ここで、時系列は少し過去に戻り、場面は宇宙から、地球へと変わる。
地球防衛軍司令部にて、暗黒星団帝国地球占領軍総司令官であるカザンを斃した日、カザンの銃撃を頬に受けたティアナが医務室で治療を終えて、医務室を出ると、通路では古野間が待っていた。
「古野間さん‥‥」
「よぉ、嬢ちゃん。傷の手当は済んだか?」
「はい」
「それじゃあ、付き合ってくれ」
「えっ?」
「一応、今回のことを藤堂長官に報告しなければならない。お前さんもこの件に関しては関係者だからな」
「はい」
ティアナと古野間がパルチザンの司令部へと行くと、北野が藤堂と話し込んでいた。
「長官、重核子爆弾の秘密はいつになったら、掴めるのでしょうか?我々は勢力を取り戻しつつありますが、肝心の重核子爆弾がある限りは‥‥」
北野の言う通り、これまでのパルチザンの活動で、占領軍の勢力は、地球占領当日と比べると格段に下がった。
戦車駐屯上への襲撃、武器集積所、新型戦車の開発プラントの破壊、そして、今日は占領軍総司令官であるカザンの殺害まで達成した。
しかし、あのハイペロン爆弾を占領、解体してこそ、ようやく地球の安全確保が出来る。
奴らがその気になれば、あのハイペロン爆弾を炸裂させ、地球人類を一瞬のうちに絶滅させられることが可能なのだ。
その脅威がある限り‥‥地球にあのハイペロン爆弾が存在している限り、決して安全ともいえず、また勝利とも言えない。
幸い、暗黒星団帝国は今のところ、あのハイペロン爆弾を起爆させる気配はない。
だが、いつ起爆させるのかも不明なので、早期のハイペロン爆弾の占領と起爆装置の解体が急務である。
「今はまだ、耐える時だ‥‥すぐに勝機は訪れる」
藤堂はハイペロン爆弾の情報不足と言うこともあり、まだハイペロン爆弾への攻撃は避けるべきだと言う。
これまで、何度かハイペロン爆弾への攻撃を繰り返してきたが、ことごとく失敗している。
そんな中、通路の奥ではガヤガヤとパルチザンの兵士たちが騒ぎ始めた。
何があったのかと思っていると、通路から一人の女性が藤堂と北野の前に姿を見せた。
「雪だ!!」
「森雪だ!!」
「ホントだ!!」
「生きていたのか!?」
パルチザン本部の皆がざわつく中、雪は藤堂の前に歩み寄り、
「森雪、ただいま、帰還しました」
藤堂に敬礼し、戻ってきたことを報告する。
「雪‥‥」
「連絡艇発進の際、負傷して地球に残り、敵に軟禁されておりましたが、完治しました。私もパルチザンとして、戦います」
「うむ、力を合わせて頑張ろう‥‥」
「はい‥‥あの、長官‥‥ヤマトは‥‥古代君は、無事だったそうですね?」
「うむ、君のおかげだ‥‥だが、今は作戦上、通信を封鎖している。状況を知ることが出来ないが、ヤマトのことだ。今もきっと立派に戦ってくれていることだろう」
「はい、きっとそうですね」
「やはり、消息が分からないと不安かな?」
「いいえ、ヤマトが‥‥古代君たちが負けることなんてありえません」
雪は、はっきりとした口調で藤堂に断言する。
そこには一切の迷いはなかった。
「うむ、私もそれを信じている」
「雪さん‥‥」
「北野君‥‥元気そうでなによりだわ」
藤堂に報告した雪は北野に声をかける。
そこへ、古野間とティアナが合流する。
「あっ、アンタは‥‥無事だったか‥‥よかったぜ」
司令室で雪の姿を見た古野間は雪に声をかける。
「古野間さん‥‥」
(あっ、あの人は‥‥)
ティアナもイスカンダルから地球に戻る際、フェイトと共にヤマトに乗艦していたので、雪の事は当然知っていた。
(てっきり、ヤマトに乗っていると思っていたけど‥‥)
ティアナは雪が地球に居たことに意外性を感じていた。
ヤマトの乗員なのだから、てっきり、ヤマトに乗っていると思っていたからだ。
「あら?貴女は‥‥」
「どうも、お久しぶりです。雪さん」
雪もティアナに気づき、声をかけ、ティアナの方も雪に挨拶をする。
「どうして、ランスターさんがここに‥‥?」
「私もパルチザンの一員として戦っているんです」
「えっ?でも、貴女は‥‥」
「ええ、本来なら、地球とは関係ない人間ですが、地球が大変な時にそんなのは些細なことです。それに此処にいるのは、私自身の意志であり、強要された訳ではありませんから」
「でも‥‥その傷は‥‥」
雪はティアナの左頬に貼られたガーゼを見て、ティアナが負傷したことに気づく。
「戦争ですからね、名誉の負傷の一つもしますし、私は気にしていませんから‥‥それよりも雪さんは何故、地球に‥‥?てっきり、ヤマトに乗っていると思っていました」
ティアナは雪を見た時の疑問を彼女本人に聞いてみた。
「私も戦闘に巻き込まれて、負傷してね‥‥」
雪はティアナに何故、ヤマトに乗らず、地球に残っているのかを話す。
その後、雪もパルチザンのメンバーとして戦うことになった。
そして地球艦隊が、暗黒星団帝国本星の所在を突き止めた頃、地球でも動きがあった。
これまでの情報収集から、ハイペロン爆弾の周辺には強力なバリアが張られ、遠距離からの砲撃は無力化され、地上から攻め込んでもバリアとハイペロン爆弾の高所から敵兵の銃撃でたどり着くことが出来ない。
しかし、このハイペロン爆弾も暗黒星団帝国とはいえ、人類が制作したモノ‥‥
完ぺきなモノではなく、死角は存在していた。
このハイペロン爆弾のバリアは地下までは伸びておらず、またバリアを張るにも一定の距離がある。
よって、ハイペロン爆弾の真下‥‥地下から穴を掘って、ハイペロン爆弾の真下からならば、突入が出来そうだったのだ。
雪がパルチザンに合流した日からパルチザンはハイペロン爆弾の真下に続く地下トンネルを掘っていた。
レーザードリルで岩盤を削り、トンネルを掘っていた。
暗黒星団帝国占領軍‥‥アルフォンもまさか、パルチザンが地下から迫ってくるとは予想しておらず、ハイペロン爆弾の周辺の地下に罠を張ることはなかった。
地下トンネルの掘削には雪、そしてティアナも参加していた。
二人とも、女だからといって特別扱いされるのを嫌っていたからだ。
占領軍からの妨害もなく、地下トンネルは順調に進み、あとは地上に出る穴を開けるだけのところまで来た。
そして、夜の闇に乗じてハイペロン爆弾占領作戦が実施されることになった。
勿論、陽動も行い、敵の目をかく乱する作戦も同時に行われることになった。
「みんな‥‥よくここまで戦ってくれた」
ハイペロン爆弾占領作戦実施前に藤堂が作戦に参加するパルチザン全員に訓示を行う。
「これが最後の戦いとあるだろう。これより我々は重核子爆弾に突入し、起爆装置を解体する。では、作戦の概要を説明する‥‥」
藤堂はハイペロン爆弾への突入メンバーと陽動部隊のメンバーの割り振りと各隊の作戦内容を伝える。
訓示が終わり、各隊のブリーフィングを行う。
「いつも通り、俺たちのコールはスペード1で頼むぜ」
「了解」
古野間、北野、ティアナの隊には雪も加わる。
「ダイヤ班、クラブ班各員は爆弾外周を固め、敵の援軍を防いでくれ。内部突入は、スペード班、ハート班が行う。ジョーカー班は敵施設の陽動を!!」
そして、作戦開始時刻となる。
突如、占領軍のパトロール戦車の駐屯地で爆発が起きる。
「ふもっふる!!」
「もふる」
パトロール戦車駐屯地に多数のボ○太くんが襲い掛かる。
手にしたロケットランチャーでパトロール戦車を攻撃していく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!アイツラだ!!」
「あの未確認生物だ!!」
多数のボ○太くん部隊による襲撃に恐れおののく占領軍の兵士たち。
「ひるむな!!」
「撃て!!撃て!!」
古参の下士官や士官は逃げ腰の兵士たちを叱咤したり、鼓舞する。
「撃て!!撃て!!ぐぁ‥‥」
兵士を叱咤している士官がボ○太くんに狙撃される。
「うわぁぁ-!!」
恐慌状態の兵士たちが狂ったようにレーザー銃を撃つが、分厚い装甲のボ○太くんに致命傷を与えることが出来ずに、ボ○太くんは撃たれても平然とした様子で、兵士たちに自動突撃レーザー銃を撃ちながら、近づいてくる。
占領軍の兵士たちから見れば、化け物に見えた。
「こんな装備じゃ、連中に敵わない」
「だ、ダメだ!!逃げろ!!」
「待ってくれ!!」
戦意を喪失した兵士たちは次々と逃亡する。
パトロール戦車駐屯地の襲撃は、ハイペロン爆弾の内部に居るアルフォンの下にも入っていた。
「少尉!!パトロール戦車駐屯地が例の未確認生物の襲撃を受けています!!」
伝令の兵士がアルフォンにボ○太くん部隊による、パトロール戦車駐屯地の襲撃を報告する。
「構わぬ‥‥」
「えっ?」
伝令の兵士はアルフォンのドライな反応に驚く。
「これもパルチザンの陽動だ‥‥奴らの目的地はここだ‥‥被害を免れた戦車と市街地をパトロールしている戦車に伝令‥‥ただちに無事な戦車はこの地区に集結させろ」
「は、はい」
アルフォンは被害を免れたパトロール戦車をこのハイペロン爆弾のある地区へ終結させる命令を下す。
その頃、ハイペロン爆弾の近くの地下トンネルにはパルチザンのメンバーがひしめき合っていた。
これまで、北野、古野間と共に幾多の戦場を駆け抜けたティアナもコスモガンを握る手が小さく震えていた。
(もう、戦場には慣れたと思っていたのに‥‥)
小さく震えるティアナの手に別の手が重ねられた。
「えっ?」
ティアナはその手の主を見ると、それは雪だった。
「大丈夫?緊張してない?」
「‥‥していないと言えば嘘になります。これまで北野さんや古野間さんと戦かってきましたが、やっぱりなかなか慣れないものですね」
ティアナは無理矢理笑みを浮かべる。
「そうね‥‥私だって怖いもの」
「雪さんも?」
「ええ‥‥でも、ティアナさん。重要なのはその恐怖に飲み込まれないようにする事よ」
「‥‥」
「逆に戦場に‥‥人を殺すことに慣れてもダメ‥‥矛盾しているようにも聞こえるけど、ただ人を殺すだけになっては、それはもう、人じゃなくて、獣か機械よ‥‥私たちが戦うのは大切な人を守るため‥‥それだけは忘れてはだめよ」
「はい‥‥雪さんもやっぱり怖いですか?」
「もちろんよ‥‥ほら‥‥」
雪はティアナに自分の手を見せる。
彼女の手も自分同様、小さく震えていた。
自分よりも生死が関わる戦場を多く経験してきたはずの雪でさえ、こうして緊張している。
ティアナは周りを見渡す。
パルチザンには自分の様に民間人からの志願者も居る。
彼らも雪の言うように大切な人を守るため、パルチザンに志願してきたのだ。
この後、地球の今度の運命を左右する大規模な作戦が行われる。
これに失敗したら、パルチザンは壊滅的な被害を受ける。
それは地球人類の滅亡につながるかもしれない。
戦いと言うことで、味方の被害なしで作戦を完遂するのはほぼ不可能だ。
管理局で経験したこれまでの戦闘とは異なり、この世界では生死をかけての戦いだ。
戦いが始まれば、今この場で生きている味方のパルチザンの何人かが死ぬ。
当然それは自分かもしれない。
「よし、行くぞ」
「了解!!」
「はい!!」
(ふぅ~‥‥落ち着きなさい、ティアナ、雪さんも言っていたじゃない‥‥恐怖に呑まれちゃダメだって‥‥逆に飲み込んでやりなさい‥‥)
深呼吸して他のパルチザンと共にハイペロン爆弾占領のため、駆け出す。
パルチザンは地上につながる地面をくり抜き、その穴から次々と地表に出る。
アルフォン同様、まさかパルチザンが自分たちの足元に地下トンネルを掘っているとは思いもつかなかったハイペロン爆弾の警備兵たちは背後からパルチザンの襲撃を受ける。
パルチザンたちは敵兵士の背後からコスモガンや自動突撃レーザー銃を撃ち、大型手榴弾を投げ込む。
「ぐぁぁー!!」
「敵襲!!」
「うわぁぁぁー!!」
混乱する敵兵を撃つパルチザンの中に雪とティアナも必死に駆け込む。
ティアナも声を上げて、コスモガンを撃ちながらハイペロン爆弾へと迫る。
これまで遠目で見てきたがこうして近くで改めて見てみると、かなりデカい。
中央付近にはぐるりと回廊があり、敵の兵士たちが警戒している。
そのすぐ上からは伸縮自在のノズルがまるで、タコかイカの足の様に宙にうごめいて先端からレーザーを発射してくる。
ハイペロン爆弾は上に行くほど、細くなっており、無数のライトがまるで航海灯や航空障害灯の様に各所で点滅している。
もしかしたら、あの上部が起爆装置の回路があるのかもしれない。
「少尉!!敵襲です!!」
「‥‥やはりきたか‥‥しかし、彼らはどうやってバリアを突破してきたんだ?」
「そ、それが、パルチザンは地下を掘り進んできたようです」
「地下か‥‥なるほど、地面の中までは、想定していなかったな‥‥」
アルフォンはパルチザンの侵入経路を聞いて、思わずフッと自嘲の笑みが浮かぶ。
「少尉、味方の戦車部隊がようやく集結し、こちらへ向かっています」
「ふむ‥‥バリアを解除したまえ」
「えっ?」
アルフォンはハイペロン爆弾の周りを覆っているバリアを解除しろという。
「し、しかし、それでは‥‥」
「バリアがある限り、味方の戦車は近づけない。それに、既にバリア内に侵入されているのだ。もはや、バリアには何の意味もない」
「は、はい」
既に爆弾の至近距離にパルチザンに侵入されており、バリアは何の意味もない。
反対にバリアがある限り、味方の戦車は接近できない。
アルフォンは既に意味のなさないバリアを解除させた。
バリアが消えたことで、占領軍の戦車は難なく、ハイペロン爆弾の周りに向かってくる。
「敵戦車だ!!」
「対戦車バズーカを出せ!!」
陽動のボ○太くん部隊すべてがパトロール戦車を潰せるとは思ってはおらず、突入部隊はちゃんと対戦車装備も持っていた。
何度もこの戦車に悩まされたパルチザンはすぐに接近してくるパトロール戦車に向かって対戦車バズーカを放つ。
パルチザンの対戦車バズーカの攻撃を受け、占領軍のパトロール戦車群はたちまち残骸となり果てる。
しかし、多勢に無勢‥‥
警備兵たちも体制を立て直し始め、反撃に移り始める。
そして、パルチザンにも犠牲が出始める。
しかし、いくら味方が斃れてもパルチザンたちは足を止めることはない。
今回の作戦で何としてでもハイペロン爆弾を占拠しなければならない。
「右に回れ!!」
「援護してくれ!!」
叫びながら攻撃し、戦場を駆け回るパルチザンたち。
銃声と爆音、パルチザンと占領軍のレーザーが飛び交う戦場に、パルチザンたちは自動噴射式の梯子を設置して、それを噴射する。
バシューン!!と音を立てて、梯子の先端は舞い上がり、ハイペロン爆弾の中間の回廊に突き刺さる。
梯子が設置されてパルチザンたちは次々と梯子を登り始める。
しかし、梯子を登っている最中は無防備になる。
そこを中間の回廊から警備兵の容赦ない銃撃がパルチザンたちを襲う。
一人、一人、とパルチザンたちは撃ち落されるが、それでも、パルチザンたちは恐れることなく、次々と梯子を登ってくる。
雪、ティアナも梯子を登り始める。
(こんな時、空戦属性があれば、簡単に侵入できるのに‥‥)
(スバルやノーヴェのウィングロードやエアーライナーでも、いいわ‥‥)
ティアナは梯子を登りながら、なのはやフェイトみたいに空戦属性があったり、スバルやノーヴェの固有魔法があれば、ここまで危険をおかさずハイペロン爆弾に侵入できると思いながら梯子を登る。
地上のパルチザンたちは突入部隊を掩護する。
梯子を登るパルチザンたちを銃撃、狙撃する警備兵たちは次々と撃ち倒され、パルチザンたちはようやく梯子を登り終えた。
しかし、これはまだ、第一関門を突破したに過ぎない。
作戦の完了まで、まだまだ道のりは遠い。
梯子を登り切った雪とティアナは、まだ梯子を登り切っていないパルチザンたちを援護するため、回廊にいる警備兵に対して、銃撃する。
そして、回廊に居る警備兵をあらかた斃し、梯子を登っていたパルチザンたちも梯子を登りきる。
「さて‥‥行こうぜ‥‥!!」
古野間も無事に梯子を登りきっており、雪とティアナに声をかける。
「「はい」」
古野間、北野、雪、ティアナはハイペロン爆弾の起爆装置を目指して内部へと突入する。
「アルフォン少尉!!敵が‥‥パルチザンが内部に侵入しました!!」
「表の戦車部隊はどうなった?」
「壊滅です!!」
「陽動の未確認生物の部隊により、奇襲を受け、すでに大半の戦車が使用不能となっていましたから‥‥」
「‥‥全警備兵を‥いや、部署に関わらず、兵士は全て武装し集結させ、パルチザンの迎撃に当たらせろ」
「はっ!!」
(いよいよ、我が占領軍も終焉の時が来たな‥‥)
アルフォンはこの時点で、既に自軍の敗北を悟っていた。
(雪‥‥私は此処にいる‥‥君が倒すべき敵は此処にいるぞ!!)
そして、必ず自分の前に、自分を倒しに来るであろう女性を静かに待つことにした。
ハイペロン爆弾内部の通路を立ちはだかる警備兵を斃しながら進んで行くと、通路の途中で、パルチザンの兵士たちが通路の物陰に隠れており、進めていない状態に遭遇する。
「どうした?」
「自動狙撃銃座です!!三人ほどやられました‥‥」
警備兵の他にちゃんと対侵入者用の警備システムが装備されていた。
「厄介ですね‥‥」
自動狙撃銃座は部屋の上にレールが敷かれており、そのレールの上を通る仕掛けとなっていた。
「私が囮になるので、その隙に銃座を破壊してください」
ティアナが囮を買って出て、部屋の中に飛び込む。
すると、自動狙撃銃座はティアナを狙うが、銃撃してくると知っているので、部屋に入ると、ティアナはとっさに反復飛びの要領で、右に跳ぶ。
自動狙撃銃座は機械制御なので、ティアナのとっさの動きについていけず、ワンテンポ遅れる。
その隙に古野間、雪、北野が自動狙撃銃座に攻撃を加え、銃座を破壊する。
自動狙撃銃座を破壊し、再び進むパルチザンたち。
しかし、隔壁が閉じる。
その為、迂回を余儀なくされる。
迂回し、新たな侵入路へと進むと、一際大きな部屋に出る。
だが、広さとは打って変わって、そこには警備の兵士の姿は見えなかった。
「敵はいない様だな‥‥」
古野間が部屋を見渡しても敵の警備兵の姿は見えない。
そんな中、雪が何気なく上を見上げると、そこには工作用のクレーンが動いており、そのアームを伸ばしてきた。
「上よ!!」
「なにっ!?」
雪の声に反応し、古野間、北野、ティアナは銃口を上に構え、伸びてくるクレーンのアームを銃撃し、アームを破壊する。
クレーンのアームを破壊し、上部を目指して進むパルチザンたち。
だが、上に上がるほど、警備兵の数が少なくなってきている印象を受け、反対に機械の警備システムが多くなっている。
占領軍もだんだんと追い詰められているのか?
通路の途中でバリケードを設置した箇所へと出る。
そこは、柱などの障害物が多い、部屋であり、古野間、ティアナが先程の自動狙撃銃座を破壊した時と同じく、囮として飛び出し、障害物を盾にバリケードに近づき、後ろからは雪、北野らの味方の援護射撃を受け、ながら、その部屋の警備兵たちを斃していく。
途中、斃した警備兵から奪った威力の高い、マシンガンやショットガンは突入したパルチザンたちの役に立った。
「アルフォンちゃん、とうとうバリケードも突破されたみたい‥‥」
アルフォンの直ぐ傍にはメイトリックがいた。
「そうですか‥‥」
「‥‥お別れの時が来たみたいね、アルフォンちゃん」
メイトリックはアルフォンに右手を差し出す。
「‥‥ご武運を‥‥大佐」
アルフォンはメイトリックと握手を交わす。
短い握手を交わした両者。
そして、メイトリックは部屋を出ていく。
ハイペロン爆弾内部に突入した雪、古野間、北野、ティアナはようやく爆弾の中心部に到着した。
「これが‥‥爆弾の中央シャフト‥‥」
起爆装置はこの中央シャフトの上だ。
「‥‥あっちに階段があります!!」
ティアナがこの中央シャフトを登る階段を見つける。
「登って行くしかないでしょうね‥‥」
起爆装置のある区画へたどり着くにはこの長い螺旋階段を登っていくしかない様だ。
しかし、
「やっぱりやって来たわね!!」
階段の登り口には、筋肉モリモリマッチョマンのオネエ口調の敵兵士、メイトリックが居た。
(あの人はあの時の‥‥)
ティアナは一度、フェイトと共に市街地で見かけたあのオネエ口調の敵兵士だと気づく。
「ここから先は進ませないわよ~!!」
そう言って、メイトリックは何を思ったのか、銃が入っている腰のホルスターを投げ捨て、ついで、マントと軍服の上着を脱ぎ、
「さあ、銃なんか捨てて、かかっていらっしゃい!!」
ファイティングポーズをとる。
「さあ、いらっしゃい!!それとも怖いのかしら?」
ティアナたちが唖然としている中、メイトリックはこちらを挑発してくる。
「な、何をしているのかしら?あの人は‥‥」
「さあ?」
「決闘を望んでいるみたいにも見えますが‥‥」
「どうします?」
「どうするって言っても‥‥」
「一々、相手にもしていられません。ヘッドショットを決めて先に進みますか?」
ティアナがヘッドショットを決めて、早々にメイトリックを斃して先に進むかと提案する。
「さあ、どうしたの?楽に殺しちゃあ、つまらないでしょう?私が苦しみもがいて、死んでいく様を見るのが望みだったんでしょう?」
((((誰もそんなことを望んでいない!!))))
メイトリックに対して心の中でツッコミを入れるティアナたち。
「楽しみをふいにしたくはないでしょう?さあ、いらっしゃい!!」
正直、相手にはしてられないが、
「ここは、俺が行く‥‥」
「えっ?」
「古野間さん?」
「アイツを斃したかったが、その権利はお前たちにやる‥‥俺はアイツで我慢するさ」
「な、何を言って‥‥」
「アイツは、口調はあんなんでも、立派な戦士だ。目がそう言っている‥‥戦士には戦士なりの戦いと死に場所を与えてやるのが礼儀だ」
「「「‥‥」」」
「俺がアイツを食い止めている間にお前たちは爆弾の起爆装置を破壊しろ‥‥おそらく、その近くに、アイツが居る」
(アルフォン少尉の事ね‥‥)
雪は古野間の言う『アイツ』に心当たりがあった。
ここまで来て、アルフォンの姿を見ていない。
彼は自分に「重核子爆弾で待っている」と言っていた。
アルフォンが居るのであれば、それは爆弾の最重要機密の近くだ。
雪がそう思っていると、古野間がメイトリックの前に出る。
「来たわね、地球の戦士‥‥」
「占領軍の中にもお前さんの様な戦士が居るとはな‥‥」
「さあ、行くわよ‥‥」
「ああ、かかってきな」
古野間は人差し指をちょいちょいと動かす。
それが合図になったのか、両者は駆け出し、至近距離で、拳でぶつかり合う。
「ふんっ!」
「やぁぁ!」
古野間とメイトリックが殴り合っている隙を見て、雪、ティアナ、北野は中央シャフトの螺旋階段に向かって駆け出す。
「あっ、待ちなさい!!」
「どこ、見てんだよ!?お前の相手は俺だろうがぁ!?」
「ぐっ‥‥ふんっ!!」
(ごめんなさい、アルフォンちゃん‥‥一人しか足止めできなかったわ‥‥でも、アルフォンちゃんは強い子だから大丈夫よね‥‥?)
螺旋階段を上る雪たちを悔しそうに見つつ、アルフォンの勝利を信じ、メイトリックは目の前の敵に集中することにした。
螺旋階段を登り終えると、
(この先に居るのね‥‥アルフォン少尉‥‥)
中央シャフトのてっぺんの部屋‥‥おそらく爆弾の起爆装置があると思われる部屋のドアを開けるとその部屋の中心には‥‥
「あ、あれはっ!?新型歩行戦車!?」
「ど、どうして‥‥工場は破壊したはずなのに‥‥」
以前、生産プラントで破壊した例の新型歩行戦車が一機いた。
「量産された一号機の他に試作機が完成していたのよ」
雪が何故、新型歩行戦車が居るのかを説明する。
(それに乗っているのね‥‥私が見える?)
(ここまで‥‥ここまでやってきたわよ‥‥アルフォン少尉‥‥)
十中八九、あの新型歩行戦車に搭乗しているのはアルフォンだ。
雪にはそれが分かった。
「バラバラに散開して、攻撃を!!」
北野が雪とティアナに合図を送ると、三人はバラバラの方向に別れ、新型歩行戦車を攻撃する。
新型歩行戦車は縦横無尽に動き回り、搭載されていたレーザーを撃ち、ロケットランチャーを乱射する。
とはいえ、アルフォンは戦車兵ではなく、情報将校‥‥
ある程度の陸戦の訓練と経験はあるが、戦車の操縦はやはり、それを専門とした戦車兵のものとは異なり、動きに無駄がある。
三脚戦車の弱点が足の付け根であるようにこの新型歩行戦車の弱点も同じで、ティアナはその精密射撃の腕を活かして、確実に新型歩行戦車の足の付け根を狙い撃つ。
やがて、足の付け根、レーザーの銃口を破壊され、新型歩行戦車は崩れるようにして、スクラップとなる。
「雪さん、下がって‥‥」
「さあ、観念して出てきなさい」
北野とティアナが恐る恐る新型歩行戦車に近づくと、
バシュン!!バシュン!!
「ぐっ‥‥」
「うわっ‥‥」
まだかろうじていきていたレーザーの照射を受けて、ティアナは左肩を、北野は右肩を負傷する。
そして、レーザーの照射を受けたティアナはこの時、その衝撃で吹っ飛ばされ、手に持っていたコスモガンを手離してしまった。
「北野君!!ティアナさん!!」
「うぅ~‥‥」
「最後の最後で、油断をしてしまいました‥‥」
「喋らないで!!今、手当てを‥‥」
「ゆ、雪さん、逃げてください‥‥」
スクラップとなった新型歩行戦車のコックピットからは無傷のアルフォンが出てきた。
雪はコスモガンを構え、銃口をアルフォンに向けるが、銃身はカタカタと小さく震えていた。
「雪‥‥私を撃てるか?‥‥私を倒すことが出来たら、その時こそ、重核子爆弾の秘密を教える‥‥そう、言ったね‥‥」
「撃つんだ!!雪さん!!」
北野は雪にアルフォンを撃つように言うが、雪は未だに躊躇しているかのようだ。
「撃てまい‥‥だが、私は君を見逃すわけにはいかない‥‥撃つ‥‥」
アルフォンは銃を構え、その銃口を雪に向ける。
雪とアルフォンが銃を構えている中、ティアナはゆっくりと起き上がる。
「くっ‥‥雪さん‥‥」
(銃は‥‥あそこ‥‥起き上がって拾いに行っても間に合わない‥‥それなら‥‥)
ティアナは落としたコスモガンを拾うのではなく、もう一つの武器を使うことにした。
(このAMAが充満している空気では魔法はうまく使えない‥‥それでも確実に一発は撃たないと‥‥ランスターの弾丸はちゃんと敵を撃ち抜くんだから‥‥)
ティアナはクロスミラージュを起動させ、アルフォンに銃口を向け、シュートバレットを撃ちこむ。
眼前の雪に集中していたアルフォンはまさか、別方向から攻撃が飛んでくるとは思わず、避ける間もなく、ティアナのシュートバレットを受けて倒れる。
「ぐあぁっ!!」
「アルフォン少尉!!」
雪は倒れたアルフォンに近づく。
ティアナのシュートバレットを受けた衝撃で、彼もまた手にしていた銃を落としていた。
「ぐっ‥‥うぅ‥‥」
非殺傷設定で撃ったことで、アルフォンは生きていた。
ティアナと北野は傷口を抑えながら、雪とアルフォンの傍による。
「ふっ‥‥結果はどうあれ、君の勝ちだ‥‥雪‥‥」
アルフォンは雪に自らの敗北を認めた。
「この銃‥‥エネルギーが空の状態よ‥‥」
「どういうことだ?」
ティアナはアルフォンが持っていた銃を拾い、マガジンを調べると、そのマガジンにはエネルギーが入っていなかった。
つまり、彼は雪に射殺されることを望んでいたようだった。
「私は決めていたのだ‥‥最後は愛した者に殺されると言うことを‥‥」
「なぜ、そんなことを‥‥?」
「雪‥‥私は君を愛していた‥‥そして、尊敬もしていた‥‥新たな生命を生み出すことのできる女性を‥‥どんな状態にあろうとも、ただ一人の男を想い続けることのできる君のことを‥‥そして、君に想われる古代と言う男を羨でいた‥‥だから、君が欲しかった‥‥浅はかな男だよ‥‥例え君を自分のものにできても私が望んだ本当のものは手に入れられないのに‥‥それならば、いっそ、私は君の思い出の中で永遠に生きたかった‥‥」
アルフォンは雪に自分を殺させることで、自分の存在を雪の中で忘れない存在でいてもらいたかったみたいだ。
「ずいぶんと残酷なことをさせるのね」
ティアナはそんなアルフォンを冷めた目で見ていた。
もし、雪がアルフォンを射殺していれば、それは恩人を殺したと言う負の思い出だ。
そうやって雪の中に苦しめる思い出として彼女に永遠に忘れ去られないようにしたのだから‥‥
しかし、ティアナが非殺傷設定の魔力弾でアルフォンを倒したことで、その思惑は失敗に終わった。
「君たちとこうして直に会うのは二度目だな‥‥」
生産プラントでは物陰からティアナと北野を確認しただけなので、こうして互いに気づいて顔を合わせるのは政府要人奪還作戦の時を含めて今回で二回目だ。
「‥‥やはり、地球人は素晴らしい‥‥なに事にも屈服せず、自由を信じて戦っている‥‥」
地球軍と自軍を比べて思わず自嘲をこぼすアルフォン。
「アルフォン少尉‥‥」
「わかっているよ‥‥約束通り、重核子爆弾の秘密を教えよう‥‥この爆弾は起爆装置だけを解体してもダメだ。かといって、本星にあるコントロール装置を破壊しても自動的に起爆装置が働いてしまう二重構造になっている。まず、ここの起爆装置を解体し、しかる後、本星のコントロール装置を破壊しなければならない。‥‥これが解体図だ」
アルフォンは雪にUSBメモリーの様な記憶媒体を手渡す。
そこにはハイペロン爆弾の解体図が記録されていると言う。
ここまできて、アルフォンが嘘の情報を教えるとは雪には思えなかった。
ティアナと北野も自分たちは部外者なので、二人のやり取りに口を挟まなかった。
雪とアルフォンとの間に決着がついた頃、螺旋階段の下で繰り広げられていた古野間とメイトリックとの戦いにも決着がついた。
「てめぇはもう終わりだ!」
「ふざけやがってぇ!!」
「野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!」
「フンッ!!」
古野間とメイトリックの拳がぶつかり合うクロスカウンターが決まり、やがて、グラッと、メイトリックの身体がドサッと床に倒れる。
「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ふぅ~‥‥」
メイトリックを倒した古野間はその場に座りこむ。
「古野間さん!!大丈夫ですか!?」
そこに味方のパルチザン兵たちが駆け付ける。
「ああ、顔はボコボコだが、こうして生きている。俺は大丈夫だ。それよりも上に行って手伝ってやってくれ」
「は、はい」
パルチザンたちは螺旋階段を上がっていくが、数名はその場に残り、古野間の手当てを行った。
手当てを受けている最中、古野間は、
「そいつも生きている‥‥できればそいつも治療してやってくれ」
「えっ?でも‥‥」
「そいつは敵ながらも勇敢な戦士だった‥‥死なせるには惜しい奴だ‥‥」
「は、はい」
古野間の頼みを聞いて、意識を失い、床で大の字で倒れているメイトリックも治療を受けることとなった。
やがて、螺旋階段を登り切ったパルチザンたちは雪たちと合流し、北野とティアナの手当てを行い、アルフォンの身柄を抑えた。
そして、雪はパルチザンの兵士と共にアルフォンから教えてもらった解体図を頼りにハイペロン爆弾の起爆装置を解除した。
地上での戦闘に関しては、アルフォンが戦闘の終了を呼びかけ、戦闘が終わった。
ただ、地球の軌道上にはまだ占領軍の艦隊が存在していた。
その艦隊からの艦砲射撃を防ぐため、ハイペロン爆弾の周りには再びバリアが張られた。
占領軍は自軍のバリアを突破できずに、ハイペロン爆弾をパルチザンから奪還するにはこれまで、パルチザンの様に地上戦を行わなければならなくなった。
しかし、既に今の占領軍にそこまでの気概がある筈もなかった。
そしてこの日、パルチザンたちの悲願であるハイペロン爆弾の占領をようやくなしえたのだった。
これで、あとはヤマトが暗黒星団帝国本星にあるコントロール装置を破壊するだけとなった。
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