星の海へ   作:ステルス兄貴

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百十七話 疑惑の星

 

 

 地球を救うため、暗黒星団帝国の本星、デザリアム星を目指し黒色銀河、白色銀河へとやってきた地球艦隊‥‥

 

 苦労の末、地球艦隊はようやくデザリアム星の座標を掴んだ。

 

 デザリアム星を目指したのだが、デザリアム星と思しき星の姿はなんと、自分たちの故郷‥地球と瓜二つの姿だった。

 

「あ、あれは‥‥」

 

「ち、地球だ‥‥」

 

「ば、バカな‥‥っ!?」

 

 当然、デザリアム星と思われた星の姿を見て地球艦隊の乗員は驚愕する。

 

「我々は地球に戻ってきてしまったのか?」

 

「そ、そんな筈は‥‥」

 

 ここで焦ったのは各艦の航海班だった。

 

 航路計算を間違って入力してしまったのか?

 

 しかし、一隻ならばともかく、ヤマト、まほろば、春藍、雪風・改、ハルバード、ファルシオンすべての地球艦隊がこうして地球へ辿り着いている。

 

(いや、あれは本当に地球なのか?いくら、ワープ機関が発達したとはいえ、一回の連続ワープで、白色銀河から太陽系まで戻るのは不可能だ‥‥)

 

 良馬は、目の前にある地球が本当に自分たちの故郷である地球なのかと疑問に思った。

 

「副長」

 

「は、はい」

 

「あの星の周辺に艦隊は確認できるか?」

 

「艦隊ですか?」

 

「そうだ」

 

「‥‥いえ、確認できません。この空間を航行しているのは我々だけです」

 

「そうか‥‥」

 

 新見の報告を聞いてますます、良馬が抱いた違和感が強くなる。

 

(現状の地球は、暗黒星団帝国に占領されている筈だ。それにもかかわらず、占領軍の宇宙艦隊が、地球の周辺に展開していないのはあまりにも妙だ‥‥占領軍すべての宇宙艦隊が地表に着陸しているのか?)

 

 地球と思われる星の周辺に暗黒星団帝国の艦隊が不在であることに良馬が違和感を覚えている中、

 

「おい、CIC!!航路計算はちゃんとやったのか!?」

 

 永倉はCICに航路計算は間違いないのかと問う。

 

「三度、再チェックをしましたが、航路計算に間違いはありません!!」

 

 CICからの報告では、三回もチェックしたが、航路計算には間違いはないと言う。

 

(で、あれば、やはりあの星は地球ではない可能性が高いな‥‥)

 

「通信長」

 

「は、はい」

 

「ヤマトと春藍に通信を繋いでくれ」

 

「りょ、了解」

 

 ギンガは急ぎ、ヤマトと春藍に連絡を取る。

 

「古代艦長、山南艦長‥‥」

 

「おお、月村か‥‥」

 

 ヤマト航海長の島も春藍の航海長も顔色が悪い。

 

 敵の母星だと思っていたら、地球に辿り着いてしまったのだから、無理はない。

 

「あの眼前の星をどう思うのか意見を聞きたく、こうして通信を送りました」

 

「うむ、あの星はどうみても地球に見えるが‥‥」

 

「航路計算ではミスはないようだ。だから、単にあの星が地球とも言い切れない」

 

「はい。広大な宇宙ならば、姿形が地球に似ている星があっても不思議ではありませんからね」

 

 ガトランティスはともかく、イスカンダルも青い海が広がる星であり、ギンガが生まれたミッドチルダも同様だった。

 

 青い星=地球 と言うのは些か軽率な判断である。

 

「しかし、そうだとしてもかなり天文学的な確率だぞ」

 

「真田さんはどう思いますか?」

 

 良馬は、ヤマト副長兼技術班班長の真田にも意見を求める。

 

「この映像だけでは判断しかねるな‥‥」

 

 真田もこの眼前の星が地球だとはまだ判断していない様子だ。

 

「ブラックホールを抜けるとホワイトホールの入口へ続き、元の宇宙へ続く出入り口があると言う説を聞きましたが‥‥」

 

「暗黒星雲がブラックホールで、白色銀河がホワイトホール‥‥と言うことか?」

 

 色的には確かに暗黒星雲は黒で白色銀河は白だ。

 

しかし、

 

「だが、暗黒星雲も白色銀河も確かに星雲として存在していた。現に白色銀河では敵と交戦もしたからな」

 

「ひょっとしたら、我々が行ったワープに何らかの障害が生じて、異次元の空間を通り、様々な空間に間欠的に出現する出入り口から出てしまったのかもしれない」

 

「それに、今の地球は暗黒星団帝国の占領下に置かれています。その占領軍の宇宙艦隊が地球の周りに居ない事と、地表に着陸しているとしても、未だに何のリアクションもないのは妙です」

 

 良馬は守と山南に自分が抱いた違和感を伝える。

 

「うむ、そうだな‥‥そういえば、異次元空間では通常の空間とは時間軸の流れが異なると聞いたことがある。もしかしたら、我々の眼前にある地球は我々が知る時間軸の地球ではないのかもしれない」

 

「なるほど‥‥あの星が過去か未来の地球である可能性もあると言うわけですね」

 

「うむ、故に占領軍の艦船が出撃して来ないのかもしれない」

 

 様々な憶測が飛び交うが、どれもこれも憶測の域を出ていない。

 

「いや、もしかすると、月村の言う通り、ただ地球に似た青い星と言うだけかもしれない。まずはあの星の地表の様子を探ってみよう‥‥」

 

 そして、真田も良馬同様、あの星が地球に似た青い星である可能性もあるので、あの星が本当に地球なのか?

 

 それとも地球に似た青い星なのかを調査するため、地表の様子を見てみることにした。

 

「サーシア、あの星の雲の下に隠れた地形をスキャンしてみてくれ」

 

「はい。パネルに投影します」

 

 ヤマト同様、まほろば、春藍でもあの星の地表の様子をスキャンしてみて、それぞれの艦橋にあるパネルに映し出す。

 

 しかし、それをみて地球艦隊の乗員たちはますます困惑する。

 

 あの星の雲の下に広がる地形も地球と全く同じ地形をしていた。

 

 アフリカ大陸、オーストラリア大陸、ユーラシア大陸‥‥大陸の地形も位置も地球と全く同じだった。

 

さらに、

 

「あそこのクレーター‥‥あれはガミラスの遊星爆弾で出来たクレーターですよ!!」

 

「しかも、アフリカにはあの彗星帝国の巨大戦艦で出来た砲撃の後もありますよ!!」

 

「‥‥」

 

 大陸の位置、ガミラス、ガトランティスとの戦火の跡‥‥

 

 それらの要素からあの眼前の星が地球に似た星‥‥と言う可能性がどんどん薄れていく。

 

そんな中、

 

「進、調査隊のメンバーを選出してくれ」

 

 守が古代に調査隊のメンバーを選ぶように指示を出す。

 

「調査隊?」

 

「攻撃もしてこないようだし、着陸して様子を探ってみるんだ」

 

 守の言う通り、確かにあの星からは何のリアクションもなく、不気味な平穏な時間が流れている。

 

 シャンブローの時と同様に実際にあの星の地表に降りてみれば、あの星が本当に地球なのか?

 

 それとも地球ではないのかを確認できる。

 

「ただ、メンバーの中にアナライザーを入れるのを忘れるな。カメラを通して、地上の様子をこちらでも見ておきたいからな」

 

 調査隊のメンバーにアナライザーは確定の様だ。

 

 まぁ、アナライザーならば搭載されたカメラから地球艦隊へ地上の映像をリアルタイムで送信することが出来る。

 

 カメラを構えて映像を送るよりも怪しまれずに済む。

 

「わかりました。では、島、南部、相原、そしてアナライザーとぼくの五人であの星に降ります」

 

 古代が調査隊のメンバーを選出して、いざあの星へと降りようとした時、

 

「‥‥私も行きます!!」

 

 サーシアも調査隊に志願した。

 

「サーシア‥‥君はダメだ。危険な任務かもしれないんだぞ」

 

 当然、古代はサーシアの調査隊の参加には難色を示した。

 

「お願い‥‥叔父様、お父様。私の力が、何か役立つかもしれないでしょう‥‥?」

 

 アナライザーの他に自分が持つ超能力が何か役立つかもしれないとサーシアにしては珍しく調査隊の参加には意固地だ。

 

「‥‥」

 

 古代はそう言われて考えこむ。

 

 確かにサーシアの超能力ならば、アナライザーや自分たちが見落としがちな小さな違和感を感じ取れるかもしれない。

 

「‥‥よし、わかった」

 

「ありがとう!!叔父様!!」

 

 古代は渋々ながらもサーシアの調査隊の同行を認めた。

 

「だが、何か起こった場合、すぐにアナライザーの後ろに隠れるようにするんだぞ」

 

「はい」

 

「アナライザーも万が一の事が起きたら、サーシアを守ってくれ」

 

「ワカリマシタ。サーシアさん、ワタシノ後ロナラ、絶対ニ安全デス!!」

 

「ええ、頼りにしているわ、アナライザー」

 

「いいですか?兄さん」

 

 古代は次にサーシアの父親である守に、彼女を連れていってもいいか、許可を求める。

 

「うむ‥‥だが、気をつけろ。あの惑星が地球だとしても、何が待ち受けているかわからんのだ‥‥サーシアのことも、よろしく頼むぞ」

 

「はい」

 

「古代艦長、こちらからも調査隊を派遣しましょうか?」

 

 良馬は、まほろば からもあの星の調査隊員を派遣しようかと具申する。

 

「いや、あまり大勢で行っても相手を警戒させるだけだ。調査は進たち、六人で行わせる」

 

 守は調査隊のメンバーは、ヤマトから選出した六人として、それ以上の人員は送らないことにした。

 

 良馬は守の決定を、まほろば の艦内に放送し、あの星がまだ正式に地球だと判断された訳ではないので、落ち着いて現状維持に努めるように伝える。

 

 放送を聞いたユリーシャは、念話でサーシアにコンタクトをとる。

 

 未知の星へわざわざ志願して調査に行くなんてあまりにサーシアらしくない行動だったからだ。

 

 ユリーシャはサーシアの立ち位置を自分に置き換えてみた。

 

 これから調査隊が向かう星は地球に似ている未知の星でもあり、敵の本拠地かもしれない。

 

 そんな星に向かうのだから無事に戻れる保証もない。

 

 だからこそ、調査隊のメンバーの中にサーシアの大切な人が居るのではないか?

ユリーシャはそう思ったのだ。

 

 もし、まほろば から調査隊が向かうとして、そのメンバーの中に良馬が居たら、 きっと自分もサーシアの様に志願していたに違いない。

 

(姉様‥‥)

 

(ん?ユリーシャ?)

 

(姉様、どうして、調査隊に志願したの?)

 

(‥‥)

 

(もしかして、姉様は調査隊の誰かが好きなの?)

 

(っ!?)

 

 ユリーシャのストレートな問いにサーシアは思わずビクッと体を震わせる。

 それは魔力にもブレが生じたので、ユリーシャにもサーシアが動揺したことが分かった。

 

(‥‥姉様が好きなのって‥‥もしかして、進叔父様?)

 

(‥‥)

 

 これまでの航海中、サーシアとユリーシャは互いに念話で会話をしていた。

 

 その中で、古代が自分の事をよく雪と間違えると愚痴っていた。

 

 と言うよりも、何故かサーシアの話題は父親である守よりも叔父である古代の方が多かった。

 

 しかも古代の事をユリーシャに話している時のサーシアはとても楽しそうに声が弾んでいた。

 

 それにより、サーシアが古代に好意を持っていることはまだ幼心が残るユリーシャでも分かった。

 

 何よりも自分自身が似たような感覚を良馬に抱いていたのだ。

 

 サーシアのこの行動から、自分が良馬に抱いている気持ちもきっと、サーシアと同じように、彼の事を好いているのだと最近になってユリーシャは学んだ。

 

(やっぱり、姉様は進叔父様の事を‥‥)

 

(うん‥‥好き‥‥叔父様ではなく、一人の男性として‥‥でも、叔父様には雪さんが居る‥‥だから、私は少しでも叔父様の役に立てればそれでいい‥‥)

 

(‥‥)

 

 サーシアの気持ちは何となくだが、理解は出来る。

 

 自分だって良馬とギンガがとても仲が良いのはこの目で見てきている。

 

 でも、自分はまだ諦めていない。

 

 サーシアの場合、雪のこともあるが、叔父と姪の関係から、実ることは非常に難しい。

 

 しかし、自分の場合、良馬とは血縁関係はないので、血縁と言う問題に関してはクリアーしている。

 

 後は自分の事を一人の異性として見てもらえばいい。

 

 とはいえ、赤ん坊の頃から知っている良馬はやはり、ユリーシャの事を異性と言うよりもどうしても妹の様にしか見ていない。

 

 それは古代も同じで、サーシアの事を姪でもあり、娘のように思っていた。

 

 だからこそ、サーシアはたとえ、異性として見てくれなくても自分は古代のために何か役立ちたいと思い、今回の調査隊に志願したのだとユリーシャに語った。

 

(姉様が進叔父様のために役立ちたいと言う気持ちはわかった‥‥でも、絶対に危険な真似は止めてね、姉様が傷つくのをお父様も進叔父様もきっと望んではいないだろうから‥‥)

 

(‥‥え、ええ。わかったわ)

 

 念話ではそう言うが、サーシアは心の中に既に一つの決意を固めていた。

 

(ごめんなさい、ユリーシャ‥‥もし、私に万が一の事あれば、貴女がイスカンダル王家を受け継いで‥‥)

 

 

 調査隊のメンバーは上陸用舟艇で地球と思われる謎の星へと降下していく。

 

 地球艦隊の乗員たちは固唾を飲んでその様子を見守っている。

 

 しかし、大気圏を通り過ぎても地表からは迎撃のミサイルはおろか戦闘機一機の姿も見えず、静まり返っている。

 

 やがて、雲を抜けると、下にはきらめくばかりに幾学的に立体化された都市の姿が見えてきた。

 

 だが、この都市にも人っ子一人姿が見えない。

 

「きれいな街だ‥‥」

 

「でも、誰も居ませんよ‥‥まるで、ゴーストタウンだ‥‥」

 

「それに戦火の跡が全くない‥‥」

 

「やはり、ここは地球じゃないのか?それとも俺たちの知る時代の地球ではないのか?」

 

 古代たちを乗せた上陸用舟艇は着陸して地上を走行するが、やはり人の姿は見えない。

 

 それに地球を占領している筈の暗黒星団帝国の兵士の姿もだ。

 

 やがて、上陸用舟艇は街はずれを走行していると、前方に宮殿の様な建物が見えてきた。

 

「あ、あれは!?なんでしょう!?」

 

「宮殿‥‥みたいだな‥‥」

 

「古代、やはりここは地球じゃないんじゃないか?」

 

 島が古代にここはやはり地球ではないと確信めいたように言う。

 

「地球じゃない?それじゃあ、ここはなんなんだ?それにまだ、この星が俺たちの時代の地球じゃない‥‥未来か過去の地球である可能性だってあるじゃないか」

 

「人が居ないことから、少なくとも過去の地球ではないことが確かだが、未来の地球でもない気がするんだ」

 

「気のせいだろう?地球じゃなければここはなんなんだ?」

 

「やはり、敵の星しかないだろう?」

 

 ガミラスの遊星爆弾、彗星帝国の超巨大戦艦、ガトランティスの砲撃跡、人の姿が全く見えないこと、あんな宮殿の様な建物は見たことがない事からこの地球が少なくとも過去の地球ではないことは確かだ。

 

 もちろん、自分たちが知っている故郷の地球でもない。

 

 となると、残された可能性は、敵の本星であるか未来の地球であるかのどちらかだ。

 しかし、島は未来の地球でもない気がすると言う。

 

で、あれば、やはりここは‥‥

 

「じゃあ、ここが敵の星なら、何故敵が攻撃をしてこない?妙じゃないか」

 

 もし、ここが本当に島の言う通り、敵の星であるならば、宇宙に居るヤマトを含む地球艦隊、そして自分たちが敵の襲撃を受けないのはあまりにもおかしい。

 

「そ、それは‥‥」

 

 調査隊の中でも困惑とした空気が流れる。

 

「叔父様、島さん、まだ結論を出すのは早いでしょう?」

 

 そこへ、サーシアが仲裁に入る。

 

「そ、そうだな‥ともかく、あの宮殿の様な建物を調べてみよう‥‥何か手掛かりがつかめるかもしれない」

 

 上陸用舟艇は宮殿の様な建物の前まで着くと、古代たちは降りて宮殿の様な建物を調べることにした。

 

すると、

 

「チカクニ、セイメイ、ハンノウ、アリ」

 

 アナライザーのセンサーがピカピカと光りながら自分たちの近くに生き物が居ることを知らせる。

 

 古代たちは万が一を想定して、コスモガンに手を伸ばす。

 

「コチラニ、キマス」

 

 やがて、宮殿の様な建物から一人の女の人がやって来た。

 

「ひ、人が居ます」

 

「女の人だ‥‥」

 

 古代たちが警戒する中、その女性は平然とした様子で古代たちに近づく。

 

「あなたは‥‥?」

 

 古代は近づいてきた女性に訊ねる。

 

「私はサーダ‥‥」

 

 女性は自分の名前を古代たちにつげる。

 

「お迎えに上がりました。聖総統、スカルダート様がお待ちかねです」

 

「聖総統?」

 

 聞いたことのない国家元首名に首をかしげる古代。

 

「教えてください‥‥ここは地球なんですか?」

 

 南部がサーダにここが地球なのか、それとも違う星なのかを訊ねる。

 

「聖総統にお会いになれば、わかりますわ‥‥さあ。こちらへ‥‥」

 

 まぁ、敵が自分たちの事を馬鹿正直に言うはずもないが、ここでこうして立ち尽くしていてもここが地球なのか、それとも違う星なのか分からない。

 

 罠だとしてもここはサーダの誘いに乗らなければ、この星の正体を掴めそうにない。

 

 古代たちはサーダの後についていった。

 

 

地球艦隊がこの地球に似た星に着た頃、某所では‥‥

 

「ほほう、あれが噂の地球艦隊か‥‥確かに艦影から管理局とも設計思想が全然違うねぇ‥‥さて、ここからは聖総統閣下の演技を見せてもらおうか?はたして彼らを騙すことは出来るかな?」

 

 モニターに表示された地球艦隊の姿を見て、紫色の髪に白衣を着た男は口元をニヤリと歪め、事の成り行きをまるで映画か演劇を見るかのように見守った。

 

 

 サーダの後ろをついていくと、宮殿の通路には沢山の絵画や彫刻が飾られていた。

 

 どれもこれも、ガミラスの戦災を運よく生き残った貴重な絵画と彫刻だった。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』 『モナリザ』 

 

ミケランジェロの『ビーナスの誕生』 『ダビデ像』

 

フェルメールの 『真珠の耳飾りの少女』

 

ムンクの 『叫び』

 

ドラクロワの 『民衆を率いる自由の女神』

 

ジャン・シメオン・シャルダンの 『日除けをかぶる自画像』『食前の祈り』

 

ロダンの 『考える人』

 

ルーヴル美術館で展示・管理されていた『ミロのヴィーナス』

 

ツタンカーメンの黄金のマスク

 

エミール=アントワーヌ・ブールデルの『弓をひくヘラクレス』

 

 その他にもゴッホやゴーギャン、ピカソ、ルノワール、葛飾北斎、喜多川歌麿、写楽など、これまでの地球の歴史の中で大芸術家と呼ばれる芸術家たちの絵画や彫刻の作品が並ぶ通路は宮殿の通路と言うよりも美術館の様な感じだ。

 

「これは‥‥やはり地球の‥‥」

 

 これらの絵画や彫刻はどうみても地球の文化財である。 

 

 姿形、地形、文化財‥‥これらの要素から古代の中ではますますこの星が未来の地球ではないかと言う疑惑が強くなる。

 

 

宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋

 

「艦長、アナライザーより、通信です」

 

 宮殿の様な建物の通路を歩いていたアナライザーは自身に搭載されたカメラを通して、地球艦隊にリアルタイムで現状を映像付きで送った。

 

「うむ、パネルに映してくれ」

 

「了解」

 

 艦橋員の視線は第一艦橋のメインパネルへと向けられる。 

 

「こ、これはっ!?」

 

「すべて地球の美術品じゃないか‥‥?」

 

 ヤマトを始めとする地球艦隊でもアナライザーから送られてきた映像から宮殿の通路に飾られている絵画や彫刻を見て、古代同様やはりあの星は敵の星ではなく、地球なのではないかと言う雰囲気が高まりつつあった。

 

「どう思う?真田」

 

 守は真田に意見を訊ねる。

 

 こう見えて、真田は月の遊園地での事故が起こる前は、絵描きを目指していた。

 故に絵画や彫刻にもある程度精通していた。

 

「‥‥まだ、判断はつきません」

 

 真田は顔を歪ませつつ、まだ判断を下せなかった。

 

 地球にも精巧に作られた贋作も存在している。

 

 地球の事を調べた暗黒星団帝国ならば、もしかしたら、こうした精巧に作られた贋作を用意できる可能性もあるのだ。

 

(ん?‥‥何かしら‥なにか違和感が‥‥)

 

 この時、新見はアナライザーから送られてきた映像を見て、何か違和感を覚えた。

 

 やがて、サーダに案内されて古代たちは玉座の様な大きな部屋に案内された。

 

 すると、奥の方から堂々たる貫禄に髪は金髪で、赤いポンチョの様な衣服を纏った奇妙な風貌の男が椅子に座りながら奥から現れた。

 

 肌の色はガミラス人ともガトランティス人とも異なり、サーダや自分たちと地球人と同じ肌の色をしていた。

 

「ヤマトの諸君‥‥よくぞ来られた。私が聖総統のスカルダートだ」

 

(ん?何故、古代君たちがヤマトの乗員だと知っているんだ?)

 

 聖総統、スカルダートは、まだ自分たちが名乗りもしていないにもかかわらず、古代たちがヤマトの乗員であることを見抜いており、『ヤマトの諸君』と言ってきた。

 

 アナライザーからの映像付き通信は当然、まほろば にも送られており、スカルダートが古代たちに発した第一声に疑惑を抱く良馬だった。

 

「‥‥我々は、諸君を第一級の賓客として迎えることにした。安心せられよ」

 

 周辺に怪しい素振りをした武装兵士の姿が見えないことから少なくとも歓迎はされている様だ。

 

「敵ではないと言うことか‥‥?」

 

 南部が訝しむように呟く。

 

 いきなり、敵ではないと言われてもちょっと信じがたい。

 

「さて、諸君‥‥さっそくご鑑賞いただいた我々の古典美術品はいかがだったかな?」

 

 スカルダートは先程、通路に飾られていた絵画や彫刻の感想を古代たちに訊ねてきた。

 

「あなた方の美術品?」

 

「左様‥‥この星に何世紀も前から伝わる由緒正しい美術品で、あのガミラスとの戦災から奇跡的に生き残ったまさに我々人類の宝の数々だ」

 

「‥‥」

 

「君たちが疑問に思うのも無理はない。この星は君たちの地球から200年未来の地球なのだよ」

 

「っ!?」

 

「200年後の‥‥未来の地球‥‥?」

 

 スカルダートはこの星は自分たちの地球から200年未来の地球‥西暦2400年代の地球だと言う。

 

(なるほど、未来人だから、古代君たちがヤマトの乗員だと知っていたのか‥‥でも、なんだか、胡散臭いがな‥‥)

 

「やっぱり‥‥」

 

「どうりで都市の様子が違って見えたわけだ‥‥」

 

 確かにこの地球がまだ未来の地球である可能性はあった。

 

 その可能性をスカルダートは自身の口から古代たち‥‥地球艦隊の乗員に宣言するかのように言う。

 

 スカルダートの言う通り200年後の未来の地球ならば、暗黒星団帝国との戦火の跡が見当たらないのも不自然ではない。

 

「その通り‥‥君たちの視点から見て、150年後に‥‥太陽の暴走によって太陽系のすべての惑星は消滅する大災害が起きた」

 

「‥‥」

 

「我々は君たちで例えると、未来の技術により地球だけはなんとかこの白色銀河へとワープさせることに成功し、地球‥そして生命の種を永らえさせることに成功したのだ‥‥」

 

「しかし、なぜそんな未来の地球が、我々の時代に‥‥?」

 

 古代はスカルダートに同じ時間軸に現在と未来の地球‥‥二つの地球が存在することが可能なのかと訊ねる。

 

「‥‥いくら進んだ科学技術とは言え。星一つを何十万光年も隔てた銀河へと移動させたのだ‥‥その無謀な作業の中でミスが起こったのだよ」

 

「ミス‥‥?」

 

 スカルダートは古代の質問に答えるかのように同じ時間軸に現在と未来の地球が存在している理由を語りだす。

 

「左様‥‥地球は星ごと白色銀河へと移動するとともに過去の時空へと戻されてしまったのだ」

 

「そんな突拍子もない話を信じろと言うのですか!?」

 

 この星が未来の地球でもないと思っていた島はスカルダートに対して、そんなSF映画か小説みたいな出来事が起こるのかと疑問に思ってスカルダートにかみつく。

 

「‥‥」

 

 サーシアもなんだか困惑している様子だ。

 

「ふっ、信じろと言っているわけではない。私はただ、事実を述べているだけだ‥‥」

 

 まぁ、スカルダートの話は島の言うとり、あまりにも突拍子がない話であるが、彼の言うことが全て嘘であると言う証拠もない。

 

 しかし、彼の雰囲気から、スカルダートの話があまりにも突拍子もなく嘘くさい。

 

「ともかく、ゆっくりくつろいでくれたまえ。そして君たち自身の未来でもご覧いただこう」

 

「我々の‥‥未来だって‥‥?」

 

 古代が困惑する中、自分たちをここまで案内してきたサーダは飲み物が入ったグラスが乗るカートを押してやって来た。

 

「どうぞ」

 

「はぁ、どうも‥‥」

 

 そして、彼女は古代たちにグラスを手渡す。

 

 なお、この時サーダは手袋をつけておらず、素手の状態だった。

 

 困惑しながらも古代たちはサーダからグラスを受け取る。

 

 グラスが行き渡ると、玉座の間はまるで映画館の様に照明が落とされ暗くなると、空間スクリーンが出現し、そこにある映像が映し出される。

 

 そこにはこれまでヤマトが戦ってきたガミラスやガトランティスの戦いの記録、中間基地やグロータスのゴルバ群との戦いの映像が映し出される。

 

 そして、最後には砂嵐で乱れる映像となるが、ノイズにかき消されながらも音声らしきものが流れ始めた。

 

「‥‥ら、ヤマ‥‥こちら‥‥ヤ‥‥」

 

「これはちょうど、200年前‥‥この星‥‥つまり地球でキャッチした通信波の記録だ‥‥あまりにも遠くからの通信のため、ノイズが酷いがね‥‥」

 

「こ、古代さん‥‥この声は‥‥」

 

 ノイズ交りに聞こえる声に南部は聞き覚えがある様子だ。

 

「‥‥こち‥‥ヤマト‥‥‥‥こちらヤマト‥‥我々は現在、白色銀河において敵の大艦隊に包囲されている‥‥既に僚艦、まほろば、春藍は撃沈され‥‥」

 

「これは‥‥古代、お前の声だぞ!?」

 

 島もこのノイズ交じりの声が古代の声であること見抜く。

 

「‥‥」

 

 古代はスクリーンから流れるノイズ交じりの自分の声に困惑する。

 

 実際に自分はこんな通信を地球へ送った覚えはないし、まほろば と 春藍も撃沈なんてされていない。

 

 古代が困惑する中、映像は続いていく。

 

 やがて、ノイズが徐々に収まり、映像が鮮明に映り始める。

 

「‥‥波動エンジンに大きな損傷を受け、現在、航行不能‥‥乗員も七割以上が死傷し‥‥次の攻撃を耐えきれるとは思えない‥‥地球のみんな‥‥すまない‥‥ヤマトは‥‥ヤマトは‥‥‥‥うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 やがて、ヤマトが暗黒星団帝国の最新鋭艦と思われる大型戦艦の攻撃をうけて撃沈される映像が流れる。

 

 しかも、下には『西暦2402年 ヤマト 帰還せず』なんてタイトルまで加えられている。

 

ガシャーン!!

 

 古代たちはあまりのショックから、手に持っていたグラスを床に落とす。

 

 勿論、これらの映像はヤマト以外にまほろば、春藍にも送られており、各艦の乗員たちは困惑する。

 

 しかし、その中で良馬は、スカルダートが見せた映像と話の中で、地球が暗黒星団帝国に占領された件について一切触れていないことに疑問を感じた。

 

 仮にあの映像が真実だとして、ヤマト、まほろば、春藍が撃沈されたとして、暗黒星団帝国に占領された地球はどうなったのか?

 

 それらを一切、スカルダートは語っていなかったからだ。

 

 一方で調査隊メンバーはあまりにもショッキングな映像のためか未だに唖然としながら、スクリーンを見ている。

 

「ヤマトが‥‥ヤマトが沈む‥‥!?そんなバカな!!」

 

「あれがヤマトの最後だと言うのか‥‥?」

 

「ヤマトは地球に還らないなんて‥‥」

 

「でたらめな映像を見せるのはやめてくれ!!」

 

 元々この地球が未来の地球でないと信じている島はスカルダートにこんなのは合成映像であり、でたらめだと声を荒げる。

 

「これが事実だ‥‥君たちにとっては未来だが、我々にとっては既に決定し、過ぎ去った過去なのだよ‥‥諸君、ヤマトは2200年代の地球には帰れない‥‥君たちが生き残るただ一つの方法は、このまま降伏してこの星に永住することだ」

 

「降伏?‥‥すると、お前たちは‥‥」

 

 スカルダートの口から出てきた『降伏』と言う言葉に反応する古代。

 

「そう‥‥私は現在の地球‥‥君たちから見た未来の地球‥暗黒星団帝国を治める国家元首なのだ」

 

 スカルダートは未来の地球=暗黒星団帝国だと言い放つ。

 

「暗黒星団帝国っ!!」

 

「じゃあ、地球へ侵攻してきたのはやはり、お前たちか!?」

 

「先程、『我々が』地球を移動させ、崩壊から救ったと言ったが、いつ『地球人類が』といったかね?地球は我々、暗黒星団帝国に占領される運命にあり、そして太陽系はいずれ崩壊してしまうのだ‥‥」

 

 良馬が感じた疑問をここでスカルダートは語りだす。

 

「これは予言でも何でもない。全て事実だ。私は確定した歴史を語っているだけなのだよ」

 

「くそっ‥‥」

 

「地球を侵略したくせに、偉そうなことを!!」

 

 島や南部、相原は苦虫を嚙み潰したようにしてスカルダートを睨みつける。

 

「フフフ‥‥そう構えることはない‥‥君たちは重核子爆弾の起爆コントロール装置を求めて、はるばるここまでやって来たのだろう?」

 

「っ!?」

 

「どうしてそれを‥‥」

 

「ふっ、それぐらいのことはわかる‥‥しかし、無駄なことだ。今見せた通り、地球はいずれ暗黒星団帝国のモノとなる運命にある。君たちが我々、暗黒星団帝国の母星だと思って捜し求めた星は、君たちの地球だったわけだよ‥‥いや、正確には200年先の未来‥‥そして、君たち地球人類が住んでいた星‥‥と言うべきかな?‥‥フフフ‥‥」

 

 地球に地球人類が住んでいたことを過去形で言うスカルダート。

 

「地球は‥‥暗黒星団帝国に勝てないのか‥‥?勝てなかったのか‥‥?」

 

「200年先の未来人相手では‥‥やはり‥‥」

 

「そのとおり‥‥重核子爆弾を止めることなどできん。‥‥止める方法など、最初から存在しないのだよ。悪いことは言わない。この星に残って生き残る道を選びたまえ。私としても例え過去とはいえ、地球人をむやみに殺したくはない」

 

「いや、ヤマトは帰る‥‥2200年代の地球に‥‥重核子爆弾を止めることができないというのならば、地球に戻り、最後の最後まで戦ってみせる!!」

 

 古代はスカルダートに降伏はしないと宣言する。

 

 ガミラスとの戦いの時もガトランティスの戦いの時も、ヤマトは‥‥地球は最後まで諦めなかった。

 

 きっと、地球では今でも暗黒星団帝国の占領軍相手に奮戦している戦士たちが居る。

 

 彼らのためにも‥‥そして、自分たちのためにもここで諦めて降伏するわけにはいかない。

 

「たわけたことを‥‥いくらあがこうとも、君たちは君たちの運命の糸からは逃げることはできないのだ」

 

「いや!!我々の運命は我々で決める!!」

 

(そうだな‥‥過去は変えられなくても未来は変えられる‥‥スカルダートが未来人であり、あの映像の歴史が過去のものでも、俺たちにとっては未来の事だ‥‥あんな未来、こっちから願い下げだ)

 

 良馬も古代と同じく、暗黒星団帝国に降伏なんてするつもりはサラサラなかった。

 

 それはきっと、山南も‥いや、地球艦隊、地球で戦っている戦士全員が同じだろう。

 

「そうか‥‥それは実に残念だ‥‥せっかく、ここまで来たことに敬意を表して生き残れるチャンスを与えたと言うのに‥‥それをなげうって、滅びることが分かっている過去の地球に戻ろうというのか?過ぎ去ってしまった歴史を変えようと言うのか?やれるものなら、やってみるがいい‥‥フハハハハハ‥‥」

 

 スカルダートは高笑いをして、椅子ごと奥へと下がって行った。

 

「くそっ!!」

 

「やめろ、古代‥‥行こう」

 

 古代をなだめ、島は此処を出ていこうと言う。

 

「‥‥」

 

 相原はこの時、古代たち他の調査隊メンバーはヤマトが撃沈されたショックで手に持っていたグラスを床に落としたが、彼はグラスを落とさなかった。

 

 そして、相原はそのグラスをこっそり持ち帰ることにした。

 

此処が本当に未来の地球なのか?

 

あの映像は本当の事なのか?

 

 まだ半分信じられない相原はこの世界の物が本当に地球の物なのか、ヤマトに帰って真田に調べてもらうつもりだった。

 

 此処が未来の地球であり、暗黒星団帝国が地球を占領したのであったとしても、地球の物質組成が自分たちの知る地球の物と変化したとは考えにくい。

 

 このグラスの物質組成が地球にある物質なのか?

 

 それとも地球には存在しない物質で構成されているのか?

 

 もし、このグラスの物質組成が地球には存在しない物質で構成されていたら、スカルダートの此処が未来の地球であること、彼が見せたあの映像もすべて嘘と言うことになる。

 

 だが、もし地球にある物質であるものならば‥‥

 

 とはいえ、今はまだ結論は出せないが、それを知るためにもまずはこのグラスを調べてもらう必要があった。

 

 しかし、後に相原のこの機転と行動は大きな結果をもたらすことになる。

 

 

 調査隊のメンバーは玉座の間を後にして、ヤマトに戻るため、上陸用舟艇へと向かっている中、サーシアは一人、何かを決意した顔をしていた。

 

(私の役目はここに残ること‥‥そして‥‥)

 

 しかし、古代たちはサーシアの表情には気づいていなかった。

 

 サーシアはみんなの一番後ろをトボトボと歩いていたが、宮殿の玄関口まで来ると急に立ち止まってしまう。

 

「ん?ほら、サーシア、どうした?急いで」

 

 サーシアの様子に気づいた古代が彼女に急ぐように促す。

 

「‥‥」

 

 しかし、サーシアは何か思い詰めた顔をして、その場から動こうとはしない。

 

「どうしたんだ?サーシア」

 

 古代はサーシアの行動に違和感を覚える。

 

 そして、サーシアの近くへと寄る。

 

 すると、サーシアは古代に衝撃的な言葉を言った。

 




ネタバレですが、ヴィヴィオのバリアジャケットとフェイトの真・ソニックフォーム・改の絵を描きましたので、ここに展示します。

手描きなので、見る場合は自己責任でお願いします。


【挿絵表示】


ヴィヴィオに関してはイメージとしてFateのセイバーの甲冑です。


【挿絵表示】


フェイトの場合、あまり代わり映えがありませんが、上部はタンクトップ下部はニーソックスの部分をヤマトの女性乗務員の制服でカバーしている感じで、足は防具金具付きのブーツを履いている感じです。
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