヴィヴィオが初めてデバイスを起動させた時、フェイトは腰が抜けるほど驚いていた。

 

 なのはにはデバイスを貰ったことを話したが、なのはは、それが大人モードでバリアジャケットのデザインが聖王モードの時と同じであることを知らない。

 

 ならば、自分もミッドに帰る前にバリアジャケットのデザインを変更したいと思うヴィヴィオであった。

 

 当然、素材も防衛軍の制服と同じ素材で作られたモノを‥‥

 

 その後、二人は忍の無事を信じ、彼女が帰ってきた時にバリアジャケットのデザインと素材を変更してもらうため、新しいバリアジャケットのデザインを考えるのであった。

 




ヴィヴィオとフェイトのバリアジャケットの新しいデザイン‥‥描けたら描いてみます。

今回は鉄郎の帽子とマントを羽織ったヴィヴィオも描いてみました。

ただ、帽子がとんがり魔女っ子帽子だったら、ハロウィンのコスプレみたいに見える‥‥


【挿絵表示】



UAが10万を突破しました!!

これも読者さんたちのおかげです!!

ありがとうございます!!

そして、今後もよろしくお願いします。
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