星の海へ   作:ステルス兄貴

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白衣の人物の偽名は中の人繋がりです。


百十八話 サーシアの決意

 

 長く、苦心の末にたどり着いた暗黒星団帝国の本星、デザリアム星の外見は地球そっくりな星だった。

 当初はただ外見が似ているだけだと思っていたのだが、地表にはガミラスとガトランティスの戦争で出来た戦災の痕も確認できた。

 そんな中、古代を中心とする調査隊が件の星へと直接降下して、現地を調査することになった。

 調査隊は敵の攻撃を受けることなく、無事に星へとたどり着く。

 地表へ着くと、そこには超近代化された未来都市が広がっていたが、都市には人の姿は見えずゴーストタウンの様だった。

 それに今の地球は暗黒星団帝国に占領されているのに、占領軍の兵士の姿も戦禍の痕も全くない。

 困惑する中、調査隊は街はずれに見慣れない宮殿を見つけた。

 そこで、古代たちはサーダと言う女性に出会った。

 そして、彼女の案内の下、この星の国家元首である聖総統、スカルダートと呼ばれる人物の下に通された。

 サーダに案内されている中、宮殿の通路には自分たちがこれまでの人生の中で一度はテレビや本の中で見た有名な芸術家が作った絵画や彫刻などの芸術品が飾られていた。

それらの芸術品やガミラス、ガトランティスの戦災の痕からやはり、この星は敵の本星ではなく、地球なのではないかと言う疑惑が高まる。

 やがて、この星の国家元首、聖総統、スカルダートが古代たちの前に現れた。

 そして、彼が言うにはこの地球は、自分たちの知る2200年代の地球から200年後の2400年代の未来の地球であることを告げられる。

 一見、突拍子もなく、信じられない馬鹿馬鹿しい話であるが、スカルダートは同じ次元に二つの地球が存在する事と、古代たち、ヤマト、そして地球艦隊の未来の映像を見せた。

 それによると、地球艦隊は暗黒星団帝国の艦隊に敗れ、地球を取り戻すことに失敗する歴史となっていた。

 ヤマトが撃沈される映像を見せられ、唖然とする古代たち。

 さらにスカルダートはこの200年後の地球こそが暗黒星団帝国であることを告げた。

 そして、古代たち‥‥地球艦隊に降伏を勧告してきた。

 だが、ガミラス、ガトランティス、そしてこれまでの暗黒星団帝国との戦いでも自分たちは絶望せず、地球のために戦ってきた。

 

 

未来の映像を見せられたから何だというのだ。

 

未来は変えられる。

 

 それを信じ、古代たちはスカルダートの降伏勧告を蹴って地球に帰ると宣言し、ヤマトに戻ることにした。

 

 スカルダートと古代たちのやり取りはこの星の某所にある研究区画のモニターで表示されていた。

 そのやり取りを見ていた紫髪に白衣を着た人物は、

 

「ハハハハハ‥‥200年後の地球だって!?面白い設定を考えるな、彼は‥‥聖総統なんかではなく、役者としても十分に食べていけるんじゃないか?もっとも彼の素顔ではあまりにも不気味で強面だからね。舞台の上に立つには、今被っているマスクを着けなればならないがね‥‥ハハハハハ‥‥」

 

 腹を抱えて笑っていた。

 さらにその人物が言うには、スカルダートが古代たちの前に見せた姿はまるで、真の姿ではないかの様に言う。

 

「そんなに面白い事でしょうか?」

 

 白衣の人物の傍に控える女性は、何故ここまで彼が大爆笑しているのか分からない様子で、やや冷ややかな目で見ている。

 

「おっと、これは失礼‥‥けど、実際笑っちゃうだろう?もしも立場が逆だったら君だって腹抱えて笑いこけているよ」

 

「そうでしょうか?」

 

 やはり、傍に控えている女性は、理解できない様子だった。

 

 

 古代たちがヤマトに帰るため、乗ってきた上陸用舟艇に向かっていると、突然、サーシアは歩みを止めた。

 

「どうしたんだ?サーシア」

 

 古代がサーシアに近寄り、声をかける。

 すると、サーシアは言うべきか一瞬迷ったが、自身が考えているままを古代に行った。

 

「‥‥叔父様、私は‥‥ここに残ります」

 

「なんだって!?」

 

 古代はサーシアが何を言ったのか一瞬、理解できなかった。

 

「じょ、冗談だろう?サーシア。一体どうしたというんだ!?」

 

 古代はサーシアに何故、こんな胡散臭い星に残るのかを問うが、サーシアは古代の問いに応えず、クルリと踵を返して宮殿の方へと走り出す。

 

「待ってくれ!!サーシア!!」

 

「古代さん!?」

 

「ちょっと、待っていてくれ!!サーシアを連れ戻してくる!!」

 

 古代は他のメンバーに声をかけ、慌ててサーシアを追いかける。

 後ろから自分を追いかけてくる古代の足音が聞こえるが、サーシアは止まることなく、走る。

 宮殿の中に入り、大広間を出て角を曲がり、停止しているエスカレーターを駆け昇る。

 エスカレーターの上のロビーには、美しい花々が沢山いけてあった。

 サーシアは背をかがめて、その花壇の隅に隠れた。

 しかし、普段から体を鍛えている古代とまだ少女のサーシアの体力差はあり、すぐに追いつかれ、隠れてもすぐに見つかってしまった。

 

「サーシア、冗談だろう?ここに残るなんて‥‥」

 

「いいえ、本当よ」

 

 やはり、聞き間違いではなく、サーシアはこの星に残るという。

 

「どうして、残るなんて言うんだい?」

 

「私の身体は、半分は地球人だけれど、半分はイスカンダル人‥‥叔父様たち地球人から見れば、宇宙人‥‥私には、今の地球よりも200年後のこの地球の方が住みやすいの‥‥それに滅ぶことが分かっている地球に残るなんて‥‥私にはイスカンダル王家を引き継がなければならない使命があるの‥‥ここで死ぬわけにはいかないわ」

 

「‥‥サーシア、それは君の本音なのか?君は本気でそんなことを言っているのか?」

 

 サーシアが残る理由があまりにもサーシアらしくない。

 勿論これはサーシアの本心ではない。

 サーシアは本音を隠し、思わず俯く。

 すると古代はサーシアをジッと見つめる。

 古代に‥‥好意を寄せる異性に見つめられ、サーシアはどうしようもなく、胸の中が熱く、悲しくなる。

 

「本当の事を言ってくれ、サーシア。君は何か隠しているんじゃないか?」

 

 サーシアは顔を上げるが、古代の顔をまともに見ることは出来ない。

 

「隠していることなんてないわ‥‥これが私の本心よ‥‥私は死にたくない‥‥」

 

「サーシア‥‥」

 

 口ではそう言っているが、古代にはやはり、サーシアが言っている事が本心であるとはどうしても信じられない。

 しかし、いくら問いただしてもサーシアは本音を言わないだろう。

 

「‥‥」

 

 気まずい空気が古代とサーシアの間に流れる。

 ただ、古代が自分の事をジッと見つめてくると、次第に眼の奥から涙がこみ上げ、それと同時に胸の熱さが増していく。

 それと同時にドロドロとした嫉妬心の様なものも増大していく。

 

「それに叔父様‥‥」

 

「な、なんだい?サーシア」

 

「私に『一緒に帰れ』なんて、残酷なことを言わないで!!」

 

「さ、サーシア?」

 

 ついに我慢できずにサーシアは胸の中の不満を爆発させた。

 古代はサーシアの変貌に驚き唖然とする。

 

「叔父様には雪さんがいる!!あなたの心には、私が入り込むところなんか、どこにもない‥‥」

 

「サーシア‥‥その‥‥それは‥‥」

 

 古代はサーシアがもしかして自分の事を叔父ではなく、一人の異性として見ていたのかと思った。

 自惚れかと思ったが、サーシアの次の言葉でそれは確信に変わる。

 

「ええ‥‥でも、叔父様は私の叔父様ですものね‥‥初めから分かっていたのに‥‥絶対に叶うはずもないのに‥‥」

 

 もし、自分もユリーシャの様に月村家に預けられていたら、ユリーシャの様に古代ではなく、良馬に好意を持ったかもしれない。

 彼もギンガと付き合っていたが、世の中には略奪愛と言うものがあり、サーシアもユリーシャも美人だし、叔父である古代よりも倫理的にはセーフ‥‥なのだろうか?

 しかし、これは 『もし~』 『たられば‥‥』の話でもう遅い。

 自分は叔父である古代に許されざる恋心を抱いてしまったのだ。

 

「私‥‥私‥‥さようなら!!」

 

 サーシアは身を翻して再び走り出した。

 

「サーシア!!」

 

 古代は当然、サーシアを追いかける。

 

「来ないで!!来ないで!!叔父様!!」

 

 サーシアは走り続けながら、背後から追いかけてくる古代に対して叫ぶ。

 

「待ってくれ!!サーシア!!」

 

 古代もサーシアに向かって叫ぶが、サーシアは走りを止めようとはしない。

 

「叔父様!!少しでも私が好きなら、追ってこないで!!」

 

 後から後からこみ上げてくる涙で頬を濡らし、サーシアはひたすら走り続ける。

 その時、サーシアの行く手に長いベルトウェイが目に入る。

 サーシアはそのベルトウェイに向かい、走りながら壁にあるスイッチを押した。

 そのスイッチがどういう機能なのか、初めてここに来て、初めて見るものなのに、サーシアにはそれが分かっていたかの様だった。

 これも一流の科学技術士の真田に預けられ、彼の下で成長した賜物なのかもしれない。

 ボタンが押されるとベルトウェイの入口に格子シャッターが降りてきて、サーシアと古代の間を遮った。

 

「サーシア!!」

 

 格子シャッターの開け方が分からない古代はベルトウェイに乗り、奥へと消えていくサーシアをただ呆然と立ち尽くして見ているだけしかできなかった。

 

(ごめんなさい、叔父様‥‥私は‥‥私は、本当にあなたを愛してしまったの‥‥でも、サーシアはこの星に残って、自分の役目を果たします‥‥)

 

 サーシア自身、スカルダートが見せたあの未来の映像なんて信じてはいない。

 それにこの星が200年後の地球だということも信じていない。

 サーシアは決して自分の命が惜しいからこの星に残ったわけではない。

 連中の化けの皮を剥いで、それを古代と守‥‥ヤマトに知らせるために残ったのだ。

 

 

 古代とサーシアの二人のやり取り‥‥

 それもこの星の某所にある研究区画でモニターされていた。

 

「ふむ、これが男女の痴情のもつれ‥‥ってやつかな?」

 

「どうやら、近親者の禁断の愛ってやつでしょうね‥‥」

 

 昼ドラの一場面の様な光景を見たにもかかわらず、白衣の人物と助手らしき女性は興味があるわけでもなく、平然とした様子で見ていた。

 

「やれやれ、人間ってやつはどうして愛だの恋だの、そんな不確定で曖昧なモノに一々悩み、傷つくのかホント理解に苦しむねぇ~‥‥だが、そう言った人間の精神状態を解明したくもあるのだがね。だからこそ、人間ってやつはまったく面白い」

 

 白衣の人物は、愛や恋愛など、くだらないかのように言うが、ここに来る前‥‥自らが生み出した娘たちに対する感情の中には家族愛があったことを自分でも気付かなかった。

 それはその白衣の人物に恋愛云々を教える者がその人物の周りに居なかったことも原因の一つであり、更にその白衣の人物は恋愛感情を知るために創作物を参考に第三者視点で愛や恋愛云々を見てきたので、自分には愛の感情は不要だと思っていたのだ。

 

 

これまでの人生経験の中で、

 

 白衣の人物が立てた理論の一つを実際に立証したある大魔導師の女性とその大魔導師の女性と同じく一人息子を失った家族。

 

 自らの生まれ故郷を平和にしたいと願いつつも、深い闇へと足を踏み込んだ結果、利用され命を落とした哀れな男。

 

 大魔導師の娘のクローンとして生まれながらも結局、クローン(コピー)は所詮、クローン(コピー)、オリジナルにはなれず、捨てられたが新たな家族を得て、自分の様な悲しく辛い思いをするような子供を生まない様にと執務官になり、奮戦している女性。

 

 クローンながらもまるで自分の娘の様に扱い、必死にそのクローンを助け出だしたエースと呼ばれた魔導師の女性。

 

 それぞれがそれぞれの理由と信念を持っての行動をしたのだが、この白衣の人物にとってはあくまでも自らの探求と興味を満たすための実験に過ぎなかったのだろう。

 

「それで、あの娘はどうやら、何か目的があってこの星に残ったように見えるんだが‥‥?」

 

「目的‥ですか?」

 

「ああ‥‥彼らが集めた情報から見ると、地球の戦士たちの気概では、彼が作った映画ごときで、あっさりと降伏するなんて思えないんだよ」

 

 白衣の人物の脳裏にかつて、自分と敵対し、自分の自慢の娘たちを破った女性たちの姿が浮かぶ。

 事の大きさでは、自分が関係した事件と地球と外宇宙からの侵略戦争では規模があまりに違いすぎるが、武人として、戦士としての気概は彼らと彼女らには似たようなモノを感じる。

 

「はぁ~‥‥ですが、人間である以上、自らの命惜しさに逃げ出す者もいるのではないでしょうか?」

 

「確かにその可能性も否定できないが‥‥少なくとも彼女は違う‥‥非科学的なことだが直感?‥‥とでも言うのかな?」

 

「直感‥‥ですか‥‥?」

 

「ああ、根拠としても薄いが、強いて言うなら彼女の目だ」

 

「目?」

 

「そう‥‥あの時、『この星に残る』と言った少し前の彼女の目は、何かを決意していた目だ。それは決して、自分の命惜しさに仲間を裏切り、仲間を捨てるような人間の目ではなかった‥‥まぁ、これも経験の一つかな?」

 

 自分が立てた理論から生まれた女性と対峙したあの時‥‥

 

 彼女も決意に満ちた強い目をして自分を睨みつけ対峙していた。

 

 あのサーシアと言う少女の目もあの時の女性と同じ目だった。

 

 それは、自分の命惜しさにここに残ると決めた決意ではない。

 

 彼女が何を考えて、この星に残ると決めたのか?

 

 この星に残って、いったい何をしようと言うのか?

 

 それが気になった白衣の人物は、

 

「ロベル」

 

「はい」

 

「すまないが、彼女を迎えに行ってはくれないか?」

 

「えっ?」

 

 白衣の人物からの言葉にロベルは唖然とする。

 

「下手に宮殿内をうろついて、聖総統閣下やサーダ君、その他の連中に見つかって捕まると厄介だ。そうなる前に彼女を保護してくれたまえ」

 

「は、はい」

 

「いいかい。くれぐれも丁重に頼むよ。ああ、それと、出来るなら、彼女のDNAデータも採取出来たら、採取しておいてくれ」

 

「かしこまりました。ドクター」

 

 白衣の人物の頼みを聞いた女性はスッと音もなくその場から消えた。

 

 

 サーシアは、古代からの追走を振り切り、宮殿内を当てもなく彷徨い歩いていると、彼女の前に一人の人物が姿を現した。

 サーダやスカルダートかと思ったが、その人物は、深緑色のOLっぽいスーツを着た女性だった。

 

「あ、貴女は‥‥?」

 

「はじめまして、わたくしは、ロベルと申します」

 

 ロベルと名乗った女性はサーシアに深々と頭を下げながらサーシアに自己紹介をしてくる。

 意外と礼儀正しい人物だった。

 なんとなく、宮殿前で自分たちを案内したあのサーダとか言う女性に雰囲気が似ていたが、彼女の様な怪しさはあまり感じられなかった。

 どちらかと言うと、このロベルと言う女性からはあまり感情を感じない。

 

「わたくしの主が、貴女とお話がしたいと仰っております。ご足労を願えますか?」

 

「主‥‥?それって聖総統、スカルダートって人の事?それとも、サーダと言う女の人?」

 

「いえ、わたくしの主は聖総統、スカルダートではありません。追加で言うのであれば、スカルダートの秘書であるサーダでもありません」

 

「えっ?」

 

 ロベルの主はスカルダートでもサーダでもないと言う。

 では、このロベルと言う女性の主はいったい誰なのだろうか?

 ロベルの言葉にサーシアは一瞬唖然とする。

 しかし、ロベルの主は自分の事を知っているみたいだ。

 仮にこの場から逃げて、どこに逃げようともきっと、ロベルの主には自分の居場所がバレているのだろう。

 ならば、逃げ回って下手に警報を鳴らされるよりも、罠であってもここはロベルの主とやらに会うしかなさそうだ。

 それにスカルダートはきっと今の自分を亡命希望者と思って油断しているだろうし、ここは大人しく従った方が良いだろう。

 

「わかりました」

 

「では、こちらへ‥‥」

 

 サーシアはロベルについていくことにした。

 

 

 サーシアを連れて帰ることが出来なかったこと、更に彼女が胸に抱いた初恋の本音を聞いた古代は意気消沈した様子で、上陸用舟艇に戻ってきた。

 

「古代さん、サーシアは?」

 

 サーシアが戻ってきていないことに疑問を感じた相原は古代にサーシアについて訊ねる。

 

「‥‥彼女はここに残るそうだ」

 

「えっ!?」

 

「本当なのか?古代」

 

「ああ‥‥」

 

「‥‥そうですか」

 

「‥彼女は半分宇宙人だもんな‥‥仕方ないよ‥‥それにあんな映像を見せられちゃあ‥‥」

 

 相原は、サーシアの生まれと先程、宮殿で見たあの未来の映像を見せられてはヤマトに帰りたくないとしても分からなくはないと言う。

 

「バカ、滅多なこと言うもんじゃない!!」

 

 そんな相原を古代は叱咤する。

 白衣の人物が、サーシアがこの星に残ったことに何か目的を感じたように古代もサーシアがこの星に残ると言ったのは何か訳か目的があるのだろうと思っていた。

 

「しかし、お前の兄さんに何と言うつもりだ?」

 

 島は古代の兄‥‥サーシアの父親である守には何と言うつもりなのかを古代に問う。

 確かにサーシアの事を任されたのに、敵地に一人で残してきてしまった。

 

「‥‥正直に話すさ‥‥サーシアがここに残ると決めたのは彼女の意志だったんだから‥‥」

 

「そうか‥‥それじゃあ、行こう」

 

(サーシア‥‥)

 

 

 ヤマトに戻った古代たちはさっそく艦橋へと戻ると、みんなに地上での出来事を報告する。

 もっとも、宮殿内の事はアナライザーを通して、地球艦隊の乗員の殆どが見ていたので、知っているが、サーシアがあの星に残ると決めたところまでは予想外の出来事だった。

 

「地表の様子、そして、なにが起こっていたのかは、アナライザーのカメラを通して見ていたよ」

 

「真田さんはあの星の事をどう思いますか?本当に200年後の地球だと思いますか?」

 

 未だにあの地球が200年後の地球だとは信じられない島は真田に見解を訊ねる。

 

「それをこれから、少しでも見極めようと思っている」

 

「あっ、技師長、そう言うと思って、あの星からこれを一つ貰ってきました」

 

 相原は、真田に宮殿から失敬してきたグラスを手渡す。

 

「いつの間に持ってきたんだ?」

 

「お前にしちゃあやるじゃないか、相原。案外、スリの才能でもあるんじゃないか?」

 

「茶化さないでくださいよ。あと、惑星表面の土も念のため、採取してきました。これです」

 

 相原は、グラスの他にあの星の土も持ち帰っていた。

 

「うむ、では、早速分析室で調べてみよう」

 

「お願いします。真田さん」

 

 真田は相原から受け取ったグラスとあの星の土を持って分析室へと向かった。

 

「何か分かるといいんだが‥‥」

 

「でも、検査結果次第ではあのスカルダートとか言う奴の言ったことが事実である可能性もあると言うことになる‥‥」

 

 どんな検査結果が出るのか不安になる一同。

 そして、古代は守にサーシアの事について話す。

 しかし、サーシアの初恋の相手が自分であることは黙っていた。

 

「兄さん‥‥サーシアのことなんですが‥‥」

 

「そうか、サーシアが‥‥だが、サーシアはなにか考えがあって、あの星に残ったんだ‥‥俺はそう信じている‥‥」

 

「兄さん‥‥」

 

「進‥‥お前も俺の娘を信じてやってくれ‥‥あの子は‥‥俺とスターシアの子だ‥‥強い信念を持つ子だ‥‥」

 

「‥‥」

 

「地球に戻るぞ、進。‥‥迷いを振り切るんだ。そして、暗黒星団帝国に打ち勝ち、サーシアを迎えに行く」

 

「‥‥わかりました。島、発進準備だ」

 

「‥‥」

 

 古代は島に出航の用意を促すが、島は黙ったままだ。

 

「どうした島?」

 

「古代‥‥本当に、地球に帰るつもりなのか?」

 

「どういうことだ?今更何を言い出すんだ」

 

「ヤマトは‥‥俺たちは、この暗黒星雲の中で敗北する運命じゃないのか?それが歴史であり、決まった未来なんじゃないか?」

 

「歴史が‥‥未来が何だっていうんだ!?俺たちは今、こうしてちゃんと生きているんだ!!次の瞬間も生き続ける権利があるんだ!!あんな不確定な映像だけ信じるなんてバカげている!!万に一つの可能性をもとめて、生きぬくために、全ての努力を傾けるのが人間だろう!?沖田艦長だったそうしてきた!!ここで俺たちが諦めてどうする!?地球では、今も懸命に戦っている人たちがいるんだ!!奴らが見せたあの映像が俺たちの未来だっていうなら、その未来を変えてみせる!!」

 

「フッ‥‥その言葉を待っていたんだ、古代。俺も全く同じ気持ちだよ」

 

 島はスカルダートが見せた自分たちの未来と言う映像に恐れをなしていないか、古代を試したのだった。

 

「みんなだって同じさ‥‥そうだろう?」

 

「はい!!」

 

「もちろんです!!」

 

「大艦隊だかなんだか知らないが、俺がこの手で蹴散らしてやりますよ!!」

 

「帰りましょう、地球へ‥‥!!」

 

「みんな‥‥」

 

「‥‥よし、総員部署に着け!!発進準備だ」

 

「ヤマト、発進準備!!」

 

 まほろば、春藍でも、ヤマト同様、地球へ戻ることは決定事項となっていた。

 

「うーん‥‥」

 

 そんな中、新見は言い知れぬ違和感を覚えていた。

 

「どうした?副長」

 

 良馬は唸っている新見に声をかける。

 

「あっ、艦長‥‥いえ、アナライザーから送られてきた映像の中で違和感があって‥‥」

 

「違和感?」

 

「はい‥‥宮殿の通路にあった芸術品‥‥あの中で、違和感があって‥‥」

 

 新見はあの宮殿の通路に展示されていた芸術品の中に違和感を覚え、アナライザーが録画した映像を見返していた。

 

「艦長、ヤマトより通信です」

 

「内容は?」

 

「これより、全艦、地球への帰還行動へと入れ‥以上です」

 

「そうか‥‥総員‥出航配置につけ!!」

 

 ヤマトが地球へと戻るというのであれば、まほろば もそれに従うまでだ。

 しかし、良馬には一つの懸念があった。

 

(あの星が暗黒星団帝国の本星と言うことで間違いはない‥‥しかし、あのまま放置して大丈夫なのだろうか?)

 

(彼らは自分たちの星は200年後の地球だと言っていたが‥‥)

 

 彼らの星が200年後の地球であり、あの映像はこれからの未来だと言うが、古代たちが信じていないように勿論、良馬だって信じてはいない。

 仮に、あの映像がこれから起こることであるとしても、未来は変えられる。

 事前に知っているといないとでは大きく違う。

 あんな未来は願い下げだ。

 しかし、もし‥‥もし、彼らの星が200年後の地球ではなかったとしたら‥‥

 スカルダートの言っていた事が嘘であったら‥‥

 自分たちの地球に打ち込まれたハイペロン爆弾の起爆装置がやはり気がかりとなる。

 もし、彼らの星が200年後の地球でなければ、地球人類を絶滅させてもなんら問題はないのだから‥‥

 良馬としてはどうしてもそれが気がかりとなった。

 

 

一方、ユリーシャも姉であるサーシアがあの星に残ったことを医務室のモニター越しでヤマトとの通信を見て、知ると驚いた。

 

「姉さま‥‥」

 

 ユリーシャは念話を飛ばして、200年後の地球に残ったサーシアとコンタクトをとる。

 

(姉さま‥‥姉さま!!返事をして!!姉さま!!)

 

(‥‥ユリーシャ?)

 

(姉さま!!なんで、その星に残ったのです!?)

 

(ユリーシャ、あなたもあの映像を見たのでしょう?あれがホントなのか?それに、あの星が本当に200年後の未来の地球なのか‥‥私はそれを確かめるために残った‥‥すこしでもお父様や叔父様の役に立てれば、私はそれでいい‥‥それで満足よ‥‥)

 

(そんな!!)

 

(ユリーシャ‥‥イスカンダル王家は貴女が継いで‥‥さようなら、ユリーシャ‥‥)

 

(姉さま!!姉さま!!)

 

 ユリーシャがサーシアに何度も念話を送ったが、それ以降、サーシアがユリーシャの念話に応えることはなかった。

 

 

 地球艦隊が地球への帰還行動に入ろうとしている頃、ロベルと言う女性の案内の下、ユリーシャとの念話を切ったサーシアは研究所の様な所へと案内された。

 

「‥‥」

 

 その研究所は全体的に薄暗く、そして沢山の溶液で満たされたカプセルの様なものがあった。

 そして、その中にはどれも人間‥‥若い男女が入っている。

 

(ここは‥‥それにこの人たちは一体‥‥)

 

「そうこそ、私のラボへ‥‥」

 

 案内された先には紫色の髪に白衣を着た一人の男性が待っていた。

 この白衣の男もスカルダート同様、なんか胡散臭い雰囲気な男だった。

 

「あなたがロベルさんの‥‥」

 

「そうだ‥‥私がロベルの生みの親‥‥そうだな‥‥この場は、ジェレミア・ゴットバルトとでも名乗っておこう」

 

 ジェレミア・ゴットバルトと名乗った男は明らかにその名前が偽名であるにも関わらず、平然とサーシアに偽名で自己紹介をする。

 

「それで、勇敢なお嬢さん。君の名前は?」

 

 そして、白衣の男は、サーシアに名前を聞いてくる。

 

「‥‥真田‥澪」

 

 向こうが偽名で名乗ったので、サーシアももう一つの名を名乗る。

 

「それで、早速なのだが、君がこの星に残った訳を聞いてもいいかな?」

 

「それは‥‥死にたくないからですわ」

 

「ほぉ~‥‥」

 

「これから、死ぬのが分かっているのに、わざわざそこへ戻る必要があると思いますか?」

 

「なるほど、君は死にたくないから、仲間を捨てて逃げ出したというわけかな?」

 

「他の方々にもここに残るという選択はありました。自ら死を望んだのは、あの人たちの勝手です」

 

 サーシアは口では本心とは思ってない事を自分でも不思議なくらい口にする。

 

「それは君の本心かね?」

 

「どういうことです?」

 

「君は、ついさっき『死にたくない』と言っているが、逆なんじゃないか?」

 

「‥‥」

 

「君は自らの命をかけてでも、何か目的があって、この星に残ったのではないか?‥‥そう、例えば‥‥この星の秘密とか?」

 

「っ!?」

 

 自分の考えと行動がこの男には見抜かれている‥‥サーシアはビクッと体を震わせて、いつでも逃げられる体勢をとる。

 しかし、自分の背後にはロベルがおり、逃げるに逃げられない。

 もし、このジェレミアとか言う男がスカルダートやサーダに自分の目的を告げたら、自分の行動が、何もかもパァになる。

 なんとかこの場を切り抜けなければ‥‥

 

「ふむ、どうやら図星みたいだね‥‥?まぁ、そこまで警戒する必要はない‥‥私もそろそろこの星には飽きた‥‥この星の技術は十分に堪能し、学んだ。そろそろ別の星の技術を見てみたくてね‥‥」

 

「あなたはこの星の人間ではないのですか?」

 

 ジェレミアの口調から、彼はまるでこの星の人間ではないかの様に言う。

 

「まぁ、信じるか信じないかは君の勝手だが、私はここの星の人間ではないし、ロベルも半分この星の人間ではない」

 

「半分?」

 

「ロベルは私が生み出した人造生命体だ。そしてその元となったのが、あのサーダとか言う女性と私のDNA情報だ」

 

「‥‥」

 

 当然、人造生命体なんて言われて、本当にそんなものを生み出せるのかと思いつつも、科学技術が地球よりも進んでいるこの星の技術ならばそれも可能かもしれない。

 

「それで、話を戻すが、君はこの星の秘密を彼らに伝える為に敢えてこの星に残った‥‥それでいいのかい?」

 

「は、はい」

 

「そうか‥‥となると、君は彼が見せたあの映像を信じていない‥‥と言うことだね」

 

「はい。あのヤマトが沈むなんて信じられませんから」

 

「だろうね‥‥私も実際にこの目で見たわけではないが、この星の連中が集めたヤマトなる艦の活躍を見れば、確かにあの艦がそう簡単に沈むとは思えない」

 

 ジェレミアもサーシアと同じ考えの様なのだが、サーシアは悩んでいた。

 

 

信じてもいいのだろうか?

 

このジェレミアと言う胡散臭い男を‥‥

 

しかし、この男は自分の目的を完全に見抜いている。

 

もし、彼の言っている事が本当で、彼が自分の味方になってくれれば‥‥

 

この星の構造を知っている人物が味方になってくれれば自分にとってかなり心強い。

 

それに彼は、自分が知りたいこの星の秘密を知っているようだ。

 

そこで、サーシアはもう少し、このジェレミアと言う男を見極めることにした。

 

 

 モニターにはこの星の沖合にて、停泊しているヤマトの姿が映し出されている。

 サーシアはその姿を見て、

 

(私はもう、二度とヤマトに戻ることは出来ないかもしれない‥‥)

 

(でも、サーシアは自分の命を懸けてでもこの星の秘密を暴いてみせます‥‥)

 

(さようなら、ヤマト‥‥さようなら、お父様‥‥)

 

(さようなら、叔父様‥‥さようなら、ユリーシャ‥‥)

 

 サーシアはジェレミアとロベルが居る手前、泣くことは出来ずに涙をグッとこらえてモニターに映るヤマトを見ていた。

 

 地表から戻った上陸用舟艇を収容したヤマトはしばしの間、静観していたが、やがて、艦首を反転させる。

 まほろば や 春藍の他の艦艇もヤマトに続いて、艦首を反転させて、この星から遠ざかっていく。

 

 サーシアがヤマトら地球艦隊の行動をモニターで見ていたように、サーダとスカルダートも同じようにモニターで地球艦隊の行動を見ていた。

 

「聖総統、どうやら連中は本気で地球へと戻るつもりのようです」

 

「フフフ‥‥愚かな連中め‥‥このまま無事に地球へ帰れると思っておるのか?‥‥いいだろう。あの映像通り‥‥未来の歴史通りに沈めてくれる!!一隻たりとも逃してはならぬぞ!!」

 

「はっ、すでにサーグラス率いる艦隊はすでに出撃を終えております」

 

「よろしい‥‥さて、どうあがくかな?地球人」

 

 スカルダートは映画かテレビでスポーツ観戦でもするかのように地球艦隊とサーグラス艦隊の戦闘の成り行きを見ることにした。

 

 そのサーグラス艦隊旗艦の無限β砲搭載超弩級、グロテーズの艦橋では、

 

「地球艦隊‥‥貴様らに受けてきた数々の屈辱!!‥‥そして、貴様らによって死んでいった同胞たちの仇!!ついに恨みを晴らす時が来たぞ!!」

 

 艦長席では、ようやく完成したばかりの新鋭艦の手によって、ヤマトを‥‥地球艦隊を撃滅する機会がようやく訪れたと血気盛んなサーグラスの姿があった。

 

「全艦、戦闘準備!!目標、地球艦隊!!いいか、聖総統閣下のご期待に沿えぬような戦いだけはするな!!」

 

 スカルダートは、なるべくならば無駄な戦闘をせずに‥楽に地球艦隊を降伏させて、地球の艦船を手に入れたかったが、武人であるサーグラスは、地球艦隊がスカルダートの策に嵌まり、降伏してしまう展開を望んではいなかった。

 もし、地球艦隊がスカルダートの策に騙されて、降伏してしまっては親友(グロータス)を始めとする大勢の同胞の仇を討つ機会を永久に失ってしまう。

 しかし、地球艦隊の乗員たちも自分と同じ一流の武人。

 不敬かもしれないが、彼らがスカルダートの策に嵌まるはずがないと思っていた。

 そして、自分の予想通り、彼らはスカルダートの策には嵌まらず、こうして自分の前に存在している。

 武人としてサーグラスには嬉しかった。

 これで堂々と地球艦隊と戦える。

 これまでの戦いでは、連中に自分たちの本星の位置を突き止めさせないようにという制限があったが、この戦いではそんな制限はない。

 この戦いはまさに生か死かの戦い‥‥

 武人としてこれほど、血がたぎり、興奮することはない。

 

(この戦い、ワシのすべてをぶつけるぞ‥‥貴様らも命をかけて挑んで来い!!)

 

 サーグラスはモニターに映る地球艦隊の姿を睨みつけていた。

 




銀河やアクエリアスのあのドーム型艦橋がカッコイイので、アンドロメダ空母型にて、アクエリアスとノイ・バルグレイ型を合わせた空母型アンドロメダを側面図ですが作ってみました。

いずれ、この空母型アンドロメダも出したいと思っております。


【挿絵表示】


一番艦 アルテミス 二番艦 アルビオン 三番艦 アリアドネ 四番艦 アスタルテ

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