星の海へ   作:ステルス兄貴

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百二十七話 交信口論

 

 

此処で少し時間を巻き戻し、管理局との交信が再開された日の夜‥‥

 

良馬の寝室に視点を当てる。

 

ギンガが月村邸に泊ったと言う事で良馬とギンガは身体を重ねたのだが、この日はいつもよりも良馬は烈しくギンガを求めた。

 

と言うのも良馬には一抹の不安があったからだ。

 

暗黒星団帝国の脅威が去り、管理局との交信が再開されたのだから、フェイトたちのミッドへの帰国はもう間もなくだろう。

 

フェイトたちの帰還先であるミッドチルダはギンガの故郷でもある。

 

当然、故郷のミッドチルダにはギンガの家族も居る筈だ。

 

フェイトたちの帰国と一緒にギンガもミッドに帰ってしまうのではないか?

 

そんな不安が最近より強くなっていた。

 

ギンガをこうして激しく求めるのはそうした不安の現れでもあった。

 

 

幾度もギンガの膣内で果て、流石の良馬もギンガも息も絶え絶えとなり、ベッドに沈んでいる。

 

「‥‥ギンガ」

 

「なんでしょう?」

 

息を整え、良馬はギンガに自分が抱いている不安をぶつけることにした。

 

「‥‥もうすぐハラオウン執務官らの帰国手続きに入る」

 

「‥‥はい」

 

「‥‥その‥‥ギンガは帰りたい?ミッドチルダに?」

 

「‥‥」

 

ギンガもフェイトらの帰国が近いことは感じているし、フェイトたちの帰国が何を意味するのかも当然理解している。

 

フェイトたちと一緒に行けばミッドに戻れるし、そうすればミッドに居るスバルやゲンヤと再会することもできる。

 

良馬が言いたいことにギンガは直ぐに分かり、

 

「大丈夫ですよ、良馬さん」

 

ギンガはギュッと良馬は抱きしめ、

 

「私は良馬さんと一緒にいますから」

 

「‥‥でも、ハラオウン執務官の故郷には‥‥」

 

「‥‥はい、私の家族が居ます。でも、この世界に残ると決めたのは私の意思です。月村家に嫁いだと思ってください‥‥良馬さんは私を貰ってくれるのでしょう?」

 

「ああ、勿論だとも」

 

ギンガの返答を聞き、良馬もギンガを抱きしめる。

 

「不安でしたか?私がミッドに帰ると思って‥‥?」

 

「ああ、不安だった‥‥ハラオウン執務官らの帰国が近づくと思うと増々ね」

 

「じゃあ、私をこの世界に縛る確実な方法をとってみますか?」

 

「ん?確実に縛る方法?」

 

「はい。例えば……赤ちゃんが出来ました…………とか?」

 

「えっ?」

 

ギンガの発言に良馬はドキッとする。

 

確かに二重銀河から戻って来てからは極力ギンガと二人っきりの時はこうしてイチャイチャしている。

 

そのイチャイチャする時も今日の様に一度で終わった訳ではなく、何度もしている。

 

ギンガの発言を聞いてギンガを結婚前に孕ませてしまったのかと思う良馬。

 

「…………なんてね、ちょっとした冗談ですよ」

 

ギンガは笑みを浮かべ妊娠はしていないと言う。

 

「えっ?」

 

どうやら妊娠したと言うのはギンガの冗談であったが流石に今のシチュエーションでその冗談はきつい。

 

「ふぅ~心臓に悪いよ‥‥でも、それは決して遠くない未来だと思っているよ」

 

「はい、私もです」

 

二人は口づけをした後、あれだけイチャついたにも関わらず、良馬はギンガがこの地球に残ると言う事実を聞いて安心したのだが、このままギンガをもう少し感じたいと思い、

 

「ギンガ‥その‥‥もう一回‥いいかい?」

 

ナニを何て詳しく言わずともギンガだってその言葉の意味は直ぐに分かり、

 

「もう‥しょうがないですね」

 

二人の夜はまだ続きそうだった。

 

ただ、寝室の扉の外でフェイトとティアナの二人が覗いていることに良馬とギンガは行為で夢中だったので気付かなかった。

 

良馬とギンガの行為を覗いた後、フェイトとティアナは寝室へと戻りベッドに入る。

 

二人はそのまますぐに眠れるのかと言われると、それはNOであり、しばらくはベッドの中で悶々とさせられる。

 

しかし、フェイトはいつの間にか眠っていたがティアナは先ほど見た良馬とギンガとの行為の光景から段々と時間が経ち冷静になってくるとこの先についてのヴィジョンについて自問する。

 

もうすぐで兄が目指していた執務官にもう一息でなれる。

 

だが、この地球へ来てから管理局が井の中の蛙なのだと認識させられた。

 

執務官は管理局の中でもエリート職であるが、そんな役職の肩書きなんてこの広い宇宙では何の役にも立たないことがこの地球へ来る切っ掛けである彗星帝国の襲撃から先日あった暗黒星団帝国の脅威を経験して十分に分かった。

 

(私はどうしたら‥‥)

 

フェイトと共にミッドに戻れば兄が目指し、自分の夢でもあった執務官にもう少しでなれる。

 

しかしその一方で、管理局の未来に暗雲を感じている自分も居る。

 

今のティアナにはボラー連邦からの亡命者が密かに新型の宇宙船のエンジンを開発している事は知らないので、ティアナが知る管理局が所有している艦と防衛軍が所有している艦との性能を比べるとどうしても管理局の将来に不安を感じてしまうのも納得できる。

 

そもそも、この疑問はパルチザンに入る前から抱いていた疑問であった。

 

ギンガと言う前例があるので、自分も管理局から防衛軍に転属しようかと検討した事だって何度もある。

 

ミッドへの帰還が近づいている今、早めにその答えを出さなければならない。

 

ティアナは別の意味を抱えながら悶々とした思いを抱きながら夜を過ごした。

 

そして、やってきた管理局との交信日の朝‥‥

 

「‥‥」

 

ザァー‥‥

 

交信へ向かう前、ティアナは月村邸でシャワーを浴びている。

 

頭からお湯を被り、これから起こるであろうなのはとのやり取り‥‥

 

それを思うとやや億劫になる。

 

「‥‥」

 

ふと顔をあげると、鏡にうつる自分の顔‥‥

 

その顔にはこの地球へ来た時には無い傷がくっきり残っている‥‥

 

管理局との最後の交信には無かった傷が今ではくっきり残っている‥‥

 

手術をすれば消える傷であるが、自分はこの傷を消すつもりは毛頭ない。

 

この傷を消してしまってはあの戦いで死んでいった仲間たちの事も忘れてしまうのではないかという思いもあるからだ。

 

なのはに何と言われようともこの傷は消さない‥消すつもりはない!!

 

「よしっ!!」

 

パンっ!!

 

ティアナは両手で頬を叩き気合をいれるとお湯を止め、バスルームから出る。

 

「ふぅ~‥‥」

 

お湯で濡れた身体をバスタオルで拭き、ブラとショーツを身に着け、クローゼットから私服を取り出す。

 

「ティアナ‥‥」

 

着替えている最中、フェイトがティアナに声をかける。

 

「はい?」

 

「その‥‥今日の交信だけど‥‥」

 

「今日は行くつもりですよ、フェイトさん。スバルも多分私と話したかっただろうし、私自身も久しぶりにスバルとは会いたいですし‥‥」

 

前回はフェイトとヴィヴィオ、そしてミッド側のなのはに配慮して欠席したが今日は出席する。

 

「‥‥フェイトさん」

 

「何かな?」

 

「もし、私となのはさんが言い合いになったら、ヴィヴィオを連れて退出して下さい」

 

ティアナは自分となのはが言い合いになれば、自分はなのはに対して口汚い言葉を吐いてしまうかもしれない。

 

そんな場面をヴィヴィオには見せたくはない。

 

それ以前に口論する場面は見せたくはないからだ。

 

「分かったよ、ティアナ」

 

フェイトもティアナの意を組んでそれに同意した。

 

いきなりこの傷を見えるのではなく、一応大きなガーゼを頬に貼り、ティアナは今日の交信に臨んだ。

 

普段の交信通り、モニターの向こう側に本局の制服を着たオペレーターの姿が映る。

 

そして、オペレーターの後ろには先日の交信の場に居たなのはとスバルの姿もあった。

 

「ティア!!」

 

スバルは先日の交信の場にティアナが居なかったので、こうして久しぶりにティアナの姿を見たスバルは感極まってモニターに食いつく。

 

「「「「‥‥」」」」

 

スバルの行動に良馬、フェイト、ティアナ、ヴィヴィオはドン引き。

 

「す、スバル、少し落ち着いて」

 

「機械が壊れてしまいますから!!」

 

モニターの向こう側ではオペレーターとなのはがモニターに食いついているスバルを引きはがす。

 

「お、お見苦しい所をお見せして、申し訳ございません」

 

オペレーターとなのはに引きはがされたスバルは冷静になったのか、先ほどの自分の行動に対して頭を下げ謝罪する。

 

「い、いえ‥お気になさらず‥‥我々の不甲斐なさで音信不通となってしまい、こちらこそ申し訳ありません。音信不通の間、親友の安否が気になっていたことでしょう。交信再開となった先日でも欠席でしたからね」

 

良馬はスバルに対して気にするなと言う。

 

彼としてもスバルの気持ちは分かるからだ。

 

スバルが落ち着き、ようやく今日の交信が始まる。

 

「ティ、ティア?‥その‥‥元気だった?‥‥えっと‥‥最後に会った時よりも雰囲気が変わったし‥‥それにその顔のガーゼもどうしたの?」

 

久しぶりに画面越しのティアナと面会したスバルであったが、ティアナの変わった雰囲気を読み取り、なんだがしどろもどろに話しかける。

 

それは訓練校で初めてティアナと出会った時と似たような‥‥いや、それ以上のプレッシャーをモニター越しであるがひしひしと感じている。

 

(あぁ~やっぱり、スバルも今のティアナはちょっと怖いよね?)

 

(私だって、ティアナが帰ってきたときには驚いたし、この前の模擬戦でも雰囲気がすごかったもん)

 

暗黒星団帝国の脅威が去り、それに伴いパルチザンが解散となりティアナが月村邸に戻った時、フェイトはティアナを見て絶句した。

 

それは言うまでもなく彼女の顔の傷だった。

 

ヴィヴィオも怖がるかと思いきや、彼女がこの地球に来てから見たアニメキャラに似ていると目を輝かせていた。

 

ティアナが帰ってきた日の事を思い出し、スバルのリアクションは無理もないと思うフェイト。

 

「スバルの言う通りだよ。その顔はどうしたの?」

 

なのはもやはりティアナの顔のガーゼについて訊ねる。

 

「戦傷を負いまして‥‥」

 

「センショウ?えっ?ティア、何を言っているの?」

 

『戦傷』の意味を知らないのかスバルは首を傾げる。

 

「‥‥どういうことかな?ティアナ」

 

ティアナの言う『戦傷』を聞いて心なしかなのはの声のトーンが低くなる。

 

それは機動六課時代に模擬戦で容赦なくティアナをシューターで撃った時と同じだった。

 

なのはの隣に居るスバルも彼女の変化に気づき、体をビクッとさせ引いている。

 

恐らくスバルもあの時の模擬戦の事を思い出しているのだろう。

 

モニター越しということもあるが、今のティアナはなのはに対して何とも思っておらず、淡々と傷が残った原因を話す。

 

「敵の‥‥暗黒星団帝国の占領軍総司令官からの銃撃を受けまして‥‥」

 

「えっ?な、なんで?ティアが銃撃を受けるの?」

 

「‥‥」

 

スバルはティアナの言う事に段々と困惑と言うか混乱してきた。

 

一方、なのははティアナの話を黙って聞いている。

 

「ティ、ティア、暗黒星団帝国の人に捕まっていたの?」

 

「捕まっていたわけじゃないわ」

 

「じゃ、じゃあ、どうして‥‥?」

 

暗黒星団帝国に捕まっていた訳ではないのに顔に傷を追っていると言う矛盾にスバルは困惑している。

 

「それは、私がパルチザンとして暗黒星団帝国と戦っていたからよ」

 

ベリッ‥‥

 

ティアナは傷の理由を話すと同時に頬に貼っていたガーゼを取り外す。

 

「「っ!?」」

 

ガーゼの下にあったティアナの頬に残る傷を見てなのはもスバルも絶句する。

 

絶句している二人に対してヴィヴィオは空気が読めず、

 

「ねぇ、なのはママ、ティアナさんカッコイイでしょう?海賊みたいで!!」

 

「ヴィ、ヴィヴィオ、ちょっと黙ろうか?」

 

今回、フェイトはヴィヴィオにティアナについて話すなと言っていなかったので、ヴィヴィオはなのはにティアナの感想を述べた。

 

しかし、流石にこの空気の中でヴィヴィオのこの発言は空気を読んでいない発言だったので、フェイトは慌ててヴィヴィオを黙らせる。

 

「‥‥フェイトさん」

 

ティアナはフェイトをジッと見つめる。

 

「‥‥」

 

フェイトはティアナの視線を受けて彼女が何を言いたいのかすぐに分かり、

 

「ヴィヴィオ、ちょっと席を外そうか?」

 

ヴィヴィオの手を引いて、ヴィヴィオに退出を促す。

 

「えっ?どうして?」

 

ヴィヴィオとしてはまだ来たばかりでなのはと全然会話をしていないのに部屋から出なければならない事に首を傾げる。

 

「ティアナはこの前、なのはママと話せなかったでしょう?だからティアナはなのはママと大事な話をするみたいだから、ねっ?」

 

事前にフェイトと打ち合わせをしている事とフェイトもなのはの声のトーンが低くなった事でこの後、ティアナと口論になるかもしれないと予想してヴィヴィオに退出を促したのだ。

 

きっと、なのはの方もフェイトが空気を読んでくれたと思ったことだろう。

 

ヴィヴィオがフェイトと共に部屋から退出すると、重苦しい空気が一層増した様な気がした。

 

なのはもヴィヴィオが退出した事で遠慮なくティアナに言いたい事を言えると思ったのだろう。

 

それによって管理局側の空気はもっと重いだろう。

 

スバルやその場に居るオペレーターにはご愁傷様としか言えない。

 

実際にスバルもオペレーターも黙ってやや俯いているなのはに対してドン引きしているからだ。

 

「ティアナ‥どうしてティアナが暗黒星団帝国と戦っていたのかな?もしかして無理矢理戦わされていたのかな?」

 

本来、地球と暗黒星団帝国との戦争にミッドの住人であるティアナは無関係だ。

 

それにもかかわらず、ティアナは現に地球を占領した暗黒星団帝国と戦い、顔に傷が残った。

 

なのははもしかしたらティアナは防衛軍に無理矢理徴兵されたのかと思った。

 

「なのはさん、私は防衛軍に徴兵された訳ではありません。パルチザンに参加したのは私自身の意思です」

 

「どうしてパルチザンなんかに‥‥一つ間違えればティアナは殺されていたかもしれないんだよ!?」

 

「そ、そうだよ。模擬戦とは全然違うんだよ!!」

 

「管理局が追っている犯罪者の中にも凶悪な犯罪者だっているじゃない。私の兄さんやスバル‥アンタのお母さんだって殉職したじゃない」

 

「そ、それは‥‥」

 

管理局員だから‥魔導師だから、事件で追っている犯罪者に絶対勝てると言う訳ではない。

 

実際にティアナの兄、ティーダもスバルの母親(正確には養母)であるクイントも事件を追う中で殉職した。

 

「それにこれは暗黒星団帝国の脅威が去った後なので言えますが、暗黒星団帝国の目的‥これも関係しています」

 

「暗黒星団帝国の目的?」

 

「それってなんなの?」

 

地球が暗黒星団帝国に占領された情報は管理局に入っていたが、流石に管理局でも暗黒星団帝国の目的なんて知らされていない。

 

しかし、ティアナとフェイトの二人は、ティアナがパルチザンに入る前、避難先である中嶋家でティアナよりも先にパルチザン入りしていた源三郎が妻である加奈江に送られていた手紙に暗黒星団帝国が地球を占領した目的らしき内容が記されておりフェイトもティアナも源三郎からの手紙で暗黒星団帝国の地球占領の目的を知った。

 

その時は確証もないただの推測であったが、それが事実である時はティアナもフェイトもまさに身震いした。

 

暗黒星団帝国の情報を送った源三郎は加奈江たちを信頼して暗黒星団帝国に関する情報を手紙に記したのだ。

 

フェイトもティアナも源三郎の信頼に応えるべく、手紙の内容を他者に伝えることはなかった。

 

しかし、暗黒星団帝国の脅威が去った今だからこそ暗黒星団帝国が何故、地球にハイペロン爆弾を撃ち込み、地球を占領したのかその理由をティアナはなのはたちに話した。

 

暗黒星団帝国の脅威が去ったので、暗黒星団帝国の地球占領の目的は既に機密ではなくなっていた。

 

ティアナは隣に座っている良馬に視線を向ける。

 

すると良馬は頷く。

 

それは話して構わないと言う意思表示だった。

 

「暗黒星団帝国の人たちは首から上が生身の肉体で、首から下は機械‥‥サイボーグと言う半機械な生命体だったんです」

 

「首から下が機械‥‥それって‥‥」

 

スバルは何か言いたげであり、なのはもチラッとスバルを見る。

 

JS事件の際にスバルが普通の魔導師ではなく、戦闘機人であることは六課の人間は知ることになったが、ティアナは訓練校時代にスバルから自身が戦闘機人であることを告白されていたがずっと黙っていた。

 

「ええ、スバル‥アンタと似た存在だったけど、アンタ以上に暗黒星団帝国の人たちは機械化が進んでいたわ」

 

良馬はギンガが戦闘機人である事を知っていたので、彼女の妹のスバルも当然、戦闘機人である事を知っている。

 

スバルは良馬に戦闘機人である事がサラリとバラされていたが、ティアナの印象と暗黒星団帝国の人たちが自分以上の機械生命体であることを知り、その事実にスバルもなのはも気づいていない。

 

当然、サラリとバラシてしまったティアナもだ。

 

「な、なんでそんな身体に‥‥し、信じられない。暗黒星団帝国の人たちは一体何を考えているの?」

 

スバルは自分が普通の人間でないことにコンプレックスみたいなモノを感じていたので、自ら進んで自分たちの体を機械化させた暗黒星団帝国の人たちに嫌悪感みたいなものを抱く。

 

「機械の身体なら普通の肉体よりも長く生きられる‥普通の肉体よりも身体能力を上げることが出来る‥‥そう考えたみたい。元々暗黒星団帝国はこの地球やミッドのよりも科学技術が進んだ星みたいだから‥でも根本的な事を彼らは忘れていたみたい」

 

「根本的な事?」

 

「スバル‥なのはさんもその年なら子供がどんな風にして生まれてくるか知っているでしょう?」

 

「ティア、バカにしすぎ!!いくらなんでも私だって知っているよ!!」

 

「ま、まさか‥‥」

 

スバルはいくら自分が戦闘機人だからとは言え、コウノトリやキャベツ畑などではなく、子供が普通どんな風に生まれてくるかぐらいは知っており、そんな当たり前の質問をしてきたティアナが自分をバカにしているのかと憤慨する。

 

一方、なのははティアナが言いたい事、暗黒星団帝国の人たちが自らの身体を機械化したことによるデメリットを瞬時に理解した。

 

「なのはさんが思った通り、優秀な科学技術、優れた機械の肉体を持つ反面、彼らは子孫を残すための生殖機能を失ったんです」

 

異性でも機械の身体同士では性交は出来ない。

 

性交が出来なければ、女性は体内に子供を宿すことは出来ない。

 

いくら長生き出来る丈夫な機械の身体を手に入れても子孫を残す術がなければいずれは滅んでしまう。

 

「で、でも、それが何で地球を占領する事になるの?」

 

「彼らは地球人の身体に自分たちの脳を移植して、子孫を残そうと画策し地球を占領したんです。脅しと万が一の失敗の為にハイペロン爆弾を撃ち込んだみたいです」

 

「ハイペロン爆弾?」

 

「それってどんな爆弾なの?」

 

「えっと、ハイペロン爆弾って言うのは‥‥うーん‥‥」

 

ティアナはハイペロン爆弾について説明しようとするが、流石にハイペロン爆弾についての性能は曖昧だった。

 

源三郎の手紙にもハイペロン爆弾については『厄介な爆弾』とだけしか書かれていなかったからだ。

 

「ハイペロン爆弾と言うのは‥‥」

 

そこで、良馬がティアナの代わりになのはとスバルにハイペロン爆弾について説明を行う。

 

「起爆から死滅までのプロセスが設定されており、任意の種を選んで死滅させることが可能な大量殺戮兵器で、これも暗黒星団帝国の技術の結晶の一つでもある爆弾だ。この爆弾は大気圏の中間子質量を破壊する能力を持ち、外傷を与えずに生物の脳細胞を一挙に死滅させることが出来、起爆すると、内部に封入された重核子へ中性子ビームが照射され、高エネルギーのプラズマ状態となる。このプラズマ化された重核子を超高エネルギー状態で炉内に閉じ込め、二重らせん構造の定常空間を維持すると、周囲の空間に歪みが発生してベータ変調された重力波が発生する。その結果、これを浴びた生物は細胞核内部のDNAが異常活性され、瞬時にして自己崩壊してしまうんだ」

 

「「?」」

 

ハイペロン爆弾について説明を受けるなのはとスバルであるが、意味は分からない様子。

 

「今回、暗黒星団帝国は地球人のみを絶滅するように設定していたが、設定によっては人間には無害だけど、他の動植物を死滅させることが可能なのだろう」

 

詳しい原理は分からないが、なのはとスバルはハイペロン爆弾がロストロギア並みの凶悪な質量兵器であることだけは理解した。

 

「話を戻しますね。あのまま暗黒星団帝国に占領されていたら、私を含めフェイトさんやヴィヴィオの身体さえ危なかったんです」

 

「それでも、ティアナが戦わなくたって‥‥それに戦うってクロスミラージュで戦ったの?」

 

この地球はAMAの環境下なので、魔導師としては禁断の地とも言える星だ。

 

そんな環境下でデバイスを長時間使用して影響はないのか?

 

そもそも使用できるのかと言う疑問もある。

 

「いえ、防衛軍から支給されたコスモガンを使用していました」

 

「それって質量兵器だよね?局員として質量兵器を使うなんてティアナ、貴女は一体何を考えているの?」

 

「コスモガンは出力によってデバイスの非殺傷設定と同じように調整する事が出来ます」

 

「じゃ、じゃあ、ティアは非殺傷で戦っていたの?」

 

「‥‥いいえ、殺傷設定で戦っていたわ」

 

「殺傷‥‥それって‥‥」

 

「ええ、暗黒星団帝国の占領兵を何人も殺したわ」

 

「そ、そんなっ!?ティアが‥‥」

 

親友が宇宙人‥地球を襲撃した侵略者とは言え、人を殺したことにスバルはショックを受ける。

 

「ティアナ‥なんで‥‥なんでそんなことを!!どうして人殺しなんて!!」

 

「言った筈です。フェイトさんとヴィヴィオを守る為‥‥いえ、それ以上に暗黒星団帝国に占領されたこの地球を救いたかった‥実際にパルチザン活動で敵の兵器工場を襲撃した際には、こちらで衣食住のお世話になっていた人を救うことが出来ました」

 

「でも、ティアナは管理局の人なんだよ!!そっちの地球の戦争は全く関係ないじゃない!!」

 

元教え子が人を殺したことになのはは憤慨する。

 

「なのはさん‥なのはさんはもし、ミッドが暗黒星団帝国の様な外宇宙からの侵略者にミッドが占領されたら戦えますか?殺しにかかって来る侵略者に対して話し合いや非殺傷なんて甘い対処なんですよ!!私はこの世界に来てからそれを嫌と言うほど体験しました」

 

JS事件の時、ティアナはヴァイスの援護があったとは言え複数の戦闘機人相手に勝利したが、もしその時のティアナが今のティアナだった場合、ティアナの相手をした戦闘機人たちは確実に命を落としていただろう。

 

ティアナ自身、管理局の艦が一方的にガトランティスに襲われ自分とフェイト以外の乗員が殺され、暗黒星団帝国の手により第37探査部隊が悪魔の実験に巻き込まれ、部隊の全員が理不尽にも殺された。

 

そして、地球が暗黒星団帝国の手により占領された。

 

目の前で繰り広げられる理不尽にティアナの我慢も限界に来ていたのも彼女がパルチザンに参加していた理由の一つでもある。

 

「貴女はこの理不尽な光景も体験もしていないからそんな事を言えるんですよ」

 

「でも、フェイトちゃんもティアナと同じ体験したけど、フェイトちゃんはティアナと違ってパルチザンに参加していなかったじゃない」

 

「そうですね‥でも、フェイトさんもパルチザンに参加していたら、誰がヴィヴィオを守るんですか?」

 

「‥‥」

 

「それに、フェイトさんは私より表には出していませんが、フェイトさん自身もきっと何か思うことがある筈です」

 

「そ、それは‥‥」

 

自分と同じく理不尽な光景も体験もしたフェイトだって、自分と同じ思いや管理局に対する思いも抱いている筈だ。

 

ただ、自分と違いフェイトはそういった思いを自らの心の奥底にひた隠しているのではないかとティアナはなのはに言う。

 

なのはもフェイトに対してそういう一面があることは知っている。

 

海鳴で魔法とフェイトに出会う切っ掛けとなったPT事件‥‥

 

その時のフェイトはジュエルシードを集めている目的をなのは、ユーノに話すことはなかった。

 

ティアナの指摘を受け、なのはは完全に否定は出来なかった。

 

もしも、ヴィヴィオがフェイト、ティアナの居る地球へ跳ばされていなかったらフェイトもティアナ同様、パルチザンに参加していたかもしれないと思うなのは。

 

その後もティアナとなのはの話は平行線をたどり、両者には険悪なムードが続き、スバルは二人のやり取りにあたふたしていた。

 

「これ以上、話をしても無駄みたいですね」

 

「無駄って、私は‥‥」

 

「スバル、ごめんね。こんな空気にしちゃって」

 

「えっ?あっ、いや‥その‥‥」

 

スバルとしてもどう返答して良いのか分からなかった。

 

ティアナのせいではないと言えばなのはを否定することになるし、その逆ではティアナを否定することになる。

 

「それじゃあ、月村さん。私は部屋の外で待っていますから」

 

「待ちなさい、ティアナ。まだ話は‥‥」

 

ティアナ自身もこれ以上なのはと話しても意味はないと思い、良馬に一声かけた後に部屋から退出する。

 

「お待たせしましたフェイトさん」

 

「あっ、ティアナ‥‥その‥なのはとは‥‥」

 

「ええ、予想していた通りの結果です」

 

「そう‥‥」

 

「あっ、フェイトさん」

 

「何かな?ティアナ」

 

「先に謝っておきますね」

 

「えっ?」

 

「その‥‥もしかしたら、フェイトさんに飛び火したかもしれないので‥‥」

 

「‥‥」

 

ティアナの言葉を聞いてフェイトは顔を引き攣らせる。

 

きっと心の中では、

 

(余計な事を!!)

 

と、思っているかもしれない。

 

「ヴィヴィオ、なのはさんはフェイトさんと大事な話があるみたいなの‥もう少し我慢してくれるかな?」

 

「う、うん」

 

ヴィヴィオには申し訳ないが、次にフェイトが交信が行われている部屋へと入る。

 

「なのは‥‥」

 

「フェイトちゃん‥‥」

 

「その‥‥随分とティアナとやりあったみたいだね」

 

「う、うん‥‥ねぇ、フェイトちゃん」

 

「ん?」

 

「‥‥もし‥もし、ヴィヴィオがそっちの地球に居なかったら、フェイトちゃんはティアナと同じ様に暗黒星団帝国と戦っていた?」

 

「ティアナから聞いたの?」

 

「う、うん‥‥ティアナは『フェイトちゃんが表に出さないだけで、多分自分と同じ思いを抱いていると思う』って言っていたから‥‥」

 

なのはは心の中では否定して欲しいと願っていた。

 

「そうだね‥‥確かにティアナの言う通り、もしヴィヴィオがこの世界に来ていなかったら、ティアナと同じ行動をしていたかもしれない‥かな」

 

「っ!?」

 

フェイトの返答はティアナと同じであり、なのはにとっては否定して欲しかった回答だった。

 

「ど、どうして?」

 

「私も防衛軍に助けられてこの世界を見て、管理局との違いを沢山見せられたよ‥‥ティアナがパルチザンに参加するって言った時、私はティアナを止められたかもしれない。でも、結果的にティアナを止めなかったのは、私自身もきっとティアナと同じ思いがあったからなんだと思う」

 

「でも、そのせいでティアナは顔に傷を負ったし、人も‥‥」

 

「知っているよ。私もティアナが戻ってきた時はビックリしたもん」

 

フェイトはあっけらかんとした様子で戻ってきたティアナの印象を口にする。

 

「フェイトちゃんは平気なの?ティアナは人を殺したんだよ?」

 

「でも、相手だってティアナを殺しにかかってきたんだよ?管理局は逮捕権があり、事件の真実を知るために犯人を生きて逮捕しなければならないけど、軍の人は逮捕権なんてない、迫りくる脅威を排除するために相手を殺す‥‥ただ、それだけだよ、なのは」

 

フェイトは軍人と管理局との違いを指摘し、

 

「そして、パルチザンの意味は非正規軍の事だから侵略者に対して逮捕権はない。その一方で侵略者を殺しても殺人罪にもならない。自分たちの国や星を守るために侵略者を斃すのだから、正当な行為とも言えるんだよ」

 

「‥‥」

 

「それに暗黒星団帝国は管理局が管理する管理世界じゃないから、ティアナが暗黒星団帝国の兵士を殺してもそれは犯罪じゃない‥‥これも理不尽かもしれないけどね‥実際に無理矢理管理世界に編入させられた世界では私たちは侵略者に当たる‥‥だからこそ、そういった世界では未だにテロ事件が起こっているし、現地の人たちはそういったテロリストたちの情報をなかなか渡さないんじゃないかな?」

 

フェイトも地球において占領下を経験したことから、辺境における管理世界で頻発しているテロ事件に関しても局員視点ではテロを起こすテロリストは憎い犯罪者であるが、今のフェイトは管理局の局員視点だけではなく、客観的に見ることが出来た。

 

「じゃ、じゃあ、フェイトちゃんは仮に‥‥仮にもだよ?スカリエッティがそっちの地球に居たらどうする?フェイトちゃんは諦めるの?」

 

やや論点がズレている様な気もするが、なのはは仮にスカリエッティが今フェイトたちがいる地球に居た場合の話をする。

 

「もし、スカリエッティが居たのなら、無理を承知で彼の身柄引き渡しを要求するけど、スカリエッティがこの地球へ亡命者としていたなら、悔しいけど諦めざるを得ないだろうね」

 

フェイトはあっさりとスカリエッティを見逃すと言う。

 

「管理局はこの地球を管理世界に置いたわけじゃないし、犯罪者の引き渡し条約を結んでいるわけでもない‥‥そんな中で、スカリエッティの身柄を引き渡せなんて言っても鼻で笑われるだけだよ。子供の我が儘や癇癪程度に思われて逆に恥ずかしい思いをするだけだって」

 

そして、スカリエッティを見逃すわけをなのはに話すフェイト。

 

『もし~』の話なので、この場では割り切れるのだが、もし実際にそのような事態となっていた場合、きっとフェイトは内心、腸が煮えくりかえる悔しさを抱いていただろうが、管理局の執務官が管理局の法律を破っては本末転倒だ。

 

場所が管理外世界だからその場でスカリエッティを殺害したら、その世界の法律で裁かれる可能性が高い。

 

自分が管理局の執務官だから見逃されるなんてことはない。

 

だからこそ、なのはの仮定の話ではフェイトは悔しさを堪えてスカリエッティを見逃さざるを得ない状況だったのだ。

 

再開した日と異なり、今日の交信は空気が重いまま終了した。

 

 

交信を終えたスバルはチンクたちから今日の交信の感想を訊ねられた。

 

そこで、スバルはデバイスに記録した今のティアナの画像を見せた。

 

「えっ?これがティアナ‥‥っスか?そっくりさんとかじゃなくて?」

 

JS事件の時、ティアナと戦ったウェンディが顔を引き攣らせながらスバルに訊ねる。

 

ウェンディだけでなくチンクたちも今のティアナの画像を見てギョッとする。

 

「う、うん‥‥正真正銘ティアだよ」

 

「目つきがヤバい‥‥なにより頬の傷にインパクトが‥‥」

 

「管理局の執務官と言うよりはまるでヤ〇ザみたいだな」

 

ディエチとチンクもドン引きしている。

 

「ティアナ嬢ちゃん、一体何があったんだ?」

 

ゲンヤもティアナの変化には驚いている。

 

「‥‥その‥向こうの地球が暗黒星団帝国に占領されていたでしょう?」

 

「ああ、そうだな」

 

「その時、ティア、防衛軍の人たちと一緒に暗黒星団帝国の人と戦っていたみたい」

 

「えっ?なんでティアナが?」

 

「徴兵でもされたの?防衛軍に?」

 

ディエチがスバルにティアナが暗黒星団帝国と戦った理由が防衛軍に徴兵でもされたのかと訊ねる。

 

「ううん、暗黒星団帝国の人と戦ったのはティアが自分で選んだみたい」

 

「しかし、自分の意思とは言えなんで、ティアナは暗黒星団帝国と戦ったんだ?」

 

チンクが徴兵でもなく、何故自分の意志でティアナが戦ったのかをスバルに訊ねる。

 

「ティアは‥‥」

 

スバルはチンクたちに今日の交信でのティアナが暗黒星団帝国と戦った理由を話す。

 

「そうか‥‥」

 

「‥‥」

 

「ティアナの嬢ちゃん‥‥随分と壮大な体験をしたんだな‥‥」

 

「うん‥‥なんだか、ティアがティアでなくなっちゃったような気がして‥‥」

 

「まぁ、そのような体験をしたのであれば、仕方ないが‥‥」

 

「でも、ミッドに戻って時間が経てば元のティアナに戻るんじゃない?」

 

ディエチは時間が経てば元のティアナに戻る筈、今は占領下を体験したばかりできっと気が立っているのだろう思ってスバルを宥める。

 

「そうっスよ。それに顔の傷も手術をすればきっと消えるっスよ」

 

ウェンディもティアナの顔に残る傷もミッドに戻って手術をすれば傷も消えて元のティアナに戻るだろうとスバルを励ます。

 

「う、うん‥‥そうだよね‥‥」

 

スバルはそう言うが、不安は何故か拭いされなかった。

 

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