星の海へ   作:ステルス兄貴

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本当は、はいふり作品を完結させてから再開しようと思っていたのですが、そのはいふり作品に煮詰まってしまったので書き上げました。




百二十三話 二重銀河の崩壊

 

 

地球を救うため、ようやく暗黒星団帝国の本星へとやってきた防衛軍一行。

 

しかし、目の前にあったのは自分たちの故郷である地球‥‥

 

暗黒星団帝国の本星を目指していた筈なのに何故地球へ戻ってしまったのか?

 

突如目の前に現れた地球に戸惑う一同。

 

その為、眼前の地球を調査すると地表は暗黒星団帝国と防衛軍との戦火の痕が全くなく、それどころか地球を占領している筈の暗黒星団帝国の占領軍の姿もない。

 

しかし、世界各国には復元された昔の地球に存在していた過去の歴史的建造物が見られた。

 

そこで直接地表に降り調査隊を派遣すると調査隊の前にサーダと名乗る女性が姿を現す。

 

彼女の案内の元、調査隊はこの地球そっくりな星を治める聖総統スカルダートと言う人物と謁見することになった。

 

そして、彼の口からこの星の秘密が語られた。

 

それによると、この地球にそっくりな星はヤマトが出発した2200年代の地球から200年未来の地球だと言う。

 

そして、ヤマトはこの地球から脱出後に暗黒星団帝国の艦艇に撃沈されたと言う映像を流され一同は啞然とする。

 

しかし、不確かな未来なんて信じない一同は自称未来の地球から故郷の地球を目指すことにする。

 

ただ、宮殿を出る際、古代守とスターシアの娘であるサーシアは何か思うことがあったのか、未来の地球へ残留した。

 

サーシアを残すことで後ろ髪を引かれる思いながらも防衛軍艦艇は故郷である地球を目指して出発する。

 

そんな中、これまでの戦いで敗戦の煮え湯を飲まされてきた暗黒星団帝国の猛将サーグラスはヤマトとの最終決戦を挑んできた。

 

戦いの中で まほろば 副長の新見は宮殿の映像に違和感を覚え、宮殿の廊下に飾られていたロダン作の『考える人』の像が左右逆のポーズをとっていた事、調査隊のメンバーの一人であるヤマト通信長の相原があの星から持ち帰ったグラスと土から自称未来の地球が地球ではない事を見抜く。

 

そしてサーグラスとの戦いにも決着がつくが、彼が乗艦した艦、グロデースが未来の地球‥‥もとい、地球もどきの敵本星へと墜落する。

 

すると、敵本星は波動融合反応の影響で瞬く間に崩壊する。

 

敵本星が崩壊したことであの星に残ったサーシアの生存が絶望視されたが、崩壊した星の下から今度は超巨大な機械で出来たような星が姿を現す。

 

その機械の星こそ今回の敵である暗黒星団帝国の本星‥デザリアム星の本当の姿であり、サーシアは無事に敵本星の内部へ逃れていた。

 

敵本星であるデザリアム星を前にしている頃、暗黒星団帝国に占領された地球では多くの犠牲を払いながらも地球人類は地球へ撃ち込まれた重核子爆弾‥ハイペロン爆弾を占拠することに成功し、地球側の起爆装置は破壊された。

 

残るはデザリアム星側の起爆装置のみ‥‥

 

ヤマト、まほろば、春藍は地球を救うため、最後の決戦へと臨んだ。

 

デザリアム星は空洞惑星となっており、南極と北極に内部へ侵入する穴がある。

 

サーシアはデザリアム星内部で協力者となったジェレミアとロベルと共にまずデザリアム星側の起爆装置を破壊する。

 

しかし、これは一時的なものですぐに修復されてしまう。

 

地球を救うにはこのデザリアム星を破壊するしか今のところ方法はない。

 

起爆装置を破壊したサーシアたちは南極の入り口を開けてヤマトたちを誘う。

 

デザリアム星内部にはヤマト、まほろば、雪風・改が侵入し、脱出路の北極では春藍とハルバード、ファルシオンの三隻が脱出路を死守するために残った。

 

デザリアム星内部へと侵入したヤマト、まほろば、雪風・改は破壊目的であるデザリアム星の人工都市へたどり着いた。

 

しかし、そこは敵の根拠地。

 

彗星帝国同様、人工都市は強力なバリアで守られていた。

 

しかも人工都市はミサイルによる攻撃も可能。

 

人工都市を破壊するにはまずバリアを解除しなければならない。

 

バリアはこのデザリアム星内部の空間に点在するエネルギー転送ユニットからエネルギーを得ている。

 

この転送ユニットを破壊すれば人工都市を守っているバリアは解除され、都市への攻撃も可能となる。

 

まほろば、ヤマトの二隻はエネルギー転送ユニットを捜し始めた。

 

ヤマトは索敵の為に以前に真田が開発した偵察型コスモタイガーを一機出した。

 

パイロットは山本で後部座席には椎名がオペレートを務めている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「艦長、こちらも航空隊を出しますか?」

 

新見がコスモタイガーを出して索敵に当たらせるか訊ねる。

 

「航空隊は‥‥出せない」

 

「えっ?なぜです?」

 

「航空隊を出せば確かにエネルギー転送ユニットを見つけられるが、航空隊の収容作業で時間を有する‥‥今は少しでも時間を節約したい。それにエネルギー転送ユニット自体にもし、攻撃機能があったら収容作業はなお、時間がかかる」

 

今は一分一秒の時間が惜しい。

 

その為、コスモタイガーの離着艦の時間の節約とエネルギー転送ユニット自体に何らかの防衛手段があり、万が一コスモタイガーが被弾した場合、その被弾したコスモタイガーの収容にも時間がかかる。

 

これが空母ならば離着艦も容易なので航空隊を支援に回していたが、あいにくと まほろば、ヤマトの航空隊の離着艦機能では離着艦作業に時間がかかる。

 

全機を出さずともヤマトの様に少数を出せばいいかもしれないが、まほろば にはヤマトに搭載されていた偵察型のコスモタイガーを持っていなかった。

 

よって、良馬はコスモタイガーを出せなかった。

 

「艦長、ヤマトのコスモタイガーがエネルギー転送ユニットらしき物体をスキャン出来たようで、座標を転送してきました」

 

山本と椎名の偵察型のコスモタイガーがエネルギー転送ユニットの所在をスキャンすることに成功し、その座標データが送られてきた。

 

偵察型のコスモタイガーは円盤状のレドームを上部と下部に取り付けて索敵機能が充実している他にレーダー衛星を射出し、索敵能力をフル活用してエネルギー転送ユニットの位置を探査したのだ。

 

「数と位置は?」

 

「数は全部で四つ。左右に二つずつ展開しています」

 

「では、本艦とヤマト、それぞれ左右に分かれて転送ユニットを撃破するか」

 

左右に二つずつある為、まほろば、ヤマトはそれぞれ左右に分かれエネルギー転送ユニットを破壊することにする。

 

その間もヤマト、まほろば、雪風・改を撃破せんと人工都市からはミサイルが発射される。

 

エネルギー転送ユニットを発見したことで偵察型のコスモタイガーは帰還行動に入るが、ミサイルからの回避行動でやはり収容作業には少々手間がかかっているみたいだが、一機だけだったことから偵察型のコスモタイガーは無事にヤマトへ着艦出来た。

 

「直撃でなければ、ミサイルは無視しろ!!今は一刻も早くエネルギー転送ユニットの破壊を優先する」

 

良馬は多少の被害はやむなしと判断し、人工都市から発射されたミサイルに関しては直撃コース以外のミサイルは無視してエネルギー転送ユニットのみを狙うように指示を出す。

 

「エネルギー転送ユニットを目視で確認!!」

 

「攻撃!!」

 

エネルギー転送ユニットの一つへ接近した まほろば はユニットに対して砲撃とミサイル攻撃を行う。

 

人工都市自体は強力なバリアで守られているが、エネルギー転送ユニットに関してはバリアやミサイル、砲撃などの守備機能は持ち合わせていないようだ。

 

当然、まほろば、ヤマトの行動はスカルダートやサーダもモニターで見ていた。

 

「聖総統、大変です‥‥!!連中は、エネルギー伝達衛星に攻撃を仕掛けています!!」

 

「なにぃっ!?‥‥なんとしてでも阻止しろ!!ミサイルの集中砲火を浴びせてやるのだ!!」

 

(くっ、このような事なら伝達衛星にもバリアか迎撃機能をつけておくべきだったか‥‥)

 

(彼奴等を葬った後、伝達衛星には防御手段を施すか‥‥)

 

人工都市自体はエネルギー転送ユニットから送られるエネルギーを元に強力なバリアで攻撃を防げるが、そのエネルギーを伝達するユニット自体にはなんの防御手段を施していなかったことにスカルダートは後悔する。

 

彗星帝国同様、デザリアム星も内部に敵が侵入されること事態想定していない事なので、エネルギー転送ユニットに防御手段を施していない事に何ら不思議ではなかった。

 

 

 

 

デザリアム星に置いて防衛軍が地球の未来をかけて戦っている中、某宇宙空間では‥‥

 

 

ヴォルフラム ブリッジ

 

 

「こ、これはっ!?」

 

「一体‥‥」

 

「何があったんだ‥‥?」

 

ヴォルフラムのブリッジにあるメインスクリーンに映るのは、浮遊する夥しい大小の金属片の数々‥‥

 

はやてが艦長を務めるヴォルフラムは引き続き情報収集と管理世界になり得る惑星の探査任務でこの宙域へと来ていたのだが、彼女たちの目の前に広がる残骸の山は決して自然に出来た物ではなく、人工的に加工された物で、残骸と化して宇宙空間を漂っていたと言う事は此処で何かしらの事故か戦闘が起きたことを物語っている。

 

「ここで大規模な戦闘があったのかも知らん。周辺の監視を疎かにしちゃあかんで。原型を留めている残骸を探して、データベースと照合するんや。もしかしたら、管理局の艦か民間船の残骸かもしれへんからな」

 

「は、はい!」

 

艦長席の八神はやては、冷汗をかきながらもオペレーターに残骸の分析を命じる。

 

分析担当のオペレーターは、懸命に映像とデータベースを照合した。

 

もしかしたら、はやての言う通り管理局の艦か民間の次元航行船の残骸の可能性もあったからだ。

 

もし、周辺を漂っている残骸が管理局の艦か民間船の残骸ならば救助を必要としている者がいる可能性だってある。

 

「照合できました。周辺の残骸は暗黒星団帝国軍の小型戦闘艦と地球防衛軍のコスモタイガー戦闘機です!」

 

「それは間違いないんか?」

 

「はい。間違いありません。地球側の残骸は少数のコスモタイガーのみで、数的には圧倒的に暗黒星団帝国軍側の残骸が多いです」

 

オペレーターからの報告を聞き、周辺に漂っていた金属片の残骸が管理局の艦や民間の次元航行船ではなかったことから味方の艦艇や民間船が被害に遭ったわけではないことが判明し、はやてはややホッとした表情になる。

 

「さよか‥‥。ここで暗黒星団帝国軍と地球防衛艦隊の戦闘があって、地球側が勝ったと見て良さそうやな」

 

残骸は圧倒的に暗黒星団帝国軍の艦船らしき物が多く、地球側のそれは少数のコスモタイガーの残骸くらいで、地球側の艦船の残骸は確認できない。

 

残骸の結果から少なくとも、この宇宙空間での戦闘による軍配は地球防衛艦隊側に上がったと見て良かろうとはやてはそう結論づけた。

 

「救助信号みたいな信号反応は確認できるか?」

 

「ちょっと待ってください。探査してみます」

 

はやてはこの残骸の中に生存者がおり、救助を待っているかもしれないとのことで救難信号の有無を確認させる。

 

例え暗黒星団帝国の人だろうと防衛軍の人だろうと救助を待っている人が居れば救助したい。

 

生存者が居ればより正確な情報が手に入るからだ。

 

「‥‥艦長、残念ながら救難信号らしき信号は確認できません」

 

オペレーターは周囲を探査し信号の反応がないかを確認したが、救難信号らしき反応は確認できなかった。

 

「‥‥さよか‥本来ならこの辺の残骸を持ち帰りたいとこやけど、近くに暗黒星団帝国軍がいるかも知らん。次元ブイを敷設して一旦撤収しよか」

 

「わかりました」

 

地球艦隊はまだしも、暗黒星団帝国軍に捕捉されるのは非常にまずい。

 

後日工作艦を呼ぶ事とし、次元ブイを数基設置して再び次元空間に戻ることにした。

 

はやて自身も暗黒星団帝国の強さは当然理解している。

 

何しろ、フェイトたちが居るもう一つの地球が管理局よりも強力なこともはやては認めており、その地球を占領しているのだから、暗黒星団帝国の強さは嫌でも理解せざるを得ない。

 

そんな中、ヴォルフラム一隻でたとえ暗黒星団帝国の中型・小型艦艇でも複数で襲われれば撃沈されるのは目に見えている。

 

暗黒星団帝国艦艇の残骸が多いという事は、此処は彼らの縄張りの可能性もある。

 

クルーの安全の為にもこの宙域から離れた方が賢明だとはやては判断し、ヴォルフラムはこの宙域から去って行った‥‥。

 

 

はやてが艦長を務めるヴォルフラムが暗黒星団帝国と防衛軍との戦場跡地から去った頃、その暗黒星団帝国本星では地球の未来をかけた戦いはまだ続いていた。

 

内部では まほろば、ヤマトがハイペロン爆弾の起爆装置を破壊するために‥‥

 

外部では内部に突入した まほろば、ヤマトの脱出路を確保するために‥‥

 

「山南司令、周囲に空間歪曲反応を多数感知!!敵艦隊がワープアウトしてきます!!」

 

「諸君、ここが執念場だ!!ヤマト、まほろば が起爆装置を破壊し、北極から出てくるまで何としてでもここを死守するぞ!!」

 

『おおおー!!』

 

デザリアム星周辺に暗黒星団帝国の艦船が次々とワープアウトしてくる。

 

スカルダートが周辺のパトロール艦隊を急遽呼び寄せたのだろう。

 

「ファルシオンに波動砲の準備をさせろ」

 

「了解。ファルシオンへ拡散波動砲のチャージを伝達!!」

 

山南は、拡散波動砲を装備している無人戦艦のファルシオンに拡散波動砲の発射準備を行わせる。

 

まずは挨拶代わりに拡散波動砲で敵に強力な一撃をお見舞いするつもりだ。

 

同じ無人戦艦でもハルバードは収束型の波動砲を搭載しており、敵を密集させる必要があり、春藍は敵の総数が不明なのでエネルギーをなるべく蓄積しなければならなかったので、波動砲を撃てなかった。

 

「ファルシオン、拡散波動砲発射準備整いました!!」

 

「敵を十分に引き付けてから撃て」

 

「了解」

 

春藍の戦術長のターゲットスコープにはファルシオンと連動した映像が映し出されており、戦術長は相手にすると厄介な戦艦を主にターゲットに設定し、敵艦隊を十分に引き付ける。

 

スカルダートが呼び寄せたのがパトロール艦隊だったことから、戦艦の数も旗艦クラスでそこまで多くなく、またα砲搭載艦やグロテーズの様な決戦兵器を搭載した艦も今のところ存在は確認されていない。

 

「ファルシオン、拡散波動砲発射!!」

 

ファルシオンの艦首から拡散波動砲が放たれる。

 

ファルシオン一隻ながらも拡散波動砲は広範囲に広がり敵艦を葬る。

 

しかし、いくら拡散波動砲が強力でも敵艦すべてを葬ることは出来ず、いくつかの敵艦は残った。

 

「こ、これが‥‥波動砲‥‥」

 

拡散波動砲からの攻撃を逃れた残存艦の乗員は波動砲の威力に恐れ戦く。

 

「狼狽えるな!!敵の兵器は確かに強力だが、あれだけのエネルギー量だ!!早々に連発は出来ぬ!!相手の懐に入ってしまえば、敵はあの超兵器は使えぬ筈だ!!全速で敵との距離を詰めろ!!」

 

そんな乗員たちを士官は叱咤し、春藍との距離を詰めれば相手は波動砲を簡単に撃てないと判断して春藍との距離を詰めるために全速で近づいてくる。

 

「敵艦隊、急速接近!!」

 

「敵は距離を詰めて波動砲を撃たせないつもりか‥‥」

 

山南も敵の戦術をすぐに見抜く。

 

「だが、まさに飛んで火にいる夏の虫だ!!全艦砲雷撃戦用意!!ミサイル及び波動爆雷は遠慮せずに全弾撃ち尽くすつもりで撃て!!」

 

春藍、ハルバード、ファルシオンからは無数のミサイルと主砲からはショックカノンが一斉に斉射される。

 

強力な弾幕に敵艦隊は被弾、または速度を落とし進撃ペースが乱れ、味方同士の衝突が起きる。

 

それでも駆逐艦クラスはその俊敏さを活かして接近を試みる。

 

「敵駆逐戦隊、迎撃網を突破して接近してきます!!」

 

「波動爆雷で周囲を固めろ!!」

 

迎撃網を突破してきた敵の駆逐艦は波動爆雷網に突っ込み波動爆雷の餌食となる。

 

外部で春藍が脱出路確保のため奮闘している頃、内部でも まほろば、ヤマトの奮戦は続いていた。

 

人工都市からのミサイル攻撃を受けながらもエネルギー転送ユニットに攻撃を仕掛けていく。

 

「エネルギー転送ユニットの破壊を確認!!」

 

「だが、一つを破壊した程度ではエネルギーの流れを止めることはできん!!やはり、すべてのエネルギー転送ユニットを破壊しなければならない」

 

エネルギー転送ユニットを一基破壊しても人工都市へのエネルギー供給には問題なく、都市を守っているバリアは未だに健在だ。

 

「次の攻撃目標へ針路を変更」

 

「了解」

 

「しかし、あれだけ大きなユニットだ‥‥例え攻撃手段を有していなくとも硬いな」

 

エネルギー転送ユニットには防御手段は有されていないが、それでも丈夫に作られており、一基壊すにも一苦労だ。

 

そんな中、

 

「古代さん‥‥!!見てください‥‥!!雪風が‥‥!!」

 

「被弾したのか!?」

 

「わかりません‥‥遠隔自動操縦システムへの割り込みが受け付けないんです!!」

 

突如、雪風・改に不具合が生じた。

 

「大山はどこだ!?‥‥くそっ!!あいつめ、こんな時にどこで何をやっているんだ!?」

 

ヤマトからの操艦信号を受け付けず、操艦不能となったのだ。

 

真田は突然の雪風・改の不具合に対して、雪風・改を建造したトチローに原因の調査と雪風・改の操艦機能の回復をしてもらおうとするが、肝心なトチローの姿がいつの間にか消えていた。

 

ヤマトからの信号を受け付けず、雪風・改自体のAIにも不具合があるようで自走すらせず、機関が止まり失速して人工都市が発する人工重力に引っかかり、そのまま人工都市へと墜落していく。

 

「だめです!!あのままじゃバリアに突っ込んじゃいますよ!!」

 

いくらトチローが設計した雪風・改でも暗黒星団帝国の強力なバリアには敵わないはず。

 

バリアに接触すれば雪風・改は粉々になってしまうと思われた。

 

しかし、誰もが雪風・改がバリアに引っかかり粉々になるかと思いきや、雪風・改は粉々にならず人工都市の地表へと無事に?墜落した。

 

「すり抜けたぞ‥‥!!」

 

雪風・改に暗黒星団帝国の強力なバリアを無効化させる機能なんてついてはいない。

 

となると、雪風・改がバリアを通り抜けることが出来たのは何か理由がある筈だ。

 

「そうか‥‥エネルギー供給量が減り、バリアが断続的に消えているんだ!!」

 

エネルギー転送ユニットを一基壊した程度ではまだバリアは強力であったが、既にエネルギー転送ユニットは三基破壊されていたので、人工都市を守るバリアは寿命が尽きかけている電灯の様にバリアを常に張ることが出来ず、展開している状態と消えている状態と交互になっており、雪風・改は上手く、バリアが消えている間に人工都市へと墜落したのだろう。

 

「古代、あと一つユニットを破壊できれば完全にバリアを消滅させることが出来るぞ!!」

 

「あと一つか‥‥太田、雪風はどうなった?」

 

古代は人工都市に墜落した雪風・改の状況を訊ねる。

 

「敵都市へ墜落したようです!!反応、応答共になし!!」

 

やはり、ヤマトからの信号を受け付けず、沈黙したままだ。

 

「くそっ、これで雪風からの援護は期待できないか‥‥急ぎ、エネルギー転送ユニットを破壊するんだ!!」

 

エネルギー転送ユニットが次々と破壊されていることにスカルダート側も焦りを見せ、ミサイル攻撃はより過熱さを増す。

 

「艦首および艦尾魚雷撃て!!続いて煙突ミサイル撃て!!」

 

当初は人工都市からのミサイルを無視していたが、次第に敵ミサイル攻撃も段々と無視できない状況になってきた。

 

まほろば、ヤマトは艦首、艦尾の魚雷、煙突ミサイルで敵ミサイルを迎撃する。

 

「見つけた!!最後のエネルギー転送ユニットだ!!」

 

「急ぎ破壊しろ!!」

 

最後のエネルギー転送ユニットを射程内に収め、攻撃するヤマト。

 

「早く‥‥早く‥‥」

 

命中弾を与えるが、装甲が厚いエネルギー転送ユニットはなかなか爆発しない。

 

最後の一基と言う事で古代には焦る感情が吹き上がる。

 

そこへ、別方向からエネルギー転送ユニットへ攻撃が加えられる。

 

まほろば が自分の担当する範囲のエネルギー転送ユニットを破壊し終え、ヤマトの方へ援軍に来たのだ。

 

さすがのエネルギー転送ユニットも二隻の戦艦からの砲撃には耐えきれず、ようやくエネルギー転送ユニットを全て破壊することができた。

 

「エネルギー転送ユニットすべて破壊!!」

 

「バリアは!?消えたのか!?」

 

エネルギー転送ユニットを全て破壊したことにより、人工都市を守っていたバリアは消えた。

 

あとはサーシアとついでに彼女の協力者であるジェレミアを救助して人工都市に波動砲を撃ち込めば地球人類を救うことが出来る。

 

 

まほろば、ヤマトがデザリアム星の内部でエネルギー転送ユニットを破壊している頃、人工都市でもサーシア、ジェレミア、ロベルも脱出の為の行動をとっていた。

 

南極側の出入り口を開け、まほろば、ヤマトを内部へと侵入させたので、次は脱出口である北極側の出入り口を開ける。

 

そして、ジェレミアは北極側の出入り口の開閉レバーを壊した。

 

「ふむ、これで北極側の出入り口を閉じるにしてもレバーの修理からしなければならないだろう。さて、後は迎えが来るまで耐えなければならないが‥‥」

 

脱出路を確保したので、あとはこの人工都市から脱出するだけだ。

 

その時、

 

ドカーン!!

 

「ぬおっ!?」

 

「きゃっ!!」

 

「‥‥」

 

突然、轟音と地震の様な振動が辺りを襲う。

 

「な、なんだ?」

 

「ヤマトの攻撃かしら?」

 

三人は轟音がした方向を見ると、そこには人工都市に墜落した雪風・改の姿があった。

 

轟音と衝撃の正体は人工都市に墜落した雪風・改だった。

 

「雪風・改!!」

 

「あれが、迎えと見ていいのかな?」

 

「おそらく‥‥さあ、行きましょう!!」

 

三人は雪風・改が自分たちを迎えに来た艦だと判断し、雪風・改の墜落現場へと向かう。

 

「聖総統閣下、エネルギー伝達衛星が全て破壊されました!!」

 

「都市周辺のバリアも消滅しました!!」

 

「ぐっ‥‥ぬぅ~‥‥」

 

スカルダートはモニターに映る まほろば、ヤマトを睨みつける。

 

「都市機能の一部をバリア機能へ回せ!!あと、ハイペロン爆弾の起爆回路の修理を急がせろ!!」

 

スカルダートも波動砲が相手の切り札であり、一発撃つのにエネルギーのチャージにはある程度の時間を有することは理解している。

 

ならば、都市のバリア機能を回復させることが出来れば、例え相手が波動砲を撃ったとしてもこの宮殿がある人工都市を破壊することは出来ず、更に ハイペロン爆弾の起爆回路の修理が終われば地球人類を一気に抹殺することが出来、勝利することが出来る。

 

一方、真田の方もスカルダートの考えを読んでいたのか、自分の席にて何かを準備している。

 

「技師長、一体何をしているんですか?」

 

真田が何か作業をしている事に気づいた相原が真田に声をかける。

 

「コンピューターウィルスだ。ウィルスであの都市全体の機能を停滞させるんだ」

 

「コンピューターウィルス?でも、そんな古風なモノが通用するんですか?敵は物凄い科学力をもった相手なんですよ?」

 

太田は例えコンピューターウィルスを使用しても地球よりも科学技術が優れた暗黒星団帝国には通じないのではないかと不安になる。

 

「相手の科学力が優れているからこそ、可能性がある。地球から送られてきた情報では奴らは半機械の生命体だそうだ。地球で天然痘ウィルスが絶滅したように彼らの文明では機械に悪影響を与えるコンピューターウィルス自体が絶滅している可能性が高い」

 

優れているからこそ、敢えて単純な事や古風な事に対応できないと踏んだ真田はコンピューターウィルスで相手の動きを鈍らせる作戦をとる。

 

「しかし、どうやってここからウィルスを送り込むんですか?」

 

島が真田に人工都市へウィルスを送り込む方法を訊ねる。

 

「注射器ならもう刺さっている。しかも特大サイズのヤツがな」

 

「っ!?雪風!?」

 

そこへ、トチローが姿を現してコンピューターウィルスを送り込むための注射器があることを伝える。

 

「あれにはタイタンで使っていた工作機がまだ積んだままになっていた。墜落地点から配線を敵の中枢回路へ接続すれば‥‥」

 

イレギュラーであった雪風・改の墜落がまさか役に立つとは怪我の功名であり、真田は雪風・改に搭載されていた工作機械を経由して人工都市の中枢回路へ侵入しコンピューターウィルスを送り込む。

 

「こ、これはっ!?一体何が‥‥!?」

 

突如、都市の機能に問題が生じ始めたことにスカルダートは狼狽える。

 

「こ、コンピューターウィルスが都市の機能中枢に送り込まれた模様です!!」

 

「な、なにぃ!?コンピューターウィルスだと!?すぐに消去しろ!!」

 

「で、ですがコンピューターウィルスに対抗するワクチンがありません!!」

 

「ならば、ウィルスに侵された回路を切り離せ!!今は一刻も早くバリア機能を回復させるのだ!!」

 

「は、はい!!」

 

真田の読み通り、暗黒星団帝国にはウィルスに対抗するためのワクチンが用意されていなかった為、ウィルスに侵入された回路を切り離すと言うまさに肉を切らせて骨を断つ形の応急方法をとってきた。

 

一方、雪風・改に向かっていたサーシアたちは敵に見つかり追いかけられていた。

 

「居たぞ!!止まれ!!」

 

「やむをえん!!撃て!!射殺しろ!!」

 

三人の後ろからは衛兵たちがビームライフルを撃ちながら追いかけてくる。

 

「敵は狂った回路を切り離し始めたぞ!!」

 

「都市周囲のバリア装置修復が再開!!復帰まであと一分!!」

 

「サーシアは今、どのあたりだ!?」

 

古代が相原にサーシアの現状を訊ねる。

 

「‥‥ダメです。ウィルスの影響で都市内部の様子がわかりません」

 

真田が送り込んだコンピューターウィルスは確かに相手の機能を一時麻痺させることが出来たが、反対にこちら側からの通信や映像も遮断してしまい、サーシアの現状を確認することが出来なくなってしまった。

 

暗黒星団帝国側、防衛軍側、共に時間との勝負となる。

 

バリアが復帰する前にサーシアを助け波動砲を撃ち込まなければ、地球人類は滅ぶ。

 

「‥‥相原、まほろば の月村に連絡‥‥波動砲の準備を整えさせろ‥‥進‥‥ヤマトもだ」

 

守はヤマト、まほろば に波動砲の準備を命じる。

 

「しかし、まだサーシアが‥‥」

 

「信じるんだ‥‥サーシアを‥‥」

 

「‥‥了解」

 

 

まほろば 第一艦橋

 

 

「艦長、ヤマトの古代艦長より波動砲の発射準備をせよとの命令が‥‥」

 

ギンガが良馬に守からの命令を伝える。

 

「‥‥サーシアの脱出は確認できたのか?」

 

「それが、コンピューターウィルスの影響で現状の確認が出来ていません」

 

「‥‥」

 

サーシアが脱出できていれば当然、ヤマトからサーシア脱出の知らせはくる筈だ。

 

しかし、未だにサーシア脱出の報告は来ていない。

 

となると、サーシアはまだあの人工都市に居る。

 

このまま波動砲を撃てば、サーシアも巻き込んでしまう。

 

だが、時間が経てば経つほど、暗黒星団帝国側が有利になる。

 

手を拱いていれば、折角破壊したハイペロン爆弾の起爆装置を修理されてしまい地球人類の絶滅が確定的になる。

 

「くっ‥‥航海長、本艦をヤマトの横につけろ。砲雷長、波動砲の発射準備だ!!」

 

「は、はい」

 

「了解」

 

良馬は葛藤するが、それはヤマト、まほろば の乗組員も同じだろう。

 

まほろば はヤマトの隣に横付けし、波動砲の発射準備を整える。

 

「ターゲットスコープ、オープン!!目標、人工都市中心部!!」

 

「総員、対ショック、対閃光準備!!」

 

まほろば、ヤマトの艦首にある波動砲の発射口に段々と青白エネルギー反応がたかまっていく。

 

古代たちがサーシアに早く脱出してくれと心の中で願うように、

 

「‥‥」

 

スカルダートの方も早くバリア機能が回復してくれと心の中で焦る。

 

やがて、ヤマト、まほろばの二隻が波動砲を撃つ前に人工都市は再びバリアに包まれる。

 

「敵都市、バリアを復帰!!‥‥くそっ!!」

 

あの人工都市のバリアに対して波動砲が無力なのは既に解析済み‥‥

 

しかも今度はエネルギー転送ユニットではなく都市機能の一部からバリアのエネルギーを得ているので、あのバリアを破るには都市を攻撃しなければならない。

 

しかし、その都市はバリアで守られている。

 

(詰んだ‥‥完全に詰んだ‥‥)

 

(地球は‥‥地球人類はここまでなのか‥‥?)

 

完全にお手上げ状態となり絶望感がヤマト、まほろば の乗組員に漂う。

 

「ハハハハハ‥‥運命は我らに味方したようだな?もはや抗う力もあるまい?起爆装置の修理が終われば、その時こそ地球人類の運命は終わりを告げるのだ。ハハハハハ‥‥」

 

バリアが復帰して、ヤマト、まほろば の波動砲が通用しなくなったとたんスカルダートの焦りは消え、一転して余裕へと変わり高笑いをする。

 

だが、運命の神は気まぐれだったみたいで、突如人工都市の一画で爆発が起きる。

 

「ぬっ!?何事か!?」

 

「聖総統閣下、バリアが!?」

 

人工都市の一部が破壊されたことでバリアへのエネルギー供給が再び弱まり、都市を包み込んでいたバリアがまたもや消滅した。

 

そして都市の爆炎の中から雪風・改が姿を現す。

 

先ほどの都市の爆発は雪風・改が砲雷撃を行った為に起きた爆発だった。

 

「雪風、コントロール復帰!!」

 

不具合を起こした雪風・改はコントロールを取り戻し、都市を攻撃して浮上した。

 

「今だ!!撃て!!」

 

「発射!!」

 

バリアが消え、雪風・改が浮上したことでヤマト、まほろば は遠慮なく人工都市へ波動砲を撃ち込んだ。

 

二隻の戦艦の波動砲を喰らった人工都市は脆くも崩壊、消滅しその中の宮殿に居たスカルダートやサーダたちは‥‥

 

「きゃぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ぬっ!?ぎゃぁぁぁぁぁー!!」

 

都市同様、消滅した。

 

波動砲の攻撃を受け、ゴルバやデザリアム星の表面同様、波動融合反応による誘爆が広がる。

 

「誘爆が広がっています!!」

 

「脱出!!全速前進!!」

 

脱出口である北極側の出入り口は既に開口済みなので、あとはそこから脱出するだけだ。

 

「通信長、外に居る春藍に現状を伝え、ワープで避難するように指示をするんだ!!急げ!!」

 

「は、はい!!」

 

ギンガは急ぎ、デザリアム星外部で脱出口を死守している山南の春藍に無事にハイペロン爆弾の起爆装置破壊と波動融合反応による誘爆が内部で広がっている事を伝え、ワープによる避難を伝えた。

 

「大山、雪風のワープを同調させろ!!」

 

「言われなくても分かっているよ!!」

 

折角脱出できたのに誘爆に巻き込まれてお陀仏では洒落にならない。

 

とは言え、今雪風・改に乗っているであろうサーシアにワープ操作なんて出来ないので、トチローが急ぎ、雪風・改のワープ機能をヤマトに同調させて脱出させる。

 

防衛軍艦艇全てがワープした後、デザリアム星は内部から波動融合反応の誘爆で大爆発を起こし消滅した。

 

 

安全宙域にヤマト、まほろば、春藍、ファルシオン、ハルバードが次々とワープアウトしてくる。

 

「雪風は!?サーシアはどうなった!?」

 

しかし、雪風・改はまだワープアウトしてこない。

 

雪風・改は無事にワープできたのか?

 

それとも‥‥

 

一同が不安と緊張の中に居ると‥‥

 

「ワープアウト反応を確認‥‥あれは‥‥あれは‥‥」

 

一番最後にワープアウトしてきたのは雪風・改だった。

 

「雪風‥‥雪風だ!!」

 

「やった!!」

 

ワープアウトした雪風・改の姿を見て一同は思わず歓喜の声を上げる。

 

そして、雪風・改の艦橋にはサーシアの姿が確認できた。

 

「お父様‥‥」

 

サーシアは特にケガもなく無事だった。

 

「サーシア‥‥」

 

サーシアの姿を見てようやく不安と緊張から解放され、守もホッとした表情になる。

 

「良かった‥‥」

 

「ふぅ~‥‥まだ手が震えているぜ‥‥」

 

まほろば でもサーシアの無事な姿が確認でき良馬たちもホッとする。

 

「お姉様‥‥」

 

「良かったわね。ユリーシャちゃん」

 

「うん」

 

まほろば の医務室でもサーシアの無事が確認できた映像がモニターに映し出され、妹のユリーシャは思わず嬉し涙を流し、そんなユリーシャの頭をリニスは優しくなでた。

 

「あっ、見てください!!」

 

ギンガが窓の外を指さす。

 

そこにはデザリアム星の爆発の影響で白色銀河と黒色銀河、二つの銀河系のバランスが崩れ崩壊し、混ざり合い新たな銀河系が誕生していく。

 

それはまさに宇宙の生と死の神秘的な瞬間であった。

 


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