星の海へ   作:ステルス兄貴

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ようやくフェイトちゃんたちがミッドへ帰国出来ました。


百三十二話 帰国

 

 

フェイトとヴィヴィオの帰国のためにプロキオン宙域の沖合にて、会合した まほろば と ヴォルフラム。

 

まほろば の会議室にて、フェイトとヴィヴィオは久しぶりにモニター越しではなく、リンディとはやてに会うことが出来た。

 

帰国手続き、そしてリンディが管理局の上層部から託された親書を手渡すため、一同が会議室にある椅子へ着席し、御堅い話の前にお茶と茶菓子が振る舞われた。

 

そこで、リンディは自身が愛飲している緑茶に砂糖とクリームをこれでもかと放り込む通称リンディ茶を作り出す奇行(?)を行う場面があった。

 

ヴィヴィオはお菓子を食べたのだが、何分用意されたお菓子が少なく何だか物足りない様子。

 

そこで、クリームと砂糖を持って来たディアーチェが、

 

「足りないならば、食堂に来ると良い。我が直々にまほろばパフェを用意してやろう」

 

「パフェ!!」

 

ディアーチェがヴィヴィオのために食堂でパフェを用意してくれると言われ、ヴィヴィオは喜ぶ。

 

「まだ、話し合いは長そうなのか?艦長」

 

「一応、込み入った話があるし、まだ子供のヴィヴィオちゃんに聞かせる話でもないから‥‥ハラオウン統括官、ハラオウン執務官、よろしいでしょうか?」

 

良馬はリンディとフェイトに許可を求める。

 

「そうだね。ヴィヴィオ、食堂で待っていてくれるかな?」

 

フェイトもこの後の防衛軍と管理局との話についてあまり子供には聞かせられない事か退屈な話になるかもしれない。

 

なので、フェイトはディアーチェの提案を受ける事にした。

 

「ルキノさんも一緒に行ってもらってもいいかしら?月村艦長」

 

フェイトが許可を出すと、リンディは念のためにルキノも同行してもらうように頼む。

 

お眼付役と言う事だろう。

 

「分かりました。リリエ一士、食堂の場所はディアーチェが案内してくれるから、ヴィヴィオちゃんの事を頼んでもよろしいかな?」

 

リンディの意図を読み取った良馬はルキノ本人が了承すれば彼女の同行を許可した。

 

「は、はい」

 

「うむ、では行くか」

 

「はーい!!」

 

ディアーチェはヴィヴィオとルキノを連れて食堂へと向かった。

 

ディアーチェたちが退室した後、リンディは自身が作り、湯吞に残っていたリンディ茶を一口飲むと、携えてきた親書――地球連邦大統領と地球防衛軍司令長官‥つまり藤堂宛ての二通――を差し出す。

 

これを受けとったのは まほろば の艦長である良馬であり、彼は親書を受け取ると、

 

「リンディ提督。私は、防衛軍司令長官宛の文書を開封し、内容を確認する権限を委譲されております。故に、連邦大統領宛の親書はこのままお預かりしますが、長官宛親書はこの場で開封します。よろしいですね?」

 

と、藤堂宛ての親書の中身を確認する事を管理局側に伝える。

 

「……はい、結構です」

 

藤堂は長年の経験からこうした事態を予想していたようだ。

 

リンディとしては、防衛軍側はこの場で親書の中身を確認する事に関して許可が出ているし、特に断る理由が無いのでこの場で防衛軍側の親書の中身を開けることについて同意する。

 

(親書の内容によっては、この場で突っ返されるかも知れないわね‥‥)

 

(一体何て書いてあるんやろう‥‥変な事を書いていなければええんやけど‥‥)

 

リンディもはやても親書の中身がどんな内容なのか知らされていないために内容もさることながら、良馬の反応にドキドキした。

 

実際にリンディもはやても親書の内容が気になっていた。

 

良馬は藤堂宛の親書の封を切り、親書を取り出して目を通し始めた。

 

「ハラオウン統括官、八神艦長、これだけは最低限確認しなければなりませんが‥‥我々は貴女がたが所属する時空管理局の艦‥ノアとテリオスの両艦にて、救助活動すると同時に両艦を曳航し、各種資料も回収して精査しました」

 

「は、はい‥‥」

 

「その結果、時空管理局が管轄する世界――我々は惑星と解釈しますが、管理世界においては、“魔法”が科学として成立し、広範囲にわたり普及していると判断しましたが、この解釈に誤りはあるでしょうか?」

 

「「っ!?」」

 

良馬の言葉にリンディとはやては一瞬息が詰まった。

 

傍らのフェイトに振り返ると、無言で頷いた。

 

「これは明確に申し上げますが、我々が魔法の存在を知り得たのはノアを調査した結果なので、ハラオウン執務官たちからではありません」

 

良馬はフェイト、ティアナから防衛軍側に魔法の存在がバレた訳ではない事を伝える。

 

管理局規則で、管理外世界‥魔法が存在しない非魔法文化圏住民に魔法の存在を露顕させた局員はやむを得ない場合を除いて厳しい懲戒処分の対象とされているが、地球側はフェイト達に機密漏洩の責任はないと言っているのだ。

 

なのはの場合は、ロストロギアであるジュエルシードが海鳴の町の広範囲にばら撒かれたと言う事でこの規則には該当しなかった。

 

もっとも良馬に関しては防衛軍に入る前‥リニスと契約した時に魔法の存在を知っていたし、自身も夜の一族、法術と非科学的な力と付き合ってきた。

 

フェイトもリニスがこの地球に存在している経緯から察していたが、話がこじれる事を考慮して黙っていた。

 

「管理局の規則では、魔法を知った管理外世界の住民は、管理世界への移住又は現地協力者として、管理局に協力する義務を負う――とありますし、第97管理外世界‥‥我々から見たもう一つの地球において、魔導師の家族や友人一家等がそれに該当しているようですが、我々もまた管理局法の適用対象になるのでしょうか?」

 

魔法を知り得た管理外世界の住民も管理世界への移住‥‥拒否すれば身柄拘束または、現地協力者と指定され、他の住民に魔法のことを知らせてはならない等の条件をつけられる。

 

実際になのはとはやての生まれ故郷であるもう一つの地球では、その世界の月村家とバニングス家がなのはたちの協力者となっている。

 

六課時代に地球でロストロギア反応があった際、なのはたちは地球へと赴いた。

 

その時、食住を提供したのはこの両家であった。

 

「ノアとテリオス同様、魔法の件は軍上層部に報告済で、既に連邦政府にも資料は報告されておりますが、我々は連邦市民の生命財産を守るために活動しており、命令なくしてそれ以外のいかなる組織にも協力はできません‥‥それはご理解いただけますね?」

 

良馬の言葉は、彼本人を含め、地球防衛軍や連邦政府内で魔法の存在を直接・間接問わず知った者は、時空管理局法に従う気は毛頭ないということだ。

 

管理局側がそれに対して実力行使を行ってくるのであるならば、防衛軍側も連邦市民の生命・財産を守るために管理局を迎え撃つ覚悟があると言う事だ。

 

「は、はい。ノアとテリオスの件については共に不可抗力ですし、私たちも組織の一員ですから、それは十分認識しています」

 

良馬の問いにリンディが応じる。

 

防衛軍側の言い分は至極まともであるし、自分たちが彼らの立場なら同じ事を言うだろう。

 

第一関係した者たちが膨大な上に現在の管理局と防衛軍では戦闘力が話にならないのだ。

 

仮に強硬派が管理世界編入を目論み、実力行使すれば一方的に叩きのめされる。

 

それどころか、暗黒星団帝国と防衛軍の戦いの経緯から今回の任務前にリンディが懸念したように次元航行能力を有した防衛軍の宇宙艦艇がミッドへ襲来することだって考えられる。

 

(軍や太陽系へのちょっかいだけじゃなく、もう一つの地球の住人へちょっかいを出したら承知しないということやな‥‥)

 

(でも、国防に携わる者なら当然のことよ、はやてさん)

 

(そうですね。今まで管理局が傲慢過ぎたということですね……親書の内容も気になりますけど、上層部が納得するんでしょうか?三提督はまだしも、その下の提督クラスには未だに管理世界拡大派が根強いですよ)

 

(そうね‥‥ミノフスキー博士の研究もあるし、選択肢を間違えれば管理局は破滅するかもしれないわね)

 

(上層部の意向はどうあれ、地球連邦と防衛軍と敵対することだけは避けないといけませんね。地球連邦が彗星帝国や暗黒星団帝国と敵対したからと言って、自動的に管理局に味方してくれるわけやありませんし……)

 

現在、本局で次期新型宇宙エンジンを開発しているミノフスキーがその新型エンジンの開発に成功し、その性能が防衛軍、彗星帝国、暗黒星団帝国と同等またはそれ以上の性能を有していたら管理世界拡大派を勢いづかせてしまう。

 

しかし、これまで管理局以上の性能を有した宇宙艦船はないと思われてきた中で、続々と管理局の性能以上の性能を有した星間国家が現れてきたことから、仮にミノフスキーが現在、防衛軍が有している宇宙艦船以上の艦を作り上げたとしてもそれが宇宙最強の艦とは言えない。

 

管理局がここまでの事態に陥ったのは管理局自体の傲慢さが招いた結果であり、ミノフスキーの結果次第ではそれを繰り返す事になる。

 

だからこそ、これからの管理局は謙虚にならなければならない。

 

しかし、大きな力を持てばそれを行使し、弱者を従えたいと言うのは人の性でもある。

 

リンディは管理局が謙虚何て殊勝な態度を取れるとは思えず、今後の手綱の引き締めの必要性を感じた。

 

はやて自身も例え異なる歴史を辿ったとしても自分の生まれ故郷と同じ名前の星とは敵対したくはなかった。

 

それに、フェイトたちがこの世界の地球でどんな事を見聞きしてきたかも聞かなければならない。

 

フェイトたちは軟禁されたようには思えず、比較的自由に行動できたようだ。

 

もう一つの歴史が異なる未来の地球に住まう人たちがどんな思いで生きているか、是非とも知っておきたい。

 

やがて、親書に一通り目を通し終えた良馬が顔を上げて、親書を封筒に戻した。

 

「‥‥御二人は、親書の内容をご存じですか?」

 

「いえ。私どもは親書の作成には一切関わっておりません……故にその親書にどのような事が書かれているのかさえ、私どもは知りません」

 

「わかりました。この親書は本部に持ち帰り、司令長官と連邦大統領に提出して回答します。ただ、この内容だけで、『回答期限が地球時間で一週間』と言うのは余りに性急かつ一方的である‥とだけ申し上げます」

 

(ちゃんとまとまるのかしら?この交渉……)

 

(一方的に回答期限が書いてあったんか‥‥)

 

親書の内容を知らなかったとは言え、他の世界‥特に魔法文明が存在しない世界に対して高姿勢という、管理局中央の悪癖がまた出たようだ。

 

リンディたちは前途を案じずにはいられなくなった。

 

「親書の回答についてはこれまで通り、そちらへ交信して結果をお伝えします」

 

「はい」

 

「‥‥結果次第ですが、例の通信ポッドに関してはこちらで廃棄いたしますがよろしいですか?」

 

「え、ええ‥お任せします」

 

ヘリオポーズに設置されている通信ポッドをいつまでも放置していると管理局が再び小細工をしかけてきそうだ。

 

もし、連邦政府が管理局とのフェードアウトを望むのであるならば、早々にあの通信ポッドは処分しなければならない。

 

実際に管理局はあの通信ポッドに小細工を仕掛けた経緯があるので信用は残念ながら出来ない。

 

この話を聞いたら一部の上層部連中は憤慨しそうであるが、リンディもはやても回答結果によってはあの通信ポッドを処分すると言う良馬の言葉は最もだと思い通信ポッドの処分に対して異議は申さず、処分も防衛軍側に任せた。

 

 

 

 

ヴォルフラム ブリッジ

 

はやて、リンディ、そしてルキノがフェイトとヴィヴィオを迎えに まほろば に向かってから暫しの時間が過ぎた頃‥‥

 

「……周辺空間の異状はないか?」

 

「はい。地球軍の艦船と艦載機以外の反応は感じられません」

 

留守を任されたグリフィスは周囲に何か異状がオペレーターに訊ねる。

 

異状があれば地球側から緊急通信が入ることになっているが、自分の“目”でも確かめるのは至って当然だろう。

 

しかし、周囲には異状はなく平穏な時間が過ぎている。

 

(改めて見ても、管理局の艦船とはまるで違うな。宇宙空間での戦闘に特化するとああいう造りになるのか……)

 

グリフィスはヴォルフラムのブリッジから隣に停泊している まほろば の姿を見て心の中で呟く。

 

だが、グリフィスの思いとは裏腹に防衛軍の宇宙艦艇は、宇宙空間はもとより大気圏内の上空、海上、海中でも戦闘が可能である事を知る由もなかった。

 

(確か地球の海上艦艇には戦艦の他に様々な艦種があった‥‥星の海にもそれらが適応されているとしたら防衛軍は戦艦以外の艦種が存在しているだろうし、戦艦に関しても まほろば 以外に以前出会った春藍の様に様々な型の戦艦も存在している筈だ‥‥)

 

(それにこの任務前に艦長から説明があったように防衛軍は彗星帝国の軍艦も使用している‥‥)

 

グリフィスは防衛軍全ての戦力を見た訳ではないが、地球における軍艦の艦種、そして彗星帝国の宇宙艦艇を鹵獲・運用していることから彼自身も管理局と防衛軍との差を感じていた。

 

「副長」

 

「ん?なんだ?」

 

「地球連邦は‥‥防衛軍は、管理局とどう関わるつもりなんでしょうか?」

 

オペレーターの一人がグリフィスに訊ねる。

 

その疑問は最もなモノだ。

 

まほろば を含め防衛軍は管理局の艦をあっさり撃破した彗星帝国の艦船を粉砕してしまった。

 

恐らく管理局では最新鋭だったにもかかわらずいとも簡単に撃破したボラー連邦の宇宙艦艇とも十分に戦える能力を有している事が予測できる。

 

「それは、ハラオウン統括官が携えてこられた親書の内容と、それに地球側がどう回答するか‥それ次第だな」

 

「‥‥」

 

親書の内容を知らないために不安はぬぐえない。

 

それはリンディもはやてもグリフィスも同じ気持ちだ。

 

「もし、管理局が地球連邦に対し、管理世界編入や質量兵器全廃を要求したとして、地球連邦がうんと言うと思うか?」

 

「いいえ‥‥」

 

グリフィスの問いにオペレーターは力なく首を横に振った。

 

「もう一つの世界の地球は何度も強力な星間国家に侵略され、それを撃退してきている。もし、親書の内容が高圧的かつ降伏勧告の様な内容なら‥‥」

 

「防衛軍との戦争は避けられない‥‥と?」

 

「考えたくはないけど、上層部には未だにあの地球の事を諦めきれない人が何人も居るみたいだからね」

 

「流石にそれだけは避けたいですね」

 

「ああ、全くだ」

 

グリフィスもオペレーターも親書の内容が穏やかなものであることを祈った。

 

 

畝傍 艦橋

 

今回の任務で周辺哨戒のために参加したパトロール艦、畝傍は指定された宙域の哨戒を行っていた。

 

その畝傍の艦橋には艦長である美咲七波と副長のターニャ・L・コジマの姿があった。

 

「ねぇ、ターニャ」

 

「はい?」

 

「時空管理局は、私たちに対しどんな姿勢をとるつもりだと思う?」

 

「何とも言えませんね。彼らは魔法以外の力を質量兵器として廃絶したがっているみたいですから‥‥それでも魔法文化がない惑星には干渉しない方針らしいけど、それは相手が管理局の世界より文明が遅れているからでしょう」

 

「そうね‥‥でも、私たちは偶然とは言え、管理局と魔法の事を知ってしまった‥‥いくら魔法文化がないとはいえ、このまま放置してくれるかしら…?」

 

美咲は溜息まじりに答える。

 

万が一にも戦闘になった場合、艦船の性能から当面の局地戦で負ける要素はないが、何分にも組織の規模が桁違い‥と言うか未知数だ。

 

消耗戦に持ち込まれたらかなり面倒なことになる。

 

「今回帰国される局員の方がちゃんと地球の事を話し、管理局が耳を傾けてくれるのを願うしかありませんね」

 

「そうね‥‥管理局の人も同じ人類だしね‥‥」

 

「そうですね」

 

ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国の人間と異なり、管理局‥ミッドの人間は魔法が使えると言うだけで、肌の色、言語は地球に通ずる。

 

それに宇宙艦艇を運用しているのだから、物事の理解力と分別ぐらいはあるはずだ。

 

美咲の返答にターニャは頷いた。

 

そんな中、

 

「ん?‥‥」

 

コスモレーダーを見ていたレーダー手が反応を見逃さず、思わず声を漏らす。

 

「どうしたの?」

 

「艦長、レーダーに反応があります」

 

「パネルに回して」

 

「了解」

 

畝傍の艦橋にあるメインパネルにはレーダーの反応があった宙域の光景が映し出される。

 

「あっ、あれはっ!?」

 

美咲はメインパネルに映るモノを見て思わず声をあげた。

 

 

地球 月村邸

 

「あの子たちは家族の方や仲間の人たちに再会した頃かしらね」

 

月村邸のロビーにて忍は紅茶が入ったカップを片手にまほろばと管理局側の迎えが合流した頃合いかとノエルに訊ねる。

 

「はい。日数的には恐らく‥‥」

 

「無事に故郷へ帰れればいいけど、その後‥時空管理局とやらがどんなリアクションを取るかよね」

 

「忍様は時空管理局が地球へ侵略に来るかもしれないと思っているのですか?」

 

「これでも色んな人を見てきたからね‥‥管理局がこの地球と平等な同盟ないし交流をしましょうなら、連邦政府も検討するかもしれないけど、ガミラスや彗星帝国みたいに自分たちの配下に‥奴隷になれ‥‥なんてことも言ってくるかもしれないでしょう?」

 

「‥‥」

 

これまで地球が関係した星間国家に関して、イスカンダル以外は地球へ刃を向けてきた相手ばかり‥‥

 

連邦政府も防衛軍も未知なる組織である時空管理局に警戒するは当然の事だ。

 

「そうですね‥‥」

 

「良馬やギンガちゃんがあの子たちと殺し合いをするなんて事は考えたくないし、一番いいのが互いにフェードアウトなんだけどね‥‥」

 

遭難者の救助に関してはギンガやフェイト、ティアナたちの様に行うが互いに積極的に関わることはせずに不干渉‥‥

 

それが地球にもミッドにも一番いい関係なのではないかと忍はそう思いつつカップに口をつけた。

 

 

まほろば 食堂

 

「ほれ、特製 まほろばパフェだ」

 

会議室からディアーチェと共にまほろばの食堂へとやってきたヴィヴィオとルキノ。

 

そこで、ディアーチェがヴィヴィオとルキノにまほろばで提供されている。

 

「おぉ~」

 

透き通った杯型の器には色とりどりのアイス、クリーム、果物、焼き菓子が盛られている。

 

ヴィヴィオは眼前のパフェを見て目を輝かせている。

 

「すみません。私まで頂いてしまって‥‥」

 

「構わぬ。一つ作るのも二つ作るのも大して変わらぬからな」

 

ルキノは自分もご相伴し恐縮するが、ディアーチェは気にせずに彼女に対してパフェを提供した。

 

「いただきます!!」

 

ルキノの分のパフェも届いたのでヴィヴィオはロングスプーンを手に取りパフェを食べ始める。

 

母の実家である翠屋のスイーツも美味しいがディアーチェが作ったこのパフェも美味しく、一杯目をあっという間に完食してしまうヴィヴィオ。

 

ルキノはヴィヴィオの食べっぷりに唖然とする。

 

そして、ヴィヴィオが二杯目を頼もうとした時、

 

「ふぅ~お腹すいたぁ~」

 

食堂に新たな来訪者が来た。

 

「王様~今日の日替わりはなに~」

 

「ん?なんだ?青ひよこ。交代なのか?」

 

「そっ、だから今の内にご飯食べておこうと思ってね」

 

新たに食堂へやって来た来訪者はルキノにとって聞き慣れた声であった。

 

「あっ、フェリシアお姉ちゃん」

 

「おっ、ヴィヴィオじゃん。やっほー」

 

食堂に来たのは交代で勤務を終えたフェリシアだった。

 

ヴィヴィオは地球での滞在中にフェリシアとは回転寿司店で邂逅していたので、驚く様子はなかったが、

 

(あ、青髪のフェイトさんだ!!)

 

ディアーチェを始めてみた時と同じくルキノはフェイトそっくりなフェリシアの容姿を見て思わず心の中で絶叫した。

 

 

親書の意見交換を終え、フェイトとヴィヴィオの正式な帰国手続きの書類にリンディとはやては署名を行うと、次にリンディとはやては以前、太陽系内で彗星帝国の攻撃を受け遭難したノア及びフェイトとティアナが乗艦していたテリオスの乗員たちの遺体安置所へ案内された。

 

遺体安置所には沢山の棺が安置されていた。

 

「荼毘に付そうか迷ったのですが、遺骨よりもやはりご遺体で故郷へ還そうと思いまして、納棺師の方々とハラオウ執務官らの協力で管理局の制服姿で納めてあります。あと身元確認の為にデバイスとタグもご遺体と一緒に納めてあります」

 

煤や血で汚れていたご遺体は納棺師が綺麗にし、フェイトとティアナが管理局の制服のデザインを伝え、被服工廠にて特注しそれを着せて棺にデバイスとタグを入れて納めたのだ。

 

「それは‥お手数をおかけしました」

 

「わざわざ、ありがとうございます」

 

リンディたちは礼を言いながら頭を下げた。

 

「では、棺の移送作業に入ります」

 

「はい。お願いします」

 

はやてはヴォルフラムに居るグリフィスにこれより殉職者たちが納められた棺の移送作業をする旨を伝える。

 

棺の移送にはリンディたちが乗ってきたシャトル以外に まほろば に搭載されている救命艇も使用して行われた。

 

まほろば からヴォルフラムへと移される棺を見ながら、

 

(ミッドに着く前にご遺体の身元確認をして殉職者たちのリストを作らなあかんな)

 

棺の中にはご遺体の他にデバイスや身分証明のタグも納められており、それを元にミッドへ着く前にノアとテリオスの殉職者たちのリストを作成し、ご遺族たちにご遺体を還さなければならない。

 

はやては此処からミッドまでの航海の最中で殉職者たちのリストを作成しなければならないと思うと大変だと思うもこれもミッドで還らぬ家族を待つご遺族たちのことを思えば当然の事だと割り切る。

 

やがて、全ての棺が まほろば からヴォルフラムへと移された。

 

「さて、そろそろヴィヴィオを迎えに行こうか?」

 

帰国手続き、棺の移送も終わり後はヴォルフラムへ戻るだけとなった。

 

そこで、ヴィヴィオとルキノを迎えに食堂へと向かう。

 

すると、食堂からは明るい声と笑い声が聞こえてきた。

 

(ん?何か、聞き覚えのある様な声が‥‥)

 

はやては食堂から聞こえてくる声の中で、ヴィヴィオとルキノ以外に聞き覚えのある声がする気がした。

 

それはディアーチェとは違い、もっと身近な人物の声でもあった。

 

(あっ、この声‥フェリシアも食堂に来ていたんだ‥‥)

 

一方、フェイトはこの声の主が誰なのかすぐに分かった。

 

そして、食堂に入るとそこには‥‥

 

「それで、これが赤道祭でやったイベントの映像」

 

ヴィヴィオとルキノに太陽系赤道祭の映像を見せるフェリシアの姿があった。

 

『ら、雷神の如くササッと登場!立ち塞がる悪には容赦なく死の鉄槌を下す!!わ、私こそが正義の象徴、雷光の死神!!フェイト・テスタロッサ・ライトニング――――っっっっ!!!!』

 

フェリシアの持つ端末には太陽系赤道祭においてフェリシアと共に舞台でふ○りは○リ○ュアの○ュアブラック風の衣装を身に纏い、顔を赤くし、ポージングをしながらもうヤケクソ気味に叫ぶフェイトの姿が映し出されていた。

 

「フェイトママかわいい~!!」

 

「あ、あのフェイトさんが‥‥ぷっ‥フフフフ‥‥」

 

ヴィヴィオはふ○りは○リ○ュアの○ュアブラック風の衣装を着たフェイトの姿を見て新鮮さを感じ、ルキノはあのフェイトがまさかの衣装を身に纏い、顔を赤くしながらアニメキャラの様なセリフを吐く姿に思わず吹き出す。

 

「ああああああー!!」

 

フェイトはヴィヴィオとルキノに自分の黒歴史とも言える映像を見られてしまい思わず声をあげる。

 

一方、声をあげているフェイトとは反対にリンディとはやてはフェリシアの姿を見て目を見開く。

 

「今度は青髪のフェイトちゃんや‥‥」

 

ルキノと同じセリフを吐くはやて。

 

(やっぱり、地球と言う事でそっくりな人が居るのね‥‥はやてさんにフェイトのそっくりな人が居るなら、なのはさんのそっくりな人もいるのかしら?)

 

リンディは、はやて、フェイトにそっくりな人が居るならば、なのはにそっくりな人も居るのではないかと思った。

 

実際に彼女の予想は当たっており、なのはに似ている人物はディアーチェとフェリシアよりも年下だが、まほろば の母港である地球にちゃんと存在しているし、フェイト、はやて、なのはの三人は彼女の存在を知っている。

 

「フェリシア、ちょっとヴィヴィオたちに何てモノを見せるのよ!!」

 

「えっ?でも、あの時の舞台は面白かったでしょう?」

 

「私にとっては恥ずかしさで顔から火が出そうだったよ」

 

「フェイトちゃんがあそこまで恥ずかしそうに声をあげるなんて一体どんな映像なんやろう?」

 

はやてはフェリシアの端末に映っている映像が気になった。

 

「この時の衣装いる?餞別代りに持って行ってもいいよ」

 

「い、いらないよ!!」

 

「えぇ~フェイトママ、意外と似合っていたのに‥‥」

 

「じゃあ、この映像は?」

 

「それもいらない!!」

 

フェリシアからの餞別を悉くいらないと断るフェイト。

 

しかし、ヴィヴィオとはやてとしては衣装と映像は貰って欲しかった。

 

「って、ヴィヴィオ、パフェをいくつ食べたの?」

 

ヴィヴィオの近くにはパフェが入っていた器が幾つも置いてあった。

 

「あっ、フェイトさん‥私の分もあるんです‥その‥‥とても美味しくて‥‥」

 

ルキノも一杯だけではなく、何杯か食べたみたいだ。

 

(ルキノ‥‥羨ましい‥‥)

 

(あの器の量‥‥そんなに美味しかったのかしら?)

 

ヴィヴィオだけでなく、ルキノも何杯も食べたと言う事ではやてとリンディはどんな味だったのか気になった。

 

はやてはよく家事をして料理の腕もなかなかのモノであり、自分そっくりの人物が作ったパフェに興味があったし、甘党のリンディからしても食べてみたかった。

 

しかし、これ以上時間を消費するわけにはいかない。

 

ディアーチェが作ったパフェを惜しみつつリンディたちはシャトルでヴォルフラムへと向かう。

 

 

ヴォルフラム ブリッジ

 

「副長、ハラオウン統括官、八神艦長らの収容終わりました」

 

「よし、出航準備」

 

「了解」

 

フェイトとヴィヴィオ、そして殉職者たちの棺を乗せ、任務の半分を終えたヴォルフラム。

 

あとは本局へ向かい今回の任務は終了する。

 

「グリフィス君。ごくろうさん、周囲に異状は?」

 

「ありません。出航準備も既に整っています」

 

ブリッジにはやてとリンディが戻ってきたが、フェイトとヴィヴィオはブリッジには上がらず、展望室で まほろば を見送る。

 

「艦長、まほろば より電文です」

 

「内容は?」

 

「はい、『貴艦ノ航海ノ安全ヲ祈ル』‥以上です」

 

「じゃあ、こちらからも返信してや」

 

「はい」

 

出航準備が整いヴォルフラムは本局を目指して出航した。

 

プロキオン宙域を抜け、一度長距離の次元跳躍をした後に通常空間を航行している。

 

「あれ?フェイトちゃんとヴィヴィオは?」

 

ブリッジを降りたはやてはフェイトと二人で色々と話したいことがあったので、フェイトにあてがわれた部屋にフェイトもヴィヴィオが居なかったので、食堂や浴場に行くも二人の姿は見つからない。

 

艦内を回るはやて。

 

そのフェイトはヴォルフラムが出航してからずっと展望室に居た。

 

「あっ、フェイトちゃん。やっと見つけたで」

 

「あっ、はやて‥‥」

 

「ん?フェイトちゃんもヴィヴィオもあれからずっと此処に居たんか?」

 

「うん。星の海を見たくて‥‥」

 

「‥‥」

 

フェイトもヴィヴィオもジッと窓の外を見ている。

 

はやてもそれにつられ、窓の外を見る。

 

「ねぇ、はやて‥‥」

 

「ん?」

 

「ヴィヴィオのデバイスについて頼みたいことがあるんだけど‥‥」

 

フェイトは、はやてにヴィヴィオのデバイスについて話し始める。

 

「ん?ヴィヴィオのデバイス?」

 

「うん。この後、本局に着いたら十中八九、私は事情聴取を受けると思うの」

 

「せやろうな‥‥」

 

「それにデバイスや荷物検査もされると思うけど、ヴィヴィオのデバイスはあの地球で作られたデバイスなのは、はやても知っているでしょう?」

 

「う、うん‥‥」

 

「そうなれば、本局はヴィヴィオに返却せずにそのまま技術調査の名目でヴィヴィオから取り上げるかもしれない‥‥ヴィヴィオ、デバイスを貰って物凄く喜んでいたの‥‥」

 

「‥‥分かった。私もリィンを強引に奪われるのは許せへぇんから、私の方からも何とかするわ‥‥」

 

「ありがとう、はやて」

 

はやてに礼を言うとフェイトは再び窓の外を見る。

 

そして、

 

「~♪~~♪~~~♪」

 

徐に向こうの地球で覚えた『銀河航路』を歌い始める。

 

すると、ヴィヴィオも釣られてフェイトと一緒に歌いだす。

 

「ん?聞き慣れない歌やけど、その歌は向こうの地球の歌なんか?」

 

「そう‥‥防衛軍の軍人さんもよく歌っていたって‥‥」

 

フェイトは守から冥王星海戦の際、雪風が旗艦であるえいゆうを逃すためガミラス艦隊へ突っ込む際、乗員全員でこの銀河航路を歌いながら突っ込んだ話を聞いていた。

 

その時、雪風の乗員たちはこれから死ぬとわかっていながらも泣き喚く事もなく、普段どおりや笑顔だったらしい。

 

管理局にそこまでの気概がある者が一体何人いるだろうか?

 

防衛軍の人たちのエピソードを聞くとそう考えるのも無理はなかった。

 

展望室で星の海を堪能したフェイトたちはヴォルフラムの食堂に行くと早めの夕食を摂る。

 

食事をしているフェイトに、

 

「あ、あの‥フェイトさん‥‥」

 

「ん?あっ、ルキノ。どうしたの?」

 

勤務明けのルキノが声をかけてきた。

 

しかし、どうもルキノの歯切れが悪い。

 

「あ、あのフェイトさん‥‥その‥‥む、向こうの地球の‥‥その‥‥」

 

「あっ‥‥」

 

ルキノの言った『向こうの地球』と言う単語でフェイトはルキノが何を言いたいのか分かった。

 

「大丈夫だよ。ルキノ」

 

「えっ?」

 

「ティアナがちゃんとルキノのために向こうの地球のプラモデルをいくつか買って私に持たせてくれたから、後で私の部屋に取りに来て」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

ミッドを含め、どの管理世界でも手に入れることが出来ないプラモデルが確実に手に入る事実にルキノはパァ~っと花が咲いたような笑みを浮かべてフェイトにお礼を言う。

 

その後、フェイトの部屋を訪れたルキノは向こうの地球のバ〇ダイ社製の宇宙艦艇のプラモデルを受け取り狂喜乱舞している姿が他のヴォルフラムの乗員に目撃された。

 

 

ヴォルフラムがプロキオン宙域を出発してから数日後‥‥

 

ヴォルフラムにとっては約一週間の日数がかかるも無事に母港である本局へと辿り着いた。

 

本局の第四バースには管理局とマスコミ関係者でごった返していた。

 

「うわぁ~すごいマスコミの数‥‥」

 

「そりゃあ、フェイトちゃんは今や注目の的やからな」

 

ヴォルフラムからもバースの様子が分かり、そこで待機しているマスコミの人数にドン引きするフェイト。

 

「私が先に降りてマスコミを引き付けるからはやてはヴィヴィオの事よろしくね」

 

「分かったで、フェイトちゃん」

 

「フェイトママ‥‥」

 

「大丈夫だよ、ヴィヴィオ‥‥ヴィヴィオは、はやてと一緒になのはママの所で待っていて。直ぐに戻るから」

 

「う、うん‥‥」

 

そして、フェイトがヴォルフラムから降りるとマスコミのカメラのフラッシュが沢山たかれ、記者たちがフェイトにインタビューをしようと押し掛ける。

 

「ハラオウンさん!!向こうの地球での生活はどうでした!?」

 

「向こうの地球がどこかの星間国家に占領されたと聞きましたが!?」

 

「ハラオウンさん!!何か一言お願いします!!」

 

「ランスター執務補佐官の姿が見えませんが、どうなさったのですか!?」

 

記者たちがフェイトに押し掛ける中、その記者たちを押しのけてフェイトに近づく者たちが居た。

 

その者たちは黒い管理局の制服を身に纏いサングラスをかけていた。

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官ですね?」

 

「はい、そうです」

 

「我々は査察部の者です。帰国早々お手数ですが、事情をお訊ねしたいので、ご同行をお願いします」

 

フェイトが帰国する前から予測していた展開通りとなった。

 

「‥‥わかりました」

 

「あと、お荷物とデバイスもこちらで一時お預かりいたします」

 

「どうぞ」

 

フェイトは査察部の局員にバルディッシュを手渡す。

 

「ご理解が早くて助かります。では、こちらへ‥‥」

 

そしてフェイトは査察部の局員らと共に事情聴取が行われる査察部へと出頭した。

 

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