星の海へ   作:ステルス兄貴

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ティアナがいよいよ決断を下しました。

そして、クロノは母であるリンディに不信感を募らせています。

リンディファンの方には申し訳ございません。


百二十九話 決断

 

 

山梨県の遊園地から海鳴市にある月村邸へと戻った一行。

 

「はぁ~楽しかった~!!」

 

「うぅ~‥‥」

 

ヴィヴィオは遊園地を満喫したのか大変満足そうで終始笑顔であったが、反対にフェイトは終始グロッキー状態だった。

 

「大丈夫ですか?ハラオウン様」

 

ノエルが心配そうにフェイトへ声をかける。

 

「だ、大丈夫‥‥それにヴィヴィオが満足していたのなら私は満足だよ」

 

フェイトはノエルにサムズアップしながら答えるが、その顔色は青い。

 

「はぁ、はぁ‥‥」

 

ノエル自身も忍の事を大事に思っているので、ヴィヴィオ優先なフェイトの気持ちも理解できた。

 

フェイトがグロッキー状態となっている中でティアナは、

 

「あの‥月村艦長。一つお訊ねしたいことがあるんですけど‥‥」

 

「ん?何かな?ランスターさん」

 

良馬に声をかけた。

 

遊園地でのユリーシャと良馬のイチャイチャぶりを見せつけられたギンガがこの後どんな行動に出るのかティアナもこれまでの月村邸での生活から学んでおり今日の夜、良馬はギンガとの一戦で確実に寝不足となるだろうから、その前にティアナは聞いておきたいことを予め聞いておくことにしたのだ。

 

「‥管理局との交信はあとどれくらいやる予定になっていますか?」

 

「管理局との交信?そうだな‥すでに会合場所とかの設定もしたし、あと数回ってところかな?」

 

「あと数回‥‥」

 

「うん。そう言えば、ランスターさんあれから交信を欠席しているけど、やっぱり高町さんとは‥‥」

 

「はい、やっぱり気まずさがありまして‥‥」

 

(まぁ、あれだけ言い合いをしたらな‥‥)

 

なのはとティアナが言い合いになった二回目の交信の時、その場に居た良馬もティアナが気まずさから管理局との交信を欠席している訳も理解できる。

 

「残りもやっぱり欠席するかい?」

 

「いえ、最後の交信は出席します」

 

「そう、分かった」

 

「はい。では‥‥」

 

管理局との交信について良馬から残りの回数を聞いたティアナ。

 

夕食と入浴を済ませると、ヴィヴィオは今日一日遊園地ではしゃぎまわったこともありベッドに入ると直ぐに寝息をたてって眠ってしまった。

 

フェイトは入浴後グロッキー状態からやや回復した様子だったのでティアナはフェイトに声をかける。

 

「あの‥フェイトさん」

 

「ん?何かな?ティアナ」

 

「さっき月村艦長と話したんですが、管理局との交信はあと数回みたいなんです」

 

「そっか‥‥もうすぐでこの地球ともお別れか‥‥」

 

ティアナの話を聞いてフェイトはもうすぐミッドへ戻るのかと思うとなんだか寂しいような気もした。

 

「それで、最後の交信には出席するつもりで‥‥その時にはスバルも来てもらいたいので、次の交信でその旨を管理局に伝えてもらっても良いでしょうか?」

 

フェイトは地球に居る管理局側の代表として管理局との交信には毎回出席している。

 

一方、ティアナは二回目の交信でなのはと口論して欠席し続け、ヴィヴィオもなのはとはミッドに還れば会えるので、この地球をギリギリまで満喫しようと紅葉や桜花と共にBRAVE DUELをやりに行っている。

 

「えっ?あっ、うん。それぐらいなら良いけど‥‥でも、どうしたの?なのはと言い合いをしてから交信には出席していなかったのに?」

 

「‥‥フェイトさんには先に伝えます」

 

ティアナの真剣な表情にフェイトは変に緊張する。

 

それはやはり、ティアナが纏う雰囲気と顔の傷が原因だろう。

 

「な、なにかな?」

 

「‥‥フェイトさん。私はミッドへは還らず、この地球に残ります」

 

「えっ?」

 

ティアナの言葉にフェイトは固まる。

 

(えっ?)

 

(ティアナは今なんて言った?)

 

(ミッドへ還らない?)

 

(地球に残る?)

 

「な、なんで‥かな?‥‥ティアナ」

 

フェイトは絞り出すようにティアナへ訊ねる。

 

「これは前々から考えていた事です‥‥管理局の将来にも不安を感じ、存在自体にも疑問を思いまして‥‥」

 

「そ、そう‥‥でも、本当にいいの?ティアナ。もうすぐで念願の執務官になれそうなのに‥‥?」

 

「これまでの経験から管理局の執務官と言う肩書にもなんの意味も成さない事も分かりました‥‥それに私にはミッドで帰りを待つ家族も居ませんから‥‥」

 

「‥‥」

 

ティアナの言う執務官の肩書の意味の無さ‥‥これはフェイトも同意見であった。

 

「‥‥そっか‥それで、最後の交信にはスバルと‥‥」

 

先ほどのティアナからの頼み‥‥

 

最後の交信にはスバルを呼んでほしいという頼みはティアナがスバルと今生の別れをしようと言う事を意味していたのだとフェイトは悟った。

 

「あと、今日ギンガさんとも話したんですけど、ギンガさんもミッドへは還らないと‥‥もし、気になるならば後で確認してください」

 

「う、うん‥分かったよ」

 

ギンガがミッドへ還らない事は何となくだが察していたフェイト。

 

でも、一応ギンガ本人には後で確認してみようとフェイトはそう思いつつもやはりティアナがミッドへ還らない事には驚きが隠せなかった。

 

(一応、明日の朝、ギンガにもティアナにも確認してみよう)

 

(あっ、リニスにもアルフ宛てに手紙とか提案してみようかな)

 

フェイトは一時の迷いかもしれないと思い、明日の朝にもう一度ティアナに確認すると同時にギンガとリニスにも聞いてみようと思いこの日はベッドに横になった。

 

 

翌朝‥‥

 

「ね、ねぇ、ティアナ」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「その‥‥昨日の夜、話したことなんだけど‥‥考え直す気はない?」

 

フェイトはまずティアナにミッドへ還らない件について再考の余地は無いかと訊ねる。

 

「‥‥はい。ミッドへ還るか還らないかは私自身悩みに悩みまして出した結論ですから‥‥」

 

「そう‥‥分かったよ、ティアナ」

 

ティアナが長い時間をかけて悩みに悩んで出した結論がミッドへの未帰還だ。

 

スバルやなのははきっとティアナを説得するだろうけど、ティアナの意思はきっと変わらないだろう。

 

何しろ、六課に入る前から夢見ていた執務官への道を蹴ってまで残ると言い出したのだから‥‥

 

身支度を整えて食堂へと降りるとそこには既にギンガが待っていた。

 

「あっ、ギンガ。おはよう」

 

「おはようございます。フェイトさん」

 

「‥‥ねぇ、ギンガ」

 

「はい?」

 

「その‥‥昨日ティアナから聞いたんだけど、ギンガ‥ミッドへ戻らないって‥‥」

 

「はい。折角の機会ですけど、私はもう防衛軍の軍人ですから‥‥それに、ミッドへ戻ればスバルとお父さんは喜ぶかもしれませんが、防衛軍から送られたスパイ容疑をかけられそうですし、この地球の座標や情報を無理矢理聞かれそうですから‥‥」

 

「‥‥」

 

確かに今のギンガは管理局の関係者の中では誰よりも防衛軍の機密を知っている。

 

そんなギンガがミッドへ戻れば管理局の上層部は彼女を放っておくだろうか?

 

管理局がこの地球の情報を集めようとしているのはこれまで管理局が仕出かした醜態をフェイト自身も知っているのでギンガの予測は完全に否定できない。

 

むしろ、肯定さえできる。

 

もし、自分がこの地球へ来ることなく、ミッドに居る状況下でこの地球の事を知れば、管理局の執務官としてこの地球の存在に対して興味と同時に脅威を抱くかもしれない。

 

実際に波動砲や自分たちよりも強大な技術力をもつ星間国家と戦い勝った実績から管理局の執務官としてこの地球に対して脅威を感じてもおかしくはない。

 

そんな中で、その地球の情報を知っているかもしれないギンガが地球からミッドへ戻ってきたら何が何でもこの地球の情報を聞き出そうとするだろう。

 

信じたくはないが、秘密裏に自白剤等の薬物の使用や拷問まがいな尋問、スバルやゲンヤたち家族を人質にするかもしれない。

 

だが、今のフェイトはこの地球に滞在して地球人の強さを間近に見て体験し、地球に対する見方ではなく、むしろ自分が所属している筈の管理局への見方が変わってきている。

 

だからこそ、ギンガがミッドへ戻らないというのも頷ける。

 

そして、ティアナがミッドへ戻らないと言う事も‥‥

 

自分も恐らくミッドへ戻れば本局にて色々と事情聴取を受ける可能性が高い。

 

バルディッシュには事前にこの世界で出会った魔力保持者や地球の座標を記録しない様に言ってある。

 

本局の局員が何か言っても幸いなことにこの地球はAMAで満たされている事からAMAの影響で記録できなかったとでも言っておこう。

 

ヴィヴィオのクリスに関してもメンテナンスは信用できるシャーリーだけに任せることにしたフェイト。

 

「分かった‥でも、ギンガ」

 

「はい?」

 

「せめて、スバルやナカジマ三佐にだけでもギンガが生きている事を知らせない?」

 

「えっ?」

 

「ギンガの今の近況を記した手紙や写真を送ってもスバルやナカジマ三佐ならギンガの事をあまり周りに話さないと思うし、どうかな‥‥?ギンガが手紙を書くなら私が直接その手紙をスバルとナカジマ三佐に手渡すし‥‥」

 

「ちょっと考えさせてもらえますか?」

 

フェイトはギンガにミッドへ戻らなくてもせめてミッドに居るスバルやゲンヤに自身の生存や近況を手紙や写真で知らせるのはどうかと提案する。

 

「うん、いいよ。でも時間があまりないけど、私たちがミッドへ還るまでは待つから」

 

「は、はい。分かりました」

 

ギンガもミッドへは帰るつもりはないが、それでもミッドに居るスバルやゲンヤの事も全く気にしていないと言えばそれは嘘になる。

 

フェイトからの提案も有りだとギンガは思った。

 

「あっ、リニス」

 

次にフェイトはリニスに声をかける。

 

「なんでしょう?フェイト」

 

「さっき、ギンガにも提案したんだけど、アルフに手紙を書かない?」

 

「えっ?アルフに?」

 

「うん。アルフもリニスが消えちゃった時、泣いていたんだよ‥‥でも、リニスはこうして無事に生きていた‥‥会う‥のは難しいかもしれないけど、せめてアルフに手紙や写真を送るのはどうかな?」

 

「‥そうですね。大きくなったフェイトにはこうして会えましたが、アルフには会えませんでしたからね」

 

ギンガはミッドに居るスバルとゲンヤに手紙を送ることに迷いがあったが、リニスに関してはアルフに手紙を出すことを直ぐに了承した。

 

そして、その日に行われた管理局との交信にてフェイトはリンディに、

 

「あっ、お義母さん」

 

「ん?何かしら?」

 

「今度の交信が最後になるんだよね?」

 

「ええ、そうね」

 

「その‥ティアナが‥ランスター執務補佐官が最後の交信には出席するみたいで、そこでスバルと話がしたいみたいだから、スバルには最後の交信に呼んで欲しいの」

 

「スバルって言うと機動六課時代、FW陣に所属していたスバル・ナカジマ一士のことね?」

 

「うん。そう」

 

「分かったわ。交信が終わったら彼女に連絡を入れておくわね」

 

「ありがとう」

 

フェイトはリンディにスバルへの伝言を頼んだ。

 

地球との交信が終わり、リンディは早速フェイトに頼まれたスバルへの伝言を伝えるために現在スバルが所属している湾岸特別救助隊へ連絡を入れた。

 

「ナカジマ一士、本局のハラオウン統括官から連絡です」

 

「えっ?本局の統括官から?」

 

一応、六課でフェイトと関りを持ったのでスバルは統括官がフェイトの養母であることは知っていた。

 

実際に地球との交信でリンディとは同席したことが何度かある。

 

(もしかして、ティアたちの帰国日が決まったのかも‥‥)

 

ティアナとなのはが口論し、それ以降ティアナが管理局との交信の席に欠席しがちになってからスバルも地球との交信の席に出席しなくなってからティアナたちの帰国状況が本局に所属していないスバルは分からなかったが、こうしてリンディから連絡が来たと言う事はティアナたちの帰国の日程が判明したのではないかとスバルはそう判断した。

 

「はい、スバル・ナカジマです」

 

「あっ、ナカジマさん。今日、もう一つの地球との交信でハラオウン執務官から貴女宛てに伝言を頼まれたの」

 

「えっ?フェイトさんから?」

 

「ええ、地球との交信もいよいよ次で最後になるのよ」

 

「最後‥‥と言う事はもうすぐでティアたちがミッドへ還って来るんですね?」

 

「そうね。それで、ハラオウン執務官は次回の地球との最後の交信に貴女に来てもらいたいって」

 

「えっ?最後の交信に私が‥ですか?」

 

「ええ‥なんでもランスター執務補佐官もその時には同席するみたいで、彼女が貴女に来て欲しいってハラオウン執務官に伝言を頼まれたの」

 

「ティアが‥‥」

 

スバルとしてはミッドへ戻ってくれば直接話すことも出来るのに最後の交信に自分を呼んだと言う事は‥‥

 

(ミッドに還ってきたらどこか食事にでも行こうってことかな?)

 

(もう、ティアったらせっかちなんだから~)

 

「分かりました。それで最後の交信の日は何時なんですか?」

 

そしてスバルはリンディに地球との最後の交信日の日時を訊ねた。

 

交信日時を聞いたスバルは、

 

「あっ、でも、なのはさんも来るのかな?」

 

地球との交信が再開されてから二回目の交信でティアナと話したのだが、その時のティアナの変貌と暗黒星団帝国の兵士を殺したということからティアナとなのはは価値観の違いから言い合いになり、その後ティアナは交信の席に出席しなくなった。

 

そんな中、最後の交信には出席するし自分に来て欲しいとわざわざフェイトとリンディに頼んできた。

 

スバルはきっとティアナがミッドへ戻ってきたその日の予定を自分と立てたい為に自分を呼んだのだと思った。

 

ただ、その席になのはも同席したら前の交信の時の様になのはとティアナは言い合いを始めてしまうだろう。

 

そうなれば、ティアナが自分に何を言いたいのか分からなくなってしまう。

 

「ハラオウン統括官が伝えちゃったら仕方ないけど、私からはなのはさんに黙っていよう」

 

もし、リンディからなのはに伝われば最後の交信と言う事でなのはも来る可能性が高い。

 

なのはがリンディ経由で出席するのは仕方がないがもし知らなければわざわざ藪をつついて蛇を出す必要もない。

 

スバルは自分の口から最後の交信日時をなのはに知らせる事はなかった。

 

 

フェイトたちのミッドへの帰国が近づく中、

 

管理局のエース・オブ・エースである高町なのは、夜天の書の主である八神はやての生まれ故郷であり、管理局が第97管理外世界と認識している方の地球では‥‥

 

日本の海鳴市‥‥

 

そこにはミッドから移り住んだハラオウン家の家がある。

 

そのハラオウン家では現在休暇中のクロノが居た。

 

クロノは自宅のロビーにあるソファで新聞を見ている。

 

「ねぇ、クロノ君」

 

「ん?なんだ?エイミィ」

 

そんなクロノに妻であるエイミィが声をかけてきた。

 

「お仕事はいいの?そろそろ休暇も開ける頃だと思うんだけど‥‥」

 

エイミィはクロノに休暇明けの期日を訊ねる。

 

「ああ、ここ最近はずっと仕事ばかりで子供たちにも君にも満足に家族サービスが出来なかったから休暇を延長したんだ」

 

しかし、クロノはエイミィに休暇を延長させたことを告げる。

 

「そうなんだ‥‥それは嬉しいけど‥‥」

 

エイミィとしてはボラーへの武力制裁から生きて戻ってきてくれたこと、

 

そして、わざわざ休みを取って自分や子供たちへ家族サービスを目一杯しれくれることには感謝しているが、その反面エイミィの目にはクロノが何だか仕事への意欲を無くしているようにも見えていた。

 

そりゃあ、管理局史上最悪の失敗と言ってもいいほどの武力制裁から命からがら戻ってきたのだから分からなくもない。

 

自分だって武力制裁前はクロノには遠征には行って欲しくなかったのだから‥‥

 

「ん?どうした?」

 

エイミィからの視線に気づいたクロノが声をかける。

 

「あっ、ううん‥何でもないよ」

 

「そうか?」

 

エイミィは慌ててお茶を濁す。

 

妻からの不安を知る由もなくクロノはこの休暇でフェイトやティアナ同様、管理局‥管理世界の存在について考えていた。

 

自分とエイミィとの間にはもうすぐで四歳になる双子が居る。

 

魔導師夫婦との間に生まれた自分の子供たちも当然リンカーコアを受け継いでいるが、魔法文化が無いこの地球ではエイミィやリンディが子供たちに魔法の使用を固く禁じ、デバイスも持たせておらず、普通の子供‥非魔導師と同じ環境で生活させていた。

 

その反面、自分は幼少期には当然地球と言う世界の存在を知らず、自分の子供たち同様、魔導師であり管理局のエリート局員であるリンディとクライドとの間に生まれた子供だったことから将来の管理局を担う人材として幼少期から専門のエリート教育を受け、10代前半には執務官として職務についていた。

 

だからこそ、クロノは地球での生活を続ければ続けるほど管理局の異常性に気づき始めていた。

 

この町でなのはたちと出会う切っ掛けとなったPT事件では、自分は当時民間人であったなのはとユーノに関してジュエルシード回収作業から手を引くように言った。

 

しかし、母であるリンディはなのはを半ば騙すような形でなのはにジュエルシードの回収作業を協力させた。

 

なのはの協力によって、事件の早期解決が出来たのは事実ではあるが子を持つ今の自分の立場で言うのであれば、やはりあの時のリンディの行為には納得できないモノがある。

 

あの時のなのはは当時の自分や今のなのはと異なり民間人であった。

 

しかも魔法を覚えたての‥‥

 

人手不足な管理局としては高魔力の魔導師は喉から手が出る程勧誘したい人材である。

 

実際になのははPT事件を皮切りに闇の書事件を解決し、その後管理局とかかわっていくが十一歳の時に当時アンノウンだったスカリエッティが製作したガジェットⅢ型と戦闘し大怪我を負った。

 

いくらガジェットがAMFを発生させるとしてもなのはの魔力レベルであればそれこそ多数のガジェットがいなければ負ける筈がない。

 

しかし、あの時のなのはは一体のガジェット相手に敗北した。

 

それは彼女がガジェットⅢ型と邂逅する前にオーバーワークによる疲労の蓄積が原因だった。

 

十一歳の少女が過労が原因で二度と歩けなくなるかもしれない重傷を負う‥‥

 

この地球における日本では考えられない事だ。

 

結果的になのはは奇跡的に回復し今では管理局のエースと呼ばれる魔導師になったが、もしも、なのはがあのまま歩けなくなった時、リンディは責任を負えたのだろうか?

 

ふと、そんな疑問がクロノの脳裏を過る。

 

管理局と関わる切っ掛けを作っておきながらその少女が魔導師として再起不能になり更には身体障害者となった時に彼女のこの先にある人生のアフターケアをしただろうか?

 

なのはの両親に誠心誠意謝罪しただろうか?

 

不正・汚職をした局員に対して人材不足を理由に目を瞑った事からクロノのリンディへ対する信頼が揺らいでいた。

 

そもそも今、自分たちが居る日本では十五歳までの就業を認めていない。

 

ボラーの一件を始めとしてこれまでの経験から見ても管理局の人材不足は今後も解消されることはないだろう。

 

本局がそれこそ星の海の全てを掌握するかこれ以上の管理世界の拡大を諦めるまでは‥‥

 

なのは、フェイト、はやては僅か九歳で嘱託局員となった。

 

その経緯からリンディはもしかしたら自分の孫たちにも九歳になった時、管理局の嘱託局員にするかもしれない。

 

義妹のフェイトもエリオとキャロを嘱託局員どころか引き取ってすぐに局員にした。

 

二人も幼いながらも魔力レベルは高かった。

 

いくら身寄りがないとしてもせめて自分たちのように嘱託局員と学業を併用させるべきだったのではないだろうか?

 

ヴィヴィオは学校に通わせているが、この先いつなのはとフェイトの都合から嘱託局員にするか分からない。

 

もしかしたら、ヴィヴィオ本人の希望により嘱託局員へ志願するかもしれない。

 

しかし、それでも今のクロノには思う所がある。

 

「‥エイミィ」

 

「ん?何?」

 

「‥‥もしも‥もしもだ、母さんが僕らの子供たちを嘱託局員にすると言ったら、君はどうする?」

 

「えっ?」

 

クロノは自分が思った疑問をエイミィに訊ねる。

 

「あの子たちが嘱託局員になって‥ゆくゆくは管理局で働くとしたら‥‥君はどう思う?」

 

クロノは管理局員の妻、元管理局員からの目線ではなく、一人の‥子供たちの母親としての意見をエイミィに求めた。

 

「‥‥」

 

エイミィはクロノの質問に直ぐには答えられなかった。

 

だが、クロノが管理局の関係者としての目線で意見を求めているのではないのだと長年の付き合いから察していた。

 

「そうね‥‥」

 

ボラーへの武力制裁前ならば、自分の子供たちが義母や旦那と同じ様に管理局で働くのは素敵な事だと思ったかもしれない。

 

親バカかもしれないが、自分の子供たちも旧六課のメンバーと同じくらい優秀な魔導師になれるだろうと思っている。

 

しかし、今の管理局の現状を見ると自分の子供たちを管理局と‥魔法に関わらせる事に対しても躊躇している自分が居た。

 

「‥‥私は‥‥その‥クロノ君の前で言うのはなんだけど‥‥あまり関わって欲しくはない‥かな?」

 

ボラーに対する武力制裁の失敗では沢山の艦船はもとより、多くの人の命が失われた。

 

その中には自分よりも若い訓練校や士官学校の学生たちも居た。

 

今後もボラーとの戦争が続けば管理局側の人材枯渇は続くだろう。

 

先日の武力制裁ではクロノは生きて戻ってきたが、今後も生きて帰れるという保証はない。

 

エイミィは本音を言えばクロノにも管理局を辞めるか、艦船勤務から外れて欲しかった。

 

そんな中で自分の子供たちも管理局に関わればボラーとの戦乱で命を落とす可能性が高い。

 

だからこそ、エイミィはクロノに子供たちは管理局へあまり関わって欲しくないと言う。

 

元管理局員、管理局高官の妻としてその意見は本来あってはならない回答かもしれない。

 

しかし、それでも子供たちの安全のためならエイミィは胸を張って自分の子供たちは管理局と関わらせないと言える。

 

「クロノ君はどう思っているの?やっぱり管理局員になってほしいの?」

 

エイミィは反対にクロノの意見を訊ねる。

 

「‥‥いや、僕も君の意見と同じだ‥‥ただ‥子供たちが今後自分の意志で管理局員になりたいと言ってきたら‥‥」

 

「言ってきたら?」

 

「‥‥その時は子供たちの意志を尊重したい」

 

「そ、そんなっ!?」

 

クロノの回答を聞いてエイミィは驚愕する。

 

エイミィ本人としてはあまり管理局とは関わって欲しくないが、子供たちが局員になりたいと自ら志願すればクロノは子供たちの意志を尊重‥‥つまり、局員になることを許すと言うのだ。

 

「ただし、関わらせるとしても高校を卒業してから‥‥そして魔法の‥管理局の綺麗なところも汚いところも見せてからだ‥‥」

 

フェイトとはやてに関しては関係者が起こしてしまった事件への贖罪の気持ちもあったのだろが、なのはに関しては魔法も管理局も綺麗なところしか見て来なかった故に今の管理局のギャップに驚愕しているみたいだ。

 

「それまでは例え母さんが相手でも子供たちには管理局とも魔法にも関わらせない」

 

初めてのなのはとの出会いの一件からリンディは管理局の綺麗な所しか見せない様な気がしたクロノは、管理局は決して綺麗な所だけではなく、裏の顔がある組織である事をしっかりと見せてそれを見せた結果、子供たちがそれでも管理局の局員になるなら止めず、自分で物事の分別がつく精神と年齢がくるまでは管理局にも魔法にも関わらせない事をエイミィに誓う。

 

「クロノ君‥‥」

 

クロノが自分の意志をエイミィに伝えた時、

 

「「ただいまー!!」」

 

「ふぅ~疲れた~」

 

外へ遊びに出かけていた子供たちと子守役のアルフが帰ってきた。

 

「おかえり~アルフも子供たちのお守りありがとう~」

 

エイミィが子供たちとアルフを出迎える。

 

「さっ、手を洗っておいで、おやつ用意してあるわよ」

 

「「はーい!!」」

 

子供たちの姿を見てあの子たちが大きくなるまでせめてボラーとの一件が片付くことを祈るハラオウン夫妻だった。

 

 

「そう言えば、もう一つの地球に居るフェイトちゃんたちはいつ頃ミッドに戻るの?」

 

子供たちとアルフにおやつを出した後、エイミィはクロノにフェイトたちがいつミッドに還って来るのかを訊ねた。

 

彼女にとってフェイトは義理の妹にあたる。

 

フェイトたちが乗った艦が遭難したと聞いた時、エイミィ自身もフェイトたちの身を案じていた。

 

「そうそう、あたしたちずっと地球に居たらからフェイトたちの情報が来ないからさ」

 

使い魔であるアルフも主人であるフェイトがいつ帰って来るのか気になる様子だった。

 

「それに向こうの地球がどこかの星間国家に占拠されたって聞いたんだけど?」

 

「えっ?ソレ大丈夫なのかい!?フェイトは無事なの!?」

 

一応、使い魔の自分と主人であるフェイトは魔力でリンクしているので、フェイトの身に何かあれば自分の身にも何らかの変化があるのだが、それが無いのでフェイトが無事だろうと言う事は何となくわかる。

 

それでも小さな傷や精神的疲労も負うだろう。

 

「ああ、無事みたいだ。もう一つの地球の方も防衛軍が奮闘して解放したみたいだ」

 

「それって凄いねぇ。確か防衛軍って管理局よりも強いんでしょう?」

 

エイミィがクロノに防衛軍と管理局の艦船の性能差を訊ねる。

 

「うむ‥‥技術的には管理局の艦船よりも防衛軍の艦船技術が上だ」

 

クロノは悔しさを見せることもなく平然と管理局の艦船が防衛軍の艦船よりも性能が負けていることを認める。

 

「ってことはその地球を占拠した奴らはもっと強いってことだろう?」

 

するとアルフが地球を占拠したどこかの星間国家はもう一つの地球や管理局よりも実力が上である方式が出来上がりそれをクロノに訊ねる。

 

「だろうな‥‥つくづく防衛軍を‥‥もう一つの地球を敵に回す真似は出来ない‥‥それに時期的から考えてもうすぐ帰って来るだろうな‥‥」

 

「フェイトちゃんたちは占領下を体験したってことだよね?」

 

「ああ‥‥きっと僕らには想像もつかない体験をしたんだと思う‥‥そんな体験をしたんだ。きっと前よりも成長して帰って来ることだろう」

 

あの地球で過ごしたのだからきっと成長して戻って来る‥‥

 

クロノにはそんな確信があった。

 

「そうだね」

 

「早く帰ってこないかな‥‥」

 

エイミィもアルフもフェイトが帰って来る日を楽しみに待っていた。

 

 

それから幾日が過ぎ‥‥

 

管理局との最後の交信を控えた前日‥‥

 

「月村艦長‥‥」

 

「ん?」

 

良馬はティアナに声をかけられた。

 

なお、余談であるがギンガは昨夜、中嶋家に帰っているので良馬がギンガに食われる事がなかったのでティアナとしては好都合だった。

 

「何かな?ランスターさん」

 

「あの‥‥今度の管理局との交信で向こうの友人にも伝えるつもりなんですけど‥‥」

 

「うん」

 

ティアナにしては珍しく歯切れが悪い。

 

「その‥‥私‥‥ミッドへ戻らずこの地球に残りたいんです!!」

 

「えっ?」

 

ティアナの発言に一瞬、固まる良馬。

 

「えっ?ちょっと待って‥‥えっ?帰らない?」

 

「はい」

 

「理由を聞いてもいい?」

 

ひとまず良馬はティアナが何故ミッドへ帰らず地球へ残留するのかその理由を訊ねる。

 

ティアナは事前にフェイトへ話した地球への残留理由を良馬に話した。

 

「そう‥‥分かったよ、ランスターさん。でも、本当にいいのかい?ハラオウン執務官らを帰国させたら恐らくだけど、地球連邦政府はミッドと交流を持つことはない。この先、永久にミッドの地を踏むことは出来ない可能性が高いけど?」

 

「大丈夫です。私は天涯孤独の身なので、ミッドで帰りを待つ家族は居ませんから‥‥友人には申し訳ないことですが‥‥」

 

ティアナの言う友人と言う単語から真っ先に思い浮かんだのがギンガの妹であるスバルの姿であった。

 

暗黒星団帝国のせいで管理局との交信が一時閉鎖し、スバルとしてはティアナの身を案じ、交信が再開された時は感極まって涙目でモニターに食いついたぐらいだ。

 

きっとティアナがミッドへ戻らず地球へ残留するとなれば絶対に悲しむだろう。

 

それはティアナ自身も分かっている筈だ。

 

しかし、それを承知の上で彼女は地球での残留を決めたのだ。

 

軍や政府の一部の者たちはティアナがミッドへ還らず地球へ残留すると言う事で彼女にスパイではないかと疑うかもしれないが、ティアナは暗黒星団帝国との戦いでパルチザンとして戦ったことからスパイ容疑もすぐに解けるだろう。

 

「地球に残ることはハラオウン執務官にはもう言ったの?」

 

「はい。先日‥‥」

 

「そう‥‥ただこの話は忍さんにも伝えて。忍さんならきっと力になってくれるだろうから」

 

「はい。ありがとうございます」

 

ティアナが地球に残ると言う事は管理局での役職を失うことを意味する。

 

地球での生活おいて、ティアナの年齢から大学へ行くにも就職するにも後ろ盾が必要だ。

 

忍ならばティアナをサポートしてくれる筈だ。

 

良馬はティアナからまさかの地球残留話を聞かされ驚きながらも彼女に忍にも伝えることを話した後、源三郎の下へと向かった。

 

 

「司令部と協議してハラオウン執務官らの帰国の際、まほろば と同行する艦が選定された」

 

「拝見します」

 

源三郎はフェイトたちの帰国の時、周辺哨戒のために まほろば と同行する艦を選び抜き、その艦艇リストを良馬に見せる。

 

フェイトたちの帰国の時に参加する艦艇リストは、フェイト、ヴィヴィオ及び管理局殉職者のご遺体を乗せる艦が まほろば となり、周辺を哨戒する艦が、ティアナと声が似ている美咲七波が艦長を務める防衛軍のパトロール艦 畝傍 同じくパトロール艦の白浜

 

 

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改彗星帝国巡洋艦ホワイトアーチャー級のホワイトアローⅠ Ⅱ Ⅲ

 

 

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改彗星帝国高速中型空母ホワイトスカウト級の龍驤

 

 

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以上、これらの艦船が参加する。

 

「‥‥今回の任務には彗星帝国の鹵獲艦が含まれていますね」

 

「ああ、艦隊司令部としてもこれら鹵獲艦の性能を知る試験航海としていい機会だと言う事で今回の任務にこれらの艦を当てた訳だ」

 

リストを見て良馬が呟くと源三郎は今回の任務に彗星帝国の鹵獲艦が参加する理由を話す。

 

彗星帝国の艦船の鹵獲後に調査と地球人でも操艦できるように改修された後、性能試験等を行う前に暗黒星団帝国の襲来があった為、ホワイト艦隊と呼ばれる鹵獲艦部隊の性能試験を満足に行える機会がなかったので今回の任務に短時間ではあるが参加することになったのだ。

 

「事前に説明をしておかないと管理局に誤解を与えかねませんね」

 

「ああ。それについては明日の交信で伝えてくれ」

 

「承知しました」

 

管理局の次元航行艦のノア、そしてフェイトとティアナがこの地球に来る切っ掛けとなったテリオスを攻撃したのは彗星帝国の艦船だったので、鹵獲し多少外見が変わったが、それでも事前に説明をしなければノアとテリオスを攻撃したのは彗星帝国の艦船と言われているが実際は防衛軍が攻撃したのではないかと言う誤解を管理局側に与えかねない。

 

画像写真くらいならば軍事機密には当たらない筈だ。

 

良馬が源三郎とフェイトたちの帰国について話し合いをしているその頃、月村邸では‥‥

 

「あの‥忍さん」

 

「ん?何?」

 

ティアナは良馬から言われた通り忍に地球残留の旨を伝えた。

 

「えっ?ティアナちゃん、ミッドに還らないの!?」

 

「はい。この件はフェイトさん、月村艦長にも伝えてあります。それで、忍さんにも伝えた方が良いって」

 

「なるほど‥‥それで、ティアナちゃんは地球に残って何かやりたいことはあるの?大学を受験するなら私とノエルで勉強を見るし、受験料や学費も負担してあげるよ」

 

「いえ‥その‥‥できれば私もギンガさんと同じく防衛軍に入りたいんですけど‥‥」

 

「えっ?防衛軍に?」

 

「はい」

 

「まぁ、ティアナちゃんはパルチザン活動にも参加していたし、管理局でも訓練や実践も経験したと思うけど‥‥」

 

忍としてはティアナが地球に残るというのも驚いたが、地球に残ってやりたいことが良馬やリニス、ギンガと同じ様に防衛軍への入隊を希望するのは意外だった。

 

ギンガという前例もあるし、パルチザン活動でティアナは空間騎兵隊の古野間、防衛軍のエリートとも言える北野と行動を共にしていたので、軍でも人間性を疑われることはないだろう。

 

「‥‥分かったわ。そういう事なら軍に話をしておくわ」

 

「ありがとうございます」

 

ティアナは地球での今後の生活基盤を着々と整え始めようとしていた。

 

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