星の海へ   作:ステルス兄貴

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六話 赤い地球

火星観測所を後にし、偵察機で火星軌道にて待機している宇宙戦艦 えいゆう へと向かう古代と島。

ようやく肉眼で味方の戦艦を確認できたとき、近くには味方の巡洋艦一隻と火星で見た船とは形が違う、今まで見た事のない形をした宇宙船が一隻いるだけで、他の艦艇は見当たらなかった。

 

(兄さんの艦が居ない‥‥)

 

(兄さんの艦はどうなったんだろう!?)

 

もしかしたら、途中で機関故障を起こし後方にいるのかもしれない。

兄の守ならば「先に行っていてください」と言い出しそうだ。

それとも周辺の警戒行動に出ているのだろうか?

それとも‥‥

兄の身を心配しつつ、古代は偵察機を戦艦の下部のハッチから難なく着艦させた。

戦艦の格納庫では、古代達から資料を受け取ろうと、士官の一人が待っていた。

 

「此方が、火星に不時着した不明船からの回収物と資料です」

 

古代と島は火星で採取した資料を待っていた士官へと渡す。

 

「ご苦労だった」

 

資料を受け取った士官は労いの言葉を古代達に言うと、回収物を丈夫そうなトランクの中へと詰めていった。

 

「あ、あの‥‥」

 

古代はその士官に恐る恐る声をかけた。

 

「ん?何かな?」

 

「あっ、いえ、ちょっと気になったのですが、あの味方の巡洋艦の近くにいる船は一体?その‥見たこともない形だったので、少し気になって‥‥」

 

古代は敢えて兄の乗った駆逐艦 雪風の事は聞かずに、先ほど、外で見た見慣れない形の船について聞いた。

 

「あの船は君たちを待っているときに突然現れたんだよ」

 

「突然ですか!?」

 

「ああ。三笠の月村艦長が調査をして、この後、地球へ回航するらしい」

 

そう言って士官が例の不明船の方を見ると、古代達も釣られて、不明船の方を見る。

そこでは三笠の乗員が船外作業用の宇宙服を着て、不明船の曳航準備をしているのが見えた。

 

「君たちも色々あって疲れただろう?部屋を用意してある。ゆっくり休みなさい」

 

そう言って士官は用意した部屋の番号が書かれた鍵を古代と島に渡し、トランクを抱え、格納庫から出て行った。

 

火星からの偵察機の収容と不明船の回航準備が終わった えいゆう と 三笠 は火星軌道を後にし、一路地球へと向かった。

 

「本艦はまもなく火星静止軌道を離脱し、地球への帰還軌道に向かいます」

 

地球へ帰還する艦内放送が流れる中、古代は用意されていた部屋のベッドの上で、兄の事を思っていた。

あれだけ、時間が過ぎても兄の乗った雪風は姿を見せない。

その結果がどういう事なのか、古代とて子供ではないのだから分かる。

しかし、同時に認めたくもなかった。

 

ガミラスの宇宙船と違い、現段階の地球の宇宙船では火星から地球の間でも幾日かの時間を要していた。

その間、ギンガは医務室から出ることなく、医務官のリニスか艦長の良馬がその話し相手になっていた。

そして、生きていれば当然腹も減る。

良馬はディアーチェに頼んで、医務室まで食事を持ってきてくれるよう頼んだ。

そして、

 

「ホレ、艦長、持ってきたぞ!!」

 

カートの上に食事を乗せたディアーチェが医務室へとやってきた。

 

「なっ!?」

 

ディアーチェの姿を見たギンガは驚愕した。

 

「は、はやてさん!?」

 

そして思わず、自分が知るディアーチェそっくりの人物の名を口にした。

 

「ん?はやて?誰だ?それは?我の名は、ディアーチェ・K(コンドウ)・クローディア。此処(三笠)の厨房長を務めておる。で?お主は?」

 

「し、失礼しました。私はギンガ・ナカジマと言います」

 

人違いだったため、ギンガはそれを詫び、改めてディアーチェに自己紹介をした。

 

(冷静に考えてみればはやてさんがこの場に居る訳ないわよね)

 

と、思うギンガだった。

 

「そうか、それでその『はやて』とやらはそんなに我にそっくりなのか?」

 

「は、はい、髪の毛と瞳の色‥‥それに口調以外は瓜二つです」

 

「そうなのか?まぁ、世の中には自分に似た人間は三人はいるというからな。我もお前に似ている人物を知っておるぞ」

 

「そうなんですか!?」

 

「うむ。お主とはやはり髪の毛の色と声質が違うがな」

 

「へぇ~」

 

ギンガはこの世界にいる自分そっくりな人物に少し興味が湧いた。

それから食事時間となり、

 

「貴様は一体どれ程食うのだ!?もう、用意した御代わりの分は全部お前が食ってしまったぞ!?」

 

異世界に来てもギンガの持ち前の食い意地は健在であった。

 

「まぁそれだけ食べられれば問題ないだろう」

 

と、そのギンガの食い意地にディアーチェは驚くと同時に呆れたが、ギンガの食欲を見て、もう問題はないだろうと判断した。

ギンガの食欲を見て良馬もリニスもその様子に唖然とした。

そして、

 

((ますますあの人そっくりだ))

 

と、地球にいるギンガそっくりの人物の事を思い浮かべた。

 

 

それから えいゆう と 三笠 は月軌道へと差し掛かった。

地球へはもう間もなくであった。

 

 

宇宙戦艦 えいゆう 艦橋

 

「本艦後方より飛来物が来ます」

 

その時、えいゆう と 三笠 の後方から二つの飛来物が通り過ぎていった。

 

「エネルギー反応からみて遊星爆弾です」

 

それは冥王星、ガミラス軍基地から発射され、地球を青い星から赤く放射能まみれにした元凶‥‥ガミラスの遊星爆弾だった。

 

「遊星爆弾、本艦の上方を通過、地球への落下進路をとっています」

 

「主砲は撃てるか?」

 

山南は焼け石に水なのは分かっているが、このまま黙って遊星爆弾の落下を見ているわけにはいかず、主砲による遊星爆弾の破壊に試みようとするが、

 

「遊星爆弾のあの速度では、今から主砲を撃っても、もう間に合いません」

 

「っ!?」

 

砲術手の言葉に山南は悔しそうに顔を歪める。

 

「ダメだ‥‥もう今は防げない 我々には あの遊星爆弾を防ぐ力は無い、あれが我々の母なる地球の姿だとはなぁ‥‥」

 

沖田は えいゆう の艦橋から地球へと落下していく遊星爆弾を見て呟いた。

やがて二つの遊星爆弾は地球へ落ちると地表で大爆発を起こし、地球の表面を破壊するのと同時に有害な放射性物質を周辺にばら撒いた。

 

(見ておれ悪魔め‥‥わしは命ある限り戦うぞ。決して絶望はしない。例え最後の一人になっても、わしは絶望しない‥‥)

 

沖田は遊星爆弾によって赤くなった地球を睨み、拳を握りながら徹底抗戦の意志を固めた。

 

 

宇宙巡洋艦 三笠 艦橋

 

「いつ見ても嫌な光景じゃわい」

 

遊星爆弾による攻撃で赤くなった地球を見て、井上が忌々しそうに呟く。

 

「かつてロシアの宇宙飛行士、ガガーリンは宇宙から見た地球を見てこう言った。『地球は青かった‥‥』、と‥‥それがどうだい?今じゃ、火星の地よりも血の様に赤く痛々しい‥‥まるで、地球が大量出血をして、痛がっている様だ」

 

同じく三笠の艦橋でも良馬が赤くなった地球を見て、辛そうに言う。

 

「確かに、俺なんて、この光景を見るたびにガミラスへの怒りが湧いてきますよ」

 

舵を握る永倉も良馬の意見に賛同する。

 

「これが地球‥‥?」

 

医務室から地球の映像を見ていたギンガも赤い地球の姿を見て絶句した。

ギンガ本人も地球の姿は知っている。

管理局にある記録映像で何度かその姿を見た事があるからだ。

ギンガの知っている地球はミッド同様、青い海が広がる青く綺麗な星だった。

しかし、今、ギンガが見ている地球は海の水が無く、カラカラの赤い大地を晒す、見るも無残な姿を晒す星になっている。

これが本当に自分の知る地球なのかと疑うほど、違う姿だった。

 

地下都市にある艦船ドックへ入港した えいゆう と 三笠 の二艦。

ギンガが乗っていた輸送船も調査のため、別のドックへと回航されていった。

 

「艦長の月村だ。諸君、生きて帰ることないと思っていた地球(ホーム)だ。暫くは出撃する機会もないだろう。その間十分に鋭気を養ってくれ‥‥諸君らと共に戦えて光栄に思う。以上」

 

艦内放送にて、乗員に労いの言葉をかける良馬。

その後、各部署事に下艦準備が出来た者はその部署の班長に報告し、次々と荷物を持ち、艦を降りていった。

良馬は艦長と言う役職柄、最後に艦を降りなければならないのだが、

 

「艦長、此処は私が残務処理をしておきますので、艦長は先に下艦して下さい」

 

と、副長の三木に下艦を勧められた。

 

「いや、しかし‥‥」

 

副長の好意にはありがたいが、艦長の責務を放棄するわけにもいかない。

と、言っても後やることと言えば、各部署からの下艦者リストにサインするだけなのだが‥‥。

 

「判子を押すぐらい自分でも出来ます。艦長は例の船の救助者の護衛や司令部へ報告書提出、そして・・高町艦長のご遺族の方や沖田提督との面会などやることが沢山あるじゃないですか」

 

「‥‥」

 

三木にそう指摘されると、確かにこの後、良馬にはまだ色々とやる事があった。

 

「艦長いいじゃないですか、此処は副長の好意に甘えても」

 

「うむ、たまには人を頼ることも必要じゃぞ。艦長は何でも自分一人で片付けようとする気概があるからのう」

 

永倉と井上からも言われ、良馬はすまなそうに三木に残りの作業を託し、まずは、ギンガを病院へと連れて行く事にした。

 

そのギンガがいる医務室では、

 

「艦内設備の医療機器では、問題ありませんでしたが、念のため、病院で精密検査は受けておいた方がいいですよ」

 

と、地球に着く少し前にリニスにそう言われ、ギンガはリニスと共に地球の医療施設へ赴くこととなった。

本来ならば、ミッドの様に戦闘機人専門の診断が必要なのだろうが、ギンガは今、医務官であるリニス以外、自分が戦闘機人だと、明かしていないため、通常の医療施設での診断をする事となった。

最も今の地球にはミッドと違い戦闘機人専用の医療施設など存在しないが、この地球の医療技術ならば、十分ミッドの戦闘機人専用の医療施設の代わりになるくらいの技術と設備はある。

リニスが荷物を纏め、医務室を出ると、そこにはトランクを手に持った良馬の姿があった。

 

「艦長。どうかされましたか?」

 

「あ、いや、その‥ナカジマさん、これから病院で精密検査を受けるのだろう?」

 

「えっ?ええ、そうです」

 

「それなら僕が車で病院まで送ろう。今は異星人と言うだけで、どんな目に会うか会わらないし、此処での宿泊先の人にも紹介したいし‥‥」

 

「艦長、残務処理は?」

 

「副長が買って出てくれたよ」

 

「そうですか、それではお願いします」

 

良馬、リニス、ギンガが三笠のタラップに向かって歩いていると、

 

「おい、青髪」

 

ディアーチェがギンガを呼び止めた。

 

「はい?」

 

「地球の食糧事情は今、逼迫しているからな、陸に上がっても馬みたいにバカスカ食うなよ。あっ、それとこれは餞別だ」

 

と、地球での食糧事情を話し、注意しつつ、ギンガにサンドイッチが入った包みを渡した。

 

「これは?」

 

「これから病院で精密検査と聞く、長い時間、検査やら、待合やらだと、腹も減るだろう?だから、我からの差し入れだ。有難く食えよ」

 

「あ、ありがとうございます。クローディアさん」

 

ギンガが両手でその包みを受け取ると、ディアーチェにペコリと一礼した。

 

「うむ、では達者でな。後、我の事はディアーチェでよい。ファミリーネームはどうも呼び慣れぬからな」

 

「はい。ありがとうございます。ディアーチェさん」

 

ディアーチェからの思いがけないサプライズにありがたみを感じ、ギンガは三笠から降りた。

ドックに用意されていた公用車を良馬が運転し、病院へ向かう途中、彼は防衛軍のオフィスに立ち寄り、出撃前、高町、沖田から聞いた二人の遺書を大事そうに懐へ入れると、公用車に戻り、病院へと向かった。

 

その頃、病院のとある診察室では、

 

「この傷で大事にならんかったのは不幸中の幸いとしか言えんぞ」

 

病院勤務の医師、佐渡 酒造が冥王星海戦にて負傷した沖田の手当てをしていた。

佐渡は沖田の主治医でもあった。

そして、医務室にはもう一人、沖田の手当てを見守っている人物がいた。

沖田と士官学校が同期で、今はその士官学校の校長を務めている土方 竜だった。

 

「なぁに宇宙一の名医がいるのだから心配はしとらん」

 

「いや、それ程でもあるがの」

 

沖田に褒められて満更でもない様子の佐渡。

 

「例の回収されたカプセルは直に解析が終了する」

 

「そうか‥‥」

 

土方が火星で例の不明船から回収されたカプセルの状況を沖田に告げる。

そこへ、

 

コン コン

 

と、医務室のドアをノックする音が聞こえてきた。

 

「誰じゃ?」

 

佐渡がドアの向こう側にいる人物に尋ねる。

 

「宇宙巡洋艦、三笠艦長の月村です。こちらに沖田提督がいるとお聞きしましたのですが‥‥」

 

佐渡が沖田に目をやると、沖田は「構わんよ」とアイコンタクトをとり、

 

「入れ」

 

佐渡は入室を許可した。

 

「失礼します」

 

一礼し、診察室へ入ると、そこには良馬にとって予想外の人物がいた。

他ならぬ土方である。

 

「ひ、土方教官!?」

 

慌てて土方に敬礼する良馬だった。

 

「月村、お前も無事に帰ってきてくれて何よりだ」

 

土方は良馬に近づき、良馬の両肩をポンポンと叩き帰還を喜んでいる様子だった。

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「それで、わしに用とは?」

 

沖田が良馬に要件を訊ねる。

 

「あ、あの‥‥」

 

良馬はスッと視線を動かし土方と佐渡を見る。

その様子からなるべく沖田だけに話したい要件なのだと、土方と佐渡は察したが、当の沖田本人が

 

「二人の事は気にせんでいい」

 

と、言ってきたので、

 

「はっ、ではこれを提督に‥‥」

 

良馬は懐から一通の白い封筒を取り出し、沖田に渡した。

受けとった沖田は封筒を見る。

封筒の表には『沖田 十三 様』と筆文字の宛名が書かれており、裏を返すとそこには『沖田 一』と書かれていた。

 

「‥‥」

 

「一からの‥‥沖田提督へ宛てた遺書です。出撃前、小官と高町、そして一の三人で、もし、お互いに万が一の事があれば、遺書を直接ご遺族の方に渡してくれという約束事をしまして‥‥」

 

「‥‥」

 

ジッと息子(一)からの遺書が入った封筒を見つめる沖田。

 

「そうか‥‥手間を取らせてすまない。態々届けてくれてありがとう」

 

「い、いえ、そんな‥‥」

 

沖田は息子(一)からの遺書を懐のポケットにスッと入れた。

その姿には哀愁が漂っていた。

沖田とて軍人である前に一人の人間であり、父親だったと言う事だ。

 

「「‥‥」」

 

そんな沖田を土方も佐渡もいたたまれなく、声をかけづらい状況の中、

 

「沖田提督!!」

 

と、突然診察室のドアが開き、そこから一人の青年が診察室の中へ入ってきた。

その後ろにはもう一人、彼と同年代の青年が立っていた。

彼らの服装は防衛軍宇宙艦隊で正式採用されている軍服から、彼らもまた宇宙戦士なのだという事がわかった。

 

「沖田提督、兄は‥‥兄の船はどうなってのですか!?」

 

「君の名前は?」

 

沖田は突然診察室へ入って来た青年に名を訊ねる。

 

「古代です。古代 進です」

 

青年は沖田の前で、自らの名を明かした。

 

地球に帰還した宇宙戦艦 えいゆう で古代は兄、古代 守が艦長を勤めていた駆逐艦 雪風 の行方を沖田本人に直接尋ねようと、えいゆう の艦橋へあがったが、そこに沖田の姿は既に無かった。

艦長の山南の話では、冥王星海戦において、沖田は負傷し、そのため、山南が地球に帰還と同時に沖田を病院へと向かわせたと説明を受けた。

 

「古代‥‥?そうか、君は雪風の‥‥」

 

「はい、駆逐艦 雪風艦長、古代 守は俺の兄です。提督、雪風は‥‥兄の艦はどうなったのですか!?」

 

「‥‥君のお兄さんは立派で、勇敢な男だった‥‥しかし、彼はもう帰ってこない‥‥」

 

「っ!?」

 

「君のお兄さんを死なせたのはこの私だ。‥‥すまなかった」

 

沖田は古代に深々と頭を下げる。

艦隊司令官である提督が一新米士官に頭を下げる光景なんてとても信じられず、土方も佐渡も良馬も唖然としていた。

 

「どうして‥‥どうして!?兄さんを連れて帰ってくれなかったんですか!?貴方は他人を犠牲にしてまで生き残りたかったんですか!?」

 

古代は声をあげ、沖田に掴みかかろうとした。

 

「古代、止めろ!!」

 

すると、もう一人の青年、島 大介が古代を取り押さえるが、古代は島を振りほどこうとする。

そこで、その場にいた良馬も島と共に古代を取り押さえた。

提督が新米士官に頭を下げる何て異例な光景を見たが、更に此処で曲がりなりにも提督に私情で殴り掛かっては軍法会議モノである。

いや、既にこの時点で軍法会議モノである。

流石の古代も夜の一族の血を引いている良馬の常人離れした力の前では振りほどくことは出来なかった。

その後、その場にいた土方から古代は説教を受け、上官不敬及び暴行未遂で航空機格納庫の罰掃除を受けた。

本来ならば軍法会議ものだが、被害者である沖田本人がそれを了承したのだった。

 

佐渡の病室での一悶着の後、病院のロビーに戻ると、そこには既に検査は終わっていたのか、ロビーにある椅子に座り、ディアーチェから貰ったサンドイッチを食べるギンガの姿があった。

 

「あれ?ナカジマさん、検査はもう終わったの?」

 

良馬は、先程行われたであろう検査の事を聞きながら、ギンガの傍に座る。

 

「はい。今、検査結果をリニスさんが聞きに行っています」

 

「そうか」

 

「あ、あの‥‥」

 

「ん?」

 

「お一つ如何です?」

 

ギンガが三笠を降りる直前、ディアーチェから貰ったサンドイッチを一つ勧めてきたので、良馬はその一つをご相伴に預かった。

貰ったサンドイッチを口に入れると、パンの味と中の具の旨味が口いっぱいに広がる。

 

(やっぱり、美味いな)

 

ディアーチェの作ったサンドイッチに舌鼓を打ちながら、食べ終えると、ギンガはもう少し食べたかったなぁ‥‥という表情をしていた。

しかし、ディアーチェから地球の食糧事情を聞いていたため、贅沢は言わないギンガだった。

 

「おまたせしました」

 

やがて検査結果を病院の医師に尋ねてきたリニスがロビーに来た。

 

「結果はどうだった?」

 

「特に問題はないそうです。よかったですね」

 

「は、はい」

 

特に問題はないと言う検査結果にまずは満足の一同であった。

 

次に良馬はギンガにこれからの事について話をした。

まず、ギンガが所属している時空管理局と何とか連絡をつけるために、ギンガが乗ってきた輸送船は現在、機関部と通信設備を修理中でその経過は逐一、ギンガに知らせることとなっていた。

そして、地球に滞在中の宿泊先については、既に手配しており、これからその人と会うことになっていた。

ギンガの方も良馬が提示した件を了承した。

元々自分は管理局で言う次元漂流者なのだから、そこまで偉そうにいえる立場ではない事はギンガが一番理解している。

やがて、病院のロビーに防衛軍地上勤務の証である濃緑色の軍服を着た一人の男性がやって来た。

 

「あっ、中嶋さん。こっちです」

 

良馬が手を振り、やって来たその男性に声をかける。

男性はギンガを見て、

 

「改めてみると、本当にそっくりだ‥‥」

 

と、呟いた。

そしてその男性の声を聴き、ギンガの方も驚いた。

 

(この人、父さんの声とそっくり)

 

目の前の男性は、容姿は違うが、声に関してはギンガの父、ゲンヤ・ナカジマとそっくりの声だった。

 

「ナカジマさん、こちらは僕が下宿でお世話になっている防衛軍第五軍務課長の中嶋 源三郎さん。中嶋さんは今回、君に宿泊先を提供してくれる人で‥‥って、二人とも同じ『なかじま』だと何かややこしいな」

 

「でしたら、私の事はギンガで構いませんよ」

 

「そ、そう?では、改めて、ギンガさん、此方、防衛軍第五軍務課長の中嶋 源三郎さん。地球滞在中は中嶋さんの家で過ごしてください」

 

「は、はい」

 

「中嶋です。月村君から話を聞いているよ。今回は色々と大変だったね」

 

源三郎はそう言ってギンガに右手を差し伸べる。

 

「ギンガ・ナカジマです。しばらくの間、お世話になります」

 

ギンガも自らの名を名乗り、源三郎と握手を交わす。

同じ「なかじま」と言うファミリーネーム、そして父、ゲンヤに似た声をもつこの男性にギンガは親近感を感じた。

 

「地球滞在中は家を自分の家だと思ってくれてもいい。女房や娘もその方が喜ぶだろう」

 

「い、いえ、そんな‥‥」

 

源三郎の申し出にあたふたとするギンガだった。

 

病院を出た後、源三郎が運転する車で地下都市内にある中嶋家へ向かっている最中、ギンガは車から外の景色を見ていた。

 

(この星の人達は、地下にこんな広大な空間を造っていたんだ‥‥)

 

ガミラスの遊星爆弾・放射能から逃れるため、地球人は地下を掘り進め、深さ10~15キロに及ぶ広大な地下都市を築いていた。

特に日本のそれは強固な耐震対策も施され、度重なる遊星爆弾の着弾や、大きな地震にもビクともしなかった。

外国の地下都市では、遊星爆弾の着弾で全滅した所や地震により陥没した都市もあった。

しかし、それらの出来事は地球に来たばかりのギンガは知る由もなく、ギンガはただ単にミッドはおろか、他の管理世界の中にもない地下深くにこんなにも巨大な都市を建築できるほどの技術、そしてその技術が生み出した地下の大都市などと言う代物とは初めて触れ合ったので、驚かない方がおかしかった。

それと同時に、地下都市の荒廃にも驚かされた。

ラジオでは暴動が起きた地区の情報が流れていた。

地球人類の最後の日は着々と迫っていた‥‥。

 

やがて車は中嶋家に着いた。

 

「只今!!」

 

源三郎が玄関のドアを開け、帰宅を知らせると、家の奥からパタパタと足音がすると、

 

「おかえりなさい。お父さん」

 

一人の黒髪の女の子が源三郎を玄関で出迎えた。

ギンガが抱いた印象では落ち着いた物腰の少女だった。

 

「只今、桜花」

 

娘が出迎えてくれた事で源三郎も顔を綻ばせ、嬉しそうだ。

 

「‥‥」

 

ギンガはその様子をジッと見ている。

 

「ギンガさん、この子は中嶋さんの家の子で桜花って言うんだ」

 

良馬はギンガに少女の名前と源三郎との関係を教える。

 

「ん?」

 

やがて、桜花が玄関にいるギンガの存在に気が付く。

 

「えっと‥‥そちらのお母さんに似た方は‥‥?」

 

ギンガの顔を見た桜花が、ギンガの容姿を見て、自分の母親にそっくりだと言う。

 

(皆が言う私にそっくりな人ってこの子のお母さんなんだ‥‥一体どんな人なんだろう?)

 

ギンガが自分そっくりの人物といよいよ対面するのかと思っていると、

パタパタと家の奥からスリッパの音がしてきた。

そして、

 

「お帰りなさい。アナタ」

 

女の人の声が聞こえてきた。

 

「あら?」

 

「えっ!?」

 

玄関に現れた女の人を見て、ギンガも‥‥そして、女の人も固まった。

 

「か、母さん‥‥?」

 

ギンガの目の前に現れた女の人はギンガとスバルの母、クイント・ナカジマにそっくりの容姿を持つ女性だった。

 




地球防衛軍作戦課五課長である中嶋源三郎の容姿は薄桜鬼の近藤勇

その娘の中嶋桜花はなのはvividのアインハルトの髪の毛を黒くした感じをイメージしてください。
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